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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】作業機械制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20231218BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/22 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022017105
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2017194672の分割
【原出願日】2017-10-04
(65)【公開番号】P2022051849
(43)【公開日】2022-04-01
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】皆川 真範
(72)【発明者】
【氏名】大山 康博
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-089389(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115809(WO,A1)
【文献】特開2012-022611(JP,A)
【文献】特開2016-090864(JP,A)
【文献】特開2012-113429(JP,A)
【文献】特開平11-247231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0046540(US,A1)
【文献】国際公開第2015/025369(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/087382(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/058247(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/087430(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/131194(WO,A1)
【文献】特開2000-136549(JP,A)
【文献】国際公開第2005/106139(WO,A1)
【文献】特開2002-115271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20-9/22
E02F 3/42-3/43
E02F 3/84-3/85
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機とを備える作業機械を制御する作業機械制御装置であって、
運搬車が検出した前記運搬車の位置情報を含む運搬車情報を取得する運搬車情報取得部と、
前記運搬車情報に基づいて、積荷を前記運搬車に積み込むための排土位置を特定する排土位置特定部と
前記旋回体および前記作業機を動作させるための操作信号を出力する操作装置からの操作信号を入力する操作信号入力部と、
特定された前記排土位置に前記バケットを自動的に移動させるための操作信号を生成する操作信号生成部と、
前記操作信号入力部に入力された前記操作装置からの操作信号および前記操作信号生成部が生成した操作信号のいずれかを出力する操作信号出力部であって、前記バケットを前記排土位置まで移動させる排土指示信号を受け付けた場合、前記操作信号生成部が生成した操作信号を出力する操作信号出力部と、
を備える作業機械制御装置。
【請求項2】
前記運搬車情報取得部は、前記運搬車の走行が停止しているときに前記運搬車情報を取得する
請求項1に記載の作業機械制御装置。
【請求項3】
前記運搬車情報に含まれる前記位置情報は測位信号に基づいて検出される
請求項1または請求項2に記載の作業機械制御装置。
【請求項4】
前記排土位置特定部は、前記運搬車の形状に関する情報を用いて前記排土位置を特定する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の作業機械制御装置。
【請求項5】
前記運搬車の形状に関する情報は前記運搬車の高さを含む
請求項4に記載の作業機械制御装置。
【請求項6】
前記バケットを前記排土位置まで移動させる排土指示信号が入力されたときの前記バケットの位置を特定するバケット位置特定部
を備える請求項1から請求項5の何れか1項に記載の作業機械制御装置。
【請求項7】
前記バケット位置特定部は、前記作業機械の車両情報に基づいて前記バケットの位置を特定される
請求項6に記載の作業機械制御装置。
【請求項8】
前記操作信号生成部は、高さが前記排土位置と等しく、かつ下方に前記運搬車が存在しない位置を経由するように前記操作信号を生成する
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の作業機械制御装置。
【請求項9】
少なくとも2台の運搬車のうち複数個所に設定された積込点のうち少なくとも2か所の積込点のそれぞれに存在する場合に、前記少なくとも2台の運搬車のうち1台の運搬車を積込対象に決定する積込対象決定部を備え、
前記操作信号生成部は、積込対象の前記運搬車が発進するまで、当該運搬車に係る前記排土位置に基づいて前記操作信号を生成する
請求項1から請求項8の何れか1項に記載の作業機械制御装置。
【請求項10】
前記運搬車情報取得部は、複数の運搬車のうち、積込点で停止したと判定された運搬車の前記運搬車情報を取得する
請求項1から請求項9の何れか1項に記載の作業機械制御装置。
【請求項11】
前記運搬車情報は、前記運搬車の方位情報を含む
請求項1から請求項10の何れか1項に記載の作業機械制御装置。
【請求項12】
前記運搬車は無人運搬車である
請求項1から請求項11の何れか1項に記載の作業機械制御装置。
【請求項13】
旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機とを備える作業機械の制御方法であって、
運搬車が検出した前記運搬車の位置情報を含む運搬車情報を取得するステップと、
前記運搬車情報に基づいて、積荷を前記運搬車に積み込むための排土位置を特定するステップと、
前記旋回体および前記作業機を動作させるための操作信号を出力する操作装置からの操作信号を入力するステップと、
特定された前記排土位置に前記バケットを自動的に移動させるための操作信号を生成するステップと、
入力された前記操作装置からの前記操作信号および生成した前記操作信号のいずれかを出力するステップと、
を備え、
前記操作信号を出力するステップにおいて、前記バケットを前記排土位置まで移動させる排土指示信号を受け付けた場合、生成した前記操作信号を出力する、
を備える制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および無人運搬車が配備された作業現場において作業機械を制御する作業機械制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、掘削位置、および排土位置を指定して油圧ショベルを自動運転させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-115271号公報
【文献】特開2002-332655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動制御の効率を向上するために、排土位置の指定を省略することが望まれている。 本発明の態様は、作業機械の制御のための排土位置を自動的に特定することができる作業機械制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、作業機械制御装置は、旋回中心まわりに旋回する旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機とを備える作業機械を制御する作業機械制御装置であって、無人運搬車の位置情報、方位情報、および予め定められた走行経路に基づいて、前記無人運搬車の走行を制御する運搬車制御装置から、前記バケットの到達範囲内の積込場所に存在する前記無人運搬車の位置情報および方位情報を取得する運搬車情報取得部と、前記位置情報および前記方位情報に基づいて、積荷を前記無人運搬車に積み込むための排土位置を特定する排土位置特定部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、作業機械制御装置は、作業機械の制御のための排土位置を自動的に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る遠隔操作システムの構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係る作業機械の外観図である。
図3】第1の実施形態に係る管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
図4】走行経路の例を表す図である。
図5】第1の実施形態に係る遠隔運転室の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図6】第1の実施形態に係るバケットの経路の例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る遠隔運転室の自動排土制御方法を示す第1のフローチャートである。
図8】第1の実施形態に係る遠隔運転室の自動排土制御方法を示す第2のフローチャートである。
図9】第2の実施形態に係る盛土場の走行経路の例を示す図である。
図10】第2の実施形態に係る遠隔運転室の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図11】第2の実施形態に係る無人運搬車の登録方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第1の実施形態〉
《作業システム》
図1は、第1の実施形態に係る遠隔操作システムの構成を示す概略図である。
作業システム1は、作業機械100と、無人運搬車である1または複数の運搬車両200と、管理装置300と、遠隔運転室500とを備える。作業機械100および運搬車両200は、作業現場(例えば、鉱山、採石場)で稼働する。遠隔運転室500は、作業現場から離れた地点(例えば、市街、作業現場内)に設けられる。
【0009】
運搬車両200は、管理装置300から受信する制御情報に基づいて無人走行する。運搬車両200と管理装置300とはアクセスポイント360を介した通信により接続される。管理装置300は、運搬車両200から運搬車両200の位置及び方位を取得し、これらに基づいて運搬車両200の走行に用いるコース情報を生成する。管理装置300は、コース情報を運搬車両200に送信する。運搬車両200は、受信したコース情報に基づいて無人走行する。つまり、作業システム1は、運搬車両200と管理装置300とを含む無人搬送システムを備える。アクセスポイント360は、無人搬送システムの通信に用いられる。
【0010】
管理装置300は、作業機械100および遠隔運転室500から運搬車両200の指示信号を受信し、これを運搬車両200に送信する。作業機械100と管理装置300とはアクセスポイント360を介した通信により接続される。また遠隔運転室500と管理装置300とはネットワークを介して接続される。作業機械100および遠隔運転室500から受信する運搬車両200の指示信号の例としては、進入指示信号、発進指示信号が挙げられる。進入指示信号は、運搬車両200に待機点P1から積込点P3まで進入することを指示する信号である。発進指示信号は、運搬車両200に積込の完了により積込点P3を発進し積込場A1からの退出を指示する信号である。
【0011】
作業機械100は、遠隔運転室500から送信される操作信号に基づいて遠隔操作される。作業機械100と遠隔運転室500とは、アクセスポイント350を介した通信により接続される。遠隔運転室500の第1操作装置530は、オペレータの操作により、作業機械100の操作を受け付け、制御装置540は、操作信号を管理装置300に送信する。作業機械100は、遠隔運転室500から受信した操作信号に基づいて動作する。つまり、作業システム1は、作業機械100と遠隔運転室500とから構成される遠隔運転システムを備える。アクセスポイント350は、遠隔運転システムの通信に用いられる。
【0012】
《運搬車両》
第1の実施形態に係る運搬車両200は、設定された走行経路を無人で走行する無人ダンプトラックである。なお、他の実施形態に係る運搬車両200は、ダンプトラック以外の運搬車であってもよい。
運搬車両200は、位置方位検出器210および制御装置220を備える。
【0013】
位置方位検出器210は、運搬車両200の位置および方位を検出する。位置方位検出器210は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。GNSSの例としては、GPS(Global Positioning System)が挙げられる。2つの受信器は、それぞれ運搬車両200の異なる位置に設置される。位置方位検出器210は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における運搬車両200の代表点(車体座標系の原点、例えば、運搬車両200のリアアクスルの中心位置)の位置を検出する。
位置方位検出器210は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、運搬車両200の向く方位を演算する。なお、他の実施形態においてはこれに限られず、例えば運搬車両200が慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を備え、慣性計測装置の計測結果に基づいて方位を演算してもよい。この場合、運搬車両200の走行軌跡に基づいて慣性計測装置のドリフトを補正してもよい。慣性計測装置を用いて方位を演算する場合、運搬車両200は1つの受信機を備えていればよい。
【0014】
制御装置220は、位置方位検出器210が検出した位置および方位を管理装置300に送信する。制御装置220は、管理装置300からコース情報および指示信号を受信する。制御装置220は、受信したコース情報および指示信号に基づいて運搬車両200を走行させ、または運搬車両200のベッセルを上下させる。
【0015】
《作業機械》
図2は、第1の実施形態に係る作業機械の外観図である。
第1の実施形態に係る作業機械100は、積込機械の一種である油圧ショベルである。なお、他の実施形態に係る作業機械100は、油圧ショベル以外の作業機械であってもよい。また図2に示す作業機械100はフェイスショベルであるが、バックホウショベルやロープショベルであってもよい。
作業機械100は、走行体130と、走行体130に支持される旋回体120と、油圧により作動し旋回体120に支持される作業機110とを備える。旋回体120は旋回中心を中心として旋回自在に支持される。
【0016】
作業機110は、ブーム111と、アーム112と、バケット113と、ブームシリンダ114と、アームシリンダ115と、バケットシリンダ116と、ブーム角度センサ117と、アーム角度センサ118と、バケット角度センサ119とを備える。
【0017】
ブーム111の基端部は、旋回体120にピンを介して取り付けられる。
アーム112は、ブーム111とバケット113とを連結する。アーム112の基端部は、ブーム111の先端部にピンを介して取り付けられる。
バケット113は、土砂などを掘削するための刃と掘削した土砂を収容するための容器とを備える。バケット113の基端部は、アーム112の先端部にピンを介して取り付けられる。
【0018】
ブームシリンダ114は、ブーム111を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ114の基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ114の先端部は、ブーム111に取り付けられる。
アームシリンダ115は、アーム112を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ115の基端部は、ブーム111に取り付けられる。アームシリンダ115の先端部は、アーム112に取り付けられる。
バケットシリンダ116は、バケット113を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ116の基端部は、ブーム111に取り付けられる。バケットシリンダ116の先端部は、バケット113に取り付けられる。
【0019】
ブーム角度センサ117は、ブーム111に取り付けられ、ブーム111の傾斜角を検出する。
アーム角度センサ118は、アーム112に取り付けられ、アーム112の傾斜角を検出する。
バケット角度センサ119は、バケット113に取り付けられ、バケット113の傾斜角を検出する。
第1の実施形態に係るブーム角度センサ117、アーム角度センサ118、およびバケット角度センサ119は、地平面に対する傾斜角を検出する。なお、他の実施形態に係る角度センサはこれに限られず、他の基準面に対する傾斜角を検出してもよい。例えば、他の実施形態においては、角度センサは、ブーム111、アーム112およびバケット113の基端部に設けられたポテンショメータによって相対回転角を検出してもよいし、ブームシリンダ114、アームシリンダ115およびバケットシリンダ116のシリンダ長さを計測し、シリンダ長さを角度に変換することで傾斜角を検出するものであってもよい。
【0020】
旋回体120には、運転室121が備えられる。運転室121の上部には、撮像装置122が設けられる。撮像装置122は、運転室121内の前方かつ上方に設置される。撮像装置122は、運転室121前面のフロントガラスを通して、運転室121の前方を撮像する。撮像装置122の例としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサ、およびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを用いた撮像装置が挙げられる。なお、他の実施形態においては、撮像装置122は、必ずしも運転室121内に設けられなくてもよく、撮像装置122は、少なくとも作業対象と作業機110とを撮像可能な位置に設けられていればよい。
【0021】
作業機械100は、撮像装置122、位置方位演算器123、傾斜計測器124、油圧装置125、制御装置126を備える。
【0022】
位置方位演算器123は、旋回体120の位置および旋回体120が向く方位を演算する。位置方位演算器123は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。2つの受信器は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。位置方位演算器123は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点(ショベル座標系の原点)の位置を検出する。
位置方位演算器123は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、旋回体120の向く方位を演算する。
【0023】
傾斜計測器124は、旋回体120の加速度および角速度を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢(例えば、ロール角、ピッチ角、ヨー角)を検出する。傾斜計測器124は、例えば旋回体120の下面に設置される。傾斜計測器124は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いることができる。
【0024】
油圧装置125は、作動油タンク、油圧ポンプ、および流量制御弁を備える。油圧ポンプは、図示しないエンジンの動力で駆動し、流量制御弁を介してブームシリンダ114、アームシリンダ115、およびバケットシリンダ116に作動油を供給する。流量制御弁はロッド状のスプールを有し、スプールの位置によってブームシリンダ114、アームシリンダ115、およびバケットシリンダ116に供給する作動油の流量を調整する。スプールは、制御装置126から受信する制御指令に基づいて駆動される。つまり、ブームシリンダ114、アームシリンダ115、およびバケットシリンダ116に供給される作動油の量は、制御装置126によって制御される。
【0025】
制御装置126は、撮像装置122が撮像した画像、旋回体120の旋回速度、位置および方位、ブーム111、アーム112およびバケット113の傾斜角、走行体130の走行速度、ならびに旋回体120の姿勢を、遠隔運転室500に送信する。以下、画像、旋回体120の旋回速度、位置および方位、ブーム111、アーム112およびバケット113の傾斜角、走行体130の走行速度、ならびに旋回体120の姿勢を、車両情報ともよぶ。なお、他の実施形態に係る車両情報はこれに限られない。例えば、他の実施形態に係る車両情報は、旋回速度、位置、方位、傾斜角、走行速度、および姿勢のいずれかを含まなくてもよいし、その他のセンサによって検出された値を含んでもよいし、検出された値から演算された値を含んでもよい。
制御装置126は、遠隔運転室500から操作信号を受信する。制御装置126は、受信した操作信号に基づいて、作業機110、旋回体120、または走行体130を駆動させる。
【0026】
《管理装置》
図3は、第1の実施形態に係る管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
管理装置300は、運搬車両200の走行を管理する。
管理装置300は、プロセッサ3100、メインメモリ3200、ストレージ3300、インタフェース3400を備えるコンピュータである。ストレージ3300は、プログラムp3を記憶する。プロセッサ3100は、プログラムp3をストレージ3300から読み出してメインメモリ3200に展開し、プログラムp3に従った処理を実行する。管理装置300は、インタフェース3400を介してネットワークに接続される。インタフェース3400には、アクセスポイント360が接続される。管理装置300は、アクセスポイント360を介して作業機械100および運搬車両200と無線接続される。
【0027】
ストレージ3300は、走行経路記憶部3301、位置方位記憶部3302としての記憶領域を有する。ストレージ3300の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ3300は、管理装置300の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース3400を介して管理装置300に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ3300は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0028】
走行経路記憶部3301は、運搬車両200ごとに走行経路Rを記憶する。図4は、走行経路の例を表す図である。走行経路Rは、2つのエリアA(例えば、積込場A1と排土場A2)を結ぶあらかじめ定められた接続経路R1、ならびにエリアA内の経路である進入経路R2、アプローチ経路R3および退出経路R4を有する。進入経路R2は、エリアA内において接続経路R1の一端である待機点P1と所定の切り返し点P2とを接続する経路である。アプローチ経路R3は、エリアA内の切り返し点P2と積込点P3または排土点P4とを接続する経路である。退出経路R4は、エリアA内の積込点P3または排土点P4と接続経路R1の他端である出口点P5とを接続する経路である。積込点P3は、作業機械100のオペレータの操作によって設定される点である。切り返し点P2は、積込点P3の位置に応じて管理装置300によって設定される点である。
【0029】
位置方位記憶部3302は、各運搬車両200それぞれの位置情報および方位情報を記憶する。
【0030】
プロセッサ3100は、プログラムp3の実行により、位置方位収集部3101、走行コース生成部3102を備える。
【0031】
位置方位収集部3101は、アクセスポイント360を介して運搬車両200から運搬車両200の位置情報および方位情報を受信する。位置方位収集部3101は、受信した位置情報および方位情報を位置方位記憶部3302に記憶させる。
【0032】
走行コース生成部3102は、走行経路記憶部3301が記憶する走行経路と、位置方位記憶部3302が記憶する位置情報および方位情報とに基づいて、運搬車両200の移動を許可する領域の情報を含むコース情報を生成する。生成されたコース情報は、運搬車両200に送信される。コース情報は、走行経路上に所定間隔で設定された地点の位置情報、その地点での目標速度情報、および他の運搬車両200の走行許可領域と重複しない走行許可領域情報を含む。
【0033】
走行コース生成部3102は、遠隔運転室500から進入指示信号を受信するまで、コース情報が示す領域に進入経路R2およびアプローチ経路R3を含めない。これにより、運搬車両200は、進入指示信号を受信するまで待機点P1で待機することとなる。走行コース生成部3102は、進入指示信号を受信した場合に、進入経路R2およびアプローチ経路R3を含み、退出経路R4を含まないコース情報を生成する。これにより、運搬車両200は、待機点P1から発進して積込点P3まで走行し、積込点P3で停止することとなる。走行コース生成部3102は、発進指示信号を受信した場合に、退出経路R4を含むコース情報を生成する。なお、本実施形態に係る作業システム1では、運搬車両200が待機点P1で進入指示信号を受信するまで待機するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、運搬車両200が待機する位置は、切り返し点P2でもよいし、進入経路R2またはアプローチ経路R3の途中の地点であってもよい。
【0034】
《遠隔運転室》
遠隔運転室500は、運転席510、表示装置520、第1操作装置530、第2操作装置531、制御装置540を備える。
表示装置520は、運転席510の前方に配置される。表示装置520は、オペレータが運転席510に座ったときにオペレータの眼前に位置する。表示装置520は、図1に示すように、並べられた複数のディスプレイによって構成されてもよいし、1つの大きなディスプレイによって構成されてもよい。また、表示装置520は、プロジェクタ等によって曲面や球面に画像を投影するものであってもよい。
【0035】
第1操作装置530は、遠隔運転システム用の操作装置である。第1操作装置530は、オペレータの操作に応じて、ブームシリンダ114の操作信号、アームシリンダ115の操作信号、バケットシリンダ116の操作信号、旋回体120の左右への旋回操作信号、走行体130の前後進のための走行操作信号を生成し制御装置540に出力する。第1操作装置530は、例えばレバー、ノブスイッチおよびペダルにより構成される。
第2操作装置531は、オペレータの操作により、運搬車両200への進入指示信号、発進指示信号、停止指示信号、停止解除信号を管理装置300に送信する。第2操作装置531は、例えばタッチパネル等により構成される。
第1操作装置530および第2操作装置531は、運転席510の近傍に配置される。第1操作装置530および第2操作装置531は、オペレータが運転席510に座ったときにオペレータの操作可能な範囲内に位置する。
【0036】
制御装置540は、作業機械100から受信した画像を表示装置520に表示させ、第1操作装置530の操作を表す操作信号を作業機械100に送信する。
【0037】
図5は、第1の実施形態に係る遠隔運転室の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
制御装置540は、プロセッサ5100、メインメモリ5200、ストレージ5300、インタフェース5400を備えるコンピュータである。ストレージ5300は、プログラムp5を記憶する。プロセッサ5100は、プログラムp5をストレージ5300から読み出してメインメモリ5200に展開し、プログラムp5に従った処理を実行する。制御装置540は、インタフェース5400を介してネットワークに接続される。
【0038】
ストレージ5300の例としては、HDD、SSD、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ5300は、制御装置540の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース5400を介して制御装置540に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ5300は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0039】
プロセッサ5100は、プログラムp5の実行により、積込車両情報取得部5101、表示制御部5102、運搬車両情報取得部5103、操作信号入力部5104、バケット位置特定部5105、排土位置特定部5106、回避位置特定部5107、操作信号生成部5109、操作信号出力部5110を備える。
【0040】
積込車両情報取得部5101は、作業機械100から車両情報を取得する。
【0041】
表示制御部5102は、積込車両情報取得部5101が受信した車両情報に含まれる画像を表示するための表示信号を生成し、表示装置520に出力する。
【0042】
運搬車両情報取得部5103は、管理装置300から各運搬車両200の位置情報および方位情報を取得する。
【0043】
操作信号入力部5104は、第1操作装置530から操作信号の入力を受け付ける。操作信号には、ブーム111の操作信号、アーム112の操作信号、バケット113の操作信号、旋回体120の旋回操作信号、走行体130の走行操作信号、および作業機械100の排土指示信号が含まれる。排土指示信号は、バケット113を排土位置まで移動させて排土を行う自動排土制御の指示を行う信号である。
【0044】
バケット位置特定部5105は、積込車両情報取得部5101が受信した車両情報に基づいて、ショベル座標系におけるアーム112の先端の位置Pおよびアーム112の先端からバケット113の最下点までの高さHbを特定する。バケット113の最下点とは、バケット113の外形のうち地表面からの距離が最も短い点をいう。特に、バケット位置特定部5105は、排土指示信号の入力を受け付けたときのアーム112の先端の位置Pを掘削完了位置P10として特定する。図6は、第1の実施形態に係るバケットの経路の例を示す図である。具体的には、バケット位置特定部5105は、ブーム111の傾斜角と既知のブーム111の長さ(基端部のピンから先端部のピンまでの距離)とに基づいて、ブーム111の長さの垂直方向成分および水平方向成分を求める。同様に、バケット位置特定部5105は、アーム112の長さの垂直方向成分および水平方向成分を求める。バケット位置特定部5105は、作業機械100の位置から、作業機械100の方位および姿勢から特定される方向に、ブーム111およびアーム112の長さの垂直方向成分の和および水平方向成分の和だけ離れた位置を、アーム112の先端の位置P(図2に示すアーム112の先端部のピンの位置P)として特定する。また、バケット位置特定部5105は、バケット113の傾斜角と既知のバケットの形状とに基づいて、バケット113の鉛直方向の最下点を特定し、アーム112の先端から最下点までの高さHbを特定する。
【0045】
排土位置特定部5106は、操作信号入力部5104に排土指示信号が入力された場合に、運搬車両情報取得部5103が取得した運搬車両200の位置情報および方位情報に基づいて、排土位置P13を特定する。すなわち、排土位置特定部5106は、運搬車両200が積込点P3で停止したときの位置情報および方位情報に基づいて、排土位置P13を特定する。排土位置特定部5106は、積込車両情報取得部5101が取得した旋回体120の位置、方位および姿勢に基づいて運搬車両200の位置情報が示す基準位置P21を現場座標系からショベル座標系に変換し、当該基準位置P21から、当該運搬車両200の方位情報が示す方向に距離D1だけ離れた排土点P22を特定する。距離D1は、基準位置P21とベッセル上の排土点P22との間の既知の距離である。排土位置特定部5106は、特定した位置P22から、作業機械100の旋回体120の向く方向にバケット113の中心からアーム112の先端までの距離D2だけ離れた位置を、排土位置P13の平面位置として特定する。排土位置特定部5106は、運搬車両200の高さHtに、バケット位置特定部5105が特定したアーム112の先端から最下点までの高さHbと、バケット113の制御余裕分の高さとを加算することで、排土位置P13の高さを特定する。なお、他の実施形態においては、排土位置特定部5106は、制御余裕分の高さを加算せずに排土位置P13を特定してもよい。すなわち、排土位置特定部5106は、高さHtに高さHbを加算することで、排土位置P13の高さを特定してもよい。
【0046】
回避位置特定部5107は、排土位置特定部5106が特定した排土位置P13と、積込車両情報取得部5101が取得した作業機械100の位置と、運搬車両情報取得部5103が取得した運搬車両200の位置及び方位に基づいて、運搬車両200と干渉しない点である干渉回避位置P12を特定する。干渉回避位置P12は、排土位置P13と同じ高さを有し、かつ旋回体120の旋回中心からの距離が、当該旋回中心から排土位置P13までの距離と等しく、かつ下方に運搬車両200が存在しない位置である。回避位置特定部5107は、例えば、旋回体120の旋回中心を中心とし、当該旋回中心と排土位置との距離を半径とする円を特定し、当該円上の位置のうち、バケット113の外形が平面視で運搬車両200と干渉せず、かつ排土位置P13に最も近い位置を、干渉回避位置P12と特定する。回避位置特定部5107は、運搬車両200の位置、方位および既知の外形、ならびにバケット113の既知の形状に基づいて、運搬車両200とバケット113とが干渉するか否かを判定することができる。ここで、「同じ高さ」、「距離が等しい」とは、必ずしも高さまたは距離が完全に一致するものに限られず、多少の誤差やマージンが許容されるものとする。
【0047】
操作信号生成部5109は、排土位置特定部5106が特定した排土位置P13、回避位置特定部5107が特定した干渉回避位置P12に基づいて、バケット113を排土位置P13まで移動させるための操作信号を生成する。すなわち、操作信号生成部5109は、掘削完了位置P10から、位置P11および干渉回避位置P12を経由して、排土位置P13に到達するように、操作信号を生成する。また、操作信号生成部5109は、ブーム111およびアーム112が駆動してもバケット113の角度が変化しないように、バケット113の操作信号を生成する。
【0048】
操作信号出力部5110は、操作信号入力部5104に入力された操作信号または操作信号生成部5109が生成した操作信号を、作業機械100に出力する。
【0049】
《方法》
運搬車両200は、管理装置300が生成するコース情報によって走行経路Rに沿って走行し、待機点P1で停止する。作業機械100のオペレータは、第2操作装置531を操作することで(例えば、所定のボタンを押下することで)、第2操作装置531に進入指示信号を入力する。進入指示信号は、第2操作装置531から管理装置300に送信される。これによって、管理装置300が進入経路R2およびアプローチ経路R3の領域を示すコース情報を生成する。運搬車両200は、アプローチ経路R3に沿って走行し、積込点P3で停止する。オペレータは、第1操作装置530の操作により作業機械100のバケット113で土砂をすくい、第1操作装置530のノブスイッチを操作して排土指示信号を生成し出力する。
【0050】
図7は、第1の実施形態に係る遠隔運転室の自動排土制御方法を示す第1のフローチャートである。図8は、第1の実施形態に係る遠隔運転室の自動排土制御方法を示す第2のフローチャートである。制御装置540は、オペレータから排土指示信号の入力を受け付けると、図7に示す自動排土制御を実行する。
【0051】
積込車両情報取得部5101は、作業機械100から、旋回体120の位置および方位、ブーム111、アーム112およびバケット113の傾斜角、ならびに旋回体120の姿勢を取得する(ステップS1)。運搬車両情報取得部5103は、管理装置300から、運搬車両200の位置および方位を取得する(ステップS2)。
【0052】
バケット位置特定部5105は、積込車両情報取得部5101が取得した車両情報に基づいて、排土指示信号の入力時のアーム112の先端の位置P、およびアーム112の先端からバケット113の最下点までの高さを特定する(ステップS3)。バケット位置特定部5105は、当該位置Pを掘削完了位置P10と特定する。
【0053】
排土位置特定部5106は、ステップS1で取得した旋回体120の位置、方位および姿勢に基づいて運搬車両情報取得部5103が取得した運搬車両200の位置情報を現場座標系からショベル座標系に変換する。排土位置特定部5106は、運搬車両200の位置情報および方位情報、ならびに運搬車両200の既知の形状に基づいて、排土位置P13の平面位置を特定する(ステップS4)。このとき、排土位置特定部5106は、運搬車両200の既知の高さHtに、ステップS3で特定したアーム112の先端からバケット113の最下点までの高さHbと、バケット113の制御余裕分の高さとを加算することで、排土位置P13の高さを特定する(ステップS5)。
【0054】
回避位置特定部5107は、積込車両情報取得部5101が取得した旋回体120の位置および方位に基づいて、旋回体120の旋回中心の位置を特定する(ステップS6)。回避位置特定部5107は、旋回中心から排土位置P13までの平面距離を特定する(ステップS7)。回避位置特定部5107は、旋回中心から特定した平面距離だけ離れた位置であって、バケット113の外形が平面視で運搬車両200と干渉せず、かつ排土位置P13から最も近い位置を、干渉回避位置P12として特定する(ステップS8)。
【0055】
操作信号生成部5109は、アーム112の先端の位置が排土位置P13に至ったか否かを判定する(ステップS9)。アーム112の先端の位置が排土位置P13に至っていない場合(ステップS9:NO)、操作信号生成部5109は、アーム112の先端の高さが干渉回避位置P12の高さ未満であり、または旋回体120の旋回中心からアーム112の先端までの平面距離が旋回中心から干渉回避位置P12までの平面距離未満であるか否かを判定する(ステップS10)。バケット113の高さが干渉回避位置P12の高さ未満である場合、または旋回中心からアーム112の先端までの平面距離が旋回中心から干渉回避位置P12までの平面距離未満である場合(ステップS10:YES)、操作信号生成部5109は、ブーム111およびアーム112を干渉回避位置P12の高さまで上昇させる操作信号を生成する(ステップS11)。このとき、操作信号生成部5109は、ブーム111およびアーム112の位置および速度に基づいて、操作信号を生成する。
【0056】
また操作信号生成部5109は、生成したブーム111およびアーム112の操作信号に基づいてブーム111およびアーム112の角速度の和を算出し、当該角速度の和と同じ速度でバケット113を回動させる操作信号を生成する(ステップS12)。これにより、操作信号生成部5109は、バケット113の対地角を保持する操作信号を生成することができる。なお、他の実施形態においては、操作信号生成部5109は、ブーム角度センサ117、アーム角度センサ118およびバケット角度センサ119の検出値より算出されるバケット113の対地角度が、自動排土制御開始時の対地角度と等しくなるようにバケット113を回動させる操作信号を生成してもよい。
【0057】
バケット113の高さが干渉回避位置P12の高さ以上である場合(ステップS10:NO)、操作信号生成部5109は、ブーム111、アーム112およびバケット113の操作信号を生成しない。
【0058】
次に、操作信号生成部5109は、バケット113の高さが掘削完了位置P10の高さから干渉回避位置P12の高さに至るまでの時間である上昇時間を特定する(ステップS13)。操作信号生成部5109は、旋回操作信号を生成する(ステップS14)。このとき、操作信号生成部5109は、バケット113の上昇時間に基づいて、バケット113の高さが干渉回避位置P12の高さ以上になった後に、旋回してアーム112の先端が干渉回避位置P12を通過するように、旋回操作信号を生成する。
【0059】
ステップS9からステップS14の処理でブーム111、アーム112およびバケット113の操作信号、並びに旋回体120の旋回操作信号の少なくともいずれか1つを生成すると、操作信号出力部5110は、生成した操作信号を作業機械100に出力する(ステップS15)。積込車両情報取得部5101は、作業機械100から車両情報を取得する(ステップS16)。これにより、積込車両情報取得部5101は、出力した操作信号によって駆動した後の車両情報を取得することができる。制御装置540は、処理をステップS9に戻し、操作信号の生成を繰り返し実行する。
【0060】
他方、ステップS9にて、アーム112の先端の位置が排土位置P13に至っている場合(ステップS9:YES)、操作信号生成部5109は操作信号を生成しない。したがって、アーム112の先端の位置が排土位置P13に至ると、作業機110および旋回体120は停止する。アーム112の先端の位置が排土位置P13に至っている場合(ステップS9:YES)、すなわちステップS9からステップS14の処理で操作信号生成部5109が操作信号を生成していない場合、操作信号生成部5109は、バケット113を排土させる操作信号を生成する(ステップS17)。バケット113を排土させる操作信号の例としては、バケット113を排土方向に回動させる操作信号や、バケット113がクラムバケットである場合におけるクラムを開く操作信号が挙げられる。操作信号出力部5110は、生成した操作信号を作業機械100に出力する(ステップS18)。そして、制御装置540は、自動排土制御を終了する。
【0061】
ここで、図6を用いて、自動排土制御時の作業機械100の動作について説明する。 自動排土制御が開始されると、ブーム111およびアーム112は、掘削完了位置P10から位置P11へ向けて上昇する。このとき、バケット113は、掘削終了時の角度を維持するように駆動する。
【0062】
アーム112の先端が位置P11にくると、旋回体120は排土位置P13へ向けて旋回を開始する。このとき、アーム112の先端は干渉回避位置P12の高さに至っていないため、ブーム111およびアーム112の上昇は継続される。アーム112の先端が位置P11から干渉回避位置P12へ移動する途中で、アーム112の先端の高さが干渉回避位置P12と等しくなるように、ブーム111、アーム112およびバケット113は減速する。
【0063】
アーム112の先端が干渉回避位置P12にくると、作業機110の駆動は停止する。一方、旋回体120は旋回を継続する。すなわち、干渉回避位置P12から排土位置P13までの間、アーム112の先端は、作業機110の駆動によらず、旋回体120の旋回のみにより移動する。アーム112の先端が位置P11から排土位置P13へ移動する途中で、アーム112の先端の位置が排土位置P13と等しくなるように、旋回体120は減速する。
【0064】
アーム112の先端が排土位置P13にくると、作業機110および旋回体120の駆動は停止する。その後、バケット113が排土動作を実行する。
【0065】
上述の自動排土制御により、作業機械100は、バケット113がすくった土砂を自動的に運搬車両200に排土することができる。オペレータは、作業機110による掘削と、排土指示信号の入力による自動排土制御とを、運搬車両200の積載量が最大積載量を超えない程度に繰り返し実行する。そして、オペレータは、第2操作装置531を操作することで、第2操作装置531に発進指示信号を入力する。発進指示信号は、第2操作装置531から、管理装置300に送信される。これによって、管理装置300が退出経路R4の領域を含むコース情報を生成する。運搬車両200は、積込点P3から発進し、退出経路R4に沿って走行し、積込場A1から退出する。
【0066】
《作用・効果》
第1の実施形態によれば、制御装置540は、運搬車両200が検出した運搬車両200の位置情報および方位情報に基づいて、土砂を運搬車両200に積み込むための排土位置を特定する。これにより、制御装置540は、オペレータ等によって排土位置の指定を受けることなく、作業機械100を自動運転させることができる。
【0067】
また、第1の実施形態によれば、制御装置540は、バケット113の掘削完了位置P10を特定し、バケット113を、掘削完了位置P10から排土位置P13まで移動させるための操作信号を生成する。これにより、制御装置540は、バケット113がすくった土砂を自動的に運搬車両200に排土することができる。
【0068】
また、第1の実施形態によれば、制御装置540は、バケット113が干渉回避位置P12を経由するように制御信号を生成する。第1の実施形態に係る干渉回避位置P12は、高さが排土位置P13と等しく、かつ旋回体120の旋回中心からの距離が旋回中心から排土位置P13までの距離と等しく、かつバケット113の外形を考慮して下方に運搬車両200が存在しない位置である。これにより、旋回体120の旋回によってバケット113が運搬車両200に接触することを確実に防ぐことができる。
【0069】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態に係る作業システム1では、作業機械100は片側積込を行う。すなわち、第1の実施形態によれば、複数の運搬車両200が1つの走行経路Rに基づいて走行することで、1つの積込点P3に順次運搬車両200が停止する。これにより、作業機械100は、積込点P3に位置する運搬車両200に順次積込を行う。
これに対し、第2の実施形態に係る作業システム1では、作業機械100は両側積込を行う。図9は、第2の実施形態に係る積込場の走行経路の例を示す図である。第2の実施形態においては、2つの走行経路Rが設けられることで、作業機械100の左右両側に積込点P3が生成される。これにより、作業機械100が一方の積込点P3に停車する運搬車両200に積込作業をしている間、他方の積込点P3に運搬車両200を待機させることができる。このように両側積込を行うことで、作業機械100は、ある積込作業を終えた直後に次の積込作業を開始することができる。なお、第2の実施形態に係る積込場A1は2か所の積込点P3を有するが、他の実施形態ではこれに限られず、積込場A1が3か所以上の積込点P3を有していてもよい。
【0070】
《遠隔運転室の制御装置》
図10は、第2の実施形態に係る遠隔運転室の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
第2の実施形態に係る制御装置540は、第1の実施形態の構成に加え、積込対象決定部5111をさらに備える。また、第2の実施形態に係る制御装置540のメインメモリ5200には、運搬車両キュー5201の記憶領域が確保される。
【0071】
運搬車両キュー5201は、積込対象となる運搬車両200の識別情報を、積込順に格納する。運搬車両200の識別情報は、運搬車両キュー5201の先頭から取り出され(Dequeue)、末尾に追加される(Enqueue)。
積込対象決定部5111は、運搬車両キュー5201の先頭から運搬車両200の識別情報を取り出し、当該識別情報が示す運搬車両200を、積込対象に決定する。積込対象決定部5111は、運搬車両200が積込点P3で停止したときに、当該運搬車両200の識別情報を運搬車両キュー5201の末尾に追加する。
【0072】
ここで、第2の実施形態に係る制御装置540の動作について説明する。
図11は、第2の実施形態に係る無人運搬車の登録方法を示すフローチャートである。 管理装置300は、一定時間ごとに運搬車両200の位置に基づいて、運搬車両200が積込点P3で停止しているか否かを判定する。管理装置300は、運搬車両200が積込点P3で停止していると判定すると、運搬車両200が積込点P3で停止していることを遠隔運転室500に通知する。当該通知には、運搬車両200の識別情報が含まれる。
【0073】
遠隔運転室500の制御装置540は、一定時間ごとに図11に示す処理を実行する。制御装置540の運搬車両情報取得部5103は、管理装置300から運搬車両200が積込点P3で停止したことを示す通知を受信したか否かを判定する(ステップS101)。運搬車両200が積込点P3で停止したことを示す通知を受信した場合(ステップS101:YES)、積込対象決定部5111は、当該通知に含まれる運搬車両200の識別情報を運搬車両キュー5201の末尾に追加する(ステップS102)。他方、運搬車両200が積込点P3に到達したことを示す通知を受信していない場合(ステップS101:NO)、積込対象決定部5111は、識別情報を運搬車両キュー5201に追加しない。
【0074】
そして、制御装置540の積込対象決定部5111は、図7に示すフローチャートのステップS4において、運搬車両キュー5201の先頭の識別情報を読み出し、排土位置特定部5106は、当該識別情報が示す運搬車両200について、排土位置を特定する。積込対象決定部5111は、操作信号入力部5104に発進指示信号が入力された場合に、運搬車両キュー5201の先頭から識別情報を取り出す。
【0075】
《作用・効果》
第2の実施形態に係る制御装置540は、複数の積込点P3のそれぞれに運搬車両200が存在する場合に、複数の運搬車両200のうち、積込点P3に最も早く到着した運搬車両200に係る排土位置P13に基づいて操作信号を生成する。積み込みが完了した運搬車両200に発信指示信号を送信した後、運搬車両キュー5201の先頭の識別情報を読み出し次の運搬車両200に積み込みを行い、これを繰り返す。これにより、制御装置540は、作業機械100に運搬車両200の到着順に、積み込み処理をさせることができる。
これにより、第2の実施形態に係る制御装置540は、例えば作業機械100の旋回角度が最小になるように積込対象を決定する場合と比較して、積込のために運搬車両200が停止している時間を短くすることができる。
【0076】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、第2の実施形態に係る制御装置540は、運搬車両キュー5201に格納された情報に基づいて積込対象を決定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置540は、複数の運搬車両200の識別情報と、積込対象を示すフラグとを関連付けて記憶するデータベースに基づいて積込対象を決定してもよい。この場合、制御装置540は、第2の実施形態と同様に、操作信号入力部5104に発進指示信号が入力された場合にフラグを書き換える。
【0077】
第2の実施形態に係る制御装置540は、複数の積込点P3のそれぞれに運搬車両200が存在する場合に、積込点P3に最も早く到着した運搬車両200を積込対象に決定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置540は、複数の積込点P3のそれぞれに存在する運搬車両200のうち、現在の積載量が最も多いものを積込対象に決定するなど、任意の方法で積込対象を決定してもよい。
【0078】
上述した実施形態に係る作業システム1では、遠隔運転室500の制御装置540が管理装置300から受信した運搬車両200の位置情報および方位情報に基づいて自動排土処理の計算および積込対象の決定を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業システム1は、作業機械100の制御装置126が管理装置300から受信した運搬車両200の位置情報および方位情報に基づいて自動排土処理の計算および積込対象の決定を行ってもよい。
上述した実施形態に係る作業システム1では、遠隔運転室500の制御装置540が管理装置300から受信した運搬車両200の位置情報および方位情報に基づいて自動排土処理の計算を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業システム1は、作業機械100の制御装置126が管理装置300から受信した運搬車両200の位置情報および方位情報に基づいて自動排土処理の計算を行ってもよい。
【0079】
上述した実施形態に係る作業機械100は遠隔操作により操作されるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業機械100は、運転室121にオペレータが搭乗してレバーやスイッチを操作するものであってもよい。この場合、作業機械100の制御装置126が、管理装置300から受信した運搬車両200の位置情報および方位情報に基づいて自動排土処理の計算および積込対象の決定を行ってもよい。
また、上述した実施形態では、作業機械100は管理装置300を介して運搬車両200の位置および方位を取得するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業機械100は、車車間通信により運搬車両200から運搬車両200の位置および方位を取得してもよい。
【0080】
上述した実施形態に係る作業システム1では、運搬車両200が積込点P3で停止したときの位置情報および方位情報に基づいて、排土位置P13を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、排土位置P13が運搬車両200の位置情報および方位情報ではなく積込点P3の位置に基づいて特定されてもよい。この場合、作業システム1は、運搬車両200が停止する前に積込点P3を特定することができる。
なお、上述した実施形態に係る作業システム1では、作業機械100が積荷として土砂を積み込むが、他の実施形態においてはこれに限られない。例えば、他の実施形態に係る積荷は、鉱石、砕石、石炭などであってもよい。
【0081】
上述した実施形態に係る制御装置540においては、プログラムp5がストレージ5300に格納される場合について説明したが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、プログラムp5が通信回線によって制御装置540に配信されるものであってもよい。この場合、配信を受けた制御装置540が当該プログラムp5をメインメモリ5200に展開し、上記処理を実行する。
上述した実施形態において、排土位置など自動排土制御をショベル座標系で取り扱ったが、現場座標系で取り扱ってもよい。
【0082】
また、プログラムp5は、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムp5は、上述した機能をストレージ5300に既に記憶されている他のプログラムp5との組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムp5との組み合わせで実現するものであってもよい。
【0083】
また、制御装置126、管理装置300、および制御装置540は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部が当該PLDによって実現されてよい。
【符号の説明】
【0084】
1…作業システム 100…作業機械 200…運搬車両 300…管理装置 3101…位置方位収集部 3102…走行コース生成部 3103…転送部 3301…走行経路記憶部 3302…位置方位記憶部 500…遠隔運転室 510…運転席 520…表示装置 530…操作装置 540…制御装置 5101…積込車両情報取得部 5102…表示制御部 5103…運搬車両情報取得部 5104…操作信号入力部 5105…バケット位置特定部 5106…排土位置特定部 5107…回避位置特定部 5108…旋回タイミング特定部 5109…操作信号生成部 5110…操作信号出力部 5111…積込対象決定部
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