(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】電気マルチコアケーブル圧着フェルール、および圧着方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20231218BHJP
H02G 15/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H01R4/18 Z
H02G15/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022103230
(22)【出願日】2022-06-28
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】10 2021 117 039.7
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク クリングラー
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0076179(US,A1)
【文献】特開2017-147108(JP,A)
【文献】特開2011-065882(JP,A)
【文献】特開2011-165355(JP,A)
【文献】特開2020-102367(JP,A)
【文献】特開2019-062732(JP,A)
【文献】特開2019-106356(JP,A)
【文献】特開2010-277880(JP,A)
【文献】特開2013-134987(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第03074614(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R4/18
H01R12/00-12/91
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
H02G15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気マルチコアケーブル(5)の電気接続デバイス(0)用の電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2
)であって、
前記圧着フェルール(2)を前記マルチコアケーブル(5)の実質的に非円形の内部断面(50)に組み付けるための軸方向組み付け部(21)と、前記マルチコアケーブル(5)において前記圧着フェルール(2)の実質的に円形の外部断面(20)を構成するための軸方向直径補償部(22)とを備えた、電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2)において、
前記圧着フェルール(2)の軸方向(Ar)において、前記組み付け部(21)および前記直径補償部(22)が、前記圧着フェルール(2)において連続的に配置さ
れ、
前記組み付け部(21)は、前記圧着フェルール(2)が前記非円形の内部断面(50)に配設されることを可能とする組み付けデバイス(211,212)を有し、
前記組み付けデバイス(211,212)は、舌根部(2110,2120)を介して前記圧着フェルール(2)に一体化され、かつ、前記舌根部(2110、2120)に対して屈曲可能な組み付け舌片(2115,2125)を有し、
前記組み付け舌片(2115,2125)は、前記非円形の内部断面(50)が締め付けられることを可能とし、
前記組み付けデバイス(211,212)は、
前記非円形の内部断面(50)に前記圧着フェルール(2)を組み付けた状態において、前記軸方向(Ar)に延びる前記組み付け舌片(2115/2125)の自由縁部と、前記軸方向(Ar)に延びる前記舌根部(2120/2110)の自由縁部とが、向き合うように構成されている
ことを特徴とする、電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2)。
【請求項2】
前記直径補償部(22)において、第1の周方向フランク(221)が周方向中心部(220)を介して、前記圧着フェルール(2)の第2の周方向フランク(222)に接続され、か
つ、
2つの前記周方向フランク(221、222)が、互いに向かって
湾曲することが可能であり、前記圧着フェルール(2)の前記円形の外部断面(20)が、前記マルチコアケーブル(5)において構成されることが可能である
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2)。
【請求項3】
軸方向(Ar)において、前記組み付け部(21)および前記直径補償部(22)が、
前記圧着フェルール(2)において間隔を介して隣接するように、前記圧着フェルール(2)において直接隣接するように、または前記圧着フェルール(2)において互いに重ならないように配置されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2)。
【請求項4】
軸方向(Ar)において、
前記組み付けデバイス(211、212)が、周方向フランク(221、222)または周方向中心部(220)に形成され、か
つ、
前記圧着フェルール(2)の周方向(Ur)において、2つ、3つ、4つまたは5つの
前記組み付けデバイス(211、212)が、前記圧着フェルール(2)に配置されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2)。
【請求項5】
前記舌根部(2110、2120)が、軸方向(Ar)において前記圧着フェルール(2)から突出し、か
つ、
前記組み付け舌片(2115、2125)が、周方向(Ur)および/または径方向(Rr)において前記舌根部(2110、2120)から突出する
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2)。
【請求項6】
前記圧着フェルール(2)を圧着するときに
、前記組み付け舌片(2115、2125)が、
前記圧着フェルール(2)における
前記舌根部(2110、2120)の移動に追従し、
前記圧着フェルール(2)における周方向位置から進んで圧着されることが可能であり、かつ/または、
径方向(Rr)内方において前記非円形の内部断面(50)に圧着されることが可能である
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2)。
【請求項7】
前記マルチコアケーブル(5)における前記圧着フェルール(2)の圧着状態について、前記非円形の内部断面(50)が、
前記組み付けデバイス(211、212)、および前記圧着フェルール(2)の径方向(Ra)に対向する領域、特に径方向(Ra)に対向する組み付けデバイス(212、211)により締め付けられることが可能であり
、
前記直径補償部(22)の軸方向部分
、特に前記直径補償部(22)の径方向(Ra)に対向する軸方向部分により締め付けられることが可能である
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2)。
【請求項8】
長手方向(Lr)に延びる前記圧着フェルール(2)の自由縁部が、実質的に長手方向(Lr)のみにおいて長さが実質的に自由であり、
周方向(Ur)において互いに対向する前記直径補償部(22)の前記自由縁部が、相補的であるように構成され、前記圧着フェルール(2)の圧着状態において実質的に形状嵌合して互いに対向し、かつ/または、
前記圧着フェルール(2)の圧着状態において、前記直径補償部(22)において、周方向フランク(221/222)の周方向歯部が、周方向(Ur)においてこの周方向フランク(221/222)に対向する周方向フランク(222/221)の2つの周方向歯部の間に係合する
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2)。
【請求項9】
前記圧着フェルール(2)が、物質的に単体または一体の圧着フェルール(2)として構成され、
前記直径補償部(22)において、第1の周方向フランク(221)が周方向中心部(220)を介して、前記圧着フェルール(2)の第2の周方向フランク(222)に接続され、
前記周方向中心部(220)および/または前記周方向フランク(221、222)が、補強デバイスを有
する
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2)。
【請求項10】
電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2
)を、電気マルチコアケーブル(5)の剥き出された実質的に非円形の内部断面(50)に圧着組み付けする方法であって、
前記方法の供給工程において、軸方向組み付け部(21)および軸方向直径補償部(22)を備える圧着フェルール(2)が、前記圧着フェルール(2)を前記非円形の内部断面(50)に圧着するように設けられ、
その後、前記圧着フェルール(2)が、その前記組み付け部(21)を介して、前記実質的に非円形の内部断面(50)に圧着され、前記直径補償部(22)の結果として、前記圧着フェルール(2)の実質的に円形の外部断面(20)が前記マルチコアケーブル(5)において形成され
、
前記組み付け部(21)は、前記圧着フェルール(2)が前記非円形の内部断面(50)に配設されることを可能とする組み付けデバイス(211、212)を有し、
前記デバイス(211、212)は、舌根部(2110、2120)を介して前記圧着フェルール(2)に一体化され、かつ、前記舌根部(2110、2120)に対して屈曲可能な組み付け舌片(2115、2125)を有し、
前記組み付け舌片(2115,2125)は、前記非円形の内部断面(50)が締め付けられることを可能とし、
前記組み付けデバイス(211,212)は、
前記非円形の内部断面(50)に前記圧着フェルール(2)を組み付けた状態において、前記軸方向(Ar)に延びる前記組み付け舌片(2115/2125)の自由縁部と、前記軸方向(Ar)に延びる前記舌根部(2120/2110)の自由縁部とが、向き合うように構成されている
ことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記組み付け部(21)を圧着するときに、前記非円形の内部断面(50)が、前記組み付け部(21)における
前記組み付けデバイス(211、212)により締め付けられ、
前記円形の外部断面(20)を形成するときに、前記直径補償部(22)の第1の周方向フランク(221)および第2の周方向フランク(222)が互いに向かって
湾曲し、かつ/または、
前記円形の外部断面(20)を形成するときに、周方向(Ur)において互いに対向する前記直径補償部(22)の自由縁部が、互いに接合され、かつ/または形状嵌合して互いの内側に接合される
ことを特徴とする、請求項10に記載の圧着組み付け方法。
【請求項12】
前記圧着フェルール(2)が、前記マルチコアケーブル(5)のケーブルシールド(54/55)に圧着され、
前記圧着フェルール(2)が前記非円形の内部断面(50)に圧着された後、前記ケーブルシールド(54/55)が、前記圧着フェルール(2)に折り重ねられ、か
つ、
前記圧着フェルール(2)が、請求項1から9のいずれか一項に従って構成される
ことを特徴とする、請求項10に記載の圧着組み付け方法。
【請求項13】
電気接続デバイス(0
)を電気マルチコアケーブル(5)に組み付けるための方法であって、
前記方法の第1の工程(I)において、前記圧着フェルール(2)が、請求項10に記載の圧着組み付け方法により、前記マルチコアケーブル(5)のケーブルシールド(54、55)に圧着され、
前記第1の工程(I)の後の前記方法の第2の工程(II)において、内部端子(1)が前記マルチコアケーブル(5)の内部導体(51、52)に取り付けられ、
前記第2の工程(II)の後の前記方法の第3の工程(III)において、シールドコンタクトスリーブ(3)が前記圧着フェルール(2)または前記ケーブルシールド(55)および前記マルチコアケーブル(5)の保護被覆(57)に圧着される
ことを特徴とする、方法。
【請求項14】
電気接続デバイス(0
)であって、
前記接続デバイス(0)が、内部電気端子(1)と、圧着フェルール(2)と、電気シールドコンタクトスリーブ(3)とを備え、前記圧着フェルール(2)が、請求項1に従って構成されている
ことを特徴とする、電気接続デバイス(0)。
【請求項15】
電気接続デバイス(0)を有す
る電気エンティテ
ィであって、
前記接続デバイス(0)が、請求項14に従って構成され、か
つ、
前記接続デバイス(0)が、請求項10に記載の組み付け方法により電気マルチコアケーブル(5)に組み付けられる
ことを特徴とする、電気エンティティ。
【請求項16】
前記圧着フェルール(2)が、物質的に単体または一体の圧着フェルール(2)として構成され、
圧着の直前、前記直径補償部(22)のみが、実質的にU字形状またはV字形状の断面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気マルチコアケーブル圧着フェルール(2)。
【請求項17】
前記圧着フェルール(2)が、物質的に単体または一体の圧着フェルール(2)として構成され、
圧着の直前、前記直径補償部(22)のみが、実質的にU字形状またはV字形状の断面を有する
ことを特徴とする、請求項10に記載の圧着組み付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気マルチコアケーブルの電気接続デバイス用の電気マルチコアケーブル圧着フェルール、特にHFマルチコアケーブル圧着フェルールに関する。本発明はさらに、電気マルチコアケーブル圧着フェルール、特にHFマルチコアケーブル圧着フェルールを電気マルチコアケーブルの剥き出された非円形の内部断面に圧着することにより組み付けるための方法に関する。本発明はさらに、電気接続デバイス、特にHF接続デバイスに関するとともに、電気エンティティ、特にHFエンティティに関する。
【背景技術】
【0002】
電気分野(エレクトロニクス、電気工学、電気学、電気エネルギー技術等)において、広帯域の電流、電圧、周波数および/またはデータレートを有する電流、電圧、信号および/またはデータを伝送するように機能する、多数の電気コネクタ手段もしくはコネクタデバイス、ソケット、ピンおよび/またはハイブリッドコネクタ等(以下では(電気)コネクタと(相手側コネクタとも)称する)が知られている。低い、中程度の、または高い電圧および/または電流の分野において、特に自動車分野において、そのようなコネクタは、機械的応力のかかる、温暖な、場合によっては高温の、汚染された、湿潤な、および/または化学的反応性の高い環境において比較的長期間にわたって不使用であった後、恒久的に、反復的に、かつ/または短時間で、電力、信号、および/またはデータを確実に伝送する必要がある。
広範な用途に起因して、多数の特別に設計されたコネクタが知られている。
【0003】
そのようなコネクタ、および、当てはまる場合には、その付随するハウジング(例えばコネクタ手段またはコネクタデバイスの場合)またはより上位のハウジング(例えばコネクタデバイスの場合)は、電線、ケーブル、ケーブルハーネス等(以下では組立て済み(電気)ケーブルと(電気エンティティとも)称する)に、または、(電力)電気的、電子光学的または電子的な構成要素または対応する集合体等(電気エンティティ)の、例えばハウジング、リードフレーム、回路基板等のような電気デバイスまたは手段に設置される場合がある。
【0004】
コネクタ(ハウジング有り/無し)がケーブル、線またはケーブルハーネスに配される場合、これはフライング(プラグ)コネクタまたはプラグ、ソケットまたはカップリングとも称され、電気的、電子光学的または電子的な構成要素、集合体等に配置される場合、これは(内蔵/搭載)コネクタ、(内蔵/搭載)プラグまたは(内蔵/搭載)ソケットなどのコネクタデバイスとも称される。そのようなデバイスのコネクタはさらに、(プラグ)レセプタクル、ピンヘッダ、ピンストリップまたはヘッダとも称されることが多い。電力工学(好ましくは三相高圧送電による、配電網における高圧電流の生成、変換、貯蔵および移送)の文脈では、それらの比較的複雑な構造に起因して、ここではケーブル器具との言及がなされる。
【0005】
そのようなコネクタは、適切な送電を確実に行う必要があり、互いに対応する部分的に相補的なコネクタ(コネクタおよび相手側コネクタ)は通常、コネクタを相手側コネクタにまたは相手側コネクタをコネクタに恒久的ではあるが概して開放可能にロックおよび/または固定するためのロックデバイスおよび/または固定デバイスを有する。さらに、例えば実際の電気コンタクト手段(端子、通常は物質的に単体としてまたは一体的に形成される、例えば(圧着)コンタクト要素等)または電気コンタクトデバイス(端子、通常は単体でありいくつかのまたは2つの部品からなる、または物質的に一体であるように形成される、例えば(圧着)コンタクトデバイス)を備える、または少なくとも有するコネクタ用の電気接続デバイスが、そこに安定的に保持される必要がある。
【0006】
接続デバイスは、それ自体がいくつかの部品から形成されていてよい。ここで、接続デバイスは、例えば2つ以上の電気端子を備える、または有していてよい。これは、例えば、1つまたは2つの内部電気端子(オスおよび/またはメス)および1つの外部端子(シールドコンタクトスリーブ)を備える、または有し得る同軸または二軸またはツイストペアの接続デバイスの場合に当てはまる。さらに、フェルール(支持スリーブ)が、接続デバイスにおける外部端子内に配設される場合がある。(事前)組立て済み電気ケーブルの場合、そのような接続デバイスは、コネクタ(上記参照)として、すなわちハウジングなしで、例えばフライング方式で提供される場合がある。
【0007】
電気コネクタおよびその接続デバイスを改良するため、特に小型化によってそれらをより頑健にし、より効果的に設計し、より低コストで製造するための取り組みが、継続的に行われている。ここで、従来の接続デバイス(ここでの定義:伝送周波数が約3MHz未満のもの)とは大幅に異なるHF接続デバイス(HF:高周波数、ここでの定義:伝送周波数が3MHz超~300MHz超およびGHz範囲(約150GHz)に及ぶもの)に規則を当てはめる。これは、電気の波動特性が特にHF技術において明白なためである。電気HFプラグ接続部の場合、信号品位の維持がますます大きな障害となることが判明しつつある。
【0008】
例えばツイストペアケーブル、二軸ケーブル等のようなマルチコアケーブルにおけるシールドをますます卵形に近づけていくことが、ケーブル製造者の注目すべき傾向となっている。これは、マルチコアケーブルのシールドを以前のように追加のフィラーの周囲ではなくマルチコアケーブルの内部導体の周囲に直接配置する製造者がますます多くなってきているためである。しかしながら、マルチコアケーブルの絶縁被覆は、実質的に円形のままである。そのようなマルチコアケーブルの圧着接続デバイス用の従来の圧着フェルールは、もっぱら実質的に円形のシールドへの圧着に適するように設計される。したがって、本発明の目的は、改善された接続デバイスを規定することにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、電気マルチコアケーブルの電気接続デバイス用の電気マルチコアケーブル圧着フェルール、特にHFマルチコアケーブル圧着フェルールによって、電気マルチコアケーブル圧着フェルール、特にHFマルチコアケーブル圧着フェルールを、電気マルチコアケーブルの剥き出された非円形の内部断面に圧着することにより組み付けるための方法によって実現され、電気接続デバイス、特にHF接続デバイスによって実現され、さらには電気エンティティ、特にHFエンティティによって実現される。本発明の有利な発展形、追加の特徴、および/または利点が、従属請求項および以下の説明から導き出され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るマルチコアケーブル圧着フェルールは、圧着フェルールをマルチコアケーブルの実質的に非円形の内部断面に組み付けるための好ましくは軸方向の組み付け部と、マルチコアケーブルにおいて、または非円形の内部断面において/その上に、圧着フェルールの実質的に円形の外部断面を構成するための好ましくは軸方向の直径補償部とを備え、圧着フェルールの軸方向において、組み付け部および直径補償部は、圧着フェルールにおいて連続的に配置され、最終的(全体的)には好ましくは圧着フェルールとして構成される。これは、組み付け部のみおよび直径補償部のみが、好ましくは完全に、組み付け部または直径補償部で、よって圧着フェルールでさらなる手段なしで、圧着フェルールを構成することを意味する。
【0011】
ここで、圧着フェルールは、その組み付け部を介して、圧着フェルールを組み付けるために、マルチコアケーブルの非円形の内部断面に圧着される、すなわちそこに塑性変形により配設される適合性を有する。また、組み付け部が電気ケーブルの円形の内部断面または外部断面に圧着される本発明の適用例および/または実施形態も可能である。さらに、ここで直径補償部も同様に、ケーブルのこの内部断面または外部断面に圧着されてよい。すなわち、組み付け部は、非円形の内部断面に圧着される必要はないが、そのようにしてもよい。
【0012】
ここで、非円形の内部断面は、ケーブルシールド、特に外部ケーブルシールドにより、または保護被覆の直下に位置するマルチコアケーブルの層により形成される、マルチコアケーブルの内部断面であることが好ましい。非円形の内部断面は、例えばマルチコアケーブルの外部断面の形状と比較して、例えば、円形の断面を越えた、マルチコアケーブルの(部分的に)楕円形または(部分的に)卵形の内部断面として理解されるべきである。圧着フェルールにより、圧着フェルールの円形の外部断面を、少なくとも部分的にマルチコアケーブルの非円形の内部断面の上に配設することができる。ここで、円形の外部断面の外径は、マルチコアケーブルの保護被覆の外径の範囲内であることが好ましい。特に、円形の外部断面の外径は、保護被覆の外径よりもある程度小さい。
【0013】
電気端子、特にシールドコンタクトスリーブが、圧着フェルールの円形の外部断面に固定され、特に圧着されてよい。すなわち、圧着フェルールは、支持スリーブとして構成される。ここで、マルチコアケーブルのシールドが、圧着フェルールの径方向外側に折り重ねられてよく、特に、当該圧着フェルールの直径補償部の径方向外側に折り重ねられてもよい。
【0014】
周方向において、直径補償部は、一方では非円形の内部断面の内側に掛かって/載っていて(bear/sit on、接触していて)よく、他方では非円形の内部断面から離隔するようにマルチコアケーブルの内側に配置されてよい。特に、直径補償部は、2つの径方向に互いに対向する内部周方向部分を介して非円形の内部断面に掛かる/載る。さらに、直径補償部は、2つの径方向に互いに対向する内部周方向部分を介して非円形の内部断面から離隔するようにマルチコアケーブルにおいて配置される。
【0015】
組み付け部は、圧着フェルールがマルチコアケーブルの非円形の内部断面に配設されることを可能とする少なくとも1つの組み付けデバイスを有していてよい。直径補償部において、第1の周方向フランクが、周方向中心部を介して、圧着フェルールの第2の周方向フランクに接続されてよい。ここで、2つの周方向フランクは、互いに向かって屈曲することが可能であり、圧着フェルールの円形の外部断面は、マルチコアケーブルにおいて、または非円形の内部断面において/その上に構成されることが可能である。
【0016】
さらに、圧着フェルールの組み付け部は、非円形の内部断面を当該組み付け部により締め付けることができるものとして定義されてよく、非円形の内部断面は、加工中に弾性変形かつ/または塑性変形することが可能である。圧着フェルールの直径補償部はさらに、当該直径補償部によって非円形の内部断面の弾性変形のみが可能であるものとして定義されてよく、当該弾性変形はさらに、軽微であることが好ましい。直径補償部は特に、当該直径補償部によって、マルチコアケーブルの内部断面を、塑性変形させること、貫通する(切開する、裂開する、穿孔する等)こと等が可能であるように構成されない。
【0017】
軸方向において、組み付け部および直径補償部は、圧着フェルールにおいて間隔を介して互いと隣接するように、圧着フェルールにおいて直接隣接するように、または圧着フェルールにおいて互いに重ならないように配置されてよい。単一の組み付けデバイスは、非円形の内部断面が締め付けられることを可能とする組み付け舌片を有していてよい。組み付け舌片は、自由な長手方向部分、ラグ、タブ、突出部、羽根、ブレード、ストリップ、脚部またはウエブとして構成されてよい。軸方向において、単一の組み付けデバイスが、周方向フランクまたは周方向中心部に構成されてよい。
【0018】
圧着フェルールの周方向において、2つ、3つ、4つまたは5つの組み付けデバイスが、圧着フェルールに配置されてよい。ここで、少なくとも2つ以上、または全ての組み付けデバイスが、圧着フェルールにおいて実質的に回転対称または実質的に非回転対称であるように配置されてよい。さらに、2つの径方向に互いに対向する組み付けデバイスおよび/またはその径方向の断面は、圧着フェルールにおける一点に関して実質的に対称であるように配置されてよい。
【0019】
組み付けデバイスは、舌根部を介して圧着フェルールに一体化される屈曲性の組み付け舌片を有していてよい。屈曲性の組み付け舌片は、圧着組み付け舌片として構成されることが好ましい。舌根部は、軸方向において圧着フェルールから突出していてよい。ここで、それぞれの舌根部は、軸方向において2つの周方向フランクのうちの1つまたは周方向中心部から突出していてよい。組み付け舌片は、周方向および/または径方向において舌根部から突出していてよい。
【0020】
圧着フェルールを圧着するときに、組み付けデバイスの組み付け舌片は、圧着フェルールにおけるその舌根部の移動を連動して実行し(
図1~
図2参照)、圧着フェルールにおける周方向位置から進んで圧着されることが可能であり(
図2参照)、かつ/または、径方向内方において非円形の内部断面に圧着されることが可能であって(
図2~
図3参照)よい。ここで、組み付け舌片は、その舌根部に関して、特に旋回移動を行い、組み付け舌片は、周方向とともに径方向に移動することが好ましい。
【0021】
マルチコアケーブルにおける圧着フェルールの圧着状態について、非円形の内部断面は、組み付けデバイス、および圧着フェルールの径方向に対向する領域、特に径方向に対向する組み付けデバイスにより締め付けられることが可能であってよい。さらに、圧着状態について、非円形の内部断面は、実質的に1つの面または2つの面において、または約72°、90°、120°または180°未満程度の周方向角度で、単一の組み付けデバイスにより装着されることが可能であってよい。
【0022】
ここで、非円形の内部断面は、舌根部、および圧着フェルールの径方向に対向する領域、特に径方向に対向する舌根部、または径方向に対向する組み付け舌片により締め付けられることが可能であってよい。さらに、非円形の内部断面は、組み付け舌片、および圧着フェルールの径方向に対向する領域、特に径方向に対向する組み付け舌片、または径方向に対向する舌根部により締め付けられることが可能であってよい。
【0023】
さらに、圧着状態について、非円形の内部断面は、直径補償部の軸方向部分、および圧着フェルールの一領域、特に直径補償部の径方向に対向する軸方向部分により締め付けられることが可能であってよい。ここで、非円形の内部断面は、周方向フランクの軸方向部分、および圧着フェルールの一領域、特に周方向フランクの径方向に対向する軸方向部分により締め付けられることが可能であってよい。
【0024】
長手方向に延びる圧着フェルールの自由周囲部は、実質的に長手方向のみにおいて長さ(extent)が実質的に自由であってよい。結果として、圧着フェルールのHF特性(信号品位)が向上する。周方向において互いに対向する直径補償部の自由周囲部は、相補的であるように構成され、圧着フェルールの圧着状態において、実質的に形状嵌合(form-fitting、フォームフィット、フォームフィッティング)して互いに対向していてよい。
【0025】
圧着フェルールの圧着状態において、直径補償部において、周方向フランクの周方向歯部(例えば三角形または略三角形)が、周方向においてこの周方向フランクに対向する周方向フランクの2つの周方向歯部(例えば略三角形または三角形)の間に係合してよい。結果として、フェルールが非円形の内部断面に圧着されたときに、編組シールドのより線がより良好に捕捉される。
【0026】
一実施形態において、圧着フェルールは、特に厚さが一定の、金属製(金属薄板)または金属被覆された材料層から構成されてよい。圧着フェルールは、物質的に一体または一体な圧着フェルールとして構成されることが好ましい。ここで、圧着フェルールは、被膜、堆積物、亜鉛めっき表面等を追加的に有していてよい。
【0027】
物質的に(接着により)一体な構成は、圧着フェルールの個々の部品が互いに物質的に一体に配設され(溶接、はんだ付け/ろう付け、接着接合、積層等)、圧着フェルールが、好ましくは、その個々の部品のうちの1つを損傷させることなくその個々の部品に分離されることが不可能である圧着フェルールの構成として理解される。この場合、接合は、非嵌め込み式および/または嵌め込み式(positively)のロック接続によってさらに形成されてもよい(一体設計の場合でない)。
【0028】
一体の構成は、単一の構成要素を破壊することでしか分割することができない当該単一の構成要素のみが存在する圧着フェルールの構成として理解される。この構成要素は、単一の原型部品(金属薄板、素材片(blank、ブランク)等)から、かつ/または単一の原型塊(溶融金属)から作製され、これは必然的に一体である。内部の接合は、接着および/または粘着により行われる。
【0029】
一実施形態において、周方向中心部および/または周方向フランクは、補強デバイスを有していてよい。そのような補強デバイスは、例えば少なくとも1つのビードとして構成されてよい。さらに、圧着の直前、直径補償部のみが、実質的にU字形状またはV字形状の断面を有していてよく、すなわち、組み付け部はそのような形状を有しない。
【0030】
本発明に係る圧着組み付け方法において、供給工程において、圧着フェルールを非円形の内部断面に圧着するための軸方向組み付け部および軸方向直径補償部を備える圧着フェルールが利用可能とされ、その後、圧着フェルールが、その組み付け部を介して、実質的に非円形の内部断面に圧着され、圧着フェルールの円形の外部断面が、直径補償部により加工中にマルチコアケーブルにおいて構成される。
【0031】
組み付け部を圧着するときに、非円形の内部断面は、組み付け部における少なくとも1つの組み付けデバイスにより締め付けられる。この目的で、組み付け部は、非円形の内部断面が圧着フェルールの径方向に対向する領域に押し付けられるようにする少なくとも1つの組み付け舌片を有することが好ましい。好ましくは旋回可能な組み付け舌片は、圧着組み付け方法で圧着されることが好ましく、組み付け舌片は、非円形の内部断面となるように屈曲する。非円形の内部断面は、加工中に弾性変形かつ/または塑性変形する。
【0032】
円形の外部断面を構成するときに、直径補償部の第1の周方向フランクおよび第2の周方向フランクが互いに向かって屈曲する。非円形の内部断面はここで、弾性変形するのみであってよく、好ましくはわずかにのみ、かつ特に1つの「平面」のみにおいて弾性変形するのみであってよい。円形の外部断面を構成するときに、周方向において互いに対向する直径補償部の自由周囲部は、互いに接合されてよく、かつ/または形状嵌合して互いの内側に接合されてよい。ここで、自由周囲部は、圧着フェルールの単一の周縁部において直接互いに対向することが好ましい。
【0033】
圧着組み付け方法において、圧着フェルールは、マルチコアケーブルのケーブルシールドに圧着されることが好ましい。圧着フェルールを非円形の内部断面に圧着した後、ケーブルシールドは、圧着フェルールに折り重ねられてよい。圧着フェルールは、本発明に係る圧着フェルールとして構成されてよい。
【0034】
電気接続デバイス、特にHF接続デバイスを電気マルチコアケーブルに組み付ける(ケーブル加工)ための本発明に係る方法において、方法の第1の工程において、圧着フェルールが、本発明に係る圧着組み付け方法により、マルチコアケーブルのケーブルシールドに圧着され、第1の工程の後の方法の第2の工程において、内部端子(
図5の符号1を参照)がマルチコアケーブルの内部導体に取り付けられ、第2の工程の後の方法の第3の工程において、シールドコンタクトスリーブ(
図5の符号3を参照)が圧着フェルールまたはケーブルシールドおよびマルチコアケーブルの保護被覆に圧着される。
【0035】
第1の工程に関して、マルチコアケーブルがその意図された位置に既にあることが好ましい。第1の工程において、マルチコアケーブルは、その保護被覆から解放された部分により、圧着フェルールに挿入されてよく、かつ/またはその逆が行われてよい。第1の工程の後、または第2の工程において、ケーブルシールドの自由な長手方向端部が、圧着フェルールの径方向外側に折り重ねられてよい。第2の工程における内部端子の装着は、例えば圧着、(成形)溶接、はんだ付け/ろう付け等のための方法により行われてよい。
【0036】
本発明に係る接続デバイスは、内部電気端子と、圧着フェルールと、電気シールドコンタクトスリーブとを備え、圧着フェルールは、本発明に従って構成される。本発明に係るエンティティは、電気接続デバイスを有し、接続デバイスは、本発明に従って形成され、かつ/または、接続デバイスは、本発明に係る組み付け方法により電気マルチコアケーブルに組み付けられる。
【0037】
ここで、当該エンティティはさらに、例えばエンティティのハウジングに加えて、少なくとも1つの機械的、電気的、電子的、光学的および/または流体的な手段またはデバイスを有していてよい。そのようなエンティティは、例えば手段、デバイス、コネクタ(ツイストペアコネクタ、二軸コネクタ等)、組立て済みマルチコアケーブル(ツイストペアケーブル、二軸ケーブル等)、アセンブリ、回路基板、構成要素、モジュール、ユニット、器具、機器、設備、システム等として形成されて(も)よい。
【0038】
模式的であって縮尺通りでない添付の図面を参照して、例示的実施形態に基づき、本発明を以下でより詳細に説明する。各図の説明(下記参照)、参照符号のリスト、特許請求の範囲、および図面の各図において、同一、固有または同様の構成および/または機能を有する部分、要素、構成部品、ユニット、構成要素および/またはパターンは、同じ参照符号で識別されている。本発明の説明(上記参照)において説明されていない、図面に示されていない、および/または決定的でない可能な代替例、本発明の例示的実施形態に関する静的および/または動的な反転、組み合わせ等、またはその構成要素、パターン、ユニット、構成部品、要素もしくは部分が、参照符号のリストおよび/または各図の説明からさらに集められてよい。
【0039】
本発明の場合、特徴(部分、要素、構成部品、ユニット、構成要素、機能、変数等)は、肯定的構成であってもよく、すなわち存在してもよく、または否定的構成であってもよく、すなわち存在しなくてもよい。本明細書(説明(本発明の説明(上記参照)、各図の説明(下記参照))、参照符号のリスト、特許請求の範囲、図面)において、否定的な特徴は、本発明に従ってそれが存在しないことに意義がない場合、特徴として明示的に説明されていない。すなわち、実際に行われ、先行技術によって構成されない本発明は、当該特徴を省いて成り立つ。
【0040】
本明細書の特徴は、指定される方式および/または態様のみならず、別の方式および/または態様(分離、組み合わせ、置換、追加、独立、省略等)でも用いることができる。特に、説明、参照符号のリスト、特許請求の範囲および/または図面において、参照符号およびそれに割り当てられた特徴に基づいて、特許請求の範囲および/または説明における特徴を置換、追加または省略することが可能であり、その逆も然りである。さらに、特許請求の範囲における特徴は、結果としてより詳細に解釈および/または規定されてよい。
【0041】
説明の特徴は、((最初はほとんど未知の)先行技術に鑑みて)任意選択的な特徴として解釈されてもよく、すなわち、各特徴は、任意選択的な、任意のまたは好適な特徴、すなわち必須でない特徴とみなされてよい。したがって、場合によってはその周辺部を含む特徴を例示的実施形態から分離することが可能であり、そして当該特徴を一般化された発明概念に変形させることが可能である。特徴(否定的特徴)が例示的実施形態に存在しないことは、その特徴が本発明に関して任意選択的であることを示す。さらに、特徴に関する種類用語の場合、その特徴に関する一般的用語も暗示的に理解されてよく(場合によっては亜属へのさらなる階層的分類等)、その結果として、例えば等価効果および/または等価性を考慮して、その特徴の一般化が可能である。
【0042】
単に例示的な図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】伸長状態における、リールに一体に取り付けられたマルチコアケーブル用の本発明に係る圧着フェルールを、マルチコアケーブルなしで示す斜視図である。
【
図2】圧着の直前または圧着中の事前屈曲状態のマルチコアケーブル用の本発明に係る圧着フェルールを、マルチコアケーブルなしで示す斜視図である。
【
図3】圧着状態のマルチコアケーブル用の本発明に係る圧着フェルールを、マルチコアケーブルなしで示す斜視図である。
【
図4】
図1~
図3の圧着フェルールに合わせて事前に加工されたマルチコアケーブルにおいて、組み付けた状態にある当該圧着フェルールを、断面図では示されていない圧着フェルールの後部に向かって示す断面端面図である。
【
図5】
図1~
図3の圧着フェルールに合わせて事前に加工されたマルチコアケーブルにおいて、組み付けた状態にある当該圧着フェルールを、前部および後部を切り取って示されているマルチコアケーブルに向かって示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
電気マルチコアケーブル5の電気接続デバイス0用の、以下では単に圧着フェルール2と称される、本発明に係るマルチコアケーブル圧着フェルール2、特にHF圧着フェルール2の別形の実施形態の例示的実施形態を用いて、本発明を以下でより詳細に説明する。このとき、マルチコアケーブル5は、例えばツイストペアケーブル5、二軸ケーブル5等として形成されてよい。したがって、接続デバイス0は、例えばツイストペア接続デバイス0、二軸接続デバイス0等のようなマルチコア接続デバイス0として形成されてよく、圧着フェルール2は、ツイストペア圧着フェルール2、二軸圧着フェルール2等として形成されてよい。
【0045】
本発明を好適な例示的実施形態によってさらに詳細に説明および例示するが、本発明は、開示の例示的実施形態によって制限されるものではなく、より基本的な性質のものである。そこから、および/または上記(本発明の説明)から、本発明の保護範囲から逸脱することなく、他の変形例を導き出すことができる。本発明は、電気エンティティ(上記参照)の場合、一般に電気分野において用いることができる。ここで、地上電力工学が1つの例外となる。図面は、本発明の理解に必要な、本発明の対象の空間的部分のみを示す。コネクタおよび相手側コネクタ、端子および相手側端子等のような呼称は、同義として解釈されるべきである、すなわち相互に交換可能であってよい。
【0046】
図1~
図3は、本発明に係る圧着フェルール2を、圧着により当該圧着フェルール2を組み付けるための方法に関する3つの連続する段階において示す(
図1:リール23において平坦、
図2:やはりリール23において、事前屈曲されている、
図3:圧着され、リール23から離れている)。圧着フェルール2は、このとき、かつ最終的に、軸方向組み付け部21としての第1の前部軸方向部分21と、軸方向直径補償部22としての第2の後部軸方向部分22とを備える。圧着フェルール2が任意選択的にさらなる軸方向部分を有することも可能なのは勿論である。ここで、両方の軸方向部分21、22は、圧着フェルール2の、単一の、好ましくは一体の材料層として構成される。
【0047】
軸方向組み付け部21は、マルチコアケーブル5の実質的に非円形の内部断面50に圧着フェルール2を組み付けるように機能する。
図4および
図5を参照すると、マルチコアケーブル5は、このとき、径方向内側から外側に、2つの電気的に絶縁された内部導体51、52と、内部ケーブルシールド54(例えばシールドホイル54として構成される)と、その径方向上方に位置するケーブルシールド55(例えば編組シールド導体55として構成される)と、径方向外側における保護被覆57とを備える。マルチコアケーブル5の別の構造が用いられてもよいことは勿論である。
【0048】
軸方向直径補償部22は、非円形の内部断面50において/その上方に、マルチコアケーブル5において圧着フェルール2の実質的に円形の外部断面20を構成するように機能する。
図4および
図5も参照。ここで、軸方向Arにおいて、組み付け部21および直径補償部22は、圧着フェルール2として連続的に配置される。特に、組み付け部21は、直径補償部22へと継ぎ目なくかつ/または一体的に移行する。
【0049】
直径補償部22は、好ましくは、実質的に単一の(周方向)材料層220、221、222(金属薄板)から構成され、圧着フェルール2の(第1の)周方向フランク221を圧着フェルール2の(第2の)周方向フランク222に好ましくは一体に接続する周方向中心部220を備える。周方向中心部220の中心は、好ましくは、圧着フェルール2の圧着開口部または圧着溝穴(
図2参照)に径方向に対向する。
【0050】
直径補償部22は、接続デバイス1およびマルチコアケーブル5の軸方向Arとも一致する軸方向Arの長さを有する。さらに、直径補償部22は、その圧着状態(
図1~
図3参照)に応じて、径方向Rrの長さおよび周方向Urの長さを有し、これらの方向Rr、Urはやはり、接続デバイス1およびマルチコアケーブル5のものとも一致する。
【0051】
直径補償部22の2つの周方向フランク221、222において圧着フェルール2は、軸方向(接続デバイス1のプラグ面の方向)において前部に向かって隣接するように、いずれの場合も少なくとも1つの(圧着)組み付けデバイス211、212を有する。組み付けデバイス211、212によって、圧着フェルール2が、非円形の内部断面50に配設されることが可能となる、すなわち非円形の内部断面50に圧着されることが可能となる。
【0052】
組み付けデバイス211、212はここで、圧着フェルール2の組み付け部21を形成する。組み付けデバイス211、212の数に応じて、少なくとも1つのそのような組み付けデバイスが、軸方向Arにおいて周方向中心部220に隣接していてもよい。ここで、組み付けデバイス211、212の全てが、圧着フェルール2の軸方向の一方側に配置されることが好ましい。
【0053】
それぞれの組み付けデバイス211、212は、圧着フェルール2の圧着開口部または圧着溝穴へと屈曲することが可能な(圧着)組み付け舌片2115、2125(
図2参照)を有する。ここで、組み付け舌片2115、2125は、主にまたは実質的に径方向Rrにおいて圧着されることが可能であり、軸方向Arにおける組み付け舌片2115、2125の変位は不可能である。それぞれの組み付けデバイス211、212は、舌根部2110、2125に一体に設けられ、舌根部2110、2125は、直径補償部22と一体に構成され、このときそれぞれの周方向フランク221、222と一体に構成される。
【0054】
このとき、それぞれの舌根部2110、2120は、ラグの形状で、かつ実質的により薄く(圧着フェルール2の材料厚さ)湾曲した直方体として構成される。ここで、それぞれの舌根部2110、2120は、その(材料)厚さを考慮しなければ、軸方向Arおよび周方向Urに延びる。ここで、それぞれの舌根部2110、2120の湾曲は、舌根部2110、2120に直接隣接する直径補償部22の領域の湾曲と、またはそれぞれの周方向フランク221、222と一致する(
図3参照)。
【0055】
このとき、それぞれの組み付け舌片2115、2125は、ラグの形状で、かつ実質的により薄い(圧着フェルール2の材料厚さ)直線的な直方体として構成される。しかしながら、ここで、湾曲した直方体が用いられることも可能である。これは、例えば、それぞれの組み付け舌片2115、2125を非円形の内部断面50の湾曲に適合させることができることを意味する。それぞれの組み付け舌片2115、2125は、その(材料)厚さを考慮しなければ、圧着フェルール2の圧着状態に応じて、主にまたは実質的に周方向Ur(
図2)または周方向Urおよび径方向Rr(
図3)に延びる。
【0056】
組み付け舌片2115、2125により、非円形の内部断面50が締め付けられることが可能となり、その結果、圧着フェルール2がマルチコアケーブル5に圧着されることが可能となり、圧着時に、直径補償部22の、または圧着フェルール2の円形の外部断面20が(周方向フランク221、222を互いに向かって屈曲させて)さらに形成されることが可能となる。結果として、確実に、圧着フェルール2がマルチコアケーブル5において安定的に配置されることが可能となり、そこでずれることがなくなる。圧着フェルール2に設けられる、特に圧着されることになるシールドコンタクトスリーブ3の径方向の力は、圧着フェルール2の円形の外部断面に伝達され、それにより、マルチコアケーブル5の内部導体が押し潰されない。
【0057】
圧着フェルール2をマルチコアケーブル5に圧着することにより組み付けるための本発明に係る方法において、指定された圧着フェルール2および特定の(事前に)用意されたマルチコアケーブル5が、供給工程において利用可能とされる。その後、例えば、この圧着フェルール2が、保護被覆57が剥かれた(すなわち部分的または完全に剥かれた、例えば引き抜かれたまたは取り除かれた)このマルチコアケーブル5の実質的に非円形の内部断面50に圧着される(
図4および
図5)。圧着フェルール2の数に応じて、これが繰り返される。ここで、圧着組み付け方法は、以下に説明する電気接続デバイス0の組み付け方法の時間的な一部(temporary portion、一時的な部分)であってよい。
【0058】
単一の圧着フェルール2の圧着組み付けにおいて、マルチコアケーブル5は、その非円形の内部断面50を介して、頂部が開口している圧着フェルール2へと上方から移動され、かつ/またはその逆が行われ、かつ/または、後部が開口している圧着フェルール2へと後方から移動され、かつ/またはその逆が行われる。実質的にその直後、圧着フェルール2が、非円形の内部断面50に、かつ/または非円形の内部断面50に/その上に、またはマルチコアケーブル5に、圧着される。すなわち、圧着フェルール2が、そのような非円形の内部断面50を有するマルチコアケーブル5の軸方向部分に圧着される。
【0059】
ここで、圧着フェルール2の円形の外部断面20が構成されるように、一方では、周方向フランク221、222が、その自由周囲部が周方向Urにおいて互いに実質的に掛かる(圧着)まで、互いに向かって屈曲する。他方では、組み付けデバイス211、212が、マルチコアケーブル5の軸方向部分の非円形の内部断面50を介して、これを当該組み付けデバイス211、212の間で締め付け(圧着)、それにより、圧着フェルール2をマルチコアケーブル5の非円形の内部断面50に(組み付けデバイス211、212)かつ非円形の内部断面50に/その上に(周方向フランク221、222)装着する。
【0060】
加工中の組み付け舌片2115、2125は、非円形の内部断面50を有するマルチコアケーブル5の軸方向部分へと径方向内方に屈曲する(
図2~
図3~
図5)ことが好ましく、それにより、この軸方向部分が組み付け舌片2115、2125の間で締め付けられる。圧着フェルール2の円形の外部断面20が構成されている間、周方向フランク221、222が、そしてそれにより舌根部2110、2120も、互いに向かってさらに屈曲し(
図2~
図3~
図5)、それにより、この軸方向部分が舌根部2110、2120の間でさらに締め付けられる。その後、好ましくは、ケーブルシールド55の自由な長手方向端部が、圧着状態における圧着フェルール2に全周において配置されてよい。
【0061】
圧着フェルール2を圧着する間に周方向フランク221、222が互いに向かって屈曲する前に、周方向フランク221、222は、周方向中心部220から実質的に直線的に突出していてよい。すなわち、それぞれの周方向フランク221、222は、周方向中心部220から接線方向に「伸びる」。周方向フランク221、222は、そして好ましくは舌根部2110、2120も、圧着フェルール2が圧着されたときにのみ、その湾曲した形状を与えられ、一方で組み付け舌片2115、2125は、その(位置ではなく)実質的な形状を維持し得る。
【0062】
接続デバイス0の本発明に係る組み付け方法において、マルチコアケーブル5の保護被覆57の部分的な剥き取りが、まず、好ましくは第1の工程Iで行われ、当該マルチコアケーブル5のケーブルシールド55(好ましくは編組シールド導体55)が露出する。同様に、完全な引き抜き、または部分的もしくは完全な除去が行われてもよいことは勿論である。その後、圧着フェルール2が、この自由な長手方向部分に圧着される(第1の工程Iの時間的な一部としての圧着フェルール2の圧着組み付け方法)。上記参照。
【0063】
組み付け方法の第1の工程Iの後の第2の工程IIにおいて、まず第1に、マルチコアケーブル5の残りの自由な長手方向端部を、内部(HF)端子の装着のために準備する(
図1参照)。ここで、マルチコアケーブル5によっては、マルチコアケーブル5の内部導体51、52の誘電体またはそれぞれの電気絶縁体が、圧着フェルール20、またはケーブルシールド55の折り重ねられた部分から小さい間隔を空けて、残りの自由な端部から除去される。その後、内部端子1(好ましくは2つ)がマルチコアケーブル5に装着される。
【0064】
組み付け方法の第2の工程IIの後の第3の工程IIIにおいて、外部電気(HF)(圧着)端子3、特にシールドコンタクトスリーブ3が、マルチコアケーブル5に圧着されてよい。ここで、シールドコンタクトスリーブ3は、圧着フェルール2、または一方ではケーブルシールド55のその折り重ねられた部分に圧着され、他方ではさらに後部においてマルチコアケーブル5の保護被覆57に圧着される。ここで、事前に加工されたマルチコアケーブル5が、頂部が開口しているシールドコンタクトスリーブ30へと上方から移動され、かつ/またはその逆が行われ、かつ/または、後部が開口しているシールドコンタクトスリーブ30へと後方から移動され、かつ/またはその逆が行われる。これらの工程I、II、IIIは、接続デバイス0の数に応じて繰り返される。
【符号の説明】
【0065】
0 マルチコアコネクタ用の(電気)(HF)接続デバイス
1 (内部、電気)(HF)(圧着)端子、特にピン、タブまたはソケット端子
2 (電気)(HF)マルチコアケーブル圧着フェルール
20 圧着フェルール2の(実質的に円形の)外部断面
21 (第1の前部)軸方向部分、軸方向組み付け部
211 (第1の)(圧着)組み付けデバイス
2110 (第1の)舌根部
2115 (第1の)(圧着)組み付け舌片
212 (第2の)(圧着)組み付けデバイス
2120 (第2の)舌根部
2125 (第2の)(圧着)組み付け舌片
22 (第2の後部)軸方向部分、軸方向直径補償部
220 周方向中心部(周方向)材料層
221 (第1の右側)周方向フランク、(周方向)材料層
222 (第2の左側)周方向フランク、(周方向)材料層
23 リール
3 (外部、電気)(HF)(圧着)端子、特にシールドコンタクトスリーブ
5 (電気)(HF)マルチコアケーブル、例えばツイストペアケーブル、二軸ケーブル等
50 マルチコアケーブル5の(実質的に非円形の)内部断面
51 (第1の)電気的に絶縁された内部導体
52 (第2の)電気的に絶縁された内部導体
54 ケーブルシールド、例えばシールドホイル
55 ケーブルシールド、例えば編組シールドワイヤ
57 保護被覆
Ar 圧着フェルール2の、接続デバイス0の軸方向
Rr 圧着フェルール2の、接続デバイス0の径方向
Ur 圧着フェルール2の、接続デバイス0の周方向
I 組み付け方法の第1の工程
II 組み付け方法の第2の工程
III 組み付け方法の第3の工程