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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ワークストッカ
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/14 20060101AFI20231218BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20231218BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20231218BHJP
   B25H 3/04 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B23Q7/14
G05D1/02 H
B25J5/00 E
B25H3/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022130485
(22)【出願日】2022-08-18
(62)【分割の表示】P 2022535846の分割
【原出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022159500
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2022-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 昭二郎
(72)【発明者】
【氏名】森川 昌太郎
(72)【発明者】
【氏名】貞野 智哉
(72)【発明者】
【氏名】熊野 友樹
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-071536(JP,A)
【文献】特開昭63-317773(JP,A)
【文献】特開2012-161889(JP,A)
【文献】特開平08-081017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/10、7/14
B65G 1/00
B25H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークがセットされるワークセット部材を所定の収納位置から所定の引出し経路に沿った両側である搬送車作業位置側及び反搬送車作業位置側に引出し可能に収納するワークストッカであって、前記ワークセット部材は、無人搬送車に搭載されたロボットによって前記搬送車作業位置側に引出されるように構成されたストッカにおいて、
前記ワークセット部材が前記所定の収納位置から少なくとも前記反搬送車作業位置側に引出されないように該ワークセット部材の移動を規制する規制状態と、該規制が解除された規制解除状態とに切替え可能な引出規制機構部と、
前記引出規制機構部の駆動を制御するストッカ制御装置とを備え
前記ストッカ制御装置は、前記無人搬送車及び前記ロボットが実行すべきジョブを生成するジョブ生成部によりジョブが生成されたと判定し、前記ジョブに規定された作業を行う前記ワークセット部材を特定した場合には、前記無人搬送車が前記搬送車作業位置に到達するまで、前記引出規制機構部を前記規制状態に、前記無人搬送車が前記搬送車作業位置に到着すると前記引出規制機構部を前記規制解除状態に切替えるように構成されていることを特徴とするワークストッカ。
【請求項2】
前記ワークセット部材は複数設けられ、
前記ストッカ制御装置は、前記無人搬送車及び前記ロボットが実行すべきジョブを生成するジョブ生成部によりジョブが生成されたと判定し、前記複数のワークセット部材の中に、前記ジョブに規定された作業を行う前記ワークセット部材を特定した場合には、前記無人搬送車が前記搬送車作業位置に到達するまで、当該ワークセット部材の引出規制機構部を前記規制状態に、前記無人搬送車が前記搬送車作業位置に到着すると前記引出規制機構部を前記規制解除状態に切替えるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のワークストッカ。
【請求項3】
ワークがセットされるワークセット部材を所定の収納位置から所定の引出し経路に沿った両側である搬送車作業位置側及び反搬送車作業位置側に引出し可能に収納するワークストッカであって、前記ワークセット部材は、無人搬送車に搭載されたロボットによって前記搬送車作業位置側に引出されるように構成されたストッカにおいて、
前記ワークセット部材が前記所定の収納位置から少なくとも前記反搬送車作業位置側に引出されないように該ワークセット部材の移動を規制する規制状態と、該規制が解除された規制解除状態とに切替え可能な引出規制機構部と、
前記引出規制機構部の駆動を制御するストッカ制御装置とを備え、
前記ストッカ制御装置は、前記無人搬送車がジョブに規定された前記搬送車作業位置に向けて移動を開始する前に、前記ジョブに規定された作業を行う前記ワークセット部材の前記規制状態の解除を禁止するとともに、前記無人搬送車が前記搬送車作業位置に到着すると前記引出規制機構部を前記規制解除状態に切替えるように構成されていることを特徴とするワークストッカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークストッカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来無人搬送システムの一例として、国際公開第2018/092222号(下記特許文献1)に開示された無人搬送システムが知られている。
【0003】
この無人搬送システムは、工作機械に供給する素材ワークをストックする素材貯蔵庫と工作機械による加工後のワークをストックする製品貯蔵庫との二つのワークストッカを有している。
【0004】
無人搬送システムは、無人搬送車及びロボットを制御する自走ロボット制御部をさらに備えている。無人搬送車は、自走ロボット制御部による制御の下、工作機械、素材貯蔵庫、及び製品貯蔵庫のそれぞれに対して設定された作業位置に経由する。具体的には、自走ロボット制御部は、工作機械に設けられた工作機械制御部から送出される作業要求を受信し、受信した作業要求に応じて無人搬送車及びロボットのジョブ(作業計画)を生成する。ここで、工作機械制御部から送出される作業要求には、無人搬送車及びロボットにワーク搬送作業を実行させるための要求が含まれる。
【0005】
このワーク搬送作業としては、加工前のワークを素材貯蔵庫から工作機械まで搬送する素材搬送作業と、加済みのワークを工作機械から製品貯蔵庫まで搬送する完成品搬送作業とがある。素材搬送作業では、ロボットはワークを素材貯蔵庫から無人搬送車の運搬台に移動させ、無人搬送車が工作機械の作業位置に到着すると、該ワークを工作機械に装着する。一方、完成品搬送作業では、ロボットは、ワークを工作機械から取外して無人搬送車の運搬台に移動し、無人搬送車が製品貯蔵庫の作業位置に到着すると、該ワークを製品貯蔵庫に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/092222号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示す無人搬送システムにおいて、素材貯蔵庫及び製品貯蔵庫(ワークストッカ)と工作機械との間のワークの移動は、無人搬送車のロボットによって行われる一方、ワークストッカへの素材ワークの補充や製品ワークの回収等の作業については作業者によって行われる。
【0008】
このようにストッカに対する作業主体が、無人搬送車のロボットと人(作業者)との二者である場合には、無人搬送車及びロボットがジョブに基づいて実行しようとする動作が、作業者が行う作業によって阻害される虞がある。
【0009】
すなわち、例えば特許文献1に示す無人搬送システムにおいて、無人搬送車のロボットが、自走ロボット制御部(ジョブ生成部)により生成されたジョブに基づいて、製品貯蔵庫(ワークストッカ)に加工後のワークを収納しようとした際に、ワークストッカ内に作業者が誤ってセットしたワークが存在していると、ロボットはワークストッカ内へのワーク収納作業(セット作業)を実行することができない。
【0010】
また、例えば無人搬送車のロボットが、ジョブ生成部にて生成されたジョブに基づいて、素材貯蔵庫(ワークストッカ)から素材ワークを取出そうとした際に、作業者が誤ってワークストッカ内の素材ワークを持ち去っていたとすると、ロボットが素材ワークの取出し作業を実行することができない。
【0011】
また、特許文献1に示す無人搬送システムにおいては、ワークストッカは、上面にワーク載置面を有する置き台で構成されているので、ワークストッカ対する作業主体が無人搬送車のロボットと人(作業車)との二者となった場合に、ワークストッカへのアクセス経路がその上面側に集中して、ロボットの動作が作業者の作業により阻害されるという問題がある。
【0012】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであって、無人搬送車のロボットがジョブ生成部により生成されたジョブに基づいてワークストッカに対して行う動作が、該ワークストッカに対する作業者の作業により阻害されるのを防止することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一局面では、
ワークがセットされるワークセット部材を有していて、該ワークセット部材を所定の収納位置から所定の引出し経路に沿った両側である搬送車作業位置側及び反搬送車作業位置側に引出し可能に収納するワークストッカと、
前記ワークストッカに対して設定された搬送車作業位置を経由するように走行する無人搬送車と、
前記無人搬送車に搭載され、該無人搬送車が前記搬送車作業位置に停車した状態で、前記ワークストッカに設けられた前記ワークセット部材を前記所定の収納位置から前記搬送車作業位置側に引き出してワークのセット作業又は取出し作業を実行するロボットと、
前記ワークストッカにおけるワークのストック状況を取得して、取得した該ストック状況を基に、前記無人搬送車及び前記ロボットが実行するべきジョブを生成するジョブ生成部と、
前記ジョブ生成部が生成したジョブに基づいて前記無人搬送車及び前記ロボットを制御する動作制御部と、
前記ワークストッカに設けられ、前記ワークセット部材が前記所定の収納位置から少なくとも前記反搬送車作業位置側に引出されないように該ワークセット部材の移動を規制する規制状態と、該規制が解除された規制解除状態とに切替え可能な引出規制機構部と、
前記引出規制機構部の駆動を制御する引出し制御部とを備え、
前記引出し制御部は、前記ジョブ生成部により生成されたジョブを基に、前記無人搬送車の移動先が前記ワークストッカに対する搬送車作業位置であると認識した場合には、当該ジョブに規定された前記ロボットの作業対象となるワークストッカ及びワークセット部材を特定して、該特定時から前記無人搬送車が前記搬送車作業位置に移動して前記ロボットによる当該ワークセット部材の前記搬送車作業位置側への引出し作業が実行されるまでに当該ワークセット部材が前記反搬送車作業位置側に引出されないように、前記引出規制機構部を前記規制状態に制御するとともに該規制状態から前記規制解除状態への切替えを禁止する禁止制御処理を実行するように構成されている。
【0014】
本発明の一局面に係る前記無人搬送システムによれば、引出し制御部によって以下の禁止制御処理が実行されるので、ジョブに基づいてロボットがワークセット部材に対して行う動作が作業者により阻害されるのを回避することができる。すなわち、この禁止制御処理では、引出し制御部において、先ず、ジョブ生成部により生成されたジョブを基に、前記ロボットの作業対象となるワークストッカ及びワークセット部材を特定する。引出し制御部では、該特定時から無人搬送車が搬送車作業位置に移動して前記ロボットによる当該ワークセット部材の搬送車作業位置側への引出し作業が実行されるまでに当該ワークセット部材が前記反搬送車作業位置側に引出されないように、前記引出規制機構部を規制状態に制御するとともに該規制状態から前記規制解除状態への切替えを禁止する。
【0015】
したがって、無人搬送車が搬送車作業位置に到着してロボットが作業を開始するまでは、引出規制機構部によってワークセット部材の反搬送車作業位置側への移動が規制される。よって、ジョブ生成部によりジョブが生成された後、無人搬送車がワークストッカの搬送車作業位置に到着するまでの間に、作業者がワークセット部材を反搬送車作業位置側に引出して、ワークセット部材に存在するべきワークを持ち去ったり、ワークセット部材にワークを不必要にセットしたりして、前記ジョブに基づくロボットのワークセット作業又は取出し作業が阻害されるのを防止することができる。また、ワークストッカは両側引出し式であるため、ワークストッカを単なる置き台で構成した場合のように、ワークストッカに対するアクセス経路がその上面のみに集中することがない。よって、ジョブに基づくロボットの作業が、作業者の作業により阻害されるのを確実に防止することができる。
【0016】
前記引出規制機構部は、前記規制状態において、前記ワークセット部材が前記所定の収納位置から前記両側に引出されないように該ワークセット部材の移動を規制するように構成されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、引出し制御部により前記禁止制御処理が実行されると、引出規制機構部が規制状態となり、ワークセット部材の所定の引出し経路に沿った両側への移動が禁止される。したがって、ワークセット部材が作業者によって反搬送車作業位置側に引出されるのを回避することができるばかりでなく、作業者が搬送車作業位置側に回り込んでワークセット部材を引出すといった事態も回避することができる。よって、無人搬送車が作業位置に到着するまでに作業者がワークセット部材を引出して作業を行う事態をより一層確実に回避することができる。
【0018】
前記引出し制御部は、前記禁止制御処理の実行により前記両側への移動が規制されたワークセット部材に対して引出し作業が行われる際には、該引出し作業の作業主体が前記搬送車作業位置に停車した前記無人搬送車の前記ロボットであるか否かを判定して、前記ロボットであると判定した場合には、前記引出規制機構部を前記規制状態から前記規制解除状態に切替える一方、前記ロボットではないと判定した場合には、前記引出規制機構部の前記規制解除状態への切替え禁止を継続するように構成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、引出し制御部では、前記禁止制御処理の実行後、ワークセット部材に対して引出し作業が行われる際には、該引出し作業の作業主体が前記搬送車作業位置に停車した前記無人搬送車の前記ロボットであるか否かを判定する。そして、引出し制御部において、この作業主体が、無人搬送車のロボットであると判定された場合には、引出規制機構部が規制解除状態に切替わる一方、無人搬送車のロボットではないと判定された場合には、引出規制機構部によるワークセット部材の規制状態が継続される。したがって、無人搬送車の搬送車作業位置への到着前に、無人搬送車に搭載したロボット以外の作業主体によりワークセット部材が引出されるのを確実に防止することができる。
【0020】
前記ワークストッカは、前記引出規制機構部が前記規制解除状態にある状態では、作業者によって前記ワークセット部材を前記所定の収納位置から前記反搬送車作業位置側に引出し可能に構成されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、作業者が無人搬送車及びロボットの作業領域(つまり搬送車作業位置側)に立ち入ることなくワークセット部材を引き出して素材ワークのセット作業や完成品ワークの回収作業を行うことができ、作業効率性及び安全性を可及的に向上させることができる。本発明の一局面に係る無人搬送システムは、このように作業者とロボットとがワークストッカに対して互いに逆側から作業を行う構成に対して特に有用である。
【0022】
前記引出規制機構部は、前記ロック部材を有していて、前記規制状態においては、前記ロック部材により前記ワークセット部材の少なくとも前記反搬送車作業位置側への移動を規制する一方、前記規制解除状態においては、前記ロック部材による前記ワークセット部材の移動規制を解除するように構成されており、前記ワークストッカにおける前記反搬送車作業位置側に設けられたロック解除操作部と、前記ロック解除操作部の操作に連動して前記ロック部材を駆動することで、前記引出規制機構部を前記規制状態から前記規制解除状態に切替える連動機構部とをさらに備え、前記禁止制御処理は、前記引出し制御部によって、前記引出規制機構部を前記規制状態に制御し且つ前記ロック解除操作部の操作を無効化する処理であることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、作業者は引出規制機構部によるワークセット部材の規制を解除する際には、ワークストッカの反搬送車作業位置に設けられたロック解除操作部を操作すればよい。ロック解除操作部が操作されると、連動機構部によってロック部材が駆動され、引出規制機構部によるワークセット部材の規制が解除される。前記引出し制御部による禁止制御処理では、このロック解除操作部の操作が無効化される。よって、前記禁止制御処理の実行により、引出規制機構部の前記規制状態から規制解除状態への切替えを確実に禁止することができる。
【0024】
本発明の他の局面では、
ワークがセットされるワークセット部材を有していて、該ワークセット部材を所定の収納位置から所定の引出し経路に沿った両側である搬送車作業位置側及び反搬送車作業位置側に引出し可能に収納するワークストッカと、
前記ワークストッカに対して設定された搬送車作業位置を経由するように走行する無人搬送車と、
前記無人搬送車に搭載され、該無人搬送車が前記搬送車作業位置に停車した状態で、前記ワークストッカに設けられた前記ワークセット部材を前記所定の収納位置から前記搬送車作業位置側に引き出してワークのセット作業又は取出し作業を実行するロボットと、
前記ワークストッカにおけるワークのストック状況を取得して、取得したストック状況を基に、前記無人搬送車及び前記ロボットが実行するべきジョブを生成するジョブ生成部と、
前記ジョブ生成部が生成したジョブに基づいて前記無人搬送車及び前記ロボットを制御する動作制御部と、
前記ワークストッカに設けられ、前記ワークセット部材が前記所定の収納位置から少なくとも前記搬送車作業位置側に引出されないように該ワークセット部材の移動を規制する規制状態と、該規制が解除された規制解除状態とに切替え可能な引出規制機構部と、
前記引出規制機構部の駆動を制御する引出し制御部とを備え、
前記引出し制御部は、前記ジョブ生成部により生成されたジョブを基に、前記無人搬送車の移動先が前記ワークストッカに対する搬送車作業位置であると認識した場合には、当該ジョブに規定された前記ロボットの作業対象となるワークストッカ及びワークセット部材を特定して、該特定時から前記無人搬送車が前記搬送車作業位置に移動して前記ロボットによる当該ワークセット部材の前記搬送車作業位置側への引出し作業が実行されるまでに当該ワークセット部材が前記搬送車作業位置側に引出されないように、前記引出規制機構部を前記規制状態に制御するとともに該規制状態から前記規制解除状態への切替えを禁止する禁止制御処理を実行するように構成されている。
【0025】
本発明の他の局面に係る無人搬送システムは、前記一の局面に係る無人搬送システムとは、引出規制機構部によるワークセット部材の引出し規制側が異なっている。すなわち、前記一の局面に係る無人搬送システムでは、引出規制機構部によって、ワークセット部材の反搬送車作業位置側への引出しを禁止するようにしているのに対し、本発明の他の局面では、引出規制機構部によって、ワークセット部材の搬送車作業位置側への引出しを禁止するようにしている。
【0026】
これによれば、ワークストッカの搬送車作業位置側において、無人搬送車のロボットと作業者との二者が作業を行い得る構成において、無人搬送車が作業位置(搬送車作業位置)に到着するまでに作業者がワークセット部材を該作業位置側に引出して作業を行うことでその後のロボットの動作が阻害されるのを防止することができる。
【0027】
前記他の局面に係る無人搬送システムにおいて、前記引出規制機構部は、前記規制状態において、前記ワークセット部材が前記所定の収納位置から前記両側に引出されないように該ワークセット部材の移動を規制するように構成されていることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、無人搬送車が搬送者作業位置に到着するまでに作業者がワークセット部材を引出して作業を行う事態をより一層確実に回避することができる。
【0029】
前記他の局面に係る無人搬送システムにおいて、前記引出し制御部は、前記禁止制御処理の実行により前記少なくとも搬送車作業位置側への移動が規制されたワークセット部材に対して引出し作業が行われる際には、該引出し作業の作業主体が前記搬送車作業位置に停車した前記無人搬送車の前記ロボットであるか否かを判定して、前記ロボットであると判定した場合には、前記引出規制機構部を前記規制状態から前記規制解除状態に切替える一方、前記ロボットではないと判定した場合には、前記引出規制機構部の前記規制解除状態への切替え禁止を継続するように構成されていることが好ましい。
【0030】
この構成によれば、無人搬送車の搬送車作業位置への到着前に、無人搬送車に搭載されたロボット以外の作業主体によりワークセット部材が搬送車作業位置側に引出されるのを確実に防止することができる。
【0031】
前記ワークストッカは、前記引出規制機構部が前記規制解除状態にある状態では、前記無人搬送車のロボットのみでなく作業者によって、前記ワークセット部材を前記収納位置から前記搬送車作業位置側に引出し可能に構成されていることが好ましい。
【0032】
この構成によれば、作業者及び無人搬送車のロボットが、ワークストッカの同じ側からワークセット部材を引出して作業を行うことができるので、例えば無人搬送車のロボットの故障等により作業不能になった場合には、ロボットに替わって作業者がワークセット部材に対するワークのセット作業等を行うことができる。本発明の他の局面に係る無人搬送システムは、このように作業者とロボットとがワークストッカに対して同じ側から作業する構成に対して特に有用である。
【0033】
前記他の局面に係る無人搬送システムにおいて、前記引出規制機構部は、前記ロック部材を有していて、前記規制状態においては、前記ロック部材により前記ワークセット部材の少なくとも搬送車作業位置側への移動を規制する一方、前記規制解除状態においては、前記ロック部材による前記ワークセット部材の移動規制を解除するように構成されており、前記ワークストッカにおける前記搬送車作業位置側に設けられたロック解除操作部と、前記ロック解除操作部の操作に連動して前記ロック部材を駆動することで、前記引出規制機構部を前記規制状態から前記規制解除状態に切替える連動機構部とをさらに備え、前記禁止制御処理は、前記引出し制御部によって、前記引出規制機構部を前記規制状態に制御し且つ前記ロック解除操作部の操作を無効化する処理であることが好ましい。
【0034】
この構成によれば、引出し制御部により前記禁止制御処理が実行されると、作業者が引出規制機構部を規制解除状態に切替える手段であるロック解除操作部の操作が無効化されるので、引出規制機構部の前記規制状態から規制解除状態への切替えを確実に禁止することができる。
【0035】
前記ワークストッカは、前記ワークセット部材を複数有しており、前記引出規制機構部は、複数の前記ワークセット部材のそれぞれに対して設けられていることが好ましい。
【0036】
この構成によれば、複数のワークセット部材のそれぞれに対して引出規制機構部が設けられているので、ジョブに規定されたロボットの作業対象となるワークセット部材についてのみ引出規制機構部を規制状態にし、その他のワークセット部材については引出規制機構部を規制解除状態にするという制御が可能なる。これにより、ロボットの作業対象となっていないワークセット部材の引出しが不必要に禁止されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明に係る無人搬送システムによれば、ワークストッカのワークセット部材を搬送車作業位置側と反搬送車作業位置側とに引出し可能に構成しておき、ジョブ生成部によりジョブが生成されると、当該ジョブに規定されたロボットの作業対象となるワークストッカ及びワークセット部材を特定し、該特定時から無人搬送車が搬送車作業位置に移動して前記ロボットによる当該ワークセット部材の引出し作業が実行されるまでに当該ワークセット部材が搬送車作業位置側又は反搬送車作業位置側に引出されないように、引出規制機構部によりワークセット部材の少なくとも搬送車作業位置側又は少なくとも反搬送車作業位置作業側への引出しを禁止するようにしたことで、無人搬送車のロボットが前記ジョブに基づいてワークストッカに対して行う動作が、ワークストッカに対する作業者の作業により阻害されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の実施形態に係る無人搬送システムが適用される生産システムを示す概略平面図である。
図2図2は、生産システムに使用されるワークストッカの概略構成を示す斜視図である。
図3図3は、図2のIII方向矢視図である。
図4図4は、図3のIV-IV線断面図である。
図5図5は、ワークストッカの制御構成を示すブロック図である。
図6図6は、ロック機構部におけるシリンダ駆動部の構成を示す空気回路図である。
図7図7は、実施形態に係る無人搬送システムに使用される無人搬送車(AGV)及び該無人搬送車に搭載されるAGVロボットを示す斜視図である。
図8図8は、AGVロボットのハンドを示すハンド幅方向から見た側面図である。
図9図9は、実施形態に係る無人搬送システムが適用される生産システム全体の制御構成を示すブロック図である。
図10図10は、実施形態に係る無人搬送システムにより実行される無人搬送制御の内容を示すフローチャートである。
図11図11は、ワークストッカに設けられたロック機構部の自動駆動制御の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0040】
(実施形態)
図1は、実施形態の無人搬送システム1が適用される生産システムSを示す概略平面図である。この生産システムSは工場の建屋2内に設置されており、この建屋2の床面には、図1の上下方向に延びるメイン通路3と、メイン通路3の一端部に雪像された図1の左右方向に延びるサブ通路4とが設定されている。生産システムSは、このメイン通路3に沿ってその左側に配置された二つの加工セル100と、ワークWをストックしておくための複数のワークストッカ5と、各加工セル100を制御する加工セル制御装置80(後述する図9参照)とを備えている。
【0041】
無人搬送システム1は、無人搬送車(AGV)30と、該無人搬送車30に搭載されたロボット(以下、AGVロボットという)20と、建屋2内の所定位置に固定配置された全体搬送制御装置60と、無人搬送車30に搭載されたAGV制御装置70とを備えている。無人搬送車30は、全体搬送制御装置60及びAGV制御装置70による制御の下、各ワークストッカ5に対して予め設定された作業位置P1~P10を経由してワークWの搬送を行う。また、無人搬送車30は、図1においてサブ通路4の左側端に設定された充電位置P0に停車することで給電ステーション6より電力供給を受けてバッテリ35(後述する図9参照)の充電を行う。本例の給電ステーション6は、非接触給電方式を採用するようにしているが、これに限ったものではなく、接触給電方式を採用するようにしてもよい。また、建屋2内に設けられる生産システムSの構成はあくまでも例示であってこれに限られるものではなく、産業上使用されるあらゆる装置を含めることができ、そのレイアウトもこの例に限られるものではない。
【0042】
前記複数のワークストッカ5は、素材ワークWをストックする三つの素材ストッカ5sと、完成品ワークWをストックする三つの完成品ストッカ5kと、加工セル100に対して一つずつ設けられ、各加工セル100に投入予定の素材ワークWを一時的にストックする投入ストッカ5tと、加工セル100から払出された完成品ワークWを一時的にストックする払出しストッカ5hとからなる。三つの素材ストッカ5sは、図1においてサブ通路4よりも上側(加工セル100側とは反対側)且つメイン通路3よりも左側に配置されている。三つの完成品ストッカ5kは、図1においてサブ通路4よりも上側(加工セル100側とは反対側)且つメイン通路3の延長上及び右側に配置されている。尚、以下の説明では、「ワークストッカ」に関して、素材ストッカ5s、完成品ストッカ5k、投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hを特に区別する必要がない場合には、単にワークストッカ5というものとする。また、「ワーク」に関して、符号Wを使用し、素材ワークWと完成品ワークWとを特に区別する必要がない場合には、単にワークWというものとする。
【0043】
ワークストッカ5は、両側引出し式のストッカであり、後述するようにワークストッカ5に対してストッカ奥行方向の両側(ストッカ奥行方向に沿った両側)から作業を行えるようになっている。ワークストッカ5は、後述するように操作パネル53(図2参照)を有しており、以下の説明では、ストッカ奥行方向における操作パネル53が位置する側を「一方側」と定義し、一方側とは反対側を「他方側」と定義する。
【0044】
各ワークストッカ5は、ストッカ奥行方向の一方側と他方側とで作業主体が異なっている。すなわち、素材ストッカ5s及び完成品ストッカ5kについては、ストッカ奥行方向の一方側(図1の上側)における作業主体は人(作業者)であるのに対し、ストッカ奥行方向の他方側(図1の下側)における作業主体はAGVロボット20とされている。各素材ストッカ5s及び完成品ストッカ5kでは、ストッカ奥行方向の他方側(図1の下側)が、無人搬送車(AGV)30の作業位置P1~P6側、つまり搬送車作業位置側に相当し、ストッカ奥行方向の一方側(図1の上側)が、反搬送車作業位置側に相当する。
【0045】
投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hについては、ストッカ奥行方向の一方側(図1の右側)における作業主体はAGVロボット20であるのに対し、ストッカ奥行方向の他方側(図1の左側)における作業主体は、加工セル100に設けられた後述のセル用ロボット11である。各投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hでは、ストッカ奥行方向の一方側(図1の右側)が、無人搬送車(AGV)30の作業位置P7~P10側、つまり搬送車作業位置側に相当し、ストッカ奥行方向の他方側(図1の左側)が反搬送車作業位置側に相当する。ここで、投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hのストッカ奥行方向の一方側(図1の右側であって搬送車作業位置側)の作業主体は、上述したように基本的にはAGVロボット20であるが、例えば無人搬送車30が何らかの理由で走行不能になった場合には、AGVロボット20に替わって人(作業者)が作業主体となる場合もある。
【0046】
[加工セルの構成]
前記加工セル100は、ワークWを加工する工作機械10(加工機械の一例)と、工作機械10に対してワークWの投入払出し作業を行うセル用ロボット11(投入払出し装置の一例)と、加工後のワークWを洗浄する洗浄機14と、洗浄後のワークWを乾燥する乾燥機15とを有している。すなわち、加工セル100では生産工程として、工作機械10によるワークWの加工工程と、洗浄機14によるワークWの洗浄工程と、乾燥機15によるワークWの乾燥工程との三つの工程を有している。
【0047】
ここで、工作機械10には、公知の各種工作機械が適用されるが、例えば、ワークWを把持するチャックが装着されるワーク主軸、旋削工具などが配設されるタレット、並びに回転工具等が保持される工具主軸を有する刃物台など備えた所謂複合加工型のNC(数値制御)工作機械が例示される。
【0048】
工作機械10は、制御装置10a(図9参照)による制御の下、NCプログラムに基づいてワークWの自動加工を行う。工作機械10の正面には、開閉扉により開閉される開口部10bが形成されており、開口部10bには前記セル用ロボット11の作業領域Rを区画する柵12が接続されている。セル用ロボット11は、多関節型のロボットであって前記作業領域Rの中央部に配置されている。セル用ロボット11は、ワークWを把持するハンド11aと、ハンド11aを先端部に支持するアーム11bと、アーム11bの基端部が固定されて鉛直軸回りに旋回可能な旋回部11cと、旋回部11cを床面に固定するベース台11dとを有している。作業領域Rにおける図1の右側の端部には、前記投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hがメイン通路3に沿う方向に並んで配置されている。作業領域Rにおける図1の左側の端部には、ワークWを仮置きするための仮置き台13と、前記洗浄機14と、前記乾燥機15とがメイン通路3に沿う方向に並んで配置されている。
【0049】
セル用ロボット11は、自動運転時には、後述する加工セル制御装置80による制御の下、所定のサイクル動作を繰り返す。このサイクル動作では、セル用ロボット11が、加工後のワークWを工作機械10から払出して仮置き台13に仮置きした後、投入ストッカ5tにストックされた加工前のワークWを取出して工作機械10に投入する。そして、工作機械10がワークWの加工工程を実行している間に、セル用ロボット11が、仮置き台13に仮置きしたワークWを把持して、洗浄機14及び乾燥機15に通過させた後、払出しストッカ5hに払出す。
【0050】
[ワークストッカの構成]
次に、図2を参照して前記ワークストッカ5の構成を説明する。ワークストッカ5は、奥行方向の両側に開放する矩形箱状の筐体フレーム51と、上下方向に間隔を空けて配置された四つのワークセット板52(ワークセット部材の一例)とを有している。ワークセット板52の上面には、ワークWの下端部を囲んで支える円筒状のストック孔52aが二行三列に亘って合計で六つ形成されている。そして、各ワークセット板52は、筐体フレーム51内における所定の収納位置からストッカ奥行方向の両側にスライド可能に構成されている。所定の収納位置とは、例えばワークセット板52全体が筐体フレーム51内に収まるような位置であり、図2では、上から三段目までのワークセット板52が所定の収納位置にある状態を示している。
【0051】
筐体フレーム51の上面におけるストッカ奥行方向の一方側の角部には、作業者が操作可能な操作パネル53が固定されている。また、筐体フレーム51の上面の中央部にはワークストッカ5の制御装置54が固定されている。
【0052】
前記ワークセット板52におけるスライド方向(ストッカ奥行方向)の両側面にはそれぞれ、円筒穴52bが形成されている。各円筒穴52bは、ワークセット板52における幅方向(スライド方向に直交する方向)の中央部に形成されていて、後述するAGVロボット20がワークセット板52をスライドさせる際の連結棒27(後述する図8参照)の挿入孔として利用される。
【0053】
図3及び図4に示すように、ワークセット板52は、一対の支持レール51aに下方から支持されている。各支持レール51aは、ストッカ幅方向に対向する一対のサイドビーム51bの互いの内側面から内側に突出しているとともにストッカ奥行方向に延設されている。ワークセット板52は、一対の支持レール51aの上面に沿ってストッカ奥行方向の両側にスライド移動可能になっている。尚、支持レール51aは、ワークセット板52を移動可能に支持できるものであれば如何なる構成であってもよく、例えば複数のスライド板を伸縮自在に連結したスライドレールにより構成されていてもよい。
【0054】
ワークセット板52におけるストッカ幅方向の両側面にはそれぞれ、軸線がストッカ奥行き方向に延びるショックアブソーバ58(図4参照)が配置されている。各ショックアブソーバ58は、平面視でワークセット板52の中心を挟んで対角上に一つずつ配置されている。そして、ワークセット板52をストッカ奥行方向の一方側及び他方側に引出した際に、各ショックアブソーバ58が、一対のサイドビーム51bの互いの内側面に突設されたストッパ板51cに当接することでワークセット板52の最大引出し位置が規制される。
【0055】
前記一対のサイドビーム51bは、筐体フレーム51におけるストッカ幅方向に対向する一対の側壁51dの内側面に固定されている。各サイドビーム51bは、筐体フレーム51におけるストッカ奥行方向の全体に亘って延設されている。各サイドビーム51bの上面にはそれぞれ、二つの被ロック突部59が設けられている。二つの被ロック突部59は、各サイドビーム51bにおけるストッカ奥行方向の両端部に配置されている。被ロック突部59は、ストッカ奥行方向に沿って延びるとともにストッカ幅方向に厚みを有する台形状ブロック部材からなる。
【0056】
前記二つの被ロック突部59は、ストッカ奥行方向において互いの外側の端面が、後述するロックピン553の移動を規制する規制面59aとして機能するように構成されている。
【0057】
[ワークストッカの制御装置]
図5に示すように、ワークストッカ5の制御装置54は、CPU、ROM及びRAMを有するマイクロコンピュータにより構成されていて、前記操作パネル53と、ロック機構部55(引出規制機構部の一例)と、収納位置センサ56とに電気的に接続されている。尚、以下の説明では、制御装置54について、制御対象であるワークストッカ5の種類を区別しない場合にはストッカ制御装置54と称する。
【0058】
操作パネル53は、例えば液晶式タッチパネルからなる。このタッチパネルには、作業者がワークセット板52へのワークWの充填を完了した際に操作するべき充填完了ボタン53aと、ワークWの充填を行ったワークセット板52が何段目に位置するかを入力するための第一入力ボックス53bと、ワークセット板52からのワークWの回収を完了した際に操作するべき回収完了ボタン53cと、ワークWの回収が行ったワークセット板52が何段目に位置するかを入力するための第二入力ボックス53dと、ロック機構部55によるワークセット板52のロック(規制)を手動で解除するためのロック解除ボタン53e(ロック解除操作部の一例)とが設けられている。
【0059】
操作パネル53は、前記充填完了ボタン53a、回収完了ボタン53c及びロック解除ボタン53eのそれぞれの操作信号、並びに、前記各入力ボックス53b,53dの入力情報をストッカ制御装置54に送信する。尚、各操作パネルの各ボタン53a,53c,53e、及び各入力ボックス53b,53dは、本例のようにタッチパネルにソフト的に表示される構成に限らず、物理的なハードキーで構成されていてもよい。
【0060】
前記収納位置センサ56は、四つのワークセット板52のそれぞれに対して設けられていて、各ワークセット板52が所定の収納位置にあることを検知する。収納位置センサ56は、ワークセット板52が所定の収納位置にあることを検知すると、その検知信号をストッカ制御装置54に送信する。
【0061】
前記ロック機構部55は、ワークセット板52の引出し移動を規制するための機構部である。
【0062】
図3及び図4に示すように、ロック機構部55は、前記ワークセット板52におけるストッカ奥行方向に延びる両端縁部にそれぞれ二つずつ(合計で四つ)配置された空気シリンダ551と、各空気シリンダ551を駆動するシリンダ駆動部552(図6参照)と、各空気シリンダ551によって昇降駆動されるロックピン553とを有している。
【0063】
前記各空気シリンダ551は、ワークセット板52の上面に固定された偏平矩形状のシリンダボディ551aと、シリンダボディ551aのピストンに取付けられて上下方向に昇降するピストンロッド551bとを有している。ピストンロッド551bの上端部には、前記ロックピン553を支持するブラケット551cが固定されている。ブラケット551cは、ストッカ奥行方向から見て、水平板部と該水平部から垂下する鉛直板部とからなるL字状をなしている。
【0064】
ロックピン553は、ブラケット551cの鉛直板部の下端部にその軸線方向がストッカ幅方向に一致する状態で配置されている。ロックピン553は、ストッカ奥行方向から見て、ブラケット551cの下端部からストッカ幅方向の外側に突出している。そして、ロックピン553は、空気シリンダ551が上下に昇降することでロック位置とロック解除位置との間で移動可能になっている。ロックピン553は、ロック位置においては被ロック突部59の規制面59aに係合(本例では規制面59aに当接して係合)する一方、前記ロック解除位置においては被ロック突部59よりも上側に位置するように構成されている。
【0065】
図6に示すように、シリンダ駆動部552は、空気源552aから空気シリンダ551に供給される空気の流路を切替える空気回路からなる。この図に示す空気回路は、概略図であり、減圧弁やチェック弁等の機器類の図示は省略している。またこの図では、ストッカ奥行方向に延びる一方の端縁部に配置された二つの空気シリンダ551の空気回路のみを示しているが、他方の端縁部に配置された空気シリンダ551ついても同様の構成であるためその説明を省略する。
【0066】
具体的には、シリンダ駆動部552は、空気源552aに接続されたメイン流路552cと、メイン流路552cから各空気シリンダ551に向けて分岐する分岐流路552dと、各分岐流路552dの下流端部に接続された電磁ソレノイドバルブ552bと、該電磁ソレノイドバルブ552bに接続されたロック側流路552e及びロック解除側流路552fとを有している。ロック側流路552eは、シリンダボディ551a内の上側(ロック側)のシリンダ室に空気を供給する流路であり、ロック解除側流路552fは、シリンダボディ551a内の下側(ロック解除側)のシリンダ室に空気を供給する流路である。
【0067】
各電磁ソレノイドバルブ552bは、ストッカ制御装置54によって制御される。具体的には、電磁ソレノイドバルブ552bは、ストッカ制御装置54よりロック側への駆動信号を受信すると、空気源552aより供給される空気をロック側流路552eを介して空気シリンダ551の上側のシリンダ室に供給する。これにより、ピストンロッド551bが下降してロックピン553が前記ロック位置に移動する。一方、電磁ソレノイドバルブ552bは、ストッカ制御装置54よりロック解除側への駆動信号を受信すると、空気源552aより供給される空気をロック解除側流路552fを介して空気シリンダ551の下側のシリンダ室に供給する。これにより、ピストンロッド551bが上昇してロックピン553が前記ロック解除位置(図4の二点鎖線参照)に移動する。
【0068】
ストッカ制御装置54は、必要に応じて、各電磁ソレノイドバルブ552bにロック側又はロック解除側の駆動信号を送信することで、ロック機構部55をロック状態とロック解除状態とに選択的に切替える。
【0069】
本例では、ロック状態(規制状態に相当)とは、四つの空気シリンダ551によって四つのロックピン553全てがロック位置(図4の実線の位置)に駆動された状態である。四つのロックピン553が全てロック位置にある状態では、ロックピン553が一対のサイドビーム51bに固定された被ロック突部59の規制面59aに当接することにより、ワークセット板52の奥行方向の両側(奥行方向に沿った両側)への移動が規制される。
【0070】
一方、ロック解除状態(規制解除状態に相当)とは、四つの空気シリンダ551によって四つのロックピン553全てがロック解除位置(図4の二点鎖線の位置)に駆動された状態である。四つのロックピン553全てがロック解除位置に駆動されると、ロックピン553は、被ロック突部59よりも上側に位置することとなるので、ワークセット板52の奥行方向の両側への移動が許容されて前記ロック状態が解除される。
【0071】
本例のストッカ制御装置54は、後述する全体搬送制御装置60又は加工セル制御装置80からの信号に基づくロック機構部55の自動駆動制御と、操作パネル53からの操作信号に基づくロック機構部55の手動駆動制御とを実行可能に構成されている。
【0072】
先ず、ロック機構部55の自動駆動制御について説明する。ストッカ制御装置54は、全体搬送制御装置60又は加工セル制御装置80からロック指令信号を受信すると、四つの空気シリンダ551(図6では二つのみ示す)に接続された各電磁ソレノイドバルブ552bにロック側駆動信号を出力することで、ピストンロッド551bをロックピン553と共に下降させて、ロック機構部55を前記ロック状態に制御する。
【0073】
また、ストッカ制御装置54は、ロック解除指令信号を受信すると、四つの空気シリンダ551に接続された各電磁ソレノイドバルブ552bに、ロック解除側の駆動信号を出力することで、ピストンロッド551bをロックピン553と共に上昇させて、ロック機構部55を前記ロック解除状態に制御する。
【0074】
また、ストッカ制御装置54は、ロック解除禁止の指令信号を受信すると、ロック機構部55のロック状態からロック解除状態への切替えを禁止する。このロック解除状態への切替えの禁止は、操作パネル53に設けられたロック解除ボタン53eを無効化することで実現される。すなわち、ストッカ制御装置54は、ロック解除禁止の指令信号を受信した場合には、該受信後にロック解除ボタン53eの操作信号を受信したとしても、これを無視してロック機構部55をロック状態に維持する。
【0075】
次にロック機構部55の手動駆動制御について説明する。ストッカ制御装置54は、前記操作パネル53より充填完了ボタン53aが押されたことを示す充填完了信号を受信した場合には、第一入力ボックス53bより入力された入力情報を基にワークWの充填が完了したワークセット板52を特定する。同様に、ストッカ制御装置54は、前記操作パネル53より回収完了ボタン53cが押されたことを示す回収完了信号を受信した場合には、第二入力ボックス53dより入力された入力情報を基にワークWの回収が完了したワークセット板52を特定する。そして、ストッカ制御装置54は、特定したワークセット板52が前記収納位置にあるか否かを収納位置センサ56からの検知信号を基に判定し、前記収納位置にあると判定した場合には、ロック機構部55の各電磁ソレノイドバルブ552bにロック側の駆動信号を出力することで、ロック機構部55を前記ロック状態にする。このように、充填完了信号及び回収完了信号は、ロック機構部55のロック指令信号としても機能する。
【0076】
ストッカ制御装置54は、操作パネル53よりロック解除ボタン53eの操作信号を受信すると、ロック機構部55の各電磁ソレノイドバルブ552bにロック解除側の駆動信号を出力することで、各電磁ソレノイドバルブ552bの作動位置を切替えてロック機構部55を前記ロック解除状態にする。このように、ロック解除ボタン53eの操作信号は、ロック解除指令信号として機能する。そして、各電磁ソレノイドバルブ552bは、ロック解除ボタン53eの操作に連動して、ロックピン553(ロック部材)を駆動することで、ロック機構部55をロック状態(規制状態)からロック解除状態(規制解除状態)に切替える連動機構部として機能する。
【0077】
ストッカ制御装置54は、ロック機構部55の動作制御の実行と並行して情報の送信制御を実行する。この送信制御では先ず、ストッカ制御装置54は、前記ワークWの充填完了信号を受信したときに、その事実とともにワークWの充填が完了したワークセット板52を特定可能な情報(どのワークストッカ5の何段目に位置するかの情報)を充填完了情報として出力する。また、ストッカ制御装置54は、ワークWの回収完了信号を受信したときには、その事実とともにワークWの回収が完了したワークセット板52を特定可能な情報を回収完了情報として出力する。充填完了情報及び回収完了情報の出力先は、ストッカ制御装置54が設けられたワークストッカ5の種類によって異なる。すなわち、素材ストッカ5s及び完成品ストッカ5kの各制御装置54は、充填完了情報及び回収完了情報を後述する全体搬送制御装置60(図9参照)に出力する。一方、投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hの制御装置54は、充填完了情報及び回収完了情報を後述する加工セル制御装置80に出力する。
【0078】
[無人搬送車の構成]
次に、図7を参照して無人搬送車30の構成を説明する。無人搬送車30は、直方体状の筐体31の上面に前記AGVロボット20が搭載されるとともに、作業者が携帯可能な操作盤33が付設されている。この操作盤33は、ティーチング操作時等に、無人搬送車30及びAGVロボット20を手動操作するための操作部、及び、画面表示可能なディスプレイなどを有している。筐体31の下面には、図示しない左右の駆動輪が設けられている。無人搬送車30は、左右の駆動輪を同じ回転数で回転させることで直進し、左右の駆動輪の回転数を異ならせることで左右に旋回可能に構成されている。筐体31の前側面には、無人搬送車30の走行中に周囲の障害物との距離を検出可能な距離センサが設けられている。また、筐体31には、故障時等に周囲に向けて警報を行う警報装置(図示省略)が設けられている。警報装置としては、音による警報を行う装置(例えば警報スピーカ)や視覚による警報を行う装置(例えば警告灯)を採用することができる。
【0079】
前記AGVロボット20は、無人搬送車30の上面における前側端部に搭載されている。AGVロボット20は、第一アーム21、第二アーム22及び第三アーム23の三つのアームを備えた多関節型のロボットであり、第三アーム23の先端部にはエンドエフェクタとしてのハンド24が装着されている。
【0080】
ハンド24は、略直方体状のボディ24aと、ボディ24aから下方に突出するとともにハンド幅方向に対向する一対の把持爪24bとを有している。ハンド24は、一対の把持爪24bをハンド幅方向にて互いに接近させることで両者の間にワークWを挟み込んで把持する。ハンド24の上部には、互いに間隔を空けて並ぶ一対のカメラ25(図7では一方のみを示す)が支持バー26を介して取付けられている。一対のカメラ25は、例えば、AGVロボット20によりワークWを把持する際にその位置及び姿勢等を認識するために設けられている。
【0081】
図8は、ハンド24をその幅方向から見た側面図である。ボディ24aにおけるカメラ25側の側面には、前記ワークセット板52に形成された円筒穴52b(図2参照)に挿入可能な円柱状の連結棒27が突設されている。連結棒27は、ハンド24の把持爪24bが鉛直下方を向く状態でハンド24の前側(図8の右側)に向かって水平に延びるように形成されている。連結棒27の先端部には、径方向内側に僅かに凹む係合溝27aが全周に亘って形成されている。連結棒27は、AGVロボット20がワークストッカ5からワークセット板52を引出す際に、該ワークセット板52に形成された円筒穴52bに挿入される。円筒穴52bの内部には、連結棒27の係合溝27aと係合する係合突部(図示省略)が形成されており、係合溝27aと係合突部とが係合することで連結棒27とワークセット板52とが連結される。この連結が完了した後、ハンド24をワークセット板52のスライド方向の手前側に移動させることで、ワークセット板52がワークストッカ5の筐体フレーム51から引き出される(図2参照)。そして、ワークセット板52が全開位置まで引き出されると、ワークセット板52に設けられたショックアブソーバ58(図3及び図4参照)が、筐体フレーム51の内側に設けられたストッパ板51cに当接する。そして、この当接後、ハンド24をワークセット板52の手前側にさらに移動させ続けると、連結棒27の係合溝27aと、円筒穴52b内の係合突部との係合が外れて、連結棒27がワークセット板52の円筒穴52bから抜け出るようになっている。尚、引出したワークセット板52を収納位置に戻す際には、連結棒27を使用するまでもなく、ハンド24をワークセット板52の手前側の端面に押し当てながら所定の収納位置側に移動させればよい。
【0082】
無人搬送車30の上面におけるAGVロボット20の後側には、ワークWを積載するための積載面部34が設けられている。本例では、積載面部34には、円柱状の複数(図の例では16個)のワークWがパレット7に保持された状態で積載されている。パレット7は、偏平な直方体状をなしており、その上面には上側に開放する複数の円筒穴7aを有している。複数のワークWは、それぞれの基端部がパレット7の各円筒穴7aに嵌合する状態で鉛直に起立して配列される。
【0083】
AGVロボット20は、ワークセット板52から取出したワークWをパレット7に移動させる作業と、パレット7から取出したワークWをワークセット板52に移動させる作業とを実行可能に構成されている。
【0084】
無人搬送車30は、前記AGV制御装置70による制御の下で、前記建屋2内を無軌道で走行するように構成され、本例では、給電ステーション6(図1参照)に対して設定された充電位置P0、三つの素材ストッカ5sに対して設定されたP1~P3、三つの完成品ストッカ5kに対して設定されたP4~P6、並びに、各加工セル100の投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hに対して設定された作業位置P7~P10を経由する。この作業位置P7~P10は、AGVロボット20が加工セル100に対してワークWの投入払出し作業を行うための作業位置として機能する。すなわち、この作業位置P7~P10は、投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hに対する作業位置であるとともに加工セル100に対する作業位置でもある。
【0085】
[無人搬送システムの制御系の構成]
図9に示すように、無人搬送システム1の制御系は、全体搬送制御装置60とAGV制御装置70とを有しており、全体搬送制御装置60は、加工セル100の生産工程を制御する加工セル制御装置80と通信可能になっている。図中の実線矢印は有線通信による信号(情報)の送受信であることを意味し、破線矢印は無線通信による信号(情報)の送受信であることを意味する。尚、信号の送受信形態は、有線通信と無線通信とのいずれを採用してもよく図9に示す形態に限定されない。
【0086】
全体搬送制御装置60、AGV制御装置70、加工セル制御装置80は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、各機能部はコンピュータプログラムによってその機能が実現され、各記憶部はRAMなどの適宜記憶媒体から構成される。
【0087】
先ず、加工セル制御装置80について説明する。加工セル制御装置80は、工場の建屋2内に固定配置されている。加工セル制御装置80は、セル用ロボット制御部81、機器制御部82、情報記憶部83、ストック状況認識部84、指令中継部85及び入出力インターフェース86などから構成されている。加工セル制御装置80は、入出力インターフェース86を介して、各加工セル100における工作機械10の制御装置10a、投入ストッカ5tの制御装置54、及び払出しストッカ5hの制御装置54に接続されているとともに、全体搬送制御装置60と無線通信可能に構成されている。工作機械10の制御装置10a、及び、ストッカ制御装置54は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成されている。
【0088】
セル用ロボット制御部81は、ROM内に予め記憶されたシーケンスプログラムに基づいて、セル用ロボット11に前記サイクル動作を実行させる。
【0089】
機器制御部82は、セル用ロボット制御部81と通信することにより、セル用ロボット11による洗浄機14及び乾燥機15へのワークWの段取り状況などを認識しながら洗浄機14及び乾燥機15を所定のタイミングで作動させる。
【0090】
情報記憶部83は、セル用ロボット11が前記サイクル動作を実行する際に取るべき動作姿勢や、洗浄機14及び乾燥機15等の周辺機器の作動条件などが記憶されている。前記動作姿勢は、作業者が行うセル用ロボット11のティーチング操作によって設定される。
【0091】
ストック状況認識部84は、各加工セル100に設置された投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hのそれぞれの制御装置54から受信したワークWの充填完了情報及び回収完了情報と、現時点までにセル用ロボット11の動作により増加又は減少した各ワークセット板52のワークWの数とを基に、各加工セル100における投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hのワークストック状況を認識(算出)する。
【0092】
ストック状況認識部84、例えば、投入ストッカ5tの上側から二段目のワークセット板52にワークWが充填された旨の充填完了情報を受信した場合には、当該ワークセット板52に現時点で六つのワークWがあると判断し、その後、セル用ロボット11の実行した動作内容を基に、ワークセット板52からセル用ロボット11が二つのワークWを取出したと認識した場合には、ワークセット板52のワークWのストック数は四つ(=6―2)であると認識する。ストック状況認識部84はさらに、ワークセット板52に形成された三行二列のストック孔52aのうち、セル用ロボット11がワークWの取出し作業を行ったストック孔52aを特定することで、ワークセット板52におけるワークWの数のみでなく配置箇所も認識することができる。セル用ロボット11がワークWの取出しを行うストック孔52aは、例えば予め定めた取出しルール(例えば最前列の左側から右側に向かって一行ずつ取出しを行うというルール)に基づいて特定することができる。
【0093】
尚、本例では、ストック状況認識部84は、投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hの制御装置54よりワークWの充填完了情報を受信すると、この充填完了情報により特定されるワークセット板52にてワークWが満杯に充填されたと判断するようにしているが、これに限ったものではない。例えば、作業者がワークセット板52に充填したワークWの数を操作パネル53により入力可能にしておき、この入力されたワークWの数を基に、充填作業後のワークセット板52上のワークWの数を判断するようにしてもよい。
【0094】
指令中継部85は、後述する全体搬送制御装置60のロック制御部66よりロック指令信号、ロック解除指令信号、又はロック解除を禁止する指令信号を受信して、加工セル100に設けられた投入ストッカ5t又は払出しストッカ5hの制御装置54に送信する。
【0095】
全体搬送制御装置60は、工場の建屋2内に固定配置されている。全体搬送制御装置60は、ストック状況認識部61、セル状況取得部62、情報記憶部63、ジョブ生成部64、作業者通知部65、引出し制御部としてのロック制御部66、及び入出力インターフェース67などから構成されている。そして、全体搬送制御装置60は、この入出力インターフェース67を介して、作業者用端末8、素材ストッカ5sの制御装置54、及び完成品ストッカ5kの制御装置54に接続されているとともに、AGV制御装置70及び加工セル制御装置80と無線通信可能になっている。作業者用端末8は、例えば作業者の常駐スペースに設置されたコンピュータや作業者が保持する携帯端末により構成される。
【0096】
ストック状況認識部61は、素材ストッカ5s及び完成品ストッカ5kのそれぞれの制御装置54から受信したワークWの充填完了情報及び回収完了情報と、現時点までにAGVロボット20の動作(収納動作又は取出し動作)により増加又は減少した各ワークセット板52上のワークWの数を基に、素材ストッカ5s及び完成品ストッカ5kのそれぞれのワークストック状況を認識(算出)する。このワークストック状況には、各ワークセット板52におけるワークWのストック数のみでなくワークWの配置箇所に関する情報も含まれる。素材ストッカ5s及び完成品ストッカ5kに関するワークストック状況の具体的な認識手順は、上述した加工セル制御装置80のストック状況認識部84によって実行される投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hに関するワークストック状況の認識手順と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0097】
セル状況取得部62は、加工セル100における工程進捗状況に関する情報(以下、工程進捗情報という)を加工セル制御装置80より取得する。加工セル制御装置80が取得する工程進捗情報は、例えば、各加工セル100において三つの工程(加工工程、洗浄工程及び乾燥工程)のうちいずれの工程が実行中であり、その実行中の工程がどの程度進んでいるかを示す情報からなる。工程進捗情報は、加工セル100における最後の工程(本例では乾燥工程)の終了時期を特定可能な情報を含んでいることが好ましい。また、工程進捗情報は、加工セル100における最初の工程(本例では工作機械10によるワークWの加工工程)の終了時期を特定可能な情報を含んでいることが好ましい。
【0098】
情報記憶部63には、無人搬送車30及びAGVロボット20が実行するジョブを決定する際の基となる複数のジョブ候補が記憶されている。この複数のジョブ候補には、例えば、各素材ストッカ5sから各加工セル100の投入ストッカ5tにワークWを搬送するというジョブと、各加工セル100の払出しストッカ5hから各完成品ストッカ5kにワークWを搬送するというジョブとが含まれる。各ジョブは、後述するように無人搬送車30の搬送指令とAGVロボット20の動作指令とで構成される。
【0099】
ジョブ生成部64は、ストック状況認識部61が認識した各ワークストッカ5におけるワークWのストック状況を基に、情報記憶部63に記憶されたジョブ候補によるワークWの搬送シミュレーションを実行し、無人搬送車30の現在位置からの走行距離が最小になるジョブ候補を、無人搬送車30及びAGVロボット20が実行するべきジョブとして生成(決定)する。ジョブ生成部64にて生成されるジョブの一例を挙げると、(i)無人搬送車30を、三つの素材ストッカ5sのうち中央に位置するストッカ5sの作業位置P2に移動して停車させ、(ii)AGVロボット20により上から二段目のワークセット板52を引出して三つのワークWを取出すとともに、該取出した三つのワークWを無人搬送車30のパレット7に積載し、(iii)その後、無人搬送車30を、サブ通路4側(図1の上側)に位置する加工セル100の投入ストッカ5tの作業位置P7に移動して停車させ、(iV)AGVロボット20により該投入ストッカ5tの上から二段目のワークセット板52を引出して、パレット7に積載済みの前記三つのワークWを当該ワークセット板52にセットするというジョブが挙げられる。この一例のジョブでは、指令(i)及び指令(iii)が、無人搬送車30の搬送指令に相当し、指令(ii)及び指令(iV)が、AGVロボット20の動作指令に相当する。
【0100】
作業者通知部65は、ストック状況認識部61が認識したワークWのストック状況を基に、素材ストッカ5sにおいてワークWの補充が必要なワークセット板52が存在するか否か(例えば、ワークWの数が0のワークセット板52が存在するか否か)を判定する。そして、作業者通知部65は、ワークWの補充が必要なワークセット板52が存在すると判定した場合には、当該ワークセット板52の特定情報(例えば、図1の三つ素材ストッカ5sのうち左右中央のいずれのストッカ5sかを特定でき、且つ、当該ストッカ5sの何段目に位置するワークセット板52かを特定できる情報)を作業者用端末8に送信する。
【0101】
また、作業者通知部65は、ストック状況認識部61が認識したワークWのストック状況を基に、完成品ストッカ5kにおいてワークWの回収が必要なワークセット板52が存在するか否か(例えば、ワークWのストック数が最大積載個数に達したワークセット板52が存在するか否か)を判定する。そして、作業者通知部65は、ワークWの回収が必要なワークセット板52が存在すると判定した場合には、当該ワークセット板52の特定情報を作業者用端末8に送信する。
【0102】
ロック制御部66は、ジョブ生成部64により生成されたジョブを基に、AGVロボット20が引出し作業を行う(作業対象となる)ワークストッカ5を特定し、特定したワークストッカ5の種類に応じて、ロック機構部55の作動指令信号(ロック指令信号、ロック解除指令信号、及びロック解除禁止の指令信号)を所定の送信経路で送信する。
【0103】
すなわち、ロック制御部66は、AGVロボット20の作業対象となるワークストッカ5が素材ストッカ5s又は完成品ストッカ5kである場合には、ロック機構部55の作動指令信号を、素材ストッカ5s又は完成品ストッカ5kの制御装置54に直接送信する一方、作業対象となるワークストッカ5が投入ストッカ5t又は払出しストッカ5hである場合には、ロック機構部55の作動指令信号を、加工セル制御装置80の指令中継部85を経由して投入ストッカ5t又は払出しストッカ5hの制御装置54に送信する。
【0104】
前記AGV制御装置70は、無人搬送車30の筐体31内に収容されている。AGV制御装置70は、走行制御部71、ロボット制御部72、充電制御部73、動作姿勢記憶部74、移動位置記憶部75、及び入出力インターフェース76などから構成されている。そして、AGV制御装置70は、この入出力インターフェース76を介して、無人搬送車30、AGVロボット20、及びカメラ25に接続しているとともに、全体搬送制御装置60と無線通信可能になっている。
【0105】
走行制御部71は、全体搬送制御装置60から受信した無人搬送車30の搬送指令(ジョブ)を基に、無人搬送車30を現時点の位置から目標移動先まで走行制御する。走行制御部71は、一例としてSLAM(Simultaneous Localization and Mapping) アルゴリズムに基づいて無人搬送車30の走行制御を実行する。SLAMアルゴリズムでは、無人搬送車30の前側面に取付けた距離センサによって検出される距離データから建屋2内のマップを生成するマップ生成処理と、該マップ上における自己位置推定処理とを同時に行う。そして、走行制御部71は、作成したマップに基づいて無人搬送車30を障害物と衝突しないように目標移動先まで自立走行させる。尚、例えば、複数の無人搬送車30を使用する場合には、上述のマップ生成処理及び自己位置推定処理を別の上位サーバに実行させて、この上位サーバにより、複数の無人搬送車30を互いに衝突しないように目標移動先に誘導制御するようにしてもよい。また、無人搬送車30の走行制御方式としては、SLAMアルゴリズムのような無軌道方式に限らず、例えば建屋2の床面に敷設した反射板レールを無人搬送車30に設置したセンサで検知しながら無人搬送車30を目標移動先まで走行させる有軌道方式を採用するようにしてもよい。
【0106】
ロボット制御部72は、全体搬送制御装置60より受信したAGVロボット20の動作指令(ジョブ)に基づいてその動作を制御する。そして、前記走行制御部71及びロボット制御部72が、ジョブ生成部64にて生成されたジョブに基づいて無人搬送車30及びAGVロボット20を動作させる動作制御部として機能する。
【0107】
充電制御部73は、無人搬送車30が給電ステーション6の前側(図1の右側)に設定された充電位置P0に移動して、無人搬送車30の側面に設けられた受電部32が給電ステーション6の給電部6aに対向したか否かを判定し、対向したと判定した場合には、無人搬送車30の受電部32と筐体31内に収容されたバッテリ35(蓄電部の一例)との電力供給路を遮断状態から導通状態に切替える。これにより、給電ステーション6の給電部6aから受電部32を介してバッテリ35への電力供給(充電)が開始する。尚、無人搬送車30の受電部32が給電部6aに対向したか否かの判定は、例えば、給電部6aの近傍に設けられた赤外線発信部と、無人搬送車30の受電部32の近傍に設けられた赤外線受信部との間で赤外線通信が確立したか否かに基づいて行われる。
【0108】
動作姿勢記憶部74は、全体搬送制御装置60から送信される動作指令に基づいてAGVロボット20を動作させる際の動作姿勢(例えば、ワークセット板52を手前に引出すための姿勢や、各ワークセット板52の各ストック孔52aに対してワークWをセットする姿勢又はワークWを取出す姿勢)が記憶されている。これらの各動作姿勢は、自動運手制御を開始する前に、作業者が操作盤33を介してAGVロボット20のティーチング操作を行うことにより設定される。
【0109】
移動位置記憶部75は、前記無人搬送車30が移動する具体的な目標位置としての移動位置を記憶する機能部であり、この移動位置には、上述した充電位置P0及び作業位置P1~P10が含まれる。充電位置P0及び作業位置P1~P10は、作業者が操作盤33により前記無人搬送車30を手動運転して目標とする各位置に移動させて、各位置をマップ上の位置情報に変換して移動位置記憶部75に記憶させる操作(ティーチング操作)によって設定される。
【0110】
[無人搬送制御の内容]
図10は、本例の無人搬送システム1により実行される無人搬送制御の内容を示すフローチャートである。
【0111】
この無人搬送制では、先ず、ストック状況認識部61が認識した各素材ストッカ5s及び各完成品ストッカ5kのワークストック状況と、加工セル制御装置80のストック状況認識部84より受信した各加工セル100の投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hのワークストック状況を基に、ジョブ生成部64にて無人搬送車30及びAGVロボット20が実行すべきジョブを生成する(ステップS1)。ジョブ生成部64にて生成されたジョブには、無人搬送車30の搬送指令(無人搬送車30の出発的の作業位置P1~P10及び到着点の作業位置P1~10に係る指令等)とAGVロボット20の動作指令とが含まれており、これらの指令はAGV制御装置70へと送信される。AGV制御装置70では、走行制御部71が全体搬送制御装置60より受信した搬送指令に基づいて無人搬送車30を目標移動先であるワークストッカ5の作業位置P1~P10に経由させるとともに、ロボット制御部72が、全体搬送制御装置60より受信した動作指令に基づいてAGVロボット20に所定動作を実行せる(ステップS2)。
【0112】
ジョブ生成部64は、AGV制御装置70より走行制御部71及びロボット制御部72によるジョブ実行状況(搬送指令及び動作指令の実行状況)を監視し、生成したジョブが完了したか否かを判定する(ステップS3)。ジョブ生成部64において走行制御部71及びロボット制御部72によるジョブの実行が完了していないと判定した場合には、ジョブの実行が中断しているか否かを判定し(ステップS4)、中断していると判定した場合には(ステップS4でYES)、警報装置(図示省略)よる周囲に警報を行った後(ステップS5)、本無人搬送制御を停止する。一方、ジョブ生成部64において、ジョブの実行が中断していないと判定した場合には(ステップS4でNO)、ジョブが完了するまでステップS3の判定を繰返する。そうして、走行制御部71及びロボット制御部72によるジョブの実行が完了した後はステップS1に戻る。そして、ジョブ生成部64は、前記ストック状況認識部61,84が新たに認識した各ワークストッカ5のワークストック状況を基に、無人搬送車30及びAGVロボット20が実行するべきジョブを新たに生成する。
【0113】
[ロック機構部(引出規制機構部)の自動駆動制御の内容]
図11は、本例の無人搬送システム1において無人搬送制御と並行して実行される各ロック機構部55の自動駆動制御の内容を示すフローチャートである。
【0114】
この自動駆動制御では先ず、全体搬送制御装置60のロック制御部66において、ジョブ生成部64によりジョブが生成されたか否かを判定し(ステップS101)、ジョブが生成されていないと判定した場合にはリターンする(ステップS101でNO)。一方、ロック制御部66において、ジョブ生成部64によりジョブが生成されたと判定した場合には(ステップS101でYES)、ジョブ生成部64が生成したジョブに規定された無人搬送車30の目標移動先の作業位置P1~P10と、目標移動先の作業位置P1~P10にてAGVロボット20が作業を行うワークストッカ5及びワークセット板52を特定する(ステップS102)。
【0115】
そして、ロック制御部66では、ステップS102で特定したワークセット板52のロック機構部55がロック状態にあるか否かを判定し(ステップS103)、ロック状態にないと判定した場合には(ステップS103でNO)、作業者がワークセット板52を引出して作業を行っているものとして、ロック機構部55がロック状態に切替わるまで(つまり操作パネル53にて充填完了ボタン53a又は回収完了ボタン53cが操作されるまで)前記判定を繰返す。尚、ロック機構部55がロック状態になっていないワークセット板52については、予めAGVロボット20の作業対象から除外するようにしてもよい。これにより、ステップS103の判定処理を省略して無人搬送車30の無駄な待機時間を無くすことができる。
【0116】
ロック制御部66では、ステップS102で特定したワークセット板52のロック機構部55がロック状態にあると判定した場合には(ステップS103でYES)、ロック機構部55のロック解除状態への切替えを禁止する指令信号をストッカ制御装置54に送信する(ステップS104)。そうして、ロック制御部66は、無人搬送車30がジョブに規定された作業位置P1~P10に向けて移動を開始する前に(前記ステップS102におけるワークセット板52の特定が完了した直後に)このロック解除禁止の指令信号をストッカ制御装置54に送信する。
【0117】
次いで、ロック制御部66では、無人搬送車30が作業位置P1~P10に到着してAGVロボット20の作業準備が完了したか否かを判定する(ステップS105)。この判定は、例えば、AGV制御装置70より受信した無人搬送車30の位置情報及びAGVロボット20の状態信号を基に実行される。
【0118】
ロック制御部66では、AGVロボット20の作業準備が完了していないと判定した場合には(ステップS105でNO)、ストッカ制御装置54に対してロック解除禁止の指令信号を送信し続ける。したがって、無人搬送車30が作業位置P1~P10に到着してAGVロボット20による作業準備が完了するまでは、操作パネル53のロック解除ボタン53eが無効化されて、手動操作による各ロック機構部55のロック解除は禁止される。
【0119】
一方、ロック制御部66において、AGVロボット20の作業準備が完了したと判定した場合には(ステップS105でYES)、ステップS103で特定したワークセット板52のロック機構部55をロック解除状態に切替えるべく、ロック解除指令信号をストッカ制御装置54に送信する(ステップS106)。
【0120】
そして、ロック制御部66は、ロック機構部55がロック解除状態に切替わった後は、AGVロボット20が、ジョブに規定されたワークセット板52に対する動作(ワークWの取出し動作又はセット動作)を完了したか否かを判定し(ステップS107)、完了していないと判定した場合には(ステップS107でNO)、当該判定を再度実行する一方、完了したと判定した場合には(ステップS107でYES)、ステップS102で特定したワークセット板52のロック機構部55をロック状態に切替えるべく、ストッカ制御装置54にロック指令信号を送信する(ステップS108)。このとき、ロック制御部66は、ロック指令信号の送信は行っても、ロック解除を禁止する指令信号は送信しない。したがって、ワークセット板52のロック機構部55が、ストッカ制御装置54によってロック状態に切替えられた後であっても、作業者は操作パネル53を操作することでロック機構部55を必要に応じてロック解除状態に切替えることができる。そして、ロック制御部66によるステップS108の処理が完了した後はリターンする。
【0121】
尚、前記ステップS104,S106及びS108において、ロック制御部66より出力される作動指令信号は、上述したように、AGVロボット20の作業対象となるワークストッカ5の種類に応じて異なるストッカ5s,5k,5t,5hの制御装置54に送信される。
【0122】
[作用効果]
以上説明したように本実施形態の無人搬送システム1では、全体搬送制御装置60のロック制御部66は、ジョブ生成部64により生成されたジョブを基に、無人搬送車30の移動先が、例えば素材ストッカ5s又は完成品ストッカ5kの作業位置P1~P6であると認識した場合には、当該ジョブに規定されたAGVロボット20の作業対象となるワークストッカ5及びワークセット板52を特定して、該特定時から前記無人搬送車30が作業位置P1~P6に移動してAGVロボット20による当該ワークセット板52の搬送車作業位置側(図1の下側)への引出し作業が実行されるまでにワークセット板52が反搬送車作業位置側(図1の上側)に引出されないようにワークセット板52のロック機構部55をロック状態に制御するとともに該ロック状態からロック前記解除状態への切替えを禁止する禁止制御処理(ステップS104の処理)を実行するように構成されている。
【0123】
また、全体搬送制御装置60のロック制御部66は、ジョブ生成部64により生成されたジョブを基に、無人搬送車30の移動先が、投入ストッカ5t又は払出しストッカ5hであると認識した場合には、当該ジョブに規定されたAGVロボット20の作業対象となるワークストッカ5及びワークセット板52を特定して、該特定時から前記無人搬送車30が作業位置P7~P10に移動してAGVロボット20による当該ワークセット板52の搬送車作業位置側(図1の右側)への引出し作業が実行されるまでにワークセット板52が該搬送車作業位置側(図1の右側)に引出されないようにワークセット板52のロック機構部55をロック状態に制御するとともに該ロック状態からロック前記解除状態への切替えを禁止する禁止制御処理(ステップS104の処理)を実行するように構成されている。
【0124】
この構成によれば、ジョブ生成部64によりジョブが生成された後、当該ジョブに基づいて無人搬送車30が作業位置P1~P10に移動してAGVロボット20がワークセット板52の引出し作業を実行するまでの間は、ロック制御部66により各ロック機構部55がロック状態に制御されるとともにロック解除状態への切替えが禁止される。したがって、AGVロボット20が無人搬送車30の目標移動先の作業位置P1~P10にて作業を開始するまでの間に、作業者がワークセット板52を予期せず引出して、ワークセット板52に存在するべきワークWを持ち去ったり、ワークセット板52にワークWを不必要にセットしたりして、ジョブに基づくAGVロボット20のワークセット作業又は取出し作業が阻害されるのを防止することができる。
【0125】
また、本実施形態では、ワークストッカ5に設けられるワークセット板52は、例えば所定の収納位置からストッカ奥行方向に沿った両側に引出し可能に構成されているので、ワークストッカ5を単なる置き台で構成した場合のように、ワークストッカ5に対するアクセス経路がその上面のみに集中することがないので作業性を向上させることができる。
【0126】
また、ロック制御部66は、前記禁止制御処理の実行により移動が規制されたワークセット板52に対して引出し作業が行われる際には、無人搬送車30が作業位置P1~P10に到着してAGVロボット20の作業準備が完了したか否かを判定する(ステップS105)。換言すると、ロック制御部66は、この判定処理によって、引出し作業の作業主体が作業位置P1~P10に停車した無人搬送車30のAGVロボット20であるか否かを判定する。そして、ロック制御部66は、作業主体がAGVロボット20であると判定した場合には(ステップS105でYES)、前記ロック機構部55をロック状態からロック解除状態に切替える一方(ステップS106)、作業主体がAGVロボット20ではないと判定した場合には、ロック状態からロック解除状態への切替え禁止を継続するように構成されている。
【0127】
この構成によれば、AGVロボット20以外の作業主体によるワークセット板52の引出し作業を確実に禁止することができる。よって、無人搬送車30が作業位置P1~P10に到着する前に、作業者によりワークセット板52が予期せず引出されるのを確実に防止することができる。
【0128】
前記ロック制御部66により実行される禁止制御処理は、ロック機構部55をロック状態に制御するとともに、操作パネル53のロック解除ボタン53eの操作を無効化する処理とされている。
【0129】
これによれば、作業者がロック機構部55をロック状態からロック解除状態に切替えるための唯一の手段であるロック解除ボタン53eが無効化されるので、ロック機構部55のロック解除状態への切替えを確実に禁止することができる。
【0130】
前記素材ストッカ5s及び完成品ストッカ5kは、作業者によって前記ワークセット板52を所定の収納位置から反搬送車作業位置側(図1の上側)に引出し可能に構成されている。
【0131】
この構成によれば、作業者が無人搬送車30及びロボット20の作業領域(図1における素材ストッカ5s及び完成品ストッカ5kよりもサブ通路4側の領域)に立ち入ることなくワークセット板52を引き出して素材ワークWのセット作業や完成品ワークWの回収作業を行うことができ、作業効率性及び安全性を可及的に向上させることができる。そして、本発明の無人搬送システム1は、このように作業者とAGVロボット20とがワークストッカ5に対して互いに逆側から作業する構成に対して有用である。
【0132】
前記投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hは、AGVロボット20のみでなく作業者によって、前記ワークセット板52を前記収納位置から搬送車作業位置側(図1の右側)に引出し可能に構成されている。
【0133】
この構成によれば、作業者及びAGVロボット20が、ワークストッカ5の同じ側からワークセット板52を引出して作業を行うことができるので、例えば無人搬送車及びロボットの故障等が生じた場合には、ロボットに替わって作業者がワークセット板52に対するワークWのセット作業等を行うことができる。そして、本発明の無人搬送システム1は、このように作業者とAGVロボット20とがワークストッカ5に対して同じ側から作業する構成に対しても有用である。
【0134】
また、ワークストッカ5は、四つの(複数の一例)ワークセット板52有しており、ロック機構部55は、四つのワークセット板52のそれぞれに対して設けられている。
【0135】
この構成によれば、各ワークセット板52それぞれに対してロック機構部55が設けられているので、AGVロボット20の作業対象となるワークセット板52のみをロック機構部55により引出し不能にすることができる。したがって、AGVロボット20の作業対象となっていないワークセット板52の引出しが不必要に禁止されるのを防止することができる。
【0136】
(他の実施形態)
前記実施形態では、ロック機構部55のロック状態を、四つのロックピン553が全てロック位置にある状態と定義しているが、これに限ったものではない。
【0137】
すなわち、素材ストッカ5s及び投入ストッカ5tについては、ロック機構部55のロック状態において、例えばストッカ奥行方向の他方側(図1の下側であって搬送車作業位置側)の二つロックピン553(図4参照)のみをロック位置に位置させて、一方側の二つのロックピン553をロック解除位置に位置させるようにしてもよい。これによれば、他方側の二つロックピン553によりワークセット板52の一方側(反搬送車作業位置側)への移動が禁止されるので、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。尚、ロック機構部55は、ワークセット板52の少なくとも一方側(反搬送車作業位置側)への移動を禁止する構成であれば如何なる構成であってもよく、例えば一方側の二つのロックピン553を廃止して他方側の二つのロックピン553のみを設けてもよい。
【0138】
同様に、投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hについては、ロック機構部55のロック状態において、例えばストッカ奥行方向の他方側(図1の左側であって反搬送車作業位置側)の二つロックピン553(図4参照)のみをロック位置に位置させて、一方側の二つのロックピン553をロック解除位置に位置させるようにしてもよい。これによれば、他方側の二つロックピン553によりワークセット板52の一方側(搬送車作業位置側)への移動が禁止されるので、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。尚、ロック機構部55は、ワークセット板52の少なくとも一方側(搬送車作業位置側)への移動を禁止する構成であれば如何なる構成であってもよく、例えば一方側の二つのロックピン553を廃止して他方側の二つのロックピン553のみを設けてもよい。
【0139】
前記実施形態では、素材ストッカ5s及び完成品ストッカ5kにおいては、反搬送車作業位置側の作業主体は作業者のみとされているが、これに限ったものではない。反搬送車作業位置側において、他の無人搬送車及(AGV)の作業位置を設定して、該他の無人搬送車に搭載したAGVロボットがワークセット板52に対してワークWの取出し作業又はワークのセット作業をさらに行えるようにしてもよい。
【0140】
同様に、投入ストッカ5t及び払出しストッカ5hについては、反搬送車作業位置側の作業主体はセル用ロボットとされているが、反搬送車作業位置側において、他の無人搬送車及(AGV)の作業位置を設定して、該他の無人搬送車に搭載したAGVロボットがワークセット板52に対してワークWの取出し作業又はワークのセット作業を行えるようにしてもよい。
【0141】
前記実施形態では、ワークセット板52は、ワークストッカ5の奥行方向に水平に延びる直線状の引出し経路に沿った両側に引出し可能に構成されているが、これに限ったものではない。この引出し経路は、例えば平面視で直角に交差するL字状の経路や、上下方向に直線状に延びる経路等であってもよい。
【0142】
前記実施形態では、作業者が操作パネル53の作業完了ボタン(充填完了ボタン53a及び回収完了ボタン53c)を押すと、各入力ボックス53b,53dで指定したワークセット板52の各ロック機構部55がロック状態に切替わって該ワークセット板52の両側への移動が規制されるようになっているが、これに限ったものではない。例えば、作業完了ボタンが押されても、ワークストッカ5のロック機構部55をロック解除状態に維持しておき、その後、ジョブ生成部64が生成したジョブに基づいてAGVロボット20の作業対象となるワークセット板52が特定されたときに前記禁止制御処理(ステップS104の処理)を実行してロック機構部55をロック状態に切替えようにしてもよい。この構成によれば、ワークセット板52のロック機構部55は、当該ワークセット板52がAGVロボット20の作業対象とならない限り、ロック解除状態に維持される。したがって、作業者は、ワークセット板52を引出す際にロック解除ボタン53eを操作する必要がないので作業が容易になる。尚、このような構成を採用する場合、ロック解除ボタン53eを廃止することもできる。ロック解除ボタン53eを廃止することにより操作パネル53の画面構成を簡素化することができる。
【0143】
また、前記実施形態では、ワークセット板52の移動を規制する引出規制機構部の一例として、ロックピン553を使用したロック機構部55を挙げて説明したが、これに限ったものではない。引出規制機構部は、例えば、各ワークセット板52の引出し方向の外側を覆う複数の開閉シャッタにより構成されていてもよい。この場合の禁止制御処理は、ロック制御部66によって、AGVロボット20の作業対象となるワークセット板52の開閉シャッタを閉状態にするとともに該閉状態から開状態への切替えを禁止することで実現される。
【0144】
前記実施形態では、ロックピン553を駆動する空気シリンダ551をワークセット板52に固定し、被ロック突部59を筐体フレーム51のサイドビーム51bに固定するようにしているが、これとは逆に、空気シリンダ551を筐体フレーム51のサイドビーム51bに固定し、被ロック突部59をワークセット板52に固定するようにしてもよい。
【0145】
前記実施形態では、ロック機構部55は、ロック状態において、ロックピン553を被ロック突部59の規制面59aに当接させることによってワークセット板52の引出し移動を規制するように構成されているが、これに限ったものではない。ロック機構部55は、例えば、鉛直に配置したロックピン553を、ワークセット板52に形成された係合孔に係合させることでワークセット板52の引出し移動を規制するように構成されていてもよい。
【0146】
尚、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0147】
P1 作業位置(搬送車作業位置)
P2 作業位置(搬送車作業位置)
P3 作業位置(搬送車作業位置)
P4 作業位置(搬送車作業位置)
P5 作業位置(搬送車作業位置)
P6 作業位置(搬送車作業位置)
P7 作業位置(搬送車作業位置)
P8 作業位置(搬送車作業位置)
P9 作業位置(搬送車作業位置)
P10 作業位置(搬送車作業位置)
W ワーク
1 無人搬送システム
5 ワークストッカ
5h 払出しストッカ
5k 完成品ストッカ
5s 素材ストッカ
5t 投入ストッカ
20 ロボット
30 無人搬送車
52 ワークセット板(ワークセット部材)
53e ロック解除ボタン(ロック解除操作部)
55 ロック機構部(引出規制機構部)
64 ジョブ生成部
66 ロック制御部(引出し制御部)
71 走行制御部(動作制御部)
72 ロボット制御部(動作制御部)
552b 電磁ソレノイドバルブ(連動部)
553 ロックピン(ロック部材)
図1
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