(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】積層体および複合材製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/28 20060101AFI20231218BHJP
B29C 70/30 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B32B5/28 A
B29C70/30
(21)【出願番号】P 2022502752
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008205
(87)【国際公開番号】W WO2021171529
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】可児 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 了太
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特許第4987002(JP,B2)
【文献】特表2014-504566(JP,A)
【文献】国際公開第2010/087443(WO,A1)
【文献】特開2010-150685(JP,A)
【文献】特開2014-208414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 43/00-43/58,
70/00-70/88
B29B 11/14-11/16,
15/08-15/14
C08J 5/04- 5/10,
5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1長手方向および第1短手方向を有するとともに前記第1長手方向
と同一または異なる方向である第1繊維方向に配向された第1繊維基材と第1樹脂材料とを含む複数の第1複合シートと、
第2長手方向および第2短手方向を有するとともに前記第2長手方向
と同一または異なる方向である第2繊維方向に配向された第2繊維基材と第2樹脂材料とを含む複数の第2複合シートと、を備え、
複数の前記第1複合シートを含む第1層に接触した状態で、複数の前記第2複合シートを含む第2層が積層されており、
複数の前記第1複合シートは、隣り合う一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向とが交差するように
一定の方向に曲がる曲線
に沿って延びる配列方向に沿って配置され、かつ一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向の端部と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向の端部とが厚さ方向に重ならない状態で前記配列方向に近接しており、
複数の前記第2複合シートは、隣り合う一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向とが交差するように前記配列方向に沿って配置され、かつ一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向の端部と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向の端部とが前記厚さ方向に重ならない状態で前記配列方向に近接して
おり、
複数の前記第1複合シートの端部が配置される複数の第1端部位置と、複数の前記第2複合シートの端部が配置される複数の第2端部位置とは、前記配列方向において異なる位置である積層体。
【請求項2】
一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向とが交差する交差角度は、
0度以上かつ30度以下である請求項
1に記載の積層体。
【請求項3】
一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向とが交差する交差角度は、
0度以上かつ30度以下である請求項
2に記載の積層体。
【請求項4】
第1繊維基材と第1樹脂材料を含む複数の第1複合シートを含む第1層に接触した状態で、
第2繊維基材と第2樹脂材料を含む複数の第2複合シートを含む第2層を積層
して積層
体を形成し、前記積層体を硬化させて複合材を製造する複合材製造方法であって、
前記第1複合シートは、第1長手方向および第1短手方向を有するとともに前記第1長手方向
と同一または異なる方向である第1繊維方向に配向された第1繊維基材と第1樹脂材料とを含むシート状に形成され、
前記第2複合シートは、第2長手方向および第2短手方向を有するとともに前記第2長手方向
と同一または異なる方向である第2繊維方向に配向された第2繊維基材と第2樹脂材料とを含むシート状に形成され、
前記第1複合シートおよび前記第2複合シートを含む複数層の複合シートを積層して前記積層体を形成する積層工程と、
前記積層工程で積層された前記積層体を賦形する賦形工程と、
前記積層体に含まれる前記第1複合シートおよび前記第2複合シートを硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程により硬化した前記積層体の端部を切除するトリミング工程と、を備え、
前記積層工程は、
複数の前記第1複合シートを、隣り合う一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向とが交差するように
一定の方向に曲がる曲線に沿って延びる配列方向に沿って配置し、かつ一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向の端部と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向の端部とが厚さ方向に重ならない状態で前記配列方向に近接させて配置する第1積層工程と、
複数の前記第2複合シートを、隣り合う一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向とが交差するように前記配列方向に沿って配置し、かつ一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向の端部と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向の端部とが前記厚さ方向に重ならない状態で前記配列方向に近接させて配置する第2積層工程と、を備え
、
2以上の所定層数の前記複合シートが積層されたことに応じて前記積層工程が終了して前記賦形工程が開始され、
複数の前記第1複合シートの端部が配置される複数の第1端部位置と、複数の前記第2複合シートの端部が配置される複数の第2端部位置とは、前記配列方向において異なる位置である
複合材製造方法。
【請求項5】
一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向とが交差する交差角度は、
0度以上かつ30度以下である請求項
4に記載の
複合材製造方法。
【請求項6】
一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向とが交差する交差角度は、
0度以上かつ30度以下である請求項
5に記載の
複合材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の第1複合シートを含む第1層に接触した状態で複数の第2複合シートを含む第2層が積層された積層体および複合材製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維基材と樹脂材料を含む複合シートを積層した積層体が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、面内方向に曲線状に延びる複合シートの部品を製造するために、平坦な矩形状の積層体を所望の形状に切断して切り抜く方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される方法では、面内方向に曲線状に延びる複合シートを切り抜く際に不要となる部分が発生するため、平坦な矩形状の積層体の全てを有効に活用することができず、製造コストが増大してしまう。
【0005】
また、面内方向に曲線状に延びる複合シートの部品を製造するために、例えば、直線状に延びる複合シートを用いる場合、複合シートを曲線状に曲げながら積層する必要がある。この場合、複合シートが伸び縮みしにくい性質を有するため、複合シートを積層する際に複合シートの面内に変形が生じて皺が発生してしまう可能性がある。そして、皺が発生した複合シートを複数層に渡って積層すると、積層体の製造不良となってしまう。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、面内方向に曲線状に延びる形状を有するとともに製造コストが低くかつ製造品質の高い積層体および複合材製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る積層体は、第1長手方向および第1短手方向を有するとともに前記第1長手方向に対して第1所定角度を有する第1繊維方向に配向された第1繊維基材と第1樹脂材料とを含む複数の第1複合シートと、第2長手方向および第2短手方向を有するとともに前記第2長手方向に対して第2所定角度を有する第2繊維方向に配向された第2繊維基材と第2樹脂材料とを含む複数の第2複合シートと、を備え、複数の前記第1複合シートを含む第1層に接触した状態で、複数の前記第2複合シートを含む第2層が積層されており、複数の前記第1複合シートは、隣り合う一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向の端部と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向の端部とが厚さ方向に重ならない状態で近接し、かつ一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向とが交差するように曲線状の配列方向に沿って配置されており、複数の前記第2複合シートは、隣り合う一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向の端部と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向の端部とが前記厚さ方向に重ならない状態で近接し、かつ一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向とが交差するように前記配列方向に沿って配置されている。
【0008】
本開示の一態様に係る積層方法は、複数の第1複合シートを含む第1層に接触した状態で、複数の第2複合シートを含む第2層を積層する積層方法であって、前記第1複合シートは、第1長手方向および第1短手方向を有するとともに前記第1長手方向に対して第1所定角度を有する第1繊維方向に配向された第1繊維基材と第1樹脂材料とを含むシート状に形成され、前記第2複合シートは、第2長手方向および第2短手方向を有するとともに前記第2長手方向に対して第2所定角度を有する第2繊維方向に配向された第2繊維基材と第2樹脂材料とを含むシート状に形成され、複数の前記第1複合シートを、隣り合う一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向の端部と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向の端部とが厚さ方向に重ならない状態で近接し、かつ一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向とが交差するように配列方向に沿って配置する第1積層工程と、複数の前記第2複合シートを、隣り合う一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向の端部と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向の端部とが前記厚さ方向に重ならない状態で近接し、かつ一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向とが交差するように前記配列方向に沿って配置する第2積層工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、面内方向に曲線状に延びる形状を有するとともに製造コストが低くかつ強度が高い積層体および複合材製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係るパネル構造体を示す斜視図である。
【
図2】複数の第1複合シートを積
層面に積載した積層体を示す平面図である。
【
図5】隣り合う一方の第1複合シートの第1長手方向と他方の第1複合シートの第1長手方向との関係を示す図である。
【
図6】複数の第2複合シートを第1複合シートに積層した積層体を示す平面図である。
【
図9】隣り合う一方の第2複合シートの第2長手方向と他方の第2複合シートの第2長手方向との関係を示す図である。
【
図10】本実施形態の積層方法を示すフローチャートである。
【
図11】第6層の複数の第6複合シートを積層した積層体を示す平面図である。
【
図13】本実施形態の複合材の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の一実施形態に係る積層体100および積層体100の積層方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係るパネル構造体
10を示す斜視図である。本実施形態のパネル構造体
10は、積層体100から製造されるフレーム20を備える。
【0012】
本実施形態のパネル構造体
10は、航空機の円筒状の胴体を構成する構造体である。
図1に示すように、面板17と、面板17の一方の面に互いに平行に設けられている複数のリブ12と、リブ12の延びている方向に対して交差する方向で互いに平行に設けられている複数のフレーム20とを有する。本実施形態のフレーム20は、繊維基材と樹脂材料とを含む複合シートを複数層(例えば、20層以上)に渡って積層した平面状の積層体をZ型に賦形して製造されたものである。なお、
図1に示すフレーム20はZ型であるが、C型等の他の形状であってもよい。
【0013】
リブ12が延びている方向をリブ方向Xとし、フレーム20が延びている方向をフレーム方向(材軸方向)Yとする。リブ12は、
図1に示すように、面板17の一方の面から垂直に立ち上がっているリブ本体13と、リブ本体13の端部から面板17と平行な方向に延びているフランジ部14と、を有している。すなわち、リブ12は、リブ方向Xに垂直な断面の形状がL型を成し、Lの一方の腕部分がリブ本体13を成し、Lの他方の腕部分がフランジ部14を成している。
【0014】
フレーム20は、
図1に示すように、面板17の一方の面から立ち上がっているフレーム本体23と、面板17に対向し、フレーム本体23の面板17側の端部からリブ方向Xの一方の側に延びている第一フランジ部21と、面板17に対向するとともにフレーム本体23の面板17から遠い側の端部からリブ方向Xの他方の側に延びている第二フランジ部22と、を有する。すなわち、フレーム20は、フレーム方向Yに垂直な断面の形状がZ型を成し、Zの一方の腕部分が第一フランジ部21を成し、Zの他方の腕部分が第二フランジ部22を成している。
【0015】
図1に示すように、フレーム20は、フレーム本体23の面内方向(フレーム本体23の面と水平な方向)に曲線状に延びる形状を有する。すなわち、フレーム20は、パネル構造体を組み合わせて形成される略円筒状の航空機の胴体(図示略)の中心軸を中心として円弧状の形状を有する。
【0016】
次に、本実施形態の積層体100について、図面を参照して説明する。本実施形態の積層体100は、複数の複合シートを曲線状の配列方向ADに沿って配置して複合シートの層を形成し、複合シートの層を複数層に渡って積層したものである。
【0017】
本実施形態は、積層体100の一例として、1層を6枚の複合シートを配列方向ADに沿って連続的に配置したものとし、複合シートの層を6層に積層したものを示すが、他の態様であってもよい。例えば、1層を6枚とは異なる任意の枚数の複合シートで構成してもよく、積層体を6層とは異なる任意の層数の複合シートで構成してもよい。
【0018】
積層体100として積層される複合シートは、繊維基材(例えば、炭素繊維,ガラス繊維)と樹脂材料とを含むシート状の材料である。樹脂材料としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれかを用いることができる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、シアネートエステル、ポリイミド等である。
【0019】
熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)等である。
【0020】
図2は、複数の第1複合シート110を積層面Suに積載した積層体を示す平面図である。
図3は、
図2に示す積層体100の部分拡大図である。
図4は、
図3に示す第1複合シート110の平面図である。
図5は、隣り合う一方の第1複合シート110cの第1長手方向LD1cと他方の第1複合シート110dの第1長手方向LD1dとの関係を示す図である。本実施形態の積層体100は、最終的に6層で積層されるものであるため、
図2および
図3に示す積層体100は、積層が完了する前の段階のものである。
【0021】
図2に示すように、本実施形態の積層体100は、隣り合う一方の第1複合シート110の長手方向(第1長手方向)の端部と他方の第1複合シート110の長手方向(第1長手方向)の端部とが厚さ方向(
図12に示す厚さ方向TD)に重ならない状態で近接して配置されたものである。第1複合シート110は、繊維基材(第1繊維基材)と樹脂材料(第1樹脂材料)を含むシート状の材料である。
図2に示す積層面Suは、複数の第1複合シート110を含む複数層の複合シートを積層するために複合シートが設置される面である。厚さ方向とは、積層面Suに直交する方向であり、複数層の複合シートが積層されることにより積層体100の厚みが増す方向である。
【0022】
図2に示す例では、複数の第1複合シート110は、点Oを中心とした半径R1の円弧上を通過する配列方向ADに沿って、第1複合シート110a,第1複合シート110b,第1複合シート110c,第1複合シート110d,第1複合シート110e,第1複合シート110fの順に時計回りに配置される。
【0023】
本実施形態において、配列方向ADは、点Oを中心とした半径R1の円弧上を通過する方向としたが、他の態様であってもよい。配列方向ADは、例えば、一定の方向に曲がる曲線に沿って延びる方向など、他の任意の曲線に沿った方向としてもよい。
【0024】
図2に示すように、複数の第1複合シート110は、位置P11~P17を端部位置(第1端部位置)とするように配置される。第1複合シート110aの長手方向の端部は位置P11と位置P12に配置され、第1複合シート110bの長手方向の端部は位置P12と位置P13に配置され、第1複合シート110cの長手方向の端部は位置P13と位置P14に配置される。第1複合シート110dの長手方向の端部は位置P14と位置P15に配置され、第1複合シート110eの長手方向の端部は位置P15と位置P16に配置され、第1複合シート110fの長手方向の端部は位置P16と位置P17に配置される。
【0025】
図3に示すように、第1複合シート110cは、配列方向ADに沿った第1長手方向LD1cおよび第1長手方向LD1cに第1複合シート110cの面内において直交する第1短手方向SD1cを有する。第1複合シート110dは、配列方向ADに沿った第1長手方向LD1dおよび第1長手方向LD1dに直交する第1短手方向SD1dを有する。第1複合シート110eは、配列方向ADに沿った第1長手方向LD1eおよび第1長手方向LD1eに直交する第1短手方向SD1eを有する。第1複合シート110a,第1複合シート110b,第1複合シート110e,第1複合シート110fについても、第1長手方向LD1と第1長手方向LD1に直交する第1短手方向SD1を有する。
【0026】
図4に示すように、第1複合シート110dは、第1短手方向SD1dの一方側(点Oに対する内周側)における第1長手方向LD1dの長さよりも第1短手方向SD1dの他方側(点Oに対する外周側)における第1長手方向LD1dの長さが長く等脚の台形形状となっている。他の第1複合シート110(110a,110b,110c,110e,110f)も同じ形状となっている。
【0027】
本実施形態の積層体100は、等脚の台形形状となる第1複合シート110の第1長手方向LD1の端部の辺を隣接する他の第1複合シート110の第1長手方向LD1の端部の辺の位置と一致させて配列方向ADに沿って隙間なく配置したものである。
【0028】
図4に示す第1複合シート110dの表面の線は、第1複合シート110dに含まれる繊維基材が配向される繊維方向(第1繊維方向FD1)を示す。
図5に示すように、第1複合シート110dの第1繊維方向FD1dは、第1長手方向LD1dに対して所定角度θ(第1所定角度)を有する。
図4に示す第1所定角度θは90度である。
【0029】
図3に示すように、本実施形態の積層体100は、第1層目を構成する複数の第1複合シート110の第1長手方向(LD1)に対する第1繊維方向FD1を同一の角度(90度)としている。本実施形態の積層体100は、第2~6層目についても、各層を構成する複数の複合シートの長手方向に対する繊維方向を同一の角度としている。
【0030】
本実施形態では、第1層目に積層する第1複合シート110の第1繊維方向FD1を第1長手方向LD1に対して90度の角度を有するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、第1層目に積層する第1複合シート110の第1繊維方向FD1と第1長手方向LD1dとがなす角度(第1所定角度)は、0度(同一方向),45度,-45度等の任意の角度としてもよい。
【0031】
図2に示すように、第1複合シート110a,110b,110c,110d,110e,110fのそれぞれは、隣り合う一方の第1複合シート110の第1長手方向LD1と他方の第1複合シート110の第1長手方向LD1とが交差するように曲線状の配列方向ADに沿って配置されている。
図3および
図5に示すように、例えば、隣り合う一方の第1複合シート110dの第1長手方向LD1dと他方の第1複合シート110cの第1長手方向LD1cとが交差角度αで交差するように配置されている。
【0032】
ここで交差角度αは、30度以下に設定するのが好ましく、より好ましくは22.5度以下である。本実施形態の積層体100は、円弧状の配列方向ADに沿って複数の複合シートを配置するものであるが、各複合シートは円弧状に形成されたものではなく長手方向に沿って直線状に形成されている。そのため、複合シートの長手方向と配列方向ADとは完全には一致せずに近似したものとなる。
【0033】
交差角度αが大きくなると複合シートの長手方向と配列方向ADとの近似度が低下するため、長手方向と配列方向ADとの近似度を確保するために、交差角度αに上限を設定するのが好ましい。交差角度αを30度以下に設定することで、隣り合う一対の複合シートにおける長手方向の変化を30度以下に抑制し、長手方向と配列方向ADとの近似度を確保することができる。
【0034】
次に、積層面Suに配置された複数の第1複合シート110に接触した状態で複数の第2複合シート120を積層した積層体100について図面を参照して説明する。
【0035】
図6は、複数の第2複合シート120を複数の第1複合シート110に積層した積層体100を示す平面図である。
図7は、
図6に示す積層体100の部分拡大図である。
図8は、
図7に示す第2複合シート120の平面図である。
図9は、隣り合う一方の第2複合シート120cの第2長手方向LD2cと他方の第2複合シート120dの第2長手方向LD2dとの関係を示す図である。本実施形態の積層体100は、最終的に6層で積層されるものであるため、
図6および
図7に示す積層体100は、積層が完了する前の段階のものである。
【0036】
図6に示すように、本実施形態の積層体100は、隣り合う一方の第2複合シート120の長手方向(第2長手方向)の端部と他方の第2複合シート120の長手方向(第2長手方向)の端部とが厚さ方向(
図12に示す厚さ方向TD)に重ならない状態で近接して配置されたものである。第2複合シート120は、繊維基材(第2繊維基材)と樹脂材料(第2樹脂材料)を含むシート状の材料である。
【0037】
図6に示す例では、複数の第2複合シート120は、点Oを中心とした半径R1の円弧上を通過する配列方向ADに沿って、第2複合シート120a,第2複合シート120b,第2複合シート120c,第2複合シート120d,第2複合シート120e,第2複合シート120fの順に時計回りに配置される。
【0038】
図6に示すように、複数の第2複合シート120は、位置P21~P27を端部位置(第2端部位置)とするように配置される。第2複合シート120aの長手方向の端部は位置P21と位置P22に配置され、第2複合シート120bの長手方向の端部は位置P22と位置P23に配置され、第2複合シート120cの長手方向の端部は位置P23と位置P24に配置される。第2複合シート120dの長手方向の端部は位置P24と位置P25に配置され、第2複合シート120eの長手方向の端部は位置P25と位置P26に配置され、第2複合シート120fの長手方向の端部は位置P26と位置P27に配置される。
【0039】
図6に示すように、複数の第1複合シート110の端部が配置される配列方向ADにおける複数の位置P11~P17は、複数の第2複合シート120の端部が配置される配列方向ADにおける複数の位置P21~P27とは異なる位置である。位置P11~P17と位置P21~P27を異ならせることで、複数の第1複合シート110からなる第1層における第1複合シート110の切れ目となる位置と、複数の第2複合シート120からなる第2層における第2複合シート120の切れ目となる位置とが異なった位置となる。そのため、これらの位置を一致させる場合に比べ、積層体100から製造される構造体の強度を高めることができる。
【0040】
図7に示すように、第2複合シート120cは配列方向ADに沿った第2長手方向LD2cおよび第2短手方向SD2cを有し、第2複合シート120dは配列方向ADに沿った第2長手方向LD2dおよび第2短手方向SD2dを有し、第2複合シート120eは配列方向ADに沿った第2長手方向LD2eおよび第2短手方向SD2eを有する。第2複合シート120a,第2複合シート120b,第2複合シート120e,第2複合シート120fについても、第2長手方向LD2と第2短手方向SD2を有する。
【0041】
図8に示すように、第2複合シート120dは、第2短手方向SD2dの一方側(点Oに対する内周側)における第2長手方向LD2dの長さよりも第2短手方向SD2dの他方側(点Oに対する外周側)における第2長手方向LD2dの長さが長く等脚の台形形状となっている。他の第2複合シート120(120a,120b,120c,120e,120f)も同じ形状となっている。
【0042】
本実施形態の積層体100は、等脚の台形形状となる第2複合シート120の第2長手方向LD2の端部の辺を隣接する他の第2複合シート120の第2長手方向LD2の端部の辺の位置と一致させて配列方向ADに沿って隙間なく配置したものである。
【0043】
図8に示す第2複合シート120dの表面の線は、第2複合シート120dに含まれる繊維基材が配向される繊維方向(第2繊維方向FD2)を示す。
図8に示すように、第2複合シート120dの第2繊維方向FD2dは、第2長手方向LD2dと同じ方向である。すなわち、第2繊維方向FD2dと第2長手方向LD2dとがなす角度(第2所定角度)は0度である。
【0044】
本実施形態では、第2層目に積層する第2複合シート120の第2繊維方向FD2を第2長手方向LD2に対して0度の角度を有するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、第2層目に積層する第2複合シート120の第2繊維方向FD2dと第2長手方向LD2dとがなす角度(第2所定角度)は、90度,45度,-45度等の任意の角度としてもよい。
【0045】
図6に示すように、第2複合シート120a,120b,120c,120d,120e,120fのそれぞれは、隣り合う一方の第2複合シート120の第2長手方向LD2と他方の第2複合シート120の第2長手方向LD2とが交差するように曲線状の配列方向ADに沿って配置されている。
図7および
図9に示すように、例えば、隣り合う一方の第2複合シート120dの第2長手方向LD2dと他方の第2複合シート120cの第2長手方向LD2cとが交差角度αで交差するように配置されている。交差角度αは、第1層において、隣り合う一方の第1複合シート110の第1長手方向LD1と他方の第1複合シート110の第1長手方向LD1とが交差する交差角度と同じである。
【0046】
ここで、
図10を参照して本実施形態の積層方法について説明する。
図10は、本実施形態の積層方法を示すフローチャートである。
ステップS101でn=1が設定され、ステップS102で第n層目の複数の複合シートが積層される。
【0047】
第n層目の複数の複合シートが積層された後、ステップS103で積層が完了したかどうかが判定されてNOであればステップS104へ処理を進め、YESであれば本フローチャートの処理を終了する。ステップS104では、n=n+1が設定されて次の層の積層がステップS102で行われる。
【0048】
以上のようにして複数の第1複合シート110を含む第1層(
図12のLY1)に接触した状態で、複数の第2複合シート120を含む第2層(
図12のLY2)が積層される。第2層の上に複数の第3複合シートを含む第3層(
図12のLY3)が積層され、第3層の上に複数の第4複合シートを含む第4層(
図12のLY4)が積層され、第4層の上に複数の第5複合シートを含む第5層(
図12のLY5)が積層され、第5層の上に複数の第6複合シートを含む第6層(
図12のLY6)が積層される。
【0049】
図11は、第6層の複数の第6複合シート160を積層した積層体100を示す平面図である。
図12は、
図11に示す積層体のA-A矢視断面図である。
図11では、複数の第6複合シート160の繊維方向の図示を省略している。
【0050】
図6に示す例では、複数の第2複合シート120は、点Oを中心とした半径R1の円弧上を通過する配列方向ADに沿って、第2複合シート120a,第2複合シート120b,第2複合シート120c,第2複合シート120d,第2複合シート120e,第2複合シート120fの順に時計回りに配置される。
【0051】
図11に示す例でも
、複数の第5複合シート150,複数の第6複合シート160のそれぞれは、点Oを中心とした半径R1の円弧上を通過する配列方向ADに沿って、時計回りに配置される。なお、
図11では、第1複合シート110,第2複合シート120,第3複合シート130,第4複合シート
140の図示を省略している。
【0052】
図11に示すように、複数の第6複合シート160は、位置P61~P67を端部位置とするように配置される。第6複合シート160aの長手方向の端部は位置P61と位置P62に配置され、第6複合シート160bの長手方向の端部は位置P62と位置P63に配置され、第6複合シート160cの長手方向の端部は位置P63と位置P64に配置される。第6複合シート160dの長手方向の端部は位置P64と位置P65に配置され、第6複合シート160eの長手方向の端部は位置P65と位置P66に配置され、第6複合シート160fの長手方向の端部は位置P66と位置P67に配置される。
【0053】
図12に示すように、積層体100は、複数の第1複合シート110の端部が配置される配列方向ADにおける複数の第1端部位置(例えば、位置P14)は、複数の第2複合シート120の端部が配置される配列方向ADにおける複数の第2端部位置(例えば、位置P24)とは異なる位置となっている。同様に、厚さ方向TDにおいて隣り合う層の端部位置は、異なる位置となっている。
【0054】
図12に示す例では、第2層LY2の第2複合シート120の端部位置P24は、配列方向ADにおいて、第1層LY1の第1複合シート110の端部位置P14および第3層LY3の第3複合シート130の端部位置P34と異なる位置である。同様に、第4層LY4の第4複合シート140の端部位置P44は、配列方向ADにおいて、第3層LY3の第3複合シート130の端部位置P34および第5層LY5の第5複合シート150の端部位置P54と異なる位置である。また、第6層LY6の
第6複合シート160の端部位置P64は、配列方向ADにおいて、第5層LY5の第5複合シート150の端部位置P54と異なる位置である。
【0055】
このように、位置P14,位置P24,位置P34,位置P44,位置P54,位置P64の配列方向の位置を、隣接する複合シートの層の間で異ならせることで、これらの位置を一致させる場合に比べ、積層体100から製造される構造体の強度を高めることができる。
【0056】
次に、本実施形態の複合材の製造方法について説明する。
図13は、本実施形態の複合材の製造方法を示すフローチャートである。
ステップS201で、
図10のステップS101~S104で説明した積層工程を実行する。
【0057】
ステップS202では、賦形装置(図示略)を用いて積層工程にて積層された積層体100を配列方向ADに直交する面の断面視がZ型となるように賦形する。具体的には、賦形装置により、
図11に示す山折り線MFに沿って折り曲げ角度が90度となるように山折りに賦形し、
図11に示す谷折り線VFに沿って折り曲げ角度が90度となるように谷折りに賦形する。山折り線MFは点Oを中心とした半径R2の円弧上を通過する線であり、半径R2は半径R1よりも小さい。谷折り線VFは点Oを中心とした半径R3の円弧上を通過する線であり、半径R3は半径R1よりも大きい。
【0058】
ステップS203では、積層体100を構成する複合シートを硬化させる硬化工程を実行する。複合シートに含まれる樹脂材料が熱硬化性樹脂である場合は、ステップS202で賦形された積層体100をオートクレーブ内で熱することにより熱硬化性樹脂を硬化させる。複合シートに含まれる樹脂材料が熱可塑性樹脂である場合は、ステップS202で熱を加えられた状態で賦形された積層体100を冷却して熱可塑性樹脂を硬化させる。
【0059】
ステップS204では、積層体100の幅方向の端部をトリミング(切除)して積層体100の形状を整える。具体的には、ウォータージェットカッタ等のトリミング装置(図示略)により、
図11に示す内側トリミング線TR1の内側の積層体100を切除し、
図11に示す外側トリミング線TR2の外側の積層体100を切除する。内側トリミング線TR1は点Oを中心とした半径R4の円弧上を通過する線であり、半径R4は半径R2よりも小さい。外側トリミング線TR2は点Oを中心とした半径R5の円弧上を通過する線であり、半径R5は半径R3よりも大きい。
【0060】
以上説明した本実施形態に係る積層体100が奏する作用および効果について説明する。
本開示に係る積層体100によれば、第1層LY1を構成する複数の第1複合シート110のそれぞれが第1長手方向LD1と第1短手方向SD1を有する。また、第1層LY1を構成する複数の第1複合シート110のそれぞれの第1繊維方向FD1が第1長手方向LD1に対して第1所定角度θを有する。同様に、第2層LY2を構成する複数の第2複合シート120のそれぞれが第2長手方向LD2と第2短手方向SD2を有する。また、第2層LY2を構成する複数の第2複合シート120のそれぞれの第2繊維方向FD2が第2長手方向LD2に対して第2所定角度を有する。第1所定角度θおよび第2所定角度は、例えば、0度,90度,45度,-45度等のいずれかの角度である。
【0061】
本開示に係る積層体100によれば、複数の第1複合シート110は、隣り合う一方の第1複合シート110cの第1長手方向LD1cの端部と他方の第1複合シート110dの第1長手方向LD1dの端部とが厚さ方向TDに重ならない状態で近接した状態で配置されている。また、複数の第2複合シート120は、隣り合う一方の第2複合シート120cの第2長手方向LD2cの端部と他方の第2複合シート120dの第2長手方向LD2dの端部とが厚さ方向TDに重ならない状態で近接した状態で配置されている。積層体100は、複数の第1複合シート110および複数の第2複合シート120を近接した状態で配置したものであるため、製造時に不要となる部分が発生せず、製造コストを低減することができる。
【0062】
本開示に係る積層体100によれば、一方の第1複合シート110cの第1長手方向LD1cと他方の第1複合シート110dの第1長手方向LD1dとが交差するように曲線状の配列方向ADに沿って配置されている。また、一方の第2複合シート120cの第2長手方向LD2cと他方の第2複合シート120dの第2長手方向LD2dとが交差するように曲線状の配列方向ADに沿って配置されている。
【0063】
そのため、それぞれの第1複合シート110では面内変形を生じさせずに第1繊維方向FD1に第1繊維基材を配向しつつ、全体として曲線状の配列方向に沿って第1複合シート110が配置される。同様に、それぞれの第2複合シート120では面内変形を生じさせずに第2繊維方向FD2に第2繊維基材を配向しつつ、全体として曲線状の配列方向ADに沿って第2複合シート120が配置される。第1複合シート110および第2複合シート120のいずれにも面内変形が生じないため、積層体100の製造品質を高めることができる。
【0064】
本実施形態の積層体100において、一方の第1複合シート110cの第1長手方向LD1cと他方の第1複合シート110dの第1長手方向LD1dとが交差する交差角度αは、30度以下である。
交差角度αを30度以下とすることで、曲線状の配列方向ADに対する第1長手方向LD1の近似性およびそれに伴う積層体100の製造品質を高めることができる。
【0065】
本実施形態に係る積層体100において、複数の第1複合シート110の端部が配置される配列方向ADにおける複数の第1端部位置P11~P17は、複数の第2複合シート120の端部が配置された配列方向ADにおける複数の第2端部位置P21~P27とは異なる位置である。
本実施形態に係る積層体100によれば、第1端部位置と第2端部位置とを異ならせることで、第1端部位置と第2端部位置とが一致する場合よりも積層体100を硬化させた構造体の強度を高めることができる。すなわち、第1端部位置と第2端部位置とが一致した場合に生じうる亀裂や破断を抑制することができる。
【0066】
以上説明した実施形態に記載の積層体は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る積層体(100)は、第1長手方向(LD1)および第1短手方向(SD1)を有するとともに前記第1長手方向に対して第1所定角度(θ)を有する第1繊維方向(FD1)に配向された第1繊維基材と第1樹脂材料とを含む複数の第1複合シート(110)と、第2長手方向(LD2)および第2短手方向(SD2)を有するとともに前記第2長手方向に対して第2所定角度を有する第2繊維方向(FD2)に配向された第2繊維基材と第2樹脂材料とを含む複数の第2複合シート(120)と、を備え、複数の前記第1複合シートを含む第1層(LY1)に接触した状態で、複数の前記第2複合シートを含む第2層(LY2)が積層されており、複数の前記第1複合シートは、隣り合う一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向の端部と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向の端部とが厚さ方向(TD)に重ならない状態で近接し、かつ一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向とが交差するように曲線状の配列方向(AD)に沿って配置されており、複数の前記第2複合シートは、隣り合う一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向の端部と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向の端部とが前記厚さ方向に重ならない状態で近接し、かつ一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向とが交差するように前記配列方向に沿って配置されている。
【0067】
本開示に係る積層体によれば、第1層を構成する複数の第1複合シートのそれぞれが第1長手方向と第1短手方向を有する。また、第1層を構成する複数の第1複合シートのそれぞれの第1繊維方向が第1長手方向に対して第1所定角度を有する。同様に、第2層を構成する複数の第2複合シートのそれぞれが第2長手方向と第2短手方向を有する。また、第2層を構成する複数の第2複合シートのそれぞれの第2繊維方向が第2長手方向に対して第2所定角度を有する。第1所定角度および第2所定角度は、例えば、0度,90度,45度,-45度等のいずれかの角度である。
【0068】
本開示に係る積層体によれば、複数の第1複合シートは、隣り合う一方の第1複合シートの第1長手方向の端部と他方の第1複合シートの第1長手方向の端部とが厚さ方向に重ならない状態で近接した状態で配置されている。また、複数の第2複合シートは、隣り合う一方の第2複合シートの第2長手方向の端部と他方の第2複合シートの第2長手方向の端部とが厚さ方向に重ならない状態で近接した状態で配置されている。積層体は、複数の第1複合シートおよび複数の第2複合シートを近接した状態で配置したものであるため、製造時に不要となる部分が発生せず、製造コストを低減することができる。
【0069】
本開示に係る積層体によれば、一方の第1複合シートの第1長手方向と他方の第1複合シートの第1長手方向とが交差するように曲線状の配列方向に沿って配置されている。また、一方の第2複合シートの第2長手方向と他方の第2複合シートの第2長手方向とが交差するように曲線状の配列方向に沿って配置されている。そのため、それぞれの第1複合シートでは面内変形を生じさせずに第1繊維方向に第1繊維基材を配向しつつ、全体として曲線状の配列方向に沿って第1複合シートが配置される。同様に、それぞれの第2複合シートでは面内変形を生じさせずに第2繊維方向に第2繊維基材を配向しつつ、全体として曲線状の配列方向に沿って第2複合シートが配置される。第1複合シートおよび第2複合シートのいずれにも面内変形が生じないため、積層体の製造品質を高めることができる。
【0070】
本開示に係る積層体において、前記配列方向は、一定の方向に曲がる曲線に沿って延びる方向である。
本開示に係る積層体によれば、一定の方向に曲がる曲線に沿って延びる配列方向に沿って第1複合シートおよび第2複合シートを配置する場合であっても、第1複合シートおよび第2複合シートを適切に配置して製造品質を高めることができる。
【0071】
本開示に係る積層体において、一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向とが交差する交差角度(α)は、30度以下である。
交差角度を30度以下とすることで、複数の第1複合シートの曲線状の配列方向に対する第1長手方向の近似性およびそれに伴う積層体の製造品質を高めることができる。
【0072】
本開示に係る積層体において、一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向とが交差する交差角度(α)は、30度以下である。
交差角度を30度以下とすることで、複数の第2複合シートの曲線状の配列方向に対する第2長手方向の近似性およびそれに伴う積層体の製造品質を高めることができる。
【0073】
本開示に係る積層体において、複数の前記第1複合シートの端部が配置される複数の第1端部位置(P11~P17)と、複数の前記第2複合シートの端部が配置される複数の第2端部位置(P21~P27)とは、前記配列方向において異なる位置である。
本開示に係る積層体によれば、第1端部位置と第2端部位置とを配列方向において異ならせることで、第1端部位置と第2端部位置とが一致する場合よりも積層体を硬化させた構造体の強度を高めることができる。すなわち、第1端部位置と第2端部位置とが配列方向において一致した場合に生じうる亀裂や破断を抑制することができる。
【0074】
以上説明した実施形態に記載の積層方法は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る積層方法は、複数の第1複合シートを含む第1層に接触した状態で、複数の第2複合シートを含む第2層を積層する積層方法であって、前記第1複合シートは、第1長手方向および第1短手方向を有するとともに前記第1長手方向に対して第1所定角度を有する第1繊維方向に配向された第1繊維基材と第1樹脂材料とを含むシート状に形成され、前記第2複合シートは、第2長手方向および第2短手方向を有するとともに前記第2長手方向に対して第2所定角度を有する第2繊維方向に配向された第2繊維基材と第2樹脂材料とを含むシート状に形成され、複数の前記第1複合シートを、隣り合う一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向の端部と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向の端部とが厚さ方向に重ならない状態で近接し、かつ一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向とが交差するように配列方向に沿って配置する第1積層工程と、複数の前記第2複合シートを、隣り合う一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向の端部と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向の端部とが前記厚さ方向に重ならない状態で近接し、かつ一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向とが交差するように前記配列方向に沿って配置する第2積層工程と、を備える。
【0075】
本開示に係る積層方法によれば、複数の第1複合シートは、第1積層工程により、隣り合う一方の第1複合シートの第1長手方向の端部と他方の第1複合シートの第1長手方向の端部とが厚さ方向に重ならない状態で近接した状態で配置される。また、複数の第2複合シートは、第2積層工程により、隣り合う一方の第2複合シートの第2長手方向の端部と他方の第2複合シートの第2長手方向の端部とが厚さ方向に重ならない状態で近接した状態で配置される。第1積層工程および第2積層工程は、複数の第1複合シートおよび複数の第2複合シートを近接した状態で配置するため、製造時に不要となる部分が発生せず、製造コストを低減することができる。
【0076】
本開示に係る積層方法によれば、第1積層工程により、一方の第1複合シートの第1長手方向と他方の第1複合シートの第1長手方向とが交差するように曲線状の配列方向に沿って配置される。また、第2積層工程により、一方の第2複合シートの第2長手方向と他方の第2複合シートの第2長手方向とが交差するように曲線状の配列方向に沿って配置される。そのため、それぞれの第1複合シートでは面内変形を生じさせずに第1繊維方向に第1繊維基材を配向しつつ、全体として曲線状の配列方向に沿って第1複合シートが配置される。同様に、それぞれの第2複合シートでは面内変形を生じさせずに第2繊維方向に第2繊維基材を配向しつつ、全体として曲線状の配列方向に沿って第2複合シートが配置される。第1複合シートおよび第2複合シートのいずれにも面内変形が生じないため、積層体の製造品質を高めることができる。
【0077】
本開示に係る積層方法において、前記配列方向は、一定の方向に曲がる曲線に沿って延びる方向である。
本開示に係る積層方法によれば、一定の方向に曲がる曲線に沿って延びる配列方向に沿って第1複合シートおよび第2複合シートを配置する場合であっても、第1複合シートおよび第2複合シートを適切に配置して製造品質を高めることができる。
【0078】
本開示に係る積層方法において、一方の前記第1複合シートの前記第1長手方向と他方の前記第1複合シートの前記第1長手方向とが交差する交差角度(α)は、30度以下である。
交差角度を30度以下とすることで、複数の第1複合シートの曲線状の配列方向に対する第1長手方向の近似性およびそれに伴う積層体の製造品質を高めることができる。
【0079】
本開示に係る積層方法において、一方の前記第2複合シートの前記第2長手方向と他方の前記第2複合シートの前記第2長手方向とが交差する交差角度(α)は、30度以下である。
交差角度を30度以下とすることで、複数の第2複合シートの曲線状の配列方向に対する第2長手方向の近似性およびそれに伴う積層体の製造品質を高めることができる。
【0080】
本開示に係る積層方法において、複数の前記第1複合シートの端部が配置される複数の第1端部位置(P11~P17)と、複数の前記第2複合シートの端部が配置される複数の第2端部位置(P21~P27)とは、配列方向において異なる位置である。
本開示に係る積層方法によれば、第1端部位置と第2端部位置とを配列方向において異ならせることで、第1端部位置と第2端部位置とが一致する場合よりも積層体を硬化させた構造体の強度を高めることができる。すなわち、第1端部位置と第2端部位置とが配列方向において一致した場合に生じうる亀裂や破断を抑制することができる。
【符号の説明】
【0081】
20 フレーム
100 積層体
110 第1複合シート
120 第2複合シート
AD 配列方向
FD1 第1繊維方向
FD2 第2繊維方向
LD1 第1長手方向
LD2 第2長手方向
LY1 第1層
LY2 第2層
MF 山折り線
SD1 第1短手方向
SD2 第2短手方向
Su 積層面
TD 厚さ方向
TR1 内側トリミング線
TR2 外側トリミング線
VF 谷折り線
α 交差角度