(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】像加熱装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/20 560
G03G15/20 555
(21)【出願番号】P 2022025647
(22)【出願日】2022-02-22
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本家 尚志
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-030133(JP,A)
【文献】特開2018-017910(JP,A)
【文献】特開2020-052247(JP,A)
【文献】特開2012-189806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材の搬送方向と直交する記録材の幅方向に並ぶ複数の発熱ブロックを有するヒータと、
記録材を挟持するニップを形成するニップ形成部と、
複数の前記発熱ブロックへ供給する電力を制御する制御部と、
を備え、
画像が形成された記録材を前記ヒータの熱によって前記ニップで挟持しながら加熱する像加熱装置であって、
前記ヒータは、前記発熱ブロックが前記幅方向において記録材の搬送基準位置に対してそれぞれ1つずつ対称な位置に配置される第1の発熱体グループと、前記第1の発熱体グループのそれぞれの前記発熱ブロックに対して前記幅方向における前記ヒータの端部側にそれぞれ1つずつ隣接するように前記発熱ブロックが前記搬送基準位置に対して対称な位置に配置される第2の発熱体グループと、前記第1の発熱体グループのそれぞれの前記発熱ブロックに対して前記幅方向における前記ヒータの中央側に隣接するように前記第1の発熱体グループの2つの前記発熱ブロックの間に配置される前記発熱ブロックと、を有し、
前記制御部が、前記第1の発熱体グループの2つの前記発熱ブロックに対して第1の共通回路を介して電力を供給し、前記第2の発熱体グループの2つの前記発熱ブロックに対して第2の共通回路を介して電力を供給し、前記第1の発熱体グループの2つの前記発熱ブロックの間に配置される前記発熱ブロックに対して前記第1の共通回路および前記第2の共通回路とは異なる回路を介して電力を供給し、
前記幅方向において前記第1の発熱体グループに含まれる発熱ブロックと重なるように前記ヒータに配置され、前記第1の発熱体グループに含まれる発熱ブロックの温度上昇に応じて前記発熱ブロックに供給される電力を遮断する第1の安全素子と、
前記幅方向において前記第2の発熱体グループに含まれる発熱ブロックと重なるように前記ヒータに配置され、前記第2の発熱体グループに含まれる発熱ブロックの温度上昇に応じて前記発熱ブロックに供給される電力を遮断する第2の安全素子と、
を有する像加熱装置において、
前記第1の安全素子は、前記幅方向において前記搬送基準位置に対して一方の側に配置され、他方の側に配置されておらず、
前記第2の安全素子は、前記幅方向において前記搬送基準位置に対して他方の側に配置され、一方の側に配置されて
おらず、
前記第1の発熱体グループに含まれる前記発熱ブロックの温度を検知するための第1の温度検知素子と、
前記第2の発熱体グループに含まれる前記発熱ブロックの温度を検知するための第2の温度検知素子と、
が前記ヒータに配置されており、
前記ヒータにおける前記第1の安全素子および前記第2の安全素子が配置されている面に対して裏側の面に前記第1の温度検知素子および前記第2の温度検知素子が配置されており、前記第1の安全素子および前記第2の安全素子が配置されている面には前記第1の温度検知素子および前記第2の温度検知素子が配置されていないことを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記第2の安全素子の前記幅方向における長さが前記第2の発熱体グループのうち片方の前記発熱ブロックの前記幅方向における長さより長いことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記ニップ形成部は、内側に前記ヒータが配置される筒状のフィルムと、前記フィルムの外面に接触する加圧部材と、を含み、
前記ニップは、前記フィルムと前記加圧部材との間に、前記フィルムを介して前記ヒータと前記加圧部材によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記第1の安全素子と前記第2の安全素子は、前記ヒータにおける前記加圧部材との間で前記ニップを形成する面とは反対側の面に接触するように配置される請求項3に記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記第1の安全素子と前記第2の安全素子は、サーモスタット、サーモスイッチ、又は温度ヒューズであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記第1の安全素子は、前記第1の共通回路に接続される端子を前記幅方向の両端に有し、
前記第2の安全素子は、前記第2の共通回路に接続される端子を前記幅方向の両端に有していることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1の温度検知素子が検知する温度に基づいて前記第1の発熱体グループに含まれる発熱ブロックへ供給する電力を制御し、前記第2の温度検知素子が検知する温度に基づいて前記第2の発熱体グループに含まれる発熱ブロックへ供給する電力を制御することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項8】
前記第1の温度検知素子と前記第2の温度検知素子は、サーミスタであることを特徴とする請求項7に記載の像加熱装置。
【請求項9】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する定着部と、
を有する画像形成装置において、
前記定着部が請求項1~8のいずれか1項に記載の像加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式を利用したプリンタ、複写機等の画像形成装置に関する。また、画像形成装置に搭載されている定着器や記録材に定着されたトナー画像を再度加熱することにより、トナー画像の光沢度を向上させる光沢付与装置等の像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いる定着装置として、フィルム加熱方式の定着装置が知られている。フィルム加熱方式の定着装置においては、以下に示す非通紙部昇温が課題として知られる。非通紙部昇温とは、この定着装置を用いた画像形成装置において、小サイズ紙を連続プリントすると、ニップ部の長手方向において、紙が通過しない領域の温度が徐々に上昇するという現象である。非通紙部の温度が高くなりすぎると、ヒータ、定着フィルムや加圧ローラ等の装置内の各パーツにダメージを与えることになる。また、非通紙部昇温が発生している状態で、大サイズ紙をプリントすると、小サイズ紙の非通紙部に相当する領域で、トナーが高温オフセットするといった現象が発生する場合がある。
【0003】
この非通紙部昇温を抑制する手法の一つとして、特許文献1に示す構成の定着装置が提案されている。すなわち、発熱抵抗体(発熱体)を基板上にヒータの長手方向に分割させて配置したヒータ(以降、分割ヒータ)を備えた定着装置である。この構成を用いることで、ヒータ上の発熱体をヒータ長手方向において複数の発熱領域(以降、発熱ブロックHBと称する)に分割し、記録材のサイズに応じてヒータの発熱分布を切り替えることができる。こうすることで、小サイズ紙を通紙する場合においても非通紙部昇温を抑制することができる。
【0004】
さらに、特許文献1には、複数の発熱体に電力を供給する回路を共通化する構成も提案されている。すなわち、紙中心に対して左右対称に設置された複数の発熱ブロックに対し、共通のドライブを用いて電力供給を行う構成である。この構成を採用することで、装置の小型化、低コスト化、省エネ化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記分割ヒータを使った定着装置を用いる場合、装置の故障を考慮すると、ドライブ回路ごとに安全素子を設けることが望ましい。すなわち、共通のドライブ回路で給電を行う複数の発熱ブロックのうち、いずれか1つ以上に安全素子を設置することが望ましい。もし、いずれかのドライブ回路が制御不能となり異常発熱しても、ドライブ回路ごとに設置した安全素子が高温を検知し、給電を素早くストップすることができる。ここで、安全素子としては、小型のサーモスタット(以降、サーモスイッチと称する)が、機能、コストの観点から広く用いられている。
【0007】
特に、定着フィルムの内部空間のように狭い空間に配置されるサーモスイッチは、安全素子としての機能を持たせるため、定着フィルムの長手方向に細長い形状にせざるを得ないことが多い。このようなサーモスイッチは、サーモスイッチの長手両端にコネクタ端子を備えているため、設置スペースとして定着フィルムの長手方向にある程度の余裕が必要となる。一方、ヒータの発熱ブロックは、その分割数等によっては、個々の発熱ブロック
の長手幅が狭くなる。したがって、隣り合う発熱ブロックのそれぞれにサーモスイッチを配置しようとする場合に、サーモスイッチの長手方向のスペースが窮屈となり、サーモスイッチの配置が困難となる場合がある。
【0008】
本発明の目的は、装置レイアウトの制約を受けずに安全性の確保を図ることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明における像加熱装置は、
記録材の搬送方向と直交する記録材の幅方向に並ぶ複数の発熱ブロックを有するヒータと、
記録材を挟持するニップを形成するニップ形成部と、
複数の前記発熱ブロックへ供給する電力を制御する制御部と、
を備え、
画像が形成された記録材を前記ヒータの熱によって前記ニップで挟持しながら加熱する像加熱装置であって、
前記ヒータは、前記発熱ブロックが前記幅方向において記録材の搬送基準位置に対してそれぞれ1つずつ対称な位置に配置される第1の発熱体グループと、前記第1の発熱体グループのそれぞれの前記発熱ブロックに対して前記幅方向における前記ヒータの端部側にそれぞれ1つずつ隣接するように前記発熱ブロックが前記搬送基準位置に対して対称な位置に配置される第2の発熱体グループと、前記第1の発熱体グループのそれぞれの前記発熱ブロックに対して前記幅方向における前記ヒータの中央側に隣接するように前記第1の発熱体グループの2つの前記発熱ブロックの間に配置される前記発熱ブロックと、を有し、
前記制御部が、前記第1の発熱体グループの2つの前記発熱ブロックに対して第1の共通回路を介して電力を供給し、前記第2の発熱体グループの2つの前記発熱ブロックに対して第2の共通回路を介して電力を供給し、前記第1の発熱体グループの2つの前記発熱ブロックの間に配置される前記発熱ブロックに対して前記第1の共通回路および前記第2の共通回路とは異なる回路を介して電力を供給し、
前記幅方向において前記第1の発熱体グループに含まれる発熱ブロックと重なるように前記ヒータに配置され、前記第1の発熱体グループに含まれる発熱ブロックの温度上昇に応じて前記発熱ブロックに供給される電力を遮断する第1の安全素子と、
前記幅方向において前記第2の発熱体グループに含まれる発熱ブロックと重なるように前記ヒータに配置され、前記第2の発熱体グループに含まれる発熱ブロックの温度上昇に応じて前記発熱ブロックに供給される電力を遮断する第2の安全素子と、
を有する像加熱装置において、
前記第1の安全素子は、前記幅方向において前記搬送基準位置に対して一方の側に配置され、他方の側に配置されておらず、
前記第2の安全素子は、前記幅方向において前記搬送基準位置に対して他方の側に配置され、一方の側に配置されておらず、
前記第1の発熱体グループに含まれる前記発熱ブロックの温度を検知するための第1の温度検知素子と、
前記第2の発熱体グループに含まれる前記発熱ブロックの温度を検知するための第2の温度検知素子と、
が前記ヒータに配置されており、
前記ヒータにおける前記第1の安全素子および前記第2の安全素子が配置されている面に対して裏側の面に前記第1の温度検知素子および前記第2の温度検知素子が配置されており、前記第1の安全素子および前記第2の安全素子が配置されている面には前記第1の温度検知素子および前記第2の温度検知素子が配置されていない
ことを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明における画像形成装置は、
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する定着部と、
を有する画像形成装置において、
前記定着部が本発明の像加熱装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置レイアウトの制約を受けずに安全性の確保を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】実施例1に係るヒータおよびサーモスイッチの平面模式図
【
図7】比較例に係るヒータおよびサーモスイッチの平面模式図
【
図9】実施例2に係るヒータおよび温度ヒューズの平面模式図
【
図10】実施例2に係る温度ヒューズ60の平面模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。なお、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0013】
(実施例1)
図1は、電子写真記録技術を用いた、本発明の実施例に係る画像形成装置100の模式的断面図である。本発明が適用可能な画像形成装置としては、電子写真方式や静電記録方式を利用した複写機、プリンタなどが挙げられ、ここでは電子写真方式を利用して記録紙等の記録材P上に画像を形成するレーザプリンタに適用した場合について説明する。
【0014】
(画像形成装置の概略構成)
図1は、本発明の実施例1に係る画像形成装置の一例の模式的断面図である。この画像形成装置は、記録材上にトナー画像を形成する画像形成部Aと、画像形成部Aに記録材を送り出す記録材送り部Bと、記録材上のトナー画像を記録材に加熱定着する定着部(定着装置)Cとを有している。画像形成部Aは、像担持体としてドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと称する)1を有している。この感光ドラム1は、画像形成装置の筐体を構成する画像形成装置本体Mに回転自在に支持されている。感光ドラム1の外周面の周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電ローラ2と、レーザスキャナ3と、現像装置4と、転写ローラ5とクリーニング装置6が配設されている。記録材送り部Bは、送り出しローラ11を有している。この送り出しローラ11は、不図示の搬送駆動モータによって矢印方向に所定のタイミングで回転され、カセット7に積載収納されている記録材Pを搬送経路に送り出す。
【0015】
実施例1の画像形成装置は、画像形成部Aと記録材送り部Bと定着装置C等を制御する不図示の制御部を有している。制御部は、CPUとROMやRAM等のメモリからなり、メモリには画像形成に必要な各種プログラムが記憶されている。この制御部は、ホストコンピュータなどの外部装置からプリント信号を取り込み、そのプリント信号に基づいて所定の画像形成制御シーケンスを実行する。これにより、ドラムモータが回転駆動され、感光ドラム1は所定の周速度(プロセススピード)で矢印方向に回転する。回転された感光ドラム1表面は、帯電ローラ2によって、トナーと同極性(ここではマイナス極性)の所定の電位に一様に帯電される。この感光ドラム1表面の帯電面に対し、レーザスキャナ3が画像情報に基づいてレーザ光Lを走査し、感光ドラム1表面を露光する。そして、この露光によって、露光部分の電荷が除去され、感光ドラム1表面に静電潜像が形成される。
【0016】
現像装置4は、現像ローラ41と、トナーを収納するトナー容器42を有している。トナーは、不図示のウレタンブレード等の部材により摩擦され、所定の極性(実施例1ではマイナス極性)に帯電される。この現像装置4は、現像ローラ41に不図示の現像電圧電源によりマイナス電圧が印加されることによって、感光ドラム1表面の静電潜像に、電位差を利用してトナーを付着させ、静電潜像をトナー画像Tとして現像する。感光ドラム1表面に形成されたトナー画像Tは、トナーと逆極性であるプラス電圧を転写ローラ5に印加することによって、転写電圧による電位差を利用して記録材Pに転写される。また、記録材送り部Bに設けられている搬送駆動モータが回転駆動され、送り出しローラ11はカセット7から記録材Pを搬送ローラ8に送り出す。この記録材Pは、搬送ローラ8によって搬送され、トップセンサ9を通過して感光ドラム1表面と転写ローラ5の外周面との間の転写ニップ部に搬送される。感光ドラム1表面に形成されたトナー画像が転写された記録材Pは、搬送ガイド10に沿って定着装置Cに搬送され、この定着装置Cで記録材P上
のトナー画像が加熱、及び加圧されて記録材P上に加熱定着される。トナー画像Tが加熱定着された記録材Pは、搬送ローラ12、排出ローラ13の順に搬送されて装置本体M上面の排出トレイ14に排出される。トナー画像を記録材Pに転写した後の感光ドラム1表面に残留している転写残トナーは、クリーニング装置6のクリーニングブレード61によって除去され、クリーニング装置6内に蓄積される。以上の動作を繰りかえすことで、順次プリントを行うようになっている。実施例1の画像形成装置は、A4サイズの場合、70枚/分のプリント速度でプリントを行うことができる。なお、詳細は省略するが、実施例1の画像形成装置は、両面画像形成を可能にする反転搬送路が備えられており、片面に画像が形成された記録材Pは、排出ローラ13の逆回転によるスイッチバックにより画像形成部Aの上流側に戻されるように構成されている。
【0017】
(定着装置の構成)
図2は、実施例1に係る像加熱装置としての定着装置Cの模式的横断側面図である。実施例1の定着装置Cは、ヒータ1100、ヒータホルダ29、金属ステイ22、定着部材である筒状フィルムとしての定着フィルム25、加圧ローラ26を基本構成とする。ヒータホルダ29は、定着フィルム25の内側において、加熱体としてのヒータ1100を保持(支持)する保持部材である。定着装置Cは、加熱回転体としての筒状の定着フィルム25と、加圧回転体(加圧部材)としての加圧ローラ26と、の間のニップ部Nに、記録材Pを扶持し、ヒータ1100の熱を利用してトナー画像Tを記録材Pに加熱定着する。ニップ部Nは、定着フィルム25を介してヒータ1100と加圧ローラ26とにより形成される。記録材Pは、加圧ローラ26の回転と定着フィルム25の従動回転とによってニップ部Nで挟持搬送される。本実施例ではヒータ1100が定着フィルム25の内面に直接接触する構成としているが、ヒータ1100と定着フィルム25内面との間に伝熱部材等を介在させてもよい。本実施例に係る定着装置Cの構成部材のうちニップ部Nの形成にかかわる部材が、ニップ形成部を構成する。商用の交流電源に接続された通電制御部421は、CPU420からの信号により、定着装置Cへ電力供給を行う。
【0018】
(加圧ローラ)
加圧ローラ26は、芯軸部261の外周に弾性層262を有し、弾性層262の外周に表層263を有している。加圧ローラ26の外径は、約25mmである。芯軸部261には、アルミニウム、鉄などの金属材料が中実もしくは中空で用いられる。実施例1では、中実のアルミニウムを芯金材料として用いている。弾性層262は、耐熱性のシリコーンゴムから成り、カーボン等の電気伝導材を添加することで導電性としている。定着フィルム25の外面と接触する表層263は、PFA、PTFE、FEPなどのフッ素樹脂からなる厚さ10~80μmの離型性チューブである。ここで、PFAはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、PTFEはポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)、FEPはテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4,6フッ化)の略称である。表層263は、通紙に伴うチャージアップを防ぐという観点で、導電性を付与することが望ましい。実施例1では加圧ローラ26の表層263は、厚さ30μmのPFAチューブに導電材としてカーボンを添加する構成とした。
【0019】
(定着フィルム)
定着フィルム25は、直径24mmの円筒形状を有する。定着フィルム25は、可撓性を有し、ヒータホルダ29に対して、ルーズに外嵌されている。定着フィルム25の層構造は、
図2の円内に示す断面構成のように、内側から基層251、弾性層252、表層253が設けられた複層からなる。基層251の材料としては、一般的にポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PESなどの低熱容量の耐熱性樹脂材料が用いられる。また、SUSなどの金属材料が用いられる場合もある。基層251は、熱容量を小さくしてクイックスタート性を満足させると同時に機械的強度をも満足させる必要があるため、厚みは18μm以上150μm以下で用いることが望ましい。実施例1の基層251は、厚み7
0μmの円筒形のポリイミド基層とした。弾性層252は、シリコーンゴムに代表される弾性を有する材料からなる。この弾性層252を設けることで、トナー画像Tを包み込み均一に熱を与えることができるようになるため、ムラの無い良質な画像を得ることが可能になる。弾性層252は、シリコーンゴム単体では熱伝導性が低いため、アルミナ、金属ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛などの熱伝導性フィラーを添加し、高い熱伝導性を付与させて用いる。実施例1のような高速機においては、熱伝導性フィラーの添加量を適宜調整して、0.9W/m・K以上を確保すると良い。実施例1では、弾性層252のゴム材に、熱伝導性フィラーとしてアルミナ、および金属ケイ素を添加し、その熱伝導率を1.5W/m・Kとしている。また、弾性層252の厚さは270μmとしている。表層253は、離型層として、トナーに対する高い離型性、および高い耐摩耗性が要求される。材料としては、PFA、PTFE、FEPなどのフッ素樹脂が用いられる。層の形成手段としては、樹脂のディスパージョンを焼成して得られるコーティング層、もしくはチューブ層で形成される。また、フッ素樹脂にカーボンやイオン導電材などの添加剤を添加し、導電性を付与して用いる場合もある。実施例1の表層253は、フッ素樹脂としてPFAを用い、導電材は添加せず、厚さは20μmのチューブ層とした。
【0020】
(ヒータホルダ)
ヒータ1100は、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂材料からなるヒータホルダ29に保持されている。ヒータホルダ29は、定着フィルム25の回転を案内するガイド機能も有している。
【0021】
(ヒータ)
図3を用いて、本実施例1の特徴的な構成であるヒータ1100について説明する。ヒータ1100は、セラミックス製の基板1105と、基板1105上に設けられ、通電により発熱する発熱抵抗体(発熱体)を有する。基板1105において、定着ニップ部N側の定着フィルム25と接触する面(第一の面)には、定着フィルム25との摺動性を確保するため、ガラス製の表面保護層1108が設けられている。基板1105において、定着ニップ部N側の第一の面とは反対側の面(第二の面)には、発熱抵抗体を絶縁するため、ガラス製の表面保護層1107が設けられている。第二の面には電極E14が露出しており、給電用の電気接点C14が電極に接触することにより、発熱抵抗体が電気的に交流電源と接続される。
【0022】
図3(a)、
図3(b)は、本実施例のヒータ1100の構成を示す図である。
図3(a)は、
図3(b)に示す記録材Pの搬送基準位置Xのヒータ1100の断面図である。
図3(b)は、ヒータ1100の各層の平面概略図である。
図3(c)は、ヒータ1100を保持するヒータホルダの平面概略図である。搬送基準位置Xは、本実施例では、定着装置Cにおける記録材Pの搬送方向と直交する記録材の幅方向における略中央の位置に設定されるが、設定位置は特定の位置に限定されるものではない。
【0023】
ヒータ1100は、基板1105と、基板1105の定着フィルム25と接触する第一の面側に設けられた摺動面層1と、摺動面層1を覆う摺動面層2と、基板1105の第一の面側の反対側となる第二の面側に設けられた裏面層1と裏面層1を覆う裏面層2とにより構成される。ヒータ1100は、裏面層1に、第一の導電体(導電体A)1101と、第二の導電体(導電体B)1103と、発熱体1102と、で構成された発熱ブロックを長手方向に沿って複数有する。本実施例のヒータ1100は、記録材搬送方向と直交する幅方向(基板1105の長手方向)に並ぶ複数の発熱体1102によって、合計5つの発熱ブロックHB11~HB15が形成されている。
【0024】
図3に示すヒータ1100は、ヒータの長手方向(記録材搬送方向と直交する記録材の幅方向)においてヒータ1100の中心から左右対称に(搬送基準位置Xに対して対称に
)発熱ブロックHB11~HB15に分かれている。発熱ブロックHBの分割位置は、それぞれ、「A5サイズ」と「B5サイズ」と「A4サイズ」に対応している。すなわち、発熱ブロックHB13の幅は、150mmでA5サイズの短辺長さと略同一である。発熱ブロックHB12~HB14の幅は、182mmでB5サイズの短辺長さと略同一である。発熱ブロックHB11~HB15の幅は、210mmでA4サイズの短辺長さと略同一である。また、これら発熱ブロックHBのうち、「発熱ブロックHB13」を発熱グループ1とし、「発熱ブロックHB12と発熱ブロックHB14」を発熱グループ2とし、「発熱ブロックHB11と発熱ブロックHB15」を発熱グループ3とする。各発熱グループは、それぞれ同一ドライブ(共通回路)で給電を行う。
【0025】
各発熱ブロックの発熱体1102は、ヒータ1100の短手方向(長手方向と直交する方向)に関し、記録材P通紙方向の上流側の発熱体1102aと、下流側の発熱体1102bと、に分かれて設置されている。また、第一の導電体1101は、発熱体1102aと接続された導電体1101aと、発熱体1102bと接続された1101bと、に分かれている。
【0026】
ヒータ1100は、5つの発熱ブロックHB11~HB15に分割される。すなわち、発熱体1102aは、1102a-1~1102a-5の5つに分かれている。同様に、発熱体1102bは、1102b-1~1102b-5の5つに分かれている。さらに第二の導電体1103も、1103-1~1103-5の5つに分かれている。
【0027】
ヒータ1100の裏面層2には、発熱体1102、第一の導電体1101および第二の導電体1103を覆う絶縁性の表面保護層1107が設けられている。本実施例1では、表面保護層1107として、ガラスを用いている。表面保護層1107は、給電用の電気接点C11~C15、C18-1、C18-2が接触する電極部E11~E15、E18-1、E18-2は覆っていない。電極E11~E15は、それぞれ、第二の導電体1103-1~1103-5を介して発熱ブロックHB11~HB15に電力供給するための電極である。電極E18-1、E18-2は、第一の導電体1101a、1101bを介して発熱ブロックHB11~HB15に電力供給するための電極である。
【0028】
このように、ヒータ1100の裏面に電極を設けることで、第二の導電体1103-1~1103-5に給電を行うための導電パターンを基板1105に設ける必要が無くなるため、基板1105の短手方向の幅を短くすることができる。その結果、ヒータ1100のサイズアップを抑えることができる。なお、
図3(b)に示すように、電極E12~E14は、基板1105の長手方向において、発熱体が設けられた領域内に設置されている。
【0029】
後ほど詳細を説明するが、本実施例1のヒータ1100は、複数の発熱ブロックを独立して制御することにより、種々の発熱分布を形成可能になっている。これにより、記録材Pのサイズに応じた発熱分布を設定できる。更に、発熱体1102は、PTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有する材料で形成されている。こうすることで、記録材Pの端部と発熱ブロックの境界とが一致していないケースでも、非通紙部の昇温をなるべく抑えることができる。
【0030】
ヒータ1100の摺動面(定着フィルム25と接触する側の面)側の摺動面層1には、各発熱ブロックHB11~HB15の温度を検知するための複数のサーミスタ(温度検知素子)が形成されている。複数のサーミスタは、
図3(b)において、それぞれT11-1C~T11-3C、T11-1E~T11-3E、T12-4C~T12-5C、T12-3E~T12-7Eで示している。サーミスタの材料は、TCR(Temperature Coefficient of Resistance)が正、または負に大き
い材料であれば、良い。本実施例1では、NTC(Negative Temparature Coefficient)を有する材料を基板1105上に薄く印刷してサーミスタを構成した。
【0031】
各発熱ブロックHBに対するサーミスタ配置について説明する。本実施例1においては、
図3(b)に示すように、発熱ブロックHB11~HB15のすべてに、2つ以上のサーミスタを配置している。例えば、発熱ブロックHB12に対して、2つのサーミスタT11-2C、T11-2Eが設置されており、抵抗値検出用の導電パターンET11-2C、ET11-2Eと、共通導電パターンEG11によって、それぞれ温度検出可能な構成となっている。サーミスタT11-2Cは、発熱ブロックHB12の中央領域の温度を検知するためのメインサーミスタであり、記録材Pの幅方向に対して、発熱ブロックHB12の略中央部に配置されている。また、サーミスタT11-2Eは、発熱ブロックHB12の端部領域の温度を検知するための端部サーミスタであり、記録材Pの幅方向に対して、発熱ブロックHB12の領域内であって、発熱ブロックHB11に隣接する側に配置されている。このように、各発熱ブロックHB11~15に対して、中央領域の温度を検知するためのメインサーミスタT11-1C、T11-2C、T11-3C、T12-4C、T12-5Cが配置されている。また、各発熱ブロックHB11~HB15に対して、端部領域の温度を検知するための端部サーミスタT11-1E、T11-2E、T11-3E、T12-3E、T12-4E、T12-5Eが配置されている。
【0032】
図3(c)を用いて、ヒータホルダ29について説明する。本実施例のヒータホルダは、ヒータ裏面層1に設けた電極E11~E15、E18-1、E18-2に給電を行うために、開口部HC11~HC15、HC18-1、HC18-2が設けられている。この開口部C11~HC15、HC18-1、HC18-2を介して、給電部C11~C15、C18-1,C18-2が電極に電力を供給する。また、このヒータホルダ29には、後述するサーモスイッチ50を設置するための開口部H212-12、H212-13、H212-15を設けている。
【0033】
(ヒータの通電制御回路)
図4は、ヒータ1100を制御する制御回路1400の回路図である。ヒータ1100に対する電力制御(通電制御)は、トライアック1411~1413によって、ヒータ1100への電力供給を導通/遮断することによって行われる。トライアック1411~1413は、それぞれ、CPU420からのFUSER11~FUSER13信号に従って動作する。ヒータ1100の制御回路1400は、3つのトライアック1411~1413によって、5つの発熱ブロックHB11~15に通電可能な回路構成となっている。具体的には、トライアック1411によって、発熱ブロックHB11と発熱ブロックHB15(発熱グループ3)の通電制御を行う。また、トライアック1412によって、発熱ブロックHB12と発熱ブロックHB14(発熱グループ2)の通電制御を行う。また、トライアック1413によって、基準発熱体グループとしての発熱ブロックHB13(発熱グループ1)の通電制御を行う。このとき、第1の発熱体グループとしての発熱グループ2と、第2の発熱体グループとしての発熱グループ3は、それぞれ、一つのドライブ回路に複数の発熱ブロックHBを有している。すなわち、それぞれ一つの共通する駆動回路(第1の共通回路、第2の共通回路)を介して、グループに含まれる発熱体それぞれに電力が供給される。なお、
図4においては、トライアック1411~1413の駆動回路は省略している。
【0034】
ゼロクロス検知部1421は、交流電源1401のゼロクロスを検知する回路であり、CPU420にZeroX信号を出力している。ZeroX信号は、トライアック1411~1413を位相制御するための基準信号等に用いられている。
【0035】
(ヒータの温度検知方法)
ヒータ1100の温度検知方法について説明する。CPU420には、電圧Vccをサーミスタの抵抗値と抵抗1451~1461の抵抗値で分圧した信号(Th11-1C~Th11-3C、Th11-1E~Th11-3E、TH12-4C~Th12-5C、TH12-3E~Th12-5E)が入力される。なお、
図4において、サーミスタは、T11-1C~T11-3C、T11-1E~T11-3E、T12-4C~T12-5C、T12-3E~T12-5Eで示す。例えば、信号Th11-3Cは、電圧VccをサーミスタT11-3Cの抵抗値と抵抗1456の抵抗値で分圧した信号である。サーミスタT11-3Cは、温度に応じた抵抗値となるので、発熱ブロックHB13の温度が変化するとCPU420に入力する信号Th11-3Cのレベルも変化する。CPU420は、入力した各信号を、そのレベルに応じた温度に換算する。
【0036】
CPU420は、各発熱ブロックの設定温度(制御目標温度)と、各サーミスタの検知温度(出力)に基づき、例えばPI制御により、ヒータに供給する電力を算出する。更に、算出した供給電力を、対応する位相角(位相制御)や端数(端数制御)などの制御タイミングに換算し、この制御タイミングでトライアック1411~1413を制御している。他のサーミスタに対応する信号の処理も同様なのでその説明は割愛する。
【0037】
(ヒータの電力制御)
ヒータ1100の電力制御(ヒータの温度制御)について説明する。定着処理中、発熱ブロックHB11~HB15の各々は、サーミスタの検知温度が設定温度(制御目標温度)を維持するように制御される。具体的には、発熱ブロックHB14へ供給される電力は、サーミスタT11-4Cの検知温度が設定温度を維持するように、トライアック1414の駆動を制御することによって決定される。このように、各サーミスタは、各発熱ブロックHBを一定温度に保つための制御を実行する際に使用される。
【0038】
(ヒータの保護)
リレー1440は、装置の故障などの要因でヒータ1100が過昇温した場合、ヒータ1100への電力を遮断する手段として備えられている。また、3つのサーモスイッチ50-12、50-13、50―15は、24V電源とつながるDC回路上にある。3つのサーモスイッチ50-12、50-13、50―15のいずれか一つでもオープンすると、リレー1440に掛かる24Vが切れてリレー1440がオープンし、AC回路が切れるように構成されている。
【0039】
(サーモスイッチ)
本実施例1の特徴的な構成である安全素子について説明を行う。安全素子は、例えば、CPU420が制御不能となり、ヒータ1100が暴走した場合などにおいても、ヒータ1100等が破損することなく安全にヒータ1100に入力する電力を遮断することを目的として設置するものである。なお、本実施例では、安全素子としてサーモスイッチを用いる場合について説明するが、ヒータの異常発熱を検知してヒータへの電力供給を遮断するように動作する素子としてサーモスタットや温度ヒューズ等の他の素子であってもよい。
【0040】
図5を参照して、サーモスイッチ50(50-12、50-13、50-15)の動作について説明する。
図5は、本実施例1で安全素子として用いるサーモスイッチ50の概略構成を説明する図である。
図5(a)は、サーモスイッチ50が動作していない状態、すなわち回路がつながっている状態における、サーモスイッチ50を、ヒータ1100の平面に垂直かつヒータ1100の長手方向に沿った断面で示す模式的断面図である。
図5(b)は、サーモスイッチ50が所定温度を超えて動作した状態、すなわち回路が切断された状態における、サーモスイッチ50の
図5(a)と同様の断面模式図である。
図5(
c)は、サーモスイッチ50の平面図である。
【0041】
図5(a)に示すように、サーモスイッチ50は、ヒータ1100等の温度を感知する感熱部51、セラミックボディ52、およびコネクタ端子53からなる。感熱部51の内部には、バイメタル55、金属棒56、可動接点57、接点部58が配置されている。バイメタル55は、熱膨張率の異なる2枚の金属板を湾曲した形状に貼り合わせたものであり、バイメタル55の温度が所定値を超えると、逆向きの湾曲形状に変形するという特性を有する。サーモスイッチ50は、設置される発熱グループのドライブ回路にコネクタ端子53を介して接続される。コネクタ端子は、セラミックボディ52の長手両端(ヒータ長手方向における両端)にそれぞれ設けられている。
【0042】
図5(b)に示すように、ヒータ1100においてサーモスイッチ50が設置された箇所の温度が所定温度を超えると、バイメタル55が逆向きの湾曲形状に変形する。このバイメタル55の変形により、金属棒56が押し下げられ、さらに可動接点57が押し下げられる。その結果、接点部58が離れ、回路が切断される。本実施例1で使用したサーモスイッチ50は、一般的に広く使われているX×Y:36mm×8mmのサイズのものを用いた。
【0043】
(比較例)
図7を用いて、比較例に係るヒータについて説明する。
【0044】
図7(a)は、比較例1に係るヒータの構成とサーモスイッチ設置位置を説明する、比較例1に係るヒータの平面図である。比較例1に係るヒータは、最大プリント幅がA3サイズの定着装置に用いられるヒータであり、最大プリント幅がA4サイズの定着装置に用いられる本実施例に係るヒータと比較して、ヒータの長手幅が広い構成となっている。
【0045】
図7(a)に示す比較例1に係る分割ヒータでは、ヒータの長手中心(搬送基準位置)から左右対称に発熱ブロックHB11~HB15に分かれている。発熱ブロックHB11~15の分割位置は、「A5サイズ」と「A4サイズ」と「A3サイズ」に対応している。すなわち、発熱ブロックHB13の幅は、150mmでA5サイズの短辺長さと略同一である。また、発熱ブロックHB12~HB14の幅は、210mmでA4サイズの短辺長さと略同一である。また、発熱ブロックHB11~15の幅は、297mmでA3サイズの短辺長さと略同一である。また、これら発熱ブロックHB11~15のうち「発熱ブロックHB13:発熱グループ1」、「発熱ブロックHB12と発熱ブロックHB14:発熱グループ2」、「発熱ブロックHB11と発熱ブロックHB15:発熱グループ3」、は、それぞれ同一ドライブ回路(共通回路)で給電を行う。
【0046】
サーモスイッチ510-11、510-12、510-13は、
図5に示す本実施例に係るサーモスイッチ50と同様の構成を有している。
【0047】
安全性の観点から、サーモスイッチ510-11、510-12、510-13は、同一ドライブで給電する発熱グループに属する発熱ブロックHBのうちいずれかに設置することが望ましい。その設置構成の一例としては、
図7(a)に示すように、発熱ブロックHB11、発熱ブロックHB12および、発熱ブロックHB13に、サーモスイッチ510-11、510-12、510-13を設置する構成が考えられる。すなわち、全てのサーモスイッチを紙幅中心である搬送基準位置に対し長手一方の側に位置する発熱ブロックHBに設置する構成である。
【0048】
最大プリント幅がA3サイズの定着装置に用いられる比較例1のヒータにおいては、発熱ブロックHBの幅が十分に確保されるため、全てのサーモスイッチを、搬送基準位置に
対して長手片側の発熱ブロックHBに設置することが可能である。しかしながら、本実施例に係るヒータのように発熱ブロックHBの幅が小さいヒータにおいては、サーモスイッチの設置がスペース上困難となる場合がある。
【0049】
図7(b)は、比較例2に係るヒータの構成とサーモスイッチ設置位置を説明する、比較例2に係るヒータの平面図である。比較例2に係るヒータは、本実施例に係るヒータと同様、最大プリント幅がA4サイズの定着装置に用いられるヒータであり、比較例1に係るヒータと比べて、発熱ブロックHBの長手幅が狭い構成となっている。
【0050】
図7(b)に示すように、比較例2に係るヒータは、本実施例に係るヒータと同様、発熱ブロックHBの分割位置は、「A5サイズ」と「B5サイズ」と「A4サイズ」に対応している。すなわち、発熱ブロックHB13の幅は、150mmでA5サイズの短辺長さと略同一である。また、発熱ブロックHB12~HB14の幅は、182mmでB5サイズの短辺長さと略同一である。また、発熱ブロックHB11~15の幅は、210mmでA4サイズの短辺長さと略同一である。また、これら発熱ブロックHB11~15のうち「発熱ブロックHB13:発熱グループ1」、「発熱ブロックHB12と発熱ブロックHB14:発熱グループ2」、「発熱ブロックHB11と発熱ブロックHB15:発熱グループ3」は、それぞれ同一ドライブ回路(共通回路)で給電を行う。
【0051】
サーモスイッチ510-11、510-12、510-13は、
図5に示す本実施例に係るサーモスイッチ50と同様の構成を有している。
【0052】
比較例2に係るヒータにおけるサーモスイッチの配置は、比較例1に係るヒータと同様、全てのサーモスイッチを紙幅中心である搬送基準位置に対し長手一方の側に位置する発熱ブロックHBに設置する構成である。すなわち、サーモスイッチ510-11、510-12、510-13をそれぞれ、発熱ブロックHB11、発熱ブロックHB12、発熱ブロックHB13に設置する構成である。ここで、比較例2に係るヒータにおける発熱ブロックHB11、発熱ブロックHB12の長手幅は、比較例1に係るヒータにおける発熱ブロックHB11、発熱ブロックHB12の長手幅よりも狭くなっている。
【0053】
したがって、
図7(b)に示すように、発熱ブロックHB11に設置するサーモスイッチ510-11と、発熱ブロックHB12に設置するサーモスイッチ510-12とが、図中kにおいてヒータの長手方向に干渉してしまう。サーモスイッチは、長手両端にコネクタ端子を備えているため、設置スペースとして長手方向にある程度の余裕が必要となる。したがって、比較例2にように、個々の発熱ブロックHBの長手幅が狭いヒータ構成においては、隣り合う発熱サーモスイッチの設置スペースが窮屈となり、サーモスイッチの配置が困難となる。
【0054】
なお、ここでは、最大プリント幅がA4サイズの定着装置と最大プリント幅がA3サイズの定着装置との比較について示したが、同様の課題は、他の構成においても発生する。例えば、最大プリントサイズはA3のままで、発熱ブロックHBをより多分割にし、多くの紙サイズに対応させた定着装置においても同様の課題が発生する。
【0055】
(本実施例1のサーモスイッチの設置位置)
図6に、本実施例1のサーモスイッチ50の設置位置を示す。本実施例1では、複数の発熱ブロックHBを含む、隣り合う発熱グループに対し、サーモスイッチ50を、記録材Pの幅方向中心(搬送基準位置)Xに対し左右隣り合わないように設置した。すなわち、本実施例1では、発熱ブロックHB12、HB13、HB15に、それぞれ、サーモスイッチ50-12、50-13、50-15を設置した。こうすることで、サーモスイッチ50-12、50-13、50-15を互いに干渉させることなく設置することが可能と
なり、ドライブ回路ごとにサーモスイッチ50を配置することができるようになる。
【0056】
本実施例1では、サーモスイッチ50の設置位置を発熱ブロックHB12、HB13、HB15の3か所としたが、複数の発熱ブロックHBを含む発熱グループで、隣り合わないようにサーモスイッチ50を設置する構成例としては、この限りではない。例えば、サーモスイッチ50を設置する発熱ブロックの組み合わせが、発熱ブロックHB11、HB13、HB14であっても構わない。
【0057】
(変形例)
なお、本実施例では、記録材Pの搬送方向に発熱体1102aと発熱体1102bとを分けて設けたヒータ1100の例を用いて説明を行ったが、記録材Pの幅方向に発熱ブロックHBが分割されているヒータであれば、発熱体の形状は問わない。また、本実施例1では電極E11~E15、E18-1~2をヒータ1100の記録材通紙領域の裏面に形成する構成を例示したが、
図8(a)に示す変形例のように、端部電極を形成する構成であっても構わない。
【0058】
図8に、変形例に係るヒータの構成を示す。
図8(a)のヒータ1101の発熱領域は、発熱ブロックHB11~HB15の5つに分けられている。これに対応して、発熱体1102-1、1102-2、1102-31、1102-32、1102-33、1102-34、1102-35、1102-4、1102-5が配置されている。発熱ブロックHBは、ドライブ回路ごとに、発熱グループ1(発熱ブロックHB13)と、発熱グループ2(発熱ブロックHB12、HB14)と、発熱グループ3(発熱ブロックHB11、HB15)と、の3つの発熱グループに分けられている。発熱グループ1は、記録材Pの基準位置を含む発熱領域であり、基準発熱体グループとして、5つの発熱体1102-31、1102-32、1102-33、1102-34、1102-35を含む。発熱グループ2は、記録材P基準位置を挟み、左右に分かれた発熱ブロックHB12、HB14を有し、発熱グループ1の長手両側に隣接するように設置されている。第1の発熱体グループとしての発熱グループ2は、2つの発熱体1102-2、1102-4を含む。発熱グループ3は、記録材P基準位置を挟み、左右に分かれた発熱ブロックHB11、HB15を有し、発熱グループ2と記録材P基準位置から遠い側で隣接するように設置されている。第2の発熱体グループとしての発熱グループ3は、2つの発熱体1102-1、1102-5を含む。
【0059】
また、発熱体1102-1~1102-5は、
図8(a)に示すように、ヒータ1100の幅方向に複数回折り返した形状である。また、発熱体1102-1~1102-5は導電体1101a、1101b-1~1101b-5を介して、電極E21~E24より電力の供給を受け、発熱を行う。
【0060】
上記ヒータ1101に対し、
図8(b)に示す位置に、サーモスイッチ50-11、50-13、50-14を設置する。すなわち、発熱ブロックHB11の領域にサーモスイッチ50-11を、発熱ブロックHB13にサーモスイッチ50-13を、発熱ブロックHB14にサーモスイッチ50-14を、それぞれ設置する。こうすることで、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、この変形例においても、実施例1と同様に、サーモスイッチを設置する発熱ブロックの組み合わせを、発熱ブロックHB12、HB13、HB15とすることも可能である。
【0062】
また、本実施例では、発熱グループが3つに分けられる場合について説明を行ったが、より発熱領域を多分割化した定着装置においても、同様の効果を発揮することができる。
図11に一例を示す。
図11によれば、発熱グループnは、同一ドライブで電力供給を行う発熱ブロックHBnと発熱ブロックHBn’からなり、発熱ブロックHBnと発熱ブロックHBn’は、記録材Pの搬送基準Xを挟み、左右に分かれて配置されている。ここで、発熱ブロックHBについてのnは、搬送基準位置Xを含む発熱ブロックHBに対して、ヒータ幅方向の一方の側(左側)に何番目の位置に配置された発熱ブロックHBであるかを示す。また、発熱ブロックHBについてのn’は、搬送基準位置Xを含む発熱ブロックHBに対して、ヒータ幅方向の他方の側(右側)に何番目の位置に配置された発熱ブロックHBであるかを示す。また、発熱グループn+1は、同一ドライブで電力供給を行う発熱ブロックHB(n+1)と発熱ブロックHB(n+1)’からなる。発熱ブロックHB(n+1)と発熱ブロックHB(n+1)’は、記録材Pの搬送基準Xを挟み、左右に分かれて配置されている。また、発熱グループn+1は、記録材Pの搬送基準Xから遠ざかる方向に発熱グループnと隣接して設置されている。このとき、サーモスイッチ50は、
図11に示す位置に設置した。すなわち、発熱ブロックHBnにサーモスイッチ50-nを、発熱ブロックHB(n+1)’にサーモスイッチ50-(n+1)を設置した。こうすることで、より多分割化したヒータ1100を用いた定着装置においても、装置レイアウトの制約を受けずに、ドライブ回路ごとにサーモスイッチ50を配置することができるようになり、小サイズ紙の生産性向上の課題を解決することができる。
【0063】
さらに、本実施例1では、サーモスイッチ50の感熱部51が発熱体1100に接触するように配置したが、発熱ブロックHBの領域の温度を検知すること(過昇温に反応すること)ができる位置に配置すれば、必ずしも接触させる必要はない。例えば、ヒータ1100と感熱部51の間に、樹脂材料等を差し挟むことも可能である。
【0064】
(実施例2)
本発明の実施例2に係る定着装置は、印刷速度は低速だが、より細かな紙サイズに対応して定着装置に対して適した構成である。
【0065】
実施例2に係る定着装置は、通紙可能な最大記録材幅がLTRサイズ(216mm)であり、発熱ブロックHBが7分割されている。また、安全素子として、実施例1で用いたサーモスイッチ50よりも小型の温度ヒューズ60を用いている。実施例2と実施例1の違いは、ヒータ1100と安全素子(温度ヒューズ60)のみであり、その他の構成は実施例1と同一であるため、再度の説明を省略する。
【0066】
図9を用いて、実施例2のヒータ1100の構成を説明する。実施例2のヒータ1100は、発熱ブロックHBが発熱ブロックHB21~HB27の7つに分けられている。発熱ブロックHB24は、A5サイズ(150mm)に対応している。発熱ブロックHB23と発熱ブロックHB25は、Exectiveサイズ(185mm)に対応している。発熱ブロックHB22と発熱ブロックHB26は、A4サイズ(210mm)に対応している。発熱ブロックHB11と発熱ブロック17は、LTRサイズ(216mm)に対応している。
【0067】
実施例2のヒータも、実施例1のヒータと同様に、ドライブ回路が共通する発熱ブロックHBごとに発熱グループが分けられている。基準発熱体グループとしての発熱グループ1は、発熱ブロックHB14で構成されている。第1の発熱体グループとしての発熱グループ2は、発熱ブロックHB13、HB15で構成されている。第2の発熱体グループとしての発熱グループ3は、発熱ブロックHB12、HB16で構成されている。第3の発熱体グループとしての発熱グループ4は、発熱ブロックHB11、HB17でそれぞれ構成されている。
【0068】
図10を用いて、実施例2で用いる安全素子である温度ヒューズ60について説明する
。
図10は、温度ヒューズ60の概略構成を示す模式的断面図を示す。
図10(a)に示すように、温度ヒューズ60は、樹脂カバー61、感熱可溶体62およびリード線63を備える。
図10(b)は、温度ヒューズ60が動作した場合の断面概略図である。温度ヒューズ60が所定温度以上にさらされると、
図10(b)に示すように、感熱可溶体62が溶け、回路が切断される。温度ヒューズ60は、設置される発熱グループのドライブ回路にリード線63を介して接続される。リード線63は、樹脂カバー61の長手両端(ヒータ幅方向における両端)にそれぞれ設けられている。本実施例1で使用した温度ヒューズ60は、一般的に広く使われているX×Y:15mm×5mmのサイズのものを用いた。
【0069】
温度ヒューズ60は、低コストで安定して機能を発揮するためには、ある一定サイズ以上にすることが望ましい。具体的には、
図10(a)のXで示した幅が15mm以上、あることが望ましい。また、温度ヒューズ60の特徴として、所定の動作温度を高い温度に設定することができない。従って、本実施例2は、比較的高温での動作を要求されない低速の画像形成装置に備える定着装置に適した構成を示すものである。
【0070】
図9(b)は、本実施例2の温度ヒューズ60の設置位置を示す概略図である。
図9(b)に示すように、発熱ブロックHB21に温度ヒューズ60-1を、発熱ブロックHB23に温度ヒューズ60-3を、発熱ブロックHB24に温度ヒューズ60-4を、発熱ブロックHB26に温度ヒューズ60-6を設置している。このように設置することで、装置レイアウトの制約を受けずに、各発熱グループに対し温度ヒューズ60を1つ以上設置することができる。
【0071】
本実施例2においても、温度ヒューズ60を設置する発熱ブロックHBの組み合わせは、上述した組み合わせに限定されない。すなわち、複数の発熱ブロックHBを含む複数の発熱グループの間において、隣接する発熱ブロックHBの間で隣り合わないように温度ヒューズ60が設置されるものであれば、上記の配置に限定されない。例えば、温度ヒューズ60を設置する発熱ブロックHBが、発熱ブロックHB22、HB24、HB25、HB27であっても構わない。
【0072】
なお、本実施例2のヒータ1100に対して実施例1で示したサーモスイッチ50を安全素子として用いることもできる。さらに、温度ヒューズ60とサーモスイッチ50を混在させて用いることも可能である。また、本実施例2でも実施例1と同様に、発熱体1100と温度ヒューズ60の間に、樹脂材料等を差し挟むことも可能である。
【符号の説明】
【0073】
C…定着装置、1100…ヒータ、50…サーモスイッチ、25…定着フィルム、26…加圧ローラ