(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】2-[2-メチルアゼチジン-1-イル]-4-フェニル-6-(トリフルオロメチル)-ピリミジン化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 403/04 20060101AFI20231218BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20231218BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20231218BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231218BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20231218BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231218BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231218BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C07D403/04 CSP
A61K31/506
C07D403/14
A61P3/10
A61P9/04
A61P13/12
A61P1/16
A61P3/06
(21)【出願番号】P 2022548982
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 US2021016742
(87)【国際公開番号】W WO2021162943
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ダーラム,ティモシー バレット
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,ジュンリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン,リチャード デュエイン
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500383(JP,A)
【文献】特表2013-525370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式
【化1】
で示される化合物であって、式中、
Rが、-OH、-NHC(CH
2OH)
3、もしくは
【化2】
である、化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記化合物が、
【化3】
で示される、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記化合物が、
【化4】
で示される、請求項1または2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とともに含む、薬学的組成物。
【請求項6】
患者における2型糖尿病を治療する
ための、請求項
4または5に記載の
薬学的組成物。
【請求項7】
患者における心不全を治療する
ための、請求項
4または5に記載の
薬学的組成物。
【請求項8】
患者における糖尿病性腎臓病を治療する
ための、請求項
4または5に記載の
薬学的組成物。
【請求項9】
患者における非アルコール性脂肪肝炎を治療する
ための、請求項
4または5に記載の
薬学的組成物。
【請求項10】
2型糖尿病
を治
療するための
医薬の製造における、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
の使用。
【請求項11】
心不全
を治
療するための
医薬の製造における、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
の使用。
【請求項12】
糖尿病性腎臓病
を治
療するための
医薬の製造における、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
の使用。
【請求項13】
非アルコール性脂肪肝炎
を治
療するための
医薬の製造における、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
の使用。
【請求項14】
薬学的組成物を調製するためのプロセスであって、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と混合することを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のケトヘキソキナーゼ(KHK)阻害剤化合物、この化合物を含む薬学的組成物、ならびに2型糖尿病(T2DM)、心不全、糖尿病性腎臓病、および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などのある特定の状態を治療するためのこの化合物の使用に関する。
【0002】
フルクトキナーゼとも呼ばれるKHKは、フルクトース代謝に関与する律速酵素である。これは、フルクトースのフルクトース-1-リン酸(F1P)へのリン酸化を触媒し、これにより細胞ATPレベルの付随的な枯渇を引き起こす。グルコースとは対照的に、フルクトース代謝は、フィードバック阻害を欠いており、それは、例えば、脂質形成、グルコース新生および酸化的リン酸化に関与する、下流の中間体の蓄積を引き起こす(Hannou,S.A.,et al.;J.Clin.Invest.,128(2),544-555,2018)。これは、多くの重篤な代謝障害に関連する不利な代謝的な結果を有する。
【0003】
KHKは、エキソン3が異なるKHK-CおよびKHK-Aからなる2つの代替的にスプライシングされたアイソフォームで存在する。KHK-Cは、主として、肝臓、腎臓および腸において発現され、一方KHK-Aは、より広範に分布する。両方のアイソフォームを欠損したマウスは、フルクトース誘発性代謝症候群から完全に保護されている。しかし、KHK-Aのみを欠くマウスにおいては、有害な代謝作用が悪化する(Ishimoto T,et al.;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,109(11),4320-4325,2012)。
【0004】
いくつかの疫学的および実験的研究は、フルクトースの消費の増加、およびより正確には、フルクトース代謝の増加が、代謝症候群を含むある特定の障害の発症において、特にT2DM(Softic et al.;J.Clin.Invest.,127(11),4059-4074,2017)、心不全(Mirtschink,P.,et al.;Eur.Heart J.,39,2497-2505,2018)、糖尿病性腎臓病(Cirillo,P.,et al.;J.Am.Soc.Nephrol.,20,545-553,2009)、およびNAFLD/NASH(Vos,M.B.,et al.;Hepatology,57,2525-2531,2013)の発症に重要な役割を果たす可能性があることを報告している。KHKの標的阻害は、フルクトース代謝を制限し、多くの代謝障害のための効果的な治療の選択肢を提供することが期待される。
【0005】
US2017/0183328(A1)は、KHK阻害剤としての置換3-アザビシクロ[3.1.0]へキサンについて開示している。近年公開されたデータは、ケトヘキソキナーゼ阻害剤PF-06835919を6週間投与することにより、非アルコール性脂肪肝疾患を有する対象において、磁気共鳴画像法-プロトン密度脂肪分画により測定される場合、肝臓脂肪全体が減少することを示している(J.Hepatology.EASL International Liver Congress Abstracts,Supplement N°1S Vol.70,April 2019)。
【0006】
T2DM、心不全、糖尿病性腎臓病およびNASHなどの、代謝症候群および関連する徴候のための代替的な治療の必要性が存在する。特に、強力なKHKの阻害剤である化合物が必要とされている。有利な特性、例えば、1日1回投与をサポートするための良好な経口生物学的利用能を有するKHK阻害剤化合物が必要とされている。
【0007】
したがって、一実施形態では、本発明は、式Iの化合物であって、
【化1】
式中、
Rが、-OH、-NHC(CH
2OH)
3、もしくは
【化2】
である、化合物、
またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0008】
特定の実施形態では、Rが
【化3】
である場合、-OH基は、互いに対してシス配置にある。
【0009】
特定の実施形態では、化合物は、式Iaのものであるか、
【化4】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0010】
一実施形態では、式Iの化合物は、
【化5】
、またはその薬学的に許容される塩である。
【0011】
一実施形態では、式Iの化合物は、
【化6】
、またはその薬学的に許容される塩である。
【0012】
一実施形態では、式Iの化合物は、
【化7】
、またはその薬学的に許容される塩である。
【0013】
式Iは、式IaおよびIbを包含し、例えば、治療方法および治療用途における以下の式Iへの言及は、これらの下位式の各々およびすべてへの言及としても読まれる。
【0014】
一実施形態では、本発明はまた、T2DMの治療を必要とする患者におけるそれを治療する方法であって、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0015】
一実施形態では、本発明はまた、心不全の治療を必要とする患者におけるそれを治療する方法であって、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0016】
一実施形態では、本発明はまた、糖尿病性腎症の治療を必要とする患者におけるそれを治療する方法であって、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0017】
一実施形態では、本発明はまた、NASHの治療を必要とする患者におけるそれを治療する方法であって、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0018】
一実施形態では、本発明は、代謝症候群、NAFLD、肥満、糖尿病合併症(例えば糖尿病性網膜症)、心血管疾患、冠状動脈疾患、慢性腎臓病、および脂質異常症からなる群から選択される疾患の治療を必要とする患者におけるそれを治療する方法であって、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、方法をさらに提供する。
【0019】
さらに、一実施形態では、本発明は、療法に使用するための式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、T2DMの治療に使用するための式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、心不全の治療に使用するための式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、糖尿病性腎臓病の治療に使用するための式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、NASHの治療に使用するための式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明はまた、代謝症候群、NAFLD、肥満、糖尿病合併症(例えば糖尿病性網膜症)、心血管疾患、冠状動脈疾患、慢性腎臓病、または脂質異常症の治療に使用するための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0020】
さらに、一実施形態では、本発明は、T2DMを治療するための医薬を製造するための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。一実施形態では、本発明は、心不全を治療するための医薬を製造するための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。一実施形態では、本発明は、糖尿病性腎臓病を治療するための医薬を製造するための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。一実施形態では、本発明は、NASHを治療するための医薬を製造するための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。一実施形態では、本発明はまた、代謝症候群、NAFLD、肥満、糖尿病合併症(例えば糖尿病性網膜症)、心血管疾患、冠状動脈疾患、慢性腎臓病、または脂質異常症を治療するための医薬を製造するための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0021】
一実施形態では、本発明は、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とともに含む、薬学的組成物をさらに提供する。一実施形態では、本発明は、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と混合することを含む、薬学的組成物を調製するためのプロセスをさらに提供する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療すること」という用語は、既存の症状または障害の進行または重症度を抑制すること、遅延させること、停止させること、または回復させることを含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、哺乳動物を指す。好ましくは、患者は、ヒトである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、患者への単回または複数回用量の投与の際に、診断中または治療中の患者において所望の効果を提供する、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩の量もしくは用量を指す。
【0025】
有効量は、既知の技法の使用によって、かつ同様の状況下で得られた結果を観察することによって、当業者により決定され得る。患者のための有効量を決定する際には、患者の人種;患者の大きさ、年齢、および健康状態全般;関与する特定の疾患または障害;疾患または障害の関与度または重症度の程度;個々の患者の応答;投与される特定の化合物;投与の様式;投与される調製物の生物学的利用能特性;選択された投薬計画;併用薬の使用;ならびに他の関連する状況を含むがこれらに限定されない、多数の要因が考慮される。本発明の化合物は、体重1kgあたり約0.1~約15mgの範囲内に収まる1日あたりの投薬量で有効である。
【0026】
本発明の化合物は、本化合物を生物学的に利用可能にする任意の経路によって投与される薬学的組成物として製剤化される。好ましくは、そのような組成物は経口投与用である。そのような薬学的組成物およびそれを調製するためのプロセスは、当該技術分野で周知である(例えば、Remington,J.P.,「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」,L.V.Allen,Editor,22nd Edition,Pharmaceutical Press,2012を参照されたい)。
【0027】
式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩は、本発明の治療方法および治療用途において使用されてもよく、ある特定の配置が好ましい。以下の選好が、本発明の治療方法、治療用途、および化合物の両方に適用可能であることが理解されるであろう。
【0028】
式Iの化合物には、
【化8】
およびその薬学的に許容される塩が含まれる。
【0029】
本発明は、すべての個々のエナンチオマーおよびジアステレオマー、ならびにラセミ体を含む当該化合物の混合物を企図するが、式Iaの化合物、およびその薬学的に許容される塩が、特に好ましい。
【0030】
当業者は、個々のエナンチオマーを、式Iの化合物の合成における任意の好都合な時点で、選択的結晶化技術、キラルクロマトグラフィー(例えば、J.Jacques,et al.,「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」,John Wiley and Sons,Inc.,1981、およびE.L.Eliel and S.H.Wilen,「Stereochemistry of Organic Compounds」,Wiley-Interscience,1994を参照されたい)、または超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)(例えば、T.A.Berger,「Supercritical Fluid Chromatography Primer」,Agilent Technologies,July 2015を参照されたい)のような方法によって分離または分解し得る。
【0031】
式Iの化合物の薬物的に許容される塩は、例えば、当該技術分野で周知の標準的な条件下で、適切な溶媒中での式Iの化合物の適切な遊離塩基と適切な薬学的に許容される酸との反応によって形成され得る(例えば、Bastin,R.J.,et al.;Org.Process.Res.Dev.,4,427-435,2000およびBerge,S.M.,et al.;J.Pharm.Sci.,66,1-19,1977を参照されたい)。
【0032】
式Iの化合物、またはその塩は、当業者に既知の様々な手順によって調製することができ、そのうちのいくつかを、以下のスキーム、調製、および実施例において説明する。以下のスキームにおける各ステップの生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、粉砕、および結晶化を含む、当該技術分野で周知の従来の方法によって回収することができる。以下のスキームにおいて、すべての置換基は、別途指示のない限り、すでに定義したとおりである。試薬および出発材料は、当業者にとって容易に入手可能である。本発明の範囲を限定することなく、本発明をさらに説明するために以下のスキーム、調製および実施例を提供する。加えて、当業者は、当業者が調製することができる、対応する所望の立体化学的配置を有する出発材料または中間体を使用することによって、式Iの化合物を調製し得ることを理解する。
【0033】
ある特定の略語を以下のとおり定義する:「ACN」はアセトニトリルを指し、「CDMT」は2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジンを指し、「DCM」は塩化メチレンまたはジクロロメタンを指し、「DIPEA」はジイソプロピルエチルアミンを指し、「DMEM」はダルベッコ改変イーグル培地を指し、「DMF」はN,N-ジメチルホルムアミドを指し、「DMSO」はジメチルスルホキシドを指し、「ELSD」は蒸発光散乱検出器を指し、「ES/MS」はエレクトロスプレー質量分析を指し、「EtOAc」は酢酸エチルを指し、「EtOH」はエタノールまたはエチルアルコールを指し、「FBS」はウシ胎児血清を指し、「h」は時間を指し、「HATU」は1-[bis(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェートを指し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを指し、「Me」はメチルを指し、「MeOH」はメタノールを指し、「MTBE」はメチル-tert-ブチルエーテルを指し、「min」は分を指し、「m/z」は質量対電荷比を指し、「Ph」はフェニルを指し、「RBF」は丸底フラスコを指し、「RT」は室温を指し、「SCX」は選択的陽イオン交換を指し、「se」は標準誤差を指し、「SFC」は超臨界流体クロマトグラフィーを指し、「TBTU」は2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレートを指し、「TFA」はトリフルオロ酢酸を指し、「THF」はテトラヒドロフランを指す。
【化9】
【0034】
スキーム1は、式Iの化合物の一般的な調製を示す。ステップ1および2は、ワンポットで完了する。最初に、2,4-ジクロロ-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン(1)に、パラジウム触媒、炭酸ナトリウムなどの水性塩基、および(4-メトキシカルボニルフェニル)ボロン酸(2)との室温でのSuzukiカップリングを施し、クロロピリミジン中間体(3)を得る。ステップ1からの反応混合物に、2-メチルアゼチジン(4)またはその塩を添加し、次いで、反応物を加熱して、エステル中間体(5)を得る(ステップ2)。ステップ3では、エステル中間体(5)を、水酸化ナトリウムで高温で加水分解して、実施例1の酸化合物を得る。最後に、ステップ4で、実施例1の酸化合物を適切なアミンとカップリングすることにより、式Iの代替化合物を調製する。ステップ4は、DMF、EtOAc/DMF、もしくはACN中のHATU;ACN中のTBTU;またはTHF中のCDMTを使用して達成することができる。
【0035】
調製および実施例
以下の調製および実施例は、本発明をさらに説明し、本発明の化合物の典型的な合成を表す。試薬および出発材料は、容易に入手可能であるか、または当業者によって容易に合成され得る。調製および実施例は、限定ではなく例示として記載されており、当業者によって様々な変更がなされ得ることを理解されたい。
【0036】
LC-ES/MSは、AGILENT(登録商標)HP1100液体クロマトグラフィーシステム上で実施する。エレクトロスプレー質量分析測定(ポジティブおよび/またはネガティブモードで取得)は、ELSDを有していても有していなくてもよいHPLCに接続された質量選択性検出器四重極質量分析計上で実施する。LC-MS条件(低pH):カラム:PHENOMENEX(登録商標)GEMINI(登録商標)NX C18 2.0×50mm 3.0μm、110Å;勾配:1.5分で5~95%のB、次いで0.5分間95%のB;カラム温度:50℃+/-10℃;流速:1.2mL/分;注入量1μL;溶媒A:0.1%のHCOOHを含む脱イオン水;溶媒B:0.1%のギ酸を含むACN;波長:200~400nmおよび212~216nm。HPLCがELSDを備えている場合、設定は、蒸発器温度45℃、ネブライザ温度40℃、およびガス流速1.6SLMである。代替のLC-MS条件(高pH):カラム:Waters xBridge(登録商標)C18カラム 2.1×50mm、3.5μm;勾配:1.5分で5~95%のB、次いで0.50分間95%のB;カラム温度:50℃+/-10℃;流速1.2mL/分;注入量1μL;溶媒A:10mMのNH4HCO3 pH9;溶媒B:ACN;波長:200~400nmおよび212~216nm;ELSDを有する場合:蒸発器温度45℃、ネブライザ温度40℃、およびガス流速1.60SLM。
【0037】
調製1
(2S)-1-ベンズヒドリル-2-メチル-アゼチジン[(1R,4S)-7,7-ジメチル-2-オキソ-ノルボルナン-1-イル]メタンスルホン酸塩
【化10】
滴下漏斗、窒素注入口、および温度計アダプタを備えた2000mLの三つ口RBFを組み立てる。容器を窒素でパージし、(3R)-ブタン-1,3-ジオール(25g、277.4mmol)、DIPEA(127ml、731mmol)およびACN(556ml)を添加する。-30℃に冷却する。内部温度が-35~-30℃に維持されるように、無水トリフルオロメタンスルホン酸(101mL、601mmol)を3時間かけて滴下する。添加完了後、-35~-30℃で10分間攪拌する。内部温度が-35~-30℃に維持されるように、無水トリフルオロメタンスルホン酸(1.9mL、11mmol)を5分間かけて滴下する。添加完了後、-35~-30℃で10分間攪拌する。内部温度が-35~-30℃に維持されるように、DIPEA(127mL、731mmol)を15分間かけて滴下する。添加完了後、-35~-30℃で10分間攪拌する。窒素下の別個のフラスコ中で、アミノジフェニルメタン(48.0mL、270mmol)をACN(49mL、935mmol)中に溶解し、得られた溶液を滴下漏斗に移す。内部温度が-20~-35℃に維持されるように、アミン溶液を冷トリフレートに40分間かけて滴下する。添加完了後、-35~-30℃で30分間攪拌する。反応物を水浴に移し、30分間かけて徐々に加温する。浴を除去し、反応物を30分間かけて室温に加温させる。容器を加熱マントルに移し、反応物を45℃に30分間加温し、次いで室温に冷却する。得られた混合物を1200mLの水中に注ぎ、トルエン(400mL×3)で抽出する。抽出物を合わせ、水、飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、回転蒸発器上で濃縮する。材料を真空下で一晩乾燥させる。残渣をDCM(400mL)中に溶解する。フリット漏斗上にシリカパッドを調製し、それを1:1ヘプタン/EtOAcで平衡化する。生成物溶液をシリカパッド上に充填し、1600mLの1:1ヘプタン/EtOAcで洗浄する。濾液を濃縮して、赤色の油を得る。油をMeOH(250mL)中に溶解し、フラスコを水浴(約10℃)中に入れる。内部温度を20℃未満に保ちながら、L(-)-カンファースルホン酸(61.6g、265mmol)を少量ずつ添加する。得られた混合物を15分間攪拌し、次いで回転蒸発器上で濃縮して、褐色の泡状物を得る。泡状物を真空ポンプ上で2時間乾燥させる。泡状物を130mLのDCM中に溶解する。滴下漏斗をフラスコに取り付ける。漏斗を使用して、1100mLのEtOAcを攪拌溶液に徐々に添加する。得られた混合物を4000mLのビーカーに移し、大気に開放下、一晩攪拌する。ビーカーを氷浴中で10分間冷却する。沈殿物を真空濾過によりフリット漏斗中に収集し、最小量の氷冷EtOAcで洗浄する。フリット上の固体を2時間乾燥させる。得られた白色の固体を最小量のDCM中に溶解し、2000mLのビーカーに移し、次いで透明な溶液が曇ってくるまで、 EtOAcで徐々に希釈する。懸濁液を、大気に開放しながら4時間攪拌する。固体を、フリット漏斗を使用して真空濾過により収集し、フリット上で一晩乾燥させて、表題化合物(111.8g、238.06mmol、収率86%)を白色の固体として得る。
1H NMR(400MHz,d6-DMSO):10.54-10.47(m,1H),7.61(d,J=7.3Hz,5H),7.47-7.37(m,7H),5.85(d,J=10.3Hz,1H),4.68-4.61(m,1H),3.91-3.83(m,2H),3.37(s,8H),2.99(d,J=14.6Hz,1H),2.77-2.68(m,1H),2.51-2.44(m,4H),2.30-2.16(m,2H),1.91-1.81(m,2H),1.42-1.28(m,3H),1.08(s,3H),1.01(d,J=6.6Hz,3H),0.77(s,4H);>98%のee[HPLC:Chiralcel OJ(10cm×4.6mm、5μm)、5mL/分、40℃ 均一濃度の10%のEtOH(0.2%の
iPrNH
2)/CO
2]。
【0038】
調製2
[(1R,4S)-7,7-ジメチル-2-オキソ-ノルボルナン-1-イル]メタンスルホネート(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イウム塩
【化11】
2250mLのParr容器に、炭素(6.62g)上の20重量%のPd(OH)
2を添加する。ボトルを窒素でパージし、250mLのMeOHを添加する。得られた懸濁液に、250mLのMeOH中に溶解した(2S)-1-ベンズヒドリル-2-メチル-アゼチジン[(1R,4S)-7,7-ジメチル-2-オキソ-ノルボルナン-1-イル]メタンスルホン酸塩(111g、236mmol)を徐々に添加する。 容器を密封する。窒素、続いて水素でパージし、60PSIに加圧する。反応容器を、Parrシェーカー装置において、室温で15時間、激しく振とうする。容器を窒素でパージし、次いで反応混合物をCelite(登録商標)のパッドを通して濾過し、MeOHで洗浄する。濾液を濃縮して、白色の固体を得、真空下で乾燥させる。固体を780mLの1:1のMTBE/EtOAc中に懸濁し、混合物を65℃に20時間加熱し、次いで室温に冷却し、一晩攪拌する。固体を濾過により収集する。固体を380mLのMTBE中に懸濁し、室温で24時間攪拌する。白色の固体を濾過により収集して、表題化合物(41.5g、136.78mmol、収率58%)を得る。
1H NMR(400MHz,d6-DMSO):8.68-8.55(m,1H),4.51-4.42(m,1H),3.91-3.75(m,1H),3.36(s,3H),2.91(d,J=14.6Hz,1H),2.69-2.61(m,1H),2.52-2.46(m,2H),2.28-2.22(m,1H),2.17-2.10(m,1H),1.96(t,J=4.5Hz,1H),1.89-1.79(m,1H),1.43(d,J=6.7Hz,2H),1.36-1.26(m,1H),1.05(s,2H),0.75(s,2H)。
【0039】
調製3
4-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}安息香酸メチル
【化12】
窒素下の2Lの三つ口RBF中で、2,4-ジクロロ-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン(25.00g、112.9mmol)、(4-メトキシカルボニルフェニル)ボロン酸(21.34g、118.6mmol)、炭酸ナトリウム水溶液(2M、170mL、340mmol)、および1,4-ジオキサン(500mL)を合わせる。室温で攪拌し、混合物に窒素を10分間バブリングする。ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(1.585g、2.258mmol)を少しずつ添加する。混合物を室温で23時間攪拌する。懸濁液に、[(1R,4S)-7,7-ジメチル-2-オキソ-ノルボルナン-1-イル]メタンスルホネート(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イウム塩(35.97g、118.6mmol)を添加する。懸濁液を75℃に1時間加熱する。熱源を取り外し、水(500mL)を10分間かけて滴下漏斗を介して添加する。混合物を室温に冷却させ、黄色の固体を濾過により分離する。材料を45℃の真空オーブン中で乾燥させて、表題化合物を黄色の固体(41.75g、定量的収率) として得る。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ8.35-8.32(m,2H),8.11-8.08(m,2H),7.66(s,1H),4.64-4.57(m,1H),4.16-4.06(m,2H),3.90(s,3H),2.52-2.45(m,1H),2.06-2.00(m,1H),1.54(d,J=4.2Hz,3H);ES/MS m/z 352(M+H)。
【0040】
実施例1
4-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}安息香酸
【化13】
窒素下の2LのRBF中で、4-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}安息香酸メチル(41.80g、115.4mmol)、水酸化ナトリウム水溶液(2M、173.1mL、346mmol)、MeOH(418mL)、およびTHF(209mL)を慎重に合わせる。得られた混合物を75℃に徐々に加温し、2時間攪拌し、次いで室温に冷却する。有機溶媒を真空中で除去する。水(400mL)およびEtOAc(300mL)を添加する。得られた混合物を、真空濾過を使用してCelite(登録商標)のパッドを通して濾過する。有機層を分離する。塩基性水層を追加のEtOAc(300mL)で洗浄する。水層を、2MのHClを使用してpH=5に酸性化する。EtOAc(3×300mL)で抽出する。有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮する。残渣を真空下で乾燥し、次いでTHF(750mL)中に溶解し、SiliaMetS(登録商標)チオール(Si-チオール)樹脂(2.5g)を添加する。得られた混合物を40℃で6時間攪拌し、室温に冷却し、濾過する。濾液を濃縮して、固体を得る。これを、4-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}安息香酸メチル(7.95g、21.5mmol)で開始する上記と本質的には同じ手順を使用して調製した材料と合わせる。合わせた材料を、ヘプタン:EtOAcの10:1(v/v)溶液中で1時間攪拌する。固体を濾過により収集し、ヘプタンで洗浄し、真空下で乾燥させて、表題化合物(34.8g、75%)を得る。ES/MS m/z 338(M+H)、336(M-H)。
【0041】
実施例2
[(3R,4S)-3,4-ジヒドロキシピロリジン-1-イル]-[4-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}フェニル]メタノン
【化14】
ステップ1-カップリング
カップリング方法A:
窒素雰囲気下のRBFに、4-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}安息香酸(10g、29.1mmol)、(3R,4S)-ピロリジン-3,4-ジオール塩酸塩(4.39g、30.5mmol)、およびDMF(39.2mL)を充填する。DIPEA(12.1mL、69.7mmol)を徐々に添加する。得られた混合物を3℃に冷却し、攪拌しながらHATU(16.6g、43.6mmol)を5分間かけて添加する。90分間攪拌する。得られた反応物を、二塩基性リン酸カリウム水溶液(2M、100mL)とEtOAc(100mL)とに分割する。有機相を分離する。水層をEtOAc(100mL)で抽出する。有機相を合わせ、塩化リチウム水溶液(10質量%、200mL×3)で洗浄し、濃縮して、粗製表題化合物(21.4g)を黄色の泡状物として得る。
【0042】
カップリング方法B:
カップリング手順を、本質的にはカップリング方法Aに記載のとおり実施するが、以下を除く:4-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}安息香酸(2.10g、6.10mmol)で開始し、反応溶媒としてのEtOAcの使用を省き、DMFのみ(21mL)を使用し、反応を二塩基性リン酸カリウム水溶液(2M)とEtOAcの代わりに塩化リチウム水溶液(10質量%、42mL)とEtOAc(21mL)とに分割することによってワークアップする。粗製表題化合物(2.67g)を黄色の泡状物として得る。
【0043】
カップリング方法C:
窒素下のTHF(18mL)中の4-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}安息香酸(1.03g、2.99mmol)とCDMT(0.696g、3.88mmol)との4℃の攪拌混合物に、4-メチルモルホリン(0.453g、0.494mL、4.48mmol)を滴下する。混合物を室温で30分間攪拌し、(3R,4S)-ピロリジン-3,4-ジオール塩酸塩(0.451g、3.14mmol)、THF(6mL)、トリエチルアミン(0.907g、1.25mL、8.96mmol)、および4-メチルモルホリン(0.453g、0.494mL、4.48mmol)の懸濁液(これは、室温で攪拌することにより事前に調製した)を滴下する。得られた混合物を4℃で攪拌する。1時間後、さらに(3R,4S)-ピロリジン-3,4-ジオール塩酸塩(0.043g、0.299mmol)を添加し、混合物を室温に加温する。2時間後、反応混合物を、焼結漏斗(3Å細孔径)を使用して減圧下で濾過する。揮発性物質を真空中で除去し、残渣を、気流下で30分間、および高真空下で一晩乾燥させる。残渣を飽和NaHCO3水溶液(20mL)とEtOAc(20mL)とに分割する。有機相を飽和NaHCO3水溶液(20mL)で再度洗浄し、一晩かけて相を分解させる。有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、すべての揮発性物質を減圧下で除去して、粗製表題化合物(1.44g)を黄色の透明油として得る。
【0044】
カップリング方法D:
窒素下のRBFに、4-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}安息香酸(1.99g、5.79mmol)、(3R,4S)-ピロリジン-3,4-ジオール塩酸塩(0.875g、6.08mmol)、およびACN(16mL)を充填し、次いでDIPEA(2.25g、3.01mL、17.4mmol)を穏やかに添加する。混合物を室温で5分間攪拌し、次いでHATU(2.64g、6.95mmol)を添加する。25分間攪拌した後、すべての揮発性物質を減圧下で除去する。残渣を酢酸イソプロピル(20mL)で希釈し、HCl水溶液(1M、20mL×2)、水(20mL)、炭酸ナトリウム水溶液(1M、20mL)、および水(20mL)で抽出する。有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、すべての揮発性物質を減圧下で除去する。この物質をMeTHF(18mL)中に溶解し、NaOH水溶液(1M、18mL)で洗浄する。有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、すべての揮発性物質を減圧下で除去して、粗製表題化合物(1.53g)を黄色の泡状物として得る。
【0045】
カップリング方法E:
窒素雰囲気下のRBFに、4-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}安息香酸(8.61g、25.0mmol)、(3R,4S)-ピロリジン-3,4-ジオール塩酸塩(3.8g、26.2mmol)、およびACN(71mL)を充填する。DIPEA(13mL、75mmol)を徐々に添加する。得られた混合物を攪拌しながら、TBTU(9.0g、27.5mmol)を添加する。6分間攪拌する。すべての揮発性物質を真空中で除去する。残渣を2-メチルテトラヒドロフラン(86mL)中に溶解し、塩酸(1M、86mL×2)、水酸化ナトリウム(1M、86mL×2)、および塩化リチウム(10質量%、86mL)で洗浄する。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮する。残渣をEtOAc(43mL)中に溶解し、2回濃縮乾固して、粗製表題化合物(10.3g)を黄色の泡状物として得る。
【0046】
粗製表題化合物の別個のロットを、表1に示す出発材料の量およびカップリング方法を使用して調製する。表1で言及される出発材料は、4-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}安息香酸である。
【表1】
【0047】
ステップ2-精製
精製方法A:
ロット1~6を合わせ、合わせた粗生成物を、EtOAc中0~3%のEtOHの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、黄色の泡状物を得る。この物質をEtOAc(300mL)中に溶解し、水(372mL)中の塩化リチウム(10質量%)で3回洗浄する。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、黄色の固体を得る。固体をヘプタン(177mL)中で2時間粉砕し、濾過し、空気乾燥させ、次いで真空下で一晩乾燥させて、表題化合物(14.65g、カップリングおよび精製ステップからの全収率82%)を黄色の固体として得る。
【0048】
精製方法B:
ロット7~15を合わせ、合わせた粗生成物を、EtOAc中0~10%のEtOHの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、黄色の泡状物を得る。この材料を5%のアセトン/ヘプタン混合物(165mL)中で、60℃で30分間、次いで室温で6時間粉砕する。減圧下で濾過し、気流下で30分間、次いで高真空下で乾燥させて、表題化合物(15.8g、カップリングおよび精製ステップからの全収率64%)を結晶性の白色の粉末として得る。
【0049】
実施例3
N-[2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]-4-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}ベンズアミド
【化15】
4{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}安息香酸(700mg、2.08mmol)を、バイアル中のDMF(10mL)中に溶解する。2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(280mg、2.31mmol)、HATU(1.21g、1.21g)、およびDIPEA(1.1mL、6.3mmol)を添加する。バイアルを密封し、室温で1時間攪拌する。混合物をEtOAcで希釈し、水で2回洗浄し、次いで飽和NaCl水溶液で洗浄する。有機層をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、濃縮する。得られた物質を、CH
2Cl
2中の0~10%のMeOHの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィー、続いて水(0.1%のTFAを含有)中の10~100%のACN(0.1%のTFAを含有)の勾配を使用する逆相クロマトグラフィーにより生成して、表題化合物(287mg、31%)を得る。ES/MS m/z 441(M+H)、439(M-H)。
【0050】
アッセイ
ヒトKHK-CおよびヒトKHK-AについてのKHK酵素活性アッセイ
KHK-CまたはA活性の阻害の固有の効力は、F1Pの産生を測定する酵素アッセイを使用して測定することができる。化合物をDMSO中で調製し、10点濃度曲線において試験して、20μM~1.02nMの範囲で、96ウェルプレート中に化合物の3倍段階希釈を作成する。酵素をアッセイバッファ[50mMの4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES)、10mMの塩化カリウム、100mMの塩化マグネシウム、2mMのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、0.01%のn-オクチルグルコシド]中で調製し、化合物とともに室温で15分間インキュベートする。反応を、基質濃度のフルクトース(KHK-Cアッセイについては250μM、およびKHK-Aアッセイについては1.25mM)およびATP(両アイソフォームについて150μM)を含有する100μL容量で実施し、これを室温で20分間さらにインキュベートする。次いで、反応を、0.2%のギ酸および1μg/mlの13C6-フルクトース-6-ホスフェート(13C6-F6P)内部標準からなる停止バッファの添加によって停止する。プレートをRapidFire MS分析まで-20℃で貯蔵する。
【0051】
F1Pの定量化のためのRapidFire MS分析
3つのHPLCクォータナリポンプを備えたAgilent 300 RapidFire自動抽出システム(Agilent、Santa Clara,CA)を、エレクトロスプレーイオン化(ESI)インターフェース源を備えたAgilent 6495三連四重極質量分析計(Agilent Technologies、Santa Clara,CA)に連結する。RapidFire Mass Specシステムは、再使用可能なRapidFire C18(タイプC)固相抽出(SPE)カートリッジ(G9205A)を備えている。
【0052】
試料の充填および洗浄に使用される溶媒Aは、酢酸を使用してpH5.0にした6mMのオクチルアミン(Acros Organics 129495000)である。試料の溶出に使用される溶媒Bは、0.1%の酸を含有するACN中の20%の水である。試料を、マルチウェルプレートから直接、真空下で収集ループ上へと10μLを吸引することによって連続的に分析する。10μLの試料をC18カートリッジに充填し、溶媒Aを1.25mL/分の流速で使用して、5000ミリ秒間洗浄する。次いで、保持された分析物を、溶媒Bを1.25mL/分の流速で使用して、5000ミリ秒間、質量分析計へ溶出させる。このシステムを、溶媒Aを1.25mL/分の流量で使用して、2000ミリ秒間、再平衡化する。
【0053】
三連四重極質量分析計は、ESI源を備え、分析物を、ネガティブモード[M-H]-で選択反応モニタリング(SRM)を使用してモニタリングする。F1Pを、m/z 259.02/96.9でモニタリングし、13C6-フルクトース-6-ホスフェートを、m/z 264.99/97でモニタリングする。13C6-フルクトース-6-ホスフェートを内部標準として使用して、F1Pの面積比値を計算する。
【0054】
実施例1~3の化合物を、本質的には上記のとおり試験した。
【表2】
【0055】
上記の表2に示す結果は、実施例1~3の化合物が、KHK-CとKHK-Aの両方の酵素活性を阻害することを実証している。
【0056】
KHK細胞活性アッセイ
細胞KHKによるフルクトースのF1Pへの変換の阻害について、細胞アッセイを使用して効力を測定することができる。HepG2肝細胞を、96ウェル細胞培養プレート上で、増殖培地[ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)高グルコース、10%の熱不活化ウシ胎児血清(HI FBS)、1×ペニシリン/ストレプトマイシン]中に播種し、37℃のインキュベータ中で一晩付着させる。増殖培地を洗浄し、Gibco OptiMEM 1低減血清培地、0.1%のカゼイン、8.33mMのD-フルクトース-13C6、および100μM~0.0051μM(10点濃度曲線)の範囲の濃度の化合物からなるアッセイ培地と交換する。プレートを37℃で3時間インキュベートし、その後、アッセイ培地を、細胞ウェルから吸引させる。次いで、80%のMeOH、2mMの酢酸アンモニウム、および50ng/mLのフルクトース-6-ホスフェート-13C6からなる停止溶液を、細胞に添加する。プレートをRapidFire MS分析(上記)まで-20℃で貯蔵する。
【0057】
実施例1~3の化合物を、本質的には上記のとおり試験した。
【表3】
【0058】
上記の表3に示す結果は、実施例1~3の化合物が、HepG2細胞においてフルクトースのF1Pへの代謝を阻害することを実証している。
【0059】
薬物動態アッセイのためのタンデム質量分析計を備えた液体クロマトグラフ(LC-MS/MS)法:内部標準を含有する180μLのMeOH:ACN(1:1、v/v)を50μLの血漿に添加することによるタンパク質沈殿を使用して、試料を抽出する。次いで、試料をMeOH:水(1:1、v/v)で希釈して、標準曲線の範囲内の濃度を得る。希釈された試料を、TurboIonSprayインターフェースを備え、かつ陽イオンモードで操作されるSciex API 4000三連四重極質量分析計(Applied Biosystems/MDS、Foster City,CA)を使用するLC-MS/MSにより分析する。分析物を、ECHELON C18 4um 20×2.1mmカラムを使用して、クロマトグラフィーで分離する。LC条件は、水/1Mの重炭酸アンモニウム(2000:10、v/v)(移動相A)、およびMeOH/1Mの重炭酸アンモニウム(2000:10、v/v)(移動相B)である。
【0060】
Sprague Dawleyラットにおける薬物動態
実施例2および実施例3のインビボ薬物動態特性を、Sprague Dawleyラット(絶食、n=3/投与経路)を使用して実証する。化合物を、ビヒクル中の単回経口(PO、3mg/kg、容量10mL/kg)または静脈内(IV、1mg/kg、容量1mL/kg)用量により投与する。投与後0~最大24時間の複数の時点で、各動物から血液を採取する。実施例2および3の血漿濃度を、上記のようにLC-MS/MS法によって決定する。
【0061】
実施例2の場合、生物学的利用能は65%であるが、IV投与は、平均半減期が6.42時間であり、平均クリアランスが5.57mL/分/kgであることを明らかにした。実施例3の場合、生物学的利用能は69%であるが、IV投与は、平均半減期が2.95時間であり、平均クリアランスが12.7mL/分/kgであることを明らかにした。このデータは、実施例2および3がラットにおいて低い総クリアランスを有することを示し、最小限の初回通過抽出、高い経口バイオアベイラビリティ、および十分な平均半減期によって証明される長期の排泄を示唆している。
【0062】
イヌにおける薬物動態
実施例2および実施例3のインビボ薬物動態特性を、ビーグル犬(給餌、n=3)を使用して実証する。化合物を、ビヒクル中の単回経口(PO、2mg/kg、容量2mL/kg)または静脈内(IV、1mg/kg、容量1mL/kg)用量により投与する。投与後0~最大24時間の複数の時点で、各動物から血液を採取する。実施例2および3の血漿濃度を、上記のようにLC-MS/MS法によって決定する。
【0063】
実施例2の場合、IV投与は、平均半減期が11.3時間であり、平均クリアランスが2.15mL/分/kgであることを明らかにした。実施例3の場合、平均半減期は4.52時間であり、生物学的利用能は、PO投与によって決定される場合、約96%であるが、IV投与は、平均半減期が5.07時間であり、平均クリアランスが4.77mL/分/kgであることを明らかにした。このデータは、実施例2および3がラットにおいて低い総クリアランスを有することを示し、最小限の初回通過抽出、高い経口バイオアベイラビリティ、および十分な平均半減期によって証明される長期の排泄を示唆している。