(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】トラック用電動アクスルのためのトランスミッションギヤボックス
(51)【国際特許分類】
F16H 3/091 20060101AFI20231218BHJP
B60K 17/12 20060101ALI20231218BHJP
F16H 48/08 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F16H3/091
B60K17/12
F16H48/08
(21)【出願番号】P 2022527158
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2019081534
(87)【国際公開番号】W WO2021093973
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】バリヨ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】テラット,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】コヴァン,ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァナンティ,セルジュ
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03636796(US,A)
【文献】国際公開第2018/112517(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/091
B60K 17/12
F16H 48/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ギヤボックス(5)であって、
ギヤボックスケーシング(50)と、
第1の軸線(A1)周りに回転するように構成された主シャフト(10)
であって、前記ギヤボックスケーシング(50)内に回転可能に取り付けられた第1の軸端及び第2の軸端(101,102)を有する、主シャフト(10)と、
前記主シャフト(10)と共に回転するように前記主シャフト(10)に固定された分配ギヤ(12)と、
前記第1の軸線(A1)周りに回転するように構成されると共に、前記主シャフト(10)の周りに配置された伝達ギヤ(13)と、
第2の軸線(A2)周りに回転するように構成された補助シャフト(20)であって、前記第1の軸線(A1)と前記第2の軸線(A2)とが互いに離れている、補助シャフト(20)と、
前記補助シャフト(20)の周りに配置された補助出力ギヤ(22)及び補助伝達ギヤ(21)であって、前記補助伝達ギヤ(21)は、前記伝達ギヤ(13)に係合されている、補助出力ギヤ(22)及び補助伝達ギヤ(21)と、
前記ギヤボックスの外に動力を伝達するための出力ギヤ(3)であって、前記主シャフト(10)の周りに独立して回転可能に配置され、前記第1の軸線(A1)周りに回転するように構成され、前記補助出力ギヤ(22)に係合されている、出力ギヤ(3)と、
少なとも2つの位置の間でスライド可能な
第1のギヤシフトシステム(8)であって、
前記主シャフト(10)から前記出力ギヤ(3)に動力を直接伝達するために前記分配ギヤ(12)及び前記出力ギヤ(3)に回転可能に係合し、又は、
前記主シャフト(10)から前記補助シャフト(20)を介して前記出力ギヤ(3)に動力を間接的に伝達するために前記分配ギヤ(12)及び前記伝達ギヤ(13)に回転可能に係合する、
ように構成された、
第1のギヤシフトシステム(8)と、
を含む、ギヤボックス。
【請求項2】
前記分配ギヤ(12)は、前記主シャフト(10)に剛性的に固定されているか又は前記主シャフト(10)と一体である、請求項1に記載のギヤボックス。
【請求項3】
少なくとも前記補助伝達ギヤ(21)又は前記補助出力ギヤ(22)は、前記補助シャフト(20)に剛性的に固定されているか又は前記補助シャフト(20)と一体である、請求項1-2のいずれかに記載のギヤボックス。
【請求項4】
前記主シャフト(10)は
、前記第1の軸端(101)に配置された第1の主ローラ軸受(41)及び前記第2の軸端(102)に配置された第2の主ローラ軸受(42)を介して、
前記ギヤボックスケーシング(50)内に回転可能に取り付けられている、請求項1-3のいずれかに記載のギヤボックス。
【請求項5】
前記第1の軸線(A1)に沿って測定される前記ギヤボックス(5)の軸方向の長さ(LG)が400mm未満である、請求項1-4のいずれかに記載のギヤボックス。
【請求項6】
前記出力ギヤ(3)は、少なくとも1つの出力ローラ軸受(43,44)を介して前記主シャフト(10)に取り付けられている、請求項1-5のいずれかに記載のギヤボックス。
【請求項7】
前記伝達ギヤ(13)は、少なくとも1つのローラ軸受(49)を介し
て、前記主シャフト(10)に取り付けられている、請求項1-6のいずれかに記載のギヤボックス。
【請求項8】
前記主シャフト(10)と共に回転するように前記主シャフト(10)に固定された主入力リング(11)をさらに含
む、請求項1-7のいずれかに記載のギヤボックス。
【請求項9】
前記主シャフト(10)の回転速度と前記出力ギヤ(3)の回転速度との間の比が、
前記分配ギヤ(12)と前記出力ギヤ(3)とが回転可能に係合された場合の第1のギヤ比と、
前記分配ギヤ(12)と前記伝達ギヤ(13)が回転可能に係合された場合の第2のギヤ比と、
の間で選択可能であり、
前記第2のギヤ比は、前記第1のギヤ比よりも大きい、
請求項1-8のいずれかに記載のギヤボックス。
【請求項10】
前記
第1のギヤシフトシステム(8)は、前記主シャフト(10)と前記出力ギヤ(3)との間で動力が伝達されない第1の中立位置を規定するため、前記分配ギヤ(12)とのみ係合するように配置されるようにさらに構成されている、請求項1-9のいずれかに記載のギヤボックス。
【請求項11】
前記主シャフト(10)と共に回転するように前記主シャフト(10)に固定された主入力ギヤ(11)と、
前記主シャフト(10)と一体の第2の分配ギヤ(14)と、
前記第1の軸線(A1)上に回転可能に取り付けられ、前記主シャフト(10)上に配置された第2の伝達ギヤ(15)と、
前記補助シャフト(20)に配置されて前記第2の伝達ギヤ(15)に係合された第2の補助伝達ギヤ(23)と、
少なくとも2つの位置の間でスライド可能な第2のギヤシフト
システム(88)であって、
前記第2の分配ギヤ(14)を介して前記主入力ギヤ(11)と前記出力ギヤ(3)との間で動力を伝達しない第2の中立位置を規定するために前記第2の分配ギヤ(14)のみに回転可能に係合し、又は、
前記
第1のギヤシフト
システム(8)が前記第1の中立位置に配置されている場合に、前記主シャフト(10)から前記補助シャフト(20)を介して前記出力ギヤ(3)に間接的に動力を伝達するために前記第2の分配ギヤ(14)及び前記第2の伝達ギヤ(15)に回転可能に係合する、
ように構成されている、第2のギヤシフト
システム(88)と、
をさらに含む、請求項10に記載のギヤボックス(5)。
【請求項12】
前記ギヤボックス(5)は、少なくとも250k
Wの動力を伝達することができ、前記ギヤボックス(5)は、少なくとも600N・
mのトルクを伝達することができる、請求項1-11のいずれかに記載のギヤボックス(5)。
【請求項13】
前記
第1のギヤシフト
システム(8)及び/又は前記第2のギヤシフト
システム(88)は、シフトスリーブで構成されている、請求
項11に記載のギヤボックス(5)。
【請求項14】
前記
出力ギヤ(3)、前記伝達ギヤ(13)、前記補助伝達ギヤ(21)及び前記補助出力ギヤ(22)の少なくとも1つは、ヘリカルギヤである、請求項1-13のいずれかに記載のギヤボックス(5)。
【請求項15】
車両用パワートレインアセンブリであって、
請求項1-14のいずれかに記載のギヤボックス(5)と、
前記ギヤボックス(5)の主入力ギヤ(11)に係合されるように構成された少なくとも1つの電気モータ(6;66)と、
差動リングホイール(70)を有し、前記差動リングホイール(70)が前記ギヤボックスの前記出力ギヤ(3)に係合されている差動装置と、
前記差動装置に連結された駆動輪車軸(T)と、
を含む、パワートレインアセンブリ。
【請求項16】
請求項15に記載のパワートレインアセンブリを備える車両(1)。
【請求項17】
前記車両は、トラック、バス、又は建設機械などの大型車両である、請求項16に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられるギヤボックス及び車両に用いられるパワートレインアセンブリに関する。より具体的には、本発明は、電気自動車、ハイブリッド車、又は車両に牽引されるトレーラーに用いられる、電気モータによって駆動されるギヤボックス及びパワートレインアセンブリに関する。
【0002】
本発明は、トラック、バス、及び建設機械などのような大型車両に適用可能である。本発明は、トラックに関して説明されるが、この特定の車両に限定されず、乗用車のような他の車両に用いられてもよい。
【背景技術】
【0003】
運輸業界においては、ますます厳しくなる排ガス規制に対処する必要があり、交通量の多さに悩まされている都市部では、市街地での内燃エンジン車の乗り入れが禁止され始めている。
【0004】
車両、特に、電気バス/ハイブリッドバスや電気トラック/ハイブリッドトラックのような電気自動車/ハイブリッド車は、通常、駆動輪シャフト(又は駆動輪車軸(駆動輪アクスル))を介して1つ又は複数の車輪を走行させるために電気モータを用いる。通常、車軸(アクスル)は、各駆動輪に1つずつ設けられた2つの駆動輪シャフトを含む。しかし、電気モータの多くは、高トルク/低速で動作する公知の内燃エンジンと比較して、高速/低トルクで動作するように設計されている。
【0005】
車両の車輪(複数を含む)におけるトルク要求を満たすことは、種々の条件下で、例えば、斜面での車両の始動性にとって重要である。したがって、ギヤボックス/パワートレインアセンブリを介して広範なギヤ減速比(典型的には、例えば1:20-1:50のギヤ減速比)を有する必要がある。このような広範な減速比は、通常、いくつかの減速段を有するギヤボックスを介して達成され、その結果、より広いスペースが必要になり、車両の他の部品(例えば、バッテリー、車体/空力装置、サスペンションアセンブリ)に必要なスペースが制限されることとなる。さらに、一般的に知られているギヤボックスは、重量があるため、車両の移動能力をさらに低下させ、車両の自律性を制限する。そのため、ギヤボックス/トランスミッションアセンブリが電気自動車/ハイブリッド車内に組み込まれる際に問題が発生する。ガソリンエンジン/ディーゼルエンジン用の標準的なトランスミッションシステム、具体的には、トランスミッションが様々な方法で配置されてシャフトアセンブリを介して駆動シャフトに接続されるトラスミッションシステム(例えば、後輪駆動トラック/バスのトランスミッションシステム)とは異なり、電気自動車/ハイブリッド車の場合、電気モータ及びギヤボックスを駆動輪車軸(駆動輪アクスル)の近くに収容する必要がある。通常、電気モータが動力を駆動輪車軸に分配する場合、異なる動力/トルクを関連する駆動輪シャフトを介して各車輪に分配するために、通常、差動アセンブリが必要である。他方、電気モータが接続されて動力を駆動輪シャフトに(ギヤボックスを介してではあるが)直接分配する場合には、通常、差動アセンブリが必要とされないが、駆動輪シャフトのそれぞれに対して1つの電気モータ(したがって、少なくとも2つの電気モータ)を有する必要がある。
【0006】
上記構成にしたがうと、電気自動車/ハイブリッド車にギヤボックス/トランスミッションアセンブリを収容するために必要なスペースは、サスペンションアセンブリによってさらに制限される。
【0007】
先行技術の例、例えば、特許文献1は、電気自動車用のトラスミッションシステムを開示している。このトランスミッションシステムは、駆動モータに係合される入力シャフト及び差動装置に係合される出力シャフトによって規定される。入力シャフト及び出力シャフトのそれぞれが異なる回転軸を有し、システムは、コンパクトさに欠けるので、電気自動車内の容積が限られたスペースに搭載するのは難しい。
【0008】
したがって、本発明の実施形態でさらに述べるように、本発明者らは、公知のギヤボックス/トランスミッションアセンブリと比較して、小型/コンパクトで軽量なギヤボックスを提供するための解決策を見出すべく取り組んできた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、これらの欠点を改善しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車両用ギヤボックスに関する。この車両用ギヤボックスは、
第1の軸線周りに回転するように構成された主シャフトと、
主シャフトと共に回転するように主シャフトに固定された分配ギヤと、
第1の軸線周りに回転するように構成されると共に、主シャフトの周りに配置された伝達ギヤと、
第2の軸線周りに回転するように構成された補助シャフトであって、第1の軸線と第2の軸線とが互いに離れている、補助シャフトと、
補助シャフト周りに配置された補助出力ギヤ及び補助伝達ギヤであって、補助伝達ギヤは、伝達ギヤに係合されている、補助出力ギヤ及び補助伝達ギヤと、
ギヤボックスの外に動力を伝達するための出力ギヤであって、主シャフトの周りに独立して回転可能に配置され、第1の軸線周りに回転するように構成され、補助出力ギヤに係合されている、出力ギヤと、
少なとも2つの位置の間でスライド可能なギヤシフトシステムであって、
動力を主シャフトから出力ギヤに直接伝達するために分配ギヤ及び出力ギヤに回転可能に係合し、又は、
動力を主シャフトから補助シャフトを介して出力ギヤに間接的に伝達するために分配ギヤ及び伝達ギヤに回転可能に係合する、
ように構成された、ギヤシフトシステムと、
を含む。
【0012】
この構成により、出力ギヤと主シャフトとは同じ軸線周りに回転する。したがって、厳しいスペース制限物(例えば、電気自動車の場合、バッテリセット、サスペンションアセンブリ等)によって利用可能なスペースが制限される車両に適したコンパクトな小さいギヤボックスを提供することができる。ギヤボックスのコンパクトさは、主シャフトに配置された出力ギヤであって、ギヤシフト手段の位置に応じて主シャフトと同じ回転速度又は異なる回転速度で回転することができる、出力ギヤによって達成される。したがって、上記の構成により、動力をギヤボックス内及びギヤボックスの外に伝達するために2つの異なるシャフトを有することを避けることが可能である。
【0013】
さらに、出力ギヤを補助シャフトに対して実質的に同じ位置としたまま、追加の伝達ギヤ及び補助伝達ギヤを介して2つ以上のギヤ段を提供することが可能である。つまり、1つ以上のギヤ段が追加されても、主シャフトと補助シャフトとの間の距離は不変である。
【0014】
少なくとも2つの段を含むこのコンパクトな解決策は、車両の種々の駆動モード(ギヤの現在の選択)に起因する種々の性能(始動時の高トルク/低速要求、及び/又は、クルーズ走行時の高速/低トルク要求)を確保するための要求を満たす。
【0015】
有利には、このギヤボックスは、以下の追加的な複数の特徴を含む。これらの特徴は、単独で考慮されてもよいし、組み合わせて考慮されてもよい。
【0016】
-分配ギヤは、主シャフトに剛体的に(しっかりと)固定されているか、又は主シャフトと一体になっている。
【0017】
-少なくとも補助伝達ギヤ又は補助出力ギヤは、補助シャフトに剛性的に固定されているか、又は補助シャフトと一体になっている。
【0018】
あるいは、一例として、補助シャフトがギヤボックスケーシングに剛性的に固定され、少なくとも1つの補助伝達ギヤ及び補助出力ギヤは、この固定された補助シャフト周りに回転するように構成されてもよい。さらに、一例として、少なくとも1つの補助伝達ギヤ及び補助出力ギヤは、少なくとも1つの補助ローラ軸受を介して、固定された補助シャフト(ギヤボックスケーシングに剛性的に固定された補助シャフト)の周りに取り付けられてもよい。ギヤボックスケーシングと主シャフトとの間に配置されたローラ軸受は、高トルクに耐えることができ、摩耗を最小限に抑制することができる。
【0019】
-主シャフトは、第1及び第2の軸端を有し、第1の軸端に配置された第1の主ローラ軸受及び第2の軸端に配置された第2の主ローラ軸受を介して、ギヤボックスケーシング内に回転可能に取り付けられている。
【0020】
-第1の軸線に沿って測定されるギヤボックスの軸方向の長さは、400mm未満である。
【0021】
この400mm未満の軸方向の長さは、厳しいスペース要求が主要な特徴である種々のタイプの電気自動車/ハイブリッド車に収容することができる、ギヤボックスの高いコンパクト性を規定する。
【0022】
-出力ギヤは、少なくとも1つの出力ローラ軸受を介して主シャフトに取り付けられている。
【0023】
この構成により、出力ギヤは、主シャフトと同様に、第1の軸線周りに回転することができる。ギヤシフト手段の位置に応じて、出力ギヤの回転速度を主シャフトの回転速度と異ならせることができる。出力ギヤの主シャフトの周りの変更可能な回転速度は、車両の始動時に必要な高トルク要求と、クルーズ走行時の高出力要求とに耐えることができる出力ローラ軸受によって達成される。これによって、ギヤボックスの信頼性及び寿命が向上し、メンテナンスの必要性も最小限に抑えられる。
【0024】
-伝達ギヤは、少なくとも1つのローラ軸受を介して、好ましくは、少なくとも1つのニードル軸受を介して主シャフトに取り付けられている。
【0025】
伝達ギヤと主シャフトとの間に配置されたニードル軸受により、スペース制限が改善される。その理由は、ニードル軸受は、他の公知のタイプの軸受よりも少ないスペースしか必要とせず、さらには、間接配置(電気モータからの動力が主シャフトから伝達ギヤを介して補助シャフトに伝達されて補助シャフトから出力ギヤに伝達される)において、ギヤボックスの速度/トルク要求に耐えるのに十分な強度を提供するからである。
【0026】
-補助シャフトは、少なくとも1つの補助ローラ軸受を介してギヤボックスケース内に回転可能に取り付けられている。
【0027】
-ギヤボックスは、主シャフトと共に回転するように主シャフトに固定された主入力リングをさらに含む。
【0028】
-主シャフトの回転速度と出力ギヤの回転速度との比は、分配ギヤと出力ギヤとが回転可能に係合されたときの第1のギヤ比と、分配ギヤと伝達ギヤとが回転可能に係合されたときの第2のギヤ比との間で選択可能であり、第2のギヤ比は、第1のギヤ比よりも大きい。
【0029】
-ギヤシフトシステムは、主シャフトと出力ギヤとの間で動力が伝達されない第1の中立位置を規定するため、分配ギヤとのみ係合するよう配置されるように、さらに構成されている。
【0030】
この構成により、ギヤボックスは、車両/トレーラーの牽引又は点検のために、駆動輪シャフト/駆動輪車軸の自由な動きを提供する中立位置(ギヤシフト手段によって規定される第1の中立位置)に切り替え可能である。
【0031】
-ギヤボックスは、主シャフトと一体の第2の分配ギヤと、第1の軸線上に回転可能に設けられると共に主シャフト上に配置された第2の伝達ギヤと、補助シャフト上に配置されて第2の伝達ギヤに係合された第2の補助伝達ギヤと、少なくとも2つの位置の間をスライド可能な第2のギヤシフト手段とをさらに含み、前記第2のギヤシフト手段は、
第2の分配ギヤを介して主入力ギヤと出力ギヤとの間で動力を伝達しない第2の中立位置を規定するために第2の分配ギヤのみと回転可能に係合し、又は、ギヤシフト手段が第1の中立位置に配置されている場合に、主シャフトから補助シャフトを介して出力ギヤに間接的に動力を伝達するために第2の分配ギヤ及び第2の伝達ギヤと回転可能に係合するように構成されている。
【0032】
第2のギヤシフト手段が設けられたギヤボックスのこの構成は、出力ギヤの回転速度のさらなる減速/増速のための2つ以上のギヤ段を有することを可能にし、車両の種々の駆動モード(ギヤの現在の選択)に起因する種々の性能(始動条件下での高トルク/低速要求及び/又はクルーズ走行条件下での高速/低トルク要求)を確保する要求を満たすことができる。
【0033】
-ギヤボックスは、少なくとも250kW、好ましくは、少なくとも300kWの動力を伝達することができ、及び、ギヤボックスは、少なくとも600N・m、好ましくは、少なくとも750N・mのトルクを伝達することができる。
【0034】
-ギヤシフト手段及び/又は第2のギヤシフト手段は、シフトスリーブで構成されている。
【0035】
-ギヤの少なくとも1つは、ヘリカルギヤである。
【0036】
この構成により、動作中にギヤボックスによって発生する騒音を効果的に低減することが可能である。
【0037】
また、本発明は、車両用パワートレインアセンブリに関する。この車両用パワートレインアセンブリは、前述のギヤボックスと、ギヤボックスの主入力ギヤに係合されるように構成された少なくとも1つの電気モータと、差動リングホイールを有し、差動リングホイールがギヤボックスの出力ギヤに係合されている差動装置と、差動装置に連結された駆動輪車軸(駆動輪アクスル)とを含む。
【0038】
そして、最後に、本発明は、前述のパワートレインアセンブリを含む車両に関する。
【0039】
好ましくは、車両は、トラック、バス、又は建設機械などのような大型車両である。車両は、電気自動車、ハイブリッド車、又は牽引されるトレーラーの1つであってもよい。
【0040】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面に関連する非制限的な本発明の実施形態のいくつかの以下の詳細な説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本開示の一実施形態のギヤボックスの断面図である。
【
図2】異なる構成にある
図1のギヤボックスの断面図である。
【
図4】追加のギヤ段を有するギヤボックスの別の実施形態の概略図である。
【
図5】本開示による一実施形態のパワートレインアセンブリの斜視図である。
【
図6】
図5のパワートレインアセンブリの上面図である。
【
図7】
図5のパワートレインアセンブリの斜視図である。
【
図8】
図5のパワートレインアセンブリの側面図である。
【
図9】パワートレインアセンブリの他の実施形態の斜視図である。
【
図10】
図1のギヤボックス内に含まれる種々の半径を断面で示す概略図である。
【
図11】本発明のギヤボックスを備える車両、特に、トラックの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図面において、別段の記載がない限り、同一の参照番号は、同一又は同様の要素を示すものとする。
【0043】
図1は、本開示の一実施形態のギヤボックス5の断面図(縦断面図)である。ギヤボックス5は、主シャフト10と、補助シャフト20(「カウンターシャフト」としても知られる)とを含む。主シャフト10は、ギヤボックス5内において動力を伝達するように構成されている。
【0044】
主シャフト10は、第1の軸線A1周りに回転するように構成され、補助シャフト20は、第2の軸線A2周りに回転するように構成されている。第1の軸線A1と第2の軸線A2とは、互いに離れるように構成されている。すなわち、第1の軸線A1と第2の軸線A2とは、1つの所与の例では実質的に垂直な平面内において互いに離れている(間隔をあけて配置されている)。図示の例において、第1の軸線A1と第2の軸線A2とは、互いに平行である。
【0045】
有利には、主入力リング(プライマリ入力リング)11は、主シャフト(プライマリシャフト)10と共に回転するように主シャフト10に固定されている。図示の例では、主入力ギヤ(プライマリ入力ギヤ)11は、主シャフト10に(すなわち、主シャフト10の周りに)取り付けられており、これによって、主シャフト10に剛性的に固定されている(この場合、主シャフト10及び主入力ギヤ11は、2部品である)。あるいは、主入力リング11は、主シャフト10と一体であってもよい(この場合、主シャフト10及び主入力ギヤ11は、1部品である)。そして、主入力リング11は、動力が軸線A1に対して半径方向に主シャフト10に伝達されるように配置される(
図1,2の矢印「入力(「IN」)参照)。
【0046】
主シャフト10の回転速度は、主入力リング11の回転速度と同じである。
【0047】
好ましくは、主入力リング11は、主入力リング11と(図示されない)電気モータのロータとの間の回転係合により、電気モータによって駆動されるように構成されている。図示されない変更形態では、ICE(内燃エンジン)のような他のタイプの原動機がギヤボックス5を駆動する動力源として用いられてもよい。好ましくは、電気モータは、DCモータ、例えば、BLDCモータ(ブラシレス直流モータ)である。
【0048】
有利には、(モータのタイプに関わらず)モータの回転シャフトと主シャフト10との間に1つの減速比が設定される。これは、モータの回転シャフトが主シャフト10に直結されていないことを意味する。
【0049】
主入力リング11は、任意選択的である。何故なら、主シャフト10の長手方向の一端をモータの回転シャフト(例えば、ロータ又はカムシャフト)のような駆動シャフトの長手方向の端部に接続するために、図示しない軸継手(カップリング)が用いられてもよいからである。例えば、主シャフトを駆動シャフトに接続するために、キー付きジョイントや又はカルダンジョイントが用いられてもよい。これは、図示されないこの変更形態において、動力が軸方向において(すなわち、軸線A1に沿って)主シャフト10に伝達され得ることを意味する。これはまた、一実施形態において、(モータのタイプに関わらず)モータの回転シャフトと主シャフト10との間に減速がなされないことを意味する。
【0050】
図示の例において、主入力リング11は、ギヤ要素(又はピニオン)である。これは、主入力リング11が他のリングギヤ(図示せず)と噛み合うことを意味する。これらの2つの互いに噛み合うギヤのうち、主入力ギヤ11が被駆動ギヤ(従動ギヤ)であり、他のリングギヤが駆動ギヤである。あるいは、リング11は、ベルトに接続されたプーリー(プーリーベルトシステム)であってもよいし、又はチェーンに接続されたスプロケット(ローラーチェーンシステム)であってもよい。これは、リング11が必ずしも外歯を含む必要がないことを意味する。
【0051】
分配ギヤ12は、主シャフト10と共に回転するように主シャフト10に固定されている。図示の例において、分配ギヤ12は、主シャフト10と一体である(この場合、分配ギヤ12及び主シャフト10は、1部品である)。しかしながら、代替的な実施形態(図示せず)おいて、分配ギヤ12は、主シャフト10と別体であってもよい(この場合、分配ギヤ12及び主シャフト10は、2部品である)。この場合、分配ギヤ12は、シャフト10の周りに配置され、シャフト10に剛性的に固定(又は固着)される。
【0052】
分配ギヤ12は、(動力をギヤボックス5の外に出力するために)動力を主シャフト10から出力ギヤ3に伝達するか、又は動力を主シャフト10から伝達ギヤ13に伝達するように構成されている。
【0053】
出力ギヤ3は、動力をギヤボックス5の外に伝達するように構成されている。出力ギヤ3は、主シャフト10と同じ第1の軸線A1周りに回転するように、主シャフト10の周りに独立して回転可能に配置されている。出力ギヤ3は、主シャフト10の周りを自由に回転することができる。出力ギヤ3の回転速度は、選択された駆動モード(例えば、中立(ニュートラル)、1速(ファーストギヤ)、2速(セカンドギヤ)など)に応じて、主シャフト10の回転速度と同じか又は異なる回転速度とすることができる。種々の実施形態において、出力ギヤ3は、車両のタイプに応じて、1つ、2つ、又は3つ以上の駆動輪車軸Tに動力を伝達するために、差動アセンブリ(70-例えば、差動リングホイール)に係合することができる。
【0054】
図示の例では、
図11に示されるように、車両1は、トラックである。あるいは、車両1は、バスや建設機械であってもよい。
【0055】
動作中、主入力ギヤ11及び出力ギヤ3は、同一軸線、すなわち、第1の軸線A1周りに回転する。何故なら、出力ギヤ3は、主シャフト10に配置されているからである。したがって、必要なスペースが厳しいスペース制限物(例えば、電気自動車の場合、バッテリセットやサスペンションアセンブリなど)によって限られている車両に適用可能なコンパクトで小さいギヤボックスを提供することが可能である。
【0056】
好ましくは、出力ギヤ3は、少なくとも1つの出力ローラ軸受、好ましくは、2つの出力ローラ軸受43,44を介して主シャフト10の周りに取り付けられている。このような構成により、出力ギヤ3は、主シャフト10と同じ第1の軸線A1周りを回転することができる。出力ギヤ3の回転速度は、主シャフト10の回転速度と同じでもよいが、主シャフト10の回転速度と異ならせることもできる。主シャフト10の周りの出力ギヤ3の種々の回転速度は、特に車両の始動時の高トルク伝達に耐えることができる少なくとも1つの出力ローラ軸受(43,44)によって達成される。これによって、ギヤボックスの信頼性及び寿命が改善され、保守の必要性も最小限に抑えられる。
【0057】
有利には、伝達ギヤ13は、第1の軸線A1周りに回転するように構成され、主シャフト10上に配置されている。
【0058】
図示の例では、伝達ギヤ13は、主シャフト10の周りを自由に回転することができ(すなわち、回転自在であり)、その逆に、主シャフト10が伝達ギヤ13に対して自由に回転することができる。
【0059】
伝達ギヤ13は、選択されたギヤ比に応じて、主シャフト10の回転速度と同じか又は異なる回転速度で回転することができる。
【0060】
好ましくは、伝達ギヤ13は、少なくとも1つのローラ軸受、好ましくは、ニードル軸受49を介して主シャフト10の周りに取り付けられている。伝達ギヤ13と主シャフト10との間に配置されるこのニードル軸受49は、スペース制限を改善する。何故なら、ニードル軸受49は、他の周知のタイプの軸受よりもわずかなスペースしか必要とせず、さらにギヤボックス5の速度/トルク要求に耐えるのに十分な強度を有するからである。
【0061】
種々の実施形態において、伝達ギヤ13の数は、ギヤボックス5内に配置されるギヤ段の数に応じて異ならせることができる。
図1は、1つの伝達ギヤ13を有する実施形態を示している。より多くのギヤ段(第2の分配ギヤ14及び第2の伝達ギヤ15)を有する他の実施形態の例は
図4に示されており、後で説明される。
【0062】
好ましくは、ギヤボックス5は、補助出力ギヤ22も含む。補助出力ギヤ22は、好ましくは、補助シャフト20と共に回転するように補助シャフト20に固定されている。図示の例において、補助出力ギヤ22は、補助シャフト20に(すなわち、補助シャフト20の周りに)取り付けられて補助シャフト20に剛性的に固定されている(この場合、補助出力ギヤ22及び補助シャフト20は、2部品である)。あるいは、補助出力ギヤ22は、補助シャフト20と一体であってもよい(この場合、補助出力ギヤ22及び補助シャフト20は、1部品である)。
【0063】
さらに、ギヤボックス5は、補助伝達ギヤ21も含む。この例において、補助伝達ギヤ21は、補助シャフト20と共に回転するように補助シャフト20に固定されている。図示の例において、補助伝達ギヤ21は、補助シャフト20に(すなわち、補助シャフト20の周りに)取り付けられて補助シャフト20に剛性的に固定されている(この場合、補助シャフト20及び補助伝達ギヤ21は、2部品である)。あるいは、補助伝達ギヤ21は、補助シャフト20と一体であってもよい(この場合、補助シャフト20及び補助伝達ギヤ21は、1部品である)。
【0064】
有利には、補助伝達ギヤ21は、伝達ギヤ13に係合されている。前述したように、異なる数の伝達ギヤ13を有する種々の実施形態では、補助伝達ギヤ21の数を異ならせることもできる(例えば、
図4の実施形態)。補助伝達ギヤ21及び補助出力ギヤ22は、補助シャフト20と同じ速度で第2の軸線A2周りに回転する。
【0065】
あるいは、図示されない他の実施形態において、補助シャフト20は、ギヤボックス内において、(例えば、ギヤボックスケーシング50に)剛性的に固定されてもよい。換言すれば、シャフト20は、非回転体であってもよい(固定されていてもよい)。このような構成において、補助伝達ギヤ21及び補助出力ギヤ22は、ローラ軸受を介して、剛性的に固定された補助シャフト20の周りに回転可能に(すなわち、自在に回転するように)取り付けられるとよい。
【0066】
したがって、補助伝達ギヤ21及び補助出力ギヤ22は、シャフト20と共に回転するようにシャフト20に固定されてもよいし、又はシャフト20に対して自在に回転するように取り付けられてもよい。
【0067】
ギヤボックス5は、ギヤシフトシステム8をさらに含む。ギヤシフトシステム8は、少なくとも2つの位置の間で軸線A1に沿って(軸方向に)スライド(摺動)可能となるように構成されている。2つの位置は、主シャフト10の分配ギヤ12と出力ギヤ3又は少なくとも1つの伝達ギヤ13のいずれかとの間の異なる係合配置として規定され得る。
【0068】
図2に示される第1の配置では、ギヤシフトシステム8が初期位置(破線)から左にシフトされて分配ギヤ12と出力ギヤ3とが回転可能に係合される。この第1の配置において、出力ギヤ3の回転速度は、主シャフト10の分配ギヤ12の回転速度と同じである。第1の配置において、動力は、(電気モータ6に接続された)主シャフト10から出力ギヤ3に直接分配される。したがって、電気モータ(図示せず)の動力は、主入力ギヤ11を介して主シャフト10に半径方向に伝達され、次いで、分配ギヤ12を介して出力ギヤ3に直接軸方向に伝達され、その後、差動アセンブリ(例えば、差動リングホイール70)に伝達される。この動力伝達は、
図2において、次のような動力伝達経路:すなわち、(IN)電気モータ(図示せず)→主入力ギヤ11→主シャフト10→分配ギヤ12→ギヤシフトシステム8→出力ギヤ→(OUT)差動アセンブリ、を表す二点鎖線によって示されている。
【0069】
上記のようなギヤシフトシステム8の第1の配置において、出力ギヤ3の回転速度は、主シャフト10の回転速度と同じである。典型的には、このような配置は、クルーズ走行状態(高速/低トルク)において選択され得る。
【0070】
分配ギヤ12と伝達ギヤ13とが回転可能に係合する第2の配置が
図1に示される。
図1に示されるように、ギヤシフトシステム8は、初期位置(破線)から右側にシフトされて分配ギヤ12と伝達ギヤ13とを回転可能に係合させる。このいわゆる第2の配置において、伝達ギヤ13の回転速度は、分配ギヤ12の回転速度と同じである。第2の配置において、動力は、(電気モータに接続された)主シャフト10から補助シャフト20を介して出力ギヤ3に間接的に分配される。
【0071】
したがって、電気モータ(図示せず)の動力は、主入力ギヤ11を介して主シャフト10に半径方向に伝達され、次いで、(分配ギヤ12及びギヤシフトシステム8を介して)伝達ギヤ13に軸方向に伝達され、次いで、(伝達ギヤ13に回転可能に係合された)補助伝達ギヤ21から補助シャフト20を介して補助出力ギヤ22に分配される。そして、動力は、補助出力ギヤ22から出力ギヤ3に伝達され、その後、差動アセンブリ(例えば、差動リングホイール70)に半径方向に伝達される。この動力伝達は、
図1において、次のような動力伝達経路:すなわち、(IN)電気モータ(図示せず)→主入力ギヤ11→主シャフト10→分配ギヤ12→ギヤシフトシステム8→伝達ギヤ13→補助伝達ギヤ21→補助シャフト20→補助出力ギヤ22→出力ギヤ3→(OUT)差動アセンブリ、を表す二点鎖線によって示されている。
【0072】
上記のようなギヤシフトシステム8の第2の配置において、出力ギヤ3の回転速度は、補助シャフト20を介して、主シャフト10の回転速度に比べて減速される。このような配置は、高トルク/低速条件において選択することができる。
【0073】
また、ギヤ比は、主入力ギヤ11の回転速度と出力ギヤ3の回転回転速度との間の比(又は商)として規定することができる。ギヤシフトシステム8の第1の配置において、すなわち、分配ギヤ12が出力ギヤ3に直接係合される場合、ギヤ比は、1:1の第1のギヤ比に相当する。
【0074】
さらに、ギヤシフトシステム8の第2の配置は、その間に補助シャフト20を介した分配ギヤ12と出力ギヤ3との間接係合を規定する。この第2の配置において、ギヤ比は、第2のギヤ比に相当する。
【0075】
有利には、第2のギヤ比(間接係合)は、第1のギヤ比(直接係合)よりも大きい。
【0076】
しかしながら、代替的な実施形態においては、第2のギヤ比が第1のギヤ比より小さくてもよい。これは、主入力ギヤの回転速度が、低減(減速)される代わりに増幅(増速)されることを意味する。
【0077】
任意選択的に、ギヤシフトシステム8は、分配ギヤ12とのみ係合するよう配置されるようにさらに構成されてもよい。このような配置では、ギヤシフトシステム8は、出力ギヤ3又は伝達ギヤ13に対していかなる係合配置も有さない。この配置は、中立位置(例えば、
図4において規定されるさらなるギヤ段に対する第1の中立位置)として規定されるとよい。(第1の)中立位置では、これらのギヤ(3,12,13)の間に物理的な係合が提供されないので、ギヤシフトシステム8は、主入力ギヤ11と出力ギヤ3との間で動力を伝達しないように構成される。(第1の)中立位置は、直接係合(第1の配置)及び間接係合(第2の配置)に対する追加的なオプションとしてのギヤシフトシステム8の第3の位置を表すことができる。ギヤシフトシステム8の(第1の)中立位置は、車両の自由な動作、例えば、車両/トレーラーを牽引又は点検するための駆動輪シャフト/駆動輪軸の自由な動作を提供することができる。さらに、
図1、2に関し、ギヤシフトシステム8の(第1の)中立位置は、破線で示されており、そこでは、ギヤシフトシステム8の位置が分配ギヤ12の位置に対応している。
【0078】
また、ギヤシフトシステムは、クラッチスリーブ(「シフトスリーブ」とも呼ばれる)の形式であってもよいし、又はギヤボックス5内においてギヤチェンジを行うためのドッグクラッチの任意の適切な形式であってもよい。それ自体周知であり、したがって、詳細に説明しないが、このギヤシフトシステム/ドッグクラッチの形式は、(
図7に部分的に示される)制御フォーク53によって制御可能である。
【0079】
さらに、ギヤボックス5は、好ましくは、ギヤボックスケーシング50を含む。ギヤボックスケーシング50は、ギヤボックスの構成要素を包含(内包)する任意のタイプのケーシング/ハウジングであり得る。典型的には、ギヤボックスケーシング50は、主ケーシング構成要素と、1つ又は複数のケーシングカバー51(
図2,5)とを含む2つ以上の部分で構成される。
【0080】
図1,2にさらに示されるように、主シャフト10は、第1の軸端101と第2の軸端102との間を長手方向に延びている。主シャフト10の両軸端(101,102)は、ギヤボックスケーシング50内に回転可能に取り付けられ得る。この取り付けは、第1の軸端101に配置された第1の主ローラ軸受41と、第2の軸端102に配置された第2の主ローラ軸受42とを介して行われ得る。両軸端(101,102)でギヤボックスケーシング50と主シャフト10との間に配置されるローラ軸受(41,42)は、高いトルクに耐え、主シャフト10の摩耗を最小限に抑えるのに役立つ。
【0081】
補助シャフト20は、第1の補助軸端201と第2の補助軸端202との間を長手方向に延びている。両補助軸端(201,202)は、ギヤボックスケーシング50内に回転可能に取り付けられ得る。この取り付けは、第1の補助軸端201に配置された第1の補助ローラ軸受46と、第2の補助軸端202に配置された第2の補助ローラ軸受47とを介して行われ得る。両補助軸端(201,202)でギヤボックスケーシング50と補助シャフト20との間に配置される補助ローラ軸受(46,47)は、高いトルクに耐え、補助シャフト20の摩耗を最小限に抑えるのに役立つ。
【0082】
ギヤボックス5は、軸方向の長さLGを有する。軸方向の長さLGは、第1の軸線A1に沿った長さとすることができる。したがって、軸方向の長さLGは、第1の軸線A1の軸方向におけるギヤボックス5の全長とみなすことができる。軸方向の長さLGは、1つ又は複数のカバー51を含むギヤボックスケーシング50の寸法を含んでもよい。ギヤボックス5の軸方向の長さ(全長)LGは、400mm未満である。このコンパクトさは、出力ギヤ3が、主シャフト10と同じように第1の軸線A1周りに回転するように主シャフト10の周りに独立して回転可能に配置されることによって達成される。400mm未満の軸方向の長さLGは、ギヤボックス5の高いコンパクト性を表し、これによって、このギヤボックス5を厳しいスペース要求が主要な特徴となる種々のタイプの電気自動車/ハイブリッド車に収容することができる。
【0083】
図1、2にさらに示されるように、主シャフト10は、直径D1-D4によって規定(定義)することができ、直径D1は、主シャフト10の第1の軸端101で測定され、直径D4は、主シャフトの第2の軸端102で測定される。直径D2、D3は、主シャフト10の(両端部の)内側部分の直径である。直径D1-D4の全てが互いに異なっていてもよい。直径D1は、主シャフト10の構造的強度を確保できる主シャフト10の構造的な最小直径を表す。直径D1は、好ましくは、少なくとも40mmである。直径D4は、好ましくは、70mmである。また、直径D3は、出力ギヤ3が取り付けられる領域における主シャフト10の直径を規定し、好ましくは、約85mmである。直径D2は、伝達ギヤ13が取り付けられる領域における主シャフト10の直径を規定し、好ましくは、約60mmである。さらに、主シャフト10の長さL10は、第1の軸線A1に沿った主シャフト10の全長として規定される。長さL10は、好ましくは、約250mmである。
【0084】
同様に、補助シャフト20は、直径D25-D29によってさらに規定(定義)することができ、直径D25は、補助シャフト20の第1の補助軸端201で測定され、直径D29は、補助シャフト20の第2の補助軸端20で測定される。直径D26-D28は、補助シャフト20の(両端部の)内側部分の直径である。直径D25-D29の全てが異なっていてもよい。直径D25は、補助シャフト20の構造的強度を確保する補助シャフト20の構造的な最小直径を表す。直径D25は、好ましくは、少なくとも34mmに等しい。直径D29は、好ましくは、約55mmである。補助伝達ギヤ21が補助シャフト20に剛性的に固定される補助シャフト20の特定部分は、直径D26と、補助伝達ギヤ21の半径R21によって規定することができる。したがって、補助シャフト20の直径D26は、補助伝達ギヤ21の内径(図示せず)に対応し、剛性的な固定を行うために、補助シャフト20の直径D26及び補助伝達ギヤ21の内径は、互いに一致するとよい。補助シャフト20の直径D26は、好ましくは、約80mmである。
【0085】
同様に、補助出力ギヤ22が補助シャフト20に剛性的に固定される補助シャフト20の特定の部分は、補助シャフト20の直径D28及び補助出力ギヤ22の半径R22によって規定することができる。したがって、補助シャフト20の直径D28は、剛性的な固定を行うため、補助出力ギヤ22の内径(図示せず)に対応するとよい。これは、補助シャフト20の直径D28及び補助出力ギヤ22の内径が互いに一致することを意味する。補助シャフト20の直径D28は、好ましくは、約108mmである。加えて、補助伝達ギヤ21と補助出力ギヤ22との間の補助シャフト20の部分が直径D27を規定してもよい。補助シャフト20の直径D27は、好ましくは、約95mmである。補助シャフト20の長さL20は、第2の軸線A2に沿った補助シャフト20の全長として規定され、長さL20は、好ましくは、約200mmである。
【0086】
図3を参照すると、伝達ギヤ13及び補助伝達ギヤ21を有する前述の実施形態の概略図が示される。
図1、2に加えて、
図3は、モータ6、典型的には、モータ軸A6を有する電気モータをさらに示している。モータ軸A6は、ロータの回転軸である。ギヤボックス5は、差動アセンブリに、より具体的には、差動アセンブリの差動リングホイール70にさらに係合可能であり、差動アセンブリは、動力を駆動輪車軸Tに略沿って延びる左駆動輪シャフト71及び右駆動輪シャフト72にさらに伝達する。左右の駆動輪シャフト(71,72)のそれぞれは、ギヤボックス5のそれぞれの側に配置可能である。(第1の)電気モータ6から入力される動力は、主入力ギヤ11を介してギヤボックス5内に伝達され、差動リングホイール70に係合された出力ギヤ3を介してギヤボックス5の外に伝達される。
【0087】
図4は、分配ギヤ12、伝達ギヤ13、及び補助伝達ギヤ21に加えて第2の分配ギヤ14、第2の伝達ギヤ15、及び第2の補助伝達ギヤ23を有することを除けば、
図1-3に示される実施形態の特徴と実質的に同じ特徴を有する別の実施形態を示す。電気モータ6の機能及び位置は、先の実施形態と実質的に同じであり、電気モータ6は、主シャフト10の主入力ギヤ11に係合されている。同様に、出力ギヤ3は、差動リングホイール70を介して1つ又は複数の駆動輪車軸Tに動力を伝達する差動アセンブリに係合可能である。
【0088】
図4に示されるように、主シャフト10には、前述の主入力ギヤ11及び分配ギヤ12が設けられている。また、主シャフト10は、第2の分配ギヤ14をさらに含む。第2の分配ギヤ14は、主シャフト10に剛性的に固定されてもよいし、主シャフト10と一体であってもよい。
【0089】
第2の伝達ギヤ15は、第1の軸線A1上の回転可能に取り付けられ、主シャフト10上に配置されている。種々のシナリオにおいて、第2の伝達ギヤ15は、主シャフト10の周りを自由に回転することができる。第2の伝達ギヤ15は、ギヤの現在の選択に応じて、主シャフト10及び伝達ギヤ13の回転速度と同じか又は異なる回転速度で回転することができる。
【0090】
好ましくは、第2の伝達ギヤ15は、少なくとも第2の変速ニードル軸受(図示せず)を介して主シャフト10の周りに取り付けられる。第2の伝達ギヤ15と主シャフト10との間に配置される少なくとも第2のニードル軸受は、他の公知のタイプの軸受より少ないスペースしか必要としないので、スペース制限を改善し、ギヤボックス5の速度/トルク要求に耐えるのに十分な強度を提供する。
【0091】
第2の分配ギヤ14は、(後述の)第2のギヤシフトシステム88によって第2の伝達ギヤ15に回転可能に係合されると、主シャフト10から第2の伝達ギヤ15に動力を伝達するように構成される。
【0092】
図4に示されるように、補助シャフト20は、出力ギヤ3に係合する補助出力ギヤ22と、伝達ギヤ13に係合する補助伝達ギヤ21とを含む。また、補助シャフト20は、第2の補助伝達ギヤ23も含む。第2の補助伝達ギヤ23は、補助シャフト20に剛性的に固定されてもよいし、又は補助シャフト20と一体であってもよい。この構成において、補助出力ギヤ22、補助伝達ギヤ21、及び第2の補助伝達ギヤ23は、補助シャフト20と同じ速度で第2の軸線A2周りに一緒に回転する。第2の補助伝達ギヤ23は、第2の伝達ギヤ15に係合している(噛み合っている)。
【0093】
図4の実施形態のギヤボックス5は、第2のギヤシフトシステム88をさらに含む。第2のギヤシフトシステム88は、少なくとも2つの位置の間でスライド(摺動)可能に構成されている。少なくとも2つの位置は、主シャフト10の第2の分配ギヤ14と第2の伝達ギヤ15との間の異なる係合配置として規定することができる。
【0094】
第1に、第2のギヤシフトシステム88は、第2の分配ギヤ14とのみ係合することができる。この配置において、第2のギヤシフトシステム88は、第2の伝達ギヤ15に対していかなる係合も行わない。第2のギヤシフトシステム88が第2の分配ギヤ14のみと係合することを、第2の中立位置として規定(定義)することができる。第2の中立位置において、第2のギヤシフトシステム88は、第2の分配ギヤ14(及び第2の伝達ギヤ15)を介して主入力ギヤ11と出力ギヤ3との間で動力を伝達しないように構成される。これらのギヤ(14,15)の間に物理的な係合が存在しないからである。
【0095】
第2に、第2のギヤシフトシステム88は、第2の中立位置から第2の分配ギヤ14と第2の伝達ギヤ15とが回転係合する配置にシフト(移行)することができる。この係合配置においては、第2の伝達ギヤ15の回転速度は、第2の分配ギヤ14の回転速度と同じである。この配置において、動力は、((第1の)電気モータ6に接続された)主シャフト10から(第2の分配ギヤ14及び第2の補助伝達ギヤ23に係合された第2の伝達ギヤ15を経由して)補助シャフト20を介して出力ギヤ3に間接的に分配される。
【0096】
したがって、電気モータ6の動力は、主入力ギヤ11を介して主シャフト10に半径方向に伝達され、次いで、第2の分配ギヤ14及び第2のギヤシフトシステム88を介して第2の伝達ギヤ15に伝達され、次いで、第2の伝達ギヤ15に回転可能に係合された第2の補助伝達ギヤ23から補助シャフト20を介して補助出力ギヤ22に分配される。そして、動力は、補助出力ギヤ22から出力ギヤ3に伝達され、さらに、差動アセンブリ(例えば、差動リングホイール70)に半径方向に伝達される。
【0097】
このような第2のギヤシフトシステム88の配置(構成)において、出力ギヤ3の回転速度は、
図1に示されるようなギヤシフトシステム8を介する間接係合に関して規定された第2の配置における出力ギヤ3の回転速度と比較してさらに減速される。したがって、このような配置は、高トルク/低速条件下で選択され得る。
【0098】
また、第2のギヤシフトシステム88が第2の分配ギヤ14及び第2の伝達ギヤ15を回転可能に係合するシナリオにおいて、ギヤシフトシステム8は、分配ギヤ12と出力ギヤ3又は伝達ギヤ13との間の係合を提供しないようにするため、(第1の)中立位置に配置されていなければならない。同様に、ギヤシフトシステム8が出力ギヤ3又は伝達ギヤ13のいずれかを分配ギヤ12に回転可能に係合するシナリオでは、第2のギヤシフトシステム88は、(第2の分配ギヤ14とのみ係合する)第2の中立位置に配置されていなければならない。さらに、種々のシナリオにおいて、ギヤシフトシステム8及び第2のギヤシフトシステム88の両方は、車両の自由な動作、例えば、車両/トレーラーを牽引又は点検するのための駆動輪シャフト/駆動輪車軸(駆動輪アクスル)の自由な動作を提供するために、それらの第1/第2の中立位置に配置されてもよい。
【0099】
さらに、第2のギヤシフトシステム88は、クラッチスリーブの形式でもあってもよいし、又はギヤボックス5内においてギヤチェンジを行うための任意の適切な形式のドッグクラッチであってもよい。
【0100】
有利には、第2の分配ギヤ14、第2の伝達ギヤ15、及び第2の補助伝達ギヤ23がギヤボックス5内に設けられたとしても、ギヤボックス5は、500mm未満、好ましくは、450mmである軸方向の長さLGを有する。それ故、仮にギヤボックス5が(追加的な分配ギヤ/伝達ギヤ/補助伝達ギヤに関して)追加的なギヤ段を有しても、主シャフト10の主入力ギヤ11及び出力ギヤ3は、補助シャフト20に対する垂直配置に関して実質的に同じ位置にとどまることとなる。これは、主シャフト10と補助シャフト20との間の距離が1つ又は複数の追加的なギヤ段が追加されても不変であることを意味する。
【0101】
加えて、前述の第1及び第2のギヤ比に対して、
図4の実施形態は、第3のギヤ比に関して、主入力ギヤ11の回転速度と出力ギヤ3の回転速度との間の商としてさらに規定(定義)することも可能である。第1のギヤ比は、(分配ギヤ12と出力ギヤ3との間の直接係合配置における)主入力ギヤ11の回転速度と出力ギヤ3の回転速度との間の商である。第2のギヤ比は、(分配ギヤ12と出力ギヤ3との間の間接係合、すなわち、動力が伝達ギヤ13を介して補助シャフト20に伝達される間接係合における)主入力ギヤ11の回転速度と出力ギヤ3の回転速度との間の商である。
【0102】
加えて、第3のギヤ比は、第2のギヤシフトシステム88が第2の分配ギヤ14と第2の伝達ギヤ15との間に回転係合をもたらす位置にある場合のギヤ比として規定することが可能である。この配置において、動力は、主シャフト10(主入力ギヤ11)から(第2の分配ギヤ14及び第2の補助伝達ギヤ23に係合された第2の伝達ギヤ15を経由して)補助シャフト20を介して出力ギヤ3に間接的に分配される。したがって、第3のギヤ比は、(ギヤシフトシステム8がその(第1の)中立位置に配置された状態において第2の分配ギヤ14が第2の伝達ギヤ15に係合された時の)主入力ギヤ11の回転速度と出力ギヤ3の回転速度との間の商である。
【0103】
好ましくは、(第2の分配ギヤ14と第2の伝達ギヤ15との間の係合による)第3のギヤ比は、(分配ギヤ12と伝達ギヤ13との間の係合による)第2のギヤ比よりも大きい。加えて、第2のギヤ比は、好ましくは、(分配ギヤ12と出力ギヤ3との間の係合による)第1のギヤ比よりも大きい。
【0104】
図5は、パワートレインアセンブリの斜視図を示している。パワートレインアセンブリは、ケーシング50を有するギヤボックス5と、1つ又は2つの電気モータ(6,66)と、ギヤボックス5に係合された差動アセンブリとを含む。ギヤボックス5のケーシング50は、ギヤボックスの構成要素を包含(内包)する任意のタイプのケーシング/ハウジングとすることができ、典型的には、主ケーシング構成要素と、1つ又は複数のケーシングカバー51とを含む2つ以上の部品で構成される。
【0105】
パワートレインアセンブリは、駆動輪車軸(駆動輪アクスル)Tをさらに含むことができ、駆動輪車軸Tを介して動力をギヤボックス5から車両の駆動輪96に伝達することができる。駆動輪車軸Tは、車軸本体(アクスル本体)/車軸ケース(アクスルケース7)に包含された左駆動輪シャフト71及び右駆動輪シャフト72によってさらに規定され得る。左右の駆動輪シャフト(71,72)のそれぞれは、軸X(車両の長手方向の軸)に関してギヤボックス5のそれぞれの側に配置され得る。
【0106】
図5にさらに示されるように、パワートレインアセンブリは、例えば、空圧シリンダ(98,99)によって規定される車両のサスペンションシステムに直接的又は間接的に係合可能である。空圧シリンダー(98、99)は、他のタイプのシリンダ、例えば、特別の車両に特有の任意の補助装置用シリンダでもよい。パワートレインアセンブリは、より剛性の高い構成とするために車両のシャーシ9にさらに接続されてもよい。
図5に例示されるように、パワートレインアセンブリは、1つ又は複数のストラット18,19(例えば、垂直及び水平のショックアブソーバ18,19)を介してシャーシ9に取り付けることができる。ストラット(18,19)は、振動及び衝撃を制限するための任意のタイプの適切なストラットとすることができる。
【0107】
図6は、
図5に示されたパワートレインアセンブリの上面図である。そこに示されるように、軸Xは、車両の長手方向に規定され、駆動輪車軸Tは、軸Xと直交している。さらに図示されるように、矢印FWは、車両の前部(例えば、車室又は前操舵輪車軸(前操舵輪アクスル))が配置される方向を示している。
図2に関して説明したように、ギヤボックス5は、駆動輪車軸Tに沿って(又は駆動輪車軸Tと平行な第1の軸線A1に沿って)測定されるギヤボックス5の長さとして規定される軸方向の長さLGを有する。
【0108】
より具体的には、軸方向の長さLGは、1つ又は2つの電気モータ(6,66)の寸法を考慮しない第1の軸線A1/駆動輪車軸Tに沿ったギヤボックス5の長さである。ギヤボックス5の軸方向の長さLGは、400mm未満、好ましくは、約360mmである。ギヤボックス5、より具体的には、ギヤボックス5とギヤボックス5に係合された1つ又は2つの電気モータ(6,66)とは、第1の軸線A1/駆動輪車軸Tに沿った長さとして規定される第2の軸方向の長さLG2によってさらに規定されてもよい。第2の軸方向の長さLG2は、好ましくは、約400mmである。
【0109】
軸方向の長さLG又は第2の軸方向の長さLG2のいずれかによって規定されるギヤボックス5は、高レベルのコンパクト性を提供することができ、車両の既存のシャーシ9/サスペンションシステム内に装着可能である。
【0110】
図7は、車両の回転可能な車輪96、シャーシ9、ストラット19、空圧シリンダ(98,99)及びサスペンションシステムが省略されたパワートレインアセンブリの斜視図である。さらに、ギヤボックス5は、ケーシング50及び1つ又は複数のケーシングカバー51が省略されて示されている。
図7に示される例は、2つの電気モータ(6,66)を有する実施形態を表している。しかしながら、いくつかのタイプの車両においては、ギヤボックス5のための室(ルーム)/スペースを制限するために、
図9に示されるように、単一の電気モータの実施形態が好ましい。
【0111】
図7は、(第1の)電気モータ6の(第1の)モータ軸A6をさらに示している。(第1の)モータ軸A6は、(第1の)電気モータ6のロータがその周りを回転する軸を規定する。同様に、(第2の)モータ軸A66は、(第2の)電気モータ66の軸として規定され、(第2の)電気モータ66のロータがその周りを回転する軸を表す。
図7における2つの電気モータ(6,66)の位置は、例示的なものであり、車両のタイプに応じて異なることがある。例えば、サスペンションアセンブリ及びシャーシ9に起因して、(第1の)電気モータ6の位置は、(第2の)電気モータ66の位置に対して垂直に配置されてもよい。
【0112】
図7に示されるギヤボックス5の構成は、(第1の)モータ6に係合された2つの分配ギヤ(分配ギヤ12及び第2の分配ギヤ14)、2つの伝達ギヤ(伝達ギヤ13及び第2の伝達ギヤ15)、及び2つの補助伝達ギヤ(補助伝達ギヤ21及び第2の補助伝達ギヤ23)を有する
図4の実施形態を表している。
図7に示される例示的な実施形態では、(第2の)電気モータ66は、ギヤボックスに係合されずに、差動アセンブリに係合された減速装置(減速機)52に係合されている。減速装置は、(変更することができない)固定されたギヤ比を有する。パワートレインアセンブリは、差動アセンブリを選択的にロック/ロック解除するための制御フォーク53をさらに含んでもよい。他の実施形態(図示せず)では、減速装置52が省略され、両方の電気モータ(6,66)がそれぞれ2つのギヤボックスに係合されてもよい。
【0113】
図7に示されるように、(第1の)電気モータ6は、ギヤボックス5の主入力ギヤ11に係合されるように構成される。したがって、動力は、主入力ギヤ11を介してギヤボックスの主シャフト10に伝達される。差動アセンブリは、差動リングホイール70を有する差動装置を含むものとして規定され得る。差動リングホイール70は、ギヤボックス5から出た動力を1つ又は複数の駆動輪車軸Tに伝達するためにギヤボックス5の出力ギヤ3に回転可能に係合可能である。前述したように、駆動輪車軸Tは、左駆動輪シャフト71及び右駆動輪シャフト72として規定され得る。左右の駆動輪シャフト(71,72)は、それぞれが差動アセンブリの差動クラウンホイールに連結されるように、ギヤボックス5のそれぞれの側に配置されるとよい。
【0114】
図8は、前述のパワートレインアセンブリの側面図である。図示されるように、パワートレインアセンブリは、駆動輪車軸Tに対してそれぞれの側に配置された2つの電気モータ(6,66)を有する実施形態を表す。コンパクトなギヤボックス5を有するパワートレインアセンブリのコンパクトさが、H1-H4として規定される高さ/クリアランス、及び、L,L1,L2として規定される長さによってさらに示されている。軸Xは、車両の長手方向の軸を規定し、矢印FWは、車両の前部(例えば、車室又は前側操舵輪車軸(前側操舵輪アクスル))が配置される方向を規定する。軸Zは、軸X及び駆動輪軸Tと直交する垂直軸を規定する。
【0115】
高さH1は、地面から車両のシャーシ9の上部までのZ軸に沿った鉛直方向の距離を表している。第2のクリアランスH2は、地面から(第2の)電気モータ66の最下部までのZ軸に沿った鉛直方向の距離を表している。第3のクリアランスH3は、地面からサスペンションアセンブリの最下部(例えば、サスペンションアーム)までのZ軸に沿った鉛直方向の距離を表している。第4のクリアランスH4は、地面から(第1の)電気モータ6の最下部までのZ軸に沿った距離を表している。
【0116】
長さLは、(第1の)電気モータ6の(第1の)モータ軸A6と(第2の)電気モータ66の(第2の)モータ軸A66との間のX軸に沿った長手方向の距離を表している。また、長さL1は、(第1の)電気モータ6の(第1の)モータ軸A6と駆動輪車軸Tとの間のX軸に沿った長手方向の距離を表している。長さL2は、(第2の)電気モータ66の(第2の)モータ軸A66と駆動輪車軸Tとの間のX軸に沿った長手方向の距離を表している。
【0117】
例示的な実施形態として、パワートレインアセンブリは、寸法(タイヤサイズ)が315/70 R22.5の駆動輪96を有する車両に組み付けることが可能である。駆動輪96の寸法は限定されない。これらの寸法は、
図8に示されるトランスミッションアセンブリの全体的な寸法及びコンパクトさの1つの考えを示すものである。
【0118】
好ましくは、高さH1は、約859mm(確認中(tbc))である。クリアランスH2は、好ましくは、約217mm(tbc)である。クリアランスH3は,約230(tbc)である。クリアランスH4は、好ましくは、約229mm(tbc)である。長さLは、好ましくは、約1074mmである。長さL1は、好ましくは、約470mmである。長さL2は、好ましくは、約633mmである。
【0119】
このようなギヤボックス5とギヤボックス5が組み込まれたパワートレインアセンブリとのそれぞれの寸法が小さいことにより、高いレベルのコンパクト性が達成される。例えば、パワートレインアセンブリが大型トラック車両に組み込まれる場合、シャーシ9とギヤボックス5との間のクリアランスは、より重い負荷に耐えることを可能とし、ギヤボックス5がサスペンションアセンブリに係合される場合、車両は、極めて高い振動に耐えることができ、駆動輪車軸(駆動輪アクスル)Tに与えられる高いレベルの動きによって、より大きい衝撃を吸収することができる。このような高いレベルの動きは、パワートレインアセンブリと車両の他の部分(例えば、シャーシ9、サスペンションアセンブリ、バッテリー等)との間の利用可能な室(スペース)によってもたらされる。
【0120】
図9は、1つの(第1の)電気モータ6のみが配置されることを除けば、
図5-8の実施形態と実質的に同じである好ましい実施形態を示している。この実施形態は、ギヤボックス5のコンパクト性及び車両内のパワートレインアセンブリのコンパクト性をさらに向上させる。
【0121】
図10は、第1/第2の軸線(A1,A2)に沿った、ギヤボックス5内に含まれる種々の半径を断面で示す概略図である。
図1-2及び
図10に示されるように、主シャフト10は、主入力ギヤ11及び分配ギヤ12の半径R11,R12、直径D1-D4、さらに長さL10によって更に規定することができる。同様に、補助シャフト20は、補助伝達ギヤ21及び補助出力ギヤ22の半径R21、R22、直径D25-D29、及び長さL20によってさらに規定することができる。
【0122】
種々の実施形態において、第1のシャフト/補助シャフト(10,20)の直径は、ギヤ(3,13,15,21,22,23)の半径と同様、異ならせることができる。したがって、ギヤ(3,13,15,21,22,23)の半径/直径を変更することによって、実質的に任意のギヤ比をもたらすことが可能である。出力ギヤ3の回転速度はΩ3で表すことができ、従来技術においてよく知られるように、回転速度Ω3は、以下の式を用いて決定することができる。
【0123】
Ω3=Ω1(R13/R21)(R22/R33)
【0124】
ここで、Ω1は,入力ギヤの回転速度である(例えば、間接係合の場合、入力ギヤは、主シャフト10/主入力ギヤ11の回転速度と同じ回転速度を持つ伝達ギヤ13として表すことができる)。R13は、伝達ギヤ13の半径であり、R21は、補助伝達ギヤ21の半径であり、R22は,補助出力ギヤ22の半径であり、R33は,出力ギヤ3の半径である。従って、上記の式の個々の半径を変更することによって、異なるギヤ比を達成することができる。
【0125】
加えて、主入力ギヤ11の半径R11は、好ましくは、約166mmである。分配ギヤ12の半径R12は、好ましくは、約86mmである。有利には、他の実施例によれば、回転速度Ω3は、Ω1よりも低くてもよいし(減速ギヤ比)、Ω1と比較して高くてもよい(増速ギヤ比)。
【0126】
さらに
図10に示されるように、主入力ギヤ11、伝達ギヤ13、補助伝達ギヤ21、補助出力ギヤ22、及び出力ギヤ3の外周面(11a,13a,21a,22a,3a)は、互いに係合しているか、入力(例えば、電気モータ6)又は出力(例えば、差動リングホイール70)のいずれかに係合するものとして示されている。より具体的には、主入力ギヤ11の外周面11aは、電気モータ6のロータの外周面に係合している。伝達ギヤ13の外周面13aは、補助伝達ギヤ21の外周面21aに係合している。また、補助出力ギヤ22の外周面22aは、出力ギヤ3の外周面3aに係合している。さらに、出力ギヤ3は、その外周面3aが差動アセンブリの差動リングホイール70に係合している。
【0127】
有利には、互いに対応するギヤホイールの外周面(11a,13a,21a,22a,3a)は、ヘリカルタイプの歯(螺旋歯)を有するとよい。螺旋歯は、ギヤボックス5の差動中にギヤボックス5によって発生する騒音を効果的に低減する。
【0128】
さらに、前述のギヤボックス5及びこのようなギヤボックス5が組み込まれたパワートレインアセンブリは、少なくとも250kWの動力を伝達することができる。より好ましくは、伝達される動力は、少なくとも300kWとすることができる。伝達トルクに関して、ギヤボックス5又はこのようなギヤボックス5が組み込まれたトランスミッションアセンブリは、少なくとも600N・m、好ましくは、少なくとも750N・mのトルクを伝達することができる。
【0129】
したがって、前述のギヤボックス5及びトランスミッションアセンブリは、種々の形式の車両、好ましくは、電気トラック又はバス/ハイブリッドトラック又はバスのような電気自動車/ハイブリッド車両のためのコンパクトな解決策をもたらすこととなる。ギヤボックス5(及びトランスミッションアセンブリ)は、特定の条件下で追加の牽引力をもたらすために、牽引車両の動力とは無関係に、追加の動力源としてトレーラーにも適している。ギヤボックス5の短い軸方向の長さによって、ギヤボックス5は、他の部品(バッテリー、荷台/空力装置、サスペンションアセンブリ等)に必要とされるスペースを制限することなく、種々の寸法の電気自動車/ハイブリッド車に装着することができる。このように、本明細書は、種々の形式の車両用の小形、コンパクト、及び軽量のギヤボックス5のための解決策を提案するものである。