(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】医療用観察システム、医療用撮像装置および医療用観察システムの作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
A61B1/00 511
A61B1/00 513
(21)【出願番号】P 2022504956
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009883
(87)【国際公開番号】W WO2021176737
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 隆昭
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-200534(JP,A)
【文献】特開2012-125501(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0088001(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に対して白色光の波長帯域より狭い第1の狭帯域光と、前記第1の狭帯域光より短波長側の第2の狭帯域光であって、生体組織に熱処置を施すことによって生じる終末糖化産物を励起させる第2の狭帯域光と、の少なくとも一方を照射可能な光源装置と、
2次元マトリクス状に配置されてなる複数の画素を有する画素部と、前記複数の画素の各々の受光面に赤色フィルタ、緑色フィルタおよび青色フィルタのいずれか一つが設けられてなるカラーフィルタと、を有し、前記生体組織からの戻り光および前記終末糖化産物からの蛍光の少なくとも一方を撮像することによって画像データを生成可能な撮像素子と、
少なくとも前記緑色フィルタが設けられた前記画素の受光面側に設けられており、前記第2の狭帯域光の波長帯域を含む短波長側の光を遮光する一方、前記第1の狭帯域光を透過するカットフィルタと、
を備える、
医療用観察システム。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、
以下を実行するように構成されたプロセッサ、を備える、
前記光源装置によって前記第1の狭帯域光および前記第2の狭帯域光が前記生体組織に照射された場合、前記画像データに含まれる前記青色フィルタが配置されてなる前記画素からの青色成分信号および前記緑色フィルタが配置されてなる前記画素からの緑色成分信号に基づいて、狭帯域光画像を生成する一方、
前記光源装置によって前記第2の狭帯域光のみ前記終末糖化産物に照射された場合、前記画像データに含まれる前記青色フィルタが配置されてなる前記画素からの青色成分信号および前記緑色フィルタが配置されてなる前記画素からの緑色成分信号に基づいて、熱処置画像を生成する、
医療用観察システム。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用観察システムであって、
前記プロセッサは、
前記光源装置によって前記第2の狭帯域光のみ前記終末糖化産物に照射された場合、前記青色成分信号のゲインを前記緑色成分信号のゲインより小さくする、
医療用観察システム。
【請求項4】
請求項3に記載の医療用観察システムであって、
前記プロセッサは、
前記光源装置によって前記第2の狭帯域光のみ前記終末糖化産物に照射された場合、前記青色成分信号と前記緑色成分信号との比率が一定となるように前記青色成分信号と前記緑色成分信号のゲインを調整する、
医療用観察システム。
【請求項5】
請求項4に記載の医療用観察システムであって、
前記光源装置は、
白色光をさらに照射可能であり、
前記プロセッサは、
前記光源装置によって前記白色光が前記生体組織に照射された場合、前記画像データに含まれる赤色成分信号、緑色成分信号および青色成分信号の各々の値の比率が一定となるようにホワイトバランスを調整して白色画像を生成する、
医療用観察システム。
【請求項6】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、
前記蛍光は、
波長帯域が500nm~640nmである、
医療用観察システム。
【請求項7】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、
前記第1の狭帯域光は、
波長帯域が530nm~550nmであり、
前記第2の狭帯域光は、
波長帯域が390nm~430nmであり、
前記カットフィルタは、
430nmより短波長側の光を遮光する、
医療用観察システム。
【請求項8】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、
前記終末糖化産物は、
エネルギーデバイスによる熱処置によって生成される、
医療用観察システム。
【請求項9】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、
被検体内に挿入可能であり、前記戻り光および前記蛍光を集光する光学系を有する挿入部と、
前記挿入部が着脱自在な医療用撮像装置と、
をさらに備え、
前記医療用撮像装置は、
前記撮像素子と、
前記カットフィルタと、
を備える、
医療用観察システム。
【請求項10】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、
被検体内に挿入可能な先端部を有する挿入部を備えた内視鏡と、
前記先端部に設けられてなる医療用撮像装置と、
をさらに備え、
前記医療用撮像装置は、
前記撮像素子と、
前記カットフィルタと、
を備える、
医療用観察システム。
【請求項11】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、
医療用撮像装置と、
前記医療用撮像装置を回転可能に支持する支持部と、
前記支持部の基端部を回動可能に保持し、床面上を移動可能なベース部と、
をさらに備え、
前記医療用撮像装置は、
前記撮像素子と、
前記カットフィルタと、
を備える、
医療用観察システム。
【請求項12】
狭帯域光観察モードと熱処置観察モードを備える医療用観察システムであって、
前記狭帯域光観察モード時に生体組織を照明する青色光であって、血液中のヘモグロビンが高い吸光度を有し且つ粘膜表層で反射されやすい青色光と、前記熱傷観察モード時に生体組織を照明する青色光であって、生体組織が熱処置されることにより生成される終末糖化産物を励起させる青色光と、で生体組織を照明可能な光源装置と、
前記狭帯域光観察モード時および前記熱傷観察モード時のいずれの観察モード下でも共通に用いられる撮像素子であって、2次元マトリクス状に配置されてなる複数の画素を有する画素部と、前記複数の画素の各々の受光面に赤色フィルタ、緑色フィルタおよび青色フィルタのいずれか一つが設けられてなるカラーフィルタと、を有し、前記生体組織からの戻り光および前記終末糖化産物からの蛍光の少なくとも一方を撮像することによって画像データを生成可能な撮像素子と、
少なくとも前記緑色フィルタが設けられた前記画素の受光面側に設けられており、前記蛍光の波長帯域を含む波長帯域の光を遮光する一方、前記青色光を透過するカットフィルタと、
を備える、
医療用観察システム。
【請求項13】
請求項12に記載の医療用観察システムであって、
前記青色光は、1つの光源部から発生する、
医療用観察システム。
【請求項14】
請求項13に記載の医療用観察システムであって、
以下を実行するように構成されたプロセッサ、を備える、
前記狭帯域光観察モードにおいて前記光源装置によって前記青色光が前記生体組織に照射された場合、前記画像データに含まれる前記青色フィルタが配置されてなる前記画素からの青色成分信号に基づいて、狭帯域光画像を生成する一方、
前記熱処置観察モードにおいて前記光源装置によって前記青色光のみ前記終末糖化産物に照射された場合、前記画像データに含まれる前記青色フィルタが配置されてなる前記画素からの青色成分信号および前記緑色フィルタが配置されてなる前記画素からの緑色成分信号に基づいて、熱処置画像を生成する、
医療用観察システム。
【請求項15】
2次元マトリクス状に配置されてなる複数の画素を有する画素部と、前記複数の画素の各々の受光面に赤色フィルタ、緑色フィルタおよび青色フィルタのいずれか一つが設けられてなるカラーフィルタと、を有する撮像素子と、
少なくとも前記緑色フィルタが設けられた前記画素の受光面側に設けられなるカットフィルタと、
を備え、
前記撮像素子は、
生体組織に対して白色光の波長帯域より狭い第1の狭帯域光が照射された場合に前記生体組織からの戻り光および前記生体組織に熱処置を施すことによって生じる終末糖化産物に対して前記第1の狭帯域光より短波長側の第2の狭帯域光であって、前記終末糖化産物を励起させる第2の狭帯域光が照射された場合に前記終末糖化産物からの蛍光の少なくとも一方を撮像することによって画像データを生成し、
前記カットフィルタは、
前記第2の狭帯域光の波長帯域を含む短波長側の光を遮光する一方、前記第1の狭帯域光を透過する、
医療用撮像装置。
【請求項16】
2次元マトリクス状に配置されてなる複数の画素を有する画素部と、前記複数の画素の各々の受光面に赤色フィルタ、緑色フィルタおよび青色フィルタのいずれか一つが設けられてなるカラーフィルタと、を有する撮像素子を備え、
前記撮像素子は、
生体組織に対して白色光の波長帯域より狭い第1の狭帯域光が照射された場合に前記生体組織からの戻り光および前記生体組織に熱処置を施すことによって生じる終末糖化産物に対して前記第1の狭帯域光より短波長側の第2の狭帯域光であって、前記終末糖化産物を励起させる第2の狭帯域光が照射された場合に前記終末糖化産物からの蛍光の少なくとも一方を撮像することによって画像データを生成し、
前記緑色フィルタは、
前記第2の狭帯域光の波長帯域を含む短波長側の光を遮光する一方、前記第1の狭帯域光を透過する、
医療用撮像装置。
【請求項17】
プロセッサを備える医療用観察システムの作動方法であって、
前記プロセッサが
光源
に、終末糖化産物を励起させる狭帯域光を生体組織に照射
させ、
撮像素子の青色画素
に、前記生体組織からの戻り光および前記終末糖化産物からの蛍光のうち、主に青色の波長帯域の光を透過するブルーフィルタを通過した光を撮像
させ、
撮像素子の緑色画素
に、前記生体組織からの戻り光および前記終末糖化産物からの蛍光のうち、前記蛍光より短波長側の光を遮光するカットフィルタを通過し、更に、主に緑色の波長帯域の光を透過するグリーンフィルタを通過した光を撮像
させる、
医療用観察システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検体等の被写体を撮像することによって被写体の画像データを生成する医療用観察システムおよび医療用撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡において、2つの撮像素子を設け、互いに異なる波長帯域が異なる第1狭帯域光と第2狭帯域光とを観察モードに応じて切り替えて照射し、かつ、観察モードに応じて2つの撮像素子のいずれか一方に撮像させる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。この技術では、狭帯域光観察を行う場合、被検体に第1狭帯域光を照射されることによって被検体からの反射光を所定の遮光率で遮光する遮光フィルタを受光面に備える第1撮像素子によって撮像する。さらに、特許文献1では、第1自家蛍光観察を行う場合、被検体に励起光として第1狭帯域光を照射することによって被検体から発せられる第1自家蛍光を、第1撮像素子に遮光フィルタを経由させて撮像させ、かつ、第2自家蛍光観察モードの場合、被検体に励起光として第2狭帯域光を照射することによって被検体から発せられる第1自家蛍光を第2撮像素子によって撮像させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1では、遮光フィルタを受光面に設けた第1撮像素子と、第2撮像素子と、を2つ設けることによって、狭帯域光観察と、蛍光観察と、を行っている。このため、1つの撮像素子で、狭帯域光観察と、蛍光観察と、を行うことができる技術が望まれていた。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、1つの撮像素子で狭帯域光観察と蛍光観察とを行うことができる医療用観察システムおよび医療用撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る医療用観察システムは、生体組織に対して白色光の波長帯域より狭い第1の狭帯域光と、前記第1の狭帯域光より短波長側の第2の狭帯域光であって、生体組織に熱処置を施すことによって生じる終末糖化産物を励起させる第2の狭帯域光と、の少なくとも一方を照射可能な光源装置と、2次元マトリクス状に配置されてなる複数の画素を有する画素部と、前記複数の画素の各々の受光面に赤色フィルタ、緑色フィルタおよび青色フィルタのいずれか一つが設けられてなるカラーフィルタと、を有し、前記生体組織からの戻り光および前記終末糖化産物からの蛍光の少なくとも一方を撮像することによって画像データを生成可能な撮像素子と、少なくとも前記緑色フィルタが設けられた前記画素の受光面側に設けられており、前記第2の狭帯域光の波長帯域を含む短波長側の光を遮光する一方、前記第1の狭帯域光を透過するカットフィルタと、を備える。
【0007】
また、本開示に係る医療用観察システムは、上記開示において、前記画像データに対して画像処理を行って表示装置へ出力する画像処理部をさらに備え、前記画像処理部は、前記光源装置によって前記第1の狭帯域光および前記第2の狭帯域光が前記生体組織に照射された場合、前記画像データに含まれる前記青色フィルタが配置されてなる前記画素からの青色成分信号および前記緑色フィルタが配置されてなる前記画素からの緑色成分信号に基づいて、狭帯域光画像を生成する一方、前記光源装置によって前記第2の狭帯域光のみ前記終末糖化産物に照射された場合、前記画像データに含まれる前記青色フィルタが配置されてなる前記画素からの青色成分信号および前記緑色フィルタが配置されてなる前記画素からの緑色成分信号に基づいて、熱処置画像を生成する。
【0008】
また、本開示に係る医療用観察システムは、上記開示において、前記画像処理部は、前記光源装置によって前記第2の狭帯域光のみ前記終末糖化産物に照射された場合、前記青色成分信号のゲインを前記緑色成分信号のゲインより小さくする。
【0009】
また、本開示に係る医療用観察システムは、上記開示において、前記画像処理部は、前記光源装置によって前記第2の狭帯域光のみ前記終末糖化産物に照射された場合、前記青色成分信号と前記緑色成分信号との比率が一定となるように前記青色成分信号と前記緑色成分信号のゲインを調整する。
【0010】
また、本開示に係る医療用観察システムは、上記開示において、前記光源装置は、白色光をさらに照射可能であり、前記画像処理部は、前記光源装置によって前記白色光が前記生体組織に照射された場合、前記画像データに含まれる赤色成分信号、緑色成分信号および青色成分信号の各々の値の比率が一定となるようにホワイトバランスを調整して白色画像を生成する。
【0011】
また、本開示に係る医療用観察システムは、上記開示において、前記蛍光は、波長帯域が500nm~640nmである。
【0012】
また、本開示に係る医療用観察システムは、上記開示において、前記第1の狭帯域光は、波長帯域が530nm~550nmであり、前記第2の狭帯域光は、波長帯域が390nm~430nmであり、前記カットフィルタは、前記430nmより短波長側の光を遮光する。
【0013】
また、本開示に係る医療用観察システムは、上記開示において、前記終末糖化産物は、エネルギーデバイスによる熱処置によって生成される。
【0014】
また、本開示に係る医療用観察システムは、上記開示において、被検体内に挿入可能であり、前記戻り光および前記蛍光を集光する光学系を有する挿入部と、前記挿入部が着脱自在な医療用撮像装置と、をさらに備え、前記医療用撮像装置は、前記撮像素子と、前記カットフィルタと、を備える。
【0015】
また、本開示に係る医療用観察システムは、上記開示において、前記被検体内に挿入可能な先端部を有する挿入部を備えた内視鏡と、前記先端部に設けられてなる医療用撮像装置と、をさらに備え、前記医療用撮像装置は、前記撮像素子と、前記カットフィルタと、を備える。
【0016】
また、本開示に係る医療用観察システムは、上記開示において、医療用撮像装置と、前記医療用撮像装置を回転可能に支持する支持部と、前記支持部の基端部を回動可能に保持し、床面上を移動可能なベース部と、をさらに備え、前記医療用撮像装置は、前記撮像素子と、前記カットフィルタと、を備える。
【0017】
また、本開示に係る医療用観察システムは、狭帯域光観察モードと熱処置観察モードを備える医療用観察システムであって、前記狭帯域光観察モード時に生体組織を照明する青色光であって、血液中のヘモグロビンが高い吸光度を有し且つ粘膜表層で反射されやすい青色光と、前記熱傷観察モード時に生体組織を照明する青色光であって、生体組織が熱処置されることにより生成される終末糖化産物を励起させる青色光と、で生体組織を照明可能な光源装置と、前記狭帯域光観察モード時および前記熱傷観察モード時のいずれの観察モード下でも共通に用いられる撮像素子であって、2次元マトリクス状に配置されてなる複数の画素を有する画素部と、前記複数の画素の各々の受光面に赤色フィルタ、緑色フィルタおよび青色フィルタのいずれか一つが設けられてなるカラーフィルタと、を有し、前記生体組織からの戻り光および前記終末糖化産物からの蛍光の少なくとも一方を撮像することによって画像データを生成可能な撮像素子と、少なくとも前記緑色フィルタが設けられた前記画素の受光面側に設けられており、前記蛍光の波長帯域を含む波長帯域の光を遮光する一方、前記青色光を透過するカットフィルタと、を備える。
【0018】
また、本開示に係る医療用観察システムは、上記開示において、前記青色光は、1つの光源部から発生する。
【0019】
また、本開示に係る医療用観察システムは、上記開示において、前記画像データに対して画像処理を行って表示装置へ出力する画像処理部をさらに備え、前記画像処理部は、前記狭帯域光観察モードにおいて前記光源装置によって前記青色光が前記生体組織に照射された場合、前記画像データに含まれる前記青色フィルタが配置されてなる前記画素からの青色成分信号に基づいて、狭帯域光画像を生成する一方、前記熱処置観察モードにおいて前記光源装置によって前記青色光のみ前記終末糖化産物に照射された場合、前記画像データに含まれる前記青色フィルタが配置されてなる前記画素からの青色成分信号および前記緑色フィルタが配置されてなる前記画素からの緑色成分信号に基づいて、熱処置画像を生成する。
【0020】
また、本開示に係る医療用撮像装置は、2次元マトリクス状に配置されてなる複数の画素を有する画素部と、前記複数の画素の各々の受光面に赤色フィルタ、緑色フィルタおよび青色フィルタのいずれか一つが設けられてなるカラーフィルタと、を有する撮像素子と、少なくとも前記緑色フィルタが設けられた前記画素の受光面側に設けられなるカットフィルタと、を備え、前記撮像素子は、生体組織に対して白色光の波長帯域より狭い第1の狭帯域光が照射された場合に前記生体組織からの戻り光および前記生体組織に熱処置を施すことによって生じる終末糖化産物に対して前記第1の狭帯域光より短波長側の第2の狭帯域光であって、前記終末糖化産物を励起させる第2の狭帯域光が照射された場合に前記終末糖化産物からの蛍光の少なくとも一方を撮像することによって画像データを生成し、前記カットフィルタは、前記第2の狭帯域光の波長帯域を含む短波長側の光を遮光する一方、前記第1の狭帯域光を透過する。
【0021】
また、本開示に係る医療用撮像装置は、2次元マトリクス状に配置されてなる複数の画素を有する画素部と、前記複数の画素の各々の受光面に赤色フィルタ、緑色フィルタおよび青色フィルタのいずれか一つが設けられてなるカラーフィルタと、を有する撮像素子を備え、前記撮像素子は、生体組織に対して白色光の波長帯域より狭い第1の狭帯域光が照射された場合に前記生体組織からの戻り光および前記生体組織に熱処置を施すことによって生じる終末糖化産物に対して前記第1の狭帯域光より短波長側の第2の狭帯域光であって、前記終末糖化産物を励起させる第2の狭帯域光が照射された場合に前記終末糖化産物からの蛍光の少なくとも一方を撮像することによって画像データを生成し、前記緑色フィルタは、前記第2の狭帯域光の波長帯域を含む短波長側の光を遮光する一方、前記第1の狭帯域光を透過する。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、1つの撮像素子で狭帯域光観察と蛍光観察とを行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る内視鏡システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る内視鏡システムの要部の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る第2の光源部および第3の光源部の各々が発光する光の波長特性を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る画素部の構成を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係るカラーフィルタの構成を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る各フィルタの感度と波長帯域を模式的に示す図である。
【
図7A】
図7Aは、実施の形態1に係る撮像素子のR画素の信号値を模式的に示す図である。
【
図7B】
図7Bは、実施の形態1に係る撮像素子のG画素の信号値を模式的に示す図である。
【
図7C】
図7Cは、実施の形態1に係る撮像素子のB画素の信号値を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係るカットフィルタの構成を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係るカットフィルタの透過特性を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態1に係る狭帯域光観察モード時における観察原理を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、実施の形態1に係る熱処置観察モード時における観察原理を模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、実施の形態1に係る自家蛍光観察モード時における観察原理を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、実施の形態1に係る通常光観察モード時における観察原理を模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、実施の形態1に係る内視鏡システムが実行する処理の概要を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、実施の形態2に係る内視鏡システムが実行する処理の概要を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、実施の形態2に係る表示装置が表示する画像の一例を示す図である。
【
図23】
図23は、実施の形態2に係る表示装置が表示する画像の一例を示す図である。
【
図24】
図24は、実施の形態2に係る表示装置7が表示する画像の別の一例を示す図である。
【
図25A】
図25Aは、実施の形態2に係る表示装置が表示する画像の別の一例を示す図である。
【
図25B】
図25Bは、実施の形態2に係る表示装置が表示する画像の別の一例を示す図である。
【
図25C】
図25Cは、実施の形態2に係る表示装置が表示する画像の別の一例を示す図である。
【
図26】
図26は、実施の形態2に係る表示装置が表示する画像の一例を示す図である。
【
図27】
図27は、蛍光の強度と熱処置による深度との対応関係を示す図である。
【
図28】
図28は、実施の形態2に係る表示装置が表示する画像の別の一例を示す図である。
【
図29】
図29は、実施の形態3に係る内視鏡システムの概略構成を示す図である。
【
図30】
図30は、実施の形態3に係る内視鏡システムの要部の機能構成を示すブロック図である。
【
図31】
図31は、実施の形態4に係る手術用顕微鏡システムの概略構成を示す図である。
【
図32】
図32は、実施の形態1~4の変形例1に係るカットフィルタの構成を模式的に示す図である。
【
図33A】
図33Aは、実施の形態1~4の変形例1に係るカットフィルタの製造方法を模式的に示す図である。
【
図33B】
図33Bは、実施の形態1~4の変形例1に係るカットフィルタの製造方法を模式的に示す図である。
【
図34】
図34は、実施の形態1~4の変形例2に係るカラーフィルタのGフィルタの透過特性を模式的に示す図である。
【
図35】
図35は、実施の形態1~4の変形例3に係るカットフィルタの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示を実施するための形態を図面とともに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本開示が限定されるものでない。また、以下の説明において参照する各図は、本開示の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本開示は、各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものでない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付して説明する。さらにまた、本開示に係る医療用観察システムの一例として、硬性鏡および医療用撮像装置を備える内視鏡システムについて説明する。
【0025】
(実施の形態1)
〔内視鏡システムの構成〕
図1は、実施の形態1に係る内視鏡システムの概略構成を示す図である。
図1に示す内視鏡システム1は、医療分野に用いられ、生体等の被検体内の生体組織を観察するシステムである。なお、実施の形態1では、内視鏡システム1として、
図1に示す硬性鏡(挿入部2)を用いた硬性内視鏡システムについて説明するが、これに限定されることなく、例えば軟性の内視鏡を備えた内視鏡システムであってもよい。さらに、内視鏡システム1として、被検体を撮像する医療用撮像装置を備え、この医療用撮像装置によって撮像された画像データに基づく表示画像を表示装置に表示させながら手術や処置等を行うものであっても適用することができる。また、
図1に示す内視鏡システム1は、熱処置が可能な電気メスやエネルギーデバイス等の処置具(図示せず)を用いて被検体の手術や処置を行う際に用いられる。
【0026】
図1に示す内視鏡システム1は、挿入部2と、光源装置3と、ライトガイド4と、内視鏡カメラヘッド5(内視鏡用撮像装置)と、第1の伝送ケーブル6と、表示装置7と、第2の伝送ケーブル8と、制御装置9と、第3の伝送ケーブル10と、を備える。
【0027】
挿入部2は、硬質または少なくとも一部が軟性で細長形状を有する。挿入部2は、トロッカーを経由して患者等の被検体内に挿入される。挿入部2は、内部に観察像を結像するレンズ等の光学系が設けられている。
【0028】
光源装置3は、ライトガイド4の一端が接続され、制御装置9による制御のもと、ライトガイド4の一端に被検体内に照射する照明光を供給する。光源装置3は、LED(Light Emitting Diode)光源、キセノンランプおよびLD(laser Diode)等の半導体レーザ素子のいずれかの1つ以上の光源と、FPGA(Field Programmable Gate Array)やCPU(Central Processing Unit)等のハードウェアを有する処理装置であるプロセッサと、プロセッサが使用する一時的な記憶域であるメモリを用いて実現される。なお、光源装置3および制御装置9は、
図1に示すように個別に通信する構成をしてもよいし、一体化した構成であってもよい。
【0029】
ライトガイド4は、一端が光源装置3に着脱自在に接続され、かつ、他端が挿入部2に着脱自在に接続される。ライトガイド4は、光源装置3から供給された照明光を一端から端に導光し、挿入部2へ供給する。
【0030】
内視鏡カメラヘッド5は、挿入部2の接眼部21が着脱自在に接続される。内視鏡カメラヘッド5は、制御装置9による制御のもと、挿入部2によって結像された観察像を受光して光電変換を行うことによって画像データ(RAWデータ)を生成し、この画像データを第1の伝送ケーブル6を経由して制御装置9へ出力する。
【0031】
第1の伝送ケーブル6は、一端がビデオコネクタ61を経由して制御装置9に着脱自在に接続され、他端がカメラヘッドコネクタ62を経由して内視鏡カメラヘッド5に着脱自在に接続される。第1の伝送ケーブル6は、内視鏡カメラヘッド5から出力される画像データを制御装置9へ伝送し、かつ、制御装置9から出力される設定データおよび電力等を内視鏡カメラヘッド5へ伝送する。ここで、設定データとは、内視鏡カメラヘッド5を制御する制御信号、同期信号およびクロック信号等である。
【0032】
表示装置7は、制御装置9による制御のもと、制御装置9において画像処理が施された画像データに基づく表示画像および内視鏡システム1に関する各種情報を表示する。表示装置7は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等の表示モニタを用いて実現される。
【0033】
第2の伝送ケーブル8は、一端が表示装置7に着脱自在に接続され、他端が制御装置9に着脱自在に接続される。第2の伝送ケーブル8は、制御装置9において画像処理が施された画像データを表示装置7へ伝送する。
【0034】
制御装置9は、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGAまたはCPU等のハードウェアを有する処理装置であるプロセッサと、プロセッサが使用する一時的な記憶域であるメモリを用いて実現される。制御装置9は、メモリに記録されたプログラムに従って、第1の伝送ケーブル6、第2の伝送ケーブル8および第3の伝送ケーブル10の各々を経由して、光源装置3、内視鏡カメラヘッド5および表示装置7の動作を統括的に制御する。また、制御装置9は、第1の伝送ケーブル6を経由して入力された画像データに対して各種の画像処理を行って第2の伝送ケーブル8へ出力する。
【0035】
第3の伝送ケーブル10は、一端が光源装置3に着脱自在に接続され、他端が制御装置9に着脱自在に接続される。第3の伝送ケーブル10は、制御装置9からの制御データを光源装置3へ伝送する。
【0036】
〔内視鏡システムの要部の機能構成〕
次に、上述した内視鏡システム1の要部の機能構成について説明する。
図2は、内視鏡システム1の要部の機能構成を示すブロック図である。
【0037】
〔挿入部の構成〕
まず、挿入部2の構成について説明する。挿入部2は、光学系22と、照明光学系23と、を有する。
【0038】
光学系22は、被写体から反射された反射光、被写体からの戻り光、被写体からの励起光および被写体が発光した発光等の光を集光することによって被写体像を結像する。光学系22は、1または複数のレンズ等を用いて実現される。
【0039】
照明光学系23は、ライトガイド4から供給されて照明光を被写体に向けて照射する。照明光学系23は、1または複数のレンズ等を用いて実現される。
【0040】
〔光源装置の構成〕
次に、光源装置3の構成について説明する。光源装置3は、集光レンズ30と、第1の光源部31と、第2の光源部32と、第3の光源部33と、光源制御部34と、を備える。
【0041】
集光レンズ30は、第1の光源部31、第2の光源部32および第3の光源部33の各々が発光した光を集光してライトガイド4へ出射する。
【0042】
第1の光源部31は、光源制御部34による制御のもと、可視光である白色光(通常光)を発光することによってライトガイド4へ白色光を照明光として供給する。第1の光源部31は、コリメートレンズ、白色LEDランプおよび駆動ドライバ等を用いて構成される。なお、第1の光源部31は、赤色LEDランプ、緑色LEDランプおよび青色LEDランプを用いて同時に発光することによって可視光の白色光を供給してもよい。もちろん、第1の光源部31は、ハロゲンランプやキセノンランプ等を用いて構成されてもよい。
【0043】
第2の光源部32は、光源制御部34による制御のもと、所定の波長帯域を有する第1の狭帯域光を発光することによってライトガイド4へ第1の狭帯域光を照明光として供給する。ここで、第1の狭帯域光は、波長帯域が530nm~550nm(中心波長が540nm)である。第2の光源部32は、緑色LEDランプ、コリメートレンズ、530nm~550nmの光を透過させる透過フィルタおよび駆動ドライバ等を用いて構成される。
【0044】
第3の光源部33は、光源制御部34による制御のもと、第1の狭帯域光と異なる波長帯域の第2の狭帯域光を発光することによってライトガイド4へ第2の狭帯域光を照明光として供給する。ここで、第2の狭帯域光は、波長帯域が400nm~430nm(中心波長が415nm)である。第3の光源部33は、コリメートレンズ、紫色LD(laser Diode)等の半導体レーザおよび駆動ドライバ等を用いて実現される。
【0045】
光源制御部34は、FPGAまたはCPU等のハードウェアを有する処理装置であるプロセッサと、プロセッサが使用する一時的な記憶域であるメモリを用いて実現される。光源制御部34は、制御装置9から入力される制御データに基づいて、第1の光源部31、第2の光源部32および第3の光源部33の各々の発光タイミングおよび発光時間等を制御する。
【0046】
ここで、第2の光源部32および第3の光源部33の各々が発光する光の波長特性について説明する。
図3は、第2の光源部32および第3の光源部33の各々が発光する光の波長特性を模式的に示す図である。
図3において、横軸が波長(nm)を示し、縦軸が波長特性を示す。また、
図3において、折れ線L
NGが第2の光源部32が発光する第1の狭帯域光の波長特性を示し、折れ線L
Vが第3の光源部33が発光する第2の狭帯域光の波長特性を示す。また、
図3において、曲線L
Bが青色の波長帯域を示し、曲線L
Gが緑色の波長帯域を示し、曲線L
Rが赤色の波長帯域を示す。
【0047】
図3の折れ線L
NGに示すように、第2の光源部32は、中心波長(ピーク波長)が540nmであり、波長帯域530nm~550nmである第1の狭帯域光を発光する。また、第3の光源部33は、中心波長(ピーク波長)が415nmであり、波長帯域が400nm~430nmである第2の狭帯域光を発光する。
【0048】
このように、第2の光源部32および第3の光源部33の各々は、互いに異なる波長帯域の第1の狭帯域光および第2の狭帯域光を発光する。
【0049】
〔内視鏡カメラヘッドの構成〕
図2に戻り、内視鏡システム1の構成の説明を続ける。
次に、内視鏡カメラヘッド5の構成について説明する。内視鏡カメラヘッド5は、光学系51と、駆動部52と、撮像素子53と、カットフィルタ54と、A/D変換部55と、P/S変換部56と、撮像記録部57と、撮像制御部58と、を備える。
【0050】
光学系51は、挿入部2の光学系22が集光した被写体像を撮像素子53の受光面に結像する。光学系51は、焦点距離および焦点位置を変更可能である。光学系51は、複数のレンズ511を用いて構成される。光学系51は、駆動部52によって複数のレンズ511の各々が光軸L1上を移動することによって、焦点距離および焦点位置を変更する。
【0051】
駆動部52は、撮像制御部58による制御のもと、光学系51の複数のレンズ511を光軸L1上に沿って移動させる。駆動部52は、ステッピングモータ、DCモータおよびボイスコイルモータ等のモータと、光学系51にモータの回転を伝達するギア等の伝達機構と、を用いて構成される。
【0052】
撮像素子53は、2次元マトリクス状に配置されてなる複数の画素を有するCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)のイメージセンサを用いて実現される。撮像素子53は、撮像制御部58による制御のもと、光学系51によって結像された被写体像(光線)であって、カットフィルタ54を経由した被写体像を受光し、光電変換を行って画像データ(RAWデータ)を生成してA/D変換部55へ出力する。撮像素子53は、画素部531と、カラーフィルタ532と、を有する。
【0053】
図4は、画素部531の構成を模式的に示す図である。
図4に示すように、画素部531は、光量に応じた電荷を蓄積するフォトダイオード等の複数の画素P
nm(n=1以上の整数,m=1以上の整数)が二次元マトリクス状に配置されてなる。画素部531は、撮像制御部58による制御のもと、複数の画素P
nmのうち読み出し対象として任意に設定された読み出し領域の画素P
nmから画像信号を画像データとして読み出してA/D変換部55へ出力する。
【0054】
図5は、カラーフィルタ532の構成を模式的に示す図である。
図5に示すように、カラーフィルタ532は、2×2を1つのユニットとするベイヤー配列で構成される。カラーフィルタ532は、赤色の波長帯域の光を透過するフィルタRと、緑色の波長帯域の光を透過する2つのフィルタGと、青色の波長帯域の光を透過するフィルタBと、を用いて構成される。
【0055】
図6は、各フィルタの感度と波長帯域を模式的に示す図である。
図6において、横軸が波長(nm)を示し、縦軸が透過特性(感度特性)を示す。また、
図6において、曲線L
BがフィルタBの透過特性を示し、曲線L
GがフィルタGの透過特性を示し、曲線L
RがフィルタRの透過特性を示す。
【0056】
図6の曲線L
Bに示すように、フィルタBは、青色の波長帯域の光を透過する。また、
図6の曲線L
Gが示すように、フィルタGは、緑色の波長帯域の光を透過する。さらに、
図6の曲線L
Rが示すように、フィルタRは、赤色の波長帯域の光を透過する。なお、以下においては、フィルタRが受光面に配置されてなる画素P
nmをR画素、フィルタGが受光面に配置されてなる画素P
nmをG画素、フィルタBが受光面に配置されてなる画素P
nmをB画素として表記して説明する。
【0057】
このように構成された撮像素子53によれば、光学系51によって結像された被写体像を受光した場合、
図7A~
図7Cに示すように、R画素、G画素およびB画素の各々の色信号(R信号、G信号およびB信号)を生成する。
【0058】
図2に戻り、内視鏡システム1の構成の説明を続ける。
カットフィルタ54は、光学系51と撮像素子53との光軸L1上に配置される。カットフィルタ54は、少なくともカラーフィルタ532の緑色の波長帯域を透過するフィルタGが設けられたG画素の受光面側(入射面側)に設けられる。カットフィルタ54は、第2の狭帯域光の波長帯域を含む短波長の波長帯域の光を遮光し、第1の狭帯域光を含む第2の狭帯域光の波長帯域より長波長側の波長帯域を透過する。
【0059】
図8は、カットフィルタ54の構成を模式的に示す図である。
図8に示すように、カットフィルタ54を構成するフィルタF
11は、フィルタG
11(
図5を参照)が配置された位置であって、フィルタG
11の直上の受光面側に配置されてなる。
【0060】
図9は、カットフィルタ54の透過特性を模式的に示す図である。
図8において、横軸は波長(nm)を示す、縦軸が透過特性を示す。また、
図8において、折れ線L
Fがカットフィルタ54の透過特性を示し、折れ線L
NGが第1の波長特性を示し、折れ線L
Vが第2の狭帯域光の波長特性を示す。
【0061】
図9に示すように、カットフィルタ54は、第2の狭帯域光の波長帯域を遮光し、第2の狭帯域光の波長帯域から長波長側の波長帯域を透過する。具体的には、カットフィルタ54は、第2の狭帯域光の波長帯域を含む400nm~430nm未満の短波長側の波長帯域の光を遮光し、かつ、第2の狭帯域光を含む400nm~430nmより長波長側の波長帯域の光を透過する。
【0062】
図2に戻り、内視鏡カメラヘッド5の構成の説明を続ける。
A/D変換部55は、撮像制御部58による制御のもと、撮像素子53から入力されたアナログの画像データに対してA/D変換処理を行ってP/S変換部56へ出力する。A/D変換部55は、A/D変換回路等を用いて実現される。
【0063】
P/S変換部56は、撮像制御部58による制御のもと、A/D変換部55から入力されたデジタルの画像データをパラレル/シリアル変換を行い、このパラレル/シリアル変換を行った画像データを、第1の伝送ケーブル6を経由して制御装置9へ出力する。P/S変換部56は、P/S変換回路等を用いて実現される。なお、実施の形態1では、P/S変換部56に換えて、画像データを光信号に変換するE/O変換部を設け、光信号によって制御装置9へ画像データを出力するようにしてもよいし、例えばWi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)等の無線通信によって画像データを制御装置9へ送信するようにしてもよい。
【0064】
撮像記録部57は、内視鏡カメラヘッド5に関する各種情報(例えば撮像素子53の画素情報、カットフィルタ54の特性)を記録する。また、撮像記録部57は、第1の伝送ケーブル6を経由して制御装置9から伝送されてくる各種設定データおよび制御用のパラメータを記録する。撮像記録部57は、不揮発性メモリや揮発性メモリを用いて構成される。
【0065】
撮像制御部58は、第1の伝送ケーブル6を経由して制御装置9から受信した設定データに基づいて、駆動部52、撮像素子53、A/D変換部55およびP/S変換部56の各々の動作を制御する。撮像制御部58は、TG(Timing Generator)と、CPU等のハードウェアを有する処理装置であるプロセッサと、プロセッサが使用する一時的な記憶域であるメモリを用いて実現される。
【0066】
〔制御装置の構成〕
次に、制御装置9の構成について説明する。
制御装置9は、S/P変換部91と、画像処理部92と、入力部93と、記録部94と、制御部95と、を備える。
【0067】
S/P変換部91は、制御部95による制御のもと、第1の伝送ケーブル6を経由して内視鏡カメラヘッド5から受信した画像データに対してシリアル/パラレル変換を行って画像処理部92へ出力する。なお、内視鏡カメラヘッド5が光信号で画像データを出力する場合、S/P変換部91に換えて、光信号を電気信号に変換するO/E変換部を設けてもよい。また、内視鏡カメラヘッド5が無線通信によって画像データを送信する場合、S/P変換部91に換えて、無線信号を受信可能な通信モジュールを設けてもよい。
【0068】
画像処理部92は、制御部95による制御のもと、S/P変換部91から入力されたパラレルデータの画像データに所定の画像処理を施して表示装置7へ出力する。ここで、所定の画像処理とは、デモザイク処理、ホワイトバランス処理、ゲイン調整処理、γ補正処理およびフォーマット変換処理等である。画像処理部92は、GPUまたはFPGA等のハードウェアを有する処理装置であるプロセッサと、プロセッサが使用する一時的な記憶域であるメモリを用いて実現される。
【0069】
入力部93は、内視鏡システム1に関する各種操作の入力を受け付け、受け付けた操作を制御部95へ出力する。入力部93は、マウス、フットスイッチ、キーボード、ボタン、スイッチおよびタッチパネル等を用いて構成される。
【0070】
記録部94は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、SSD(Solid State Drive)およびHDD(Hard Disk Drive)等やメモリカード等の記録媒体を用いて実現される。記録部94は、内視鏡システム1の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータを記録する。また、記録部94は、内視鏡システム1を動作させるための各種プログラムを記録するプログラム記録部941を有する。
【0071】
制御部95は、FPGAまたはCPU等のハードウェアを有する処理装置であるプロセッサと、プロセッサが使用する一時的な記憶域であるメモリを用いて実現される。制御部95は、内視鏡システム1を構成する各部を統括的に制御する。
【0072】
〔各観察モードの概要〕
次に、内視鏡システム1が実行する各観察モードの概要について説明する。なお、以下においては、狭帯域光観察モード、熱処置観察モード、自家蛍光観察モード、通常光観察モードの順に説明する。
【0073】
〔狭帯域光観察モードの概要〕
まず、狭帯域光観察モードについて説明する。
図10は、狭帯域光観察モード時における観察原理を模式的に示す図である。
【0074】
狭帯域光観察モード(NBI:Narrow Band Imaging)は、血液中のヘモグロビンが波長415nm近傍の光を強く吸収することを利用し、生体組織の粘膜表層の毛細血管および粘膜表面構造を強調する観察手法である。即ち、狭帯域光観察モードは、血液中のヘモグロビンに吸収されやすい狭帯域化された2つの第1の狭帯域光(波長帯域が530nm~550nm)および第2の狭帯域光(波長帯域が390nm~445nm)を生体組織等の被検体に対して照射する。これにより、狭帯域光観察モードは、通常光(白色光)で視認が難しい粘膜深部の血管および血流情報の強調表示を行うことができる。
【0075】
具体的には、
図10のグラフG1に示すように、まず、光源装置3は、制御装置9による制御のもと、第2の光源部32および第3の光源部33を発光させることによって、第1の狭帯域光W1および第2の狭帯域光W2を被検体の生体組織O1(粘膜)に照射させる。この場合、少なくとも被検体等の生体組織O1で反射された複数の成分を含む反射光および戻り光(以下、単に「反射光WR1,WR2、WG1,WG2,WB1,WB2」という)は、一部がカットフィルタ54に遮光され、残りが撮像素子53に入射する。なお、以下では、第1の狭帯域光W1からの反射光が反射光WR1、反射光WG1、反射光WB1であり、第2の狭帯域光W2からの反射光が反射光WR2、反射光WG2、反射光WB2として説明する。なお、
図10では、各線の成分(光量若しくは信号値)の強さを太さで表現している。
【0076】
より具体的には、
図10のグラフG2の折れ線L
Fに示すように、カットフィルタ54は、G画素に入射する反射光WG2であって、第2の狭帯域光W2の波長帯域を含む短波長の波長帯域の反射光WG2を遮光する。
【0077】
さらに、カットフィルタ54は、第1の狭帯域光W1を含む第2の狭帯域光W2の波長帯域より長波長側の波長帯域の反射光WG1を透過する。また、R画素およびB画素の各々には、第1の狭帯域光W1および第2の狭帯域光W2が被検体で反射した反射光(反射光WR1,WR2、WB1,WB2)が入射する。
【0078】
続いて、
図10の透過特性の表G3に示すように、R画素、G画素およびB画素の各々は、透過特性(感度特性)が互いに異なる。具体的には、B画素は、第1の狭帯域光W1の反射光WB1に感度を有しないため、反射光WB1の受光量に対応する出力値が微小な値となる一方、第2の狭帯域光W2の反射光WB2に感度を有するため、反射光WB1の受光量に対応する出力値が大きな値となる。
【0079】
その後、画像処理部92は、内視鏡カメラヘッド5の撮像素子53から画像データ(RAWデータ)を取得し、取得した画像データに含まれるG画素およびB画素の各々の信号値に対して画像処理を行って疑似カラー画像(狭帯域画像)を生成する。この場合において、G画素の信号値には、被検体の粘膜深層情報が含まれる。また、B画素の信号値には、被検体の粘膜表層情報が含まれる。このため、画像処理部92は、画像データに含まれるG画素およびB画素の各々の信号値に対して、ゲインコントロール処理、画素補完処理および粘膜強調処理等の画像処理を行って疑似カラー画像を生成し、この疑似カラー画像を表示装置7へ出力する。ここで、疑似カラー画像とは、G画素の信号値およびB画素の信号値のみを用いて生成した画像である。また、画像処理部92は、R画素の信号値を取得するが、疑似カラー画像の生成に用いず、削除する。
【0080】
このように狭帯域光観察モードは、白色光(通常光)で視認が難しい粘膜深部の血管および血流情報の強調表示を行うことができる。
【0081】
〔熱処置観察モードの概要〕
次に、熱処置観察モードについて説明する。
図11は、熱処置観察モード時における観察原理を模式的に示す図である。
【0082】
近年、医療分野では、内視鏡および腹腔鏡等を用いた低侵襲治療が広く行われるようになっている。例えば、内視鏡および腹腔鏡等を用いた低侵襲治療としては、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic Submucosal Dissection)、腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除術(LECS:Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery)、非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術(NEWS:Non-exposed Endoscopic Wall-inversion Surgery)等が広く行われている。
【0083】
これらの低侵襲治療では、処置を行う場合、例えば、前処置として手術対象領域のマーキング等のために、医者等の術者が高周波ナイフおよび電気メス等のエネルギーデバイスの処置具を用いて生体組織に対する熱処置や熱処置によるマーキング処置を行う。また、術者は、実際の処置の場合にも、エネルギーデバイス等を用いて被検体の生体組織の切除および凝固等の処置を行う。
【0084】
エネルギーデバイスによって生体組織に加えられる熱処置の度合いは、術者が目視や触覚および勘等に頼って確認を行っているのが実情である。このため、従来のエネルギーデバイス等を用いた治療では、術者が手術等の作業中に熱処置を加えるべき度合い等をリアルタイムで確認することが難しく、非常に熟練を要する作業項目となっていた。この結果、術者等は、エネルギーデバイスを用いて生体組織に熱処置を施した場合、熱処置(熱処置)による熱処置領域への焼灼状態を可視化することができる技術を望んでいた。
【0085】
ところで、アミノ酸と、還元糖と、を加熱した場合、糖化反応(メイラード反応)が生じる。このメイラード反応の結果生じる最終産物は、総じて終末糖化産物(AGEs:Advanced glycation end products)と呼ばれる。AGEsの特徴としては、蛍光特性を有する物質が含まれることが知られている。
【0086】
つまり、AGEsは、生体組織をエネルギーデバイスで熱処置した場合、生体組織中のアミノ酸と還元糖が加熱されて、メイラード反応が生じることによって生成される。この加熱により生成されたAGEsは、蛍光観察することにより熱処置の状態の可視化が可能となる。さらに、AGEsは、生体組織内に元来存在する自家蛍光物質よりも、強い蛍光を発するが知られている。
【0087】
即ち、熱処置観察モードは、エネルギーデバイス等により熱処置されることで生体組織中に発生したAGEsの蛍光特性を利用して、熱処置による熱処置領域を可視化する観察手法である。このため、熱処置観察モードは、光源装置3からAGEsを励起させるための波長415nmm近傍の青色光を生体組織に照射する。これにより、熱処置観察モードは、AGEsから発生する蛍光(例えば、波長490~625nmの緑色光)を撮像した熱処置画像(蛍光画像)を観察することができる。
【0088】
具体的には、
図11のグラフG11に示すように、まず、光源装置3は、制御装置9による制御のもと、第3の光源部33を発光させることによって、励起光(中心波長415nm)である第2の狭帯域光W2をエネルギーデバイス等により被検体に対して熱処置が施された生体組織O2(熱処置領域)に照射する。この場合、
図11のグラフG12に示すように、少なくとも生体組織O2(熱処置領域)で反射された第2の狭帯域光W2の成分および戻り光を含む反射光(以下、単に「反射光WR10,反射光WG10,反射光WB10」という)は、カットフィルタ54に遮光され、長波長側の成分の一部が撮像素子53に入射する。なお、
図11では、各線の成分(光量若しくは信号値)の強さを太さで表現している。
【0089】
より具体的には、
図11のグラフG2に示すように、カットフィルタ54は、G画素に入射する反射光WG2であって、第2の狭帯域光W2の波長帯域を含む短波長の波長帯域の反射光WG2を遮光する。さらに、
図11のグラフG2に示すように、カットフィルタ54は、生体組織O1(熱処置領域)におけるAGEsが自家発光した蛍光(WF1)を透過する。このため、R画素およびB画素の各々には、反射光(反射光WR12,反射光WB12)および蛍光(WF1)が入射する。また、G画素には、蛍光(WF1)が入射する。このように、G画素は、カットフィルタ54が受光面側(入射面側)に配置されているため、励起光である第2の狭帯域光W2の反射光WG2に、蛍光成分が埋もれることを防止することができる。
【0090】
また、
図10のグラフG12における蛍光特性の折れ線L
NGに示すように、G画素は、蛍光に感度を有するが、蛍光が微小な反応のため、出力値が小さい値となる。
【0091】
その後、画像処理部92は、内視鏡カメラヘッド5の撮像素子53から画像データ(RAWデータ)を取得し、取得した画像データに含まれるG画素およびB画素の各々の信号値に対して画像処理を行って疑似カラー画像(熱処置蛍光画像)を生成する。この場合において、G画素の信号値には、熱処置領域から発せられた蛍光情報が含まれる。また、B画素には、熱処置領域の周囲の生体組織である背景情報が含まれる。このため、画像処理部92は、画像データに含まれるG画素およびB画素の各々の信号値に対して、ゲインコントロール処理、画素補完処理および粘膜強調処理等の画像処理を行って疑似カラー画像を生成し、この疑似カラー画像(熱処置画像)を表示装置7へ出力する。この場合、画像処理部92は、G画素の信号値に対するゲインを通常光観察時のG画素の信号値に対するゲインより大きくする一方、B画素の信号値に対するゲインを通常光観察時のB画素の信号値に対するゲインより小さくするゲインコントロール処理を行う。さらに、画像処理部92は、G画素の信号値およびB画素の信号値の各々が同じ(1:1)となるようにゲインコントロ-ル処理を行う。
【0092】
このように熱処置観察モードは、エネルギーデバイス等による熱処置の生体組織O2(熱処置領域)を容易に観察することができる。
【0093】
〔自家蛍光観察モードの概要〕
次に、自家蛍光観察モードについて説明する。
図12は、自家蛍光観察モード時における観察原理を模式的に示す図である。
【0094】
自家蛍光観察モード(AFI:Auto Fluorescence Imaging)は、生体組織の粘膜下層に存在するコラーゲン等の蛍光物質を励起させることによって、正常組織と腫瘍等の病変組織とを容易に識別可能とする観察手法である。自家蛍光観察モードは、自家蛍光物質を励起させる励起光として、波長帯域が415nm近傍の青色光と、生体組織の粘膜表層で反射される参照光として、波長帯域が540nm近傍の緑色光と、を順次照射する(交互に照射する)。そして、自家蛍光観察モードは、生体組織内に存在する蛍光物質が発光した蛍光成分と、正常組織の生体組織から戻ってきた参照光の反射光成分と、を撮像素子53によって撮像し、正常組織と病変組織とを識別できるような擬似カラー画像によって表示する。
【0095】
具体的には、
図12のグラフG21に示すように、まず、光源装置3は、制御装置9による制御のもと、第2の光源部32および第3の光源部33を交互に発光させることによって、参照光としての第1の狭帯域光W1(中心波長540nm)および励起光としての第2の狭帯域光W2(中心波長415nm)を被検体の生体組織O3に順次照射させる(交互に照射させる)。この場合において、少なくとも被検体で反射された複数の成分を含む反射光および戻り光(以下、単に「反射光WR20,反射光WG20,反射光WB20」という)は、一部がカットフィルタ54に遮光され、残りが撮像素子53に入射する。
【0096】
より具体的には、
図12のグラフG22に示すように、カットフィルタ54は、G画素に入射する反射光WG20であって、第2の狭帯域光W2の波長帯域を含む短波長の波長帯域の反射光WG20を遮光する。具体的には、自家蛍光観察モードでは、第2の狭帯域光W2が照射された場合、G画素に蛍光WF10(中心波長540nm)が入射する。さらに、自家蛍光観察モードでは、第2の狭帯域光W2が照射された場合、B画素に対して、生体組織内の蛍光物質から発生した蛍光WF10及び生体組織O3で反射された第2の狭帯域光W2の反射光WB20が入射し、かつ、R画素に対して、生体組織内の蛍光物質から発生した蛍光WF10及び生体組織O3で反射された第2の狭帯域光W2の反射光WR20が入射する。
【0097】
さらにまた、自家蛍光観察モードでは、第1の狭帯域光W1が照射された場合、G画素に生体組織O3で反射された第1の狭帯域光W1(参照光)の反射光WG30が入射する。さらに、自家蛍光観察モードでは、第1の狭帯域光W1が照射された場合、B画素に生体組織O3で反射された第1の狭帯域光W1(参照光)の反射光WB30が入射し、R画素に生体組織O3で反射された第1の狭帯域光W1(参照光)の反射光WR30が入射する。なお、
図12では、各線の成分(光量若しくは信号値)の強さを太さで表現している。
【0098】
その後、画像処理部92は、画像処理部92は、内視鏡カメラヘッド5の撮像素子53から画像データ(RAWデータ)を取得し、取得した画像データに含まれるG画素の信号値に対して画像処理を行って疑似カラー画像(自家蛍光画像)を生成する。この場合において、G画素の信号値には、第2の狭帯域光W2が照射された場合に入射した生体組織内の蛍光物質から発せられた蛍光情報(必要成分1)と、第1の狭帯域光W1(参照光)が照射された場合に第1の狭帯域光W1が生体組織から反射された反射光および戻り光を含む参照反射光の背景情報(必要成分2)とが含まれる。このとき、第1の狭帯域光W1(参照光)が照射された生体組織からの参照反射光は、正常組織や表層粘膜が肥厚した領域に比べて、血管または炎症のある領域の方が、光量が小さくなる。このため、画像処理部92は、生体組織内の蛍光物質から発せられた領域の蛍光情報(必要成分1)が弱く、生体組織からの参照反射光の背景情報(必要成分2)が強い領域が、より強調されるように強調処理を行う。具体的には、画像処理部92は、腫瘍と推定される領域がマゼンダで表示されるように疑似カラー画像を生成する。例えば、画像処理部92は、生体組織内の蛍光物質から発せられた領域の蛍光情報(必要成分1)の色調を疑似カラー画像上の青色及び赤色に割り当て、生体組織からの参照反射光の背景情報(必要成分2)の色調を疑似カラー画像上の緑色に割り当てる。これにより、腫瘍と推定される領域がマゼンダ色で表現され、正常粘膜若しくは血管または炎症のある領域が緑色系統で表現される。なお、画像処理部92は、画像データに含まれるB画素およびR画素の各々の信号値に対して、使用せず、削除する。
【0099】
これに対して、上述した
図12に示すように、自家蛍光観察モードでは、画像処理部92は、G画素の信号値に対するゲインを通常光観察時のG画素の信号値に対するゲインより大きくするゲインコントロール処理を行う。
【0100】
このように自家蛍光観察モードは、生体組織からの自家蛍光を観察することにより、腫瘍等の病変領域(異常領域)と正常領域とを異なる色調で強調表示することで観察することができる。
【0101】
〔通常光観察モードの概要〕
次に、通常光観察モードについて説明する。
図13は、通常光観察モード時における観察原理を模式的に示す図である。
【0102】
図13に示すように、まず、光源装置3は、制御装置9による制御のもと、第1の光源部31を発光させることによって、白色光W3を被検体の生体組織O4に照射する。この場合、生体組織で反射された反射光および戻り光(以下、単に「反射光WR40、反射光WG40,反射光WB40」という)は、一部がカットフィルタ54に遮光され、残りが撮像素子53に入射する。具体的には、
図13に示すように、カットフィルタ54は、G画素に入射する反射光(WG30)であって、第2の狭帯域光W2の波長帯域を含む短波長の波長帯域の反射光を遮光する。このため、
図13に示すように、G画素に入射する青色の波長帯域の光の成分が、カットフィルタ54を配置していない状態と比べて小さくなる。
【0103】
続いて、画像処理部92は、内視鏡カメラヘッド5の撮像素子53から画像データ(RAWデータ)を取得し、取得した画像データに含まれるR画素、G画素およびB画素の各々の信号値に対して画像処理を行って白色光画像を生成する。この場合において、画像処理部92は、画像データに含まれる青色成分が従来の白色光観察と比べて小さいため、赤色成分、緑色成分および青色成分の比率が一定となるようにホワイトバランスを調整するホワイトバランス調整処理を行う。
【0104】
このように通常光観察モードは、G画素の受光面側にカットフィルタ54を配置している場合であっても、自然な白色画像を観察することができる。
【0105】
〔内視鏡システムの処理〕
次に、内視鏡システム1が実行する処理について説明する。
図14は、内視鏡システム1が実行する処理の概要を示すフローチャートである。なお、以下においては、画像処理部92は、画像データを現像するための種々の画像処理を行うが、説明を簡略化するため、各観察モードにおける特徴的な画像処理のみを記載する。
【0106】
図14に示すように、まず、制御部95は、内視鏡システム1が狭帯域光観察モードに設定されているか否かを判断する(ステップS1)。制御部95によって内視鏡システム1が狭帯域光観察モードに設定されていると判断された場合(ステップS1:Yes)、内視鏡システム1は、後述するステップS2へ移行する。これに対して、制御部95によって内視鏡システム1が狭帯域光観察モードに設定されていないと判断された場合(ステップS1:No)、内視鏡システム1は、後述するステップS4へ移行する。
【0107】
ステップS2において、内視鏡システム1は、狭帯域光観察モード処理を実行する。ステップS2の後、内視鏡システム1は、後述するステップS3へ移行する。
【0108】
〔狭帯域光観察モード処理〕
図15は、上述した
図14のステップS2における狭帯域光観察モード処理の概要を示すフローチャートである。
【0109】
図15に示すように、制御部95は、光源制御部34を制御し、第2の光源部32および第3の光源部33の各々を発光させることによって、被検体に向けて第1の狭帯域光および第2の狭帯域光を照射させる(ステップS11)。
【0110】
続いて、制御部95は、撮像制御部58を制御することによって、光学系22および光学系51が集光した被写体像であって、カットフィルタ54を透過した被写体像を撮像素子53に撮像させる(ステップS12)。
【0111】
その後、制御部95は、画像処理部92に、A/D変換部55、P/S変換部56およびS/P変換部91を経由して入力された画像データに対してゲインコントロール処理を実行させる(ステップS13)。
【0112】
続いて、制御部95は、画像処理部92に、ゲインコントロール処理後の画像データに対してデモザイク処理を実行させ(ステップS14)、かつ、画像処理部92に、デモザイク処理後の画像データに対して高画質化処理を実行させて疑似カラー画像を生成させる(ステップS15)。
【0113】
その後、制御部95は、画像処理部92に疑似カラー画像を表示装置7へ出力させる(ステップS16)。これにより、医者等の術者は、狭帯域光画像を観察しながら被検体の観察を行うことができる。
【0114】
続いて、制御部95は、入力部93から内視鏡システム1の観察モードを切り替える切替信号が入力されたか否かを判断する(ステップS17)。制御部95によって入力部93から内視鏡システム1の観察モードを切り替える切替信号が入力されたと判断された場合(ステップS17:Yes)、内視鏡システム1は、
図14のメインルーチンへ戻る。これに対して、制御部95によって入力部93から内視鏡システム1の観察モードを切り替える切替信号が入力されていないと判断された場合(ステップS17:No)、内視鏡システム1は、上述したステップS11へ戻る。
【0115】
図14に戻り、ステップS3以降の説明を続ける。
ステップS3において、制御部95は、入力部93から被検体の観察の終了を指示する指示信号が入力されたか否かを判断する。制御部95によって入力部93から被検体の観察の終了を指示する指示信号が入力されたと判断された場合(ステップS3:Yes)、内視鏡システム1は、本処理を終了する。これに対して、制御部95によって入力部93から被検体の観察の終了を指示する指示信号が入力されていないと判断された場合(ステップS3:No)、内視鏡システム1は、上述したステップS1へ戻る。
【0116】
ステップS4において、制御部95は、内視鏡システム1が熱処置観察モードに設定されているか否かを判断する。制御部95によって内視鏡システム1が熱処置観察モードに設定されていると判断された場合(ステップS4:Yes)、内視鏡システム1は、後述するステップS5へ移行する。これに対して、制御部95によって内視鏡システム1が熱処置観察モードに設定されていないと判断された場合(ステップS4:No)、内視鏡システム1は、後述するステップS6へ移行する。
【0117】
ステップS5において、内視鏡システム1は、熱処置観察モード処理を実行する。ステップS5の後、内視鏡システム1は、ステップS3へ移行する。
【0118】
〔熱処置観察モード処理〕
図16は、上述した
図14のステップS5における熱処置観察モード処理の概要を示すフローチャートである。
【0119】
図16に示すように、制御部95は、光源制御部34を制御することによって、第3の光源部33の各々を発光させることによって、被検体に向けて第2の狭帯域光を照射させる(ステップS51)。
【0120】
続いて、制御部95は、撮像制御部58を制御することによって、光学系22および光学系51が集光した被写体像であって、カットフィルタ54を透過した被写体像を撮像素子53に撮像させる(ステップS52)。
【0121】
その後、制御部95は、画像処理部92に、A/D変換部55、P/S変換部56およびS/P変換部91を経由して入力された画像データに対してゲインコントロール処理を実行させる(ステップS53)。この場合、画像処理部92は、画像データに含まれるG画素の信号値に対するゲインを通常光観察時のG画素の信号値に対するゲインより大きくする一方、B画素の信号値に対応するゲインを通常光観察時のB画素の信号値に対するゲインより小さくするゲインコントロール処理を行う。さらに、画像処理部92は、G画素の信号値およびB画素の信号値の各々が同じ(1:1)となるようにゲインコントロ-ル処理を行う。
【0122】
続いて、制御部95は、画像処理部92に、ゲインコントロール処理後の画像データに対してデモザイク処理を実行させ(ステップS54)、かつ、画像処理部92に、デモザイク処理後の画像データに対して高画質化処理を実行させて疑似カラー画像(熱処置画像)を生成させる(ステップS55)。
【0123】
その後、制御部95は、画像処理部92に疑似カラー画像を表示装置7へ出力させる(ステップS16)。これにより、医者等の術者は、熱処置画像を観察しながら被検体の観察を行うことができる。
【0124】
続いて、制御部95は、入力部93から内視鏡システム1の観察モードを切り替える切替信号が入力されたか否かを判断する(ステップS57)。制御部95によって入力部93から内視鏡システム1の観察モードを切り替える切替信号が入力されたと判断された場合(ステップS57:Yes)、内視鏡システム1は、
図14のメインルーチンへ戻る。これに対して、制御部95によって入力部93から内視鏡システム1の観察モードを切り替える切替信号が入力されていないと判断された場合(ステップS57:No)、内視鏡システム1は、上述したステップS51へ戻る。
【0125】
図14に戻り、ステップS6以降の説明を続ける。
ステップS6において、制御部95は、内視鏡システム1が自家蛍光観察モードに設定されているか否かを判断する。制御部95によって内視鏡システム1が自家蛍光観察モードに設定されていると判断された場合(ステップS6:Yes)、内視鏡システム1は、後述するステップS7へ移行する。これに対して、制御部95によって内視鏡システム1が自家蛍光観察モードに設定されていないと判断された場合(ステップS6:No)、内視鏡システム1は、後述するステップS8へ移行する。
【0126】
ステップS7において、内視鏡システム1は、自家蛍光観察モード処理を実行する。ステップS7の後、内視鏡システム1は、ステップS3へ移行する。
【0127】
〔自家蛍光観察モード処理〕
図17は、上述した
図14のステップS7における自家蛍光観察モードの概要を示すフローチャートである。
【0128】
図17に示すように、制御部95は、光源制御部34を制御することによって、第2の光源部32および第3の光源部33の各々を発光させることによって、被検体に向けて第1の狭帯域光および第2の狭帯域光を順次照射(交互照射)させる(ステップS71)。
【0129】
続いて、制御部95は、撮像制御部58を制御することによって、光学系22および光学系51が集光した被写体像であって、カットフィルタ54を透過した被写体像を撮像素子53に撮像させる(ステップS72)。
【0130】
その後、制御部95は、画像処理部92に、A/D変換部55、P/S変換部56およびS/P変換部91を経由して入力された画像データに対してデモザイク処理を実行させる(ステップS73)。
【0131】
続いて、制御部95は、画像処理部92に、デモザイク処理後の画像データに対して色調変換処理を実行させて疑似カラー画像を生成させる(ステップS74)。この場合において、G画素の信号値には、第2の狭帯域光W2が照射された場合に入射した生体組織内の蛍光物質から発せられた蛍光情報(必要成分1)と、第1の狭帯域光W1(参照光)が照射された場合に第1の狭帯域光W1が生体組織から反射された反射光および戻り光を含む参照反射光の背景情報(必要成分2)とが含まれる。このとき、第1の狭帯域光W1(参照光)が照射された生体組織からの参照反射光は、正常組織や表層粘膜が肥厚した領域に比べて、血管または炎症のある領域の方が、光量が小さくなる。このため、画像処理部92は、生体組織内の蛍光物質から発せられた領域の蛍光情報(必要成分1)が弱く、生体組織からの参照反射光の背景情報(必要成分2)が強い領域が、より強調されるように強調処理を行う。具体的には、画像処理部92は、腫瘍と推定される領域がマゼンダで表示されるように疑似カラー画像を生成する。例えば、画像処理部92は、生体組織内の蛍光物質から発せられた領域の蛍光情報(必要成分1)の色調を疑似カラー画像上の青色及び赤色に割り当て、生体組織からの参照反射光の背景情報(必要成分2)の色調を疑似カラー画像上の緑色に割り当てる。これにより、腫瘍と推定される領域がマゼンダ色で表現され、正常粘膜若しくは血管または炎症のある領域が緑色系統で表現される。なお、画像処理部92は、画像データに含まれるB画素およびR画素の各々の信号値に対して、使用せず、削除する。
【0132】
その後、制御部95は、画像処理部92に疑似カラー画像を表示装置7へ出力させる(ステップS75)。これにより、医者等の術者は、自家蛍光画像を観察しながら被検体の腫瘍等を含む異常箇所の観察を行うことができる。
【0133】
続いて、制御部95は、入力部93から内視鏡システム1の観察モードを切り替える切替信号が入力されたか否かを判断する(ステップS76)。制御部95によって入力部93から内視鏡システム1の観察モードを切り替える切替信号が入力されたと判断された場合(ステップS76:Yes)、内視鏡システム1は、
図14のメインルーチンへ戻る。これに対して、制御部95によって入力部93から内視鏡システム1の観察モードを切り替える切替信号が入力されていないと判断された場合(ステップS76:No)、内視鏡システム1は、上述したステップS71へ戻る。
【0134】
図14に戻り、ステップS8以降の説明を続ける。
ステップS8において、制御部95は、内視鏡システム1が通常光観察モードに設定されているか否かを判断する。制御部95によって内視鏡システム1が通常光観察モードに設定されていると判断された場合(ステップS8:Yes)、内視鏡システム1は、後述するステップS9へ移行する。これに対して、制御部95によって内視鏡システム1が通常光観察モードに設定されていないと判断された場合(ステップS8:No)、内視鏡システム1は、ステップS3へ移行する。
【0135】
〔通常光観察モード処理〕
図18は、上述した
図14のステップS9における通常光観察モードの概要を示すフローチャートである。
【0136】
図18に示すように、制御部95は、光源制御部34を制御することによって、第1の光源部31を発光させることによって、被検体に向けて白色光を照射させる(ステップS91)。
【0137】
続いて、制御部95は、撮像制御部58を制御することによって、光学系22および光学系51が集光した被写体像であって、カットフィルタ54を透過した被写体像を撮像素子53に撮像させる(ステップS92)。
【0138】
その後、制御部95は、画像処理部92に、A/D変換部55、P/S変換部56およびS/P変換部91を経由して入力された画像データに対してデモザイク処理を実行させる(ステップS93)。
【0139】
続いて、制御部95は、画像処理部92に、デモザイク処理後の画像データに対してホワイトバランス調整処理を実行させて白色画像を生成させる(ステップS94)。具体的には、画像処理部92は、画像データに含まれる青色成分が従来の白色光観察と比べて小さいため、赤色成分、緑色成分および青色成分の比率が一定となるようにホワイトバランスを調整するホワイトバランス調整処理を行って白色画像を生成する。
【0140】
その後、制御部95は、画像処理部92に白色画像を表示装置7へ出力させる(ステップS95)。これにより、医者等の術者は、白色画像を観察しながら被検体の観察を行うことができる。
【0141】
続いて、制御部95は、入力部93から内視鏡システム1の観察モードを切り替える切替信号が入力されたか否かを判断する(ステップS96)。制御部95によって入力部93から内視鏡システム1の観察モードを切り替える切替信号が入力されたと判断された場合(ステップS96:Yes)、内視鏡システム1は、
図14のメインルーチンへ戻る。これに対して、制御部95によって入力部93から内視鏡システム1の観察モードを切り替える切替信号が入力されていないと判断された場合(ステップS96:No)、内視鏡システム1は、上述したステップS71へ戻る。
【0142】
以上説明した実施の形態1によれば、カットフィルタ54をGフィルタが設けられた画素の受光面側に設け、カットフィルタ54が第2の狭帯域光の波長帯域を含む短波長側の光を遮光する一方、第1の狭帯域光を透過するため、1つの撮像素子53で狭帯域光観察とエネルギーデバイス等による熱処置によって生じる蛍光観察とを行うことができる。
【0143】
また、実施の形態1によれば、画像処理部92が狭帯域光観察モードの場合、青色成分信号および緑色成分信号に基づいて、狭帯域光画像(疑似カラー画像)を生成する一方、熱処置観察モードの場合、青色成分信号および緑色成分信号に基づいて、熱処置画像を生成(疑似カラー画像)するため、1つの撮像素子53で狭帯域光観察とエネルギーデバイス等による熱処置によって生じる蛍光観察とを行うことができる。
【0144】
また、実施の形態1によれば、画像処理部92が光源装置3によって第2の狭帯域光のみ終末糖化産物に照射された場合、青色成分信号のゲインを緑色成分信号のゲインより小さくするため、熱処置画像に含まれる蛍光を背景から強調することができる。
【0145】
また、実施の形態1によれば、画像処理部92が通常光観察モードの場合、画像データに含まれる赤色成分信号、緑色成分信号および青色成分信号の各々の値の比率が一定となるようにホワイトバランスを調整して白色画像を生成するため、1つの撮像素子53で、狭帯域光観察と、エネルギーデバイス等による熱処置によって生じる蛍光観察と、通常光観察と、を行うことができる。
【0146】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2に係る内視鏡システムは、上述した実施の形態1に係る内視鏡システム1と同一の構成を有し、実行する処理が異なる。具体的には、上述した実施の形態1では、複数の観察モードの各々を切り替えながら行っていたが、実施の形態2では、複数の観察モードを交互に行うことによって、特徴が異なる2つの画像データを生成し、医者等の術者による手動による切り替えで記録したり、または所定の条件になった場合、表示装置が表示する画像の内容を切り替えつつ記録したりする。以下においては、実施の形態2に係る内視鏡システムが実行する処理について説明する。なお、実施の形態2では、上述した実施の形態1に係る内視鏡システム1と同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0147】
〔内視鏡システムの処理〕
図19は、実施の形態2に係る内視鏡システム1が実行する処理の概要を示すフローチャートである。なお、
図19において、説明を簡略化するため、内視鏡システム1が上述した通常光観察および熱処置観察を行う場合について説明する。
【0148】
図19に示すように、まず、内視鏡システム1は、被検体の生体組織等に、白色光または第2の狭帯域光を照射し、生体組織からの戻り光、反射光および蛍光等を撮像して記録する撮像記録処理を実行し(ステップS101)、撮像した画像データに基づく画像を表示する表示処理を実行する(ステップS102)。なお、撮像記録処理および表示処理の詳細は、後述する。
【0149】
続いて、制御部95は、入力部93から被検体の観察の終了を指示する指示信号が入力されてか否かを判断する(ステップS103)。制御部95によって入力部93から被検体の観察の終了を指示する指示信号が入力されたと判断された場合(ステップS103:Yes)、内視鏡システム1は、本処理を終了する。これに対して、制御部95によって入力部93から被検体の観察の終了を指示する指示信号が入力されていないと判断された場合(ステップS103:No)、内視鏡システム1は、上述したステップS101へ戻る。
【0150】
〔撮像記録処理〕
次に、上述した
図19のステップS101における撮像記録処理の詳細について説明する。
図20は、撮像記録処理の概要を示すフローチャートである。
【0151】
図20に示すように、制御部95は、光源制御部34を制御し、第1の光源部31を発光させることによって白色光を被検体に向けて照射させる(ステップS201)。
【0152】
続いて、制御部95は、撮像制御部58を制御することによって、光学系22および光学系51が集光した被写体像であって、カットフィルタ54を透過した被写体像を撮像素子53に撮像させる(ステップS202)。
【0153】
その後、制御部95は、画像処理部92に、A/D変換部55、P/S変換部56およびS/P変換部91を経由して入力された画像データに対して所定の画像処理を実行させて白色画像を生成させる(ステップS203)。
【0154】
続いて、制御部95は、画像処理部92が生成した白色画像を記録部94に記録する(ステップS204)。
【0155】
その後、制御部95は、光源制御部34を制御し、第3の光源部33を発光させることによって、被検体に向けて第2の狭帯域光を照射させる(ステップS205)。
【0156】
続いて、制御部95は、撮像制御部58を制御することによって、光学系22および光学系51が集光した被写体像であって、カットフィルタ54を透過した被写体像を撮像素子53に撮像させる(ステップS206)。
【0157】
その後、制御部95は、画像処理部92に、A/D変換部55、P/S変換部56およびS/P変換部91を経由して入力された画像データに対して所定の画像処理を実行させて熱処置画像を生成させる(ステップS207)。
【0158】
続いて、制御部95は、入力部93から熱処置画像を記録する記録信号が入力されたか否かを判断する(ステップS208)。具体的には、制御部95は、医者等の術者が入力部93を操作することによって、エネルギーデバイス等によって生体組織に熱処置を施した場合に、撮像された熱処置画像を記録部94に記録する記録信号が入力部93から入力されてか否かを判断する。制御部95によって入力部93から熱処置画像を記録する記録信号が入力されたと判断された場合(ステップS208:Yes)、内視鏡システム1は、後述するステップS209へ移行する。これに対して、制御部95によって入力部93から熱処置画像を記録する記録信号が入力されていないと判断された場合(ステップS209:No)、内視鏡システム1は、後述するステップS210へ移行する。
【0159】
ステップS209において、制御部95は、画像処理部92が生成した熱処置画像を記録部94に記録する。ステップS209の後、内視鏡システム1は、上述した
図19のメインルーチンへ戻る。
【0160】
ステップS210において、制御部95は、所定の条件であるか否かを判断する。具体的には、制御部95は、エネルギーデバイス等から入力される駆動信号に基づいて、エネルギーデバイス等が熱処置を開始したか否かを判断する。また、制御部95は、画像処理部92が生成した熱処置画像に含まれる熱処置を施した生体組織の状態、蛍光の発光量に基づいて、所定の条件であるか否かを判断する。例えば、制御部95は、蛍光の発光量が所定の閾値以上である場合、所定の条件であると判断する。さらに、制御部95は、画像処理部92が生成した熱処置画像に含まれる熱処置を施した生体組織の蛍光領域の面積に基づいて、所定の条件であるか否かを判断する。例えば、制御部95は、熱処置画像に含まれる蛍光領域の面積が所定の閾値以上であるか否かを判断する。制御部95によって所定の条件であると判断された場合(ステップS210:Yes)、内視鏡システム1は、後述するステップS211へ移行する。これに対して、制御部95によって所定の条件でないと判断された場合(ステップS210:No)、内視鏡システム1は、上述した
図19のメインルーチンへ戻る。
【0161】
ステップS211において、制御部95は、画像処理部92が生成した熱処置画像を記録部94に記録する。ステップS211の後、内視鏡システム1は、上述した
図19のメインルーチンへ戻る。
【0162】
〔表示処理〕
次に、上述した
図19のステップS102における表示処理の概要について説明する。
図21は、表示処理の概要を示すフローチャートである。
【0163】
図21に示すように、制御部95は、入力部93から白色画像および熱処置画像の表示を指示する指示信号が入力されたか否かを判断する(ステップS301)。制御部95によって入力部93から白色画像および熱処置画像の表示を指示する指示信号が入力されたと判断された場合(ステップS301:Yes)、内視鏡システム1は、後述するステップS302へ移行する。これに対して、制御部95によって入力部93から白色画像および熱処置画像の表示を指示する指示信号が入力されていないと判断された場合(ステップS301:No)、内視鏡システム1は、後述するステップS305へ移行する。
【0164】
ステップS302において、制御部95は、画像処理部92に白色画像および熱処置画像を出力させることによって白色画像および熱処置画像を表示装置7に表示させる。
図22は、表示装置7が表示する画像の一例を示す図である。
図22に示すように、制御部95は、画像処理部92に、白色画像と熱処置画像とを合成した合成画像P1を表示装置7に表示させる。この場合、画像処理部92は、白色画像と熱処置画像との合成比率が1:1となるように合成する。もちろん、画像処理部92は、入力部93から入力される指示信号に応じて合成比率を適宜変更してもより。さらに、画像処理部92は、白色画像に、熱処置画像における蛍光領域、例えば熱処置画像の信号値が閾値以上の画素のみを合成してもよい。これにより、医者等の術者は、白色画像と熱処置画像とが合成された合成画像P1を観察することで、エネルギーデバイス等による熱処置の位置を含む熱処置領域Z1を直感的に把握することができる。もちろん、実施の形態2では、白色画像に熱処置画像を重畳した重畳画像であってもよい。
【0165】
続いて、制御部95は、入力部93から表示装置7が表示する画像の表示態様を切り替える切替信号が入力されたか否かを判定する(ステップS303)。制御部95によって入力部93から表示装置7が表示する画像の表示態様を切り替える切替信号が入力されたと判断された場合(ステップS303:Yes)、内視鏡システム1は、後述するステップS304へ移行する。これに対して、制御部95によって入力部93から表示装置7が表示する画像の表示態様を切り替える切替信号が入力されていないと判断された場合(ステップS303:No)、内視鏡システム1は、
図19のメインルーチンへ戻る。
【0166】
ステップS304において、制御部95は、入力部93から入力された切替信号に応じた表示態様の白色画像および熱処置画像を生成して表示装置7へ出力させることによって表示装置7が表示する画像の表示態様を制御する。ステップS304の後、内視鏡システム1は、
図19のメインルーチンへ戻る。
【0167】
図23は、表示装置7が表示する画像の一例を示す図である。
図23に示すように、制御部95は、画像処理部92に白色画像P10と熱処置画像P11とを並列にした状態の表示画像P2を生成させて表示装置7に出力させる。これにより、医者等の術者は、白色画像P10上と、熱処置画像P11と、比較しながら観察することで、エネルギーデバイス等の処置具による熱処置の位置を含む熱処置領域Z1を直感的に把握することができる。
【0168】
図24は、表示装置7が表示する画像の別の一例を示す図である。
図24に示すように、制御部95は、画像処理部92に白色画像P10と熱処置画像P11とを並列にした状態であって、熱処置画像P11の表示領域を白色画像P10の表示領域より小さくした表示画像P3を生成させて表示装置7に出力させてもよい。これにより、医者等の術者は、白色画像P10上と、熱処置画像P11と、比較しながら観察することで、エネルギーデバイス等による熱処置の位置を含む熱処置領域Z1を直感的に把握することができる。なお、制御部95は、入力部93からの指示信号に応じて、表示画像P3内における熱処置画像P11および白色画像P10の各々の表示比率を変更して画像処理部92に生成させてもよい。
【0169】
図25A~
図25Cは、表示装置7が表示する画像の別の一例を示す図である。
図25A~
図25Cに示すように、制御部95は、入力部93から入力された切替信号の回数に応じて、画像処理部92に白色画像P10(
図25A)、表示画像PP3(
図25B)、熱処置画像P11(
図25C)の順に切り替えて出力させることによって表示装置7に表示させてもよい。これにより、医者等の術者は、簡易な操作で所望の画像を観察することができる。
【0170】
図21に戻り、ステップS305以降の説明を続ける。
ステップS305において、制御部95は、所定の条件であるか否かを判断する。具体的には、制御部95は、エネルギーデバイス等から入力される駆動信号に基づいて、エネルギーデバイス等が熱処置を開始または終了したか否かを判断する。また、制御部95は、画像処理部92が生成した熱処置画像に含まれる熱処置を施した生体組織の状態、蛍光の発光量に基づいて、所定の条件であるか否かを判断する。例えば、制御部95は、蛍光の発光量が所定の閾値以上である場合、所定の条件であると判断する。さらに、制御部95は、画像処理部92が生成した熱処置画像に含まれる熱処置を施した生体組織の蛍光領域の面積に基づいて、所定の条件であるか否かを判断する。例えば、制御部95は、熱処置画像に含まれる蛍光領域の面積が所定の閾値以上であるか否かを判断する。制御部95によって所定の条件であると判断された場合(ステップS305:Yes)、内視鏡システム1は、後述するステップS306へ移行する。これに対して、制御部95によって所定の条件でないと判断された場合(ステップS305:No)、内視鏡システム1は、後述するステップS309へ移行する。
【0171】
ステップS306において、制御部95は、白色画像と熱処置画像とを合成した合成画像を生成させて表示装置7へ出力させることによって表示装置7が合成画像を表示させる。ステップS306の後、内視鏡システム1は、
図19のメインルーチンへ戻る。
【0172】
図26は、表示装置7が表示する画像の一例を示す図である。
図27は、蛍光の強度と熱処置による深度との対応関係を示す図である。
図27において、縦軸が発光強度を示し、横軸が熱処置による生体組織への深度を示す。また、
図27において、直線Lyは、発光強度と熱処置による生体組織への深度との相関関係を示す。
【0173】
図26に示すように、制御部95は、画像処理部92に、白色画像と熱処置画像とを合成した合成画像P20を表示装置7に表示させる。この場合、画像処理部92は、白色画像と熱処置画像との合成比率が1:1となるように合成して合成画像P20を生成する。さらに、
図26および
図27に示すように、画像処理部92は、熱処置画像に含まれる熱処置領域の蛍光の発光量に応じて蛍光領域の色を強調表示した合成画像P20を生成する。例えば、
図26に示すように、画像処理部92は、蛍光の発光量が弱い熱処置領域Z2を青色で生成し、蛍光の発光量が熱処置領域Z2よりも強い熱処置領域Z1を緑色で生成する。蛍光の発光量が弱い熱処置領域Z2は、医者等の術者が腫瘍等の異常領域に対して電気メス等によって切除する前に、エネルギーデバイス等の処置具を用いてマーキングした領域を示す。さらに、
図28の熱処置画像P21に示すように、画像処理部92は、蛍光の発光量に応じて熱処置の熱処置領域Z3を黄色で生成してもよい。これにより、医者等の術者は、色に応じて熱処置の状態を直感的に把握することができる。
【0174】
ステップS307において、制御部95は、入力部93から表示装置7が表示する画像を熱処置画像に指示する指示信号が入力されたか否かを判断する。制御部95によって入力部93から表示装置7が表示する画像を熱処置画像に指示する指示信号が入力されたと判断された場合(ステップS307:Yes)、内視鏡システム1は、後述するステップS308へ移行する。これに対して、制御部95によって入力部93から表示装置7が表示する画像を熱処置画像に指示する指示信号が入力されていないと判断された場合(ステップS307:No)、内視鏡システム1は、後述するステップS309へ移行する。
【0175】
ステップS308において、制御部95は、画像処理部92に熱処置画像を生成させて表示装置7へ出力させることによって表示装置7に熱処置画像を表示させる。例えば、制御部95は、上述した
図25Cの熱処置画像P11を画像処理部92に生成させて表示装置7へ出力させる。ステップS308の後、内視鏡システム1は、
図19のメインルーチンへ戻る。
【0176】
ステップS309において、制御部95は、画像処理部92に白色画像を生成させて表示装置7へ出力させることによって表示装置7に熱処置画像を表示させる。例えば、制御部95は、上述した
図25Aの白色画像P10を画像処理部92に生成させて表示装置7へ出力させる。ステップS309の後、内視鏡システム1は、
図19のメインルーチンへ戻る。
【0177】
以上説明した実施の形態2によれば、カットフィルタ54をGフィルタが設けられた画素の受光面側に設け、カットフィルタ54が第2の狭帯域光の波長帯域を含む短波長側の光を遮光する一方、第1の狭帯域光を透過するため、1つの撮像素子53で狭帯域光観察とエネルギーデバイス等による熱処置によって生じる蛍光観察とを行うことができる。
【0178】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1,2では、硬性鏡を備える内視鏡システムであったが、実施の形態3では、軟性の内視鏡を備える内視鏡システムについて説明する。以下においては、実施の形態3に係る内視鏡システムについて説明する。なお、実施の形態3では、上述した実施の形態1に係る内視鏡システム1と同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0179】
〔内視鏡システムの構成〕
図29は、実施の形態3に係る内視鏡システムの概略構成を示す図である。
図30は、実施の形態3に係る内視鏡システムの要部の機能構成を示すブロック図である。
【0180】
図29および
図30に示す内視鏡システム100は、患者等の被検体内に挿入することによって被検体の体内を撮像し、この撮像した画像データに基づく表示画像を表示装置7が表示する。医者等の術者は、表示装置7が表示する表示画像の観察を行うことによって、検査対象部位である出血部位、腫瘍部位および異常部位が写る異常領域の各々の有無や状態を検査する。さらに、医者等の術者は、内視鏡の処置具チャンネルを経由してエネルギーデバイス等の処置具を被検体の体内に挿入して被検体の処置を行う。内視鏡システム100は、上述した光源装置3、表示装置7および制御装置9に加えて、内視鏡102を備える。
【0181】
〔内視鏡の構成〕
内視鏡102の構成について説明する。内視鏡102は、被検体の体内を撮像することによって画像データを生成し、この生成した画像データを制御装置9へ出力する。内視鏡102は、操作部122と、ユニバーサルコード123と、を備える。
【0182】
挿入部121は、可撓性を有する細長形状をなす。挿入部121は、後述する撮像装置を内蔵した先端部124と、複数の湾曲駒によって構成された湾曲自在な湾曲部125と、湾曲部125の基端側に接続され、可撓性を有する長尺状の可撓管部126と、を有する。
【0183】
先端部124は、グラスファイバ等を用いて構成される。先端部124は、光源装置3から供給された光の導光路をなすライトガイド241と、ライトガイド241の先端に設けられた照明レンズ242と、撮像装置243と、を有する。
【0184】
撮像装置243は、集光用の光学系244と、上述した実施の形態1の撮像素子53と、カットフィルタ54、A/D変換部55、P/S変換部56、撮像記録部57、撮像制御部58と、を備える。なお、実施の形態3では、撮像装置243が医療用撮像装置として機能する。
【0185】
ユニバーサルコード123は、ライトガイド241と、1または複数のケーブルをまとめた集光ケーブルと、を少なくとも内蔵している。集合ケーブルは、内視鏡102および光源装置3と制御装置9との間で信号を送受信する信号線であって、設定データを送受信するための信号線、撮像画像(画像データ)を送受信するための信号線、撮像素子53を駆動するための駆動用のタイミング信号を送受信するための信号線等を含む。ユニバーサルコード123は、光源装置3に着脱自在なコネクタ部127を有する。コネクタ部127は、コイル状のコイルケーブル127aが延設し、コイルケーブル127aの延出端に制御装置9に着脱自在なコネクタ部128を有する。
【0186】
このように構成された内視鏡システム100は、上述した実施の形態1に係る内視鏡システム1と同様の処理を行う。
【0187】
以上説明した実施の形態3によれば、上述した実施の形態1と同様の効果を有するうえ、1つの撮像素子53のみで狭帯域光観察とエネルギーデバイス等による熱処置によって生じる蛍光観察とを行うことができるため、挿入部121の細径化を図ることができる。
【0188】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。上述した実施の形態1~3では、内視鏡システムであったが、実施の形態4では、手術用顕微鏡システムに適用した場合について説明する。なお、実施の形態4では、上述した実施の形態1に係る内視鏡システム1と同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0189】
〔手術用顕微鏡システムの構成〕
図31は、実施の形態4に係る手術用顕微鏡システムの概略構成を示す図である。
図31に示す手術用顕微鏡システム300は、被写体を観察するための画像を撮像することによって取得する医療用撮像装置である顕微鏡装置310と、表示装置7と、を備える。なお、表示装置7と顕微鏡装置310とを一体に構成することも可能である。
【0190】
顕微鏡装置310は、被写体の微小部位を拡大して撮像する顕微鏡部312と、顕微鏡部312の基端部に接続し、顕微鏡部312を回動可能に支持するアームを含む支持部313と、支持部313の基端部を回動可能に保持し、床面上を移動可能なベース部314と、を有する。ベース部314は、顕微鏡装置310から被写体に照射する白色光、第1の狭帯域光および第2の狭帯域光等を生成する光源装置3と、手術用顕微鏡システム300の動作を制御する制御装置9と、を有する。なお、光源装置3および制御装置9の各々は、少なくとも上述した実施の形態1と同様の構成を有する。具体的には、光源装置3は、集光レンズ30と、第1の光源部31と、第2の光源部32と、第3の光源部33と、光源制御部34と、を備える。また、制御装置9は、S/P変換部91と、画像処理部92と、入力部93と、記録部94と、制御部95と、を備える。ベース部314は、床面上に移動可能に設けるのではなく、天井や壁面等に固定して支持部313を支持する構成としてもよい。
【0191】
顕微鏡部312は、例えば、円柱状をなして、その内部に上述した医用用撮像装置を有する。具体的には、医療用撮像装置は、上述した実施の形態1に係る内視鏡カメラヘッド5と同様の構成を有する。例えば、顕微鏡部312は、光学系51と、駆動部52と、撮像素子53と、カットフィルタ54と、A/D変換部55と、P/S変換部56と、撮像記録部57と、撮像制御部58と、を備える。また、顕微鏡部312の側面には、顕微鏡装置310の動作指示の入力を受け付けるスイッチが設けられている。顕微鏡部312の下端部の開口面には、内部を保護するカバーガラスが設けられている(図示せず)。
【0192】
このように構成された手術用顕微鏡システム300は、術者等のユーザが顕微鏡部312を把持した状態で各種スイッチを操作しながら、顕微鏡部312を移動させたり、ズーム操作を行ったり、照明光を切り替えたりする。なお、顕微鏡部312の形状は、ユーザが把持して視野方向を変更しやすいように、観察方向に細長く延びる形状であれば好ましい。このため、顕微鏡部312の形状は、円柱状以外の形状であってもよく、例えば多角柱状であってもよい。
【0193】
以上説明した実施の形態4によれば、手術用顕微鏡システム300においても、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができるうえ、顕微鏡部312の小型化を図ることができる。
【0194】
(実施の形態1~4の変形例1)
次に、実施の形態1~4の変形例1について説明する。実施の形態1~4の変形例1では、カットフィルタの構成のみ異なる。以下においては、実施の形態1~4の変形例1に係るカットフィルタの構成について説明する。
【0195】
図32は、実施の形態1~4の変形例1に係るカットフィルタの構成を模式的に示す図である。
図32に示すカットフィルタ54Aは、少なくともカラーフィルタ532のGフィルタが設けられたG画素の受光面側(入射面側)およびRフィルタが設けられたR画素の受光面側(入射面側)に設けられ、第2の狭帯域光の波長帯域を含む短波長の波長帯域の光を遮光し、第1の狭帯域光を含む第2の狭帯域光の波長帯域より長波長側の波長帯域を透過する。具体的には、
図32に示すように、カットフィルタ54Aを構成するフィルタF
11は、フィルタG
11(
図5を参照)が配置された位置であって、フィルタG
11の直上の受光面側に配置されてなる。さらに、フィルタF
22は、フィルタR
21(
図5を参照)が配置された位置であって、フィルタR
21の直上の受光面側に配置されてなる。
【0196】
〔カットフィルタの製造方法〕
次に、カットフィルタ54Aの製造方法について説明する。
図33Aおよび
図33Bは、カットフィルタ54Aの製造方法を模式的に示す図である。
【0197】
図33Aに示すように、まず、遮光膜のコーティングを施すコーティング装置(図示せず)は、カットフィルタ54Aの垂直方向におけるG画素およびR画素が配置されてなる列に相当する列に遮光膜をコーティングする(
図33A)。続いて、コーティング装置は、カットフィルタ54Aの水平方向におけるG画素およびR画素が配置されてなる列に相当する列に遮光膜をコーティングする(
図33B)。
【0198】
以上説明した実施の形態1~4の変形例1によれば、カットフィルタ54Aを容易に接続することができる。
【0199】
また、上述した実施の形態1~4の変形例1では、垂直方向および水平方向の2回コーティング処理を行っていたが、例えばB画素に対応する部分にマスクを行い、全面に遮光膜をコーティングする処理を行った後に、マスクを除去することによって製造してもよい。
【0200】
(実施の形態1~4の変形例2)
次に、実施の形態1~4の変形例2について説明する。実施の形態1~4の変形例2では、上述した実施の形態1に係るカットフィルタ54を省略するとともに、カラーフィルタのGフィルタの透過特性が異なる。以下においては、実施の形態1~4の変形例2に係るカラーフィルタの構成について説明する。なお、実施の形態1~4の変形例2では、上述した実施の形態1に係る内視鏡システム1と同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0201】
図34は、実施の形態1~4の変形例2に係るカラーフィルタのGフィルタの透過特性を模式的に示す図である。
図34において、横軸が波長を示し、縦軸が透過特性を示す。
図34において、曲線L
G10がGフィルタの透過特性を示す。
【0202】
図34の曲線L
G10に示すようにGフィルタは、415nmより短い短波長側の波長帯域を遮光する。即ち、Gフィルタは、第2の狭帯域光の波長帯域を含む短波長の波長帯域の光を遮光し、第1の狭帯域光を含む第2の狭帯域光の波長帯域より長波長側の波長帯域を透過する。
【0203】
以上説明した実施の形態1~4の変形例2によれば、カットフィルタ54を省略することができるので、簡易な構成にすることができる。
【0204】
(実施の形態1~4の変形例3)
次に、実施の形態1~4の変形例3について説明する。実施の形態1~4の変形例3では、上述した実施の形態1に係るカットフィルタ54と構成が異なる。以下においては、実施の形態1~4の変形例3に係るカラーフィルタの構成について説明する。なお、実施の形態1~4の変形例3では、上述した実施の形態1に係る内視鏡システム1と同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0205】
図35は、実施の形態1~4の変形例3に係るカットフィルタの構成を模式的に示す図である。
図35に示すカットフィルタ54Cは、円盤状をなし、全ての波長帯域の光を透過する透過部541と、第2の狭帯域光の波長帯域を含む短波長の波長帯域の光を遮光し、第1の狭帯域光を含む第2の狭帯域光の波長帯域より長波長側の波長帯域を透過する透過部542と、を有する。カットフィルタ54Cは、図示しないモータ等の駆動部によって光軸L1を中心に回転する。
【0206】
以上説明した実施の形態1~4の変形例3によれば、上述した実施の形態1~4と同様の効果を奏する。
【0207】
また、実施の形態1~4の変形例3では、カットフィルタ54Cを回転させることによって、撮像素子53に入射する光の波長帯域を制限していたが、例えばカットフィルタ54Cに代えて、電流値に応じて所定の波長帯域の光を遮光する電子フィルタ等であってもよい。
【0208】
(その他の実施の形態)
上述した本開示の実施の形態1~4に係る医療用観察システムに開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、上述した本開示の実施の形態に係る医療用観察システムに記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、上述した本開示の実施の形態に係る医療用観察システムで説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0209】
また、本開示の実施の形態1~4に係る医療用観察システムでは、上述してきた「部」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、制御部は、制御手段や制御回路に読み替えることができる。
【0210】
なお、本明細書におけるフローチャートの説明では、「まず」、「その後」、「続いて」等の表現を用いてステップ間の処理の前後関係を明示していたが、本発明を実施するために必要な処理の順序は、それらの表現によって一意的に定められるわけではない。即ち、本明細書で記載したフローチャートにおける処理の順序は、矛盾のない範囲で変更することができる。
【0211】
以上、本願の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0212】
1,100 内視鏡システム
2 挿入部
3 光源装置
4 ライトガイド
5 内視鏡カメラヘッド
6 第1の伝送ケーブル
7 表示装置
8 第2の伝送ケーブル
9 制御装置
10 第3の伝送ケーブル
21 接眼部
22 光学系
23 照明光学系
30 集光レンズ
31 第1の光源部
32 第2の光源部
33 第3の光源部
34 光源制御部
51 光学系
52 駆動部
53 撮像素子
54,54A,54C カットフィルタ
55 A/D変換部
56 P/S変換部
57 撮像記録部
58 撮像制御部
61 ビデオコネクタ
62 カメラヘッドコネクタ
91 S/P変換部
92 画像処理部
93 入力部
94 記録部
95 制御部
102 内視鏡
121 挿入部
122 操作部
123 ユニバーサルコード
124 先端部
125 湾曲部
126 可撓管部
127 コネクタ部
127a コイルケーブル
128 コネクタ部
241 ライトガイド
242 照明レンズ
243 撮像装置
244 光学系
300 手術用顕微鏡システム
310 顕微鏡装置
312 顕微鏡部
313 支持部
314 ベース部
511 レンズ
531 画素部
532 カラーフィルタ
541,542 透過部
941 プログラム記録部