(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】工事用エレベーター装置及びエレベーターの主索延長方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
B66B7/00 J
(21)【出願番号】P 2022508611
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011369
(87)【国際公開番号】W WO2021186492
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】樋野 悠人
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 章智
(72)【発明者】
【氏名】萩原 高行
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/035930(WO,A1)
【文献】特開2015-000798(JP,A)
【文献】特開2009-196808(JP,A)
【文献】特開2000-226169(JP,A)
【文献】特表2013-532104(JP,A)
【文献】特開2001-322778(JP,A)
【文献】米国特許第5033586(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内に備えられ、主索により吊下げられたかご及び釣合おもりを昇降方向に移動させる巻上機と、前記主索の延長分を蓄える主索ドラムと、前記巻上機及び前記主索ドラムを備えた機械室ユニットとから構成された工事用エレベーター装置において、
前記機械室ユニットは、前記巻上機を備える第1機械室ユニットと、前記主索ドラムを備える第2機械室ユニットとに分割し、分割した前記第1機械室ユニットと前記第2機械室ユニットとを異なる建屋階の梁若しくは壁に載置し
、
前記第2機械室ユニットは、前記昇降路内に備えられた支持部材から吊下げられ、前記第1機械室ユニットは、前記第2機械室ユニットから吊下げられ、
前記第1機械室ユニット若しくは前記第2機械室ユニットには、前記第1機械室ユニットを揚重する第1機械室ユニット用揚重機が備えられ、
前記支持部材若しくは前記第2機械室ユニットには、前記第2機械室ユニットを揚重する第2機械室ユニット用揚重機が備えられた
ことを特徴とする工事用エレベーター装置。
【請求項2】
前記第1機械室ユニット用揚重機は、N:1(Nは2以上)ローピングで前記第1機械室ユニットを揚重する
ことを特徴とする請求項
1に記載の工事用エレベーター装置。
【請求項3】
前記第1機械室ユニットには、前記主索を把持する第1機械室ユニット主索把持装置が備えられ、
前記第2機械室ユニットには、前記主索を把持する第2機械室ユニット主索把持装置が備えられた
ことを特徴とする請求項
1に記載の工事用エレベーター装置。
【請求項4】
前記第2機械室ユニット用揚重機は、三台以上備えられ、前記第2機械室ユニットの吊点が3箇所以上であり、
前記第2機械室ユニットの上方の仮想水平面から見たとき、前記第2機械室ユニットの重心から各吊点までの距離が略等しく、かつ、各吊点間を結ぶ仮想直線で囲まれた領域内に前記重心が位置する
ことを特徴とする請求項
1に記載の工事用エレベーター装置。
【請求項5】
前記昇降路には、かご及び前記第2機械室ユニットを昇降方向に案内する一対のかご側ガイドレールが設けられており、
前記第2機械室ユニットの3箇所以上の吊点のうち、少なくとも1箇所の吊点は、前記一対のかご側ガイドレール間を結ぶかご側仮想直線を挟んで前記重心と反対側に配置されている
ことを特徴とする請求項
4に記載の工事用エレベーター装置。
【請求項6】
前記昇降路には、釣合おもり及び前記第2機械室ユニットを昇降方向に案内する一対のおもり側ガイドレールが設けられており、
前記一対のおもり側ガイドレール間を結ぶおもり側仮想直線は、前記かご側仮想直線と略平行であり、
前記第2機械室ユニットの3箇所以上の吊点のうち、前記かご側仮想直線を挟んで前記重心と反対側に配置された吊点以外の吊点は、前記おもり側仮想直線を挟んで前記重心と反対側に配置されている
ことを特徴とする請求項
5に記載の工事用エレベーター装置。
【請求項7】
昇降路内に備えられ、主索により吊下げられたかご及び釣合おもりを昇降方向に移動させる巻上機と、前記主索の延長分を蓄える主索ドラムと、前記巻上機及び前記主索ドラムを備えた機械室ユニットとから構成されたエレベーターの主索延長方法において、
前記機械室ユニットは、前記巻上機を備える第1機械室ユニットと、前記主索ドラムを備える第2機械室ユニットとに分割し、分割した前記第1機械室ユニットと前記第2機械室ユニットとを異なる建屋階の梁若しくは壁に載置し、
前記第2機械室ユニットは、前記昇降路内に備えられた支持部材から吊下げられ、前記第1機械室ユニットは、前記第2機械室ユニットから吊下げられ、
前記第1機械室ユニット若しくは前記第2機械室ユニットには、前記第1機械室ユニットを揚重する第1機械室ユニット用揚重機が備えられ、
前記支持部材若しくは前記第2機械室ユニットには、前記第2機械室ユニットを揚重する第2機械室ユニット用揚重機が備えられ、
前記第1機械室ユニットには、前記主索を把持する第1機械室ユニット主索把持装置が備えられ、
前記第2機械室ユニットには、前記主索を把持する第2機械室ユニット主索把持装置が備えられ、
前記第2機械室ユニット用揚重機による前記第2機械室ユニットの引き上げ時には、前記第2機械室ユニット主索把持装置を開放して前記主索ドラムから前記主索を引き出すと共に、前記第1機械室ユニット主索把持装置で前記主索を把持し、
前記第1機械室ユニット用揚重機による前記第1機械室ユニットの引き上げ時には、前記第1機械室ユニット主索把持装置を開放すると共に、前記第2機械室ユニット主索把持装置で前記主索を把持する
ことを特徴とするエレベーターの主索延長方法。
【請求項8】
前記第1機械室ユニットの引き上げ時には、前記第1機械室ユニットと前記かごをチェーンで接続する
ことを特徴とする請求項
7に記載のエレベーターの主索延長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事用エレベーター装置及びエレベーターの主索延長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築工事現場における資材等の揚重には、工事用エレベーター装置が用いられている。そして、工事用エレベーター装置としては、例えば、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された工事用エレベーター装置は、支持梁の下方に機械室ユニットを備えている。機械室ユニットは、下方梁と上方梁との間に巻上機を配置して構成され、支持梁からロープによって吊下げられている。上方梁には揚重機が備えられており、この揚重機がロープを巻上げて機械室ユニットを揚重する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された工事用エレベーター装置は、長行程・大積載エレベーターとなると機械室ユニットが大型化し、揚重機の員数が増え、さらに機械室ユニットをある特定階の壁や梁で支えているので、この特定階の壁や梁に許容される荷重(許容荷重)を超えた荷重がかかるといった課題があった。工事用エレベーター装置では、かごを巻上げる巻上機の他、機械室ユニットを揚重する揚重機(機械室ユニットの重さに応じて大型化・員数増加し、揚重機自身の重量も増える)、エレベーターのロープを延長するためのロープドラム等が備えられているため、機械室ユニットの重量が増加し、機械室ユニットを軽量化することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、揚重機員数を減らし、特定階の梁若しくは壁にかかる荷重を抑制することができる工事用エレベーター装置及びエレベーターの主索延長方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、昇降路内に備えられ、主索により吊下げられたかご及び釣合おもりを昇降方向に移動させる巻上機と、前記主索の延長分を蓄える主索ドラムと、前記巻上機及び前記主索ドラムを備えた機械室ユニットとから構成された工事用エレベーター装置において、前記機械室ユニットは、前記巻上機を備える第1機械室ユニットと、前記主索ドラムを備える第2機械室ユニットとに分割し、分割した前記第1機械室ユニットと前記第2機械室ユニットとを異なる建屋階の梁若しくは壁に載置し、前記第2機械室ユニットは、前記昇降路内に備えられた支持部材から吊下げられ、前記第1機械室ユニットは、前記第2機械室ユニットから吊下げられ、前記第1機械室ユニット若しくは前記第2機械室ユニットには、前記第1機械室ユニットを揚重する第1機械室ユニット用揚重機が備えられ、前記支持部材若しくは前記第2機械室ユニットには、前記第2機械室ユニットを揚重する第2機械室ユニット用揚重機が備えられたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、昇降路内に備えられ、主索により吊下げられたかご及び釣合おもりを昇降方向に移動させる巻上機と、前記主索の延長分を蓄える主索ドラムと、前記巻上機及び前記主索ドラムを備えた機械室ユニットとから構成されたエレベーターの主索延長方法において、前記機械室ユニットは、前記巻上機を備える第1機械室ユニットと、前記主索ドラムを備える第2機械室ユニットとに分割し、分割した前記第1機械室ユニットと前記第2機械室ユニットとを異なる建屋階の梁若しくは壁に載置し、機械室ユニット揚重時において、前記第2機械室ユニットは、前記昇降路内に備えられた支持部材から吊下げられ、前記第1機械室ユニットは、前記第2機械室ユニットから吊下げられ、前記第1機械室ユニット若しくは前記第2機械室ユニットには、前記第1機械室ユニットを揚重する第1機械室ユニット用揚重機が備えられ、前記支持部材若しくは前記第2機械室ユニットには、前記第2機械室ユニットを揚重する第2機械室ユニット用揚重機が備えられ、前記第1機械室ユニットには、前記主索を把持する第1機械室ユニット主索把持装置が備えられ、前記第2機械室ユニットには、前記主索を把持する第2機械室ユニット主索把持装置が備えられ、前記第2機械室ユニット用揚重機による前記第2機械室ユニットの引き上げ時には、前記第2機械室ユニット主索把持装置を開放して前記主索ドラムから前記主索を引き出すと共に、前記第1機械室ユニット主索把持装置で前記主索を把持し、前記第1機械室ユニット用揚重機による前記第1機械室ユニットの引き上げ時には、前記第1機械室ユニット主索把持装置を開放すると共に、前記第2機械室ユニット主索把持装置で前記主索を把持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、揚重機員数を減らし、特定階の梁若しくは壁にかかる荷重を抑制することができる工事用エレベーター装置及びエレベーターの主索延長方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施例に係る工事用エレベーター装置の概略構成図である。
【
図2】第2機械室ユニットを移動させた状態を示す工事用エレベーター装置の概略構成図である。
【
図3】第1機械室ユニットを移動させた状態を示す工事用エレベーター装置の概略構成図である
【
図4】第2実施例に係る工事用エレベーター装置の機械室ユニット用揚重機と機械室ユニットとかごとの配置関係を示す平面図である。
【
図5】第2実施例に係る工事用エレベーター装置の機械室ユニット用揚重機と第2機械室ユニットとかご及び釣合おもりとの配置関係を示す平面図である。
【
図6】第3実施例に係る工事用エレベーター装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の工事用エレベーター装置の実施例について、
図1~
図6を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
[工事用エレベーター装置の構成]
まず、本発明の第1実施例に係る工事用エレベーター装置の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、第1実施例に係る工事用エレベーター装置の概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、第1実施例に係る工事用エレベーター装置1は、建物構造物内に形成された昇降路100内に設けられている。この工事用エレベーター装置1は、支持部材2と、機械室ユニット(第1機械室ユニット3、第2機械室ユニット4)と、機械室ユニット用揚重機(第1機械室ユニット用揚重機5a,5b、第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6c)とを備えている。
【0013】
第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cは、第2機械室ユニット4に三台以上備えられ、第2機械室ユニット4を引き上げる。
【0014】
支持部材2は、昇降路100内の上部にあって、建屋の梁110a若しくは壁に載置されている。
【0015】
第2機械室ユニット4は、支持部材2から吊り下げられており、第2機械室ユニット4に設置された第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cによって揚重され、昇降方向に移動する。
【0016】
第1機械室ユニット3は、第2機械室ユニット4から吊り下げられており、第1機械室ユニット3に設置された第1機械室ユニット用揚重機5a,5bによって揚重され、昇降方向に移動する。第1機械室ユニット用揚重機5a,5bは、第1機械室ユニット3と第2機械室ユニット4にそれぞれ設けた複数のプーリ7を介してN:1(Nは2以上)ローピングで、第1機械室ユニット3を揚重する。
【0017】
第1機械室ユニット3は、昇降路100の壁面に向かって伸縮(
図1の左右方向)し、伸長時に建屋の梁110d若しくは壁に係合する可動支持部8を有している。また、第1機械室ユニット3は、巻上機9と、巻上機9のシーブに巻き掛けられた主索10と、巻上機9の一方側に位置する主索10に配置されたかご11と、巻上機9の他方側に位置する主索10に配置された釣合おもり12とを有している。巻上機9は、昇降路100内に備えられ、主索10により吊下げられたかご11及び釣合おもり12を昇降方向に移動させる。
【0018】
第2機械室ユニット4は、昇降路100の壁面に向かって伸縮(
図1の左右方向)し、伸長時に建屋の梁110c若しくは壁に係合する可動支持部13を有している。
【0019】
主索10の一端側は、第1機械室ユニット3に備えられた主索固定部14によって第1機械室ユニット3に固定されている。主索10の他端側は、第1機械室ユニット3から上方に延び、第2機械室ユニット4に備えられた主索ドラム15に巻かれている。主索ドラム15は、主索10を延長させるために備えられており、主索10の延長分を蓄えている。主索10は、第1機械室ユニット3に備えられた第1機械室ユニット主索把持装置16と、第2機械室ユニット4に備えられた第2機械室ユニット主索把持装置17とによってそれぞれ把持される。
【0020】
第1機械室ユニット3には、巻上機9及び第1機械室ユニット用揚重機5a,5bが備えられ、第2機械室ユニット4には主索ドラム15及び第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cが備えられている。巻上機9、第1機械室ユニット用揚重機5a,5b、主索ドラム15、第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cは重量があり、機械室ユニットの重量増加の原因となっている。これらを一つの機械室ユニットに組み込んで構成し、特定階の建屋の梁若しくは壁に載置した場合、揚重機の員数が増え、機械室ユニットが載置された特定階の梁若しくは壁には、許容荷重を超えた荷重がかかるといった課題があった。
【0021】
そこで、本実施例では、巻上機9及び主索ドラム15等を備える機械室ユニットを、第1機械室ユニット3と第2機械室ユニット4とに複数に分割し、それぞれの機械室ユニットを異なる建屋階の梁若しくは壁(
図1では梁110c,110d)に載置するようにしている。
【0022】
このように構成することにより、特定階の梁若しくは壁には許容荷重を超える荷重がかかることなく、機械室ユニットを設置することができる。
【0023】
工事用エレベーター装置は、建屋階の工事の進行に合わせ、機械室ユニットを上方の建屋階に移動させる。機械室ユニットの移動方法について、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0024】
図2は、第2機械室ユニットを移動させた状態を示す工事用エレベーター装置の概略構成図、
図3は、第1機械室ユニットを移動させた状態を示す工事用エレベーター装置の概略構成図である。
【0025】
図2において、第2機械室ユニット4を現在の建屋階の位置(梁110c)から上の建屋階の位置(梁110b)へと移動させる場合には、第2機械室ユニット主索把持装置17を開放すると共に、第1機械室ユニット主索把持装置16で主索10を把持する。そして、第1機械室ユニット用揚重機5a,5bからロープを引き出し、第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cで第2機械室ユニット4を引き上げ、可動支持部13を縮小させる。第2機械室ユニット4が上の建屋階の梁110bを通過した後、可動支持部13を伸長させて上の建屋階の梁110b若しくは壁と係合させる。このように第1実施例では、第2機械室ユニット4に可動支持部13を備えているので、第2機械室ユニット4の昇降作業性を向上することができる。なお、
図3において、第2機械室ユニット主索把持装置17は、第1機械室ユニット主索把持装置16と第2機械室ユニット主索把持装置17との間の主索重量分を把持する構成としてもよい。第1機械室ユニット主索把持装置16と第2機械室ユニット主索把持装置17との距離が長いと、その間の主索重量が大きくなり、第2機械室ユニット主索把持装置17を開放した際に、主索重量によって主索ドラム15から意図せず主索10が引き出されることがある。これに対し、第2機械室ユニット主索把持装置17は、第1機械室ユニット主索把持装置16と第2機械室ユニット主索把持装置17との間の主索重量分を把持し、第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cの第2機械室ユニット4を揚重する力で主索ドラム15から主索10を引き出すことで安全性と作業性を向上することができる。
【0026】
なお、
図1に示す構成では、第1機械室ユニット3および第2機械室ユニット4には、それぞれ可動支持部8、13を備える構成としたが、非可動の支持部材を機械室ユニットに備えるようにしてもよい。
【0027】
第2機械室ユニット4が上の建屋階へ移動している状態においては、第1機械室ユニット3を吊下げるロープが第1機械室ユニット用揚重機5a,5bから引き出される。さらに主索10が、主索ドラム15から引き出される。このようにして、第2機械室ユニット4は、第1機械室ユニット3を移動させることなく、上の建屋階へ移動することができる。この際、主索10は第1機械室ユニット主索把持装置16によって把持されているので、主索10が第1機械室ユニット3から下方に延びることはなく、また、第2機械室ユニット4を上の建屋階へ移動させる作業中においても、かご11を使用することが可能となる。
【0028】
次に、第1機械室ユニット3の移動方法について説明する。
【0029】
図3において、第1機械室ユニット3を現在の建屋階の位置(梁110d)から上の建屋階の位置(梁110c)へと移動させる場合には、釣合おもり12を図示を省略した釣合おもり用の緩衝器に支持させ、主索10にかかる張力を低減させ、第1機械室ユニット3とかご11をチェーン18で接続し、第1機械室ユニット主索把持装置16を開放すると共に、第2機械室ユニット主索把持装置17で主索10を把持する。そして、第1機械室ユニット用揚重機5a,5bで第1機械室ユニット3を引き上げ、可動支持部8を縮小させる。このとき、第2機械室ユニットを支持する梁には、第1機械室ユニット3を揚重している最中に、一時的に第1機械室ユニット3の重量とかご11の重さが追加で負荷される(釣合おもり12の重量は釣合おもり用緩衝器が支持するためかからない)。この場合において、追加で負荷される重量分は、例えば図示を省略した第1機械室ユニット3に備えられた非常止め装置を用いてかご側ガイドレール101a、101b、もしくはおもり側ガイドレール102a,102bにて支持する構成としてもよい。または、かご側ガイドレール101a、101b、もしくはおもり側ガイドレール102a,102bそれぞれについて、ガイドレール同士を連結する図示を省略するフィッシュプレートに上記追加重量を支持する構造としてもよい。
【0030】
第1機械室ユニット3が上の建屋階の梁110cを通過した後、可動支持部8を伸長させて上の建屋階の梁110c若しくは壁と係合させる。その後、第1機械室ユニット主索把持装置16で主索10を把持する。このように第1実施例では、第1機械室ユニット3に可動支持部8を備えているので、第1機械室ユニット3の昇降作業性を向上することができる。
【0031】
第1機械室ユニット3の上の建屋階への移動完了後は、主索ドラム15から主索10が引き出された分、かご11の昇降方向への移動距離が延長される。
【0032】
第1機械室ユニット3を建屋階の梁110c若しくは壁に載置後は、第1機械室ユニット3とかご11を接続するチェーン18を取り外す。
【0033】
第1実施例によれば、機械室ユニットを第1機械室ユニット3と第2機械室ユニット4とに複数に分割し、それぞれの機械室ユニットを異なる建屋階の梁若しくは壁(
図1では梁110c,110d)に載置するようにしているので、揚重機の員数が増えることなく、さらに特定階の梁若しくは壁には許容荷重を超える荷重がかかることなく、機械室ユニットを設置することができる。
【0034】
また、第1実施例では、主索10が第1機械室ユニット主索把持装置16によって把持されているので、第2機械室ユニット4を上の建屋階へ移動させている作業中においても、かご11を使用することが可能となる。
【0035】
さらに、第2機械室ユニット4を移動させている状態においては、第1機械室ユニット3が建屋階の梁若しくは壁に載置されているので、第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cは、第2機械室ユニット4を引き上げるだけの動力を備えていれば十分であり、第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cが大型化するのを抑制することができる。
【0036】
このような構成の工事用エレベーター装置1は、第1機械室ユニット3の下方に設置したかご11(釣合おもり12)を昇降方向に運転し、例えば、建築工事の作業者を第1機械室ユニット3の下方における各建屋階に搬送する。また、第2機械室ユニット4には、主索10を延長する主索ドラム15が設置され、第1機械室ユニット3によるかご11(釣合おもり12)の昇降運転を停止することなく主索10の延長作業ができるので、機械室揚重に伴うエレベーターサービスの停止時間を短縮することができる。
[機械室ユニットの吊点位置]
次に、第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cによる第2機械室ユニット4の吊点位置について、
図4を参照して説明する。
図4は、第2実施例に係る工事用エレベーター装置の機械室ユニット用揚重機と機械室ユニットとかごとの配置関係を示す平面図である。
【0037】
上述したように、第2機械室ユニット4の下方には、かご11が配置されている(
図1~
図3参照)。また、
図4に示すように、昇降路100には、かご11を昇降方向に案内する一対のかご側ガイドレール101a,101bが設けられている。一対のかご側ガイドレール101a,101bは、昇降路100における互いに対向する壁面に沿って延びている。
【0038】
一方、かご11には、一対のかご側ガイドレール101a,101bに摺動可能に係合する一対のかご側ガイドシュー(不図示)が設けられている。また、第2機械室ユニット4には、一対のかご側ガイドレール101a,101bに摺動可能に係合する一対の機械室側ガイドシュー31a,31bが設けられている。したがって、一対のかご側ガイドレール101a,101bは、第2機械室ユニット4を昇降方向に案内する。
【0039】
図4に示すように、第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cによる第2機械室ユニット4の吊点は、3箇所であり、吊点21a,21b,21cとする。
【0040】
吊点21a,21b,21cは、第2機械室ユニット4の重心Gを中心とした仮想円Cと重なる位置に配置する。これにより、第2機械室ユニット4の上方の仮想水平面から見たとき、第2機械室ユニット4の重心Gから第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cによる第2機械室ユニット4の吊点21a,21b,21cまでの距離が略等しい。
【0041】
また、第2機械室ユニット4の重心Gは、吊点21a,21b,21c間を結ぶ仮想直線で囲まれた領域内に位置している。
【0042】
その結果、第2機械室ユニット4の吊点21a,21b,21cに均一に荷重が掛かるので、第2機械室ユニット4の傾きを効果的に防止することができ、第2機械室ユニット4の安定性を保つことができる。さらに、1つの機械室ユニット用揚重機への過負荷を防止しながら第2機械室ユニット4を揚重することができる。
【0043】
また、第1実施例では、第2機械室ユニット4の吊点21a,21b,21cのうち、吊点21a,21bが、一対のかご側ガイドレール101a,101bを結ぶかご側仮想直線L1を挟んで第2機械室ユニット4の重心Gと反対側に配置されている。これにより、吊点21a,21bは、かご側仮想直線L1に対して重心Gと反対側である外側に配置される。その結果、第2機械室ユニット4に偏荷重が生じても、かご側ガイドレール101a,101bに過負荷が加えられないようにすることができる。
【0044】
なお、第2機械室ユニット4の重心Gは、対象となるエレベーター装置の昇降路寸法やマシン(巻上機)の据付位置によって変化する。また、一対のかご側ガイドレール101a,101bの取り付け位置も、対象となるエレベーター装置に応じて変化する。そのため、本実施例の工事用エレベーター装置における吊点21a,21b,21cは、第2機械室ユニット4の重心Gや一対のかご側ガイドレール101a,101bの位置に応じて決定する。
【実施例2】
【0045】
[機械室ユニットの吊点位置]
以下、本発明の第2実施例に係る工事用エレベーター装置について、
図5を参照して説明する。
図5は、第2実施例に係る工事用エレベーター装置の機械室ユニット用揚重機と第2機械室ユニットとかご及び釣合おもりとの配置関係を示す平面図である。
【0046】
第2実施例に係る工事用エレベーター装置は、上述の第1実施例に係る工事用エレベーター装置と同様の構成を有しており、異なる点は、第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cによる第2機械室ユニット4の吊点位置である。そのため、ここでは、第2実施例に係る第2機械室ユニット4の吊点位置について説明し、第1実施例と共通する構成についての説明を省略する。
【0047】
第2機械室ユニット4の下方には、釣合おもり12が配置されている(
図1~
図3参照)。
図5に示すように、昇降路100には、釣合おもり12を昇降方向に案内する一対のおもり側ガイドレール102a,102bが設けられている。一対のおもり側ガイドレール102a,102bは、昇降路100における互いに対向する壁面に沿って延びている。
【0048】
一対のおもり側ガイドレール102a,102bを結ぶおもり側仮想直線L2は、一対のかご側ガイドレール101a,101bを結ぶかご側仮想直線L1と略平行である。すなわち、一対のおもり側ガイドレール102a,102bと一対のかご側ガイドレール101a,101bは、昇降路100における互いに対向する一組の壁面に設けられている。
【0049】
釣合おもり12には、一対のおもり側ガイドレール102a,102bに摺動可能に係合する一対のおもり側ガイドシュー(不図示)が設けられている。また、第2機械室ユニット4には、一対のおもり側ガイドレール102a,102bに摺動可能に係合する一対の機械室側ガイドシュー32a,32bが設けられている。したがって、一対のおもり側ガイドレール102a,102bは、第2機械室ユニット4を昇降方向に案内する。
【0050】
第2実施例に係る第2機械室ユニット4の吊点位置は、第1実施例に係る第2機械室ユニット4の吊点位置の条件を全て満たす。したがって、第2機械室ユニット4の傾きを効果的に防止することができ、第2機械室ユニット4の安定性を保つことができる。また、1つの機械室ユニット用揚重機への過負荷を防止することができる。さらに、第2機械室ユニット4に偏荷重が生じても、かご側ガイドレール101a,101bに過負荷が加えられないようにすることができる。
【0051】
さらにまた、第2実施例では、第2機械室ユニット4の吊点21a,21b,21cのうち、吊点21cが、おもり側仮想直線L2を挟んで第2機械室ユニット4の重心Gと反対側に配置されている。これにより、吊点21cは、おもり側仮想直線L2に対して重心Gと反対側である外側に配置される。その結果、第2機械室ユニット4に偏荷重が生じても、一対のおもり側ガイドレール102a,102bに過負荷が加えられないようにすることができる。
【0052】
なお、第2機械室ユニット4の重心Gは、対象となるエレベーター装置の昇降路寸法やマシン(巻上機)の据付位置によって変化する。また、一対のかご側ガイドレール101a,101b及び一対のおもり側ガイドレール102a,102bの取り付け位置も、対象となるエレベーター装置に応じて変化する。そのため、本実施例の工事用エレベーター装置における吊点21a,21b,21cは、第2機械室ユニット4の重心Gや各種ガイドレールの位置に応じて決定する。
【実施例3】
【0053】
[工事用エレベーター装置の構成]
以下、本発明の第3実施例に係る工事用エレベーター装置について、
図6を参照して説明する。
図6は、第3実施例に係る工事用エレベーター装置の概略構成図である。
【0054】
第3実施例に係る工事用エレベーター装置は、第1機械室ユニット用揚重機及び第2機械室ユニット用揚重機の構成が、第1及び第2実施例に係る工事用エレベーター装置と異なる。第3実施例では、機械室ユニットを第1機械室ユニットと第2機械室ユニットから構成する。
【0055】
図6に示すように、第3実施例に係る工事用エレベーター装置60は、建物構造物内に形成された昇降路100内に設けられている。この工事用エレベーター装置60は、支持部材2と、機械室ユニット(第1機械室ユニット3、第2機械室ユニット4)と、機械室ユニット用揚重機(第1機械室ユニット用揚重機51a,51b,51c、第2機械室ユニット用揚重機61a,61b,61c)とを備えている。
【0056】
第2機械室ユニット4は、支持部材2から吊り下げられており支持部材2に三台以上設置された第2機械室ユニット用揚重機61a,61b,61cによって揚重され、昇降方向に移動する。
【0057】
第1機械室ユニット3は、第2機械室ユニット4から吊り下げられており、第2機械室ユニット4に三台以上設置された第1機械室ユニット用揚重機51a,51b,51cによって揚重され、昇降方向に移動する。なお、第1機械室ユニット用揚重機は、第1機械室ユニット3若しくは第2機械室ユニット4の何れかに設置し、第1実施例(
図1)のように、第1機械室ユニット3と第2機械室ユニット4のそれぞれに設置した複数のプーリ7を介してN:1(Nは2以上)ローピングで、第1機械室ユニット3を揚重するようにしてもよい。
【0058】
支持部材2は、昇降路100内の上部にあって、建屋の梁110a若しくは壁に載置されている。
【0059】
第2機械室ユニット4は、支持部材2に設置された第2機械室ユニット用揚重機61a,61b,61cによって支持部材2から吊り下げられており、昇降方向に移動可能に構成されている。
【0060】
第1機械室ユニット3は、第2機械室ユニット4に設置された第1機械室ユニット用揚重機51a,51b,51cによって第2機械室ユニット4から吊り下げられており、昇降方向に移動可能に構成されている。
【0061】
第1機械室ユニット3は、昇降路100の壁面に向かって伸縮(
図1の左右方向)し、伸長時に建屋の梁110d若しくは壁に係合する可動支持部8を有している。また、第1機械室ユニット3は、巻上機9と、巻上機9のシーブに巻き掛けられた主索10と、巻上機9の一方側に位置する主索10に配置されたかご11と、巻上機9の他方側に位置する主索10に配置された釣合おもり12とを有している。巻上機9は主索10を巻上げてかご11(釣合おもり12)を昇降させる。
【0062】
第2機械室ユニット4は、昇降路100の壁面に向かって伸縮(
図1の左右方向)し、伸長時に建屋の梁110c若しくは壁に係合する可動支持部13を有している。
【0063】
主索10の一端側は、第1機械室ユニット3に備えられた主索固定部14によって第1機械室ユニット3に固定されている。主索10の他端側は、第1機械室ユニット3から上方に延び、第2機械室ユニット4に備えられた主索ドラム15に巻かれている。主索ドラム15は、主索10を延長させるために備えられている。主索10は、第1機械室ユニット3に備えられた第1機械室ユニット主索把持装置16と、第2機械室ユニット4に備えられた第2機械室ユニット主索把持装置17とによってそれぞれ把持される。
【0064】
第1機械室ユニット3には、巻上機9が備えられ、第2機械室ユニット4には主索ドラム15及び第1機械室ユニット用揚重機51a,51b,51cが備えられている。巻上機9、第1機械室ユニット用揚重機51a,51b、主索ドラム15は重量があり、機械室ユニットを重くしている。これらを一つの機械室ユニットに組み込んで構成し、特定階の建屋の梁若しくは壁に載置した場合、この特定階の梁若しくは壁には、許容荷重を超えた荷重がかかるといった課題があった。
【0065】
そこで、第3実施例では、巻上機9及び主索ドラム15等を備える機械室ユニットを、第1機械室ユニット3と第2機械室ユニット4とに複数に分割し、それぞれの機械室ユニットを異なる建屋階の梁若しくは壁(
図1では梁110c,110d)に載置するようにしている。
【0066】
このように構成することにより、特定階の梁若しくは壁には許容荷重を超える荷重がかかることなく、機械室ユニットを設置することができる。
【0067】
工事用エレベーター装置は、建屋階の工事の進行に合わせ、機械室ユニットを上方の建屋階に移動させる。
【0068】
第2機械室ユニット4を現在の建屋階の位置(梁110c)から上の建屋階の位置(梁110b)へと移動させる場合には、第2機械室ユニット主索把持装置17を開放すると共に、第1機械室ユニット主索把持装置16で主索10を把持する。そして、第1機械室ユニット用揚重機51a,51b,51cからロープを引き出し、第2機械室ユニット用揚重機61a,61b,61cで第2機械室ユニット4を引き上げ、可動支持部13を縮小させる。第2機械室ユニット4が上の建屋階の梁110bを通過した後、可動支持部13を伸長させて上の建屋階の梁110b若しくは壁と係合させる。このように第3実施例では、第2機械室ユニット4に可動支持部13を備えているので、第2機械室ユニット4の昇降作業性を向上することができる。
【0069】
第2機械室ユニット4が上の建屋階へ移動している状態においては、第1機械室ユニット3を吊下げるロープが第1機械室ユニット用揚重機51a,51b,51cから引き出される。さらに主索10が、主索ドラム15から引き出される。このようにして、第2機械室ユニット4は、第1機械室ユニット3を移動させることなく、上の建屋階へ移動することができる。この際、主索10は第1機械室ユニット主索把持装置16によって把持されているので、主索10が第1機械室ユニット3から下方に延びることはなく、また、第2機械室ユニット4を上の建屋階へ移動させる作業中においても、かご11を使用することが可能となる。なお、第2機械室ユニット主索把持装置17は、第1機械室ユニット主索把持装置16と第2機械室ユニット主索把持装置17との間の主索重量分を把持する構成としてもよい。第1機械室ユニット主索把持装置16と第2機械室ユニット主索把持装置17との距離が長いと、その間の主索重量が大きくなり、第2機械室ユニット主索把持装置17を開放した際に、主索重量によって主索ドラム15から意図せず主索10が引き出されることがある。これに対し、第2機械室ユニット主索把持装置17は、第1機械室ユニット主索把持装置16と第2機械室ユニット主索把持装置17との間の主索重量分を把持し、第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cの第2機械室ユニット4を揚重する力で主索ドラム15から主索10を引き出すことで安全性と作業性を向上することができる。
【0070】
次に、第1機械室ユニット3の移動方法について説明する。
【0071】
第1機械室ユニット3を現在の建屋階の位置(梁110d)から上の建屋階の位置(梁110c)へと移動させる場合には、釣合おもり12を図示を省略した釣合おもり用の緩衝器に支持させ、主索10にかかる張力を低減させ、第1機械室ユニット3とかご11をチェーン(
図3のチェーン18参照)で接続し、第1機械室ユニット主索把持装置16を開放すると共に、第2機械室ユニット主索把持装置17で主索10を把持する。そして、第1機械室ユニット用揚重機51a,51b,51cで第1機械室ユニット3を引き上げ、可動支持部8を縮小させる。第1機械室ユニット3が上の建屋階の梁110cを通過した後、可動支持部8を伸長させて上の建屋階の梁110c若しくは壁と係合させる。その後、第1機械室ユニット主索把持装置16で主索10を把持する。このように第3実施例では、第1機械室ユニット3に可動支持部8を備えているので、第1機械室ユニット3の昇降作業性を向上することができる。
【0072】
第1機械室ユニット3の上の建屋階への移動完了後は、主索ドラム15から主索10が引き出された分、かご11の昇降方向への移動距離が延長される。
【0073】
第1機械室ユニット3を建屋階の梁110c若しくは壁に載置後は、第1機械室ユニット3とかご11を接続するチェーンを取り外す。
【0074】
第3実施例によれば、機械室ユニットを第1機械室ユニット3と第2機械室ユニット4とに複数に分割し、それぞれの機械室ユニットを異なる建屋階の梁(
図1では梁110c,110d)に載置するようにしているので、特定階の梁若しくは壁には許容荷重を超える荷重がかかることなく、機械室ユニットを設置することができる。
【0075】
また、第3実施例では、主索10が第1機械室ユニット主索把持装置16によって把持されているので、第2機械室ユニット4を上の建屋階へ移動させている作業中においても、かご11を使用することが可能となる。
【0076】
さらに、第2機械室ユニット4を移動させている状態においては、第1機械室ユニット3が建屋階の梁若しくは壁に載置されているので、第2機械室ユニット用揚重機61a,61b,61cは、第2機械室ユニット4を引き上げるだけの動力を備えていれば十分であり、第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6cが大型化するのを抑制することができる。
【0077】
さらにまた、第2機械室ユニット用揚重機61a,61b,61cは支持部材2に設置するようにしているので、第2機械室ユニット用揚重機61a,61b,61cの自重分だけ第2機械室ユニット4を軽量化でき、第2機械室ユニット4が載置される特定階の梁若しくは壁にかかる荷重を軽減できる。
【0078】
このような構成の工事用エレベーター装置1は、第1機械室ユニット3の下方に設置したかご11(釣合おもり12)を昇降方向に運転し、例えば、建築工事の作業者を第1機械室ユニット3の下方における各建屋階に搬送する。また、第2機械室ユニット4には、主索10を延長する主索ドラム15が設置され、第1機械室ユニット3によるかご11(釣合おもり12)の昇降運転を停止することなく主索10の延長作業ができるので、機械室揚重に伴うエレベーターサービスの停止時間を短縮することができる。
[まとめ]
以上説明したように、上述した第1及び第2実施例に係る工事用エレベーター装置は、昇降路(昇降路100)に設けられた支持部材(支持部材2)と、支持部材の下方に配置された第1機械室ユニット(第1機械室ユニット3)及び第2機械室ユニット(第2機械室ユニット4)と、支持部材から第2機械室ユニットを昇降方向に移動可能に吊り下げた第2機械室ユニット用揚重機(第2機械室ユニット用揚重機6a,6b,6c)と、第1機械室ユニットに設置され、第2機械室ユニットから第1機械室ユニットを昇降方向に移動可能に吊り下げた第1機械室ユニット用揚重機(第1機械室ユニット用揚重機5a,5b)と、を備えている。機械室ユニットは、第1機械室ユニットと第2機械室ユニットとに分割され、第1機械室ユニットと第2機械室ユニットは、異なる建屋階の梁若しくは壁に載置するようにしている。
【0079】
第1及び第2実施例よれば、第1機械室ユニットと第2機械室ユニットの荷重を異なる建屋階の梁に分散することができるので、特定階の梁若しくは壁において許容荷重を超える荷重がかかることなく、機械室ユニットを設置することができる。
【0080】
また、第1及び第2実施例よれば、機械室ユニットを複数に分割(第1機械室ユニット3、第2機械室ユニット4)しているので、主索(主索10)の延長作業による機械室揚重時のエレベーターサービスの停止時間を短縮することができる。
【0081】
さらに、第1及び第2実施例よれば、主索が第1機械室ユニット主索把持装置によって把持されているので、第2機械室ユニットを上の建屋階へ移動させている作業中においても、かごを使用することが可能となる。
【0082】
第2機械室ユニット用揚重機は、三台以上設けられ、第2機械室ユニットの吊点が3箇所以上である。第2機械室ユニットの上方の仮想水平面から見たとき、機械室ユニットの重心(重心G)から各吊点までの距離が略等しく、かつ、各吊点間を結ぶ仮想直線で囲まれた領域内に重心が位置する。
【0083】
これにより、第2機械室ユニットの3つの吊点に均一に荷重が掛かるので、第2機械室ユニットの傾きを効果的に防止することができ、第2機械室ユニットの安定性を保つことができる。さらに、1つの機械室ユニット用揚重機への過負荷を防止しながら機械室ユニットを揚重することができる。
【0084】
また、上述した第1及び第2実施例に係る工事用エレベーター装置を配置する昇降路には、かご(かご11)を昇降方向に案内する一対のかご側ガイドレール(一対のかご側ガイドレール101a,101b)が設けられている。そして、機械室ユニットの3箇所以上の吊点のうち、少なくとも1箇所の吊点(吊点21a,21b)は、一対のかご側ガイドレール間を結ぶかご側仮想直線(かご側仮想直線L1)を挟んで重心と反対側に配置されている。これにより、機械室ユニットに偏荷重が生じても、かご側ガイドレールに過負荷が加えられないようにすることができる。
【0085】
さらに、上述した第2実施例に係る工事用エレベーター装置を配置する昇降路には、釣合おもり(釣合おもり12)を昇降方向に案内する一対のおもり側ガイドレール(一対のおもり側ガイドレール102a,102b)が設けられている。一対のおもり側ガイドレール間を結ぶおもり側仮想直線(おもり側仮想直線L2)は、かご側仮想直線(かご側仮想直線L1)と略平行である。そして、機械室ユニットの3箇所以上の吊点のうち、かご側仮想直線を挟んで重心と反対側に配置された吊点(吊点21a,21b)以外の吊点(吊点21c)は、おもり側仮想直線を挟んで重心と反対側に配置されている。これにより、機械室ユニットに偏荷重が生じても、一対のおもり側ガイドレールに過負荷が加えられないようにすることができる。
【0086】
さらに、上述した第3実施例に係る工事用エレベーター装置は、昇降路(昇降路100)に設けられた支持部材(支持部材2)と、支持部材の下方に配置された第1機械室ユニット(第1機械室ユニット3)及び第2機械室ユニット(第2機械室ユニット4)と、支持部材に設置され支持部材から第2機械室ユニットを昇降方向に移動可能に吊り下げた第2機械室ユニット用揚重機(第2機械室ユニット用揚重機61a,61b,61c)と、第2機械室ユニットに設置され第2機械室ユニットから第1機械室ユニットを昇降方向に移動可能に吊り下げた第1機械室ユニット用揚重機(第1機械室ユニット用揚重機51a,51b,51c)と、を備えている。
【0087】
第3実施例では第1及び第2実施例に加え、以下の効果を得ることができる。
【0088】
第2機械室ユニットを揚重する第2機械室ユニット用揚重機が支持部材に設置されているので、第2機械室ユニット用揚重機の自重の分だけ機械室ユニットの重量を低減できる。その結果、第2機械室ユニット用揚重機が第1機械室ユニットを引き上げるための駆動力を小さくでき、第2機械室ユニット用揚重機の大型化を抑制することができる。
【0089】
さらに、第2機械室ユニット4を移動させている状態においては、第2機械室ユニット4が建屋階の梁若しくは壁に載置されているので、第2機械室ユニット用揚重機は、第2機械室ユニット4を引き上げるだけの動力を備えていれば十分であり、第2機械室ユニット用揚重機が大型化するのを抑制することができる。
【0090】
以上、本発明の工事用エレベーター装置の実施例について、その作用効果も含めて説明した。しかし、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は、本発明を分かり易く詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1,60…工事用エレベーター装置、3…第1機械室ユニット、4…第2機械室ユニット、5a,5b…第1機械室ユニット用揚重機、6a,6b,6c…第2機械室ユニット用揚重機、7…プーリ、8,13…可動支持部、9…巻上機、10…主索、11…かご、12…釣合おもり、14…主索固定部、15…主索ドラム、16…第1機械室ユニット主索把持装置、17…第2機械室ユニット主索把持装置、18…チェーン、21a,21b,21c…吊点、31a,31b,32a,32b…機械室側ガイドシュー、51a,51b,51c…第1機械室ユニット用揚重機、61a,61b,61c…第2機械室ユニット用揚重機、100…昇降路、101a,101b…かご側ガイドレール、102a,102b…おもり側ガイドレール、110a,110b,110c,110d…梁