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特許7404400平面コイルおよびこれを備える半導体製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】平面コイルおよびこれを備える半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/30 20060101AFI20231218BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20231218BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20231218BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20231218BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20231218BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20231218BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H01F27/30 160
H01F5/00 F
H01F27/28 147
H01F17/00 B
H01F41/04 C
H05H1/46 L
H01L21/31 C
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021574127
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2021003116
(87)【国際公開番号】W WO2021153697
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2020011717
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗石 猛
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-054117(JP,A)
【文献】特開2005-159301(JP,A)
【文献】特開2021-163944(JP,A)
【文献】特開平08-288463(JP,A)
【文献】国際公開第2004/108980(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/049270(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/30
H01F 5/00
H01F 27/28
H01F 17/00
H01F 41/04
H05H 1/46
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する基体と、
前記第1面の上に位置し、貫通穴を有する金属層と、
前記貫通穴に挿通され、前記金属層を前記基体の第1面側に固定する第1の固定具と、
有し、
前記金属層は、渦巻状または螺旋状のコイルであり、第1金属粒子および第2金属粒子を有し、前記第1金属粒子と前記第2金属粒子との間に位置する複数の空隙を有する、
平面コイル。
【請求項2】
前記金属層は、前記貫通穴を複数有し、
複数の前記貫通穴のそれぞれに挿通される複数の前記第1の固定具を備える、請求項1に記載の平面コイル。
【請求項3】
前記基体に凹部があって、該凹部内に前記第1の固定具の一方の端部がある、請求項1または請求項2に記載の平面コイル。
【請求項4】
前記凹部内に、接着層を有する、請求項3に記載の平面コイル。
【請求項5】
前記第1の固定具と前記貫通穴の間に、保護層を有する、請求項1~4のいずれか1つに記載の平面コイル。
【請求項6】
前記保護層が絶縁材である、請求項5に記載の平面コイル。
【請求項7】
前記保護層が樹脂である、請求項5または請求項6に記載の平面コイル。
【請求項8】
前記金属層から露出する前記保護層の端部に鍔がある、請求項7に記載の平面コイル。
【請求項9】
前記第1の固定具の他方の端部に鍔がある、請求項1~8のいずれか1つに記載の平面コイル。
【請求項10】
前記第1の固定具と前記貫通穴の間に、保護層を有し、
前記第1の固定具の鍔と、前記金属層または前記保護層の間に、第2の固定具を有し、該第2の固定具の外周は、第1の固定具の鍔よりも外側である、請求項9に記載の平面コイル。
【請求項11】
前記第2の固定具が絶縁材である、請求項10に記載の平面コイル。
【請求項12】
前記金属層は、前記第1面の上に複数の薄膜コイル導体をその厚み方向に遮蔽層を介し重ねて多層化して構成され、
前記薄膜コイル導体は空隙を有する、
請求項1~11のいずれか1つに記載の平面コイル。
【請求項13】
前記薄膜コイル導体は、第1金属粒子と、第2金属粒子と、を有しており、
前記空隙は、前記第1金属粒子と前記第2金属粒子との間に位置する、請求項12に記載の平面コイル。
【請求項14】
前記薄膜コイル導体は、さらに第3金属粒子を有しており、
前記薄膜コイル導体は、前記第1金属粒子と、前記第3金属粒子との間に溶着部を有している、請求項13に記載の平面コイル。
【請求項15】
前記薄膜コイル導体は、前記遮蔽層よりも厚みが厚い、請求項12~14のいずれか1つに記載の平面コイル。
【請求項16】
前記遮蔽層は空隙を有している、請求項12~15のいずれか1つに記載の平面コイル。
【請求項17】
前記遮蔽層は、第1遮蔽粒子と、第2遮蔽粒子と、を有しており、
前記空隙は、前記第1遮蔽粒子と前記第2遮蔽粒子との間に位置する、請求項16に記載の平面コイル。
【請求項18】
前記第1の固定具が絶縁材であってセラミックスである、請求項1~17のいずれか1つに記載の平面コイル。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1つに記載の平面コイルを、高周波電力用アンテナとして用いる、半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平面コイルおよびこれを備える半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置において、平面コイルが用いられている。例えば、特許文献1には、半導体となるウェハを加工するためのプラズマを発生させるために、コイルに10MHz~500MHzの高周波電力を供給することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-95521号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の平面コイルは、第1面を有する基体と、前記第1面の上に位置し、貫通穴および複数の空隙を有する金属層と、前記貫通穴に挿通され、前記金属層を前記基体の第1面側に固定する第1の固定具と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本開示の平面コイルの一例を第1面側から視た平面図である。
図2図2は、図1に示すS部における拡大図の一例を示す図である。
図3図3は、図1に示すS部における拡大図の一例を示す図である。
図4図4は、図1に示すS部における拡大図の一例を示す図である。
図5図5は、図1に示すS部における拡大図の一例を示す図である。
図6図6は、図1のA-A’線における断面図の一例を示す図である。
図7図7は、図1のA-A’線における断面図の他の例を示す図である。
図8図8は、本開示の平面コイルの他の例の部分断面図である。
図9図9は、本開示の平面コイルの他の例の部分断面図である。
図10図10は、本開示の平面コイルの他の例の部分断面図である。
図11図11は、本開示の平面コイルの他の例の部分断面図である。
図12図12は、本開示の半導体製造装置の断面図である。
図13図13は、本開示の平面コイルの製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の平面コイルおよびこれを備える半導体製造装置について、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0007】
半導体製造装置において、平面コイルが用いられている。例えば、半導体となるウェハを加工するためのプラズマを発生させるために、コイルに10MHz~500MHzの高周波電力を供給する技術が開示されている。
【0008】
一方で、コイルに高周波電力を供給した場合、コイルが発熱し、それに伴って熱膨張するため、コイルが基体に安定して保持されない。
【0009】
そこで、上述の問題点を克服し、平面コイルにおいて信頼性を向上させることができる技術の実現が期待されている。
【0010】
本開示の平面コイル10は、図1および図6に示すように、第1面1aを有する基体1を有する。また、平面コイル10は、第1面1a上に位置する金属層2を有する。
【0011】
そして、図2図5に示すように、金属層2は、複数の空隙3を有している。そのため、金属層2は、空隙のない金属層に比べ表面積が大きい。したがって、平面コイル10は高い放熱性を有する。
【0012】
そして、図1および図6に示すように、金属層2は貫通穴2aを有する。そして、平面コイル10は、かかる貫通穴2aに挿通される第1の固定具8を有する。第1の固定具8は、基体1の第1面1a側に固定されることにより、金属層2を基体1の第1面1a側に固定する。そのため、金属層2は基体1に安定して保持される。したがって、平面コイル10は信頼性が高い。
【0013】
また、図2および図3に示すように、金属層2は、第1金属粒子4と、第2金属粒子5と、を有していてもよい。空隙3は、第1金属粒子4と第2金属粒子5との間に位置していてもよい。このような構成を有する場合、第1金属粒子4および第2金属粒子5で生じた熱が空隙3に吸収されるため、平面コイル10は高い放熱性を有する。
【0014】
ここで、金属層2を構成する第1金属粒子4および第2金属粒子5の材質は、例えば、ステンレスまたは銅であってもよい。
【0015】
また、図2および図3に示すように、第1金属粒子4および第2金属粒子5の形状は、例えば、球状、粒状、ウィスカ状または針状であってもよい。第1金属粒子4および第2金属粒子5がウィスカ状または針状である場合は、第1金属粒子4および第2金属粒子5は屈曲していてもよい。第1金属粒子4および第2金属粒子5は、角部を有していてもよい。
【0016】
また、第1金属粒子4および第2金属粒子5が球状または粒状である場合、第1金属粒子4および第2金属粒子5の長手方向の長さは0.5μm以上200μm以下であってもよい。第1金属粒子4および第2金属粒子5がウィスカ状または針状である場合、直径は1μm以上100μm以下であってもよく、長さが100μm以上5mm以下であってもよい。
【0017】
図2においては、第1金属粒子4および第2金属粒子5が粒状である。図3においては、第1金属粒子4および第2金属粒子5がウィスカ状である。
【0018】
また、金属層2の平均厚みは、1μm以上5mm以下であってもよい。
【0019】
また、貫通穴2aの大きさは、基体1の第1面1aと平行して平面視した際に、直径が1mm以上15mm以下であってもよい。
【0020】
また、金属層2の気孔率は、例えば、10%以上90%以下であってもよい。気孔率は、金属層2において空隙3が占める割合を表す指標となる、ここで、金属層2の気孔率は、例えば、アルキメデス法を用いて測定することで算出すればよい。
【0021】
また、金属層2は、図4および図5に示すように、第1面1aの上に複数の薄膜コイル導体2bをその厚み方向に遮蔽層2cを介して重ねて多層化し、構成されていてもよい。これにより、金属層2に高周波電力を流しても遮蔽層2cによって隣接する薄膜コイル導体2b同士が干渉することを抑制できる。
【0022】
なお、図4および図5の例では、薄膜コイル導体2bが最も基体1側にあるような構造を示しているが、遮蔽層2cが最も基体1側にあるような構造であってもよい。
【0023】
そして、本開示の平面コイル10は、薄膜コイル導体2bが空隙3aを有している。そのため、薄膜コイル導体2bは、空隙のない薄膜コイル導体に比べ表面積が大きい。したがって、平面コイル10は高い放熱性を有する。
【0024】
また、図4および図5に示すように、薄膜コイル導体2bは、第1金属粒子4aと、第2金属粒子5aと、を有していてもよい。そして、空隙3aは、第1金属粒子4aと第2金属粒子5aとの間に位置していてもよい。このような構成を有する場合、第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aで生じた熱が空隙3aに吸収されるため、平面コイル10は高い放熱性を有する。
【0025】
ここで、薄膜コイル導体2bを構成する第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aの材質は、例えば、ステンレスまたは銅であってもよい。
【0026】
また、図4および図5に示すように、第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aの形状は、例えば、球状、粒状、ウィスカ状または針状であってもよい。第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aがウィスカ状または針状である場合は、第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aは屈曲していてもよい。第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aは、角部を有していてもよい。
【0027】
また、第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aが球状または粒状である場合、第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aの長手方向の長さは0.5μm以上200μm以下であってもよい。第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aがウィスカ状または針状である場合、直径は1μm以上100μm以下であってもよく、長さが100μm以上5mm以下であってもよい。
【0028】
図4においては、第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aが粒状である。図5においては、第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aがウィスカ状である。
【0029】
また、薄膜コイル導体2bの気孔率は、例えば、10%以上90%以下であってもよい。気孔率は、薄膜コイル導体2bにおいて空隙3aが占める割合を表す指標となる。ここで、薄膜コイル導体2bの気孔率は、例えば、アルキメデス法を用いて測定することで算出すればよい。
【0030】
また、図4および図5に示すように、薄膜コイル導体2bは、第3金属粒子6aを有していてもよい。薄膜コイル導体2bは、第1金属粒子4aと、第3金属粒子6aとの間に溶着部7aを有していてもよい。
【0031】
第1金属粒子4aと第3金属粒子6aとが単に接するのではなく、溶着しているため、第1金属粒子4aと第3金属粒子6aとの間で熱が伝わりやすい。そのため、薄膜コイル導体2b全体として高い熱伝導効率を有する。したがって平面コイル10は、高い信頼性を有する。
【0032】
また、本開示の平面コイル10は、薄膜コイル導体2bが遮蔽層2cよりも厚みが厚くてもよい。このような構成を有する場合、金属層2の内部において、薄膜コイル導体2bの領域が増えることから、電気効率が良くなる。
【0033】
ここで、薄膜コイル導体2bの厚みは10μm以上300μm以下、遮蔽層2cの厚みは0.1μm以上500μm以下であってもよい。金属層2の厚みは0.5mm以上5mm以下であってもよく、この厚みの範囲内で薄膜コイル導体2bと遮蔽層2cを重ねることができる。
【0034】
また、図4および図5に示すように、遮蔽層2cは、第1遮蔽粒子4bと、第2遮蔽粒子5bと、を有していてもよい。また、第1遮蔽粒子4bと第2遮蔽粒子5bとの間には、空隙3bが位置していてもよい。このような構成を有する場合、薄膜コイル導体2bで発生した熱が、第1遮蔽粒子4bおよび第2遮蔽粒子5bを伝い、空隙3bに吸収されるため、平面コイル10は高い放熱性を有する。
【0035】
ここで、遮蔽層2cを構成する第1遮蔽粒子4bおよび第2遮蔽粒子5bの材質は、例えば、絶縁材または薄膜コイル導体2bよりも磁性を有するものである。絶縁材としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化珪素などのセラミックス、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、シリコーン、エポキシ、フッ素系などの樹脂、ホウ硅酸系または珪酸系などのガラスである。
【0036】
また、薄膜コイル導体2bよりも磁性を有するものとしては、例えば、薄膜コイル導体2bがステンレスまたは銅であるならば、ニッケルまたは鉄である。なお、絶縁材と磁性を有するものを混ぜあわせてもよく、例えば、ニッケル粉または鉄粉を、ポリイミド樹脂に混ぜあわせてもよい。
【0037】
また、図4および図5に示すように、第1遮蔽粒子4bおよび第2遮蔽粒子5bの形状は、例えば、球状、粒状、ウィスカ状または針状であってもよい。第1遮蔽粒子4bおよび第2遮蔽粒子5bがウィスカ状または針状である場合は、第1遮蔽粒子4bおよび第2遮蔽粒子5bは屈曲していてもよい。第1遮蔽粒子4bおよび第2遮蔽粒子5bは、角部を有していてもよい。
【0038】
また、第1遮蔽粒子4bおよび第2遮蔽粒子5bが球状または粒状である場合、第1遮蔽粒子4bおよび第2遮蔽粒子5bの長手方向の長さは0.5μm以上200μm以下であってもよい。第1遮蔽粒子4bおよび第2遮蔽粒子5bがウィスカ状または針状である場合、直径は1μm以上100μm以下であってもよく、長さが100μm以上5mm以下であってもよい。
【0039】
図4においては、第1遮蔽粒子4bおよび第2遮蔽粒子5bが粒状である。図5においては、第1遮蔽粒子4bおよび第2遮蔽粒子5bがウィスカ状である。
【0040】
また、遮蔽層2cの気孔率は、例えば、10%以上90%以下であってもよい。気孔率は、遮蔽層2cにおいて空隙3bが占める割合を表す指標となる。ここで、遮蔽層2cの気孔率は、例えば、アルキメデス法を用いて測定することで算出すればよい。
【0041】
また、図4および図5に示すように、遮蔽層2cは、第3遮蔽粒子6bを有していてもよい。遮蔽層2cは、第1遮蔽粒子4bと、第3遮蔽粒子6bとの間に溶着部7bを有していてもよい。
【0042】
第1遮蔽粒子4bと第3遮蔽粒子6bとが単に接するのではなく、溶着しているため、第1遮蔽粒子4bと第3遮蔽粒子6bとの間で熱が伝わりやすい。そのため、遮蔽層2c全体として高い熱伝導効率を有する。したがって平面コイル10は、高い信頼性を有する。
【0043】
また、図1に示すように、基体1は、板状であってもよい。また、金属層2は、基体1の第1面1a上に、蛇行状または渦状に位置していてもよい。また、金属層2は、基体1の第1面1a上に、どのような配置で位置していてもよい。
【0044】
また、本開示の平面コイル10における基体1は、セラミックスであってもよい。セラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム質セラミックス(サファイア)、炭化珪素質セラミックス、コージェライト質セラミックス、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックスまたはムライト質セラミックス等が挙げられる。
【0045】
基体1が酸化アルミニウム質セラミックスからなるならば、加工性に優れ、かつ安価である。ここで、例えば、酸化アルミニウム質セラミックスとは、セラミックスを構成する全成分100質量%のうち、酸化アルミニウムを70質量%以上含有するものである。そして、本開示の平面コイル10における基体1の材質は、以下の方法により確認することができる。
【0046】
まず、X線回折装置(XRD)を用いて、基体1を測定し、得られた2θ(2θは、回折角度である。)の値よりJCPDSカードを用いて同定を行なう。次に、蛍光X線分析装置(XRF)を用いて、含有成分の定量分析を行なう。
【0047】
そして、例えば、上記同定により酸化アルミニウムの存在が確認され、XRFで測定したアルミニウム(Al)の含有量から酸化アルミニウム(Al)に換算した含有量が70質量%以上であれば、酸化アルミニウム質セラミックスである。なお、他のセラミックスに関しても、同じ方法で確認できる。
【0048】
また、本開示の平面コイル10における基体1は、磁性体であってもよい。
【0049】
磁性体とは、磁性を有するか、または、外部磁場によって磁性を有するものである。磁性体として、例えば、フェライト、鉄、ケイ素鉄、鉄-ニッケル系合金および鉄-コバルト系合金が挙げられる。鉄-ニッケル系合金の例としてはパーマロイが挙げられる。また、鉄-コバルト系合金の例としてはパーメンデユールが挙げられる。なお、基体1が磁性体である場合、磁心(コア)として使用してもよい。
【0050】
また、図6に示すように、本開示の平面コイル10は、金属層2が貫通穴2aを複数有し、かかる複数の貫通穴2aそれぞれに配置される複数の第1の固定具8を有してもよい。このような構成を有する場合、金属層2がより安定して保持されるため、信頼性を高めることができる。
【0051】
また、本開示の平面コイル10は、図6に示すように、基体1の第1面1aに凹部1bがあって、凹部1b内に第1の固定具8の一方の端部8aがあってもよい。このような構成を有する場合、第1の固定具8が安定するため、信頼性を高めることができる。なお、第1の固定具8の一方の端部8aは、凹部1bにおいて嵌合または螺合で固定されてもよい。
【0052】
また、本開示の平面コイル10は、図6に示すように、凹部1b内に、接着層9を有してもよい。このような構成を有する場合、第1の固定具8がより安定するため、信頼性を高めることができる。例えば、接着層9の材質としては、有機系接着剤または無機系接着剤などがあり、有機系接着剤ならば、シリコーン系、イミドアミド系、エポキシ系などであり、無機系接着剤ならば、ガラス系、金属ろう系などである。
【0053】
また、図7は、図1のA-A’線における断面図の他の例を示す図である。図7に示すように、本開示の平面コイル20は、基体1の内部に流路1cを有してもよい。このような構成を有するため、流路1cに温調媒体を流した場合、平面コイル20を冷却することができるので、信頼性を高くすることができる。また、流路1cに、温調媒体ではなく、半導体を製造する際のプロセスガスを流しても構わない。
【0054】
また、図8は、本開示の平面コイルの他の例の部分断面図である。本開示の平面コイル30は、図8に示すように、第1の固定具8と金属層2との間に、保護層11を有してもよい。このような構成を有する場合、金属層2が発熱による膨張と冷却による収縮を繰り返したとしても、金属層2が第1の固定具8に当たらず、金属層2が損傷することはないので、信頼性を高めることができる。
【0055】
また、本開示の平面コイル30は、保護層11が絶縁材であってもよい。このような構成を有する場合、第1の固定具8に電気が流れず、電界集中が生じにくくなり、信頼性を高めることができる。
【0056】
また、本開示の平面コイル30は、保護層11が樹脂であってもよい。このような構成を有する場合、金属層2が保護層11によって傷つくことが無いので、信頼性を高めることができる。例えば、保護層11の材質としては、シリコーン系樹脂、イミドアミド系樹脂、フッ素系樹脂などであってもよい。
【0057】
また、本開示の平面コイル30は、第1の固定具8の他方の端部8bに鍔8cがあってもよい。このような構成を有する場合、鍔8cが、金属層2または保護層11を基体1と挟み込む形態となるので、金属層2または保護層11をより安定して保持できることから、信頼性を高めることができる。
【0058】
また、図9は、本開示の平面コイルの他の例の部分断面図である。本開示の平面コイル40は、第2の固定具12が、第1の固定具8の鍔8cと金属層2または保護層11の間にあり、第2の固定具12の外周12aは第1の固定具8の鍔8cより外側にある。このような構成を有する場合、第2の固定具12によっても金属層2または保護層11をより安定して保持できるので、信頼性を高めることができる。
【0059】
また、本開示の平面コイル40は、第2の固定具12が絶縁材であってもよい。このような構成を有する場合、第2の固定具12に電気が流れないうえに、第1の固定具8にも電気が流れないので、異常な加熱を生じないので、放熱性を高めることができる。
【0060】
例えば、第2の固定具12の材質としては、ガラス、樹脂、セラミックスなどであってもよい。樹脂ならば、シリコーン樹脂、イミドアミド樹脂、フッ素樹脂など、セラミックスならば、酸化アルミニウム質セラミックス(サファイア)、炭化珪素質セラミックス、コージェライト質セラミックス、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックスまたはムライト質セラミックスなどであってもよい。
【0061】
また、本開示の平面コイル40は、第1の固定具8が絶縁材であるセラミックスであってもよい。このような構成を有する場合、第1の固定具8の機械的強度が高く、電気が流れないので、電界集中が生じにくく、信頼性を高めることができる。
【0062】
また、図10は、本開示の平面コイルの他の例の部分断面図である。図10に示す平面コイル50には、図4および図5に示した薄膜コイル導体2bと遮蔽層2cを交互に重ね合わせた金属層2が用いられている。
【0063】
そして、図10に示す平面コイル50は、上述した平面コイル30、40と同様に、第1の固定具8と金属層2との間に、保護層11を有してもよい。このような構成を有する場合、金属層2が高周波給電によって微細に振動したとしても、金属層2が第1の固定具8に当たらず、金属層2が損傷することはないので、信頼性を高めることができる。
【0064】
また、本開示の平面コイル50は、保護層11が薄膜コイル導体2bよりも柔らかい材質(たとえば、樹脂など)であってもよい。このような構成を有する場合、金属層2の薄膜コイル導体2bが保護層11との摩擦によって傷つくことが無いので、信頼性を高めることができる。例えば、保護層11の材質としては、シリコーン系樹脂、イミドアミド系樹脂、フッ素系樹脂などであってもよい。
【0065】
また、本開示の平面コイル50は、図10に示すように、遮蔽層2cが金属層2の最下層(すなわち、基体1との界面)に配置されてもよい。このような構成を有する場合、金属層2が高周波給電によって微細に振動したとしても、薄膜コイル導体2bが基体1に当たらず、薄膜コイル導体2bが損傷することはないので、信頼性を高めることができる。
【0066】
また、本開示の平面コイル50は、遮蔽層2cが薄膜コイル導体2bよりも柔らかい材質(たとえば、樹脂など)であってもよい。このような構成を有する場合、薄膜コイル導体2bの微細振動を遮蔽層2cにおいて吸収することができ、金属層2の薄膜コイル導体2bが基体1との摩擦によって傷つくことが無いので、信頼性を高めることができる。
【0067】
例えば、遮蔽層2cの材質としては、例えば、絶縁材または薄膜コイル導体2bよりも磁性を有するものである。絶縁材としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化珪素などのセラミックス、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、シリコーン、エポキシ、フッ素系などの樹脂、ホウ硅酸系または珪酸系などのガラスなどであってもよい。なお、遮蔽層2cの材質は、保護層11の材質と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
また、薄膜コイル導体2bよりも磁性を有するものとしては、例えば、薄膜コイル導体2bがステンレスまたは銅であるならば、ニッケルまたは鉄である。
【0069】
また、図10の例において、遮蔽層2cの材質は、絶縁材または薄膜コイル導体2bよりも磁性を有するものであってもよいし、絶縁材または薄膜コイル導体2bよりも磁性を有するものと、樹脂との混合体であってもよい。例えば、ニッケル粉または鉄粉を、ポリイミド樹脂に混ぜあわせてもよい。
【0070】
このように、絶縁材または薄膜コイル導体2bよりも磁性を有するものと、樹脂との混合体で遮蔽層2cを構成することにより、遮蔽効果と柔軟性とを両立させることができる。
【0071】
また、本開示の平面コイル50は、遮蔽層2cが金属層2の最上層に配置されてもよい。このような構成を有する場合、異物などが金属層2に付着したとしても、かかる異物が薄膜コイル導体2bに当たらず、薄膜コイル導体2bが損傷することはないので、信頼性を高めることができる。
【0072】
また、本開示の平面コイル50は、遮蔽層2cのほうが薄膜コイル導体2bよりも厚くてもよい。このような構成を有する場合、金属層2において薄膜コイル導体2bが高周波給電によって微細に振動することを厚い遮蔽層2cによって抑制することができる。
【0073】
また、本開示の平面コイル50は、金属層2の最上層から露出する保護層11の端部に鍔11aがあってもよい。このような構成を有する場合、鍔11aが、金属層2を基体1と挟み込む形態となるので、金属層2をより安定して保持できることから、信頼性を高めることができる。なお、図11に示すように、保護層11には鍔11aが無くてもよい。
【0074】
また、図12は、本開示の半導体製造装置の断面図である。チャンバ100内に、静電チャック200と、冷却部材300と、が備えられている。冷却部材300が導電体であるか、または導電体をコーティングされることによって、高周波電極の下部電極として使用することができる。また、静電チャック200にはウェハWが固定されている。
【0075】
また、チャンバ100には、プロセスガスがチャンバ100に入るガス流入口100aと、プロセスガスがチャンバ100から流出するガス流出口100bとがある。
【0076】
そして、チャンバ100には、平面コイル10が備えられているが、本開示の半導体製造装置400は、平面コイル10,20,30,40,50,60を、高周波電力用アンテナとして用いてもよい。このような構成を有するために、平面コイル10,20,30,40,50,60が高い放熱性を有し、信頼性が高いので、高周波電力用アンテナを上部電極としてプラズマ処理を行った場合、安定して半導体を製造することができる。
【0077】
次に、本開示の平面コイルの製造方法の一例について説明する。
【0078】
まず、基体1を用意する。なお、基体1は流路1cを有してもよい。また、基体1は凹部1bを有してもよい。
【0079】
次に、金属層2を別途準備する。まず、例えば、ステンレスまたは銅からなる複数の金属粒子を水等の液体に混合した混合液を用意し、金属層2の形状をした型に流し込む。次に、混合液を蒸発させる。次に、所定の圧力で加圧し、加熱するか、超音波振動を与えることにより、第1金属粒子4および第2金属粒子5が接合される。そして、型から取り出せば、第1金属粒子4および第2金属粒子5が接合され、空隙3を有する金属層2を得る。
【0080】
また、金属層2は、以下の方法で作製してもよい。まず、第1金属粒子4および第2金属粒子5を含む複数の金属粒子とバインダとを混ぜ合わせた後に、メカプレス法により成型体を作製する。次に、成形体を乾燥させることでバインダを蒸発させる。その後、加熱するか、超音波振動を与える。これにより、第1金属粒子4および第2金属粒子5が接合され、空隙3を有する金属層2を得る。
【0081】
また、金属層2は、以下の方法で作製してもよい。まず、第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aを含む複数の金属粒子とバインダとを混ぜ合わせた後に、メカプレス法により成型体を作製する。または、第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aを含む複数の金属粒子とバインダとを混ぜ合わせたスラリーを用意し、抄紙工法によって成形体を作製する。
【0082】
次に、この成形体を乾燥させることでバインダを蒸発させる。その後、加熱するか、超音波振動を与えるか、電気を流す。これにより、第1金属粒子4aおよび第2金属粒子5aを含む複数の金属粒子同士を溶着させることができる。これにより、第1金属粒子4aおよび第3金属粒子6aとの間に溶着部7aを形成することができる。これにより、空隙3aを有する薄膜コイル導体2bを得る。
【0083】
次に、遮蔽層2cを用意する。遮蔽層2cは、絶縁材または薄膜コイル導体2bよりも磁性を有するものからなるが、薄膜コイル導体2bと同じ製法で作製してもよい。また、空隙3bを有する必要が無い場合は、緻密体でもよく、その場合は、押出成形法や射出成型法などの製法を用いることもできる。
【0084】
次に、複数の薄膜コイル導体2bと遮蔽層2cを交互に重ね合わせた後、加圧することで、薄膜コイル導体2bと遮蔽層2cとが積層された金属層2を得ることができる。
【0085】
なお、遮蔽層2cは無電解メッキでも形成することができる。複数の薄膜コイル導体2bのみを重ねた後に、白金を触媒としたニッケルの無電解メッキを行う。薄膜コイル導体2b同士の隙間に白金とニッケルが入り込むことによって、遮蔽層2cを形成する。このような遮蔽層2cの形成方法を用いることによって、薄膜コイル導体2bよりも薄い遮蔽層2cを形成することが可能となる。
【0086】
次に、得られた金属層2に貫通穴2aをマシニング加工またはブラスト処理などで形成する。なお、貫通穴2aは金属層2の成型体の製造過程で形成しても構わない。
【0087】
次に、金属層2を基体1に載置する。そして、第1の固定具8を金属層2の貫通穴2aに通すことで、平面コイル10を得ることができる。
【0088】
なお、基体1に凹部1bを有する場合、第1の固定具8の一方の端部8aは凹部1bに嵌合または螺合してもよく、また、凹部1bにあらかじめ有機系または無機系の接着剤を注入してから、第1の固定具8の一方の端部8aを入れることによって、接着層9を形成しても構わない。
【0089】
また、あらかじめ金属層2の貫通穴2aに保護層11となる部材を入れた後に、第1の固定具8で固定しても構わない。また、第1の固定具8の他方の端部8bに鍔8cを有してもよいし、第2の固定具12を用いても構わない。
【0090】
また、図10および図11に示した平面コイル50、60については、図13に示すように、保護層11となる樹脂ペースト11bを第1の固定具8の底部側に塗布し、かかる樹脂ペースト11bが塗布された第1の固定具8を貫通穴2aおよび凹部1bに挿入してもよい。そして、かかる樹脂ペースト11bを硬化させることにより、金属層2と第1の固定具8との間を固定する保護層11として形成してもよい。
【0091】
このような製造方法を用いる場合、樹脂ペースト11bが金属層2の薄膜コイル導体2bや遮蔽層2cの空隙の一部に入りこむことから、金属層2と第1の固定具8との間をさらに強固に固定することができる。
【0092】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1:基体
2:金属層
2a:貫通穴
2b:薄膜コイル導体
2c:遮蔽層
3、3a:空隙
4、4a:第1金属粒子
4b:第1遮蔽粒子
5、5a:第2金属粒子
5b:第2遮蔽粒子
7a、7b:溶着部
8:第1の固定具
8a、8b:端部
8c:鍔
9:接着層
10、20、30、40、50、60:平面コイル
11:保護層
11a:鍔
12:第2の固定具
12a:外周
400:半導体製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13