IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-乗客コンベアの非常停止スイッチ装置 図1
  • 特許-乗客コンベアの非常停止スイッチ装置 図2
  • 特許-乗客コンベアの非常停止スイッチ装置 図3
  • 特許-乗客コンベアの非常停止スイッチ装置 図4
  • 特許-乗客コンベアの非常停止スイッチ装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】乗客コンベアの非常停止スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/00 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
B66B29/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023000952
(22)【出願日】2023-01-06
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 憲治
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-153695(JP,U)
【文献】登録実用新案第3144945(JP,U)
【文献】特開2014-143149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の乗客コンベアのモータの駆動を停止させる非常停止スイッチ装置において、
複数の前記乗客コンベアが、左右方向に沿って2列以上並んで設けられ、
複数の前記乗客コンベアのそれぞれの非常停止スイッチ装置が、当該乗客コンベアの乗降板と隣接する前記乗客コンベアの乗降板の間にある境界部材に設けられ、
前記非常停止スイッチ装置は、その上面に前記モータを非常停止させる押しボタンを有し、前記押しボタンの上面が、前記乗降板より低い位置にある、
ことを特徴とする乗客コンベアの非常停止スイッチ装置。
【請求項2】
前記非常停止スイッチ装置に前記押しボタンが2個設けられ、一方の前記押しボタンが隣接する一方の前記乗客コンベアの前記モータを停止させるものであり、他方の前記押しボタンが隣接する他方の前記乗客コンベアの前記モータを停止させるものである、
請求項に記載の乗客コンベアの非常停止スイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアの非常停止スイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアにおいて、乗客に危険が及んだ場合などに乗客コンベアを非常停止させる非常停止スイッチが、乗降口付近のスカートガード等に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-153524号公報
【文献】特開2004-352391号公報
【文献】特開平10-265162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように従来は主に乗降口付近のスカートガードに非常停止スイッチが設けられているが、この非常停止スイッチをより見つけ易い位置に設けたり、増設したりする必要がある場合には、建屋の壁や、乗客コンベアの乗降口にある乗降板近傍に立設されたポールに設けることが行われている。しかし、どの設置方法でも、大掛かりな工事が必要であるという問題点があった。
【0005】
また、乗客コンベアより離れた位置に非常停止スイッチを設置すると、操作に支障をきたすという問題点があった。
【0006】
さらに、乗客コンベアを2列並べて設置しているときに、どの非常停止スイッチでどちらの乗客コンベアが停止するかがわかりにくいという問題点があった。
【0007】
そこで本発明の実施形態は、乗客が見つけ易くかつ操作し易い、乗客コンベアの非常停止スイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、複数の乗客コンベアのモータの駆動を停止させる非常停止スイッチ装置において、複数の前記乗客コンベアが、左右方向に沿って2列以上並んで設けられ、複数の前記乗客コンベアのそれぞれの非常停止スイッチ装置が、当該乗客コンベアの乗降板と隣接する前記乗客コンベアの乗降板の間にある境界部材に設けられ、前記非常停止スイッチ装置は、その上面に前記モータを非常停止させる押しボタンを有し、前記押しボタンの上面が、前記乗降板より低い位置にある、ことを特徴とする乗客コンベアの非常停止スイッチ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態を示すエスカレータの左側から見た側面図である。
図2】2列に並べられたエスカレータの上階側の平面図である。
図3】操作盤の拡大図である。
図4】非常停止スイッチ装置の拡大平面図である。
図5図4におけるA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態の乗客コンベアの非常停止スイッチ装置について図1図5を参照して説明する。本実施形態では乗客コンベアとしてエスカレータ10を例にして説明し、このエスカレータ10が図2に示すように左右方向に2列並んで上階(例えば、2階)と下階(例えば、1階)の間に設置されている場合について説明する。このとき、例えば、一方のエスカレータ10が上昇運転、他方のエスカレータ10が下降運転を行っているとする。
【0011】
(1)エスカレータ10
まず、左側に設置されているエスカレータ10の全体の構成について図1図2図5を参照して説明する。図1は、エスカレータ10を右側面から見た説明図である。但し、エスカレータ10の内部構成をわかりやすくするために、エスカレータ10の右側の部材の図示を省略している。また、エスカレータ10の前後方向を説明するときは、上階から下階を見下ろし、下階が前側、上階が後側であるものとする。
【0012】
図1に示すように、エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって、支持アングル2,3を用いて前後方向に支持されている。
【0013】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の踏段スプロケット24,24、不図示の左右一対のベルトスプロケットが設けられている。この駆動装置18は、モータ20と駆動小スプロケット19を有している。左右一対の踏段スプロケット24,24には、同軸に駆動大スプロケット25が取り付けられ、駆動小スプロケット19との間に無端状の駆動チェーン22が架け渡されている。また、上階側の機械室14内部には、モータ20などを制御する制御装置50が設けられている。
【0014】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階側の左右一対の踏段スプロケット24,24と下階側の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端状の踏段チェーン28,28が架け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28の間には、複数の踏段30の左右一対の第1輪301,301が一定間隔毎に連結されている。モータ20が回転すると踏段30の第1輪301は、トラス12に固定された不図示の第1輪専用案内レールを走行し、踏段30の第2輪302は、トラス12に固定された不図示の第2輪専用案内レールを走行する。
【0015】
トラス12の上部の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部には手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。
【0016】
左右一対の欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられている。正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。左右一対の欄干36の側面下部には、スカートガード(内デッキ)44がそれぞれ設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。
【0017】
手摺りベルト38は、不図示のベルトスプロケットが踏段スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。
【0018】
図5に示すように、上階側の機械室14の上部を構成する枠材76の上部に設置部材78が設けられ、この設置部材78には、上階側の乗降板32が着脱自在に水平に設けられている。下階側の機械室16の上部にも下階側の乗降板34が着脱自在に水平に設けられている。図1図2に示すように、上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、踏段30がこのコム60に進入したり、このコム60から引き出されたりする。また、下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0019】
右側に設置されているエスカレータ10についても、上記で説明した左側に設置されているエスカレータ10と同様の構成を有している。
【0020】
図2に示すように、左右方向に2列並んで設けられている左側のエスカレータ10の上階側の乗降板32と、右側のエスカレータ10の上階側の乗降板32の間には、境界部材64が設けられている。この境界部材64の上面は平らであり、乗降板32と同じ高さ、すなわち、フロアレベルと同じ高さに設置されている。なお、境界部材64は、左右両側にある設置部材78の間に取り付けられている(図5参照)。
【0021】
(2)操作盤52,56
図1図2に示すように、上階側の乗降口付近にある左側のスカートガード44には、操作盤52が設けられ、図1に示すように、下階側の乗降口付近にある左側のスカートガード44には、操作盤56が設けられている。図3に示すように、操作盤52と操作盤56には、非常停止スイッチ66、運転キースイッチ68、停止/ブザーキースイッチ70が設けられている。
【0022】
非常停止スイッチ66は、押しボタン式であり、この非常停止スイッチ66を乗客が押すと制御装置50に非常停止信号が出力され、モータ20が停止し、踏段30の走行が停止する。
【0023】
運転キースイッチ68は、不図示の鍵を保守員が差し込んで、図3において反時計回りの方向に回転させると上昇運転を開始し、時計回りの方向に回転させると下降運転を開始する。
【0024】
停止/ブザーキースイッチ70は、不図示の鍵を保守員が差し込んで、まず、図3において時計回りの方向に回転させて停止を知らせるブザーを鳴らし、その後に反時計回りの方向に回転させてエスカレータ10を停止させるものである。
【0025】
(3)非常停止スイッチ装置54
図1図2に示すように、上階側の乗降板32の周囲にある周囲部材である境界部材64には、非常停止スイッチ装置54が設けられている。
【0026】
上階側の非常停止スイッチ装置54は、直方体の形状を成し、図2図4に示すように、境界部材64に固定されているものであり、非常停止スイッチ装置54の左側の一部が左側にある乗降板32に掛かっているため、左側の乗降板32の右側の一部が非常停止スイッチ装置54の形状に合わせて切り欠かれている。また、同様に右側の乗降板34の左側の一部も、非常停止スイッチ装置54の右側の形状に合わせて切り欠かれている。また、非常停止スイッチ装置54を設ける位置は、図2に示す平面図において、左側のエスカレータ10の手摺りベルト38の後端部と右側のエスカレータ10の手摺りベルト38の後端部よりも後方の境界部材64上である。さらに、図5に示すように、非常停止スイッチ装置54の上面は、平らであって、左右両側の乗降板32と乗降板32の高さと同じ高さに設定されている。これにより、非常停止スイッチ装置54が、乗客の歩行の邪魔にならない。
【0027】
図4図5に示すように、非常停止スイッチ装置54の上面に押しボタン72と押しボタン74が設けられている。図5に示すように、押しボタン72の上面は、非常停止スイッチ装置54の上面よりも低い位置に形成されている。これにより、乗客が誤って押しボタン72、押しボタン74のある位置を踏んでも、これらのボタンを押下することがない。これらの押しボタン72と押しボタン74の下端からそれぞれハーネス80が突出し、左側の押しボタン72からのハーネス80は左側の制御装置50に接続され、右側の押しボタン74の不図示のハーネス80は、右側のエスカレータ10の制御装置50に接続されている。
【0028】
図4に示すように、左側の押しボタン72の外側には、左側を指す矢印82が設けられ、右側の押しボタン74には右側を指す矢印84が設けられている。矢印82は、押しボタン72が左側のエスカレータ10の非常停止用のボタンであることを示し、矢印84は、押しボタン74が右側のエスカレータ10の非常停止用のボタンであることを示している。矢印82,84の表示により、どちらのエスカレータ10を停止できるかが一目で分かるため、操作を行い易い。
【0029】
例えば、左側のエスカレータ10に何らかの事象が発生し、乗客がこれを非常停止させたい場合には、矢印82に従って非常停止スイッチ装置54の押しボタン72を押下することにより、非常停止信号が左側の制御装置50に出力され、モータ20が停止し、左側のエスカレータ10の踏段30の走行が停止する。
【0030】
下階側の左右方向に並んだ乗降板34と乗降板34の間の境界部材64にも、図1に示すように、非常停止スイッチ装置58が設けられている。この下階側の非常停止スイッチ装置58は、上階側の非常停止スイッチ装置54と同様の構成を有している。
【0031】
(4)効果
本発明の実施形態によれば、非常停止スイッチ装置54,58は、乗客が通る乗降板32,34の周囲にあるため、見つけ易く、非常時に簡単に操作できる。特に、乗客が乗っているエスカレータ10の隣にあるエスカレータ10を停止させる場合に、今までは、隣にあるエスカレータ10のスカートガード44にある操作盤52の非常停止スイッチ66を押す必要があり、そのために乗っているエスカレータ10を降りて、隣のエスカレータ10の欄干36の向こうまで回り込んで操作する必要があった。しかし、本実施形態では、エスカレータ10を降りて乗降板32,34にある非常停止スイッチ装置54,58を操作するだけでよいので、より早く非常停止させることができる。
【0032】
また、境界部材64に非常停止スイッチ装置54,58が設けられているため、ハーネス80を建屋の床面や壁面の下を通す必要がなく、大掛かりな工事が不要となる。
【0033】
また、非常停止スイッチ装置54,58は、乗降板32,34と同じ高さであるため、乗客の歩行の邪魔にならない。
【0034】
また、押しボタン72,74は、非常停止スイッチ装置54,58の上面よりも低い位置にあるため、乗客が押しボタン72,74のある位置を踏んでも、これらのボタンを押下することがない。
【0035】
また、非常停止スイッチ装置54,58の押しボタン72,74を押そうとするときに、どちらのボタンでどちらのエスカレータ10が停止するかが矢印82,84により一目で分かるため、誤った操作を行うことがない。
【0036】
また、非常停止スイッチ装置54は、図2に示すように、平面から見て手摺りベルト38の後端部からさらに後方に位置しているため、非常停止スイッチ装置54を操作するときに、操作者の体が手摺りベルト38に接触しないので安全である。
【変更例】
【0037】
上記実施形態では、並列するエスカレータ10,10の間に非常停止スイッチ装置54,58を設けたが、これに限らず1台のエスカレータ10において、乗降板32,34に設けてもよい。乗降板32,34に設ける場合、乗降板32,34の左右いずれかの側部に設けてもよく、また、乗降板32,34の左右方向の中央部であって、かつ、コム60,62が設けられている位置とは前後方向に反対側の位置に設けてもよい。この場合は、乗降板32,34に切り込みを設け、その切り込みに非常停止スイッチ装置54,58を嵌め込むことにより設けることができる。
【0038】
また、非常停止スイッチ装置54を設ける周囲部材として、上記実施形態では境界部材64に設けたが、見つけ易く操作し易い位置であれば、乗降板32,34を支持する設置部材78などの周囲部材に設けてもよい。
【0039】
また、非常停止スイッチ装置54,58を防水構造にすることにより、野外のエスカレータ10にも設置することができる。
【0040】
また、上記実施形態では、非常停止スイッチ装置54の押しボタン72,74を押下すると直ちにエスカレータ10は停止したが、これに代えて瞬間作動の遅延回路を設け、押しボタン72,74を一定時間(2秒~3秒)押下するとエスカレータ10が停止するようにしてもよい。これにより、非常停止スイッチ装置54,58の誤作動を防止することができる。
【0041】
上記実施形態では、乗客コンベアとしてエスカレータ10で説明したが、これに代えて動く歩道で実施してもよい。
【0042】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10・・・エスカレータ、38・・・手摺りベルト、44・・・スカートガード、50・・・制御装置、52・・・操作盤、54・・・非常停止スイッチ、56・・・操作盤、58・・・非常停止スイッチ装置、64・・・境界部材、72・・・押しボタン、74・・・押しボタン、80・・・ハーネス、82・・・矢印、84・・・矢印
【要約】
【課題】見つけ易く、かつ、操作し易い乗客コンベアの非常停止スイッチ装置を提供する。
【解決手段】非常停止スイッチ装置54は、その上面に踏段30を非常停止させる押しボタン72を有し、乗降板32、又は、乗降板32の周囲にある周囲部材に設けられている。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5