(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】化学機械研磨粒子及びこれを含む研磨スラリー組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20231218BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20231218BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
H01L21/304 622B
(21)【出願番号】P 2021561593
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 KR2019018546
(87)【国際公開番号】W WO2020141804
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0173796
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ムン ウォンギュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェヒョン
(72)【発明者】
【氏名】シン キュソン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョンデ
(72)【発明者】
【氏名】イ ミンゴン
(72)【発明者】
【氏名】ジン スンフン
(72)【発明者】
【氏名】イ グーファ
(72)【発明者】
【氏名】チョ ギョンスク
(72)【発明者】
【氏名】ユ ジェホン
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0131247(KR,A)
【文献】特開2018-012752(JP,A)
【文献】特開2000-158329(JP,A)
【文献】特開2007-299942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/14
B24B3/00-3/60
B24B21/00-39/06
C01B33/00-33/193
C09G1/00-3/00
H01L21/304
H01L21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨粒子、及び
前記研磨粒子の表面上の少なくとも1つのアルミニウムクラスターを含む化学機械研磨粒子であって、
逆
滴定(back titration)方法で得られたpKaピーク(peak)の数が一つ以上であり、これらのピークのうち少なくとも一つのピークのpKa値は4.3~4.9の範囲である、化学機械研磨粒子。
【請求項2】
前記ピークの数が3つである、請求項1に記載の化学機械研磨粒子。
【請求項3】
前記3つのピークのうち、最も大きいpKa値を有するピークが、最も大きいピーク面積を有する、請求項2に記載の化学機械研磨粒子。
【請求項4】
ゼータ電位が40mV以上である、請求項1に記載の化学機械研磨粒子。
【請求項5】
前記研磨粒子はシリカ粒子を含む、請求項1に記載の化学機械研磨粒子。
【請求項6】
前記アルミニウムクラスターは、[Al(OH)]
2+、[Al(OH)
2]
+、[Al
2(OH)
2(H
2O)
8]
4+、[Al
13O
4(OH)
24(H
2O)
12]
7+、及び[Al
2O
8Al
28(OH)
56(H
2O)
26]
18+のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の化学機械研磨粒子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化学機械研磨粒子、pH調節剤及び水を含む研磨組成物。
【請求項8】
前記化学機械研磨粒子が0.1~10重量%の範囲内で含まれる、請求項7に記載の研磨組成物。
【請求項9】
酸化剤として、ペルオキシ基(-O-O-)を含む化合物をさらに含む、請求項7に記載の研磨組成物。
【請求項10】
研磨速度向上のための鉄含有触媒をさらに含む、請求項7に記載の研磨組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械研磨粒子及びこれを含む研磨スラリー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路及び他の電子デバイスの製造において、伝導性、半導体性及び誘電性材料の複数の層が基板の表面上に蒸着されるか、或いは基板の表面から除去される。材料層が基板上に順次蒸着され、基板から除去されることにより、基板の最上面は非平面になって平坦化を必要とすることができる。表面を平坦化する或いは表面を「研磨する」というのは、基板の表面から材料を除去して一般的に均一かつ平坦な表面を形成する工程である。平坦化(planarization)は、粗い表面、凝集した材料、結晶格子の損傷、スクラッチ、並びに汚染した層又は材料などの望ましくない表面トポグラフィー(topography)及び表面欠陥を除去するのに有用である。平坦化は、また、特徴部を充填し、その後の金属化及び処理レベルのための平滑な表面を提供するために使用された、過剰に蒸着された材料を除去することにより、基板上に特徴部を形成するのに有用である。
【0003】
基板の表面を平坦化又は研磨するための組成物及び方法は、当該技術分野でよく知られている。化学機械的平坦化又は化学機械研磨(CMP)は、基板を平坦化するために使用される一般的な技術である。CMPは、基板から材料を選択的に除去するために、CMP組成物又はより簡単には研磨組成物(研磨スラリーとも呼ばれる)として知られている化学組成物を使用する。研磨組成物は、典型的には、基板の表面を、研磨組成物で飽和された研磨パッド(例えば、研磨布又は研磨ディスク)と接触させることにより、基板に塗布される。基板の研磨は、典型的に、研磨組成物の化学的活性及び/又は研磨組成物中に懸濁された或いは研磨パッドに混入された研磨粒子の機械的活性によってさらに補助される。
【0004】
研磨組成物は、その研磨速度(すなわち、除去速度)及びその平坦化効率に応じて特徴化できる。研磨速度は、基板の表面から材料を除去する速度をいい、通常、単位時間当たりの長さ(厚さ)(例えば、分当たりオングストローム(Å))単位で表現される。平坦化効率は、基板から除去された材料の量に対する段差の減少と関連している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、マイルドな条件で研磨粒子の表面を改質して強い電荷を発現させることができる研磨スラリー組成物を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、高い研磨速度、及び欠点やスクラッチの小さい良質の研磨品質を提供する化学機械研磨粒子、及びこれを含む研磨スラリー組成物を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、研磨粒子の種類及び物性にさらに少なく影響され、表面改質に相応して優れた研磨特性を有する化学機械研磨粒子、及びこれを含む研磨スラリー組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、表面の-OH位の増加及び表面正電荷の増加により研磨膜質との化学的、物理的結合力が増加して、低い含有量でも高い研磨速度を有する化学機械研磨粒子、及びこれを含む研磨スラリー組成物を提供することを目的とする。
しかし、本発明の目的は、上述した目的に限定されず、上述していない別の目的は、以降の記載から当業者に明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための手段として、
本発明の一実施例は、研磨粒子、及び前記研磨粒子の表面上のアルミニウムクラスターを含む化学機械研磨粒子であって、逆適定(back titration)方法で得られたpKaピーク(peak)の数が一つ以上であり、これらのピークのうち、少なくとも一つのピークのpKa値は4.3~4.9の範囲であることができる。
前記ピークの数は3つであることができ、これらの3つのピークのうち、最も大きいpKa値を有するピークは、最も大きいピーク面積を有することができる。
【0010】
前記化学機械研磨粒子は、ゼータ電位が40mV以上であることができ、前記研磨粒子は、シリカ粒子を含むことができ、前記アルミニウムクラスターは、[Al(OH)]2+、[Al(OH)2]+、[Al2(OH)2(H2O)8]4+、[Al13O4(OH)24(H2O)12]7+、及び[Al2O8Al28(OH)56(H2O)26]18+の少なくとも1種が含まれることができる。
【0011】
本発明の一実施例は、前記化学機械研磨粒子、pH調節剤及び水を含む研磨組成物を提供する。前記化学機械研磨粒子は、0.2~10重量%の範囲内で含まれることができ、酸化剤、鉄含有触媒などがさらに含まれることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施例による研磨粒子及び研磨組成物は、マイルドな条件で研磨粒子の表面を改質して強い電荷を発現させることができ、高い研磨速度、欠点やスクラッチの小さい良質の研磨品質、及び高い研磨選択性を有する。
また、研磨粒子の種類及び物性にさらに少なく影響され、表面改質に相応して優れた研磨特性を有する。
【0013】
また、表面の-OH位の増加、表面正電荷の増加により研磨膜質との化学的、物理的結合力が増加して、研磨粒子の低い含有量でも高い研磨速度を有する。
上記効果及びさらなる効果について、以下で詳しく述べる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例20の逆滴定曲線に関する図である。
【
図2】本発明の実施例21の逆滴定曲線に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明するに先立ち、本明細書に使用される用語は、特定の実施例を記述するためのものに過ぎず、添付する特許請求の範囲によってのみ定められる本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。本明細書に使用されるすべての技術用語及び科学用語は、他の記載がない限り、技術的に通常の技術を有する者に一般的に理解されるのと同じ意味を持つ。
【0016】
本明細書及び請求の範囲の全般にわたり、別の記載がない限り、「含む(comprise、comprises、comprising)」という用語は、言及されたもの、ステップ、又は一群のもの及びステップを含むことを意味し、任意の他のもの、ステップ、又は一群のもの又は一群のステップを排除する意味で使用されたものではない。
【0017】
一方、本発明のいくつかの実施例は、明確な反対の指摘がない限り、その他のある実施例と結合することができる。以下、本発明の実施例及びこれによる効果について説明する。
【0018】
本発明の一実施例による化学機械研磨粒子は、研磨粒子、及び前記研磨粒子の表面上のアルミニウムクラスターを含む。例えば、前記アルミニウムクラスターは、研磨粒子の表面の一部又は全部にコーティングできる。コーティングは、その形態は限定されず、研磨粒子とアルミニウムクラスターとの共有結合(研磨粒子のヒドロキシ基とアルミニウムクラスターのヒドロキシ基との縮合結合など)、イオン結合、物理的結合などで行われることができる。
【0019】
アルミニウムクラスターを研磨粒子にコーティングする方法の一例として、アルミニウム化合物及び研磨粒子を水に入れて水分散液を製造するステップと、前記水分散液を攪拌して、アルミニウムクラスターがコーティングされた研磨粒子に改質反応させるステップと、を含む。水は脱イオン水であることができる。アルミニウム化合物を脱イオン水に添加して溶液を製造し、該溶液に研磨粒子を添加して、研磨粒子の分散された水分散液を製造することができる。ここで、水分散液とは、研磨粒子が水に均一に分散した形態だけでなく、不均一に分散した形態も含む。
【0020】
ここで、前記改質反応のpHは3.0~5.7の範囲内に調節することが重要であり、特に改質反応のpHは4.0~5.5の範囲内であるのがよい(後述する実施例を参照)。推測するには、改質反応のpH値に応じて、得られるアルミニウムクラスターの種類が変わり、研磨粒子の表面とアルミニウムクラスターとの有機的かつ微視的な結合構造が変わって研磨速度に大きな影響を及ぼすと考えられる。
【0021】
このように得られた本発明の一実施例による化学機械研磨粒子は、逆滴定(back titration)方法で得られたpKaピーク(peak)の数が一つ以上であることを特徴とする(
図1及び
図2を参照)。
【0022】
前記逆滴定方法は、具体的には、次のように行われ得る。まず、化学機械研磨粒子の表面を酸雰囲気に造成するために、1次酸処理を行う。1次酸処理の進行後、一定時間撹拌して安定化させる。その後、塩基を滴加して逆滴定を行ってpH変化グラフを得、pH変化グラフを微分して微分グラフを得、得られたグラフを解析して微分グラフ上のピークの数、各ピークのpH、表面電荷密度(surface charge density)、表面-OH基の密度などを求める。
【0023】
より具体的な例示としては、後述する実施例に記載された逆滴定方法を挙げることができる。
【0024】
後述する実施例、
図1及び
図2に示すように、一つ以上のpKaピークを有する本発明の実施例が比較例に比べて著しく優れた研磨速度を示すことを確認することができる。
【0025】
本発明の一実施形態に係る化学機械研磨粒子は、前記一つ以上のピークのうち、少なくとも一つのピークのpKa値が4.3~4.9の範囲内であるという特徴を持つ。この場合、アルミニウムクラスターがAl13の形態を含むことになり、低い研磨粒子の含有量でも高い研磨速度を発現することができ、研磨粒子の低い濃度により研磨対象の表面品質の向上にも役立つことができる。
【0026】
本発明の一実施例による化学機械研磨粒子は、前記ピークの数が3つであることができ、前記3つのピークのうち、いずれか一つのピークのpKa値は3.0~3.5の範囲であり、残りの2つのピークのpKa値は4.3~4.9の範囲内であるという特徴を持つ(表15参照)。
【0027】
また、ピークのうち、pKa値が最も大きいピークは、最も大きいピーク面積を有することが特徴である(
図1及び
図2を参照)。前記最も大きいピーク面積を有するpKaピークは、4.3~4.9の範囲内にあることができ、この場合、改質された研磨粒子の表面のアルミニウムクラスターのうち、Al
13又はアルミニウムヒドロキシドの形態が増加することができ、これにより研磨速度が向上することができる。
【0028】
本発明の一実施例による化学機械研磨粒子のpHグラフでは、前記ピークが3つである場合、3つのピークのうち、一番目のピークは、pHが3~4.5の範囲内で発生し、二番目のピークは、pHが4.5~6の範囲内で発生し、三番目のピークは、pHが6~8の範囲内で発生する(
図1及び
図2を参照)。
【0029】
前記テスト方法で導出されたpH変化グラフ、pKa値及びその微分グラフ特性は、本発明のアルミニウムクラスターで表面改質された研磨粒子の特徴的構造を代弁して、比較例の粒子表面構造とは非常に異なることを示す。
【0030】
一方、本発明の一実施例による化学機械研磨粒子は、アルミニウムクラスターの導入によりゼータ電位が大幅に向上し、研磨性能向上のもう一つの要因となる。本発明の一実施例による化学機械研磨粒子のゼータ電位は、20mV以上であることができる。後述する実施例を参照すると、特に40mV以上であるとき、研磨速度が著しく向上した。
【0031】
前記アルミニウムクラスターは、限定されないが、アルミニウムを含むカチオン複合体を含む。前述したpH変化グラフの挙動とpKa値を考慮するとき、アルミニウムクラスターの種類が二種類以上含まれることができる。アルミニウムクラスターは、特に[Al(OH)]2+、[Al(OH)2]+、[Al2(OH)2(H2O)8]4+、[Al13O4(OH)24(H2O)12]7+、及び[Al2O8Al28(OH)56(H2O)26]18+の中から一つ以上のカチオン複合体構造が含まれることができ、二種類以上のアルミニウムクラスターカチオン複合体を含む場合、研磨性能が著しく向上することができる。カチオン複合体の対アニオンは、限定されず、例えば、Cl-、SO4
2-、NO3
-、P-等であることができる。
【0032】
前記研磨粒子の種類は、限定されず、例えば、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、シリカなどを挙げることができ、表面が熱力学的に安定して強い吸着或いは共有結合による表面改質が容易なシリカを含むのが良く、シリカの種類としては、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカなどを挙げることができる。
【0033】
アルミニウムクラスターのコーティングのために使用されるアルミニウム化合物は、本発明の目的を達成することができるものであれば限定されず、例えば、塩化アルミニウム(Aluminium Chloride)、硫酸アルミニウム(Aluminium Sulfate)、硫酸アルミニウムアンモニウム(Ammonium Aluminium Sulfate)、硫酸アルミニウムカリウム(Aluminium Potassium Sulfate)、硝酸アルミニウム(Aluminium Nitrate)、トリメチルアルミニウム(Trimethylaluminium)、リン化アルミニウム(Aluminium phosphide)などを挙げることができ、少なくとも1種を選択して使用できる。
【0034】
アルミニウム化合物の含有量は、限定されないが、0.05~3重量%の範囲内が良く、具体的には1~3重量%の範囲内がさらに良い。上記の範囲未満の場合には、研磨速度の向上が微々たるものであり、上記の範囲を超える場合には、研磨組成物の粘度が増加し、凝集が発生するおそれがある。
【0035】
改質反応のpHを調節するためのpH調節剤は、限定されず、一つ以上選択して使用することができる。一例として、硝酸、塩酸、硫酸、酢酸、ギ酸、クエン酸などの酸性調節剤と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの塩基性調節剤を挙げることができる。前記pH調節剤は、改質反応時のpH制御のために使用でき、最終研磨組成物のpHを研磨工程に合わせて調整するためにも使用できる。
【0036】
本発明の別の一実施例は、前述したように、アルミニウムクラスターで表面改質された化学機械研磨粒子、pH調節剤及び水を含む研磨組成物を提供する。前記化学機械研磨粒子は、0.1~10重量%の範囲内で含まれることができる。上記の範囲未満の場合には、研磨性能が低下し、上記の範囲を超える場合には、研磨膜質の結晶及びスクラッチが増加して研磨品質が低下するおそれがある。
【0037】
前記pH調節剤は、前述したpH調節剤であることができ、研磨組成物の最終pHは、限定されず、前述した改質反応のpH範囲である3.0~5.7の範囲内であることができ、具体的に、pHは4.0~5.5の範囲内であることができる。
本発明の一実施例による研磨組成物には、性能向上のための様々な添加剤がさらに含まれることができる。
【0038】
具体的には、微生物汚染を防止するために、バイオサイド(biocide)を含むことができる。一例として、イソチアゾリノン(Isothiazolinone)又はその誘導体、メチルイソチアゾリノン(Methyl isothiazolinone:MIT、MI)、クロロメチルイソチアゾリノン(Chloromethyl isothiazolinone:CMIT、CMI、MCI)、ベンズイソチアゾリノン(Benzisothiazolinone:BIT)、オクチルイソチアゾリノン(Octylisothiazolinone:OIT、OI)、ジクロロオクチルイソチアゾリノン(Dichlorooctylisothiazolinone:DCOIT、DCOI)、ブチルベンズイソチアゾリノン(Butylbenzisothiazolinone:BBIT)、ポリヘキサメチレングアニジン(PHMG)などを挙げることができる。バイオサイドは、その含有量が限定されず、0.0001~0.05重量%、具体的には0.005~0.03重量%の含有量で添加できる。
この他にも、酸化剤、触媒、分散安定剤、研磨プロファイル改善剤、表面品質向上剤などが含まれることができる。
【0039】
酸化剤としては、無機又は有機過化合物が使用できる。過化合物は、一つ以上のペルオキシ基(-OO-)を含む化合物、又は最も高い酸化状態の元素を含む化合物である。一つ以上のペルオキシ基を含む化合物は、限定されないが、過酸化水素及びその付加物、例えば、尿素過酸化水素及び過炭酸塩、有機過酸化物、過酸化ベンジル、過酢酸、及びジ-t-ブチルペルオキシド、一過硫酸塩(SO5
=)、二過硫酸塩(S2O8
=)、及び過酸化ナトリウムがある。具体的に、酸化剤は過酸化水素であることができる。酸化剤は、10~100,000ppm、具体的には100~5000ppmを使用することができる。研磨対象がタングステン、アルミニウム、銅などの金属膜を含む場合、特に酸化剤が使用できる。前記酸化剤の含有量が10ppm未満とあまり少ない場合には、研磨速度が低下するという問題があり、前記酸化剤の含有量が100,000ppmを超える場合には、スクラッチが過度に発生するおそれがある。
【0040】
触媒は、タングステンなどの金属膜の研磨速度を向上させることができ、具体的には鉄含有触媒を挙げることができ、より具体的には硝酸鉄、塩化鉄などの鉄塩及びナノフェロシリコン(FeSi)よりなる群から選択された1種以上が使用できる。前記触媒の含有量は、スラリー組成物の総重量に対して、0.00001~1重量%、具体的には0.0001~0.5重量%であることができる。前記触媒の含有量が0.00001重量%未満とあまり少ない場合には、金属膜の研磨速度が低下するという問題があり、1重量%を超える場合には、化学的反応性が過剰であって研磨速度が不均一であるという問題がある。
【0041】
分散安定剤として、酢酸ナトリウム(Sodium Acetate)と酢酸(Acetic Acid)の組み合わせ、硫酸ナトリウム(Sodium Sulfate)と硫酸(Sulfuric Acid)の組み合わせ、クエン酸(Citric Acid)、グリシン(Glycine)、イミダゾール(Imidazole)、リン酸カリウム(Potassium Phosphate)などを挙げることができ、特に、酢酸ナトリウム(Sodium Acetate)と酢酸(Acetic Acid)の組み合わせ、又は硫酸ナトリウム(Sodium Sulfate)と硫酸(Sulfuric Acid)の組み合わせが共役酸、共役塩基の存在によりpH安定性に優れて分散性の維持に有利である。分散安定剤は、500ppm~8000ppm、具体的には600ppm~5000ppmの含有量で使用できる。
【0042】
研磨プロファイル改善剤は、研磨対象膜質の研磨後の平坦度を向上させるために含まれることができ、例えば、ピコリン酸(Picolinic Acid)、ピコリン(Picoline)、ジピコリン酸(Dipicolinic Acid)、ピリジン(Pyridine)、ピペコリン酸(Pipecolic acid)、キノリン酸(Quinolinic Acid)などを挙げることができ、研磨プロファイル改善剤の含有量は100~1000ppmの範囲であることができる。
【0043】
表面品質向上剤は、研磨後のウエハーに存在する欠陥(defect)、スクラッチ(scratch)を減らすための添加剤であって、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド(Alkyltrimethyl Ammonium Chloride)、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド(Dialkyldimethyl Ammonium Chloride)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(Hexadecyltrimethyl Ammonium Chloride)、アルキルジアンモニウムペンタメチルアンモニウムクロリド(Alkyl Diammonium Pentamethyl Ammonium Chloride)、ポリエチレングリコール(Polyethylene Glycol)、トリエチレングリコール(Triethylene Glycol)、ジエチレングリコール(Diethylene Glycol)、ポリ(エチレングリコール)ソルビトールヘキサノレート(Poly(ethylene glycol)Sorbitol Hexaoleate)、ポリエチレンソルビタントリオレエート(Polyoxyethylene Sorbitan Trioleate)、ヒドロキシエチルセルロース(Hydroxyethyl Cellulose)などを挙げることができ、その含有量は100~1000ppmの範囲であることができる。
【0044】
本発明の一実施例による研磨組成物の研磨対象は、限定されず、エポキシ(Epoxy)、アクリル(Acrylate)、ポリイミド(Polyimide)、ポリベンゾオキサゾール(Polybenzoxazole)などの有機絶縁膜、スピンオンカーボン(Spin on Carbon)、アモルファス炭素膜(Amorphous Carbon Layer)などの炭素含有膜質、銅、アルミニウム、タングステンなどの金属配線、及びこれらが同時に存在する複合膜を例として挙げることができる。前記複合膜の場合は、同時に研磨を行うこともできる。特に、表面電荷が0又は負電荷を有する金属膜、有無機ハイブリッド膜、又は高分子膜を研磨対象とする場合には、研磨効果に優れる。
【0045】
以下、実施例を介して具体的に説明する。
まず、実験条件は、次のとおりである。
1)実験ウエハー(Wafer):高分子膜(ポリイミド(Polyimide))12インチブランケット(Blanket)
2)研磨装備(ポリッシャー(Polisher)):AP-300(CTS社製)
3)研磨条件
4)研磨パッド(Pad):IC-1010(Rohm&Haas社製)
5)厚さ(研磨速度)測定装備
-金属膜:CMT-2000(4-point probe、(株)チャンミンTech.製)
-炭素膜、有機膜:ST-500(K-MAC)
ST-500(K-MAC)
-研磨速度=CMP前の厚さ-CMP後の厚さ
6)粒子サイズ(粒度)分析装備
-ELS-Z(大塚電子製)
7)pH分析装備
-Metrohm704(Metrohm製)
8)等電点測定方法
等電点を確認するための各サンプルとして1重量%の水分散液を準備する。準備された分散液を5重量%の硝酸(HNO
3)及び5重量%の水酸化カリウム(KOH)を用いてそれぞれpH2、3、4、5、6、7、8、9、10に調節した後、ゼータ電位(Zeta potential)を分析する。
等電点(IEP)は、それぞれのpHで分析されたゼータ電位(Zeta potential)をELS-Z programのpH analysisに入力すると、自動的に計算されて求められる。
9)逆滴定方法
化学機械研磨粒子を100ml溶液を基準に総100m
2の表面積を持つように水分散液として準備する。準備された水分散液のpH変化量が0.01mV/min以下となるまで攪拌及び安定化させる。安定化した水分散液に0.1モル濃度の硝酸(HNO
3)を5ml/minの速度でpH3になるまで滴加し、1次酸処理を行う。このとき、pH変化量は、0.5mV/min以下とする。1次酸処理が完了した後、前記安定化された水分散液のpH変化量が0.01mV/min以下となるまで再び攪拌及び安定化させる。酸処理及び安定化が完了した水分散液に0.1モル濃度の水酸化ナトリウム(NaOH)を5ml/minの速度でpH10になるまで滴加し、2次塩基滴定を完了する。このとき、pH変化量は0.5mV/min以下とする。前記行われたすべての過程の攪拌速度は200~300rpmの範囲とする。上記の過程を経て得られた塩基滴定グラフは、X軸を滴加された水酸化ナトリウム溶液の体積とし、Y軸を測定されたpH値とし、前記得られたpH変化グラフを微分して微分グラフを取得し、微分グラフ上のピーク(peak)の数、当該ピークのpKa値、当該ピークのpH値などを測定する。
10)表面-OH基密度測定方法
各サンプルに対する塩基滴定グラフから滴定溶液のH
+及びOH
-mol数の変化がない領域に対する0.1M NaOHの所要量(Y[mol])を求める。ここで、滴定用サンプルの初期量(X[ml])を割って、各サンプルの表面に吸着した[OH
-](A[mol/L])を求める。下記数式1から、各サンプルの表面に存在する-OH基の密度を算出する。
[数式1]
ここで、N
A[個/mol]はアボガドロ定数、S
BET[m
2/g]はシリカ粒子の比表面積、Cp[g/L]はシリカ粒子の濃度をそれぞれ示す。
11)表面電荷密度測定方法
各サンプルに対する塩基滴定グラフから、pHの変化による粒子表面の0.1M NaOH吸着量(B[mol/L])を求める。ファラデー定数を前記0.1M NaOH吸着量で割ると、pHによるシリカ粒子の表面電荷密度を算出することができる。上述したような過程は、下記数式2で表されることができる。
[数式2]
ここで、F[C/mol]はファラデー定数、S
BET[m
2/g]はシリカ粒子の比表面積、Cp[g/L]はサンプルの濃度をそれぞれ示す。
12)欠陥(Defect)測定方法
化学機械研磨後の電子顕微鏡写真(SEM)で基準面積内の欠陥(Defect)を観察して個数を測定し、ウエハーの全体面積だけ比例して欠陥の数を算出する。
13)平均スクラッチサイズ測定方法
化学機械研磨後の電子顕微鏡写真(SEM)にて、多数のポイントで基準面積内に存在するスクラッチのサイズを測定し、平均を出して平均スクラッチサイズを算出する。
14)研磨後不均一度(Non-Uniformity)測定方法
研磨後、各ポイント別除去速度(Removal Rate)を測定し、ポイント別除去速度の標準偏差を求めて不均一度を測定する。
15)Rq測定方法
研磨後のRq値は、中心線から表面の断面曲線までに相当する長さの絶対値の基準長さ内での二乗平均平方根(root-mean-square、rms)で定義され、原子間力顕微鏡(AFM)で測定して自動値を導出する。
16)使用されたシリカの種類
-コロイダルシリカ:TEOS basedで製造されたコロイダルシリカであって、pH7、平均粒度79nm(DLS)を使用する。
-ヒュームドシリカ:pH4.5、平均粒度190nm(DLS)を使用する。
【0046】
<実施例1~実施例5>
シリカ及びアルミニウム化合物を表1に示すような種類及び含有量で脱イオン水(DIW)に添加した後、改質反応のpH制御のために、表1に示すようにpH調節剤を添加した。その後、添加剤としてバイオサイドを添加し、常温、常圧の条件で6~24時間の間、機械攪拌機で攪拌して、アルミニウムクラスターでコーティングされた研磨粒子及び研磨組成物を製造した。
【0047】
製造された研磨組成物の固形分含有量、ゼータ電位、ポリイミド膜除去速度及びpKaを表2に示した。
【0048】
<比較例1~比較例3>
前記実施例において、表1に提示された相違点以外は同様にして実施した。
【0049】
【0050】
【0051】
表2の結果から分かるように、実施例は、比較例1の改質前のシリカに比べてゼータ電位及びポリイミド膜除去速度が上昇し、改質反応のpH条件が4.0~5.7の範囲内であるときに著しく優れた除去速度を示した。また、pH条件が増加するほど、ゼータ電位値が増加し、優れた除去速度を示した。特に、ゼータ電位値は、40mV以上であるときに著しく優れた。
【0052】
一方、改質反応のpH条件が本発明の一実施例の範囲から外れる場合(比較例2及び比較例3)、研磨組成物の粘度が急激に増加し、凝集が発生してCMP評価とゼータ電位(Zeta Potential)測定が不可能であった。
【0053】
<実施例6~実施例10、比較例1、比較例4~比較例6>
実施例4において、下記表3に異ならせて示したことを除いては同様にして実施した。等電点、pH4.2での平均粒度、pH4.2でのポリイミド膜除去速度、及びpKaを測定し、その結果を表4に示した。
【0054】
【0055】
【0056】
表4の結果から分かるように、アルミニウム化合物の含有量が増加するほど、改質前のシリカに比べて改質後のシリカの粒度が増加し、等電点が増加し、アルミニウム化合物の含有量が大きいほどポリイミド膜除去速度が増加した。アルミニウム化合物の含有量が0.5重量%~3重量%の範囲であるときに、特に優れた除去速度を示した。一方、アルミニウム化合物の含有量が4%以上であるときは、凝集が発生して測定が不可能であった。
【0057】
<実施例11~実施例15、比較例7>
実施例4において、下記表5に異ならせて示したことを除いては同様にして実施し、ゼータ電位、平均粒度、欠点(defect)、ポリイミド膜除去速度及びpKaを測定し、その結果を表6に示した。
【0058】
【0059】
【0060】
表6の結果より、改質シリカ研磨粒子の含有量が本発明の一実施例の範囲内にあるとき、優れたポリイミド膜除去速度を示し、研磨対象の研磨後の欠陥を著しく減らして優れた研磨品質を示したことが分かる。
【0061】
<実施例16~実施例17、比較例8>
実施例4において、下記表7に異ならせて示したことを除いては同様にして実施し、アモルファス炭素膜の研磨速度及びpKaを測定し、その結果を表8に示した。
【0062】
【0063】
【表8】
表8の結果より、実施例16及び実施例17は、比較例8の改質前のシリカに比べて著しく優れたアモルファス炭素膜の研磨速度を示したことが分かる。
【0064】
<実施例18及び比較例9>
実施例4において、下記表9に異ならせて示したことを除いては同様にして実施し、エポキシ膜研磨速度、アクリル膜研磨速度、研磨後の平均スクラッチサイズ及びpKaを測定し、その結果を表10に示した。
【0065】
【0066】
【表10】
表10の結果より、実施例18は、比較例9に比べて著しく優れた研磨速度を示し、平均スクラッチサイズが小さいことが分かる。
【0067】
<実施例19~実施例22>
実施例4において、バイオサイドを添加せずに、下記表11に異ならせて示したことを除いては同様にして実施し、研磨粒子の表面OH基密度、研磨粒子の表面電荷密度及びポリイミド膜の研磨速度を測定し、その結果を表12に示した。
【0068】
また、実施例19~実施例22の化学機械研磨粒子を、100ml溶液を基準に総100m
2の表面積を持つように水分散液として準備し、前述した逆滴定方法でpH変化グラフ及びその微分グラフを得た。その結果を
図1(実施例20)及び
図2(実施例21)に示し、pKa値及びpKa別の面積比を表12に示した。一方、実施例20のTEM写真を
図4に示した。
【0069】
<比較例10~比較例12>
実施例19において、下記表11に異ならせて示したことを除いては同様にして実施し、表面OH基密度、表面電荷密度及びポリイミド膜研磨速度を測定し、その結果を表12に示した。
【0070】
また、前記実施例19で説明された逆滴定方法と同様の方法で逆滴定してpH変化グラフを取得し、そのpH変化グラフを微分して微分グラフを取得した。その結果を
図3(比較例10)に示し、pKa値を表12に示した。一方、比較例10のTEM写真を
図5に示した。
【0071】
【0072】
【0073】
テストの結果、実施例19~22は、比較例と比較して、研磨粒子の表面OH基密度及び表面電荷密度が上昇し、ポリイミド膜の研磨速度が上昇した。これは、アルミニウムクラスター(Polynuclear Aluminum Cluster)でシリカ表面の一部又は全部がコーティングされたためであると判断される。つまり、研磨粒子の表面に、高い電荷を有するナノレベルのイオン塊であるアルミニウムクラスターが存在して、化学機械研磨速度が著しく向上するものと判断される。
【0074】
図4のTEM写真に示されているように、シリカ表面の約75%がアルミニウムクラスターでコーティングされたことが確認され、
図5の非コーティングシリカのTEM写真とは確然に異なることが確認される。
<実施例23~実施例29、比較例1>
【0075】
実施例4において、下記表13に異ならせて示したことを除いては同様にして実施し、スラリー組成物のpH経時変化、ポリイミド膜の研磨速度、研磨後の平坦度、平均粗さ(Rq)及びpKaを測定し、その結果を表14に示した。
【0076】
【0077】
【0078】
実施例23は、比較例1と同様に、スラリー組成物に他の添加剤をさらに追加しなかった。それにも拘らず、実施例23は、比較例1に比べてpH経時変化が少なく、優れた平坦度、表面粗さ及びポリイミド膜除去速度を示した。
【0079】
一方、研磨プロファイル改善剤を添加した実施例24及び実施例25は、平坦度がさらに改善された。分散剤を添加した実施例26及び実施例27は、pH経時変化がさらに少ないため優れた分散安定性及び保存安定性を示し、表面品質向上剤を添加した実施例28及び実施例29は、表面粗さが著しく低いため、優れた研磨後の膜質の表面品質を示した。
【0080】
<実施例30~実施例32、比較例13>
実施例3において、下記表15に異ならせて示したことを除いては同様にして実施し、銅金属膜研磨速度及びpKaを測定し、その結果を表15に示した。
【0081】
【0082】
表15より、実施例30は、比較例13に比べて著しく優れた銅金属膜除去速度を示したことが分かる。また、酸化剤として過酸化水素水をさらに添加した場合(実施例31)、銅金属膜除去速度が増加し、酸化剤と鉄含有触媒をさらに添加した場合(実施例32)、銅金属膜除去速度がさらに増加した。
【0083】
前述した各実施例で例示された特徴、構造、効果などは、実施例の属する分野における通常の知識を有する者によって他の実施例に対しても組み合わせ又は変形して実施可能である。よって、それらの組み合わせと変形に関わる内容も本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。