(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/28 20060101AFI20231218BHJP
H01M 10/26 20060101ALI20231218BHJP
H01M 50/73 20210101ALI20231218BHJP
H01M 50/77 20210101ALI20231218BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20231218BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20231218BHJP
H01M 50/392 20210101ALI20231218BHJP
【FI】
H01M10/28 Z
H01M10/26
H01M50/73
H01M50/77
H01M50/103
H01M50/342 101
H01M50/392
(21)【出願番号】P 2021561582
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044392
(87)【国際公開番号】W WO2021107151
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2019216962
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若島 涼
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-192617(JP,A)
【文献】特開平08-022815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 -10/39
H01M 50/70 -50/77
H01M 50/10 ー50/198
H01M 50/30 -50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に開口を有する容器と、
前記容器内に配された電解液と、
前記電解液中に配され、第1方向に並んだ複数の電極と、
前記開口を通じて、前記電解液中に気体を供給する供給部と、
前記電解液の液面よりも上方に位置し、第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とをつなぐ連通室と、を有する捕集部を有する、前記気体を排気する排気部と、
一端が前記捕集部に接続され、他端が前記電解液の液面よりも下方に位置する前記容器内に延びている案内流路と
を備え
、
前記他端は、前記底面に垂直な方向から見たときに、前記開口とは異なる領域に位置している二次電池。
【請求項2】
底面に開口を有する容器と、
前記容器内に配された電解液と、
前記電解液中に配され、第1方向に並んだ複数の電極と、
前記開口を通じて、前記電解液中に気体を供給する供給部と、
前記電解液の液面よりも上方に位置し、第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とをつなぐ連通室と、を有する捕集部を有する、前記気体を排気する排気部と、
一端が前記捕集部に接続され、他端が前記電解液の液面よりも下方に位置する前記容器内に延びている案内流路と
を備え
、
前記第1方向に交差する第2方向に沿って並んだ複数の前記開口をさらに有しており、
前記他端は、前記底面に垂直な方向から見たときに、前記電極との間に前記複数の開口を有する前記容器の第1内壁と交差する第2内壁の近傍に位置している二次電池。
【請求項3】
底面に開口を有する容器と、
前記容器内に配された電解液と、
前記電解液中に配され、第1方向に並んだ複数の電極と、
前記開口を通じて、前記電解液中に気体を供給する供給部と、
前記電解液の液面よりも上方に位置し、第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とをつなぐ連通室と、を有する捕集部を有する、前記気体を排気する排気部と、
一端が前記捕集部に接続され、他端が前記電解液の液面よりも下方に位置する前記容器内に延びている案内流路と
を備え
、
前記他端は、前記底面に垂直な方向から見たときに、前記複数の電極および前記第1方向における電極間の隙間と相違する領域に位置している二次電池。
【請求項4】
底面に開口を有する容器と、
前記容器内に配された電解液と、
前記電解液中に配され、第1方向に並んだ複数の電極と、
前記開口を通じて、前記電解液中に気体を供給する供給部と、
前記電解液の液面よりも上方に位置し、第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とをつなぐ連通室と、を有する捕集部を有する、前記気体を排気する排気部と、
一端が前記捕集部に接続され、他端が前記電解液の液面よりも下方に位置する前記容器内に延びている案内流路と
を備え
、
前記案内流路の前記他端は、前記複数の電極の下端よりも下方に位置している二次電池。
【請求項5】
底面に開口を有する容器と、
前記容器内に配された電解液と、
前記電解液中に配され、第1方向に並んだ複数の電極と、
前記開口を通じて、前記電解液中に気体を供給する供給部と、
前記電解液の液面よりも上方に位置し、第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とをつなぐ連通室と、を有する捕集部を有する、前記気体を排気する排気部と、
一端が前記捕集部に接続され、他端が前記電解液の液面よりも下方に位置する前記容器内に延びている案内流路と
を備え
、
前記案内流路は、水平方向に対して傾斜した流路面を有する二次電池。
【請求項6】
前記捕集部は、前記気体を導入する導入口と、前記導入口に対向し、液滴を捕集する捕集面とを有する請求項1~
5のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項7】
底面に開口を有する容器と、
前記容器内に配された電解液と、
前記電解液中に配され、第1方向に並んだ複数の電極と、
前記開口を通じて、前記電解液中に気体を供給する供給部と、
前記電解液の液面よりも上方に位置し、第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とをつなぐ連通室と、を有する捕集部を有する、前記気体を排気する排気部と、
一端が前記捕集部に接続され、他端が前記電解液の液面よりも下方に位置する前記容器内に延びている案内流路と
を備え
、
前記捕集部は、前記気体を導入する導入口と、前記導入口に対向し、液滴を捕集する捕集面とを有し、
前記導入口の出口径は、前記開口の直径よりも大きい二次電池。
【請求項8】
底面に開口を有する容器と、
前記容器内に配された電解液と、
前記電解液中に配され、第1方向に並んだ複数の電極と、
前記開口を通じて、前記電解液中に気体を供給する供給部と、
前記電解液の液面よりも上方に位置し、第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とをつなぐ連通室と、を有する捕集部を有する、前記気体を排気する排気部と、
一端が前記捕集部に接続され、他端が前記電解液の液面よりも下方に位置する前記容器内に延びている案内流路と
を備え
、
前記捕集部は、前記気体を導入する導入口と、前記導入口に対向し、液滴を捕集する捕集面とを有し、
前記導入口の出口径は、0.1mm以上1.0mm以下である二次電池。
【請求項9】
底面に開口を有する容器と、
前記容器内に配された電解液と、
前記電解液中に配され、第1方向に並んだ複数の電極と、
前記開口を通じて、前記電解液中に気体を供給する供給部と、
前記電解液の液面よりも上方に位置し、第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とをつなぐ連通室と、を有する捕集部を有する、前記気体を排気する排気部と、
一端が前記捕集部に接続され、他端が前記電解液の液面よりも下方に位置する前記容器内に延びている案内流路と
を備え
、
前記捕集部は、前記気体を導入する導入口と、前記導入口に対向し、液滴を捕集する捕集面とを有し、
前記導入口は、出口径の方が入口径よりも小さい二次電池。
【請求項10】
底面に開口を有する容器と、
前記容器内に配された電解液と、
前記電解液中に配され、第1方向に並んだ複数の電極と、
前記開口を通じて、前記電解液中に気体を供給する供給部と、
前記電解液の液面よりも上方に位置し、第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とをつなぐ連通室と、を有する捕集部を有する、前記気体を排気する排気部と、
一端が前記捕集部に接続され、他端が前記電解液の液面よりも下方に位置する前記容器内に延びている案内流路と
を備え
、
前記捕集部は、前記気体を導入する導入口と、前記導入口に対向し、液滴を捕集する捕集面とを有し、
前記捕集面は、前記容器の内壁よりも親水性が高い二次電池。
【請求項11】
底面に開口を有する容器と、
前記容器内に配された電解液と、
前記電解液中に配され、第1方向に並んだ複数の電極と、
前記開口を通じて、前記電解液中に気体を供給する供給部と、
前記電解液の液面よりも上方に位置し、第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とをつなぐ連通室と、を有する捕集部を有する、前記気体を排気する排気部と、
一端が前記捕集部に接続され、他端が前記電解液の液面よりも下方に位置する前記容器内に延びている案内流路と
を備え
、
前記捕集部は、前記気体を導入する導入口と、前記導入口に対向し、液滴を捕集する捕集面とを有し、
前記捕集面を覆う布状部材をさらに有する二次電池。
【請求項12】
前記導入口の出口径は、前記開口の直径よりも大きい請求項
6、8~11のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項13】
前記導入口の出口径は、0.1mm以上1.0mm以下である請求項
6、7
、9~12のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項14】
前記導入口は、出口径の方が入口径よりも小さい請求項
6~8、10~
13のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項15】
前記捕集面は、前記容器の内壁よりも親水性が高い請求項
6~9、11~1
4のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項16】
前記捕集面を覆う布状部材をさらに有する請求項
6~10、12~1
5のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項17】
前記第1方向に交差する第2方向に沿って並んだ複数の前記開口をさらに有しており、
前記他端は、前記底面に垂直な方向から見たときに、前記電極との間に前記複数の開口を有する前記容器の第1内壁と交差する第2内壁の近傍に位置している請求項1
、3~16のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項18】
前記他端は、前記底面に垂直な方向から見たときに、前記複数の電極および前記第1方向における電極間の隙間と相違する領域に位置している請求項1
、2、4~
17のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項19】
前記案内流路の前記他端は、前記複数の電極の下端よりも下方に位置している請求項1~
3、5~18のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項20】
前記案内流路は、水平方向に対して傾斜した流路面を有する請求項1~
4、6~19のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項21】
前記捕集部を冷却する冷却部を備える請求項1~
20のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項22】
前記電解液は、亜鉛成分を含む請求項1~
21のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項23】
前記電解液中を移動可能に混在する粉末をさらに備える請求項
22に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解液中に気体を供給し、正極と負極との間を流動する電解液を介して充放電を行う二次電池が検討されている。かかる二次電池では、外部に排出されるガスに含まれる電解液成分を低減する対策が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
実施形態の一態様に係る二次電池は、容器と、電解液と、複数の電極と、供給部と、排気部と、案内流路とを備える。容器は、底面に開口を有する。電解液は、前記容器内に配されている。複数の電極は、前記電解液中に配され、第1方向に並んでいる。供給部は、前記開口を通じて、前記電解液中に気体を供給する。排気部は、前記気体を排気する。排気部は、前記電解液の液面よりも上方に位置し、第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とをつなぐ連通室と、を有する。案内流路は、一端が前記捕集部に接続され、他端が前記電解液の液面よりも下方に位置する前記容器内に延びている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る二次電池の概略を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る二次電池の概略を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る排気部の概略を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る捕集機構の概略を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る案内流路の配置例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る二次電池の電極間の接続の一例について説明する図である。
【
図7A】
図7Aは、第1の実施形態の第1変形例に係る排気部の概略を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、第1の実施形態の第2変形例に係る排気部の概略を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の第3変形例に係る排気部の概略を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態の第4変形例に係る捕集機構の概略を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係る二次電池の概略を示す図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態に係る二次電池の概略を示す図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態に係る二次電池の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する二次電池の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0007】
<第1の実施形態>
図1、
図2は、第1の実施形態に係る二次電池の概略を示す図である。なお、説明を分かりやすくするために、
図1、
図2には、鉛直上向きを正方向とし、鉛直下向きを負方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。
【0008】
また、
図1は、二次電池1が有する容器17の内部をX軸正方向側から、
図2は、二次電池1をY軸負方向側から、それぞれ見た図に相当する。
図2では、
図1に示した各構成のうち、供給部14と、供給部14に接続された配管15,16の図示を省略している。なお、
図1、
図2に示す二次電池1と同様の構成については同じ符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0009】
図1、
図2に示す二次電池1は、容器17を備える。容器17は、凹部10を有している。凹部10は、電解液6を貯留することができる。電解液6中には、正極2と負極3とを有した、第1方向(X軸方向)に並んだ複数の電極が配されている。その結果、二次電池1は、充放電することができる。また電解液6には、粉末7が添加されてもよい。以下、凹部10は反応部10ともいう。また、二次電池1は、上板18を備える。上板18は、反応部10を覆っている。さらに、二次電池1は、上板18の下方に位置し、貫通孔を有する中板18aを備えていてもよい。
【0010】
二次電池1は、電解液6を流動させるための流動機構を有している。流動機構は、反応部10に気体を供給する供給部14を有している。本実施形態では、反応部10の底面に位置した開口である吐出口9aを通じて、反応部10と連通した発生部9を有している。そして、供給部14から発生部9に気体が供給されることによって、供給された気体が吐出口9aから気泡8として反応部10内を浮上する。その結果、反応部10の電解液6の一部を上昇させることができ、電解液6を流動させることができる。なお、上記の通り、発生部9は、反応部10に気泡8を発生させるためのスペースまたは空間である。
【0011】
本実施形態に係る二次電池1では、電解液6の液面6aよりも上方に位置する気体中に含まれる液滴を捕集する捕集部20を有するとともに、液滴を捕集した後の気体を排気する排気部40を有している。また、捕集部20で捕集した液滴は、電解液6の液面6aよりも下方に位置する容器17内に延びている案内流路60を介して回収される。その結果、供給部14の劣化を低減するとともに、反応部10に貯留された電解液6の減少に伴う性能劣化を低減することができる。以下、より詳細に説明する。
【0012】
正極2は、例えば、ニッケル化合物、マンガン化合物またはコバルト化合物を正極活物質として含有する導電性の部材である。ニッケル化合物は、例えば、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト化合物含有水酸化ニッケル等が使用できる。マンガン化合物は、例えば、二酸化マンガン等が使用できる。コバルト化合物は、例えば、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト等が使用できる。また、正極2は、導電体として黒鉛、カーボンブラック、導電性樹脂等を含んでもよい。正極2は、ニッケル金属、コバルト金属またはマンガン金属、あるいはそれらの合金であってもよい。
【0013】
また、正極2は、例えば、上記した正極活物質や導電体その他の添加剤を含む。また、上記した正極活物質や導電体その他の添加剤は、例えば、複数の粒状体であってもよい。具体的には、正極2は、例えば、予め定められた割合で配合された粒状の活物質および導電体と、保形性に寄与するバインダとを含有する正極材料を、例えばニッケル金属またはニッケル合金などの導電性を有する板状部材を箱形状またはポケット形状に加工した集電部材の内部に封入したものであってもよい。
【0014】
負極3は、負極活物質を金属として含む。負極3は、例えば、ステンレスや銅などの金属板や、ステンレスや銅板の表面をニッケルやスズ、亜鉛でメッキ処理したものを使用することができる。また、メッキ処理された表面が一部酸化されたものを負極3として使用してもよい。
【0015】
負極3は、正極2を挟んで互いに向かい合って位置する負極3aおよび負極3bを含む。正極2および負極3は、負極3aと、正極2と、負極3bとが予め定められた間隔で第1方向としてのX軸方向に沿って順に並ぶように位置している。このように隣り合う正極2と負極3との間隔をそれぞれ設けることにより、正極2と負極3との間における電解液6および気泡8の流通経路が確保される。
【0016】
正極2は、隔膜4を有していてもよい。隔膜4は、正極2の厚み方向、すなわちX軸方向の両側を挟むように位置する。隔膜4は、電解液6に含まれるイオンの移動を許容する材料で構成される。具体的には、隔膜4の材料として、例えば、隔膜4が水酸化物イオン伝導性を有するように、陰イオン伝導性材料が挙げられる。陰イオン伝導性材料としては、例えば、有機ヒドロゲルのような三次元構造を有するゲル状の陰イオン伝導性材料、または固体高分子型陰イオン伝導性材料などが挙げられる。固体高分子型陰イオン伝導性材料は、例えば、ポリマーと、周期表の第1族~第17族より選択された少なくとも一種類の元素を含有する、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、硫酸化合物およびリン酸化合物からなる群より選択された少なくとも一つの化合物とを含む。
【0017】
隔膜4は、好ましくは、水酸化物イオンよりも大きいイオン半径を備えた[Zn(OH)4]2-等の金属イオン錯体の透過を抑制するように緻密な材料で構成されると共に所定の厚さを有する。緻密な材料としては、例えば、アルキメデス法で算出された90%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上の相対密度を有する材料が挙げられる。所定の厚さは、例えば、10μm~1000μm、より好ましくは50μm~500μmである。
【0018】
この場合には、充電の際に、負極3a,3bにおいて析出する亜鉛がデンドライト(針状結晶)として成長し、隔膜4を貫通することを低減することができる。その結果、互いに向かい合う負極3と正極2との間の導通を低減することができる。
【0019】
電解液6は、例えば、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である。電解液6中の亜鉛種は、[Zn(OH)4]2-として電解液6中に溶存している。電解液6は、例えば、K+やOH-を含むアルカリ水溶液に亜鉛種を飽和させたものを使用することができる。なお、電解液6は、後述する粉末7とともに調製すれば、充電容量を大きくできる。ここで、アルカリ水溶液としては、例えば、6~13mol・dm-3、具体的には、例えば6.5mol・dm-3~12mol・dm-3といった水酸化カリウム水溶液を使用することができる。また、1dm3の水酸化カリウム水溶液に対し、例えば0.6mol~2.4molといった割合でZnOを溶解させたものを電解液6として使用することができる。また、酸素発生抑制を目的に、リチウムやナトリウムなどのアルカリ金属を水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム)として添加してもよい。また、電解液6は、例えばCMC(カルボキシメチルセルロース)などの増粘剤、界面活性剤などを含んでもよい。
【0020】
粉末7は、亜鉛を含む。具体的には、粉末7は、例えば粉末状に加工または生成された酸化亜鉛、水酸化亜鉛等である。粉末7は、アルカリ水溶液中には容易に溶解するが、亜鉛種の飽和した電解液6中には溶解せずに分散または浮遊し、一部が沈降した状態で電解液6中に混在する。電解液6が長時間静置されていた場合、ほとんどの粉末7が、電解液6の中で沈降した状態になることもあるが、電解液6に対流等を生じさせれば、沈降していた粉末7の一部は、電解液6に分散または浮遊した状態になる。つまり、粉末7は、電解液6中に移動可能に存在している。なお、ここで移動可能とは、粉末7が、周囲の他の粉末7の間にできた局所的な空間の中のみを移動できることではなく、電解液6の中を別の位置に粉末7が移動することにより、当初の位置以外の電解液6に粉末7が晒されるようになっていることを表す。さらに、移動可能の範疇には、正極2を挟む隔膜4および負極3の両方の近傍まで粉末7が移動できるようになっていることや、反応部10内に存在する電解液6中の、ほぼどこにでも粉末7が移動できるようになっていることが含まれる。電解液6中に溶存する亜鉛種である[Zn(OH)4]2-が消費されると、電解液6中に混在する粉末7は、粉末7および電解液6が互いに平衡状態を維持するように電解液6中に溶存する亜鉛種が飽和するまで溶解する。
【0021】
気泡8は、例えば正極2、負極3および電解液6に対して不活性な気体で構成される。このような気体としては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、またはアルゴンガスなどが挙げられる。電解液6に不活性な気体の気泡8を発生させることにより、電解液6の変性を低減することができる。また、例えば、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である電解液6の劣化を低減し、電解液6のイオン伝導度を高く維持することができる。なお、気体は酸素を含有してもよく、例えば、空気であってもよい。
【0022】
発生部9は、反応部10の下方に位置している。発生部9は、後述する供給部14から供給された気体を一時的に貯留するよう内部が中空となっている。また、反応部10の内底10eは、発生部9の中空部分を覆うように配置されており、発生部9の天板を兼ねている。
【0023】
また、内底10eは、X軸方向およびY軸方向に沿って並ぶ複数の吐出口9aを有している。吐出口9aは、内底10eに垂直な方向から見たときに、内壁10aと負極3aとの間、負極3bと内壁10bとの間にそれぞれ位置している。発生部9は、供給部14から供給された気体を吐出口9aから吐出することにより、電解液6中に気泡8を発生させる。
【0024】
吐出口9aは、例えば5μm以上500μm以下、さらに10μm以上500μm以下の直径d1を有する。具体的には、吐出口9aは、例えば0.1mmの直径d1を有してもよい。吐出口9aの直径d1をこのように規定することにより、吐出口9aから発生部9の内部の中空部分に電解液6や粉末7が進入する不具合を低減することができる。また、吐出口9aから吐出される気体に対し、気泡8を発生させるのに適した圧力損失を与えることができる。
【0025】
また、吐出口9aのY軸方向に沿った間隔(ピッチ)は、例えば、2.5mm以上50mm以下であり、さらに10mm以下にしてもよい。ただし、吐出口9aは、発生した気泡8が負極3aと内壁10aとの間、負極3bと内壁10bとの間を適切に流動することができるように配置されるものであれば、大きさや間隔に制限はない。
【0026】
吐出口9aから電解液6中に供給された気体により発生した気泡8は、X軸方向の両端部、より具体的には、負極3aと内壁10aとの間、負極3bと内壁10bとの間において、それぞれ電解液6中を浮上する。電解液6中を気泡8として浮上した気体は、電解液6の液面6aで消滅し、上板18と電解液6の液面6aとの間に位置する気体層13を構成する。
【0027】
また、上記した気泡8の浮上に伴い、電解液6には上昇液流が発生し、内壁10aと負極3aとの間、負極3bと内壁10bとの間では電解液6は反応部10の下方から上方に向かって流動し、負極3aと正極2との間、正極2と負極3bとの間では電解液6は上方から下方に向かってそれぞれ流動する。
【0028】
容器17、上板18および中板18aは、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニルなど、耐アルカリ性および絶縁性を有する樹脂材料で構成される。容器17、上板18および中板18aは、好ましくは互いに同じ材料で構成されるが、異なる材料で構成されてもよい。また、発生部9は、反応部10の内部に位置してもよい。中板18aは、1または複数の貫通孔を有している。貫通孔の中、あるいは複数の貫通孔の一部の中を、捕集部20または案内流路60が通っている。また、複数の貫通孔の他の部分を通って、気体が排気部40に排気されてもよい。
【0029】
供給部14は、反応部10の内部に位置する排気部40から配管16を介して回収された気体を、配管15を介して発生部9に供給する。配管16は、一端が排気部40の下流側に位置する流出管31に接続され、他端が供給部14に接続されている。配管16は、気体層13から反応部10の外部に気体を排出する排出流路の一例である。
【0030】
供給部14は、例えば気体を移送可能なポンプ(気体ポンプ)、コンプレッサまたはブロワである。供給部14の気密性を高くすれば、気体や電解液6に由来する水蒸気を外部に漏出させることによる二次電池1の発電性能の低下が起きにくい。
【0031】
ここで、二次電池1における電極反応について、正極活物質として水酸化ニッケルを適用したニッケル亜鉛電池を例に挙げて説明する。充電時における正極2および負極3での反応式はそれぞれ、以下のとおりである。
【0032】
正極:Ni(OH)2 + OH- → NiOOH + H2O + e-
負極:[Zn(OH)4]2- + 2e- → Zn +4OH-
【0033】
一般的には、この反応に伴って負極3で生成したデンドライトが正極2側へ成長し、正極2と負極3とが導通する懸念がある。反応式から明らかなように、負極3では、充電により亜鉛が析出するのに伴い、負極3の近傍における[Zn(OH)4]2-の濃度が低下する。そして、析出した亜鉛の近傍で[Zn(OH)4]2-の濃度が低下する現象が、デンドライトとして成長する一因である。すなわち、充電時に消費される電解液6中の[Zn(OH)4]2-を補給することにより、電解液6中の亜鉛種である[Zn(OH)4]2-の濃度が飽和状態に保持される。これにより、デンドライトの成長が低減され、正極2と負極3とが導通する可能性が低減される。
【0034】
二次電池1では、電解液6中に亜鉛を含む粉末7を混在させるとともに、発生部9の吐出口9aから電解液6中に気体を供給して気泡8を発生させる。気泡8は、反応部10の内底10eから上方に向かって電解液6中を浮上する。また、気泡8の浮上に伴い、正極2と負極3との間では反応部10の下方から上方に向かって電解液6が流動する。
【0035】
これにより、充電によって電解液6中の[Zn(OH)4]2-が消費されると、これに追従するように粉末7中の亜鉛が溶解することで高濃度の[Zn(OH)4]2-を含有する電解液6が負極3の近傍に補給される。このため、電解液6中の[Zn(OH)4]2-を濃度が高い状態に保つことができ、デンドライトの成長に伴う正極2と負極3との導通の可能性を低減することができる。
【0036】
なお、亜鉛を含有する粉末7としては、酸化亜鉛および水酸化亜鉛以外に、金属亜鉛、亜鉛酸カルシウム、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などが挙げられ、特に酸化亜鉛および水酸化亜鉛を使用することができる。
【0037】
また、負極3では、放電によりZnが消費され、[Zn(OH)4]2-を生成するが、電解液6はすでに飽和状態であるため、電解液6中では、過剰となった[Zn(OH)4]2-からZnOが析出する。このとき負極3で消費される亜鉛は、充電時に負極3の表面に析出した亜鉛である。このため、元来亜鉛種を含有する負極を用いて充放電を繰り返す場合とは異なり、負極3の表面形状が変化するいわゆるシェイプチェンジが生じない。これにより、第1の実施形態に係る二次電池1によれば、負極3の経時劣化を低減することができる。なお、電解液6の状態によっては、過剰となった[Zn(OH)4]2-から析出するのは、Zn(OH)2や、ZnOとZn(OH)2とが混合したものになる。
【0038】
上記したように、発生部9の吐出口9aから電解液6中に供給された気体により発生し、電解液6中を浮上した気泡8は、電解液6の液面6aで消滅する。このとき、電解液6の一部が液滴となって気体層13中に含まれることがある。
【0039】
電解液6の液滴が気体層13中に含まれることにより、反応部10の内部における電解液6の液量が減少すると、電池容量が低下する。さらに、電解液6の液滴が配管16を介して供給部14に到達すると、供給部14の腐食や、腐食に伴う性能低下などの不具合が生じる可能性も生じる。
【0040】
本実施形態に係る二次電池1では、気体層13中に含まれる電解液6の液滴は、気体を排気する排気部40が有する捕集部20で捕集される。また、捕集部20で捕集された液滴は、一端が捕集部20に接続され、他端が電解液6の液面6aよりも下方に位置する容器17内に延びている案内流路60を介して回収される。これにより、容器17内に戻すことにより、二次電池1の性能低下を低減する。
【0041】
図1に示すように、排気部40は、流入管30と、捕集部20と、流出管31とを有する。排気部40は、電解液6の液面6aよりも上方に位置しており、流入管30の端部に位置する開口29から流入した気体は、流入管30、捕集部20および流出管31を順に流通する。流出管31は、配管16に接続されており、流出管31に到達した気体は、容器17の外部に排出される。
【0042】
次に、排気部40が有する捕集部20についてさらに説明する。
図3は、第1の実施形態に係る排気部の概略を示す図である。
【0043】
図3に示すように、捕集部20は、Y軸方向に沿って第1室21、第2室22、第3室23、第4室25、第5室26および第6室28が順に位置している。第1室21は、流入管30に接続されており、第6室28は、流出管31に接続されている。
【0044】
また、第1室21および第2室22の下には、連通室32が位置しており、連通室32を介して第1室21および第2室22が連通するように配されている。また、第3室23および第4室25の下には、連通室33が位置しており、連通室33を介して第3室23および第4室25が連通するように配されている。また、第5室26および第6室28の下には、連通室34が位置しており、連通室34を介して第5室26および第6室28が連通するように配されている。
【0045】
また、捕集部20は、気体中に含まれる液滴を捕集する捕集機構24,27を有している。捕集機構24は、導入口24aと、捕集面24bとを有する。また、捕集機構27は、導入口27aと、捕集面27bとを有する。
【0046】
次に、
図4を用いて、捕集機構24,27の詳細についてさらに説明する。
図4は、第1の実施形態に係る捕集機構の概略を示す図である。
図4では、捕集機構24,27の一例として捕集機構24について説明する。なお、捕集機構27については、捕集機構24と同様の構成を有しているため、詳細な説明は省略する。
【0047】
図4に示すように、導入口24aおよび捕集面24bは、第3室23を挟んで互いに向かい合うように位置している。導入口24aは、第2室22と第3室23とを連通させる1または複数の開口である。導入口24aは、第2室22に面した一端24a1から流入した気体を付勢して第3室23に面した他端24a2から第3室23に導入する。捕集面24bには、他端24a2から第3室23に導入された気体が連続的に衝突する。これにより、捕集面24bでは、気体に含まれる液滴50aが、回収可能な液滴50に成長し、捕集される。なお、気体に含まれる液滴50aおよび液滴50は、電解液6であってもよく、水であってもよい。また、液滴50aおよび液滴50は、電解液6または水に粉末7が混在したものであってもよい。
【0048】
ここで、導入口24aは、他端24a2の開口直径である出口径d3が、吐出口9aの直径d1よりも大きい。具体的には、出口径d3は、例えば、0.1mm以上1.0mm以下とすることができる。このように出口径d3を規定することにより、第3室23に導入される気体を適切に付勢することができるため、液滴50aの捕集効率が高まる。また、直径d1に応じて出口径d3を規定することにより、導入口24aを設けたことに伴う圧力損失の増大を抑えることができる。
【0049】
また、一端24a1の開口直径である導入口24aの入口径d2は、出口径d3よりも大きくしてもよい。入口径d2を出口径d3よりも大きくすることにより、導入口24aに流入する気体の勢いを低減しにくくすることができる。このため、液滴50aの捕集効率を高めることができる。
【0050】
また、導入口24aの他端24a2から捕集面24bまでの距離Lは、出口径d3を基準として、例えば1×d3≦L≦5×d3、さらに4×d3≦L≦5×d3とすることができる。具体的には、例えば出口径d3を0.5mmとした場合、距離Lは、0.5mm以上2.5mm以下、さらに2.0mm以上2.5mm以下とすることができる。このように距離Lを規定することにより、導入口24aから導入された気体が適切に付勢された状態で捕集面24bに衝突させることができるため、液滴50aの捕集効率を高めることができるとともに、捕集機構24を設けたことに伴う圧力損失の増大を抑えることができる。
【0051】
図1、
図3を参照し、排気部40に流入した気体および気体に含まれる液滴の流れについてさらに説明する。
図3に示すように、流入管30から捕集部20に流入した気体は、第1室21→連通室32→第2室22→導入口24a→第3室23→連通室33→第4室25→導入口27a→第5室26→連通室34→第6室28の順に流通する。第3室23に面した捕集面24bおよび第5室26に面した捕集面27bでは、流入した気体中に含まれる液滴50aが液滴50として捕集され、液滴50aが捕集された後の気体は、第6室28に接続された流出管31を介して容器17の外部に排出される。
【0052】
また、連通室32~34には、案内流路60の一端側に位置する分岐流路62~64がそれぞれ接続されている。捕集面24bで捕集された液滴50は、連通室33を介して分岐流路63に流れ込み、捕集面27bで捕集された液滴50は、連通室34を介して分岐流路64に流れ込む。
【0053】
また、
図1に示すように、案内流路60は、分岐流路62~64の下流側に位置し、水平方向に対して傾斜した流路面61を有している。案内流路60の一端に位置する分岐流路62~64に流入した液滴50は、流路面61に沿うように案内流路60の内部を流れた後、反応部10の内部に戻される。これにより、電解液6の減少に伴う性能劣化を低減することができる。
【0054】
また、案内流路60の他端60aは、電解液6の液面6aよりも下方に位置する容器17内に延びている。これにより、捕集部20で捕集した液滴50をより確実に容器17の内部に案内することができ、液滴50が電解液6の液面6aに落下することで気体層13内に電解液6の液滴50aが再度生成される不具合を低減することができる。また、液滴を含む気体が他端60a側から捕集部20に進入し、捕集機構24,27を介さずに容器17の外部に排出される不具合を低減することができる。
【0055】
また、案内流路60の他端60aは、複数の電極の下端よりも下方に位置させることができる。これにより、他端60a側から進入した気泡8に由来する液滴が、捕集部20で捕集されずに容器17の外部に排出される不具合を低減することができる。なお、
図1に示した例では、負極3aの下端3eが複数の電極の下端に相当する場合を図示したが、これに限らず、複数の電極の下端が、正極2の下端であってもよい。
【0056】
排気部40および案内流路60は、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニルなど、耐アルカリ性および絶縁性を有する樹脂材料で構成される。排気部40および案内流路60は、好ましくは互いに同じ材料で構成されるが、異なる材料で構成されてもよい。また、排気部40および/または案内流路60が複数の材料を組み合わせて構成されてもよい。特に、排気部40の捕集面24b,27bが、容器17の内壁10a~10dよりも親水性を高くすると、気体に含まれる液滴の捕集性能が向上する。
【0057】
次に、
図5を用いて、案内流路60の他端60aの好適な配置についてさらに説明する。
図5は、第1の実施形態に係る案内流路の配置例を示す平面図である。
【0058】
図5に示すように、第1の実施形態に係る二次電池1では、案内流路60の他端60aは、反応部10のY軸正方向側の端部に位置する内壁10dの近傍であって、かつX軸方向の中央部分に位置しているが、これに限らない。例えば、他端60aは、内底10eに垂直な方向から見たときに、複数の電極(正極2、負極3a,3b)および第1方向としてのX軸方向における電極間の隙間である領域R1と相違する領域に位置している。このため、電解液6の流動に伴って他端60aから電解液6が逆流する不具合が生じにくい。また、他端60aは、内底10eに垂直な方向から見たときに、複数の吐出口9aが位置する内壁10aと負極3aとの間、および内壁10bと負極3bとの間の領域R2と相違する領域に位置している。このため、他端60aから気泡8が進入する不具合が生じにくい。
【0059】
すなわち、他端60aを位置させるのに適した領域R3は、内底10eに垂直な方向から見たときに、第1内壁としての内壁10aと交差する第2内壁としての内壁10cまたは内壁10dの近傍に位置している。これにより、電解液6や気泡8の流動に伴う不具合の発生を低減することができる。ここで、「内壁10cまたは内壁10dの近傍」とは、内壁10cまたは内壁10dからY軸方向に0~0.5mmまでの位置をいう。
【0060】
次に、二次電池1における電極間の接続について説明する。
図6は、第1の実施形態に係る二次電池の電極間の接続の一例について説明する図である。
【0061】
図6に示すように、負極3aおよび負極3bは並列接続されている。このように負極3を並列に接続することにより、正極2および負極3の総数が異なる場合であっても二次電池1の各電極間を適切に接続し、使用することができる。
【0062】
また、上記したように、二次電池1は正極2を挟んで互いに向かい合うように配置された負極3a,3bを備える。このように1つの正極2に対して2つの負極3a,3bが対応した二次電池1では、正極2と負極3とが1:1で対応する二次電池と比較して負極1つ当たりの電流密度が低下する。このため、第1の実施形態に係る二次電池1によれば、負極3a,3bでのデンドライトの生成がさらに低減されるため、負極3a,3bと正極2との導通をさらに低減することができる。
【0063】
なお、
図2に示す二次電池1では、合計3枚の電極が、負極3および正極2が交互に配置されるように構成されたが、これに限らず、5枚以上の電極を交互に配置するようにしてもよく、正極2および負極3をそれぞれ1枚ずつ配置させてもよい。また、
図2に示す二次電池1では、両端がともに負極3となるように構成されたが、これに限らず、両端がともに正極2となるように構成してもよい。さらに、一方の端部が正極2、他方の端部が負極3となるように同枚数の負極3および正極2をそれぞれ交互に配置してもよい。
【0064】
<第1、第2変形例>
図7A、
図7Bは、第1の実施形態の第1、第2変形例に係る排気部の概略を示す図である。
図7Aに示すように、捕集部20は、第1室21に接続された流入管30がZ軸正方向に屈曲しており、上板18と向かい合うように開口29が位置してもよい。開口29が電解液6の液面6aとは反対側を向くことにより、気体に含まれる液滴が捕集部20に導入されにくくなるため、液滴が容器17の外部に排出される不具合がさらに低減される。
【0065】
また、
図7Bに示すように、捕集部20は、第1室21の一端面21aが、開口29を有してもよい。これにより、捕集部20に気体を流入させる流入管30が不要となる。
【0066】
<第3変形例>
図8は、第1の実施形態の第3変形例に係る排気部の概略を示す図である。
図8に示すように、排気部40は、捕集部20を冷却する冷却部80を備えている。
【0067】
捕集部20は、冷却部80によって冷却されることにより、液滴50aが凝集しやすくなる。これにより、液滴50aが大きくなり、液滴50aの慣性力が大きくなることで、捕集面24b,27bに衝突しやすくなる。その結果、気体中に含まれる液滴50aを捕集しやすくなる。このため、液滴50aの捕集効率が向上し、二次電池1の性能劣化をさらに低減することができる。
【0068】
なお、冷却部80は、例えば、空冷、水冷などいかなる手法により捕集部20を冷却するものであってもよい。また、
図8では、1つの冷却部80が配置された例について示したが、複数の冷却部80を配置してもよい。また、例えば捕集面24b,27bなど、捕集部20の一部を冷却するように1または複数の冷却部80を配置してもよい。また、冷却部80は、例えば、上板18(例えば、
図1参照)に取り付けられてもよく、上板18に代えて冷却部80を位置させてもよい。
【0069】
<第4変形例>
図9は、第1の実施形態の第4変形例に係る捕集機構の概略を示す図である。
図9に示すように、捕集機構24は、捕集面24bを覆う布状部材90を有している。布状部材90は、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等の耐電解液性を有する繊維を含む不織布または織布である。
【0070】
捕集面24bは、布状部材90で覆われることにより、導入口24aから導入された気体に含まれる液滴50aの保持性能を向上し、液滴50として成長させやすくなる。このため、捕集機構24による液滴50aの捕集効率が向上する。なお、
図9では、捕集機構24の捕集面24bを覆う布状部材90を図示したが、捕集機構27の捕集面27bを覆う布状部材90を位置させてもよい。また、捕集面24b,27bのうち、一方にのみ布状部材90を位置させてもよい。
【0071】
<第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態に係る二次電池の概略を示す図である。
図10に示す二次電池1Aは、X軸方向に沿って、複数位置する排気部40を備えている。このため、例えば、気体に含まれる液滴を捕集部20の内部に流入させやすくなり、捕集性能が向上する。
【0072】
なお、
図10に示す例では、一端が捕集部20に接続される案内流路60は、対応する捕集部20と同様にX軸方向に沿って並んで位置しているが、複数の案内流路60の他端を合流させてもよい。
【0073】
また、排気部40の流出管31または流出管31に接続される配管16(
図1参照)についても、対応する排気部40と同様にX軸方向に沿って並んで位置させてもよいが、複数の流出管31または配管16を合流させると、1つの供給部14を用いた気体の循環が可能となる。
【0074】
また、複数の排気部40のうち、1つの排気部40から排出された気体が他の排気部40に導入されるよう直列に配置させてもよい。
【0075】
<第3の実施形態>
図11、
図12は、第3の実施形態に係る二次電池の概略を示す図である。なお、
図11、
図12では、例えば複数の電極や電解液6など、二次電池1,1Aと共通する構成の一部の図示を省略している。
【0076】
図11、
図12に示す二次電池1Bは、
図1に示す捕集部20および流入管30に代えて、X軸方向に延在する捕集部20Aおよび流入路30Aを有する排気部40を備えている。流入路30Aの端部に位置する開口29Aは、X軸方向に延在している。このため、例えば、気体に含まれる液滴を捕集部20の内部に流入させやすくなり、捕集性能が向上する。
【0077】
また、二次電池1Bは、
図1に示す管形状の案内流路60に代えて、X軸方向に延在する案内流路60Aを有している。案内流路60Aは、例えば、X軸方向に延在する板状部材66,67を含む。板状部材66は、分岐流路62A、流路面61Aおよび他端60Aaが形成されるように位置する屈曲部661,662を有しており、板状部材67は、板状部材66との間に所定の間隔で案内流路60Aを形成するように位置している。このような形状を有する二次電池1Bであっても、二次電池1と同様に性能低下を低減することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、各実施形態および変形例に係る2以上の捕集部20または排気部40を適宜組み合わせて適用してもよい。
【0079】
また、上記した実施形態では、捕集部20が第1室21および第6室28を有しているが、有さなくてもよい。
【0080】
また、上記した実施形態では、捕集部20が2つの捕集機構24,27を有しているが、これに限らず、1または3以上の捕集機構を有してもよい。
【0081】
また、上記した実施形態では、1つの案内流路60に分岐流路62~64が接続されているが、これに限らず、連通室32~34にそれぞれ独立して接続された案内流路60を有してもよい。
【0082】
また、上記した各実施形態では、連通室32~34をそれぞれ個別に有しているが、連通室32~34を1つの連通室としてもよい。
【0083】
また、上記した各実施形態では、排気部40および捕集部20の内部をY軸方向に沿って気体が流れるよう構成されたが、これに限らず、例えばX軸方向に沿って気体が流れてもよい。
【0084】
また、第1および第2の実施形態において、中板18aを有する構造を説明したが、中板18aを有さない構造でもよい。
【0085】
以上のように、実施形態に係る二次電池1は、容器17と、電解液6と、複数の電極と、供給部14と、排気部40と、案内流路60とを備える。容器17は、底面に開口(吐出口9a)を有する。電解液6は、容器17内に配されている。複数の電極は、電解液6中に配され、第1方向に並んでいる。供給部14は、開口を通じて、電解液6中に気体を供給する。排気部40は、気体を排気する。排気部40は、電解液6の液面6aよりも上方に位置し、第1室21および第2室22と、第1室21と第2室22とをつなぐ連通室32と、を有する。案内流路60は、一端が捕集部20に接続され、他端が電解液6の液面6aよりも下方に位置する容器17内に延びている。このため、実施形態に係る二次電池1(1A,1B)によれば、性能低下を低減することができる。
【0086】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1,1A,1B 二次電池
2 正極
3,3a,3b 負極
4 隔膜
6 電解液
7 粉末
8 気泡
9 発生部
9a 吐出口
10 反応部
13 気体層
14 供給部
17 容器
18 上板
20 捕集部
40 排気部
60 案内流路
80 冷却部
90 布状部材