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特許7404495エレベータシステムおよびエレベータの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】エレベータシステムおよびエレベータの運転方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20231218BHJP
   B66B 1/34 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B66B5/02 J
B66B1/34 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022203334
(22)【出願日】2022-12-20
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 勇也
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-069952(JP,A)
【文献】特開2018-104144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
B66B 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、
乗り場に設置され、持ち運びを容易に行える外部電源を接続することが可能な第1の外部電源接続設備と、
かご内に設置され、前記持ち運びを容易に行える外部電源を接続することが可能な第2の外部電源接続設備と、
前記外部電源の電力を調整して前記エレベータ制御装置側へ出力する調整回路と、を具備し、
前記エレベータ制御装置は、停電時に、前記第1の外部電源接続設備前記外部電源が接続されているとき前記第2の外部電源接続設備に前記外部電源が接続されているときの、いずれの場合も、前記調整回路から供給される電力を用いてエレベータを運転する、
エレベータシステム。
【請求項2】
前記エレベータ制御装置は、前記第1の外部電源接続設備に前記外部電源が接続されているときに、ある階床の乗り場でかごの呼び登録が行われた場合、前記外部電源の電力を用いて、かごを前記呼び登録が行われた階床まで移動させる、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
エレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、
乗り場に設置され、外部電源を接続することが可能な第1の外部電源接続設備と、
かご内に設置され、前記外部電源を接続することが可能な第2の外部電源接続設備と、を具備し、
前記エレベータ制御装置は、停電時に、前記第1の外部電源接続設備または前記第2の外部電源接続設備に前記外部電源が接続されているとき、前記外部電源の電力を用いてエレベータを運転し、
前記エレベータ制御装置は、前記第2の外部電源接続設備に前記外部電源が接続されているときに、かご内で行先階登録が行われた場合、前記外部電源の電力を用いて、かごを前記行先階登録が示す行先階まで移動させる、
エレベータシステム。
【請求項4】
エレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、
乗り場に設置され、外部電源を接続することが可能な第1の外部電源接続設備と、
かご内に設置され、前記外部電源を接続することが可能な第2の外部電源接続設備と、を具備し、
前記エレベータ制御装置は、停電時に、前記第1の外部電源接続設備または前記第2の外部電源接続設備に前記外部電源が接続されているとき、前記外部電源の電力を用いてエレベータを運転し、
停電時に最寄階までのかご移動に要する電力を生成する予備電源を更に具備し、
停電時に、前記第1の外部電源接続設備または前記第2の外部電源接続設備に前記外部電源が接続されているとき、前記外部電源の電力により前記予備電源が充電され、前記エレベータ制御装置は前記予備電源の電力を用いてエレベータの運転を行う、
エレベータシステム。
【請求項5】
エレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、
乗り場に設置され、外部電源を接続することが可能な第1の外部電源接続設備と、
かご内に設置され、前記外部電源を接続することが可能な第2の外部電源接続設備と、を具備し、
前記エレベータ制御装置は、停電時に、前記第1の外部電源接続設備または前記第2の外部電源接続設備に前記外部電源が接続されているとき、前記外部電源の電力を用いてエレベータを運転し、
停電時に最寄階までのかご移動に要する電力を生成する予備電源を更に具備し、
停電時に、前記第1の外部電源接続設備または前記第2の外部電源接続設備に前記外部電源が接続されているとき、前記エレベータ制御装置は前記外部電源の電力と前記予備電源の電力とを合わせた電力を用いてエレベータの運転を行う、
エレベータシステム。
【請求項6】
前記エレベータ制御装置は、前記外部電源の電力を用いる場合、かごの換気扇の停止、停電灯の使用、低速運転の少なくとも1つを実施することにより、通常時の運転モードよりも電力消費を抑えた運転モードでの運転を行う、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
エレベータ制御装置が実行するエレベータの運転方法であって、
停電時に、乗り場に設置された第1の外部電源接続設備に、持ち運びを容易に行える外部電源が接続されているときかご内に設置された第2の外部電源接続設備に、前記持ち運びを容易に行える外部電源が接続されているときの、いずれの場合も、前記外部電源の電力を調整して前記エレベータ制御装置側へ出力する調整回路から供給される電力を用いてエレベータを運転することを含む、
エレベータの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムおよびエレベータの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータが設置された建物では、地震により停電が発生した場合、エレベータを使用できなくなる。そのような場合、高層階の居住者や高齢者が階段を使って昇り降りをするのは現実的ではない。電気自動車に蓄電された電力を用いて、エレベータを動かすことも提案されているが、その場合は建物に給電スタンドを設置する必要があり、既存の建物では給電スタンドの設置が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-136445号公報
【文献】特許第5882274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題は、停電時に簡易な手段でエレベータを運転することを可能にするエレベータシステムおよびエレベータの運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のエレベータシステムは、エレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、乗り場に設置され、持ち運びを容易に行える外部電源を接続することが可能な第1の外部電源接続設備と、かご内に設置され、前記持ち運びを容易に行える外部電源を接続することが可能な第2の外部電源接続設備と、前記外部電源の電力を調整して前記エレベータ制御装置側へ出力する調整回路と、を具備し、前記エレベータ制御装置は、停電時に、前記第1の外部電源接続設備前記外部電源が接続されているとき前記第2の外部電源接続設備に前記外部電源が接続されているときの、いずれの場合も、前記調整回路から供給される電力を用いてエレベータを運転する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
図2図2は、制御盤10の内部の構成及びその周囲の構成の一例を示す図である。
図3図3は、かご12内における操作盤20の表示部21に表示される情報の一例を示す図である。
図4図4は、制御盤10による動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0008】
(エレベータシステムの構成)
図1は、実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
【0009】
エレベータの昇降路1内には、制御盤(エレベータ制御装置)10、巻上機11、かご12、カウンターウェイト(釣り合い重り)13等が設けられている。そのほか、昇降路1内には、後述する外部電源Eの給電に寄与するテールコード33、外部電源用配線53、外部電源用調整回路60も設けられている。これらの詳細については、後で述べる。
【0010】
制御盤10は、エレベータの運転を制御するエレベータ制御装置に相当する。巻上機11は、制御盤10からの電力で駆動され、かご12及びカウンターウェイト13を吊り下げたロープを移動させることでかご12を昇降させる。
【0011】
エレベータの各階床Fの乗り場には、利用者がかごの呼び登録を行うための操作盤40が設置されるほか、外部電源Eを接続することが可能な第1の外部電源接続設備50が設置される。第1の外部電源接続設備50は、例えば操作盤40の下方や乗り場ドアの近傍に設置される。
【0012】
ここでいう外部電源Eとは、当該建物において例えば防災グッズとして備えている小型発電機やポータブル電源装置(バッテリ)などの持ち運びを容易に行える電源をいう。本実施形態では、外部電源Eは、停電時にエレベータを運転するための電源として使用される。
【0013】
外部電源Eは、後述する予備電源よりも発電量が大きく、予備電源よりも長時間にわたってエレベータを運転することが可能である。ただし、外部電源Eの電力は、省電力の観点から、停電時に常にエレベータに供給されるのではなく、人がエレベータの使用を要するときのみエレベータに供給されて使用されることが望ましい。但し、外部電源Eの電力量に余裕がある場合はこの限りではない。
【0014】
外部電源Eは、階床ごとに1つだけでなく複数個設けられていてもよく、これに応じて第1の外部電源接続設備50側も複数個の外部電源Eを接続できるように構成されていてもよい。そのようにすると、停電時にエレベータを運転できる時間をより長くすることができる。例えば集合住宅のように多くの人が居住する建物の場合、外部電源Eは各人が所有するものであってもよいし、居住者が共用するものであってもよい。その場合、外部電源Eは建物内の予め定められた場所に設置されていてもよい。
【0015】
階床Fごとに設置される第1の外部電源接続設備50は、単相100V用の外部電源接続部51およびスイッチ52を備えている。外部電源接続部51には、プラグTが繋がっている。このプラグTは、外部電源Eを直接接続するために使用される。プラグTは複数の外部電源Eを接続できるように複数個備えられてもよい。スイッチ52は、外部電源Eからエレベータへの電力供給を有効(オン)の状態にしたり無効(オフ)の状態にしたりするものであり、人が操作することによりオンの状態とオフの状態とを切り替えることができるようになっている。
【0016】
各階床Fに設置される個々の第1の外部電源接続設備50は、外部電源用配線53に電気的に接続される。いずれかの階床Fの第1の外部電源接続設備50において外部電源EがプラグTに接続され、スイッチ52がオンの状態にされると、外部電源Eの電力が外部電源接続部51から外部電源用配線53を通じて外部電源用調整回路60へ給電される。
【0017】
一方、かご12内には、利用者がドアの開閉や行先階登録を行うための操作盤20が設置されるほか、外部電源Eを接続することが可能な第2の外部電源接続設備30が設置される。第2の外部電源接続設備30は、例えば操作盤20の下方やかごドアの近傍に設置される。
【0018】
かご12内に設置される第2の外部電源接続設備30は、単相100V用の外部電源接続部31およびスイッチ32を備えている。外部電源接続部31には、プラグTが繋げられている。このプラグTは、前述した第1の外部電源接続設備50の場合と同様、外部電源Eを直接接続するために使用される。プラグTは複数の外部電源Eを接続できるように複数個備えられてもよい。スイッチ32は、外部電源Eからエレベータへの電力供給を有効(オン)の状態にしたり無効(オフ)の状態にしたりするものであり、人が操作することによりオンの状態とオフの状態とを切り替えることができる。
【0019】
かご12内に設置される第2の外部電源接続設備30は、かご12の下側に繋げられたテールコード33に電気的に接続される。第2の外部電源接続設備30において外部電源EがプラグTに接続され、スイッチ32がオンの状態にされると、その外部電源Eの電力が外部電源接続部31からテールコード33を通じて外部電源用調整回路60へ給電される。
【0020】
外部電源用調整回路60は、外部電源用配線53またはテールコード33を通じて供給される外部電源Eの電力を、制御盤10でのエレベータ制御に適する電源電圧へ変換して(昇圧・整流を含む調整を行って)制御盤10側へ出力するものである。
【0021】
制御盤10は、停電時に、第1の外部電源接続設備50または第2の外部電源接続設備30に外部電源Eが接続されているとき、その外部電源Eの電力を用いてエレベータを運転する機能を有する。
【0022】
具体的には、停電時に第1の外部電源接続設備50または第2の外部電源接続設備30に外部電源Eが接続され、その外部電源Eの電力が外部電源用配線53またはテールコード33を通じて外部電源用調整回路60に供給されると、外部電源用調整回路60により調整された電力が制御盤10に供給される。制御盤10はその電力を用いてエレベータを運転することになる。
【0023】
制御盤10は、停電時に外部電源Eの電力を用いてエレベータを運転する場合、かご12に備えられる図示しない換気扇の停止、停電灯の使用、低速運転の少なくとも1つを実施することにより、通常時の運転モード(通常運転モード)よりも電力消費を抑えた運転モード(外部電源運転モード)での運転を行う。外部電源運転モードの際に換気扇の停止、停電灯の使用、低速運転のいずれを実施すべきかについては、予め設定しておくものとする。ただし、ガスの排気を伴うタイプの外部電源Eをかご12内の第2の外部電源接続設備30に接続することを許容する場合は、換気扇は停止させないようにする。
【0024】
(かご呼び登録時の運転)
制御盤10は、ある階床Fの乗り場に設置される第1の外部電源接続設備50に外部電源Eが接続されているときに(本例では、第1の外部電源接続設備50のプラグTが外部電源Eに接続されているときに)、その階床Fの乗り場でかご12の呼び登録が行われた場合、その外部電源Eの電力を用いて、かご12を呼び登録が行われた階床まで外部電源運転モードで移動させる。
【0025】
(行先階登録時の運転)
制御盤10は、かご12内に設置される第2の外部電源接続設備30に外部電源Eが接続されているときに(本例では、第2の外部電源接続設備30のプラグTが外部電源Eに接続されているときに)、かご12内で行先階登録が行われた場合、その外部電源Eの電力を用いて、かご12を行先階登録が示す行先階まで外部電源運転モードで移動させる。
【0026】
(停電時における外部電源Eの使用手順の概要)
停電時における外部電源Eの使用手順の概要を以下に示す。
【0027】
1)停電時、かご12は最寄階に着床し、エレベータは休止状態になる。ここで利用者がある階床Fの乗り場において、例えば自身が所有する外部電源Eを第1の外部電源接続設備50に接続して(第1の外部電源接続設備50のプラグTを外部電源Eに接続して)、スイッチ52をオンの状態にし、操作盤40を操作してエレベータの呼び登録を行う。
【0028】
2)かご12は上記呼び登録に応じて呼び登録が行われた階床まで移動する。
【0029】
3)利用者がいる階床Fにかご12が到着すると、利用者は外部電源Eを第1の外部電源接続設備50から取り外し、外部電源Eをかご12内に持ち運び、外部電源Eを第2の外部電源接続設備30に接続して(第2の外部電源接続設備30のプラグTを外部電源Eに接続して)、スイッチ32をオンの状態にし、操作盤20を操作して行先階登録を行う。
【0030】
4)かご12は上記行先階登録に応じて行先階登録が示す行先階(目的階)まで移動する。
【0031】
5)かご12が目的階に到着すると、利用者は外部電源Eを第2の外部電源接続設備30から取り外し、外部電源Eを持って降車する。これによりエレベータは休止状態となる。
【0032】
なお、上記した使用手順は一例であって、この例に限定されるものではない。例えば、上記3)において、外部電源Eを第1の外部電源接続設備50から取り外すことなく、新たな外部電源Eをかご12内に持ち運び、その新たな外部電源Eを第2の外部電源接続設備30に接続するようにしてもよい。
【0033】
(制御盤10の内部の構成及びその周囲の構成の例)
図2は、制御盤10の内部の構成及びその周囲の構成の一例を示す図である。ここでは、図1と共通する要素には、同一の符号を付している。ただし、図2に示される例は一例であって、この例に限定されるものではない。適宜、変形して実施してもよい。
【0034】
制御盤10は、法規上設置が義務付けられている予備電源70を備えている。予備電源70は、地震による停電時に最寄階までのかご移動を目的として使用される電源であり、最寄階までのかご移動に要する電力を生成する。図2の例では、予備電源70が制御盤10の外側に配置される場合の例が示されているが、この例に限定されるものではない。予備電源70は制御盤10の内側に配置されてもよい。
【0035】
制御盤10は、通常時は、外部から供給される交流電源Cの電力を用いて、エレベータを通常運転モードで運転する。このとき予備電源70は、交流電源Cの余剰な電力を用いて充電されてもよい。一方、制御盤10は、地震等による停電時は、通常運転モードでの運転をやめ、予備電源70を用いて、かご12を最寄階まで移動させてエレベータを休止状態にする。
【0036】
さらに、制御盤10は、かご12が最寄階に着床したあと、外部電源Eの電力が外部電源用調整回路60へ供給された場合には、外部電源用調整回路60により調整された電力を用いて、エレベータを外部電源運転モードで運転する。
【0037】
外部電源運転モードでの運転には、予備電源70を使用してもよい。予備電源70に余剰電力が残っている場合には有効に利用できる。外部電源運転モードでの運転に予備電源70を使用する方式には、以下の2つが挙げられる。
【0038】
a)停電時に、第1の外部電源接続設備50または第2の外部電源接続設備30に外部電源Eが接続されているとき、その外部電源Eの電力(具体的には、外部電源用調整回路60による調整後の電力)により予備電源70が充電され、制御盤10は予備電源70の電力を用いてエレベータの運転を行う。
【0039】
b)停電時に、第1の外部電源接続設備50または第2の外部電源接続設備30に外部電源Eが接続されているとき、制御盤10は、その外部電源Eの電力(具体的には、外部電源用調整回路60による調整後の電力)と予備電源70の電力とを合わせた電力を用いてエレベータの運転を行う。
【0040】
例えば予備電源70が外部電源用調整回路60からの充電を許容するものである場合は、a)の方式を採用することができる。一方、予備電源70が外部電源用調整回路60からの充電を許容しないものである場合は、b)の方式を採用すればよい。
【0041】
制御盤10は、受電部81、給電部82、駆動回路部83、電圧検出部84、制御部85、および記憶部86を備えている。
【0042】
受電部81は、商用電源Cからの電力、予備電源70からの電力、外部電源用調整回路60からの電力をそれぞれ受電する。
【0043】
給電部82は、受電部81により受電された電力を用いて、駆動回路部83への電力供給やその他各部への電力供給を行う。
【0044】
駆動回路部83は、コンバータ、平滑コンデンサ、およびインバータを含み、巻上機11へ駆動電力を供給する。
【0045】
電圧検出部84は、受電部81に供給される交流電源Cからの電力、予備電源70からの電力、外部電源用調整回路60からの電力のそれぞれの電圧(又は電流)を検出する。
【0046】
制御部85は、エレベータの運転に使用する制御プログラムを実行するプロセッサに相当するものであり、制御盤10全体の動作を司る。
【0047】
この制御部85は、例えば電圧検出部84により検出される各部の電圧(又は電流)に基づき、交流電源Cからの電力供給の有無(停電の有無)を検知したり、予備電源70の余剰電力の有無を検知したり、外部電源用調整回路60からの電力供給の有無を検知したりする機能を有する。また、制御部85は、それらの検知結果に基づき、通常運転モードでの運転や外部電源運転モードでの運転を選択し、選択したモードに対応する運転を行うべく受電部81、給電部82、および駆動回路部83を制御する機能を有する。
【0048】
記憶部86は、制御部85がエレベータの運転に使用する制御プログラムや各種の情報(現在の運転モードを示す情報、現在使用中の電源の種類を示す情報など)を記憶するものである。
【0049】
(操作盤20の表示部21の例)
図3は、かご12内における操作盤20の表示部21に表示される情報の一例を示す図である。ただし、図3に示される例は一例であって、この例に限定されるものではない。適宜、変形して実施してもよい。
【0050】
図3に示されるように、操作盤20の表示部21には、かご12の現在の昇降状態や階床の情報が表示されるほか、外部電源が使用中であるか否かを示す状態情報22が表示されるようにしてもよい。
【0051】
例えば、かご12内の第2の外部電源接続設備30に外部電源Eが接続され、外部電源Eの電力を用いた運転が行われているとき、図3に示されるように「外部電源運転中」といった状態情報22が表示されるようにしてもよい。外部電源Eが使用されていないときは、状態情報22は表示されないようにしてもよい。
【0052】
(制御盤10の動作の例)
次に、図4を参照して、制御盤10による動作の一例を説明する。ただし、図4に示される例は一例であって、この例に限定されるものではない。適宜、変形して実施してもよい。
【0053】
制御盤10は、通常時は、外部から供給される交流電源Cの電力を用いて、エレベータを通常運転モードで運転している(ステップS1)。
【0054】
また、制御盤10は、地震等による停電の有無を監視している(ステップS2)。停電が発生なければ(ステップS2のNO)、ステップS1の処理を繰り返し、一方、停電が発生した場合(ステップS2のYES)、制御盤10は、通常運転モードでの運転をやめ、予備電源70を用いて、かご12を最寄階まで移動させ(ステップS3)、エレベータを休止状態にする(ステップS4)。
【0055】
このあと、停電が解消された場合(ステップS5のYES)、ステップS1からの処理を繰り返す。一方、停電が解消されない場合(ステップS5のNO)、ステップS6へ進む。
【0056】
制御盤10は、外部電源用調整回路60から供給される電力(電圧)を監視することにより、外部電源Eの接続の有無を判定する(ステップS6)。外部電源Eが接続されなければ(ステップS6のNO)、ステップS4からの処理を繰り返す。一方、外部電源Eが接続された場合(ステップS6のYES)、制御盤10は、外部電源用調整回路60から供給される電力を用いて、エレベータを外部電源運転モードで運転する(ステップS7)。
【0057】
この後、制御盤10は、外部電源用調整回路60から供給される電力(電圧)を監視することにより、外部電源Eの取り外しの有無を判定する(ステップS6)。外部電源Eが取り外されなければ(ステップS8のNO)、ステップS7の処理を繰り返す。一方、外部電源Eが取り外された場合(ステップS8のYES)、ステップS4からの処理を繰り返す。
【0058】
<まとめ>
以上詳述したように、実施形態によれば、停電時に簡易な手段でエレベータを運転することが可能になる。
【0059】
例えば、停電時に小型発電機やポータブル電源装置(バッテリ)などの持ち運びを容易に行える外部電源でエレベータを運転することができるため、電気自動車等から給電するための建物側設備(給電スタンド等)が不要であり、既存の建物でも導入が容易となる。また、高価なリチウムイオンバッテリ等の電源をエレベータ側で常備しておかなくてもよく、建物や個人で所有している簡易な外部電源を活用することで、停電時の運転が可能となる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1…昇降路、10…制御盤、11…巻上機、12…かご、13…カウンターウェイト、
20…操作盤、21…表示部、22…状態情報、30…外部電源接続設備、31…外部電源接続部、32…スイッチ、33…テールコード、40…操作盤、50…外部電源接続設備、51…外部電源接続部、52…スイッチ、53…外部電源用配線、60…外部電源用調整回路、70…予備電源、81…受電部、82…給電部、83…駆動回路部、84…電圧検出部、85…制御部、86…記憶部、C…商用電源、E…外部電源、F…階床、T…プラグ。
【要約】
【課題】 停電時に簡易な手段でエレベータを運転できるようにすること。
【解決手段】 実施形態のエレベータシステムは、エレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、乗り場に設置され、外部電源を接続することが可能な第1の外部電源接続設備と、かご内に設置され、前記外部電源を接続することが可能な第2の外部電源接続設備と、を具備し、前記エレベータ制御装置は、停電時に、前記第1の外部電源接続設備または前記第2の外部電源接続設備に前記外部電源が接続されているとき、前記外部電源の電力を用いてエレベータを運転する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4