(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】欠陥検査システムおよび欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20231218BHJP
G01N 23/18 20180101ALI20231218BHJP
G01N 23/2251 20180101ALI20231218BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231218BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N23/18
G01N23/2251
G06T7/00 614
(21)【出願番号】P 2021566415
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050505
(87)【国際公開番号】W WO2021130839
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 実
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直明
(72)【発明者】
【氏名】嶺川 陽平
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-085482(JP,A)
【文献】特開2018-137275(JP,A)
【文献】国際公開第2014/119124(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 23/18
G01N 23/2251
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項8】
請求項5に記載の欠陥検査方法において、
前記欠陥弁別工程は、
前記画質改善工程において推定された前記検査画像における高画質画像と、前記画質
改善工程において推定された前記参照画像における高画質画像とを比較し、異常度を算出する演算工程を備え、
前記検査画像において、最も異常度が高くなる部位が、前記実欠陥部位として特定される、
欠陥検査方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか一つに記載の欠陥検査方法を計算機に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査システムおよび欠陥検査方法に関し、例えば半導体ウェハにおける欠陥を検査する欠陥検査システムおよび欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの製造では、それを製造するプロセスを迅速に立ち上げ、高歩留まりの量産体制に早期に移行させることが、収益確保のため重要である。この目的のために、製造ラインには、各種の検査装置、観察装置および計測装置等が導入されている。
【0003】
半導体ウェハは、例えば検査装置において、欠陥の検査が行われ、試料である半導体ウェハにおける欠陥の位置(部位)を示す座標情報が、欠陥座標として検査装置から出力される。検査装置から出力された欠陥座標は、欠陥を観察する観察装置である欠陥観察装置に供給される。欠陥観察装置においては、欠陥座標に基づいて半導体ウェハにおける欠陥位置を高解像度で撮像し、撮像画像を出力する。欠陥観察装置としては、走査型電子顕微鏡(以下、SEM(Scanning Electron Microscope)とも称する)を用いた観察装置(以下,レビューSEMとも称する)が広く使われている。
【0004】
レビューSEMによる観察作業は、半導体ウェハの量産ラインでは自動化することが望まれている。この場合、レビューSEMは、試料内の欠陥位置における画像を自動で収集する欠陥画像自動収集処理(以下、ADR(Automatic Defect Review)と称する)と,収集した欠陥画像を自動で分類する欠陥画像自動分類処理(以下、ADC(Automatic Defect Classification)と称する)とを搭載している。これにより、分類された欠陥画像を自動で得ることが可能となっている。
【0005】
検査装置が出力した欠陥座標には、誤差が含まれているため、ADRにおいては、検査装置から供給された欠陥座標を中心として、視野広く撮像を行い、この撮像により得られた画像から欠陥を再検出することが行われる。この再検出により得られた欠陥部位を、ADRは、高倍率で撮像し、高解像度の画像を、観察用画像として出力する。SEMによって撮像された画像(検査画像)から、欠陥を検出する方法として、欠陥部位と同一の回路パターンが形成されている領域を撮像した画像を参照画像とし、欠陥部位を撮像した検査画像と参照画像とを比較することで、検出する方法が知られている。
【0006】
また、ADRにおいて検出に係る処理パラメータを自動調整する方法として、ユーザによって予め教示された欠陥部位を検出可能な処理パラメータを探索する方法が、特許文献1に記載されている。また、欠陥部位を撮像した検査画像と複数枚の参照画像を用いて、欠陥とニュイサンス(虚報)を高精度に弁別可能な処理パラメータを探索する方法が、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-145275号公報
【文献】特開2014-145694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体製造においてはデバイスの性能向上や製造コスト低減のため、集積密度を高める試みが継続的に行われており、半導体ウェハ上に形成する回路パターン寸法の微細化が進められている。それに伴い、デバイスの動作に致命的となる欠陥の寸法も微小化する傾向にある。そのため、レビューSEMにおいても微小な欠陥を見落としなく再検出し、観察用画像を撮像することが求められている。また、半導体の製造工程は多様なものがあり、欠陥や回路パターンの外観は多岐にわたる。そのため、微小な欠陥を検出するためには観察対象の半導体ウェハの特徴に合わせて、検出に係る処理パラメータを調整することが重要となる。しかしながら、検出に係る処理パラメータの調整は、一般的に試行錯誤を要し、ユーザの作業負荷が増える要因となる。また、ユーザの熟練度に応じて処理パラメータ調整の結果が依存するため、熟練度が低いユーザが調整した場合、欠陥検出率の低下を引き起こす場合がある。
【0009】
特許文献1には、欠陥部位を検出可能な処理パラメータを探索する方法が記載されているが、予め欠陥部位をユーザが教示する必要がある。これに対し,特許文献2には、複数枚の参照画像と検査画像を比較することで、検査画像に含まれる欠陥部位を確度高く検出する方法が記載されている。しかしながら、検査画像または/および参照画像のSNR(Signal to Noise Ratio)が低い場合においては、欠陥部位を高い確度で抽出できるとは限らない。
【0010】
すなわち、欠陥の検出に係る処理パラメータを全自動で調整するには、検査画像における欠陥部位をSNRに依存せずに高い確度で自動抽出することが重要である。しかし、特許文献1および2のいずれにもこの問題についての言及がない。
【0011】
本発明の目的は、欠陥の検出に係る処理パラメータを全自動で調整することが可能な欠陥検査システムおよび欠陥検査方法を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0014】
欠陥検査システムは、試料を撮像する検出器を備えた欠陥検査装置と上位制御装置とを備える。ここで、上位制御装置は、欠陥を含むように欠陥検査装置によって撮像された検査画像と、欠陥部位を含まないように欠陥検査装置によって撮像された複数の参照画像とを取得し、取得された複数の参照画像のうちの所定の参照画像に、疑似欠陥部位が含まれるように編集して、疑似欠陥画像を生成し、疑似欠陥画像から、疑似欠陥部位を検出可能な初期パラメータを決定する。また、上位制御装置は、初期パラメータを用いて、検査画像から欠陥候補部位を取得し、検査画像および参照画像において、欠陥候補部位に相当する部位の画像から、高画質の画像を推定し、推定された検査画像および参照画像における高画質の画像を用いて、欠陥弁別を行い、検査画像における実欠陥部位を特定し、特定された実欠陥部位に近い部位を検出可能なパラメータを決定する。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、欠陥の検出に係る処理パラメータを全自動で調整することが可能な欠陥検査システムおよび欠陥検査方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る欠陥検査システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態に係る制御器、記憶器および演算器により実現される構成を示す図である。
【
図3】(A)~(C)は、実施の形態に係るSEMにおける検出器の配置を模式的に示す図である。
【
図4】検出装置により検出された半導体ウェハにおける欠陥座標の例を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態に係る処理パラメータ調整方法の処理を示す全体フローチャート図である。
【
図6】実施の形態に係る画像セット取得ステップにおいて実施される処理のフォローチャート図である。
【
図7】実施の形態に係る画質改善処理パラメータ調整ステップを説明するための図である。
【
図8】実施の形態に係る疑似欠陥画像を用いた処理パラメータ自動調整ステップにおいて実施される処理のフローチャート図である。
【
図9】実施の形態に係る疑似欠陥画像の例を模式的に示す図である。
【
図10】実施の形態に係る検査画像を用いた処理パラメータ自動調整ステップにおいて実施される処理のフローチャート図である。
【
図11】実施の形態に係る欠陥弁別により実欠陥部位を抽出するステップでの処理を示すフローチャート図である。
【
図12】実施の形態に係る実欠陥部位の抽出を説明するための模式図である。
【
図13】実施の形態に係る疑似欠陥画像を用いた処理パラメータ調整に関するGUIの画面である。
【
図14】実施の形態に係る検査画像を用いた処理パラメータ調整に関するGUIの画面である。
【
図15】実施の形態に係る疑似欠陥画像の生成に係わる処理パラメータを調整するためのGUIの画面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、発明を実施するための最良の形態を説明するための各図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
以下では、欠陥検査システムとして、半導体ウェハを試料とし、半導体ウェハの欠陥を検査するシステム(半導体ウェハ欠陥検査システム)を例にして説明する。また、半導体ウェハ欠陥検査システムにおける欠陥観察装置(半導体ウェハ欠陥観察装置)を例にして、実施の形態を説明する。欠陥検査システムは、検査装置からの欠陥座標に基づいて、試料を撮像する撮像装置を備えているが、以下の説明では、SEMを撮像装置として用いる場合を説明する。しかしながら、欠陥検査システムが備える撮像装置は、SEMに限定されず、SEM以外の撮像装置、例えばイオンなどの荷電粒子を用いた撮像装置であってもよい。
(実施の形態)
【0020】
図1は、実施の形態に係わる欠陥検査システムの構成を示すブロック図である。
図1において、1は欠陥検査システムを示している。欠陥検査システム1は、欠陥検査装置2と、欠陥検査装置2に結合され、欠陥検査装置2の制御等を行う上位制御装置3とを備えている。この実施の形態においては、欠陥検査装置2が、欠陥観察装置の場合を説明する。
【0021】
欠陥検査装置2は、種々の機器を備えているが、
図1には、説明に必要な機器のみが描かれている。すなわち、欠陥検査装置2は、半導体ウェハの画像を撮像するSEM101を備えている。上位制御装置3は、欠陥検査装置2の全体を制御する制御器102と、プログラムを含む情報を記憶する磁気ディスクや半導体メモリ等を備えた記憶媒体装置(記憶器)103と、記憶器103から読み出されたプログラムに従って演算を行う演算器104とを備えている。また上位制御装置3は、その外部に設けられた記憶媒体装置4との間で情報の入出力を行う外部記憶媒体入出力器(入出力IF)105と、ユーザとの間で情報の入出力を行うためのユーザインターフェース制御器(ユーザIF)106と、ネットワークを介して欠陥画像分類装置等と欠陥検査システム1との間の通信の制御を行うネットワークインターフェース器(ネットワークIF)107とを備えている。
【0022】
ユーザは、ユーザIF106に接続された入出力端末113を用いて、欠陥検査システム1に対して情報を入力するとともに、欠陥検査システム1から出力された情報を確認する。入出力端末113は、例えばキーボード、マウスおよびディスプレイ等によって構成されている。また、
図1において、5は、ネットワークIF107に接続された欠陥画像分類装置を示している。欠陥画像分類装置5によって分類された結果は、例えば他の上位制御装置(図示せず)に供給される。
【0023】
演算器104は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成され、記憶器103からのプログラムに従って動作する。また、制御器102は、例えばハードウェアまたはCPUによって構成される。制御器102がCPUによって構成されている場合、制御器102も、記憶器103からのプログラムに従って動作する。記憶器103には、例えば入出力IF105または/およびネットワークIF107を介して、記憶媒体装置4または/およびネットワークからプログラムが供給され、格納される。すなわち、演算器104および制御器102のCPUを動作させるプログラムは、記憶媒体装置4を媒体として提供、またはネットワークを介して配信される。
【0024】
図1では、上位制御装置3が、1個の場合が示されているが、上位制御装置3は複数個であってもよい。
【0025】
欠陥検査装置2を構成するSEM101は、試料である半導体ウェハ108が搭載される可動ステージ109と、半導体ウェハ108に電子ビームを照射するための電子源110と、半導体ウェハ108から発生した電子(二次電子や反射電子)を検出する検出器111と、電子ビームを半導体ウェハ108上に収束させる電子レンズ(図示せず)と、電子ビームを半導体ウェハ108上で走査するための偏向器112等を備えている。
【0026】
上記した制御器102、記憶器103、演算器104、入出力IF105、ユーザIF106およびネットワークIF107は、バス114に接続されており、バス114には、検出器111によって検出された情報が供給され、演算器104等によって処理される。バス114に接続された制御器102、記憶器103、演算器104、入出力IF105、ユーザIF106およびネットワークIF107を備えた上位制御装置3は、コンピュータ(計算機)と見なすことができる。この場合、可動ステージ109、偏向器112、検出器111等は、コンピュータによって制御され、試料に対する欠陥観察処理は、欠陥検査装置2からの情報をコンピュータがプログラムを実行することにより処理することで実現されていると見なすことができる。
【0027】
図2は、実施の形態に係わる制御器、記憶器および演算器により実現される構成を示す図である。
図1に示した記憶部103から読み出されたプログラムに従って、制御器102および演算器104が動作し、制御器102および演算器104に、
図2に示すような機器が構成(実現)されることになる。また、プログラムに従って制御器102および演算器104が動作することにより、記憶器103には、
図2に示すような3つの記憶部が形成されることになる。
【0028】
次に、制御器102および演算器104に実現される機器および記憶器103に形成される記憶部について、それぞれ説明する。
【0029】
プログラムに従って、制御器102には、ステージ制御器201、電子ビームスキャン制御器202および検出器制御器203が構成される。
【0030】
*ステージ制御器201は、可動ステージ109(
図1)の移動や停止の制御を行う制御部である。
【0031】
*電子ビームスキャン制御器202は、所定の視野内において電子ビームが照射されるように偏光器112(
図1)を制御する制御部である。
【0032】
*検出器制御器203は、電子ビームのスキャンに同期して検出器111(
図1)からの信号をサンプリングし、サンプリングされた信号のゲインやオフセット等を調整し、デジタル画像を生成する制御部である。
【0033】
記憶器103には、画像記憶部204、処理パラメータ記憶部205および観察座標記憶部206が形成される。
【0034】
*画像記憶部204は、検出器制御器203によって生成されたデジタル画像を付帯情報とともに記憶するとともに、演算器104によって生成された画像を記憶する記憶部である。
【0035】
*処理パラメータ記憶部205は、SEM101において撮像したときの条件(撮像条件)や欠陥検出に用いられる処理パラメータ等を記憶する記憶部である。
*観察座標記憶部206は、入力された観察対象の欠陥座標等を記憶する記憶部である。
【0036】
プログラムに従って、演算器104には、比較検査器207、疑似欠陥画像生成器208、画質改善器209欠陥弁別器210および処理パラメータ調整器211が構成される。
*比較検査器207は、検査画像内の欠陥部位を検出する検出機能部である。
【0037】
*疑似欠陥画像生成器208は、撮像した撮像画像の一部の領域を編集して、擬似的な欠陥画像を生成する疑似欠陥画像生成機能部である。
【0038】
*画質改善器209は、撮像画像の画質を改善する画質改善機能部である。SEM等の撮像装置の分解能やSNRによって、撮像画像の画質が低下することが考えられるため、後で説明するが、画質改善機能部によって、画質の改善が行われる。
【0039】
*欠陥弁別器210は、欠陥部位と、例えば製造ばらつきに起因するニュイサンスとを弁別する弁別機能部である。
【0040】
*処理パラメータ調整器211は、欠陥検査システム1において実行される欠陥検出処理に係わる処理パラメータを自動的に調整する処理パラメータ調整機能部である。この処理パラメータとしては、例えば欠陥と判定する際のしきい値等がある。
【0041】
図3は、実施の形態に係わるSEMにおける検出器の配置を模式的に示す図である。ここでは、5つの検出器301~305が、SEM101内に搭載されている場合が示されている。勿論、検出器の数はこれに限定されるものではなく、5つよりも多くても少なくてもよい。
【0042】
図3(A)は、SEM101を斜め方向から見た投影図であり、
図3(B)は、z軸方向から見た平面図であり、
図3(C)は、y軸方向から見た断面図である。
【0043】
図3(A)に示すように、検出器301および302は、y軸に沿った位置AおよびBに配置され、検出器303および304は、x軸に沿った位置CおよびDに配置されている。これらの検出器301~304は、特に制限されないが、z軸において同一の平面内に配置されている。検出器305は、z軸に沿い、検出器301~304が配置されたz軸の平面に比べて、半導体ウェハ108から離れた位置Eに配置されている。なお、
図3(B)および(C)では、検出器305は省略されている。
【0044】
検出器301~304は、特定の放出角度(仰角および方位角)をもつ電子を選択的に検出することができるように配置された複数の検出器を表している。すなわち、検出器301は、半導体ウェハ108から、y軸の進行方向(矢印の方向)に沿って放出された電子を検出することが可能であり、検出器302は、半導体ウェハ108から、y軸の後退方向(矢印に対し反転方向)に沿って放出された電子を検出することが可能である。同様に、検出器304は、x軸の進行方向に沿って放出された電子を検出可能であり、検出器303は、x軸の後退方向に沿って放出された電子を検出可能である。これにより、あたかもそれぞれの検出器に対して、対向方向から光を照射したかのようなコントラストのついた画像を取得することが可能となる。検出器305は、主に半導体ウェハ108から放出された電子を検出する検出器として機能する。このように、検出器を、異なる軸に沿って配置することにより、コントラストのついた画像を取得することが可能であるが、このような配置に限定されるものではなく、
図3とは異なる位置に検出器を配置するようにしてもよい。
【0045】
図4は、検出装置により検出された半導体ウェハにおける欠陥座標の例を模式的に示す図である。欠陥検査システム1には、別の検査装置(以下、事前検査装置とも称する)によって検出された欠陥座標が供給される。
図4には、この事前検査装置により検出された欠陥座標が示されている。
【0046】
図4において、WWは半導体ウェハを示し、DIはダイ(半導体チップ)を示している。また、×は、事前検査装置が検出した欠陥座標を示しており、欠陥検査システム1で見た場合、×は、観察対象となる観察座標を表している。
【0047】
この実施の形態に係わる欠陥検査システムは、事前検査装置からの欠陥座標を基にして、欠陥部位の高精細な画像を自動的に収集する機能を備える。この場合、事前検査装置から供給された欠陥座標には、誤差が含まれている。そのため、欠陥検査システム1では、事前検査装置から供給された欠陥座標を中心として、広い視野で画像(検査画像)を撮像し、欠陥部位を再検出し、再検出した欠陥部位を高倍率で撮像し、観察画像を取得する。
【0048】
図4に示すように、半導体ウェハWWには、複数のダイDIが形成されている。そのため、欠陥部位をもつダイに対して例えば隣接する他のダイDIを撮像すると、欠陥部位を含まない良品ダイDIの画像を取得することが可能である。後で説明するが、欠陥検査システム1における欠陥検出処理においては、この良品ダイDIの画像を参照画像として、検査画像との間で濃淡の比較が行われ、濃淡の異なる箇所が欠陥部位として検出される。欠陥部位として判定する濃淡の差を定めるしきい値が、欠陥検出処理のおける処理パラメータの一例である。
<欠陥検出処理の処理パラメータ調整>
【0049】
次に、欠陥検査システム1で実施される欠陥検出処理の処理パラメータ自動調整方法を説明する。先ず、処理パラメータ自動調整方法の全体を、図面を用いて説明し、次に処理パラメータ自動調整方法で実施される各ステップについて詳しく説明する。なお、後で述べる各ステップは、
図2に示した演算器104を構成する比較検査器207、疑似欠陥画像生成器208、画質改善器209、欠陥弁別器210および処理パラメータ調整器211により実施される。また、ステップを実施するのに際して、
図2に示した記憶器103および制御器102も用いられる。例えば、ステップを実施するのに際して、ステップで生成した情報は、記憶器103に記憶され、ステップで要求される情報は、記憶器103から読み出される。
【0050】
図5は、実施の形態に係わる処理パラメータ自動調整方法の処理を示す全体フローチャート図である。
【0051】
ステップS500_Sで、パラメータ自動調整を開始する。次にステップS501において、半導体ウェハを撮像し、処理パラメータを調整するのに用いる画像のセット(画像セット)を取得する。処理パラメータを調整するために、前記したように、検査画像と参照画像を用いるため、ステップS501では、これらの画像をセットとして取得する。
【0052】
ステップS501に続いて、ステップS502が実行される。ステップS502においては、
図2で示した画質改善器209で行われる画質改善処理に係わるパラメータの自動調整が実施される。
【0053】
次に、ステップS503において、
図2で示した疑似欠陥画像生成器208を用いて疑似欠陥画像を生成し、疑似欠陥画像を用いて処理パラメータの調整を行う。後で説明するが、ステップS503においては、疑似欠陥画像生成器208により生成した疑似欠陥の部位が記憶され、この疑似欠陥部位が検出可能な処理パラメータの探索が行われ、処理パラメータによって疑似欠陥部位が検出できるように調整される。ステップS503で実施される疑似欠陥を用いた処理パラメータ自動調整では、撮像した画像に含まれるノイズ、例えばショットノイズや回路パターンのエッジラフネス、表面ラフネス等を考慮しつつ、疑似欠陥部位を検出可能となるように、処理パラメータの調整が行われる。
【0054】
しかしながら、ステップS503において調整された処理パラメータでは、実際の欠陥部位を検出可能とは限らない。そこで、この実施の形態においては、疑似欠陥を用いて調整した処理パラメータを初期処理パラメータとし、初期処理パラメータを基にして、ステップS504(検査画像を用いた処理パラメータ自動調整)において、検査画像を用いて処理パラメータの調整を行い、最終的な処理パラメータを取得する。すなわち、ステップS503で調整された処理パラメータを初期値とし、この初期値を用いてステップS504でさらに処理パラメータを調整し、最終処理パラメータを取得する。
【0055】
その後、ステップS500_Eで処理パラメータ自動調整の処理を終了する。ステップS504で取得された最終処理パラメータは、他の半導体ウェハに対する欠陥観察処理において用いられる。
<<画像セット取得ステップS501>>
【0056】
図6は、実施の形態に係わる画像セット取得ステップにおいて実施される処理のフローチャート図である。この実施の形態に係わる処理パラメータ自動調整方法では、欠陥部位を含む検査画像と欠陥部位を含まない2枚の参照画像とが用いられる。
【0057】
ステップS501_Sにおいて、画像セット取得ステップS501を開始する。次に、欠陥部位を含むダイDI(
図4)と欠陥部位を含まない2つのダイDIに対して、サンプリングした調整用観察座標点iについて、画像を撮像する。ここで、欠陥部位を含むダイの画像が、検査画像となり、欠陥部位を含まないダイの画像が、参照画像となる。
【0058】
ステップS601において、欠陥部位を含まない2つのダイのうちの一方のダイについて、調整用観察座標iにおける画像を撮像する。このステップS601で撮像された画像が、調整用観察座標iにおける第1の参照画像Ri1となる。また、ステップS602では、欠陥部位を含まない2つのダイのうちの他方のダイについて、調整用観察座標iにおける画像を、第2の参照画像Ri2として撮像する。さらに、ステップS603では、欠陥部位を含むダイについて、調整用観察座標iにおける画像の撮像が行われる。ステップS603で撮像された画像が、調整用観察座標iにおける検査画像Tiとなる。
【0059】
次に、ステップS604において、検査画像Tiと例えば第1の参照画像Ri1とを比較する比較検査を行い、検査画像から欠陥部位を検出する。ステップS605では、ステップS604において検出した欠陥部位の高倍率の画像(高倍画像)Hiを撮像する。
【0060】
ステップS600_RSとS600_REは、調整用観察座標iを1からNまで変化させながら、ステップS600_RSとステップS600_REとの間に挟まれている前記ステップS601~S605を繰り返して実行することを表している。すなわち、調整用観察座標iを1からNに変化させながら、ステップS600~S605が繰り返し実行される。
【0061】
調整用観察座標i=Nでのステップが終了すると、ステップS501_Eが実行され、画像セット取得ステップが終了する。
【0062】
画像セット取得のステップS501では、処理パラメータの調整が行われていないため、予め設定したデフォルトの処理パラメータが用いられる。例えば、ステップS604において、比較検査を行う際のしきい値を定める処理パラメータとしては、デフォルトの処理パラメータが用いられる。デフォルトの処理パラメータであるため、高い欠陥検出率を得られない可能性がある。しかしながら、ここで取得する高倍画像Hiは、後のステップS502で実施される画質改善処理のパラメータ調整に用いるものであり,必ずしも欠陥が含まれていなくてもよい。
【0063】
なお、第1の参照画像と第2の参照画像を撮像する対象のダイは、半導体ウェハにおいて、欠陥部位を含まず、互いに異なる位置に配置されているダイであればよい。
<<画質改善処理パラメータ調整ステップS502>>
【0064】
図7は、実施の形態に係わる画質改善処理パラメータ調整ステップを説明するための図である。
【0065】
この実施の形態に係わる画質改善処理においては、画質が低い画像と画質が高い画像との対応関係を機械学習し、画質の低い画像から高い画像の推定が行われる。ここでは、画像セット取得ステップS501で撮像した検査画像のうち、例えばステップS605で得られた高倍画像Hiに対して画像処理を施し、撮像視野を拡大した画像を生成する。この撮像視野が拡大された画像が、画質の低い画像(低画質画像)として用いられる。一方、ステップS605で撮像した高倍画像が、画質の高い画像(高画質画像)として用いられる。低画質画像と高画質画像のそれぞれは、同じ欠陥部位と見なされる領域を含んでいるが、低画質画像は、撮像視野を拡大するような画像処理が施されているため、例えば高画質画像に比べて、ぼやけた画像となる。
【0066】
機械学習の実装方法としては、公知の深層学習を用いる。具体的には、畳み込みニューラルネットワークを用いればよい。具体的な一例を、
図7を用いて説明する。
図7には、3層構造を持つニューラルネットワークを用いた例が示されている。
【0067】
図7において、Yは入力となる低画質画像を示し、F(Y)は高画質画像の推定結果である。また、同図において、F1(Y)およびF2(Y)は、入力と推定結果との間の中間データを示している。中間データF1(Y)、F2(Y)と推定結果F(Y)は、式(1)~(3)によって算出される。ここで、*は畳み込み演算を示し、W1はn1個のc0×f1×f1サイズのフィルタを示し,c0は入力画像のチャネル数を示し,f1は空間フィルタのサイズを示す。
【0068】
入力画像Yにc0×f1×f1サイズのフィルタをn1回畳み込むことでn1次元の特徴マップが得られる。B1はn1次元のベクトルでありn1個のフィルタに対応したバイアス成分である。同様に、W2はn1×f2×f2サイズのフィルタ、B2はn2次元のベクトル、W3はn2×f3×f3サイズのフィルタ,B3はc3次元のベクトルである。
F1(Y)= max(0,W1*Y+B1) ・・・式(1)
F2(Y)= max(0,W2*F1(Y)+B2) ・・・式(2)
F(Y)= W3*F2(Y)+B3 ・・・式(3)
【0069】
前記したc0とc3は、低画質画像と高画質画像のチャネル数により決まる値である。また、f1、f2、n1、n2は学習シーケンス前にユーザが決定するハイパーパラメータであり、たとえばf1=9、f2=5、n1=128、n2=64とすれば良い。
【0070】
画質改善処理パラメータ調整のステップS502において、調整するパラメータは、W1、W2、W3、B1、B2およびB3である。撮像視野が拡大された前記低画質画像を入力とし、前記高画質画像を推定結果として、パラメータ(W1、W2、W3、B1、B2およびB3)を調整し、推定結果が前記高画質画像と整合するようなパラメータを、調整の結果として取得する。以下、画質改善処理パラメータ調整で調整するパラメータを、画質改善処理パラメータとも称する。
【0071】
この画質改善処理パラメータ調整においては、ニューラルネットワークの学習において一般的な誤差逆伝搬を用いれば良い。また、推定誤差を算出する際に、取得した学習用画像対(前記低画質画像および前記高画質画像)の全てを用いても良いが、ミニバッチ方式を取っても良い。すなわち、学習用画像対の中から数枚の画像をランダムに抜き出し、画質改善処理パラメータを更新することを繰り返し実行しても良い。さらには、ひとつ学習用画像対からパッチ画像をランダムに切り出し、ニューラルネットワークの入力画像Yとしても良い。これにより、学習を効率的に行える。なお、以上示した畳み込みニューラルネットワークの構成として他の構成を用いても良い。例えば,層の数を変更しても良く、4層以上のネットワークなどを用いても良いし、スキップコネクションを持つ構成にしても良い。
<<疑似欠陥画像を用いた処理パラメータ自動調整ステップS503>>
【0072】
図8は、実施の形態に係わる疑似欠陥画像を用いた処理パラメータ自動調整ステップにおいて実施される処理のフローチャート図である。
【0073】
ステップS503_Sにおいて、疑似欠陥画像を用いたパラメータ自動調整のステップを開始する。
【0074】
ステップS801において、調整用観察座標点iに対して、疑似欠陥の付与領域Piを設定する。付与領域Piは、撮像画像の面内において、中心位置およびそのサイズ(幅と高さ)をランダムに設定すればよい。例えば、調整用観察座標点iで指定される撮像画像の領域において、疑似欠陥の付与領域Piを設定する。
【0075】
次に、ステップS802において、画像セット取得のステップS501で取得した第1の参照画像Ri1における付与領域Piに対して画像の編集を行う。この画像編集により、付与領域Piに対して疑似欠陥(擬似的な欠陥陰影)を付与し、疑似欠陥が付与された画像を疑似欠陥画像Fiとして記憶する。
【0076】
調整用観察座標iを1からNまで変化させながら、ステップS800_RSとステップS800_REとの間に挟まれた前記ステップS801およびS802が繰り返し実行される。これにより、例えばN個の疑似欠陥画像Fiが記憶される。
【0077】
図9は、実施の形態に係わる疑似欠陥画像の例を模式的に示す図である。
図9において、901aおよび901bは、疑似欠陥が付与されていない第1の参照画像Ri1の例である。ここで、901aは、
図3で示した検出器305で検出した画像を示し、901bは、検出器301で検出した画像を示している。902a~905aおよび902b~905bは、参照画像901aおよび901bに疑似欠陥を付与したときの疑似欠陥画像を示している。
【0078】
疑似欠陥として、付与領域Piである領域PDの濃淡に、一定のオフセットを加えるように編集した場合が、疑似欠陥画像902aおよび902bに示されている。また、回路パターンのエッジを含むように、付与領域Pi(PD)を設定し、変形の処理を加えるようにした例が、疑似欠陥画像903aおよび903bとして示されている。
【0079】
また、検出器の特性(配置を含む)を模擬して、欠陥陰影が生成されるようにしてもよい。例えば、疑似欠陥画像904aおよび904bは、低段差欠陥を模擬したものである。すなわち、疑似欠陥画像904bにのみ、付与領域PI(PD)を設定し、疑似欠陥を付与している。このような欠陥は、凹凸を顕在化可能なように配置されている検出器301の特性を利用して検出することが可能である。すなわち、検出器301は、
図3で説明したように、x軸方向から放出される電子に対向した画像を撮像することが可能である。そのため、検出器305によって撮像された画像では検出することが困難な低段差も、検出器301によれば欠陥陰影として顕在化した検出することが可能である。このような疑似欠陥を付与するようにしてもよい。以上は微小もしくは低コントラストな欠陥を模擬したものであるが、疑似欠陥画像905aおよび905bに示すように、視野全面をカバーするような巨大欠陥を生成するようにしても良い。疑似欠陥の種類はこれらに限らず,様々な欠陥をモデリングし,生成するようにすれば良い。
【0080】
図8に戻って、疑似欠陥画像を用いた処理パラメータ自動調整の説明を続ける。記憶器103に記憶されている疑似欠陥画像Fiと、第2の参照画像Ri2と、探索すべき処理パラメータθjのセットが、ステップS803に供給されている。ステップS803では、処理パラメータθjを用いて、疑似欠陥画像Fiと第2の参照画像Ri2とを比較する比較検査が行われ、欠陥領域Oijが抽出される。
【0081】
次にステップS804において、ステップS803により抽出された欠陥領域Oijと疑似欠陥画像Fiにおける疑似欠陥領域Piとの一致度を比較し、欠陥の検出成否を判定する。この場合、例えば抽出された欠陥領域Oijと疑似欠陥領域Piとの重なりが、所定の値以上となっているとき、欠陥の検出に成功したものと判定する。
【0082】
探索すべき処理パラメータθjは、例えば1~Hであり、これらが1つの処理パラメータセットとなっている。ステップS800_jRSにおいて、例えば処理パラメータθjが1に設定されると、調整用観察座標点iが1からNに変化している間、ステップS800_iRSとステップS800_iREとの間に挟まれている前記ステップS803およびS804が繰り返し実行される。
【0083】
ステップS803およびS804が、N回実行されると、ステップS800_iREの次に、ステップS805が実行される。ステップS805では、ステップS803で用いた処理パラメータθi(i=1)での欠陥検出成功率が算出される。
【0084】
次にステップS800_jREにより、ステップS800_jRSに戻り、処理パラメータセットから次の処理パラメータθj(例えばJ=2)が選択される。この選択された処理パラメータθj(j=2)を用いて、前記した処理パラメータθj(j=1)のときと同様に、ステップS803および804が繰り返し実行される。
【0085】
処理パタメータセットθjの全ての処理パラメータが選択されると、ステップS800_jREの次に、ステップS806が実行される。ステップS806では、ステップS805で算出された処理パラメータθj(j=1~H)のそれぞれに対応する欠陥検出成功率の中から、欠陥検出成功率が最大の処理パラメータθjを選択し、初期処理パラメータθ1stとして出力する。その後、ステップS503_Eで、疑似欠陥画像を用いたパラメータ自動調整のステップが終了する。
<<検査画像を用いた処理パラメータ自動調整ステップS504>>
【0086】
図10は、実施の形態に係わる検査画像を用いた処理パラメータ自動調整ステップにおいて実施される処理のフローチャート図である。
【0087】
ステップS504_Sにおいて、検査画像を用いた処理パラメータ自動調整ステップが開始する。
【0088】
記憶器103に記憶されている検査画像Ti、第2の参照画像Ri2および初期処理パラメータθ1stは、ステップS1001に供給されている。
【0089】
ステップS1001においては、サンプリングした調整用観察座標iに対応する検査画像Tiと第2の参照画像Ri2とを、初期処理パラメータθ1stを用いて比較する比較検査が実行され、欠陥候補をM点抽出する。具体的には、初期処理パラメータθ1stをしきい値として、検査画像Tiと第2の参照画像Ri2とを比較し、異常度が高い上位M箇所の部位を抽出することが、ステップS1001において実行される。初期処理パラメータθ1stは、疑似欠陥を用いて調整することにより、疑似欠陥を検出可能なように調整された処理パラメータθjであるため、実際の検査画像Tiに含まれる実欠陥部位を検出可能であるとは限らない。しかしながら、欠陥候補としてM点のような複数の点を抽出することで、M点の中に実欠陥部位が含まれることが期待できる。言い換えるならば、初期処理パラメータθ1stを求めることにより、実欠陥部位を抽出するための対象数を低減して、検出に係る処理量の低減を図ることが可能である。
【0090】
次にステップS1002が実行される。ステップS1002においては、先に抽出したM点の欠陥候補について、欠陥か製造ばらつきを誤検出したニュイサンスかの弁別を行い、検査画像Tiの中から高い確度で実欠陥部位Qiを抽出する。このステップS1002については、次に図面を用いて詳しく説明する。
<<<欠陥弁別により実欠陥部位を抽出するステップS1002>>>
【0091】
図11は、実施の形態に係わる欠陥弁別により実欠陥部位を抽出するステップでの処理を示すフローチャート図である。また、
図12は、実施の形態に係わる実欠陥部位の抽出を説明するための模式図である。
【0092】
図12において、1201は撮像された検査画像Tiの模式的な平面図を示している。検査画像Tiには、
図10のステップS1001において、M=3点の欠陥候補が抽出された場合が示されている。すなわち、検査画像1201において、破線で囲まれた領域1202~1204が、欠陥候補部位として抽出された領域を示している。検査画像Tiは、画像を撮像する欠陥検査装置2において発生する誤差を吸収するために、視野が広く、画素サイズが大きく撮像される。また、ADRのスループットを向上させるために、半導体ウェハ108(
図1)をスキャンする回数が少なく、フレーム加算数が少なくなっており、検査画像TiにおけるSNRは低い。そのため、検査画像Tiから欠陥を直接的に高精度で弁別することは困難である。
【0093】
この実施の形態においては、欠陥候補部位1202~1204の画像を切り出し、切り出した欠陥候補部位1202~1204に対して画質改善処理を施して、高倍画像を推定し、推定された高倍画像を用いて、実欠陥部位の弁別が行われる。この場合、画質改善処理には、前記した画質改善処理パラメータ調整ステップS502で調整した画質改善処理パラメータを用いて、欠陥候補部位から対応する高倍画像を推定する。これにより、SNRの高い画像を用いて、欠陥を弁別することが可能となり、高精度の弁別を行うことが可能となる。
【0094】
なお、
図12において、1205a~1207aは、欠陥候補部位1202~1204を切り出し、拡大したSNRが低い欠陥候補部位の画像を示している。一方、1205b~1207bは、欠陥候補部位1202~1204を切り出し、画質改善処理を施して、推定されたSNRが高い欠陥候補部位の画像を示している。
【0095】
次に、前記したステップS1002で行われる具体的な処理を、
図11を用いて説明する。ステップS1002_Sで、欠陥弁別により実欠陥部位を抽出するステップを開始する。
【0096】
ステップS1101において、画質改善処理により、欠陥候補部位(領域)から高倍画像を推定する。このとき、欠陥候補領域の中心が、推定された高倍画像の中心となるように推定する。画質改善処理は、ステップS502で既に述べているので、詳細は省略するが、ステップS1101において用いる画質改善処理パラメータは、ステップS502で調整した画質改善処理パラメータを用いる。すなわち、予め学習されたニューラルネットワークの画質改善処理パラメータを用いて、欠陥候補部位を入力として、対応する高倍画像を、自動で推定することが可能となる。これにより、より正確に推定された高倍画像を取得することが可能であり、欠陥の弁別をより高精度にすることが可能である。
【0097】
この実施の形態においては、次のステップS1102において、第2の参照画像Ri2についても、同様に画質改善処理が施される。参照画像Ri2に対して施す画質改善処理の条件は、ステップS1101と同じであり、相異点は欠陥候補部位の代わりに参照画像Ri2が入力とされ、参照画像Ri2に対応する高倍画像が出力となることである。
【0098】
ステップS1102に次に、ステップS1103が実行される。ステップS1103においては、欠陥候補部位に対応する高倍画像と、参照画像に対応する高倍画像との比較が再実施され、再度の比較検査の結果に基づいて、異常度を再度算出する。
【0099】
ステップS1100_RSとS1100_REは、この2つのステップに挟まれた前記ステップS1101~S1103を、M(=3)回繰り返すことを表している。これにより、M点のそれぞれに対応する異常度が取得される。
【0100】
ステップS1104においては、M点に対応するM個の異常度から、異常度が最大のものを選択し、選択した異常度に対応する欠陥候補部位を実欠陥部位Qiとして弁別し、出力する。
【0101】
その後、ステップS1002_Eで、欠陥弁別により実欠陥部位を抽出するステップを終了する。
【0102】
この実施の形態においては、欠陥候補部位と参照画像の両方について、画質改善処理を施すことにより、それぞれに対応する高倍画像を生成する例を示したが、欠陥候補部位または参照画像について、対応する高倍画像を生成するようにしてもよい。しかしながら、両方の高倍画像を生成することにより、SNRが高い高倍画像間を比較することが可能であるため、より正確な異常度を算出することが可能である。
【0103】
図10に戻って、検査画像を用いた処理パラメータ自動調整ステップにおいて実施される処理の説明を続ける。
【0104】
図10において、ステップ1000_RSとS1000_REは、このステップ間に挟まれた前記ステップS1001とS1002とを、調整用観察座標点iを1からNまで変化させながら、繰り返すことを表している。これにより、調整用観察座標点i(i=1~N)のそれぞれに対応した実欠陥部位Qiが抽出される。
【0105】
実欠陥部位Qiが抽出されたあとは、欠陥検査システム1(
図1)で用いる処理パラメータθjを処理パラメータθJのセットから探索する処理が、ステップS1003~S1006、S1000_jRS、S1000_iRS、S1000_jREおよびS1000_jREによって実行される。この処理は、
図8で説明した疑似欠陥画像を用いた処理パラメータ調整と類似している。すなわち、
図10に示したステップS1003~S1006、S1000_jRS、S1000_iRS、S1000_jREおよびS1000_jREは、
図8に示したステップS803~S806、S800_jRS、S800_iRS、S800_jREおよびS800_jREに類似している。主な相異点は、疑似欠陥画像Fiの代わりに検査画像Tiが用いられることである。
【0106】
図10に示したステップS1003~S1006、S1000_jRS、S1000_iRS、S1000_jREおよびS1000_jREで実行される処理を、簡単に述べると次の通りである。
【0107】
予め設定された探索すべき処理パラメータθj(j=1~H)のセットを用いて,検査画像Ti(i=1~N)のそれぞれについて、第2の参照画像Ri2(i=1~N)との比較検査により欠陥領域Oijを検出する。そして、検出した領域Oiと実欠陥部位Qiの一致度を比較し、実欠陥の検出成否を判定する。以上を全ての検査画像Ti(i=1~N)について繰り返したのち、処理パラメータθjの欠陥検出成功率を算出する。そして、探索すべき処理パラメータθj(j=1~H)のセットの中から欠陥検出成功率が最大の処理パラメータθjを最終処理パラメータとして出力する。
【0108】
最終処理パラメータを出力した後、ステップS504_Eで検査画像を用いた処理パラメータ自動調整ステップが終了する。
【0109】
出力された最終処理パラメータは、記憶器103に記憶され、他の半導体ウェハを検査するときに共用される。すなわち、欠陥検査システムにおいて、例えば100枚の半導体ウェハを検査する場合、1枚の半導体ウェハを用いて、最終処理パラメータを求めた後で、この最終処理パラメータを基にして、残りの99枚の半導体ウェハに対して検査を実施する。言い換えるならば、複数の半導体ウェハにおいて、共通の最終処理パラメータをしきい値として、参照画像と検査画像との比較検査が実施される。
【0110】
この実施の形態においては、処理パラメータは、ユーザによる操作の介在無しで、最終処理パラメータに自動的に調整される。調整により得られた最終処理パラメータは、比較検査において、実欠陥部位または実欠陥部位に近い部位を検出可能な処理パラメータであるため、欠陥検査システム1によって、例えば100枚の半導体ウェハのそれぞれについて、実欠陥部位またはそれに近接した部位を検出することが可能となり、実欠陥部位またはそれに近接した部位の画像を、自動で撮像することが可能となる。
【0111】
前記したが、前記各ステップは、
図2に示した演算器104内の構成によって実現される。ステップでの処理と演算器104内の構成との対応関係の一例を述べると、次の通りである。
【0112】
疑似欠陥画像生成器208は、参照画像を編集して、疑似欠陥部位が含まれるようにされた疑似欠陥画像を生成するように機能する。初期パラメータ調整器211は、疑似欠陥画像から疑似欠陥部位を検出可能な初期パラメータを決定するように機能するとともに、特定された実欠陥部位に近い部位を検出可能な処理パラメータを決定するように機能する。また、比較検査器207は、欠陥部位を含むように撮像された検査画像に対して、処理パラメータを用いて欠陥候補部位を得るような比較を行うように機能する。画質改善器209は、検査画像および参照画像において、欠陥候補部位に該当する画像から高画質画像(高倍画像)を推定するように機能する。欠陥弁別器210は、高画質画像を用いて欠陥弁別を行い、検査画像における実欠陥部位を特定するように機能する。
【0113】
また、各ステップで撮像された画像は、記憶器103の画像記憶部204に記憶され、ステップの処理において要求されると、画像記憶部204に記憶されている画像を出力する。各種のパラメータについても、同様に処理パラメータ記憶部205と演算器104との間で読み書きされる。さらに、事前検査器によって検出された欠陥座標のような観察座標は、観察座標記憶部206と演算器104との間で読み書きされる。
<ユーザによる操作>
【0114】
ユーザは、
図1に示した入出力端末113を用いて、実施の形態に係わる欠陥検査システム1を操作する。実施の形態においては、ユーザは、GUI(Graphical User Interface)で欠陥検査システム1を操作する。
【0115】
図13は、実施の形態に係わる疑似欠陥画像を用いたパラメータ自動調整に関するGUIの画面である。画面において、インタフェース領域1301には、疑似欠陥画像の一覧(ID)がリスト表示されているとともに、各疑似欠陥画像における疑似欠陥の検出可否(Detection)が表示される。また、インタフェース領域1302には、選択された疑似欠陥画像(ID=F000003)が表示されている。
図13の場合、インタフェース領域1302において破線で囲まれた領域PDが疑似欠陥部位を示している。
【0116】
インタフェース領域1303には、調整後の処理パラメータが表示されている。また、このインタフェース領域1303のスライダーを変更することにより、処理パラメータを手動で調整することが可能となっている。
図13の例では、処理パラメータとして、#1~#6があり、1つの処理パラメータは、比較検査のときに用いるしきい値である。
【0117】
インタフェース領域1304は、生成される疑似欠陥画像のパラメータを調整するGUIを呼び出すボタンを示している。また、インタフェース領域1305は、生成された疑似欠陥画像を用いた処理パラメータ自動調整処理(前記したステップS803~S804の処理およびステップS805、S806の処理)を手動で呼び出すボタンである。インタフェース領域1306は、インタフェース領域1303において手動で調整されたパラメータを用いた場合の欠陥検出成功率を評価するボタンである。
【0118】
図14は、実施の形態に係わる検査画像を用いた処理パラメータ自動調整に関するGUIの画面である。インタフェース領域1401には、検査画像の一覧(ID)がリスト表示されているとともに、検査画像における実欠陥の検出成否(Run1、Run2)が表示されている。インタフェース領域1402には、選択された検査画像(ID=000003)および検出された実欠陥の領域が表示される。
図14の例では、破線で囲んだ領域PDが、実欠陥の領域を示している。
【0119】
インタフェース領域1403には、調整後の処理パラメータが表示されるとともに、スライダーを変更することにより、パラメータ(#1~#6)を手動で調整することが可能となっている。ここでも、1つの処理パラメータは、比較検査のときに用いるしきい値である。
【0120】
また、インタフェース領域1404は、実欠陥の領域を自動抽出する処理(ステップS1001~S1002の処理)を手動で呼び出すボタンを示し、インタフェース領域1405は、実欠陥の領域を追加するボタンを示し、インタフェース領域1406は、実欠陥の領域を削除するボタンを示している。
【0121】
インタフェース領域1407は、実欠陥を用いたパラメータ自動調整処理を手動で呼び出すボタンを示し、インタフェース領域1408は、インタフェース領域1403において手動で調整されたパラメータを用いた場合の欠陥検出成功率を評価するボタンを示している。
【0122】
図15は、実施の形態に係わる疑似欠陥画像の生成に係わるパラメータを調整するためのGUIの画面である。
図13で述べたインタフェース領域1304のボタンをクリックすることで、
図15に示すGUIの画面が呼び出される。
図15のGUI画面には、生成に用いる参照画像のIDを指定するインタフェース領域(生成元ID指定)および生成する欠陥の種類を指定するインタフェース領域(生成疑似欠陥オプション)を備えている。
【0123】
以上説明したように、実施の形態によれば、ユーザが欠陥部位を教示することなく、観察対象の半導体ウェハがあれば、全自動で欠陥検出処理の処理パラメータを調整することが可能となる。これにより、処理パラメータ調整に係るユーザの作業負荷を低減し、装置の使い勝手が向上する。また、処理パラメータの調整結果がユーザの熟練度に依存しなくなるため、安定して高い欠陥検出率を得ることが可能となる。また、SNRに依存せずに高い確度で、欠陥を検出することが可能となる。
【0124】
実施の形態では、
図5に示したように、疑似欠陥画像を用いた処理パラメータ自動調整のステップS503と検査画像を用いた処理パラメータ自動調整のステップS504の両方を実施する例を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、ステップS503およびS504のいずれか一方のみを実施するようにしてもよい。例えば、ステップS504を実施しない場合には、ステップS503で求めた調整後の処理パラメータを、最終処理パラメータとして用いればよい。また、ステップS503を実施しない場合には、例えばユーザが設定したパラメータを、ステップS503によって調整された処理パラメータと見なせばよい。このようにすることにより、ステップ数を少なくすることが可能であり、時間の短縮化を図ることが可能である。しかしながら、両方のステップを実施することにより、より高い確度で欠陥を検出することが可能であるため、ステップS503およびS504の両方を実施することが望ましい。
【0125】
図2に示した演算器104に設けられる比較検査器207、疑似欠陥画像生成器208、品質改善器209、欠陥弁別器210および処理パラメータ調整器211は、
図1に示した演算器104が対応するプログラムを実行することによって、実現される。このプログラムは、例えば磁気メモリや半導体メモリ等の記憶媒体4(
図1)に格納されて、記憶媒体4として提供されてもよいし、プログラム配信サーバによってネットワーク等を介して他の計算機に配信されてもよい。勿論、比較検査器207、疑似欠陥画像生成器208、画質改善器209、欠陥弁別器210および処理パラメータ調整器211の全てあるいは一部をプログラムではなく、ハードウェアによって実現してもよい。プログラムで実現することにより、汎用の機器を用いることが可能となる。なお、プログラム配信サーバは、上記説明した処理を実行するプログラムを格納した記憶媒体と、前述のネットワークに接続するネットワークIFと、ネットワークIFを介して記憶媒体に格納されたプログラムを他の計算機に送信するCPUと、を有する計算機であってもよい。
【0126】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。なお、図面に記載した各部材は、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な構成となる場合がある。また、上位制御装置は計算機であってもよい。そしてこのような計算機は欠陥検査装置と常に通信可能である必要はない。例えば画像をUSBメモリや他の計算機経由で当該計算機が受領してもよい。さらには決定したパラメータを欠陥検査装置に入力する場合も当該計算機が直接欠陥検査装置に設定してもよいが、計算機のユーザーインターフェースに表示させることで、欠陥検査装置の利用者が当該パラメータを設定してもよい。なお、ユーザインターフェースの表示処理は、モバイル計算機等、別な計算機で表示やそのための処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0127】
1 欠陥検査システム
2 欠陥検査装置
3 上位制御装置
101 SEM
102 制御器
103 記憶器
104 演算器
108 半導体ウェハ
111、301~305 検出器
207 比較検査器
208 疑似欠陥画像生成器
209 画質改善器
210 欠陥弁別器
211 処理パラメータ調整器
Fi 疑似欠陥画像
Hi 高倍画像
Ri1、Ri2 参照画像
S500 処理パラメータ自動調整のステップ
S501 画像セット取得のステップ
S502 画質改善処理パラメータ調整のステップ
S503 疑似欠陥画像を用いたパラメータ自動調整のステップ
S504 検査画像を用いた処理パラメータ自動調整のステップ
Ti 検査画像