(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】板状の金属製品を製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B21B 37/26 20060101AFI20231218BHJP
B21B 1/00 20060101ALI20231218BHJP
B21B 1/46 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B21B37/26
B21B1/00 B
B21B1/46 B
(21)【出願番号】P 2022542274
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 IT2020050302
(87)【国際公開番号】W WO2021140531
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】102020000000316
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512288949
【氏名又は名称】ダニエリ アンド チ.オフィチーネ メカーニク エッセピア
【氏名又は名称原語表記】DANIELI&C.OFFICINE MECCANICHE SPA
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マルティーニス、ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ボビグ、パオロ
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-235353(JP,A)
【文献】特開昭61-273210(JP,A)
【文献】特開2004-255421(JP,A)
【文献】特開2011-189368(JP,A)
【文献】特開2013-081972(JP,A)
【文献】特開昭55-61306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0223100(US,A1)
【文献】国際公開第2017/036769(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00 - 37/78
B21B 1/00 - 11/00
B21B 47/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレスモードまたはセミエンドレスモード、あるいはこれら両方のモードで、板状の金属製
品を製造する方法であって、
金属製品を少なくとも4台のスタンドからなる圧延機に連続して供給し、圧延スタンドは順に、粗圧延スタンド(18a、18b、18c)および仕上げスタンド(21a、21b、21c、21d、21e)であり、圧延機から出た金属製品のフライングゲージ変更、すなわち圧延工程を中断することなく厚さの変更を行う方法において、
少なくとも、圧延機の第1のスタンド(18a)のローラの回転速度およびそのギャップは、
金属製品のフライングゲージ変更中に変更されないことを特徴とする、方法。
【請求項2】
フライングゲージ変更が、圧延機に供給される材料の速度を変更することなく適用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
現在の厚さから次の厚さへの移行が、ローラ間のギャップ、ローラの速度
およびスタンド間張
力の新しい設定を、フライングゲージ変更に関わる全ての圧延スタンドに適用することによって行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
フライングゲージ変更に関与するスタンドへのローラ間のギャップ、ローラの速度およびスタンド間張力の新しい設定の適用が、
-新しい目標厚さ
と圧延スタンドの作業ローラの回転速度基準を適用する第1のステップ、および
-ルーパーまたはテンショナーを使用して新しいスタンド間張力をかける第2のステップにおいて行われることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
厚さの変化によって影響を受ける
金属製品の部分が特定のスタンド(n番目のスタンド)に達すると、そのスタンドのギャップが、現在のギャップから、現在のスタンド間張力で次の厚さを生成するために計算された新しいギャップに変更され、質量流量(厚さx速度)を一定に保つために、前記スタンドの速度を新しい厚さに応じて増加または減少させることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
スタンド間張力が、厚さ変更に関与する部分が後続のスタンド(n+1番目)に到達したときにのみ変更され、スタンド間張力の変更と同時に、n番目のスタンドのギャップおよび速度が調整されて、n番目のスタンドの新しい設定への移行を完了することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
現在の厚さから次の厚さへの移行が、関係する圧延スタンドに新しい設定を適用することによって行われ、新しい設定の適用が、関係するすべてのスタンドに対して同時に行われることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
フライングゲージ変更に関与するスタンドが2台を超える場合、設定変更が、
最後の2台の圧延スタンドに適用され、その後、必要な数の先行スタンドに順次適用されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前の設定
が新しい設定へ
徐々に変化
することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
仕上げスタンドの最後のスタンド(21e)から始まる、フライングゲージ変更に関与するスタンドの数が、厚さ変更による力の新しい分布によっていかなるスタンドの圧延力の値も許容公差範囲から外れることがないように、各スタンドの圧延力の分布を考慮して求められることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
フライング
ゲージ変更による圧延力の新たな分布が許容公差範囲から外れる場合、少なくとも、すでに設けられている圧延スタンドの上流に位置する新しい圧延スタンドが厚さ変更工程に関与することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
板状の金属製品を連続的に製造する装置であって、鋳型(12)を有する少なくとも1台の連続鋳造機(11)と、粗圧延スタンド(18a、18b、18c)および仕上げ圧延スタンド(21a、21b、21c、21d、21e)を有する圧延機と、巻取りリールと係合するストリップを所望の重量のコイルに分けるためにエンドレス圧延および/またはセミエンドレス圧延で使用するための大きさに切断する高速フライングせん断機(23)と、1対の巻取りリール(24a、24b)と、を備えており、請求項1~11のいずれか一項に記載のフライングゲージ変更を行う方法を適用するのに適した制御システムを備えている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の金属製品を製造するための、具体的には、ストリップのコイル(coils of strip)を得るための方法および装置に関する。特に、本発明は、有利にはエンドレスモードおよび/またはセミエンドレスモードで製造される金属ストリップの最終厚さを変更するための動作様式(モード、mode)に関するが、それだけに限らない。
【背景技術】
【0002】
薄いスラブの連続鋳造からストリップの熱間製造のための装置は知られている。ストリップを製造するための装置は、いくつかの動作様式で、別々にまたは同時に、すなわち、エンドレスモード、セミエンドレスモード、およびコイルツーコイルモードで操作することができる。
【0003】
ここで、上記のような3つのモードの特徴を、わかりやすくまとめておくことにする。
エンドレス:鋳造機と圧延機との間で連続的に行われる工程。鋳造されたスラブは直接圧延機に供給され、中断することはない。装置がフル稼働すると、材料は上流の金型出口から下流の巻取りリールまで、すべての機械で同時に巻き取られる。したがって、コイルは離断なく作成される。個々のコイルは、巻取りリールの前で高速せん断機による切断によって形成される。圧延機への入庫は工程の開始時に1回だけある。
【0004】
セミエンドレス:鋳造機と圧延機との間で不連続的に行われる工程。スーパースラブは、通常のスラブ(通常とは、1つのコイルを形成するのに必要な製品の量を意味する)の「n」個分(例えば、2~5)に相当し、振り子せん断機の切断により鋳造出口で形成される。圧延中に、対応するスーパースラブから一度に「n」個のコイルが製造される。個々のコイルは、巻取りリールの前で高速せん断機による切断によって形成される。「n」個のコイルが製造されるたびに、圧延機への入庫が1回ある。
【0005】
コイルツーコイル:鋳造機と圧延機との間で不連続的に行われる工程。個々のスラブは、振り子せん断機の切断により鋳造機の出口で形成される。圧延中に、対応する開始スラブから1個ずつコイルを製造する。コイルが製造されるたびに、圧延機への入庫が1回ある。
【0006】
使用される圧延機は、通常4~12台のスタンドを持つことができる。圧延機に沿った中間位置には、例えば(特許文献1)より、少なくともエンドレスモードにおいて、最後の圧延パスが実行される前に、圧延される製品の温度の回復を決定する急速加熱システムを提供することが知られている。
【0007】
急速加熱システムの位置によって、圧延機を加熱システムの上流側の粗圧延スタンドと下流側の仕上圧延スタンドとに分割することが慣習的に決められている。
したがって、圧延機は、圧延機の最初のスタンドであり、入側で製品の最初の減厚を行う粗圧延スタンドと、最終値まで減厚を完了する仕上げスタンドとの関係で、例えば2+4、2+5、3+5といったように細分化して表すことができる。
【0008】
圧延工程では、生産計画に応じて、最終的に製造されるストリップの厚さを変更する必要があることが知られている。この厚さの変更は、少なくともエンドレスおよび/またはセミエンドレスモードでは、圧延工程を中断することなく、つまり、材料が圧延スタンドを通過している間に行うことができ、フライングゲージ変更(Flying Gauge Change、以下、略してFGC)と呼ばれる。フライングゲージ変更は、例えば上流から下流に向かってスタンドの加工ローラ間のギャップを段階的に変更することによって行うことができ、新しい最終的な厚さで生産するための機能パラメータに全てのスタンドが適合されるまで行うことができる。ギャップの変更に関して、各スタンドまたは一部のスタンドのローラの回転速度、およびスタンド間に配置されたテンショナーまたはルーパーの位置を協調的に変化させることも可能である。
【0009】
最終的な厚さと初期の厚さとの差から、厚さの変化はすべてのスタンドに影響することもあれば、一部のスタンドにしか影響しないこともある。
(特許文献2)には、タンデム冷間圧延機において、スタンド(スタンド「i」)の出口で製品の厚さを測定して後続のスタンド「i+1」のギャップを調整し、スタンド「i」自体の圧延速度を調整して、材料の先頭部分からスタンド「i+1」の入口まで、圧延される製品の質量流量(厚さ×速度)を一定に保つ方法が提案されている。
【0010】
さらに、(特許文献3)では、エンドレスモードの連続圧延機でフライングゲージ変更(FGC)を行うために、圧延機の上流に配置された鋳造機からの金属製品の流出速度に応じて調整される圧延機の第1スタンドへの金属製品の供給速度において、第1の出口厚さから第2の出口厚さへの移行が生じる。
【0011】
エンドレス圧延工程の進化により、圧延中のフライングゲージ変更(FGC)の工程を製品の信頼性と品質の面で向上できることが確認されている。
特に、下流の質量流量の変動の管理((特許文献3)に記載)では、鋳造工程と圧延工程との間の同期を、鋳造速度に応じて圧延速度によって管理する必要がある。結果として、鋳造工程のすべての最小質量流量変動が圧延工程に影響を及ぼし、フライングゲージ変更(FGC)によるものと重なる速度摂動を発生させる。鋳造機と圧延機との間に加熱炉が存在すると、加熱炉内のスラブの温度過象とスラブ自体の弾性により、鋳造機と圧延機の同期に別の潜在的な妨害要因が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許第2569104号明細書
【文献】欧州特許第1010478号明細書
【文献】欧州特許第2346625号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の1つの目的は、信頼性、工程の安定性、スタンドの管理の容易さ、摩耗の少なさ、得られる最終ストリップの品質の良さ等の観点から、製造されるストリップのフライングゲージ変更(FGC)をより効率的に行う、板状の金属製品の製造方法と、それに対応する装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願人は、従来技術の欠点を克服し、これらおよび他の目的ならびに利点を得るために、本発明を考案し、試験し、そして具現化した。
本発明は、独立請求項に記載されるとともに特徴付けられる。従属請求項は、本発明の他の特徴または主たる発明の概念の変形形態を説明する。
【0015】
本発明によれば、板状の金属製品を製造するための装置において、金属製品を、少なくとも4台のスタンド、有利には8台以上のスタンドからなる圧延機に供給する。
特に、この装置は、厚さが60~140mmの薄いスラブを鋳造するためのものであり、次の3つの操作モードのいずれかで、0.7mm~20mmの最終ストリップ厚さを製造することを目的としている。
【0016】
a)エンドレス、ストリップの最終厚さ0.7mm~6.0mm、
b)セミエンドレス、ストリップの最終厚さ0.7mm~6.0mm、
c)コイルツーコイル、ストリップの最終厚さ1.2mm~20mm。
【0017】
有利なことに、装置の制御システムは、その都度最も便利なモードを使用して、1つのモードから他のモードに自動的に移行することを可能にする。
上記の3つのモードのいずれかに従って以下の操作を行うことを選択する。
【0018】
-生産する鋼材の品質(例えば、低炭素鋼、中炭素鋼、HSLA、二相鋼、APIグレード)に関連する、
-異なるクラスのストリップの最終厚さを得ることができ、製造工程を最適化する、
-速度、圧延温度、および対応するエネルギー消費を最適化する、
-鋳造工程を中断しないように、利用可能な溶鋼の生産に鋳造速度を適合させる。
【0019】
そのため、その都度最適な運転モードを選択することができ、モードごとにプラントの省エネ性、歩留まりおよび使用率を最適化することができる。
したがって、この装置は、エンドレスモードの利点(超薄型化、省エネルギー)を生かしつつ、その限界を克服しており、「ユニバーサルエンドレスモード」と定義することができる。
【0020】
有利なことに、エンドレスモードは、高速で鋳造できるすべての品質の鋼材、一般に4.5m/分を超える速度で鋳造できる鋼材に使用されている。
上記を達成するために、装置は基本的に5つの主要要素からなり、以下に示す順序で互いに対して配置される。
【0021】
-連続鋳造機、
-可能な加熱およびメンテナンス/均等化のためのトンネル炉、
-1~4台の圧延スタンドを含む粗圧延機、
-選択的に作動させてラインから取り外すことができる要素を備える急速加熱ユニット、
-3~7台のスタンドを含む仕上圧延機、
-第1の粗加工スタンドから最後の仕上げスタンドまで、すべてのスタンド間に設置されたルーパーまたはテンショナーは、連続する2台のスタンド間張力を一定に保ち、質量流量を制御するために、油圧アクチュエータで駆動することが有利である。
【0022】
装置の特徴的な態様によれば、連続鋳造機と粗圧延機との間に位置する、加熱およびメンテナンスが可能なトンネル炉は、セミエンドレス圧延を行うための複数の長さのスラブを含むような長さを有し、そこから2~5個のコイルを得ることが可能である。
【0023】
このようなトンネル炉の大きさにより、特に、低い鋳造速度で鋳造する必要があるためにエンドレスモードで生産できない品質の鋼を製造しなければならない場合、装置をエンドレスモードからセミエンドレスモードまたはコイルツーコイルモードに容易に変更することができる。
【0024】
したがって、鋳鋼の品質上、エンドレス工程が不可能な値まで鋳造速度を落とさなければならない場合、トンネル炉は鋳造機を圧延機から切り離すことができる。
さらに、トンネル炉は最大5個のコイルまでの複数の長さのスラブを収容することができるため、圧延工程で起こりうる停止をコイルツーコイルモードで管理し、鋳造工程に特に影響を与えず、一定時間機能を継続できる蓄積量を保証することが可能である。このようにして、連続鋳造機へ供給する溶融炉の生産性を最適化することができる。
【0025】
トンネル炉から出るスラブの温度は、鋼の品質とストリップの最終厚さに応じて(as a function of)、コイルツーコイルおよびセミエンドレスモードでは約1050°C~約1150°Cであり、エンドレスモードでは約1150°C~から1180°Cである。
【0026】
上記のように、トンネル炉の長さは、プログラムされたロール交換中および/またはコブル(cobbles)や小さな事故による圧延機の予期せぬ停止中に、コイルツーコイルモードで得られるバッファ時間をも決定する。
【0027】
バッファ時間により、鋳造の再スタート回数がなくなるか、少なくとも減少し、その結果、鋳造工程の開始時と終了時のスクラップが節約され、事故発生時に圧延機の開始時のタンディッシュにある鋼や、しばしば回収できない取瓶に残る鋼をスクラップにすることが避けられ、工場の稼働率を向上させ、歩留りを改善することができる。
【0028】
トンネル炉の末端部分は、緊急時にスラブを横方向に排出するために横方向に移動可能なモジュール(最後または最後から2番目)を提供する。このモジュール、またはシャトルは、1本目の鋳造ラインと平行して、2本目の鋳造ラインを接続することも可能である。
【0029】
急速加熱ユニットは、C型モジュールのインダクタで構成されており、不要になった場合は圧延ラインから個別に(自動または手動で)取り出すことができる。
急速加熱ユニットは常にエンドレスモードで使用し、セミエンドレスモードでも使用できる。
【0030】
ストリップがエンドレスおよび/またはセミエンドレスモードで、830~850℃以上の温度で仕上げ圧延機の最後の圧延スタンドを出るように、加熱およびサイジングのパラメータが設定されている。
【0031】
インダクタユニットによって供給される加熱電力は、圧延機で検出された温度、圧延速度、完成品の厚さ、したがって予想される温度損失を考慮した計算プログラムにより、制御ユニットで自動的に制御される。
【0032】
このようにして、加熱の最適化が図られ、最初のコイルから均一な温度で圧延が行われる。
本発明はさらに、圧延工程中に圧延機から出る金属製品のフライングゲージ変更(FGC)を行うことを可能にする。
【0033】
特に、FGCは、エンドレスおよび/またはセミエンドレス圧延中に、すでに完成したコイルに続いて、あるいは同じコイルでも厚さを変えるために使用される。必要な厚さの差に応じて、厚さの変更は仕上げスタンドに影響を与えることも、その一部だけに影響を与えることも可能である。
【0034】
粗圧延スタンドは、粗圧延スタンド(移送バー)から出て仕上げスタンドに供給される製品の厚さの変更が必要な場合にのみ、厚さの変更の影響を受ける。
本発明によれば、圧延機の第1のスタンド、すなわち、例えば連続鋳造から供給される材料が最初に出会うスタンドは、マスタースタンドとして機能し、ストリップの厚さ変更の工程によってそのパラメータのいずれの影響も受けない。特に、第1のスタンドのローラの回転速度およびそれらのギャップは変更されない。
【0035】
第1の圧延スタンドの作業パラメータを変更しないことによる利点は次のとおりである。
第1の圧延スタンドの動力は、鋳造機の下流に位置する抽出機のローラのモータの動力の合計よりもはるかに大きいので、第1の圧延スタンドをマスターモード(設定速度)で、鋳造抽出機をスレーブモード(調整速度)で使用することが、エンドレスモード時の鋳造速度と圧延機の速度との同期化における調整の有効性の点で有利である。
【0036】
この理由から、本発明では、第1の圧延スタンドを、鋳造および圧延ライン全体の速度を指示する主アクチュエータとして使用する。
圧延スタンドに入る材料の速度は、圧延ローラの回転速度とミルバイト(mill bite)のいわゆる中立角の位置によって設定される。第1の量(ローラの速度)は、進行中の圧延工程(エンドレスおよび/またはセミエンドレス)に依存せずに制御することができるが、第2の量(中立角位置)は、進行中の圧延工程の種類(力/圧下量(reduction))に依存する。
【0037】
本発明によるエンドレス圧延工程の場合、厚さの変化(圧延スタンド入側の厚さと出側の厚さの差)は、スタンド入側速度のばらつきを生み、鋳造機に向かって伝播していく。
鋳造工程に乱れを生じさせ、製品の品質に悪影響を及ぼすことを防止するために、本発明は、第1の圧延スタンドに、固定された圧下量(fixed reduction)、したがって、FGC工程中でも変更不可能な圧下量を提供する。
【0038】
したがって、エンドレス圧延中の速度マスターとしての第1の圧延スタンドの使用を、その第1の圧延スタンドの圧下を一定に保つ動作と組み合わせることによって、鋳造圧延機の同期による質量流量の摂動の分離が有利に得られる。これらの摂動は、フライングゲージ変更による質量流量摂動に対して、上流で補償することができ、代わりに下流で補償することができる。
【0039】
圧延力/トルク、スタンドのスピードコーン、スタンド間張力、スタンドのたわみ、プロファイルと平坦度アクチュエータの正しいセットを定義するための手段の算定(calculation)に関しては、例えばVladimir B.Ginzburgによる「鋼圧延技術、理論と実際(Steel Rolling Technology,theory and practice)」などの文献で既に知られているものを参照する。
【0040】
本発明の一態様によれば、フライングゲージ変更中に使用される主なアクチュエータは、油圧圧縮アクチュエータおよび圧延スタンドのモータ、スタンド間ルーパー、ならびにストリップのプロファイルおよび平坦度を制御するためのアクチュエータ、すなわちシフトアクチュエータと曲げ(または逆曲げ(counter-bending))アクチュエータである。
【0041】
個々の圧延スタンドの作業パラメータ(以下、略して設定(set-up)と呼ぶ)は、これらのアクチュエータで設定される。その内容は、スタンドのローラまたは圧延ロールの回転速度(または単にスタンド速度)、スタンド出側でのストリップの厚さを規定する圧延ローラ間の距離(またはギャップ)、圧延または圧縮力、圧延ローラにかかる曲げ(または逆曲げ)力、ストリップの平坦度、およびプロファイルを制御するためのそれらのシフト(shifting)、隣接する2台のスタンド間のストリップの張力などである。
【0042】
フライングゲージ変更(FGC)のために、基本的に設定する必要のある主な作業パラメータは、スタンドの(ローラの)速度、圧延ローラ/ロール間のギャップ、スタンド間張力の3つである。
【0043】
フライングゲージ変更(FGC)に関与するスタンドの数は、圧延スタンドの能力(動力、速度、トルク)および加工パラメータ(圧延温度、ストリップの形状/平坦度および機械的特性)に応じて、現在の厚さと新しい最終厚さとの間の絶対値の差に基づいて定義される。
【0044】
フライングゲージ変更(FGC)に関係するストリップの部分(section)でも良好なプロファイル/平坦性が維持されることを保証するために、現在の設定と新しい設定の力の分布は、許容誤差を伴う基準分布に準拠しなければならない。
【0045】
ここでは、フライングゲージ変更(FGC)によってストリップの最終厚さを変更し、特にその減少が生じたと仮定する。
粗圧延スタンドの出口、すなわち仕上圧延機の第1の圧延スタンドに入るときのバー(移送バー)の厚さを一定に保つには、全体の圧延力(すなわち、すべての仕上圧延スタンドの個々の圧延力の合計)を増加させる必要がある。
【0046】
この力の増加を最後の仕上げスタンド、例えば最後の2台だけで行い、許容範囲内に収めることができれば、フライングゲージ変更(FGC)はこの2台のスタンドにのみ適用することができる。
【0047】
この力の増加を最後の2台のスタンドだけでは行えない場合、少なくともそのうちの1台では力が許容範囲外になるため、フライングゲージ変更(FGC)をより多くのスタンド、場合によっては仕上げ圧延機全体、そして必要ならば粗圧延機の最後のスタンドに適用しなければならない。
【0048】
この場合、新しい力の分布は、基準のものと同様の傾向を示すが、力の値は、前の圧延手段(rolling card)と比較して各圧延スタンドでわずかに大きくなる。
さらに、各最終厚さに対して、移送バー、つまり最後の粗圧延スタンドから出る製品の厚さの対応する範囲が関連付けられる。
【0049】
移送バーの厚さは、以下の特徴を持つ最終的な厚さのセットが各移送バーに対応するように計算された有限数である。
-すべての最終的な厚さは、同じ数の仕上げスタンドで圧延できなければならない、
-移送バーの厚さは、粗圧延スタンドの能力と工程の制約(圧延温度、移送バーのプロファイル/平坦度、移送バーの機械的特性)に従って、スラブの厚さから得られるものでなければならない。
【0050】
本発明のいくつかの解決策では、フライングゲージ変更(FGC)は2つのモードで生じさせることができる。
本発明の第1の実施形態では、フライングゲージ変更(FGC)を行うために、最終的な厚さ変更を2段階で行う。この2段階モードはストリップの厚さ範囲外の部分を最小限に抑えることができるという利点があり、少なくとも2台のスタンドがフライングゲージ変更(FGC)に使用する場合に主に使用される。
【0051】
特に、厚さの変化に関与する圧延スタンドへのローラ間のギャップ、スタンドの速度、およびスタンド間張力の新しい設定の適用は、次のように行われる。
-新しい目標厚さと新しい速度コーン、すなわち圧延スタンドの作業ローラの回転速度基準を適用する第1のステップ、および
-ルーパーまたはテンショナーを使用して新しいスタンド間張力を付与する第2のステップ。
【0052】
より詳細には、厚さの変化によって影響を受けるストリップの部分が特定のスタンド(n番目のスタンド)に達すると、そのスタンドのギャップは、現在のギャップから、現在のスタンド間張力で次の厚さを得られるように計算した新しいギャップに変更される。圧延ローラの回転速度は、質量流量(厚さx速度)を一定に保つために、新しい厚さに応じて同時に増加または減少する。
【0053】
上流のスタンドと鋳造は、設定の変更には関係ない。
スタンド(n番目)とスタンド(n+1番目)との間のスタンド間張力は、厚さの変化に関与するストリップの部分が次のスタンド(n+1番目)に到達したときにのみ変更される。
【0054】
スタンド間張力の変更と同時に、n番目のスタンドのギャップと速度が新しいスタンド間張力の値に応じてさらに調整され、n番目のスタンドの新しい設定への移行が完了する。
【0055】
ストリップの平坦度とプロファイルに関する新しい設定(曲げアクチュエータおよびシフトアクチュエータを使用)に関しては、厚さの変化に関与するストリップの部分がn番目のスタンドに到達した時点で適用される。
【0056】
この2段階FGCモードは、厚さの変化に関与するストリップの部分が各スタンドに到達した時点で、後続のすべてのスタンドに適用される。
圧延機制御システムには追跡機能があり、圧延機全体に沿った厚さの変化に関与するストリップの部分(複数もあり)の正確な位置をリアルタイムで更新する。
【0057】
現在の設定から新しい設定へのすべての変化に傾斜が生じるようにし(ramped)、その傾斜の量(the inclination of the ramp)を使用するアクチュエータの動的性能に関連して計算し、最も遅いアクチュエータが変化の動的特性を定義する。
【0058】
本発明による第2の実施形態は、フライングゲージ変更(FGC)を行うために、スタンドで同時に最終厚さ変更を行う。この同時進行モードは、圧延スタンドの調整が容易であるため、信頼性の面でも有利である。
【0059】
このモードは、少なくとも2台のスタンドがフライングゲージ変更(FGC)に関与する場合に有利に適用される。
現在の厚さから次の厚さへの移行は、厚さの変更に関係するすべてのスタンドに新しい設定を同時に適用することによって行われる。
【0060】
フライングゲージ変更(FGC)に関与するスタンドが2台を超える場合、最初のスタンドでは順番に、最後の2台以上のスタンドでは同時に設定の変更を適用できるという利点がある。これは、ストリップの移行部分の長さを現在の厚さから新しい厚さに減らすと同時に、圧延工程の安定性を良好に保つために行われるものである。
【0061】
具体的には、新しい設定では、回転速度、ギャップまたは圧延力、スタンド間張力、平坦度、プロファイルといったパラメータを、関係するすべてのスタンドに同時に適用している。
【0062】
同時進行モードでは、スタンド間張力調整装置(ルーパーまたはテンショナー)は、現在の厚さから新しい厚さへの移行段階において、正しい質量流量を維持するように機能する。スタンド間張力調整装置は、下流側のスタンドの速度に作用する。また、上流側のスタンドのスタンド間張力を調整することで、フライングゲージ変更(FGC)に関与する第1のスタンドの速度を調整する。
【0063】
同時進行モードでフライングゲージ変更(FGC)に関わる第1のスタンドのローラ間のギャップの調整装置は、位置制御で保持される。新しい設定を適用する前に、フライングゲージ変更に関係する下流側の他のすべてのスタンドのローラ間のギャップの調整装置は、位置制御から力制御に切り替えられる。
【0064】
同時進行モードでは、力制御への切り替えの目的は、入口の厚さを正確に知らなくても、新しい出口の厚さに対して予想される力から、各スタンドに新しい圧延(reduction)設定を適用することができるようにすることである。
【0065】
ストリップの移行部分の端がスタンドのローラ間のギャップに到達すると同時に、ローラ間のギャップの調整装置が位置制御に切り替わり、各スタンドの出口でストリップの正しい厚さを保証するようにする。
【0066】
パラメータの新しい設定の適用は、特定の追跡機能によって調整される。
同時進行モードでは、現在の設定から新しい設定までのすべての変化に傾斜が生じるようにし、その傾斜の状態を使用するアクチュエータの動的性能に関連して計算し、最も遅いアクチュエータが変化の動的特性を定義する。
【0067】
前述のように、厚さを変更するために仕上げスタンドを使用するだけでは不十分な状況では、粗加工スタンドの一部、特に第1の粗加工スタンドの下流にある1または複数台のスタンドも使用できる。
【0068】
この場合も、本発明によれば、第1の粗加工スタンドの速度は変更されない。フライングゲージ変更に、最後の1台から順に何台の粗加工スタンドを関与させなければならないかを決定するために、仕上げスタンドについて述べたのと同じ基準を用いることができる。すなわち、最大許容圧縮力に基づいて、何台の粗加工スタンドで厚み変更を行わなければならないかを評価することができる。
【0069】
前述のように、材料の供給速度(この場合は鋳造速度)は、最初の粗加工スタンドのすべての作業パラメータの場合と同様に一定である。
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられた、いくつかの実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】本発明のいくつかの特徴による板状の金属製品を製造するための装置の一例を概略的に示す。
【
図2】本発明のいくつかの特徴による、板状の金属製品を製造するための方法に適用可能なフライングゲージ変更方法の実施形態を模式的に示すグラフである。
【
図3】本発明のいくつかの特徴による、板状の金属製品を製造するための方法に適用可能なフライングゲージ変更方法の実施形態を模式的に示すグラフである。
【
図4】本発明のいくつかの特徴による、板状の金属製品を製造するための方法に適用可能なフライングゲージ変更方法の実施形態を模式的に示すグラフである。
【
図5】本発明のいくつかの特徴による、板状の金属製品を製造するための方法に適用可能なフライングゲージ変更方法の実施形態を模式的に示すグラフである。
【
図6】本発明のいくつかの特徴による、板状の金属製品を製造するための方法に適用可能なフライングゲージ変更方法の実施形態を模式的に示すグラフである。
【
図7】ある厚さから別の厚さへの移行におけるパラメータ変化の例に関する表である。
【
図8】厚さの変化に関与するスタンドを特定するための基準の一例を示すグラフである。
【
図9】厚さの変化に関与するスタンドを特定するための基準の一例を示すグラフである。
【
図10】厚さの変化に関与するスタンドを特定するための基準の一例を示すグラフである。
【
図11】厚さの変化に関与するスタンドを特定するための基準の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
理解を容易にするため、可能な場合、図面中の同一の共通要素を特定するために同じ参照番号が使用される。一実施形態の要素および特性は、さらに明確にすることなく、他の実施形態に都合よく組み込むことができる。
【0072】
ここで、本発明の種々の実施形態について詳細に言及し、それらの実施形態の1つまたは複数の例が添付の図面に示される。各実施例は、本発明を例示するものとして与えられており、本発明を限定するものと理解されるものではない。例えば、示されるかまたは説明される特徴は、一実施形態の一部である限り、他の実施形態に対してまたは他の実施形態に関連して取り入れられ、別の実施形態をもたらすことができる。本発明は、そのようなすべての変更や変形を含むものであることが理解される。
【0073】
図1は、以下に詳細に説明するフライングゲージ変更方法を適用できる、板状の金属製品を製造するための装置10の例を全体として概略的に示している。
図1に示したものは、本発明の理解を容易にするための例にすぎず、以下に示す概念の適用を拘束するものではない。
【0074】
また、示された構成要素のすべてが、装置の正しい機能のために必要かつ不可欠であるとは限らない。
例えば、装置10は、製造される最終製品の確定したフライングゲージ変更に関連するだけでなく、確定した鋳造工程に関連する手段(card)に関する指示を受信し、上記のようなフライングゲージ変更の結果、全ての圧延スタンドの作業パラメータを調整するのに適した制御システムを含む。
【0075】
一般に、装置10は、以下の構成要素を含む。
-インゴット鋳型12を有する連続鋳造機11、
-可能な第1のスケール除去装置13、
-振り子せん断機14、
-少なくとも1つの横方向に移動可能な端部モジュール115a~115bを有することができるトンネル炉15、
-オキシアセチレン切断装置16、
-可能な第2のスケール除去装置113、
-可能な縦型またはエッジトリマースタンド17、
-第3のスケール除去装置213、
-3台の粗圧延スタンド18a、18b、18c、
-仕上圧延機の第1のスタンドへのバーの入庫を容易にするために、バーの先端および後端を切り取るクロップせん断機19であって、エンドレスモードで仕上圧延機が閉塞した場合の緊急せん断にも使用できる、クロップせん断機19、
-モジュール式誘導急速加熱装置20、
-仕上げ圧延機で熱機械圧延工程またはフェライト系電界圧延工程を実施する必要がある場合に使用する、急速加熱装置の下流に配置された集中冷却装置(図示せず)、
-第4のスケール除去装置313、
-仕上圧延機であって、この場合、それぞれ21a、21b、21c、21d、21eの5台のスタンドから構成される、仕上圧延機、
-層流冷却シャワー22、
-巻取りリールに直接係合する際に、ストリップを所望の重量のコイルに分けるするための大きさにせん断する高速フライングせん断機23、および
-第1の巻取リール24aおよび第2の巻取リール24bを有する1対の巻取りリール。
【0076】
装置10によって行われる鋳造および圧延工程は、エンドレスモード、セミエンドレスモード、およびコイルツーコイルモードで行うことができる。
図2~6は、示された特定のパラメータを変更することによって、上述の装置10において適用可能な種類のストリップの最終厚さのフライング変更のモード、特に、上述のエンドレスモードおよび/またはセミエンドレスモードを表すグラフを示している。
【0077】
図2に示す第1の実施形態では、F1~F5として示す仕上げスタンド21a~21eのみが、2段階モードで生じる厚さ変化に関与する。
グラフからわかるように、上から下にたどった線を観察すると、圧延中のストリップの最終厚さをその場で修正する必要がある場合、新しい厚さの設定点が第1の仕上げスタンドF1において特定される。この場合、新しい厚さは以前の厚さよりも小さくなる(厚さ減少)。
【0078】
第1のステップでは、第1仕上スタンドF1の新しい厚さに対応する圧延ローラ間の新しいギャップが設定され、同じスタンドF1のローラの速度が新しい設定点に達するまで同時に増加される。
【0079】
第2のステップでは、新しい設定のスタンド間張力を適用する。この場合、ストリップの張力は増加する。
連続するすべてのスタンドF2~F5は、前のスタンドの各速度変更に関連して、また移行部分の最終端がスタンド自体に到達する時点に関連して、徐々に速度を調整する。
【0080】
最後の線の傾向からわかるように、材料が供給される速度、この場合は鋳造速度が一定であり、スタンドF1の上流側のすべてのスタンド、すなわち、すべての粗加工スタンドの速度も一定である。
【0081】
図3に示す第2の実施形態では、F1~F5として示す仕上げスタンド21a~21eのみが、先に観察されたものとは反対に同時モードで生じる厚さ変化に関与する。
図からわかるように、すべてのスタンドF1~F5の速度の調整は同時に行われるが、厚さはスタンドごとに前の値から最終的な目標値まで順次適応する。
【0082】
材料が供給される速度、この場合、鋳造速度は一定であり、スタンドF1より上流のすべてのスタンド、すなわちすべての粗圧延スタンドの速度も一定である。
図4に示す別の実施形態では、いくつかの粗加工スタンドも含まれ、この場合、第1のスタンド18aの下流にあるスタンド18b、18cも含まれる。粗圧延スタンド18a~18cは、グラフではH0~H2として示されている。
【0083】
本発明によれば、図からわかるように、第1のスタンドH0の速度は、同じスタンドH0の他の作業パラメータの場合と同様に変更されない。厚さ変化に関与する第1のスタンドは(第2の)スタンドH1であり、圧延ローラの回転速度を2段階で調整する。(第3の)スタンドH2についても同様である。
【0084】
材料が供給される速度、この場合、鋳造速度は一定であり、第1の粗圧延スタンドH0の速度も一定である。
図5は、単一スタンド(n番目)の2段階厚さ変更の第1実施形態をより詳細に示しており、特に、新しいスタンド間張力設定と新しいプロファイルおよび平坦度設定が作動するタイミングを観察することができる。
【0085】
図6は、単一スタンド(n番目)の同時厚さ変更の第2の実施形態をより詳細に示している。特に、すべての設定が同時に作動する様子を観察することができる。新しい力設定の適用(この場合、圧縮/圧下の増加、グラフの最後から2番目の線)は、新しいギャップ設定の同時適用(すなわち、厚さの減少)を伴い、同時に、スタンド間張力の設定、プロファイルおよび平坦度アクチュエータの設定も変更する。
【0086】
新しい速度設定は、質量流量を変更しないことを目的として、以前の設定から計算される。
特に、新しい設定の計算式は、以下のように表すことができる。
【0087】
後続のローラ速度=(現在のローラ速度)*(スタンドの厚さ(n番目)-後続の厚さ)/(スタンド(n番目)の厚さ-現在の厚さ)。
図7(表1)は、一例として、約3mmのストリップの最終厚さから約2.3mmのストリップの最終厚さに変化した場合の、現在の設定から次の設定までのパラメータの設定の変化の例を示す。
【0088】
この場合、パラメータの設定変更によって影響を受けるのは、仕上げスタンドF1~F5のみであることがわかる。ストリップの最終的な厚さの減少は、スタンドのローラ速度の増加、および圧縮力の増加を伴う。スタンド間張力も、得ようとする厚さの減少に比例して増加する。
【0089】
図8~11は、本発明の別の実施形態がフライングゲージ変更(FGC)に関与するスタンドの数を算出するために提供するモードを説明する。特に、
図1の配置を参照して、移送バーの厚さを変更する必要がなく、仕上圧延機が5つの仕上げスタンドを含む場合を例に挙げる。
【0090】
図8に各種スタンドでの圧延力の代表的な分布を示す。
中央の連続線は基準力の分布を表し、上下の2本の破線は、圧延力が変化しても最終製品の品質を損なわない許容範囲の上限と下限を表している。ここでは、フライングゲージ変更(FGC)によってストリップの最終厚さを変化させる、特にストリップの最終厚さの減少が生じると仮定する。
【0091】
仕上圧延機の第1の圧延スタンドに入るバー(移送バー)の厚さを一定に保つと、全体の圧延力(つまり5台のスタンドの個々の圧延力の合計)は増加せざるを得なくなる。
図9からわかるように、最後の2台のスタンドでの有効圧延力は増加するが、許容上限範囲内にとどまっている。その結果、厚さの変更は、上流の他のスタンドを使用することなく、仕上圧延機の最後の2台のスタンドで行うことができる。
【0092】
一方、
図10に示すように、新しい力の分布により、1台のスタンドでも圧延力が許容範囲から外れる場合は、最後の2スタンドだけではFGCを実施できず、少なくとももう1台上流のスタンドを使用しなければならない。
【0093】
図11は、仕上げ圧延機の新しい力の分布が、
図8の最初のものと同様の傾向をもたらすが、すべてのスタンドで力の値が大きくなっていることを示している。つまり、5台の仕上げスタンドすべての力の曲線は同じ傾向を有するが、最初のものと比べて値が大きくなっている。
【0094】
本発明の分野および範囲から逸脱することなく、これまでに説明したストリップの製造のための装置10および方法に対して、部品の変更および/または追加を行うことができることは明らかである。