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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022150363
(22)【出願日】2022-09-21
(62)【分割の表示】P 2021077456の分割
【原出願日】2016-07-13
(65)【公開番号】P2022173325
(43)【公開日】2022-11-18
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 達人
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-025965(JP,A)
【文献】特開2007-212526(JP,A)
【文献】特開2001-201976(JP,A)
【文献】特開2008-003276(JP,A)
【文献】特開2004-117686(JP,A)
【文献】特開2012-027174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材を加熱する加熱回転体と、
前記加熱回転体に当接することでニップ部を形成する加圧回転体であって、前記加熱回転体とともに記録材を挟持搬送しトナー像を記録材上に定着する加圧回転体と、
複数のモードから所定の封筒の幅に応じた1つのモードを設定する設定部と、
前記設定部が設定したモードに含まれる複数の定着条件のうち、操作者が1つの定着条件を選択できる選択手段と、
前記選択手段から選択された定着条件によって、前記所定の封筒に対する定着を実行する実行部と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置は、第1の幅の封筒と、前記第1の幅よりも大きい第2の幅の封筒と、を定着でき、
前記設定部は、前記第1の幅且つ所定の種類の封筒に対し、前記複数のモードに含まれる第1のモードを設定し、前記第2の幅且つ所定の種類の封筒に対し、前記複数のモードに含まれる前記第1のモードと異なる第2のモードを設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ニップ部の加圧力を切り替える加圧力切替機構を備え、
前記定着条件には、前記ニップ部の加圧力が含まれる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加熱回転体の温調温度を切り替える温調温度切替部を備え、
前記定着条件には、前記加熱回転体の温調温度が含まれる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項5】
前記ニップ部における記録材の搬送速度を切り替える搬送速度切替部を備え、
前記定着条件には、前記ニップ部における記録材の搬送速度が含まれる、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項6】
前記設定部は、前記複数の定着条件のうち、デフォルト設定に使用する定着条件を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項7】
前記加熱回転体は、無端状のベルトである、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項8】
前記ベルトを加熱するヒータを有し、
前記ヒータは、前記ベルトの内周面に当接する、
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置
【請求項9】
前記加圧回転体は、ローラであり、
前記ローラは、前記ベルトを介して前記ヒータとともに前記ニップ部を形成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置
【請求項10】
前記ベルトの内側に配置され、前記ベルトを加熱するヒータを有し、
前記加圧回転体は、ローラであり、
前記ローラは、前記ベルトを介して前記ヒータとともに前記ニップ部を形成する、
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式などの複写機、プリンタ、ファックス、それらの複合機能機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機などには、搬送される記録材(記録媒体:以下、用紙あるいは紙記す)上に転写されたトナー像(未定着画像)のトナー(現像剤)を、熱によって融解して用紙上に融着させる定着装置(画像加熱装置)が設けられている。
【0003】
定着装置においては、高速昇温させるために、定着ローラ(加熱媒体)を薄肉小径化したもの、樹脂フィルムの回転体に対しその内側から加熱体を圧接したもの、薄肉金属の回転体を誘導加熱により加熱するものなどが知られている。これらはいずれも加熱媒体としての回転体の熱容量を小さくし、加熱効率の良い熱源で加熱しようとしたものである。
【0004】
特許文献1によれば、封筒皺の発生を防止するために、加熱ローラに対する第1押圧ローラおよび第2押圧ローラの単位面積あたりの押圧力を、通常モードと封筒モードとに切り換えるための押圧切換機構部を定着部に設ける。封筒モードにおいて、普通紙などを定着するための通常モードよりも、第1押圧ローラの加熱ローラに対する単位面積あたりの押圧力および第2押圧ローラの加熱ローラに対する単位面積あたりの押圧力がともに小さくし、封筒皺の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-279702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行技術によれば、封筒通紙時の定着装置の加圧力を低くすることにより、封筒しわを軽減できる。しかし一般的に、加圧力を低くすると、封筒のフラップによる透けムラや紙の地合いが目立ちやすくなり、画像品位が低下する傾向にある。
【0007】
世の中には多種多様な封筒が存在しており、全ての封筒をひとつのモードでしわと画像品位を維持することは困難である。つまり、封筒モードで通紙した際に、ある封筒においては、しわと画像品位が両立できたとしても、別の封筒では、しわが発生してしまうことがある。またさらに別の封筒では、しわは発生しないが、透けムラや地合いの目立ち、定着不良など、画像品位が低下してしまうことがある。つまり、先行技術では、多種多様な封筒に対応しきれないという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、封筒しわの発生と画像品位を調整することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る画像形成装置は、記録材を加熱する加熱回転体と、前記加熱回転体に当接することでニップ部を形成する加圧回転体であって、前記加熱回転体とともに記録材を挟持搬送しトナー像を記録材上に定着する加圧回転体と、複数のモードから所定の封筒の幅に応じた1つのモードを設定する設定部と、前記設定部が設定したモードに含まれる複数の定着条件のうち、操作者が1つの定着条件を選択できる選択手段と、前記選択手段から選択された定着条件によって、前記所定の封筒に対する定着を実行する実行部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、封筒の種類に合わせて、封筒しわの発生と画像品位を調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1においてしわ補正モードをONにしたときの制御を説明するフローチャート
図2】画像形成装置の一例の構成模式図
図3】実施例1における定着装置を正面側から見た斜視図
図4】同装置の正面図
図5】同装置の駆動側の拡大斜視図と制御系統のブロック図
図6】同装置の要部の拡大横断面模式図
図7】同装置の内部構造の要部を見た斜視模式図
図8】(a)は定着ベルトの層構成模式図、(b)は蓋板を取り除いて見たコイルユニットの斜視図、(c)はベルトユニットの内部アセンブリの斜視図
図9】通常加圧モード時の加圧力切替機構の状態図(図4のA-A断面)
図10】通常加圧モード時の加圧力切替機構の状態図(図4のB-B断面)
図11】圧解除カムのカム位相線図
図12】低圧モード時の加圧力切替機構の状態図(図4のB-B断面)
図13】圧解除モード時の加圧力切替機構の状態図(図4のB-B断面)
図14】制御系統のブロック図
図15】操作部を説明する図
図16】表示画面を説明する図
図17】制御を説明するためのフローチャート(その1)
図18】制御を説明するためのフローチャート(その2)
図19】しわ補正モードの表示画面を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0014】
《実施例1》
[画像形成装置]
図2は画像形成装置の一例の構成模式図である。この画像形成装置1は、自動原稿搬送装置2を搭載している、タンデム方式-中間転写方式のフルカラー電子写真複写機である。
【0015】
UY、UM、UC、UKは、それぞれ、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン
(C)色、ブラック(K)色のトナー像を形成する4つの作像部である。各作像部は、それぞれ、感光ドラム3、帯電器4、レーザスキャナ5、現像器6、一次転写帯電器7、ドラムクリーナ8を有する。なお、図の煩雑を避けるため作像部UY以外の作像部UM、UC、UKにおけるこれらの機器に対する符号の記入は省略した。また、これら作像部の電子写真プロセスや作像動作は公知であるからその説明は割愛する。
【0016】
各作像部のドラム3から回動する中間転写ベルト9に対して各色のトナー像が所定に重畳されて一次転写される。これによりベルト9上に4色重畳のトナー像が形成される。一方、カセット10又は11、或いは手差しトレイ12から記録材(シート:以下、用紙あるいは紙と記す)Sが一枚宛給送される。その用紙Sが搬送路13を通ってレジストロール対14により所定の制御タイミングでベルト9と二次転写ロール15との圧接部である二次転写ニップ部に導入される。これにより、用紙Sに対してベルト9上の4色重畳のトナー像が一括して二次転写される。
【0017】
本実施例の画像形成装置1において上記の機構部が用紙Sに未定着のトナー像を形成する画像形成部である。その用紙Sが画像加熱装置である定着装置(定着器)Fに導入されて加熱・加圧されることで未定着のトナー像が溶融軟化して固着像として定着される。定着装置Fを出た用紙Sは片面画像形成モードの場合は進路制御により搬送路16の側に導入されて排出トレイ17上に排出される。
【0018】
両面画像形成モードの場合は、定着装置Fを出た片面画像形成済の用紙Sが進路制御により反転搬送路18の側に導入された後にスイッチバック搬送されて両面搬送路19に導入される。そして、表裏反転された状態で再び搬送路13を通って二次転写ニップ部に導入されて裏面に対するトナー像の形成がなされる。以後は片面画像形成の場合と同様に定着装置Fに導入され、排出トレイ17上に両面画像形成物として排出される。なお、本実施例1の画像形成装置1においては大小各幅サイズの用紙Sの搬送は用紙幅中心の所謂中央基準でなされる。所謂片側基準で用紙搬送を行う装置構成であってもよい。
【0019】
以上のように、帯電、露光、現像、転写、そして定着までの一連の画像形成プロセスが実行され、用紙S上に画像が記録形成される。なお、モノクロの画像形成装置ではブラックの画像形成部のみが存在する。Y、M、C、K各色の画像形成部の並び順や構成はこの限りではない。
【0020】
[定着装置]
以下で説明する定着装置Fに関して、正面側とは用紙Sの入口側、背面側とは用紙Sの出口側である。左右とは装置Fを正面側からみて左又は右である。本実施例においては左側を一端側(駆動側)、右側を他端側(非駆動側)とする。上下は重力方向において上又は下である。上流側と下流側は用紙Sの搬送方向(記録材搬送方向)において上流側と下流側である。
【0021】
図3は定着装置Fを正面側から見た斜視図、図4は同装置Fの正面図、図5は同装置Fの駆動側の拡大斜視図と制御系統のブロック図、図6は同装置Fの要部の拡大横断面模式図、図7は同装置Fの内部構造の要部を見た斜視模式図である。
【0022】
本実施例の定着装置Fは、IH(誘導加熱)方式-ベルト方式の画像加熱装置であり、主として図6を参照して、大別して、下記のような部材や機構を有している。
【0023】
a:用紙Sに形成されたトナー像tをニップ部Nにて加熱する第1の回転体(加熱回転体:定着部材)としての可撓性を有するエンドレスベルト(以下、定着ベルトあるいはベルトと記す)100を含むベルトユニット110
b:ベルト100との間でニップ部Nを形成する第2の回転体(加圧回転体:加圧部材)としての弾性を有する加圧ローラ200
c:ベルト100を加熱する加熱器としてのコイルユニット(誘導加熱装置、磁束発生手段)300
d:ベルト100と加圧ローラ200とを圧接させて用紙上(記録材上)の画像を加熱
(画像加熱処理:定着)するニップ部Nを形成する一端側と他端側の加圧機構710L・710R(図3図5
e:加圧機構710L・710Rの加圧部材によるニップ部Nの加圧力を変更可能な加圧力変更機構(加圧力切替機構)720L・720R(図3図5
f:底板601とこの底板601に固定して対向させて配設された一端側と他端側の側板602L・602Rを有し、上記のような部材や機構を収容している装置枠体(シャーシ、ハウジング)600(図3図5図7
(2-1)ベルトユニット
ベルトユニット110は、金属層を有する無端状のベルト100を有する。また、ベルト内部アセンブリとしての、定着パッド(以下、パッドと記す)103、パッド103を保持するパッド部材101、パッド部材101を保持するステー102、ステー102を覆う内部コア(内側磁性体コア)104等の組み立て体を有する。図8の(c)はこのベルト内部アセンブリの斜視図である。
【0024】
パッド103、パッド部材101、ステー102は何れもベルト100の長手方向(幅方向)に長い部材である。ステー102は一端部と他端部がそれぞれベルト100の両端部から外方に突出しており、その突出部に対してそれぞれ一端側と他端側のフランジ部材105L・105R(図7)が嵌着されている。ベルト100はこの両フランジ部材105L・105Rの対向面間においてベルト内部アセンブリ101~104の外側にルーズに外嵌されている。
【0025】
パッド部材101の内側(パッド103の側とは反対側)においてパッド部材101の長手中央部には温度センサ取り付け部(不図示)が配設されている。その取り付け部に弾性支持部材109を介して例えばサーミスタ等の温度センサ(温度検出素子)TH1が設けられている。
【0026】
弾性支持部材109はステー102の上面の長手中央部に設けられている透穴102aとこの透穴に対応する内コア位置に設けられている透穴104aを通って内コア104の外側に突き出ている。そして、その弾性支持部材109の先端部に支持された温度センサTH1がベルト100の長手中央部の内面に対して弾性的に当接している。これにより、回転されるベルト100のセンサ当接面が波打つなどの位置変動が生じたとしても温度センサTH1がこれに追従してベルト100の内面との良好な接触状態が維持される。
【0027】
図8の(a)はベルト100の層構成模型図である。ベルト100は内径が20~40mm程度の金属の基層100aを有している。基層100aの外周には弾性層100bとして耐熱性ゴム層が設けられている。ゴム層の厚さは100~800μmの範囲内で設定するのが好ましい。本実施例では、ベルト100の熱容量を小さくしてウォーミングアップタイムを短縮し、かつカラー画像を定着するときに好適な定着画像を得ることを考慮して、ゴム層の厚みは200μmとされている。更に弾性層100bの外周には、表面離型層100cとしてフッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)が設けられている。
【0028】
基層100aの内面側には、ベルト内面と温度センサTH1との摺動摩擦を低下させるために、摺動性の高い滑性層100dを10~50μm設けても良い。本実施例では30μmのポリイミド層を設け、さらにその表面に潤滑剤としての耐熱性グリスを塗布し、ベルト100の内面の潤滑性を維持している。なお、着ベルト100の金属層100aには鉄合金やニッケル合金、銅、銀などを適宜選択可能である。
【0029】
パッド103を保持したパッド部材101がベルト100と加圧ローラ200との間に押圧力を作用させてニップ部Nを形成する。パッド22はステンレスなどの金属やセラミックス等の硬度の高い材質からなり、厚さ1mm程度で長手方向に伸びた形状である。パッド部材101の材質はPPSやLCP等の耐熱性の樹脂からなる。
【0030】
パッド部材101を保持するステー102はニップ部Nに圧力を加えるために剛性が必要であるため金属製の剛性部材である。ステー102の材質としては、加熱器としてのコイルユニット300によってベルト100のみが発熱することが望ましく、誘導加熱の影響を受けにくいステンレス等の非磁性の材質が望ましい。
【0031】
ステー102のコイルユニット300側には、誘導加熱をより効果的に行うために内部コア104が設けられている。内部コア104は、図8の(c)に示すように、長手方向に複数に分割して、コイルユニット300の後述する励磁コイル301との距離を漸次変化させるように配置されている。内部コア104は励磁コイル301に高周波電流を印加することにより発生した磁束がより効率的にベルト100の加熱に用いられるように、磁束を遮蔽するフェライト等の高透磁率の材質からできている。
【0032】
ベルトユニット110は、図7のように、一端側と他端側のフランジ部材105L・105Rをそれぞれ装置枠体600の一端側と他端側の側板602L・602Rにそれぞれ形成されている縦方向のガイドスリット部602aに係合させて配設されている。したがって、ベルトユニット110は全体に側板602L・602R間においてスリット部602aに沿って上下方向に移動可能な自由度を有する。
【0033】
(2-2)加圧ローラ
加圧ローラ200は金属製の芯金200aに弾性層200bとしてゴム層、また表面には離型層200cが設けられている、外形30mmの弾性ローラである。加圧ローラ200はベルトユニット110の下側において、軸線方向をベルトユニット110の長手方向にほぼ平行にして、側板602L・602Rに間にそれぞれ軸受603を介して回転可能に配設されている(図7)。
【0034】
芯金200aの一端側の端部には加圧ローラギア801(図5)が同心一体に配設されている。このギア801に対して制御部(プリンタ制御部)1000で制御される加圧ローラモータ(駆動源)M2の駆動力が駆動伝達手段を介して伝達される。これにより加圧ローラ200が駆動回転体として図6において矢印R200の反時計方向に所定の制御速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0035】
(2-3)コイルユニット
コイルユニット300はベルト100を誘導加熱する加熱器であり、ベルトユニット110の上側に配設されている。コイルユニット300はベルト100の長手方向に沿って長いハウジング303の内部に、励磁コイル(磁束を生ずるコイル)301、外部コア(外側磁性体コア)302等を組み付けたものである。
【0036】
ハウジング303は横長箱型で耐熱樹脂製の成型品(電気絶縁性樹脂の肉厚2mm程度のモールド部材)である。ハウジング303の底板303a側がベルト100に対する対向面である。底板303aは横断面においてベルト100の外周面の略半周範囲に沿うようにハウジング303の内側に湾曲している。
【0037】
コイルユニット300はハウジング303の両端部がベルトユニット110の一端側と他端側フランジ部材105L・105Rに受け止められている。これにより、ハウジング303の底板303aがベルト100の上面に対して所定のギャップ(隙間)αを存して対面している。コイルユニット110はハウジング303の一端側と他端側の側板がそれぞれの側のフランジ部材105L・105Rにワイヤーバネ(不図示)で括りつけられている。つまり、コイルユニット300はベルトユニット110と一体化されている。
【0038】
従って、ベルトユニット110のフランジ部材105L・105Rが後述するように加圧機構710L・710Rで加圧されて沈みこむとコイルユニット300もギャップαを維持したままベルトユニット110と一緒に沈みこむ。また、フランジ部材105L・105Rが減圧または圧力解除されて浮くとコイルユニット300もギャップαを維持したままベルトユニット110と一緒に浮く。
【0039】
コイル301は、電線として例えばリッツ線を用い、これを横長・船底状にしてベルト100の周面と側面の一部に対向するように巻回してなる。そして、ハウジング内側に湾曲している底板303aの内面に当てがわれてハウジング内部に収められている。コイル301には、制御部1000で制御される電源装置(励磁回路)1008から20~60kHzの高周波電流が印加される。この電流印加によりコイル301によって発生した磁界によりベルト100の金属層(導電層)100aが誘導発熱する。
【0040】
外部コア302は、コイル301によって発生した磁界がベルト100の金属層(導電層)以外に実質漏れないようにコイル301を覆わせた外側の磁性体コアである。そして、外部コア302は、図8の(b)のように、長手方向に沿って複数に分割されて並んで配置されている。なお、図8の(b)はコイルユニット300についてハウジング303の蓋板を外してハウジング内部を見た図である。
【0041】
(2-4)定着動作
画像形成装置1のスタンバイ状態(待機状態)においては、定着装置Fは、後述する加圧機構710L・710Rによるニップ部Nの加圧力が加圧力変更機構710L・710Rにより実質解除されている加圧解除モード(加圧解除状態)に保持されている。加圧ローラモータM2がOFFにされていて加圧ローラ200の回転は停止している。コイルユニット300のコイル301に対する給電はOFFにされている。
【0042】
制御部1000は、プリントジョブ開始信号(画像形成ジョブ開始信号)の入力に基づいて、定着装置Fについては所定の温度に立ち上げるための装置の前回転動作(画像形成動作に先立つ準備動作)を実行する。
【0043】
即ち、制御部1000は、所定の制御タイミングにて加圧力変更機構720L・720Rを制御して加圧機構710L・710Rを所定の加圧モード(加圧状態)にする。これにより、ベルトユニット110のステー104がフランジ部材105L・105Rを介して所定に加圧されて、ベルト内アセンブリがベルト100を介して加圧ローラ200に対して弾性層200bの弾性に抗して加圧される。その結果、パッド103がベルト100を介して加圧ローラ200に圧接してベルト100と加圧ローラ200との間に用紙搬送方向aにおいて所定幅のニップ部Nが形成される。
【0044】
また、制御部1000は加圧ローラモータM2をONする。これにより、そのモータM2の駆動力が加圧ローラギア801に伝達されて加圧ローラ200が図6において矢印R200の反時計方向に所定の制御速度で回転駆動される。
【0045】
この加圧ローラ200の回転により、ニップ部Nにおける加圧ローラ200の表面とベルト100の表面との摩擦力でベルト100に回転力が作用する。ベルト100はその内面がパッド103に密着して摺動しながらベルト内部アセンブリ101~104の外周りを図6において矢印R100の時計方向に加圧ローラ200の回転速度と同じ速度で従動回転する。ベルト100の回転に伴うスラスト方向への移動はフランジ部材105L・105Rのフランジ部により規制される。
【0046】
また、制御部1000は電源装置(励磁回路)1008からコイル301に対して20kHz~60kHzの高周波電流(交番電流)を印加する。コイル301は高周波電流の供給により交番磁束(磁場)を発生する。その交番磁束がコア302により回転しているベルト100の上面側においてベルト100の金属層100aに導かれる。そうすると、金属層100aに渦電流が発生して、その渦電流によるジュール熱により金属層100aが自己発熱(電磁誘導発熱)してベルト100が昇温していく。
【0047】
即ち、回転するベルト100はコイルユニット300から発生される磁界が存在する領域を通過したときに金属層100aが電磁誘導発熱して全周的に加熱されて昇温する。このベルト100の温度が温度センサTH1により検知される。温度センサTH1はベルト100の通紙域になる部分の温度を検知し、その検知温度情報が制御部1000にフィードバックされる。制御部1000はこのセンサTH1から入力する検知温度(検知される温度に関する情報)が所定の目標温度(定着温度:所定の温度に対応する情報)に維持されるように電源装置1008からコイル301に対する供給電力を制御している。
【0048】
本実施例では、通常は、ベルト100の目標温度である180℃で一定になるように、温度センサTH1の検出値に基づいて高周波電流の周波数を変化させてコイル301に入力する電力を制御して温度調節を行っている。
【0049】
上記の前回転動作で、加圧ローラ200が駆動され、ベルト100が所定の定着温度に立ち上がって温調された状態になる。この状態において、画像形成部側から定着装置Fのニップ部Nに未定着のトナー像tを担持した用紙Sがトナー像担持面側をベルト100側に向けてガイド部材106で案内されて導入される。用紙Sはニップ部Nにおいてベルト100の外周面に密着し、ベルト100と一緒にニップ部Nを挟持搬送されていく。
【0050】
これにより、主にベルト100の熱が付与され、またニップ部Nの圧力を受けて未定着トナー像tが用紙Sの表面に熱圧定着される。ニップ部Nを通った用紙Sはベルト100の外周面からベルト100の表面がニップ部Nの出口部分の変形によって自己分離(曲率分離)して、更には分離ガイド107で分離補助を受けて、ガイド部材108により定着装置Fから排出搬送されていく。
【0051】
分離ガイド107は、ニップ部Nの出口部分から出た用紙Sがベルト100に巻き付かないように、かつベルト100に接触してベルト100に傷をつけないように、ベルト100とある間隔(隙間)を持って配置されている。分離ガイド107はフランジ部材105L・105Rの一部に係合しバネ等の付勢手段により固定されている。
【0052】
プリントジョブ(印刷ジョブ)が終了すると、制御部1000は画像形成装置を所定の後回転動作後に停止させてスタンバイ状態に移行させる。定着装置Fについては、加圧機構710L・710Rが加圧解除モードに戻される。加圧ローラモータM2がOFFにされる。コイルユニット300のコイル301に対する給電もOFFにされる。
【0053】
(2-5)加圧機構・加圧力変更機構
加圧機構710L・710Rは、本実施例では、ベルトユニット110のフランジ部材
(押圧部材)105L・105Rをそれぞれ加圧(押圧)してベルト100と加圧ローラ200との間に用紙搬送方向aにおいて所定幅のニップ部Nを形成する機構である。加圧力変更機構(圧解除機構)720L・720Rは、それぞれ、加圧機構710L・710Rの加圧力を変更する機構である。
【0054】
本実施例においては、加圧機構710L・710Rおよび加圧力変更機構720L・720Rを、装置枠体600の一端側と他端側の側板602L・602Rの外側にそれぞれ左右対称に同一構成で同期して動作する機構として具備させている。そこで、以下は、主として一端側の加圧機構710Lおよび加圧力変更機構720Lを代表して説明する。
【0055】
(a)加圧機構
加圧機構710L(R)は、加圧支持板(加圧支持部材)700、加圧板1(701:加圧部材)、加圧板2(702:加圧部材)、回転中心軸703、加圧バネ1(704)、加圧バネ2(705)、加圧調整ねじ709から構成されている。
【0056】
一端側の加圧機構710Lと他端側の加圧機構710Rの加圧支持板700は、それぞれ、装置枠体600の一端側の側板602Lと他端側の側板602Rに対して圧解除軸708が貫通することで支持されている。そして、加圧支持板700の先端部で、一端側の側板602L、他端側の側板602Rそれぞれに対してビス403で固定されている。
【0057】
加圧板1(701)と加圧板2(702)は、回転中心軸703により軸支されており、加圧板1、2(701、702)は加圧支持板700に対して回転自在に動くことが出来る。加圧板1(701)を加圧バネ1(704)が、加圧板2(702)を加圧バネ2
(705)がそれぞれフランジ部材105L(R)を加圧ローラ200側に押し付ける方向にバネ付勢している。ただし、加圧板1(701)は加圧板2(702)を介してフランジ105部材105L(R)を加圧している。
【0058】
加圧支持板700には加圧調整ねじ709が締結されており、加圧調整ねじ709を締め込み量によって加圧バネ1(704)のバネ長を調節する。そして、フランジ105部材L(R)に負荷されるバネ荷重を調節することができる。
【0059】
図9図4のA-A線矢示の断面図、図10図4のB-B線矢示の断面図である。
加圧板2(702)のフランジ部材105Lを押す面の一部に突起部702aを有しており、この突起部702aを加圧板1(701)が押すことで加圧板1(701)と加圧板2(702)で同時にフランジ部材105Lを加圧する構成となっている。そして、加圧ローラ200とベルト100の間にニップ部Nが形成されることとなる。
【0060】
加圧バネ1(704)は加圧バネ2(705)よりも高い付勢力が出るように設定されている。例えば、ニップ部Nに550Nの加圧力が付与されている場合、加圧バネ1(704)は520Nを、加圧バネ2(705)は残り30Nを付勢するように設定されている。この550Nのニップ力は普通紙や光沢紙、厚紙等のメディアに対して用いられる。以後この加圧力の状態を通常加圧モードと称する。通常加圧モードでの加圧力と、通紙速度や温調温度を適切にコントロールすることによって、普通紙のみならず、厚紙や光沢紙の定着性や光沢感を満足することが可能となる。
【0061】
(b)加圧力変更機構
加圧力変更機構(加圧力切替機構)720L(R)は、圧解除カム706、圧解除ギア707、圧解除軸708から構成されている。
【0062】
回転中心軸703のフランジ部材105Lを挟んで対向する側に、圧解除機構としての圧解除カム706と、加圧支持板の加圧板を内包する空間の外側に圧解除ギア707、圧解除軸708が配置されている。なお、ギア707は他端側の加圧力変更機構720Rには配設されていない。圧解除ギア707と圧解除カム706は圧解除軸708と同軸に配置されており、圧解除ギア707の回転によって圧解除カム706が回転するように係合している。
【0063】
圧解除カム706は長手方向に2つのカムを並設したような形状をしており、2つのカムプロファイルを持っている。具体的には、圧解除カムの小カム部706bは加圧板2(702)を回転中心軸中心に回転動作させ、圧解除カムの大カム部706aは加圧板1(701)を回転中心軸中心に回転動作させることができる。
【0064】
図11に圧解除カム706が回転したときの、小カム部706bと大カム部706aによる加圧板1(701)、2(702)それぞれの回転中心軸中心の回転量を図示している。図11は、加圧状態が縦軸の0°に対応しており、図5図9図10において加圧板1(701)、2(702)が回転軸70を中心に反時計方向に回転する時を正としている。
【0065】
(b-1)低加圧モード
次に、図12を用いて、ニップ圧が低い状態(以下、低加圧モード)について説明する。制御部100は、低加圧モードで通紙するプリントジョブ(JOB)、例えば封筒通紙ジョブ(用紙として封筒を用いたプリントジョブ)が投入された場合、定着装置Fは低加圧モードに移行する。
【0066】
制御部1000で制御される加圧モータM1(図5)の駆動力が駆動伝達手段を介して圧解除ギア707に伝達されて圧解除ギア707を時計方向に回転させる。これにより、圧解除ギア707と平行ピンやDカット等により係合している圧解除軸708、ならびに圧解除カム706を回転させる。圧解除カム706が低加圧モードで停止し、定着装置Fが低加圧モードに移行した状態が図12である。他端側の加圧力変更機構720Rも連動して同じ動作をする。
【0067】
図12では圧解除カム706の大カム部706aが加圧板1(701)を押し上げ、加圧板1(701)は圧解除状態となっている。一方で、小カム部706bは加圧板2(702)には触れず、加圧板1(701)と加圧板2(702)も接触しない状態となっている。このため、加圧バネ1(704)の加圧力は圧解除カム706で十分に受けることができ、フランジ部材105L(R)には加圧バネ1(704)の加圧力は作用しない。
【0068】
加圧板2(702)には加圧バネ2(705)が配置されているため、図12の状態では加圧バネ2(705)のみがフランジ部材105L(R)に作用する。通常加圧モードの説明で述べたとおり、加圧バネ1(704)の付勢力に比べて加圧バネ2(705)の付勢力は約1/18程度であるため、通常加圧モードに比して低加圧モードの加圧力を大きく減少させることができる。
【0069】
(b-2)圧解除モード
画像形成装置1が稼働しておらず、電源スイッチがOFFされている場合や、紙詰まりを生じた場合、定着装置Fは圧解除モードに移行する。その際は通常加圧モードや低加圧モードから、図13に示す圧解除モードに移行する。
【0070】
圧解除モードでは低加圧モードと異なり、加圧板1(701)、加圧板2(702)がともに圧解除カム706のそれぞれ大カム部706a、小カム部706bにより持ち上げられる。これにより、加圧バネ1(704)、加圧バネ2(705)の両方のバネの付勢力を圧解除カム706が受けることによって、ニップ部Nの加圧力を解除した状態である、圧解除モードに移行する。これにより、ベルト100や加圧ローラ200の塑性変形や紙詰まり時の用紙の除去性が向上する。
【0071】
(2-6)制 御
本実施例の制御を図14に示すブロック図を使って説明する。制御部(プリンタ制御部)1000は、CPU(中央演算処理装置)1001、メモリ1002等を備えており、画像形成装置1の全ての機構部を統括的に制御する。2000は画像形成装置1に具備されている操作部(操作パネル)、3000はパソコン(PC)等の外部ホスト装置であり、インターフェースを介して制御部1000に電気的に接続されている。
【0072】
操作部2000やホスト装置3000から、ユーザが出力(使用)する用紙種(記録材種)の情報(用紙サイズ、坪量および用紙種類)が記録材情報処理部1003に送られ、記録材情報処理部1003の情報が、CPU1001に転送される。
【0073】
CPU1001は、メモリ1002を参照し、記録材情報処理部1003の情報によって、定着装置Fのニップ部Nの加圧力を所定の値にするように加圧力制御部1005に命令する。加圧力制御部1005は、定着装置Fのニップ部Nの加圧力を所定の圧に制御する。即ち、CPU1001は定着装置Fのニップ部Nの加圧力が所定の圧になるように加圧力制御部1005を介して加圧モータM1を制御する。
【0074】
CPU1001は、画像形成装置本体に取り付けられた温湿度センサ1004の情報とベルト100の温度センサTH1の検知温度をもとに、電源装置1006を制御してベルト100を所定の温度に制御できる。また、CPU1001は温調温度切替部1007を制御してベルト100の温調温度を所定に切り替えることができる。
【0075】
CPU1001は加圧ローラモータM2を制御して、回転させたり、停止させたりできる。また、CPU1001は搬送速度切替部1005を制御して加圧ローラ200の駆動による用紙の搬送速度(プロセススピード)所定に切り替えることができる。
【0076】
操作部2000は画像形成装置1に設けられており、操作者により指示を行うためのキー操作が行われるキーを複数備えている。図15は操作部2000の一例の模式図である。この操作部2000には、ハードキー(操作者がキー操作を行う部位)である、スタートボタン(画像形成開始を指示するためのボタン)501、数値入力ボタン(0~9までの各数字のボタン)502、サブ電源スイッチ504が設けられている。さらに、液晶表示部となっているタッチパネル503が設けられている。
【0077】
このタッチパネル503には、画像形成に関わる指示ボタンが表示されている。例えば、ソフトキー(操作者がキー操作を行う部位)である、用紙(記録材)の種類を設定するためのボタン(用紙の坪量を設定する)、用紙の両面への画像形成を指示するためのボタン、ステイプル処理を指示するためのボタンなどが表示されている。これらのボタン(キー)を操作者がタッチすることにより各種指示が行われる。
【0078】
操作部2000の液晶表示部であるタッチパネル503および外部ホスト装置3000であるユーザのPCのディスプレイに表示される表示画面503は共通のインターフェースであるため、同様の数字503を付与して説明する。
【0079】
ユーザが印刷もしくはコピーする場合に、図16に示す表示画面503から用紙種類を選択する。このように操作部2000を通じて操作者により指定された情報は、記録材情報処理部1003を通してCPU1001へ送信される構成となっている。
【0080】
本実施例の制御を図17に示したフローチャートを使って説明する。まず、画像形成装置は画像形成ジョブを受け付ける。ユーザが表示画面503(図16)から封筒B101を設定した封筒ジョブ(JOB)かどうかをCPU1001が判断する(S2)。通紙する用紙が封筒でなければ、加圧力を通常圧モードにし(S4’)、画像形成動作と定着動作(S5)を行う。
【0081】
通紙する用紙が封筒の場合、低加圧モードで通紙するジョブかどうかをCPU1001が判断する(S3)。封筒幅が140mm以下の場合、加圧力を低加圧モードにし(S4)、画像形成動作と定着動作(S5)を行う。
【0082】
通紙する用紙が封筒で、封筒幅が140mmより広い場合、加圧力を通常圧モードにし
(S4’)、画像形成動作と定着動作(S5)を行う。
【0083】
低加圧モードは、加圧力が小さく、長手端部のニップ幅が特に狭い。そのため、端部の定着性が低下するので、幅が広い封筒に対しては通常圧で通紙するようにしている。
【0084】
各モードにおける定着動作を図18に示したフローチャートを使って説明する。図18において、まず、定着装置Fの加圧状態を通常圧に調整する(S1100)。次に、加圧ローラ200を駆動させ、加圧ローラ200とベルト100を回転させ、コイル301に電圧を印加し、ベルト100を加熱する(S1101)。所定の温調温度に到達するまで、加熱回転を継続する(S1102)。
【0085】
図17のフローで決定されたモードが低加圧モードの場合は低加圧に切り替える(S1103、S1104)。未定着トナー像tを載せた用紙Sをニップ部Nに導入して通過させ定着させる(S1105)。プリントジョブ終了するまでS1103~S1105の動作を行う(S1106)。プリントジョブが終了したら定着モータ800の回転およびコイル301への電力供給を停止させる(S1107)。ジョブ終了後の設定により、定着装置Fのニップ部Nの加圧状態を通常圧もしくは圧解除状態に変更する(S1108)。
【0086】
(2-8)封筒しわ補正モード
封筒には、同じサイズでも坪量、剛度、紙の表面性状など、様々なものがある。一般的に封筒の坪量が大きくなると、紙の剛度も高くなり、しわが発生しづらくなる。しかし、その代わりトナーを紙に定着させる熱量が多く必要になる。それに対し、封筒の坪量が小さくなると、紙の剛度も低くなり、しわが発生しやすくなる。その代りに、トナーを紙に定着させる熱量は少なくてすむ。
【0087】
封筒しわ補正モードとは、上記のような封筒のばらつきに対応するため、封筒の特性によって、a:温調温度、b:ニップ圧、c:プロセススピードを切り替え、封筒しわと画像品位を両立させるモードである。
【0088】
(a)封筒しわ補正モード設定方法
図16に示す表示画面503において、封筒B101を選択すると、図19に示す表示画面503Aに切り替わり、しわ補正値を調節することができる。本実施例においては、表示画面503Aが、ユーザ(操作者)が、前記加圧力、前記温調温度、前記搬送速度を段階的に切り替えた補正モードを設定可能な設定部である。
【0089】
本実施例では、しわ補正値は8段階に設定されている(-2~+5)。ユーザがこのしわ補正値の値を変更することで、上記3つのパラメータが自動で段階的に切り替わる。デフォルト設定は、しわ補正値0である。しわ補正値の値を大きくするにつれ、しわがより発生しづらくなる。
【0090】
即ち、ユーザが設定部である表示画面503Aで一つの値を操作することにより、前記加圧力、前記温調温度、前記搬送速度の設定がそれぞれ自動的に切り替わる。そして、制御部(実行部)1000は表示画面503Aで設定された補正モードに対応するように加圧力切替機構720、温調温度切替部1007、搬送速度切替部1005を調整して用紙上(記録材上)のトナー像tを加熱を実行する。
【0091】
(b)封筒しわ補正モード詳細
封筒しわ補正モードの数値を変えた時に、切り替わるパラメータを表1に示す。封筒しわ及び画像品位に対する各パラメータの感度は以下の通りである。
【0092】
1.ニップ圧:小さい方が封筒しわに有利。感度大。
【0093】
2.プロセススピード(搬送速度):速い方が封筒しわに有利。感度中。
【0094】
3.温調温度:低い方が封筒しわに有利。感度小。
【0095】
【表1】
【0096】
しわ補正を大きくしていくと、上記3つのパラメータの組み合わせで、しわが発生しづらい設定になっていく。しかしその代りに、定着性に対する能力が低下していく。しかし、前に述べたように、しわが発生しやすい封筒は、坪量が小さく、定着性には有利なので画像品位を維持することができる。
【0097】
また、封筒幅によって、しわ補正モードの数値を変えた時に切り替わるパラメータが異なる。即ち、装置に使用される封筒の幅によって、前記加圧力、前記温調温度、前記搬送速度の切り替わる閾値が異なる。以下に各封筒幅設定の特徴を説明する。
【0098】
◎封筒A(封筒幅100≦x<140)の場合
デフォルト設定(しわ補正値0)は、
1.ニップ圧:低加圧モード
2.プロセススピード:半速
3.補正温度:±0℃
である。
【0099】
まず、しわ補正値を+1、+2としていくと、補正温度が-10℃、-20℃と下がっていく。つまり、まずは感度の小さい温調温度を調整することで、徐々にしわに対して有利な設定にしていく。そして、しわ補正値が+3になると、温調温度はデフォルト設定に戻り、プロセススピードが等速になる。
【0100】
剛度が高く、しわが出づらい封筒で、画像品位を高めたい場合は、しわ補正値を下げるとよい。例えば、しわ補正値を-2にすると、ニップ圧が通常圧になるので、紙の地合ムラが少なく、グロスが高い成果物を得ることができる。
【0101】
◎封筒B(封筒幅140≦x<162)の場合
デフォルト設定(しわ補正値0)は、
1.ニップ圧:通常圧モード
2.プロセススピード:等速
3.補正温度:±0℃
である。
【0102】
まず、しわ補正値を+1にすると、ニップ圧が封筒圧に切り替わる。そして、プロセススピードは半速に、補正温度は+10℃に切り替わる。つまり、感度の大きいニップ圧をしわに有利な設定に変える代わりに、その他のパラメータをしわに対して不利(定着性に対して有利)な設定にすることにより、微調整を図っている。そして、しわ補正値を+2、+3とすると、補正温度が下がっていく。しわ補正値が+4になると、補正温度がデフォルトに戻り、プロセススピードが等速に変化する。
【0103】
逆に画像品位を高めたい場合は、しわ補正値を-1、-2とすることで、温調温度が高くなっていく。
【0104】
◎封筒C(封筒幅162<x≦240)の場合
デフォルト設定(しわ補正値0)は、
1.ニップ圧:通常圧モード
2.プロセススピード:等速
3.補正温度:±0℃
である。
【0105】
まず、しわ補正値を+1にすると、補正温度が-10℃になる。そして、しわ補正値+2でニップ圧が封筒圧に切り替わり、プロセススピードは半速に、補正温度は+10℃に切り替わる。さらにしわ補正値を+3、+4とすると、補正温度が下がっていく。
【0106】
逆に画像品位を高めたい場合は、しわ補正値を-1、-2とすることで、温調温度が高くなっていく。
【0107】
◎封筒D(封筒幅240<x)の場合
デフォルト設定(しわ補正値0)は、
1.ニップ圧:通常圧モード
2.プロセススピード:等速
3.補正温度:±0℃
である。
【0108】
封筒幅が240mmを超えてくると、低加圧モードでは搬送力が不十分で封筒がスリップしてしまう懸念がある。そのため、このサイズの封筒に関しては、しわ補正値の値を下げても、ニップ圧は変化しない。
【0109】
(c)封筒しわ補正モード設定時の制御
しわ補正モード設定時の制御を図1に示したフローチャートを使って説明する。まず、画像形成装置は画像形成ジョブを受け付ける。ユーザが表示画面503(図16)から封筒B101を設定した封筒ジョブかどうかをCPU1001が判断する(S2)。通紙する用紙が封筒でなければ、加圧力を通常圧モードにし(S14’)、画像形成動作と定着動作(S5)を行う。
【0110】
通紙する用紙が封筒の場合、封筒しわ補正モードがONになっているかをCPU1001が判断する(S11)。封筒しわ補正モードがONになっていなければ、封筒圧モードで通紙するジョブかどうかをCPU1001が判断する(S12)。封筒幅が140mm以下の場合、加圧力を封筒圧モードにし(S14)、画像形成動作と定着動作(S5)を行う。そして、封筒幅が140mmより広い場合、加圧力を通常圧モードにし(S14’)、画像形成動作と定着動作(S5)を行う。
【0111】
封筒しわ補正モードがONの場合、表1に従い、温調温度、加圧力、プロセススピードを変更し(S13)、画像形成動作&定着動作(S5)を行う。
【0112】
以上説明した発明によって、多種多様な封筒において、しわと画像品位を両立できる定着装置を提供することが可能となるが、ここで述べた実施例は一例にすぎず、設定値等はこれに限定されるものではない。
【0113】
《その他の実施例》
(1)実施例では、画像加熱装置として、用紙上(記録材上)に形成された未定着のトナー像を加熱して定着する定着装置を例にして説明したがこれに限られない。用紙Pに定着もしくは仮定着されたトナー像を再加熱して画像のグロス(光沢度)を増大させる装置
(光沢向上装置)にも本発明を適用することが可能である。
【0114】
(2)画像加熱装置は、加熱回転体と加圧回転体は共にローラ体である装置構成であってもよいし、共にエンドレスベルトである装置構成であってもよいし、一方がローラ体であり他方がエンドレスベルトである装置構成であってもよい。
【0115】
(3)画像加熱装置の加圧機構は加熱回転体と加圧回転体のうちの少なくとも一方を他方に向けて加圧する構成であればよい。
【0116】
(4)画像加熱装置は加熱回転体と加圧回転体の少なくとも一方を加熱器で外部加熱或いは内部加熱する装置構成であればよく、加熱器は実施例の誘導加熱に限られない。接触型ヒータや熱線照射加熱であってもよい。
【0117】
(5)画像形成装置は実施例のようなフルカラーの画像を形成する画像形成装置に限られず、モノクロの画像を形成する画像形成装置でもよい。また画像形成装置は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、複写機、FAX、及び、これらの機能を複数備えた複合機等、種々の用途で実施できる。
【符号の説明】
【0118】
F・・画像加熱装置(定着装置)、100・・加熱回転体、200・・加圧回転体、N・・ニップ部、S・・記録材、t・・トナー像、710(L、R)・・加圧機構、720
(L、R)・・加圧力切替機構、1007・・温調温度切替部、1005・・搬送速度切替部、503A・・設定部、1000・・実行部(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
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図19