(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】インピーダンス整合装置、高周波電力出力装置、高周波装置及びインピーダンス整合装置の設計方法
(51)【国際特許分類】
H03H 7/38 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
H03H7/38 B
(21)【出願番号】P 2021574399
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2020003599
(87)【国際公開番号】W WO2021152812
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】丹下 正次
(72)【発明者】
【氏名】高見沢 彰
(72)【発明者】
【氏名】高平 淳一
(72)【発明者】
【氏名】島田 淳一
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-087846(JP,A)
【文献】特表2017-517848(JP,A)
【文献】特開2016-040906(JP,A)
【文献】特開2013-074673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/00-7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタと、
互いに電気的に並列に接続される複数の直列接続回路を備え、前記複数の直列接続回路の各々が固定キャパシタと前記固定キャパシタに電気的に直列に接続される半導体スイッチとを備え、整合が行われる40MHz以上400MHz以下の周波数f(MHz)においてΔC≦100/fという関係を満たす刻み幅ΔC(pF)を有する切り替え可能な離散的なキャパシタンスを有し、前記インダクタに電気的に接続される可変キャパシタと、
前記複数の直列接続回路がそれぞれ実装され放射状に配置される複数の基板と、
を備えるインピーダンス整合装置。
【請求項2】
前記インダクタ及び前記可変キャパシタは、π型インピーダンス整合回路を構成し、
前記インダクタは、前記π型インピーダンス整合回路の直列インダクタであり、
前記可変キャパシタは、前記π型インピーダンス整合回路の並列キャパシタである
請求項1のインピーダンス整合装置。
【請求項3】
前記半導体スイッチの導通状態を制御するバイアスを出力するバイアス回路をさらに備える
請求項1又は2のインピーダンス整合装置。
【請求項4】
前記半導体スイッチは、
第1のダイオードと、
前記第1のダイオードに電気的に逆並列に接続される第2のダイオードと、
を備える
請求項1から3までのいずれかのインピーダンス整合装置。
【請求項5】
前記周波数f(MHz)を有する高周波電力を出力する高周波電源と、
請求項1から
4までのいずれかのインピーダンス整合装置であって、前記高周波電力が入力され、前記高周波電力に応じた高周波電力を出力するインピーダンス整合装置と、
を備える高周波電力出力装置。
【請求項6】
前記インピーダンス整合装置から前記高周波電源に戻る反射波の強度を検出する検出回路をさらに備え、
前記インピーダンス整合装置は、前記反射波の強度が小さくなるように前記整合を行う
請求項
5の高周波電力出力装置。
【請求項7】
請求項
5または
6の高周波電力出力装置と、
前記インピーダンス整合装置により出力された高周波電力が入力される負荷と、
を備える高周波装置。
【請求項8】
前記負荷は、プラズマ発生装置である
請求項
7の高周波装置。
【請求項9】
必要な刻み幅を有する切り替え可能な離散的なキャパシタンスを前記可変キャパシタが有するように前記固定
キャパシタのキャパシタンス解析モデルを用いて計算を行う工程を備える
請求項1から
4までのいずれかのインピーダンス整合装置の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス整合装置、高周波電力出力装置、高周波装置及びインピーダンス整合装置の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波電源と負荷との間の整合を行うインピーダンス整合装置は、複数の部品を備える。複数の部品は、互いに電気的に接続される。複数の部品の各々は、キャパシタ、インダクタ、半導体スイッチ等である。
【0003】
インピーダンス整合装置は、可変インピーダンス素子を備え、負荷からの電力の反射が少なくなるように、負荷のインピーダンスの変化に応じて可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させる。インピーダンス整合装置は、その際に、インピーダンス整合装置の入力インピーダンスが高周波電源の出力インピーダンスの複素共役になるようにする。
【0004】
可変インピーダンス素子としては、シャフト、スライダ等の被駆動要素を備え、被駆動要素の位置に応じたキャパシタンスを有する機械式可変キャパシタが知られている。被駆動要素は、モータ等の駆動源を備える駆動機構により機械的に駆動される。例えば、特許文献1には、操作軸を備え、操作軸の回転角度位置に応じた静電容量を有する可変コンデンサが開示されている。操作軸は、モータを駆動源とする操作機構により操作される(段落0067及び0072)。
【0005】
また、可変インピーダンス素子としては、互いに電気的に並列に接続される複数の直列接続回路を備え、複数の直列接続回路の各々が固定キャパシタ及び固定キャパシタに電気的に直列に接続される半導体スイッチを備え、複数の直列接続回路にそれぞれ備えられる複数の半導体スイッチの導通状態に応じたキャパシタンスを有する電子式可変キャパシタも知られている。複数の半導体スイッチの導通状態は、バイアス回路により出力されるバイアスにより制御される。例えば、特許文献2には、互いに並列に接続される第1ないし第nのキャパシタンス要素を備え、第1ないし第nのキャパシタンス要素が、それぞれ第1ないし第nのキャパシタを備え、それぞれ半導体素子からなる第1ないし第nのスイッチ素子を備え、第1ないし第nのスイッチ素子がそれぞれ第1ないし第nのキャパシタに直列に接続され、オン状態にあるスイッチ素子に直列に接続されるキャパシタの静電容量の合計に等しい静電容量を有する可変キャパシタが開示されている。第1ないし第nのスイッチ素子は、ドライバ回路から印加される逆方向の直流電圧によりオフ状態にされ、ドライバ回路から印加される順方向の直流電圧によりオン状態にされる(段落0031-0032)。
【0006】
また、可変インピーダンス素子としては、フェライトコア等のコア及び当該コアに巻かれる制御巻線を備え、制御巻線に流れる電流に応じたインダクタンスを有する電子式可変インダクタも知られている。例えば、特許文献3には、フェライトコアに巻回される制御巻線を備え、制御巻線に流される制御電流によりインダクタンスが変化する可変リアクトルが開示されている(段落0031、0065及び0084)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5360811号公報
【文献】特許第6498092号公報
【文献】特開2017-118434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した機械式可変キャパシタは、モータ等の駆動源を備える駆動機構により機械的に駆動される。このため、機械式可変キャパシタは、キャパシタンスを変化させるのに時間を要する。このため、インピーダンス整合装置は、機械式可変キャパシタを備える場合は、負荷のインピーダンスの変化に追随して整合の状態を良好な状態にすることが困難であるという問題を有する。さらに、インピーダンス整合装置は、高周波電源により出力される高周波電力の周波数が高い場合は、負荷のキャパシタンス又はインダクタンスがわずかに変化するだけで負荷のインピーダンスが大きく変化するため、整合の状態を良好な状態にすることが困難であるという問題を有する。
【0009】
また、インピーダンス整合装置が上述した機械式可変キャパシタを備える場合は、インピーダンス整合装置は、グリス切れ、ボールねじの劣化等の機械的な不良が上述した機械式可変キャパシタ及び/又は駆動機構に生じるという問題を有する。インピーダンス整合装置が機械式可変インダクタを備える場合も、インピーダンス整合装置は、同様の問題を有する。
【0010】
上述した電子式可変キャパシタは、電子式可変キャパシタに備えられる半導体スイッチのキャパシタンス、電子式可変キャパシタが実装される回路基板と当該回路基板が収容される筐体との間のキャパシタンス等の、電子式可変キャパシタに備えられる固定キャパシタのキャパシタンス以外のキャパシタンスを有する。したがって、電子式可変キャパシタは、当該固定キャパシタのキャパシタンス以外のキャパシタンスの影響により、設定されたキャパシタンスと異なるキャパシタンスを有する。一方で、インピーダンス整合装置に備えられる可変キャパシタのキャパシタンスは、高周波電源により出力される高周波電力の周波数が高い場合は、小さくなる。このため、インピーダンス整合装置が上述した電子式可変キャパシタを備える場合は、インピーダンス整合装置は、高周波電源により出力される高周波電力の周波数が高い場合に高周波電源と負荷との間のインピーダンス整合の状態を良好な状態にすることが困難であるという問題を有する。
【0011】
また、上述した電子式可変キャパシタのキャパシタンスの刻み幅は、電子式可変キャパシタに備えられる固定キャパシタのキャパシタンス以外のキャパシタンスの影響により、小さくすることが困難である。このため、インピーダンス整合装置が電子式可変キャパシタを備える場合は、インピーダンス整合装置は、高周波電源と負荷との間のインピーダンス整合の状態を良好な状態にすることが困難であるという問題を有する。
【0012】
また、上述した電子式可変キャパシタに備えられる複数の直列接続回路がひとつの基板に実装された場合は、当該複数の直列接続回路にそれぞれ備えられる複数の配線パターンのインピーダンスが不均一になり、当該複数の直列接続回路がそれぞれ有する複数の浮遊キャパシタンスが不均一になる。このため、インピーダンス整合装置が電子式可変キャパシタを備え、電子式可変キャパシタに備えられる複数の直列接続回路がひとつの基板に実装された場合は、インピーダンス整合装置は、高周波電源と負荷との間のインピーダンス整合の状態を良好な状態にすることが困難であるという問題を有する。
【0013】
また、上述した電子式可変キャパシタに備えられる半導体スイッチに流れる電流は、電子式可変キャパシタに備えられる固定キャパシタのキャパシタンスが大きくなるほど大きくなる。したがって、当該固定キャパシタのキャパシタンスが大きい場合は、当該半導体スイッチが破損する可能性がある。このため、インピーダンス整合装置が電子式可変キャパシタを備える場合は、インピーダンス整合装置は、電子式可変キャパシタに備えられる半導体スイッチが破損する可能性があるという問題を有する。
【0014】
電子式可変キャパシタンス以外の可変インピーダンス素子である電子式可変インダクタによりインピーダンスが変化させられる場合は、電子式可変インダクタに備えられるコアの損失は、高周波電源により出力される高周波電力の周波数が高くなるほど大きくなる。したがって、当該コアの発熱は、高周波電源により出力される高周波電力の周波数が高い場合は、大きくなる。このため、インピーダンス整合装置が上述した電子式可変インダクタを備える場合は、インピーダンス整合装置は、高周波電源により出力される高周波電力の周波数が高い場合に電子式可変インダクタのインダクタンスを変化させることが困難になるという問題を有する。又は、インピーダンス整合装置が電子式可変インダクタを備える場合は、インピーダンス整合装置は、電子式可変インダクタのインダクタンスを変化させることが困難になるという問題を解消するために、コアを水冷する機構が必要になり大型化するという問題を有する。
【0015】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされた。本発明は、整合が行われる周波数が高い場合でも負荷のインピーダンスの変化に追随して整合を行うことができるインピーダンス整合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、インピーダンス整合装置に関する。
【0017】
インピーダンス整合装置は、インダクタ及び可変キャパシタを備える。
【0018】
可変キャパシタは、インダクタに電気的に接続される。
【0019】
可変キャパシタは、複数の直列接続回路を備える。複数の直列接続回路は、互いに電気的に並列に接続される。複数の直列接続回路の各々は、固定キャパシタ及び半導体スイッチを備える。半導体スイッチは、固定キャパシタに電気的に直列に接続される。
インピーダンス整合装置は、複数の直列接続回路がそれぞれ実装され放射状に配置される複数の基板をさらに備える。
【0020】
可変キャパシタは、整合が行われる40MHz以上400MHz以下の周波数f(MHz)においてΔC≦100/fという関係を満たす刻み幅ΔC(pF)を有する切り替え可能な離散的なキャパシタンスを有する。
【0021】
本発明は、当該インピーダンス整合装置を備える高周波電力出力装置及び高周波装置、並びに当該インピーダンス整合装置設計方法にも向けられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、整合が行われる周波数が高い場合でも、負荷のインピーダンスの変化に追随して整合を行うことができる。
【0023】
この発明の目的、特徴、局面及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態及び第2実施形態のインピーダンス整合装置を備える高周波装置を図示するブロック図である。
【
図2】第1実施形態及び第2実施形態のインピーダンス整合装置を図示する回路図である。
【
図3】第1実施形態のインピーダンス整合装置に備えられる各可変キャパシタを図示する回路図である。
【
図4】第1実施形態のインピーダンス整合装置に備えられる基板を模式的に図示する平面図である。
【
図5】第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられる各可変キャパシタを図示する回路図である。
【
図6】第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられる基板を模式的に図示する平面図である。
【
図7】第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられるπ型インピーダンス整合回路の解析モデルを図示する回路図である。
【
図8】
図7に図示される、第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられるπ型インピーダンス整合回路の解析モデルのインピーダンス整合範囲を図示するスミスチャートである。
【
図9】
図7に図示される、第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられるπ型インピーダンス整合回路の解析モデルにおいて各可変キャパシタのキャパシタンスの刻み幅が1pFである場合の反射係数をプロットした散布図である。
【
図10】
図7に図示される、第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられるπ型インピーダンス整合回路の解析モデルにおいて各可変キャパシタのキャパシタンスの刻み幅が0.5pFである場合の反射係数をプロットした散布図である。
【
図11】
図7に図示される、第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられるπ型インピーダンス整合回路の解析モデルにおいて各可変キャパシタのキャパシタンスの刻み幅が0.25pFである場合の反射係数をプロットした散布図である。
【
図12】
図7に図示される、第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられるπ型インピーダンス整合回路の解析モデルにおける、各可変キャパシタのキャパシタンスの刻み幅と反射係数が1%以下となる条件の数との関係を示すグラフである。
【
図13】第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられる制御単位の各々の解析モデルを図示する回路図である。
【
図14】第2実施形態のインピーダンス整合装置におけるバイアスのN値と各可変キャパシタのキャパシタンスとの関係を示すグラフである。
【
図15】第2実施形態のインピーダンス整合装置におけるバイアスのN値と各可変キャパシタのキャパシタンスの差分との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.1 高周波装置
図1は、第1実施形態及び第2実施形態のインピーダンス整合装置を備える高周波装置を図示するブロック図である。
【0026】
図1に図示される高周波装置1は、高周波電力出力装置11及び負荷12を備える。高周波電力出力装置11は、
図1に図示されるように、高周波電源21及びインピーダンス整合装置22を備える。
【0027】
高周波電源21は、周波数f(MHz)を有する高周波電力31を出力する。
【0028】
インピーダンス整合装置22には、高周波電源21により出力された高周波電力31が入力される。インピーダンス整合装置22は、入力された高周波電力31に応じた高周波電力32を出力する。インピーダンス整合装置22は、周波数f(MHz)において高周波電源21と負荷12との間の整合を行う。
【0029】
負荷12には、インピーダンス整合装置22により出力された高周波電力32が入力される。
【0030】
負荷12は、プラズマ発生装置等である。負荷12がプラズマ発生装置である場合は、周波数f(MHz)は、望ましくは、40MHz以上400MHz以下である。負荷12が、プラズマ発生装置以外の装置であってもよい。
【0031】
高周波電力出力装置11は、
図1に図示されるように、検出回路23をさらに備える。
【0032】
検出回路23は、インピーダンス整合装置22から高周波電源21に戻る反射波33の強度を検出する。
【0033】
インピーダンス整合装置22は、検出回路23により検出される反射波33の強度が最も小さくなるように整合を行う。
【0034】
1.2 インピーダンス整合装置
図2は、第1実施形態及び第2実施形態のインピーダンス整合装置を図示する回路図である。
【0035】
第1実施形態のインピーダンス整合装置22は、
図2に図示されるように、入力端子41、入力端子42、出力端子43及び出力端子44を備える。
【0036】
入力端子41と入力端子42との間には、インピーダンス整合装置22に入力される高周波電力31が入力される。出力端子43と出力端子44との間からは、インピーダンス整合装置22により出力される高周波電力32が出力される。
【0037】
インピーダンス整合装置22は、
図2に図示されるように、インダクタ45、可変キャパシタ46p及び可変キャパシタ46qをさらに備える。
【0038】
可変キャパシタ46p及び46qは、インダクタ45に電気的に接続される。
【0039】
インダクタ45、可変キャパシタ46p及び可変キャパシタ46qは、π型インピーダンス整合回路51を構成する。インダクタ45は、π型インピーダンス整合回路51の直列インダクタである。また、可変キャパシタ46p及び46qは、π型インピーダンス整合回路51の並列キャパシタである。
【0040】
インダクタ45の一端及び可変キャパシタ46pの一端は、互いに電気的に接続され、入力端子41に電気的に接続される。インダクタ45の他端及び可変キャパシタ46qの一端は、互いに電気的に接続され、出力端子43に電気的に接続される。可変キャパシタ46pの他端及び可変キャパシタ46qの他端は、接地され、互いに電気的に接続され、入力端子42及び出力端子44に電気的に接続される。
【0041】
可変キャパシタ46p及び46qの各々である各可変キャパシタ46は、切り替え可能な離散的なキャパシタンスを有する。離散的なキャパシタンスの刻み幅ΔCは、整合が行われる周波数f(MHz)においてΔC≦100/fという関係を満たす。刻み幅ΔCが当該関係を満たす場合は、周波数f(MHz)が200MHzであるときに刻み幅ΔCが0.5pF以下となり、周波数f(MHz)が100MHzであるときに刻み幅ΔCが1pF以下となり、周波数f(MHz)が50MHzであるときに刻み幅ΔCが2pF以下となる。これにより、整合が行われる周波数f(MHz)が高い場合でも、負荷12のインピーダンスの変化に追随して整合を行うことができる。例えば、反射率が1%以下となる整合を行うことができる。
【0042】
インピーダンス整合装置22が、π型インピーダンス整合回路51を構成するインダクタ45、可変キャパシタ46p及び可変キャパシタ46qに代えて、π型インピーダンス整合回路以外のインピーダンス整合回路を構成するインダクタ及び可変キャパシタを備えてもよい。例えば、インピーダンス整合装置22が、L型整合回路、T型整合回路等を構成するインダクタ及び可変キャパシタを備えてもよい。当該可変キャパシタは、各可変キャパシタ46の特徴と同様の特徴を有する。
【0043】
インピーダンス整合装置22は、
図2に図示されるように、バイアス回路52をさらに備える。
【0044】
バイアス回路52は、バイアス61及び62を出力する。バイアス回路52は、バイアス61及び62により、可変キャパシタ46p及び可変キャパシタ46qに備えられる半導体スイッチをオン/オフする。
【0045】
可変キャパシタ46p及び46qには、それぞれバイアス回路52により出力されたバイアス61及び62が入力される。可変キャパシタ46p及び46qのキャパシタンスは、それぞれ入力されたバイアス61及び62により切り替えられる。このため、可変キャパシタ46p及び46qは、それぞれ入力されたバイアス61及び62に応じたキャパシタンスを有する。
【0046】
1.3 可変キャパシタ
図3は、第1実施形態のインピーダンス整合装置に備えられる各可変キャパシタを図示する回路図である。
【0047】
各可変キャパシタ46は、図3に図示されるように、複数のセクション71a,71b及び71cを備える。
【0048】
図3に図示される各可変キャパシタ46においては、複数のセクション71a,71b及び71cは、3個のセクションである。複数のセクション71a,71b及び71cが2個又は4個以上のセクションに置き換えられてもよい。
【0049】
各可変キャパシタ46は、複数の直列接続回路81a,81b及び81cを備える。直列接続回路81a,81b及び81cは、それぞれセクション71a,71b及び71cに属する。
【0050】
直列接続回路81a,81b及び81cは、互いに電気的に並列に接続される。
【0051】
直列接続回路81a,81b及び81cの一端は、互いに電気的に接続され、各可変キャパシタ46の一端となる。直列接続回路81a,81b及び81cの他端は、接地され、互いに電気的に接続され、各可変キャパシタ46の他端となる。
【0052】
直列接続回路81a,81b及び81cの各々は、
図3に図示されるように、固定キャパシタ91及び半導体スイッチ92を備える。
【0053】
半導体スイッチ92は、固定キャパシタ91に電気的に直列に接続される。
【0054】
固定キャパシタ91の一端は、固定キャパシタ91を備える直列接続回路の一端になる。固定キャパシタ91の他端は、半導体スイッチ92の一端に電気的に接続される。半導体スイッチ92の他端は、半導体スイッチ92を備える直列接続回路の他端になる。
【0055】
各可変キャパシタ46は、
図3に図示されるように、複数のデカップリング回路82a,82b及び82cをさらに備える。デカップリング回路82a,82b及び82cは、それぞれセクション71a,71b及び71cに属する。
【0056】
直列接続回路81a,81b及び81cに備えられる半導体スイッチ92は、それぞれデカップリング回路82a,82b及び82cを介してバイアス回路52に電気的に接続される。
【0057】
デカップリング回路82a,82b及び82cは、それぞれバイアス回路52により出力されて直列接続回路81a,81b及び81cに備えられる半導体スイッチ92へ向かうバイアスを通過させ、それぞれ直列接続回路81a,81b及び81cから漏出してバイアス回路52へ向かう高周波電力を阻止する。このため、バイアス回路52により出力されて直列接続回路81a,81b及び81cに備えられる半導体スイッチ92へ向かうバイアスは、当該半導体スイッチ92に入力されるが、直列接続回路81a,81b及び81cから漏出してバイアス回路52へ向かう高周波電力は、バイアス回路52に入力されない。
【0058】
バイアス回路52により出力されて直列接続回路81a,81b及び81cの各々に備えられる半導体スイッチ92に入力されるバイアスは、当該半導体スイッチ92の導通状態を制御する。当該バイアスは、オンバイアス及びオフバイアスを含む。当該半導体スイッチ92にオンバイアスが入力された場合は、当該半導体スイッチ92の導通状態はオン状態となる。当該半導体スイッチ92にオフバイアスが入力された場合は、当該半導体スイッチ92の導通状態はオフ状態となる。
【0059】
直列接続回路81a,81b及び81cの各々は、それに備えられる半導体スイッチ92にオンバイアスが入力され当該半導体スイッチ92の導通状態がオン状態となった場合は、オン時キャパシタンスを有する。また、直列接続回路81a,81b及び81cの各々は、それに備えられる半導体スイッチ92にオフバイアスが入力されて当該半導体スイッチ92の導通状態がオフ状態となった場合は、オン時キャパシタンスより小さいオフ時キャパシタンスを有する。このため、各可変キャパシタ46は、オンバイアスが入力された半導体スイッチ92を備える直列接続回路のオン時キャパシタンスの合計と、オフバイアスが入力された半導体スイッチ92を備える直列接続回路のオフ時キャパシタンスの合計と、の総計に一致するキャパシタンスを有する。したがって、各可変キャパシタ46は、切り替え可能な離散的なキャパシタンスを有し、バイアス回路52により出力されて直列接続回路81a,81b及び81cに備えられる半導体スイッチ92に入力されたバイアスに応じたキャパシタンスを有する。これにより、各可変キャパシタ46のキャパシタンスをバイアスにより電子的に切り替えることができる。このため、各可変キャパシタ46のキャパシタンスを短時間で変化させることができ、整合を短時間で行うことができる。例えば、整合を約0.01秒で行うことができる。これにより、整合が行われる周波数f(MHz)が高い場合でも、負荷12のインピーダンスの変化に追随して整合を良好に行うことができる。例えば、反射率が1%以下となる整合を行うことができる。
【0060】
バイアス回路52は、整合を行うために必要なキャパシタンスを各可変キャパシタ46が有するように、各可変キャパシタ46に備えられる直列接続回路81a,81b及び81cに備えられる半導体スイッチ92に入力されるバイアスを出力する。
【0061】
インピーダンス整合装置22は、コアを水冷する機構を必要とする電子式可変インダクタンスを備えない。このため、インピーダンス整合装置22は、コアを水冷する機構を備えなくてもよく、自然空冷又は強制空冷により冷却することができる。これにより、インピーダンス整合装置22を小型化することができる。
【0062】
図5は、第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられる各可変キャパシタを図示する回路図である。
【0063】
各可変キャパシタ46は、
図5に図示されるように、複数のセクション71a,71b,71c,71d,71e,71f,71g,71h及び71iを備える。
【0064】
各可変キャパシタ46は、複数の直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iを備える。直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iは、それぞれセクション71a,71b,71c,71d,71e,71f,71g,71h及び71iに属する。
【0065】
直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iは、互いに電気的に並列に接続される。
【0066】
直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iの一端は、互いに電気的に接続され、各可変キャパシタ46の一端となる。直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iの他端は、接地され、互いに電気的に接続され、各可変キャパシタ46の他端となる。
【0067】
直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iの各々は、
図5に図示されるように、固定キャパシタ91及び半導体スイッチ92を備える。
【0068】
半導体スイッチ92は、固定キャパシタ91に電気的に直列に接続される。
【0069】
固定キャパシタ91の一端は、固定キャパシタ91を備える直列接続回路の一端になる。固定キャパシタ91の他端は、半導体スイッチ92の一端に電気的に接続される。半導体スイッチ92の他端は、半導体スイッチ92を備える直列接続回路の他端になる。
【0070】
各可変キャパシタ46は、
図5に図示されるように、複数のデカップリング回路82a,82b,82c,82d,82e,82f,82g,82h及び82iをさらに備える。デカップリング回路82a,82b,82c,82d,82e,82f,82g,82h及び82iは、それぞれセクション71a,71b,71c,71d,71e,71f,71g,71h及び71iに属する。
【0071】
直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iに備えられる半導体スイッチ92は、それぞれデカップリング回路82a,82b,82c,82d,82e,82f,82g,82h及び82iを介してバイアス回路52に電気的に接続される。
【0072】
デカップリング回路82a,82b,82c,82d,82e,82f,82g,82h及び82iは、それぞれバイアス回路52により出力されて直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iに備えられる半導体スイッチ92へ向かうバイアスを通過させ、それぞれ直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iから漏出してバイアス回路52へ向かう高周波電力を阻止する。このため、バイアス回路52により出力されて直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iに備えられる半導体スイッチ92へ向かうバイアスは、当該半導体スイッチ92に入力されるが、直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iから漏出してバイアス回路52へ向かう高周波電力は、バイアス回路52に入力されない。
【0073】
バイアス回路52により出力されて直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iの各々に備えられる半導体スイッチ92に入力されるバイアスは、当該半導体スイッチ92の導通状態を制御する。当該バイアスは、オンバイアス及びオフバイアスを含む。当該半導体スイッチ92にオンバイアスが入力された場合は、当該半導体スイッチ92の導通状態はオン状態となる。当該半導体スイッチ92にオフバイアスが入力された場合は、当該半導体スイッチ92の導通状態はオフ状態となる。
【0074】
直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iの各々は、それに備えられる半導体スイッチ92にオンバイアスが入力され当該半導体スイッチ92の導通状態がオン状態となった場合は、オン時キャパシタンスを有する。また、直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iの各々は、それに備えられる半導体スイッチ92にオフバイアスが入力されて当該半導体スイッチ92の導通状態がオフ状態となった場合は、オン時キャパシタンスより小さいオフ時キャパシタンスを有する。このため、各可変キャパシタ46は、オンバイアスが入力された半導体スイッチ92を備える直列接続回路のオン時キャパシタンスの合計と、オフバイアスが入力された半導体スイッチ92を備える直列接続回路のオフ時キャパシタンスの合計と、の総計に一致するキャパシタンスを有する。したがって、各可変キャパシタ46は、切り替え可能な離散的なキャパシタンスを有し、バイアス回路52により出力されて直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iに備えられる半導体スイッチ92に入力されたバイアスに応じたキャパシタンスを有する。これにより、各可変キャパシタ46のキャパシタンスをバイアスにより電子的に切り替えることができる。このため、各可変キャパシタ46のキャパシタンスを短時間で変化させることができ、整合を短時間で行うことができる。例えば、整合を約0.01秒で行うことができる。これにより、整合が行われる周波数f(MHz)が高い場合でも、負荷12のインピーダンスの変化に追随して整合を良好に行うことができる。例えば、反射率が1%以下となる整合を行うことができる。
【0075】
バイアス回路52は、整合を行うために必要なキャパシタンスを各可変キャパシタ46が有するように、各可変キャパシタ46に備えられる直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iに備えられる半導体スイッチ92に入力されるバイアスを出力する。
【0076】
インピーダンス整合装置22は、コアを水冷する機構を必要とする電子式可変インダクタンスを備えない。このため、インピーダンス整合装置22は、コアを水冷する機構を備えなくてもよく、自然空冷又は強制空冷により冷却することができる。これにより、インピーダンス整合装置22を小型化することができる。
【0077】
1.4 制御単位
第2実施形態のインピーダンス整合装置22に備えられる直列接続回路81d及び81eに備えられる2個の半導体スイッチ92には、
図5に図示されるように、共通するバイアスが入力される。このため、当該2個の半導体スイッチ92の導通状態は、同時に制御され、同時にオン状態又はオフ状態になる。また、第2実施形態のインピーダンス整合装置22に備えられる直列接続回路81f,81g,81h及び81iに備えられる4個の半導体スイッチ92には、
図5に図示されるように、共通するバイアスが入力される。このため、当該4個の半導体スイッチ92の導通状態は、同時に制御され、同時にオン状態又はオフ状態になる。
【0078】
直列接続回路81aに備えられる1個の半導体スイッチ92からなるグループ、直列接続回路81bに備えられる1個の半導体スイッチ92からなるグループ、直列接続回路81cに備えられる1個の半導体スイッチ92からなるグループ、直列接続回路81d及び81eに備えられる2個の半導体スイッチ92からなるグループ、並びに直列接続回路81f,81g,81h及び81iに備えられる4個の半導体スイッチ92からなるグループからなる5個のグループには、
図5に図示されるように、互いに独立したバイアスが入力される。このため、当該5個のグループの導通状態は、互いに独立して制御することができる。
【0079】
その結果として、直列接続回路81aは、直列接続回路81aのオン時キャパシタンスに一致するオン時キャパシタンスCON(pF)を有し、直列接続回路81aのオフ時キャパシタンスに一致するオフ時キャパシタンスCOFF(pF)を有する制御単位101sを構成する。また、直列接続回路81bは、直列接続回路81bのオン時キャパシタンスに一致するオン時キャパシタンスCON(pF)を有し、直列接続回路81bのオフ時キャパシタンスに一致するオフ時キャパシタンスCOFF(pF)を有する制御単位101tを構成する。また、直列接続回路81cは、直列接続回路81cのオン時キャパシタンスに一致するオン時キャパシタンスCON(pF)を有し、直列接続回路81cのオフ時キャパシタンスに一致するオフ時キャパシタンスCOFF(pF)を有する制御単位101uを構成する。また、直列接続回路81d及び81eは、直列接続回路81d及び81eのオン時キャパシタンスの合計に一致するオン時キャパシタンスCON(pF)を有し、直列接続回路81d及び81eのオフ時キャパシタンスの合計に一致するオフ時キャパシタンスCOFF(pF)を有する制御単位101vを構成する。また、直列接続回路81f,81g,81h及び81iは、直列接続回路81f,81g,81h及び81iのオン時キャパシタンスの合計に一致するオン時キャパシタンスCON(pF)を有し、直列接続回路81f,81g,81h及び81iのオフ時キャパシタンスの合計に一致するオフ時キャパシタンスCOFF(pF)を有する制御単位101wを構成する。
【0080】
各可変キャパシタ46は、5個の制御単位101s,101t,101u,101v及び101wを備えるため、切り替え可能な25=32段階の離散的なキャパシタンスを有する。
【0081】
制御単位101vは、直列接続回路81d及び81eにより構成される。制御単位101wは、直列接続回路81f,81g,81h及び81iにより構成される。このように制御単位が複数の並列接続回路により構成されることにより、ひとつの半導体スイッチ92の発熱を抑えることができる。制御単位101v及び101wの各々が複数の直列接続回路により構成されるのは、ひとつの半導体スイッチの電源容量は、制御単位101v及び101wの各々に備えらえる半導体スイッチに要求される電源容量に満たないからである。
【0082】
1.5 半導体スイッチ
半導体スイッチ92は、
図5に図示されるように、第1のダイオード111及び第2のダイオード112を備える。
【0083】
第2のダイオード112は、第1のダイオード111に電気的に逆並列に接続される。これにより、半導体スイッチ92の導通状態がオン状態である場合の半導体スイッチ92のレジスタンスを小さくすることができる。したがって、半導体スイッチ92の導通状態がオン状態である場合の半導体スイッチ92の電力損失を小さくすることができる。
【0084】
第1のダイオード111の一端及び第2のダイオード112の一端は、互いに電気的に接続され、半導体スイッチ92の一端になる。第1のダイオード111の他端及び第2のダイオード112の他端は、互いに電気的に接続され、半導体スイッチ92の他端になる。
【0085】
第1のダイオード111の一端は、アノードであり、第1のダイオード111の他端は、カソードである。また、第2のダイオード112の一端は、カソードであり、第2のダイオード112の他端は、アノードである。第1のダイオード111の一端がカソードであり、第1のダイオード111の他端がアノードであり、第2のダイオード112の一端がアノードであり、第2のダイオード112の他端がカソードであってもよい。
【0086】
半導体スイッチ92は、キャパシタ113を備える。第2のダイオード112の他端は、キャパシタ113を介して第1のダイオード111の他端に電気的に接続される。これにより、グランド、第2のダイオード112の他端、第2のダイオード112の一端、第1のダイオード111の一端及び第1のダイオード111の他端を順次に経由するバイアスの経路が形成される。
【0087】
半導体スイッチ92に入力されるオンバイアスは、第1のダイオード111及び第2のダイオード112に順方向電圧を印加する直流である。半導体スイッチ92に入力されるオフバイアスは、第1のダイオード111及び第2のダイオード112に逆方向電圧を印加する直流である。
【0088】
第1のダイオード111及び第2のダイオード112は、望ましくは、PINダイオードである。
【0089】
1.6 基板の配置
図4は、第1実施形態のインピーダンス整合装置に備えられる基板を模式的に図示する平面図である。
【0090】
インピーダンス整合装置22は、
図4に図示されるように、複数の基板121a,121b及び121cを備える。
【0091】
基板121a,121b及び121cには、それぞれセクション71a,71b及び71cが実装される。このため、基板121a,121b及び121cには、それぞれ直列接続回路81a,81b及び81cが実装される。基板121a,121b及び121cの各々には、ひとつの直列接続回路が実装される。
【0092】
基板121a,121b及び121cは、放射状に配置される。これにより、直列接続回路81a,81b及び81cのインピーダンスが均一になる。したがって、整合を良好に行うことができる。
【0093】
図6は、第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられる基板を模式的に図示する平面図である。
【0094】
インピーダンス整合装置22は、
図6に図示されるように、複数の基板121a,121b,121c,121d,121e,121f,121g,121h及び121iを備える。
【0095】
基板121a,121b,121c,121d,121e,121f,121g,121h及び121iには、それぞれセクション71a,71b,71c,71d,71e,71f,71g,71h及び71iが実装される。このため、基板121a,121b,121c,121d,121e,121f,121g,121h及び121iには、それぞれ直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iが実装される。基板121a,121b,121c,121d,121e,121f,121g,121h及び121iの各々には、ひとつの直列接続回路が実装される。
【0096】
基板121a,121b,121c,121d,121e,121f,121g,121h及び121iは、放射状に配置される。これにより、直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iのインピーダンスが均一になる。したがって、整合を良好に行うことができる。
【0097】
1.7 整合範囲
図7は、第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられるπ型インピーダンス整合回路の解析モデルを図示する回路図である。
【0098】
図7に図示される解析モデル131は、
図2に図示されるπ型インピーダンス整合回路51と同様に、インダクタ45、可変キャパシタ46p及び可変キャパシタ46qを備える。また、解析モデル131は、インダクタ141、インダクタ142、インダクタ143、インダクタ144、キャパシタ145、キャパシタ146、キャパシタ147及びキャパシタ148をさらに備える。
【0099】
インダクタ141、インダクタ142、インダクタ143及びインダクタ144は、浮遊インダクタンスを示す。キャパシタ145、キャパシタ146、キャパシタ147及びキャパシタ148は、浮遊キャパシタンスを示す。
【0100】
解析モデル131が整合を行う周波数f(MHz)は、200MHzである。入力端子41と入力端子42との間に入力される高周波電力31の電力値は、1000Wである。高周波電源21の内部インピーダンスは、50Ωである。インダクタ45のインダクタンスは、0.05μHである。インダクタ141のインダクタンスは、0.01μHである。インダクタ142のインダクタンスは、0.01μHである。インダクタ143のインダクタンスは、0.05μHである。インダクタ144のインダクタンスは、0.03μHである。可変キャパシタ46pのキャパシタンスの最小値及び最大値は、それぞれ10pF及び50pFである。可変キャパシタ46qのキャパシタンスの最小値及び最大値は、それぞれ10pF及び50pFである。キャパシタ145のキャパシタンスは、10pFである。キャパシタ146のキャパシタンスは、25pFである。キャパシタ147のキャパシタンスは、50pFである。キャパシタ148のキャパシタンスは、5pFである。
【0101】
図8は、
図7に図示される、第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられるπ型インピーダンス整合回路の解析モデルのインピーダンス整合範囲を図示するスミスチャートである。
【0102】
図8に図示されるインピーダンス整合範囲151は、
図7に図示される解析モデル131を用いてシミュレーションを行うことにより得られる。
【0103】
1.8 刻み幅
図9は、
図7に図示される、第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられるπ型インピーダンス整合回路の解析モデルにおいて各可変キャパシタのキャパシタンスの刻み幅が1pFである場合の反射係数をプロットした散布図である。
図10は、
図7に図示される、第
2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられるπ型インピーダンス整合回路の解析モデルにおいて各可変キャパシタのキャパシタンスの刻み幅が0.5pFである場合の反射係数をプロットした散布図である。
図11は、
図7に図示される、第
2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられるπ型インピーダンス整合回路の解析モデルにおいて各可変キャパシタのキャパシタンスの刻み幅が0.25pFである場合の反射係数をプロットした散布図である。
図9、
図10及び
図11においては、横軸に反射係数Γの実数成分Γxがとられており、縦軸に反射係数Γの虚数成分Γyがとられている。
【0104】
図9、
図10及び
図11には、反射率が1%以下となる範囲161も描かれている。反射率が1%以下となる範囲161に含まれる反射係数の数が多いことは、反射率が1%以下となる整合が容易であることを示す。
【0105】
図12は、
図7に図示される、第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられるπ型インピーダンス整合回路の解析モデルにおける、各可変キャパシタのキャパシタンスの刻み幅と反射係数が1%以下となる反射係数の数との関係を示すグラフである。
図12においては、横軸に各可変キャパシタのキャパシタンスの刻み幅がとられており、縦軸に反射係数が1%以下となる反射係数の数がとられている。
【0106】
図12に図示される関係は、
図9、
図10及び
図11に描かれる、反射率が1%以下となる範囲161に含まれる反射係数の数から得られる。
【0107】
図12からは、各可変キャパシタ46のキャパシタンスの刻み幅ΔCが小さくなるほど反射係数が1%以下となる反射係数の数が多くなり、各可変キャパシタのキャパシタンスの刻み幅が概ね0.5pF以下である場合に反射係数が1%以下となる反射係数の数が著しく多くなることを理解することができる。このことは、各可変キャパシタ46のキャパシタンスの刻み幅ΔCが小さくなるほど反射率が1%以下となる整合が容易になり、各可変キャパシタ46のキャパシタンスの刻み幅ΔCが概ね0.5pF以下である場合に反射率が1%以下となる整合が著しく容易になることを意味する。
【0108】
1.9 直列接続回路の設計
図13は、第2実施形態のインピーダンス整合装置に備えられる制御単位の各々の解析モデルを図示する回路図である。
【0109】
図13に図示される解析モデル171は、制御単位101s,101t,101u,101v及び101wの各々の解析モデルである。解析モデル171は、制御単位101s,101t,101u,101v及び101wの各々の等価回路となっている。
【0110】
解析モデル171は、
図5に図示される直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iの各々と同様に、固定キャパシタ91及び半導体スイッチ92を備える。また、解析モデル171は、インダクタ181をさらに備える。解析モデル171においては、半導体スイッチ92は、オンバイアスが入力された場合は、抵抗182として扱われ、オフバイアスが入力された場合は、キャパシタ183として扱われる。
【0111】
解析モデル131のオン時キャパシタンスは、固定キャパシタ91のキャパシタンス、インダクタ181のインダクタンス及び抵抗182のレジスタンスからシミュレーションにより計算される。解析モデル131のオフ時キャパシタンスは、固定キャパシタ91のキャパシタンス、インダクタ181のインダクタンス及びキャパシタ183のキャパシタンスからシミュレーションにより計算される。
【0112】
直列接続回路81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h及び81iに備えられる固定キャパシタ91のキャパシタンスは、必要な刻み幅ΔCを有する切り替え可能な離散的なキャパシタンスを各可変キャパシタ46が有するように、解析モデル131を用いて計算される。
【0113】
表1は、制御単位101s,101t,101u,101v及び101wの固定キャパシタ91のキャパシタンスCE(pF)、インダクタ181のインダクタンスLL(μH)、抵抗182のレジスタンスRD(Ω)、キャパシタ183のキャパシタンスCP(pF)、オフ時キャパシタンスCOFF(pF)及びオン時キャパシタンスCON(pF)の計算例を示す。
【0114】
【0115】
図14は、第2実施形態のインピーダンス整合装置におけるバイアスのN値と各可変キャパシタのキャパシタンスとの関係を示すグラフである。
図14においては、横軸にバイアスのN値がとられており、縦軸に各可変キャパシタのキャパシタンスがとられている。
【0116】
バイアスのN値は、バイアスの内容を示す5ビットのビット長を有するビット列を10進法値に変換した値である。ビット列の1列目、2列目、3列目、4列目及び5列目の値が1であることは、それぞれ制御単位101s,101t,101u,101v及び101wに入力されるバイアスがオンバイアスであることを示す。ビット列の1列目、2列目、3列目、4列目及び5列目の値が0であることは、それぞれ制御単位101s,101t,101u,101v及び101wに入力されるバイアスがオフバイアスであることを示す。
【0117】
図15は、第2実施形態のインピーダンス整合装置におけるバイアスのN値と各可変キャパシタのキャパシタンスの差分との関係を示すグラフである。
図15においては、横軸にバイアスのN値がとられており、縦軸に各可変キャパシタのキャパシタンスの差分がとられている。
【0118】
図14及び
図15は、制御単位101s,101t,101u,101v及び101wの固定キャパシタ91のキャパシタンスCE(pF)、インダクタ181のインダクタンスLL(μH)、抵抗182のレジスタンスRD(Ω)、及びキャパシタ183のキャパシタンスCP(pF)、オフ時キャパシタンスC
OFF(pF)及びオン時キャパシタンスC
ON(pF)が表1に示される計算例である場合の関係を示す。
【0119】
図15からは、表1に示される計算例によれば、各可変キャパシタ46のキャパシタンスの差分すなわち各可変キャパシタ46のキャパシタンスの刻み幅ΔCが概ね0.37pFになり、反射率が1%以下となる整合を容易に行うことができることを理解することができる。
【0120】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0121】
1 高周波装置
11 高周波電力出力装置
12 負荷
21 高周波電源
22 インピーダンス整合装置
23 検出回路
45 インダクタ
46p 可変キャパシタ
46q 可変キャパシタ
51 π型インピーダンス整合回路
52 バイアス回路
81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81h,81i 直列接続回路
91 固定キャパシタ
92 半導体スイッチ
111 第1のダイオード
112 第2のダイオード
121a,121b,121c,121d,121e,121f,121g,121h,121i 基板