(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】アラミドパルプの製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 13/26 20060101AFI20231218BHJP
D01F 6/60 20060101ALI20231218BHJP
D01F 6/90 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
D21H13/26
D01F6/60 371A
D01F6/90 331
(21)【出願番号】P 2022534762
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 KR2020019048
(87)【国際公開番号】W WO2021137524
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0179689
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0174805
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】コ,チャンヒ
(72)【発明者】
【氏名】グ,ナムデ
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-190087(JP,A)
【文献】特開昭63-165514(JP,A)
【文献】特表2018-515697(JP,A)
【文献】国際公開第2003/093576(WO,A1)
【文献】特開昭63-135515(JP,A)
【文献】特表2019-523838(JP,A)
【文献】特開平04-002814(JP,A)
【文献】特開平03-206119(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1360988(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0114570(KR,A)
【文献】米国特許第05250633(US,A)
【文献】特表2010-502854(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1071862(KR,B1)
【文献】特開2011-058117(JP,A)
【文献】米国特許第04873144(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1519466(KR,B1)
【文献】特開平07-108119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B~J、D02G、D02J、D04H、D06M、D01F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸油剤がコーティングされない乾燥したマルチフィラメントの無油剤アラミド短繊維が膨潤した水分散スラリーを用いて形成されたマルチフィラメントから形成され、比表面積が10m
2
/g以上であるアラミドパルプの製造方法であって、
無油剤アラミド短繊維を提供する段階;
前記無油剤アラミド短繊維の水分散スラリーを製造する段階;および
前記水分散スラリーを叩解する段階;を含み、
前記無油剤アラミド短繊維は、
芳香族ポリアミド重合体を用いた紡糸ドープを紡糸し、凝固させてマルチフィラメントを製造する段階;および
前記マルチフィラメントを乾燥し、切断する段階を含む方法で製造されて、紡糸油剤および水分が含まれ
ず、
前記水分散スラリーを製造する段階は、アラミド短繊維を常温にて10分以上120分以下で水にて解離してアラミド短繊維を膨潤させる段階を含み、
前記水分散スラリーにおける膨潤したアラミド短繊維は、膨潤前のアラミド短繊維に比べて102%以上の膨潤度を有し、
前記膨潤度は、前記無油剤アラミド短繊維を水に浸漬後、光学顕微鏡により水に浸漬前の無油剤アラミド短繊維の直径と水に浸漬後の膨潤した前記アラミド短繊維の直径とを測定して、前記膨潤した無油剤アラミド短繊維の直径が膨潤前の無油剤アラミド短繊維に比べて大きくなる差を測定した値として定義されることを特徴とする、
アラミドパルプの製造方法。
【請求項2】
濾水度が500ml以下である、請求項1に記載のアラミドパルプ
の製造方法。
【請求項3】
濾水度が100~500mlであり、繊維長(長さ加重平均繊維長)が0.3~1.5mmである、請求項1に記載のアラミドパルプ
の製造方法。
【請求項4】
前記水分散スラリーを製造する段階の前に、アラミド短繊維を界面活性剤含有洗浄液で洗浄する段階をさらに含む、請求項
1に記載のアラミドパルプの製造方法。
【請求項5】
前記叩解する段階の後、抄紙製造段階、抄紙乾燥段階および抄紙破砕段階をさらに含む、請求項
1に記載のアラミドパルプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年12月31日付の韓国特許出願第10-2019-0179689号および2020年12月14日付の韓国特許出願第10-2020-0174805号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、無油剤(oilless)原糸を用いて生産性および物性が向上したアラミドパルプおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
繊維質および非繊維質補強材は、摩擦製品、密封製品およびその他のプラスチックまたはゴム製品において多年にわたって使用されてきた。このような補強材は、典型的に高い耐摩耗性および耐熱性を示さなければならない。
【0004】
繊維質補強材としては石綿繊維が一般に使用されてきたが、人体に有害であることが明らかになり、その使用が禁止されている。したがって、多様な石綿繊維の代替物が提案されており、その中で最も注目されるものの一つが、アラミド繊維を用いて製造されたアラミドパルプである。アラミドパルプは、多様な物品の補強材として使用されるが、例えば、ブレーキパッド、クラッチ、ガスケットなどの補強材として幅広く使用されている。
【0005】
また、アラミドパルプは、一般に、油剤(oil)が含まれているアラミド原糸を作製した後、アラミド原糸をカッティングし、カッティングされたアラミド原糸を水に分散(スラリー化)した後、湿式叩解(refining)により製造されている。
【0006】
つまり、前記アラミド繊維は、芳香族ジアミンと、芳香族ジアシッドハライド(diacid halide; ジアシルハライド)とを、N-メチル-2-ピロリドンを含む重合溶媒中にて重合させることによって、全芳香族ポリアミド重合体を製造する工程、この重合体を濃硫酸溶媒に溶解させて紡糸ドープを製造する工程、前記紡糸ドープを、紡糸口金を通して紡糸した後に、紡糸物を非凝固性流体および凝固浴槽を順次に経由させることによって、フィラメントを製造する工程、および、前記フィラメントを水洗および乾燥する工程を経て製造される。この後、油剤供給ローラを用いて紡糸油剤を、乾燥したフィラメントの繊維表面にコーティングし、巻取ることによって、アラミド繊維を原糸として製造する。
【0007】
しかし、アラミド原糸にコーティングされた油剤は、原糸の水分散、膨潤および叩解を妨げて、アラミドパルプの核心的な特性であるフィブリルの発現を妨げる。これによって、最終的にアラミドパルプの主な用途であるブレーキパッド、ガスケットの製造時、異種材料との界面接着力を弱めるという問題がある。
【0008】
そこで、従来、油剤を除去するために、パルプの製造中に高周波、硫酸およびアルカリなどを用いて、パルプ内の油剤の残留含有量を0.5重量%以下に低減しようとする方法がある。しかし、前記方法は、パルプの製造工程中に、別途の油剤除去手段を必要とするため、工程が複雑で、依然として油剤が残留するため、異種材料と結合したアラミド繊維複合材の界面接着力を向上させるのに限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、無油剤(oillness)アラミド原糸を用いて比表面積を高めることができ、異種材料との界面接着力に優れ、生産性および物性が向上した高品質のアラミドパルプおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書の一実施形態によれば、
紡糸油剤がコーティングされていない、乾燥したマルチフィラメントの無油剤アラミド短繊維から形成されたことを特徴とする、アラミドパルプを提供する。
【0011】
本明細書の他の実施形態によれば、
無油剤アラミド短繊維を提供する段階;
前記無油剤アラミド短繊維の水分散スラリーを製造する段階;および
前記水分散スラリーを叩解する段階;を含み、
前記無油剤アラミド短繊維は、
芳香族ポリアミド重合体を用いた紡糸ドープを紡糸し、凝固させてマルチフィラメントを製造する段階;および
前記マルチフィラメントを乾燥し、切断する段階;を含む方法で製造され、
紡糸油剤および水分が含まれないことを特徴とする、前記アラミドパルプの製造方法を提供する。
【0012】
以下、発明の実施形態によるアラミドパルプおよびその製造方法について詳細に説明する。
【0013】
それに先立ち、本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0014】
本明細書で使用される単数の形態は、文言がこれと明確に反する意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0015】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるわけではない。
【0016】
そして、本明細書において、「第1」および「第2」のように序数を含む用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と名付けられてもよく、同様に、第2構成要素は第1構成要素と名付けられてもよい。
【0017】
また、本明細書において、アラミド短繊維は、アラミド原糸を含むことができる。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
発明の一実施形態により、紡糸油剤がコーティングされていない、乾燥したマルチフィラメントの無油剤アラミド短繊維から形成されたことを特徴とする、アラミドパルプが提供される。
【0020】
本明細書では、アラミドパルプの製造時に使用するアラミド原糸に対して、一般的な紡糸油剤を付与せず、完全に乾燥した状態の無油剤アラミド原糸を一定の長さに切断して用いることによって、従来に比べて水分散および膨潤の時間を減少させることができる。
【0021】
したがって、前記一実施形態により提供されるアラミドパルプは、従来よりもパルプ化時間を短縮して生産性を向上させることができるのであり、水に分散した際に繊維のかたまり(Floc)の発生が少ないことから、切断(遊離状叩解)よりはフィブリル(粘状叩解)が中心である、高フィブリルパルプの製造が可能である。
【0022】
また、本明細書により、無油剤(Oilless)アラミド原糸を用いる場合、繊維表面に油剤(油成分)がないため、パルプ化する際にフィブリルの発生量が極大化されて、パルプの物性を改善することができる。さらに、本発明では、最終パルプに残留油剤がないことから、各種異種材料との界面接着力が極大化できる。このため、前記アラミドパルプは、主な用途である、ブレーキ、パッド、ガスケットの製造に適用されて、物性に優れた製品を提供するのに寄与することができる。特に、本発明では、無油剤アラミド原糸を用いる際に、完全乾燥した状態のマルチフィラメントを使用するため、原糸の優れた物性特性(高い強度、配向性および結晶化度)を維持することができる。
【0023】
このため、前記一実施形態による最終アラミドパルプは、従来よりもフィブリル化がうまく行われ、比表面積を高めることができて、比表面積が10m2/g以上であってもよい。より具体的には、前記アラミドパルプの比表面積は、10~20m2/gになる。また、本発明のアラミドパルプは、前記比表面積の条件を満足しながらも、同時に濾水度が500ml以下になることから、従来よりもフィブリル化に優れたパルプを提供することができる。より具体的には、前記アラミドパルプの濾水度が100~500mlであり、繊維長(長さ加重平均繊維長)が0.3~1.5mmになる高品質のパルプを提供することができる。このようなアラミドパルプは、最終完成品に残留油剤が含まれないか、ほとんど含まれない。一例として、前記アラミドパルプは、最終製品のパルプ内における残留油剤の含有量が0.1%以下であってもよい。
【0024】
以下、前記一実施形態によるアラミドパルプの製造方法について、図面を参照してより具体的に説明する。
【0025】
図1は、発明の一実施形態によるアラミドフィラメントの製造工程を簡略に示す工程図である。
【0026】
前記アラミドパルプの製造方法は、他の実施形態により、無油剤アラミド短繊維を提供する段階;前記無油剤アラミド短繊維の水分散スラリーを製造する段階;および、前記水分散スラリーを叩解する段階;を含み、前記無油剤アラミド短繊維は、芳香族ポリアミド重合体を用いた紡糸ドープを紡糸し、凝固させてマルチフィラメントを製造する段階;および、前記マルチフィラメントを乾燥し、切断する段階を含む方法でもって製造されることから、紡糸油剤および水分が含まれないことを特徴とするアラミドパルプの製造方法が提供される。
【0027】
したがって、発明の一実施形態により、アラミドフィラメント製造のための無油剤アラミド短繊維を提供する段階を行う。
【0028】
前記芳香族ポリアミド重合体を用いてアラミド繊維を製造する段階において、紡糸および凝固浴を経たマルチフィラメントに対して、乾燥後に、一般的な紡糸油剤を付与する工程を行わず、乾燥マルチフィラメントについて切断して使用することができる。
【0029】
具体的には、前記無油剤アラミド繊維は、芳香族ジアミンと、芳香族ジアシッドクロライドとを、N-メチル-2-ピロリドンを含む重合溶媒中にて重合させて、全芳香族ポリアミド重合体を製造する段階、前記重合体を濃硫酸溶媒に溶解させて紡糸ドープを製造する段階、前記紡糸ドープを紡糸口金から紡糸し、紡糸された紡糸物を、凝固槽を用いて凝固させてマルチフィラメントを形成する段階;前記マルチフィラメントを水洗し、乾燥する段階により提供される。
【0030】
このような工程を経たマルチフィラメントは、紡糸油剤および水分が含まれない状態であり、後の工程に直ちに用いるという特徴がある。つまり、前記乾燥段階を経たマルチフィラメントは、一定の長さに切断してパルプの製造に適用できる。
【0031】
前記マルチフィラメントを形成する段階は、非凝固性流体層(例えば、エアギャップ)を介して、凝固液浴槽内に紡糸物を通過させる方法を使用することができる。
【0032】
より好ましい実施形態によれば、芳香族ジアミンと芳香族ジアシッドクロライドとを用いて、5.0~7.0の固有粘度(inherent viscosity:I.V.)を有する芳香族ポリアミド重合体、例えば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド:PPD-T)を提供した後、これを濃硫酸溶媒に溶解させることによって、紡糸ドープ(spinning dope)を製造する。
【0033】
前記紡糸ドープは、
図1に示された紡糸口金(spinneret)10を用いて紡糸(spinning)した後、エアギャップ(air gap)を経て凝固槽(coagulation bath)20内で凝固させることによって、マルチフィラメント(multi filament)を形成する。
【0034】
次に、得られたマルチフィラメントに残存する硫酸を除去する。紡糸ドープの製造に使用された硫酸は、紡糸物が凝固槽20を通過する際に大部分が除去されるが、完全に除去されず残存しうる。また、紡糸物から硫酸が均一に抜け出るようにするために、凝固槽20の凝固液に硫酸を添加する場合、得られるマルチフィラメントには硫酸が残存する確率が高い。したがって、マルチフィラメントに残存する硫酸は、水、または水とアルカリ溶液との混合溶液が入った水洗槽30にて水洗工程を経ることで除去されうる。
【0035】
この後、水洗槽を経たマルチフィラメント31に残留する水分を除去するための乾燥工程が、乾燥ロール51が設置された乾燥部50にて実施される。前記乾燥したマルチフィラメントは、ワインダ60に巻取ることによって、無油剤アラミドフィラメントを得る。
【0036】
この時、乾燥工程(熱処理)により原糸の物性が決定されることから、乾燥したマルチフィラメントは、完全に乾燥を進行させたものを使用しなければならない。一例として、本発明では、100℃の温度条件にて、水洗されたマルチフィラメントに対して、完全に乾燥工程を進行させることが好ましい。
【0037】
つまり、紡糸後の乾燥(熱処理)の際に原糸の物性が発現するのであり、原糸の強度が高いほど、パルプのフィブリル化および比表面積などが高くなる。しかし、もしも、紡糸の際に、完全に乾燥していない状態のアラミド繊維を、直ちにカッティングした後にパルプ原料として使用すれば、原糸の物性の発現が難しいのでありうる。したがって、半乾燥または水分含有の原糸の場合、低い強度、低い配向および低い結晶化度などによって、パルプ化の際に、比表面積10g/m2以上の高品質のパルプを製造することができない。
【0038】
また、完全に乾燥していない、半乾燥または水分含有の繊維の場合、膨潤した状態であるので、一定の長さにカッティングすることが不可能であるという問題がある。言い換えれば、膨潤繊維は、正常な原糸の状態ではないため、切断装置(ブレード)で切断されない。
【0039】
そこで、本明細書では、完全に乾燥した状態の原糸に対して油剤の付与なくパルプの製造に使用するので、従来よりも優れた原糸強度を維持することができる。そのため、本発明では、フィブリル化が向上して、比表面積10g/m2以上の高品質のパルプを提供することができる。
【0040】
前記無油剤アラミドフィラメントは、ロータリーカッター(rotary cutter)(図示せず)を用いて切断することによって、約1~12mmの長さを有するアラミド短繊維1に作る。アラミド短繊維1の長さは、ロータリーカッターのブレード(blade)の間隔を調節することによって調節できる。このような方法により、無油剤アラミド短繊維が提供される。
【0041】
前記過程の後に、無油剤アラミド短繊維を用いてアラミドパルプを製造する。前記アラミドパルプは、アラミド短繊維を解離し、湿式叩解する工程によりアラミドパルプを製造することができる。
【0042】
したがって、前記一実施形態によるアラミドパルプの製造方法は、無油剤アラミド短繊維を用いて水分散スラリーを製造する段階を行う。
【0043】
また、任意選択的に、必要に応じて、前記水分散スラリーを製造する段階の前に、アラミド短繊維を界面活性剤含有洗浄液で洗浄する段階をさらに含んでもよい。前記界面活性剤は、その種類が特に限定されず、非イオン系、陽イオン系および陰イオン系のいずれも使用可能である。本発明では、いずれを使用しても構わないが、洗浄効率の面から、陰イオン系および陽イオン系の界面活性剤を使用することがより好ましいのでありうる。
【0044】
前記アラミド短繊維の水分散スラリーを製造する段階は、解離工程を含むことができる。
【0045】
アラミド短繊維(原糸)の水分散が円滑でない場合、原料が叩解機でかたまりになって投入されて、設備トラブル(ハンチング)を誘発し、原糸の切断が急激に増えるなどの問題がある。したがって、本発明では、無油剤原糸の使用により、前記問題がなく、水上に浮上せずに円滑に分散できる。
【0046】
前記水分散スラリーを製造する段階は、アラミド短繊維を常温にて10分以上120分以下で水にて解離させて、アラミド短繊維を膨潤させる段階を含むことができる。この場合、前記水分散スラリーの製造時、解離時間が10分未満であれば、アラミド短繊維の膨潤がなされず、その時間が120分以上の場合、生産性に問題がある。
【0047】
また、水の温度、浸漬時間、原糸の油剤の有無などの変数によって、水分散スラリー内のアラミド短繊維の膨潤度が変更されうる。ただし、本発明の無油剤の膨潤度が、油剤に比べて短時間内に単繊維を解離しうることから、膨潤度が、より優れるのでありうる。
【0048】
つまり、原糸は、膨潤により組織が柔軟になり、一般に、膨潤度が大きいほど、パルプ化に有利であることが知られている。しかし、本発明の方法で得られた水分散スラリーに対して、光学顕微鏡によりスラリー内の無油剤アラミド短繊維を確認すれば、繊維の膨潤度(直径)が従来よりも向上することから、同一の製造条件を適用したとき、最終のパルプにおけるフィブリルの発達が優れるのでありうる。
【0049】
一実施形態により、前記水分散時、水にアラミド短繊維を約60分間浸漬させる方法を使用したとき、水分散スラリーで膨潤した無油剤アラミド短繊維は、膨潤前の無油剤アラミド短繊維の膨潤度に比べて、約102%以上、あるいは約105%以上の膨潤度を有するものであってもよい。
【0050】
また、前記解離工程によりアラミドスラリーが形成されると、前記アラミドスラリーを湿式叩解(refining)する段階を行う。
【0051】
具体的には、前記湿式叩解工程は、アラミドパルプの濾水度(カナダ標準濾水度:Canadian Standard Freeness)を決定する重要な工程の一つである。なぜならば、叩解工程によるアラミド短繊維のフィブリル化の程度に応じて、アラミドパルプの濾水度に大きな差を示すからである。つまり、フィブリル化の程度が優れていれば、パルプの濾水度が低くなるのであるが、これは、アラミドパルプの分散性に優れることを意味する。これに対し、フィブリル化の程度が悪ければ、パルプの濾水度が高くなるのであるが、これは、アラミドパルプの品質が劣ることを意味する。
【0052】
したがって、叩解工程は、それぞれフィブリル化が円滑に形成されるように、水分散スラリー内に含まれている無油剤アラミド短繊維が、より良く分散した状態に作る段階である。万一、前記解離工程にて無油剤アラミド短繊維が、よく分散せずにかたまっていれば、表面積が低下するため、叩解の際、切断(遊離状叩解)中心に進行して、フィブリルの発達(粘状叩解)がなされず、高フィブリルパルプの製造が難しいのでありうる。
【0053】
しかし、前記一実施形態によるアラミドパルプの製造方法は、無油剤アラミド短繊維(原糸)の使用により、水に分散した際、水分散性に優れることから膨潤時間が減少するため、繊維のかたまり性がなく、フィブリル化が極大化されうる。
【0054】
前記叩解する段階の後、脱水および乾燥する段階をさらに含むことができる。例えば、叩解段階にてアラミド短繊維がフィブリル化された後、よく知られた方法でもって脱水し、熱風乾燥機を用いて乾燥(熱処理)を進行させることができる。
【0055】
また、選択的に、アラミドパルプを工場で大量生産する際、前記叩解する段階の後、よく知られた方法によりアラミドパルプを製造する段階を含むことができる。一例として、前記叩解する段階の後、抄紙製造段階、抄紙乾燥段階および抄紙破砕段階をさらに含むことができる。
【0056】
前記一実施形態によるアラミドパルプの製造方法において、叩解段階、抄紙製造段階、抄紙乾燥段階、および抄紙破砕段階は、この分野にてよく知られた方法により行われる。
【0057】
図2は、発明の他の実施形態によるアラミドパルプの製造工程を簡略に示す工程図である。
【0058】
図2に示されるように、前記一実施形態によれば、無油剤アラミド短繊維1を洗浄槽180に投入した後、洗浄された無油剤アラミド短繊維を解離部110に移送して水分散スラリーを製造する。前記水分散スラリーは、無油剤アラミド短繊維が膨潤した状態で含まれており、このような水分散スラリーを、叩解部120、抄紙形成部130、プレス部140、ドライ部150、破砕部160および包装部170に移送させる。
【0059】
上述した叩解工程によりフィブリル化された無油剤アラミド短繊維2は、抄紙形成部(sheet forming unit)130によって、抄いた紙(sheet)3に作られ、次に、前記抄いた紙3から水分をスキージング工程により一次的に水分除去する。
【0060】
前記水分除去は、上下2つのロール(roll)から構成されたプレス部(pressing unit)140にて行われる。
【0061】
前記プレス部140にて一次的に水分除去された抄いた紙4は、ドライ部150で乾燥することによって、二次的に水分が除去される。
【0062】
次に、乾燥した抄いた紙5は、破砕部(crushing unit)160にて破砕されて、最終アラミドパルプ6が製造される。
【0063】
このように製造された最終アラミドパルプ6は、包装部(wrapping unit)170にて一定の単位に圧縮包装された後、目的地に移送されうる。
【0064】
また、一実施形態により、前記アラミドパルプは、前記濾水度が500ml以下であり、比表面積が10m2/g以上であり、最終製品のパルプ内の残留油剤の含有量が0.1%以下になりうる。
【0065】
具体的には、前記工程により製造されたアラミドパルプは、比表面積が従来よりも増加できる。一例を挙げると、本明細書によれば、比表面積が10m2/g以上のアラミドパルプが提供されうる。より好ましくは、前記アラミドパルプの比表面積は、10~20m2/gであってもよい。
【0066】
また、前記アラミドパルプは、油剤が含まれず、濾水度が500ml以下、あるいは100~500mlであってもよく、繊維長(長さ加重平均繊維長)が0.3~1.5mmであってもよい。ここで、前記濾水度の評価の際、アラミド短繊維の油剤の有無による評価のために、実験室用叩解機(バレービーター)を用いた結果の場合、濾水度が若干高いのでありうる。しかし、大量生産のために一般的な叩解機を用いる場合のアラミドパルプの濾水度は、500ml以下、あるいは100~500mlになる。
【0067】
このようなアラミドパルプは、分酸性に優れ、高分子樹脂といった異種材料と複合化した際に界面接着力に優れていて、相溶性が向上し、均一な物性を有する製品を提供することができる。
【0068】
また、前記一実施形態によるアラミドパルプを用いて成形された製品に対して、曲げ強度を向上させる効果を提供することができる。
【発明の効果】
【0069】
本発明は、無油剤(oilless)原糸を用いて、スラリーを製造する際、水分散および膨潤の時間を従来よりも短縮させることから、生産性が向上し、製品品質の偏差を改善可能で、物性を向上させることができるアラミドパルプの製造方法を提供することができる。また、本発明は、最終パルプに残留油剤がないため、異種材料とアラミドパルプとの界面接着力が非常に優れることから、ブレーキパッド、ガスケットの物性の改善に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】発明の一実施形態によるアラミドフィラメントの製造工程を簡略に示す工程図である。
【
図2】発明の他の実施形態によるアラミドパルプの製造工程を簡略に示す工程図である。
【
図3】実施例1および比較例1の水分散性を肉眼で観察した結果である。
【
図4A】実施例1の繊維の膨潤度を光学顕微鏡で観察した結果である。
【
図4B】比較例1の繊維の膨潤度を光学顕微鏡で観察した結果である。
【
図5】実施例1および比較例2に対する叩解度の評価の結果である。
【
図6】実施例1および比較例2に対する配向の評価の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0072】
実施例1
1)アラミド短繊維の製造
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に塩化カルシウム(CaCl2)を添加して重合溶媒を製造した後、パラ-フェニレンジアミンを前記重合溶媒に溶解させて、混合溶液を製造した。
【0073】
その後、前記混合溶液を撹拌しながら、前記混合溶液に前記パラ-フェニレンジアミンと同一モルのテレフタロイルジクロライドを2回に分けて添加して、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)重合体を生成させた。その後、前記重合体を含む重合溶液に、水と水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して酸を中和させた。その後、重合体を粉砕した後、水を用いて、芳香族ポリアミド重合体に含有された重合溶媒を抽出し、脱水および乾燥の工程を経て、最終的に芳香族ポリアミド重合体を得た。
【0074】
その後、得られた芳香族ポリアミド重合体を、99%濃硫酸に溶解させて紡糸ドープを用意した。紡糸ドープ内の重合体の濃度は20重量%となるようにした。
【0075】
紡糸ドープを、紡糸口金を通して紡糸した後、7mmのエアギャップを経て、13%の硫酸水溶液が入っている凝固槽内で凝固させることによって、1,000本のモノフィラメントから構成されたアラミドマルチフィラメントを製造した。
【0076】
製造されたマルチフィラメントを水洗乾燥および巻取りして、線密度1500デニールのアラミド繊維を製造した。この際、前記乾燥は100℃で熱風乾燥を進行させた。
【0077】
以後、前記油剤が付与されていないアラミド繊維を、ロータリーカッターを用いて切断することによって、アラミド短繊維(無油剤アラミド原糸)を作った。
【0078】
2)アラミドパルプの製造
前記無油剤アラミド短繊維(アラミド原糸)を水に入れて10分間サーキュレーションして分散させた後、直ちに60分間、実験用叩解機であるバレービーターを用いて、叩解を進行させた。この過程で膨潤したアラミド短繊維が得られる。
【0079】
つまり、実験用叩解機であるバレービーターを用いて、無油剤原糸を叩解した。叩解条件は濃度0.6%、1時間であり、負荷は10kgに設定した。
【0080】
叩解部に投入した後、60分間叩解させることによって、平均長さが1mmの、フィブリル化されたアラミド短繊維2を生成した。
【0081】
前記叩解後、遠心脱水機を用いて脱水を進行させ、熱風乾燥機にて100℃でもって半日(12時間)程度乾燥を進行させて、アラミドパルプを製造した。
【0082】
比較例1
前記アラミド短繊維の製造時、線密度1,500デニールのマルチフィラメントに対して、紡糸油剤を付与して用いることを除き、実施例1と同様の方法で行った。
【0083】
つまり、マルチフィラメントに対して、エステル系オイルを含む第1油剤およびリン酸塩エーテル系オイルを含む第2油剤を順次に通過させた後、平均捲縮数が3個/cmとなるように捲縮した。
【0084】
比較例2
アラミド短繊維の製造時、乾燥(熱処理)をしないことを除けば、実施例1と同様の方法でアラミドパルプを製造した。
【0085】
[実験例1]
前記実施例1および比較例1に対して、次の方法で物性を評価した。
【0086】
つまり、アラミド短繊維の油剤の有無に対する効果の比較のために、常温で10分間実験室用叩解機(バレービーター)を用いた結果の比較である。
【0087】
(1)繊維の水分散評価
前記実施例1および比較例1のアラミド短繊維の水分散スラリーを製造した際の水分散評価を肉眼で観察して、その結果を
図3に示した。
【0088】
図3からみると、本発明の無油剤アラミド原糸を用いた実施例1は、既存の油剤が含まれている原糸使用の比較例1に比べて、分散性が非常に優れていることが分かる。
【0089】
つまり、原糸の水分散後、肉眼での観察結果、実施例1は、原糸が無油剤によって浮上せず円滑に分散した。
【0090】
これに対し、比較例1の既存の原糸は、油剤によって浮上し、繊維のかたまり(Floc)が解(ほぐ)れていなかった。
【0091】
(2)繊維の膨潤度
実施例1の無油剤原糸および比較例1の油剤原糸に対して、水に浸漬後、光学顕微鏡により直径を測定した際の、膨潤度(直径が大きくなる)の差を確認した。その結果は、
図4A、
図4Bに示した。
図4A、
図4Bにて、a~eは、表示された区間の繊維長を示す。
【0092】
図4Aの実施例1の無油剤原糸は、水に浸漬後、光学顕微鏡により観察すれば、浸漬60分後の膨潤度が、浸漬前に比べて105.0%になった。
【0093】
しかし、
図4Bの比較例1の既存の原糸は、膨潤度が、浸漬60分後に101.7%になり、実施例1よりも不良であった。
【0094】
(3)濾水度(CSF:ml)
叩解後、実施例1および比較例1の無油剤/油剤原糸でもって作製したパルプを完全に乾燥した後、標準解離機を用いて解離後、濾水度を測定した。濾水度はパルプの脱水性を評価し、一般に脱水性が悪ければ(濾水度値が低ければ)、優れたパルプであると評価する。結果は表1の通りである。
【0095】
つまり、TAPPI227の評価規定にしたがい、3g/Lのパルプを、標準離解機(disintegrator)を用いて一定の時間解離した後、前記規定に定められたフリーネス(Freeness; 濾水度)テスタ機に投入した後、オーバーフローされる水の量を測定して、パルプのフィブリル化度を定性的に評価した。
【0096】
(4)繊維長(繊維加重平均繊維長)
叩解後、無油剤/油剤原糸で作製したパルプを、繊維長測定機であるValmet FS300で測定した。
【0097】
(5)てん料のリテンション(Filler Retention:F/R)
F/Rは、パルプのフィブリルを評価する方法であって、パルプとフィラーとをミキシングした後、ふるい分けして、パルプがフィラーを保持している程度を評価した。一般に、値が高いほど、フィブリルが発達した良いパルプであると判断した。
【0098】
(6)仮成形/曲げ強度
仮成形/曲げ強度はパルプの補強性能を評価する方法で、パルプとフィラーとをミキシングした後、プレス設備を用いて仮成形してパッドを製造した。
【0099】
製造したパッドの曲げ強度を測定してパルプの補強性能を評価した。この際、曲げ強度は、KS M ISO178にしたがい、プラスチック-曲げ性の測定規格をモディファイ(modify)して、曲げに耐える力(抵抗力)を測定して評価した(単位:kgf)。
【0100】
仮成形/曲げ強度評価の結果、無油剤原糸を用いたパルプが約58%高い(優れている)ということが明らかになった。
【0101】
(7)比表面積(m2/g)
よく知られたBET評価方法により、試料の比表面積を定量的に測定した。
【0102】
【0103】
表1からみると、実施例1の無油剤アラミド短繊維(原糸)を用いたパルプが、比較例1よりもパルプ化に優れており、最終的な製品における異種材料との界面接着力に優れていることを確認した。
【0104】
つまり、上述のように、実施例1は、比較例1よりも水分散性および膨潤度に優れており、比表面積が約12m2/gと高くなった。
【0105】
また、繊維長の結果からも、実施例1が、比較例1より約7%短いことが明らかになった。繊維長が短いというのは、叩解が多く行われたことであると解釈することができる。したがって、本発明の場合、叩解が容易に進行して、パルプ性能を改善することができる。
【0106】
濾水度評価の結果、実施例1の無油剤アラミド短繊維(原糸)を用いたパルプの濾水度が、比較例1より約6%低い(優れている)ことが明らかになった。濾水度はパルプの脱水性を評価し、一般に、脱水性が悪ければ(濾水度値が低ければ)、優れたパルプであると評価することができる。
【0107】
てん料のリテンション(F/R)の評価の結果、実施例1の無油剤アラミド短繊維(原糸)を用いたパルプのF/Rが、比較例1よりも約3%高い(優れている)ことが明らかになった。
【0108】
仮成形/曲げ強度評価の結果、実施例1の無油剤アラミド短繊維(原糸)を用いたパルプの場合、比較例1より約58%高い(優れている)ことが明らかになった。
【0109】
また、前記評価の結果は、実験室用叩解機(バレービーター)を用いた結果であり、一般的な工場用叩解機を用いたパルプの濾水度は500ml以下、あるいは100~500mlになりうる。
【0110】
これに対し、比較例1は、叩解において、実施例1と比べて肉眼で観察される特異事項はないが、実施例1の無油剤アラミド短繊維(原糸)に比べて繊維長が長く、濾水度が高く、F/R値が低かった。つまり、これは、パルプ化の程度が、実施例1よりも比較例1の方で不足していることを意味する。また、比較例1の仮成形/曲げ強度値は、実施例1よりも低かった。比較例1は、パルプの油剤が、比表面積の評価の際、N2の吸着を妨げて、評価結果を約7m2/cmに低下(界面接着力を低下)させた。これは、パルプの油剤が異種材料との界面接着力を低下させて、最終的に完成品の物性にまで悪影響を及ぼすものと判断される。
【0111】
したがって、アラミド原糸にコーティングされた油剤は、パルプ化を妨げ、最終的にパルプに残留して異種材料との界面接着力を低下させることを確認した。
【0112】
[実験例2]
実施例1および比較例2に使用されたアラミド短繊維(アラミド原糸)を提供する際、乾燥の有無による叩解の評価を行ったのであり、その結果を
図5および6に示した。
【0113】
図5は、実施例1および比較例2に対する叩解度の評価の結果である。
図6は、実施例1および比較例2に対する配向評価の結果である。
【0114】
また、
図5および6にて、比較例2は、アラミド短繊維がウェット(wet)状態で乾燥していない状態の繊維を用いた結果である。また、実施例1は、アラミド繊維が正常な乾燥を経た、完全に乾燥した後の繊維を用いた結果である。
【0115】
叩解評価は、各アラミド短繊維に対してバレービーターによる叩解工程の後、pH7およびpH12におけるそれぞれ1.5hr後の結果であり、繊維の構造は光学電子顕微鏡で測定した。
【0116】
また、繊維構造評価時、一般的なX線回折(XRD)を用いて、繊維の配向角および結晶化度、大きさなどを測定した。
【0117】
図5および6でみると、比較例1の場合、紡糸後に乾燥(熱処理)をしないアラミド原糸を用いることによって、叩解前後のフィブリルの発現の程度において実施例1と大きな差があった。
【0118】
つまり、
図5にて異常乾燥を経たアラミド繊維を用いた比較例2は、叩解を進行後、フィブリルの発現が弱かった。その結果、
図6に示すように、比較例2は、叩解前に繊維が濡れた状態にあるので、叩解工程の後、フィブリルの発現が非常に弱くて、直径85μmの繊維状構造を示しても、X線回折(XRD)を測定することができなかった。
【0119】
したがって、比較例2は、叩解後、低い配向、結晶化度および構造などにより、乾燥(熱処理)した無油剤アラミド原糸を用いた実施例1に比べて、叩解性能が大きく低下していた。
【0120】
これに対し、実施例1の場合、アラミド繊維が正常な完全乾燥を経た後、無油剤状態で使用されて、叩解工程の後、フィブリルの発現が非常に強い繊維状構造を形成した。これによって、本発明の場合、XRDで測定した繊維の配向角が7~12°であり、75%の高い結晶化度を有し、直径12μmの大きさの繊維状構造を示した。
【0121】
したがって、アラミドパルプの製造時、乾燥(熱処理)しない繊維を用いる場合、繊維の構造(スキン-コア)が不完全で、低い配向度/結晶化度などにより、同一の条件で叩解した際、フィブリルの発生がうまく行われない。このような結果から、本発明は、従来に比べて、完全に乾燥した、熱処理を経た無油剤アラミド原糸を用いることによって、繊維の構造が不完全であるという問題がなく、優れた配向度/結晶化度を示してフィブリル化が向上し、高品質のアラミドパルプを製造できるということが確認された。
【符号の説明】
【0122】
1:アラミド短繊維
2:フィブリル化されたアラミド短繊維
3:抄紙
4:水分除去された抄紙
5:乾燥した抄紙
6:アラミドパルプ
110:解離部
120:叩解部
130:抄紙形成部
140:プレス部
150:ドライ部
160:破砕部
170:包装部
10:紡糸口金
20:凝固槽
30:水洗槽
31:マルチフィラメント
50:乾燥部
51:乾燥ロール
60:ワインダ