IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キッツの特許一覧

<>
  • 特許-水素ステーション 図1
  • 特許-水素ステーション 図2
  • 特許-水素ステーション 図3
  • 特許-水素ステーション 図4
  • 特許-水素ステーション 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】水素ステーション
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
F17C5/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023046459
(22)【出願日】2023-03-23
(62)【分割の表示】P 2019067699の分割
【原出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2023068134
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 統
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205439(JP,A)
【文献】特開2018-151043(JP,A)
【文献】特開2016-153656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバンクから構成される蓄圧器ユニットと、前記蓄圧器ユニットに水素ガスを供給する圧縮機ユニットと、前記蓄圧器ユニットから水素ガスを動力源とする装置の水素燃料容器に水素ガスを供給する水素ガス供給手段とを備えた水素ステーションであって、各バンクが予め設定した所定圧力よりも圧力が低下した際に、水素ガスを充填すべき状態のバンク(対象バンク)であるか否かを判定する圧力判定手段と、この対象バンクが複数の場合に、各対象バンクのその時点での圧力に基づいて対象バンク毎に満充填までに必要な水素ガス充填量を算出し、これに基づいて対象バンク毎に満充填までに要する時間を求める演算手段と、この演算手段により求めた満充填までの充填時間が最も短い対象バンクを充填バンクに選択し、選択した充填バンクに水素ガスを充填する水素ガス充填制御手段と、を備えることを特徴とする水素ステーション。
【請求項2】
複数のバンクから構成される蓄圧器ユニットと、前記蓄圧器ユニットに水素ガスを供給する圧縮機ユニットと、前記蓄圧器ユニットから水素ガスを動力源とする装置の水素燃料容器に水素ガスを供給する水素ガス供給手段とを備えた水素ステーションであって、各バンクが予め設定した所定圧力よりも圧力が低下した際に、水素ガスを充填すべき状態のバンク(対象バンク)であるか否かを判定する圧力判定手段と、各バンクにおいて予め求めておいた圧力と満充填までに要する時間との関係と、この関係に基づき各バンク同士の圧力の比較により満充填までに要する時間の大小を判断する基準とを記憶しておく基準データ記憶手段と、対象バンクが複数の場合に、前記データ記憶手段に記憶された前記基準に基づいて最も早く満充填状態にできるバンクを充填バンクに選択し、該充填バンクに水素ガスを充填する水素ガス充填制御手段と、を備えることを特徴とする水素ステーション。
【請求項3】
複数のバンクから構成される蓄圧器ユニットと、前記蓄圧器ユニットに水素ガスを供給する圧縮機ユニットと、前記蓄圧器ユニットから水素ガスを動力源とする装置の水素燃料容器に水素ガスを供給する水素ガス供給手段とを備えた水素ステーションであって、各バンクが、予め設定した所定圧力よりも圧力が低下した際に、水素ガスを充填すべき状態のバンク(対象バンク)であるか否かを判定する圧力判定手段と、この対象バンクが複数の場合に、最も早く満充填状態にできるバンクを充填バンクに選択し、該充填バンクに水素ガスを充填する水素ガス充填制御手段と、水素供給先である水素燃料容器への水素供給が完了した状態となったら、又は、前記最も早く満充填状態にできるバンクが切り替わったと判断されたら、前記圧縮機ユニットからの水素ガス充填を行う充填バンクを切り替える充填バンク切り替え手段と、を備えることを特徴とする水素ステーション。
【請求項4】
複数のバンクから構成される蓄圧器ユニットと、前記蓄圧器ユニットに水素ガスを供給する圧縮機ユニットと、前記蓄圧器ユニットから水素ガスを動力源とする装置の水素燃料容器に水素ガスを供給する水素ガス供給手段とを備えた水素ステーションであって、各バンクが、予め設定した所定圧力よりも圧力が低下した際に、水素ガスを充填すべき状態のバンク(対象バンク)であるか否かを判定する圧力判定手段と、この対象バンクが複数の場合に、水素燃料容器の満充填までに必要な水素ガス量と、各バンクの容量及び水素残圧を考慮し、最も効率よく水素燃料容器に水素ガスの供給を行うことができるバンクを水素燃料容器への水素ガス供給を行う供給バンクとして選定する水素ガス供給手段と、前記水素ガス供給手段側の情報を受領し、前記供給バンクから水素燃料容器への水素ガスの供給を行うことにより当該供給バンクの水素残圧が低くなることを想定し、それを考慮した上で最も早く満充填状態とすることができる充填バンクを選択し、該充填バンクに水素ガスを充填する水素ガス充填制御手段と、を備えることを特徴とする水素ステーション。
【請求項5】
複数のバンクには、他のバンクと容量が異なるバンクが少なくとも一つ含まれている請求項1乃至4の何れか1項に記載の水素ステーション。
【請求項6】
前記圧縮機ユニットから前記蓄圧器ユニットに水素ガスを供給するときに、バンクに水素ガス充填を開始してから満充填状態になるまでの時間及び圧力変動を含む水素充填データを記録しておく水素充填データ記録手段と、所定の時点での水素充填データと、前記水素充填データ記録手段に記録されている水素充填データとを対比して水素ステーションの故障予測又は診断を行う故障予測診断手段と、をさらに備える請求項1乃至4の何れか1項に記載の水素ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧充填方式に使用する蓄圧器を備えた水素ステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリン車に代わる環境負荷の小さい自動車として、水素を燃料とする燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)が注目されている。燃料電池自動車は、含酸素の空気と燃料ガスである水素ガスとを燃料電池に供給し、これによって発電した電力を利用して電動機を駆動することにより走行するので、ガソリン車のように二酸化炭素(CO)、NOx、SOx等の排出がなく水を排出するだけであり、環境にやさしい自動車とされている。
【0003】
FCVでは、車内の水素タンクに予め十分な量の水素ガスを貯蔵しておき、走行には水素タンク内の水素ガスを利用するものが主流であり、FCVの水素タンクへの水素ガスの供給は、通常のガソリン自動車と同様に、水素ガスを供給する水素ステーションにおいて行われる。
【0004】
水素ステーションでのFCVへ水素ガスを供給する方式には、予め蓄圧器に高圧の水素ガスを貯蔵しておき、この蓄圧器とFCVの水素タンクとの圧力差のより水素ガスを供給する差圧充填方式がある。この差圧充填方式を使用した水素ステーションは、敷地内に水素ガス製造設備を設ける必要がないため、水素ステーションの設備費用や敷地面積を削減できるので、土地の確保に制約が生じ易い大都市での建設に適している。
【0005】
差圧充填方式では、水素ガスを急速にFCVに供給するため、圧縮機で高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵する複数の蓄圧器による多段蓄圧器を構成している。FCVの水素タンク(燃料タンク)に水素ガスを供給する際には、使用する蓄圧器を切替えながら供給することで蓄圧器内の圧力とFCVの水素タンクの圧力との差圧を大きく保ち、蓄圧器からFCVの水素タンクへ差圧によって水素ガスを急速に供給するようにしている。
【0006】
現状、FCVは、ガソリン自動車等に比べて台数が大幅に少ないため、水素ステーションも常時混雑するわけではない。従って、差圧充填方式を採用した水素ステーションでは、圧縮機及び多段の蓄圧器等の供給設備は、短時間で多数のFCVへの水素供給が可能となるほど余裕をもって設計されていないことが多い。
【0007】
多段蓄圧器からFCVに水素ガスを供給すると多段蓄圧器内の圧力が低下するため、圧縮機を作動させて多段蓄圧器に水素ガスを再充填する必要がある。このため、1台目のFCVに水素ガスを供給している間、又は供給直後に2台目のFCVが水素ガスの供給を受けるために訪れた際には、多段蓄圧器に水素ガスの再充填が完了するまでの間、2台目のFCVを待たせなければならない事態も生起し得るので、急速に多段蓄圧器の水素供給能力を回復させる水素ガスの充填方法が求められる。
【0008】
このような水素ガスの充填方法として、特許文献1には、複数の蓄圧器からFCVの水素タンクに水素ガスを供給するに際し、最初に残圧が最も低い蓄圧器を選択して充填し、次いで充填が完了した蓄圧器よりも残圧が高い蓄圧器に充填することを順次繰り返すことにより、複数の蓄圧器を再充填する水素ガスの充填制御方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、複数の蓄圧器を備えるガス充填システムにおいて、残圧が高い蓄圧器から順に水素ガスを充填して蓄圧器を回復させるとともに、残圧が低い蓄圧器から順にFCVの水素タンクに水素ガスを供給し、圧縮機から蓄圧器の水素ガスの充填と蓄圧器からFCVの水素タンクへの供給とを並行して行うガス充填方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2004-293752号公報
【文献】特許第6102006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の水素ガスの充填制御方法では、複数の蓄圧器の圧力が低下した際には、最も残圧が低い蓄圧器を優先して水素ガスを充填するようにしているが、このように水素ガスを充填すると、多段蓄圧器への充填が完了し、次のFCVに水素ガスの供給が可能となるまでに時間がかかることがある。
【0012】
通常、差圧充填式の水素充填装置では、FCVに短時間で効率良く水素ガスを充填するため、最初は容量の大きい大容量バンクからFCVに水素ガスを充填するようにしている。充填開始時のFCVの水素タンクの圧力は低いため、FCVの水素タンクと大容量バンクとの圧力差は大きく、大容量バンクとFCVの水素タンクとの圧力差が所定の値に達するまで大容量バンクから供給が行われることにより、大容量バンクの圧力は大きく低下する。このため、最も残圧が低いバンクを優先して水素を充填すると、概ね容量の大きい大容量バンクが選択されることになって充填時間が長くなり、2台目のFCVに供給可能となるまでに時間がかかることになる。
【0013】
特許文献2のガス充填方法では、複数の蓄圧器に残圧が高い順に水素ガスを充填させるとともに、残圧が低い順に蓄圧器からFCVの水素タンクへ水素ガスを供給するようにしているが、このようにFCVの水素タンクへ水素ガスを供給するようにすると、通常は中圧用のバンク、高圧用のバンクに優先的に水素ガスの充填が行われ、FCVへの水素ガスの供給において供給時間を短縮するために大きな役割を果たす低圧用のバンクへの水素ガスの充填が後回しにされるとともに、大容量バンクを設けた効果が十分に発揮されず、2台目のFCVに水素ガスの供給に時間を要する場合がある。
【0014】
本発明は、上記の問題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、常に高圧のバンクを維持できるようにすることにより、例えば、2台目以降のFCVの水素燃料容器への水素ガスの供給時間の遅れを低減させる水素ステーションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、複数のバンクから構成される蓄圧器ユニットと、蓄圧器ユニットに水素ガスを供給する圧縮機ユニットと、蓄圧器ユニットから水素ガスを動力源とする装置の水素燃料容器に水素ガスを供給する水素ガス供給手段とを備えた水素ステーションであって、各バンクが予め設定した所定圧力よりも圧力が低下した際に、水素ガスを充填すべき状態のバンク(対象バンク)であるか否かを判定する圧力判定手段と、この対象バンクが複数の場合に、各対象バンクのその時点での圧力に基づいて対象バンク毎に満充填までに必要な水素ガス充填量を算出し、これに基づいて対象バンク毎に満充填までに要する時間を求める演算手段と、この演算手段により求めた満充填までの充填時間が最も短い対象バンクを充填バンクに選択し、選択した充填バンクに水素ガスを充填する水素ガス充填制御手段と、を備える水素ステーションである。
【0016】
請求項2に係る発明は、複数のバンクから構成される蓄圧器ユニットと、蓄圧器ユニットに水素ガスを供給する圧縮機ユニットと、蓄圧器ユニットから水素ガスを動力源とする装置の水素燃料容器に水素ガスを供給する水素ガス供給手段とを備えた水素ステーションであって、各バンクが予め設定した所定圧力よりも圧力が低下した際に、水素ガスを充填すべき状態のバンク(対象バンク)であるか否かを判定する圧力判定手段と、各バンクにおいて予め求めておいた圧力と満充填までに要する時間との関係と、この関係に基づき各バンク同士の圧力の比較により満充填までに要する時間の大小を判断する基準とを記憶しておく基準データ記憶手段と、対象バンクが複数の場合に、データ記憶手段に記憶された基準に基づいて最も早く満充填状態にできるバンクを充填バンクに選択し、該充填バンクに水素ガスを充填する水素ガス充填制御手段と、を備える水素ステーションである。
【0017】
請求項3に係る発明は、複数のバンクから構成される蓄圧器ユニットと、蓄圧器ユニットに水素ガスを供給する圧縮機ユニットと、蓄圧器ユニットから水素ガスを動力源とする装置の水素燃料容器に水素ガスを供給する水素ガス供給手段とを備えた水素ステーションであって、各バンクが、予め設定した所定圧力よりも圧力が低下した際に、水素ガスを充填すべき状態のバンク(対象バンク)であるか否かを判定する圧力判定手段と、この対象バンクが複数の場合に、最も早く満充填状態にできるバンクを充填バンクに選択し、該充填バンクに水素ガスを充填する水素ガス充填制御手段と、水素供給先である水素燃料容器への水素供給が完了した状態となったら、又は、最も早く満充填状態にできるバンクが切り替わったと判断されたら、圧縮機ユニットからの水素ガス充填を行う充填バンクを切り替える充填バンク切り替え手段と、を備える水素ステーションである。
【0018】
請求項4に係る発明は、複数のバンクから構成される蓄圧器ユニットと、蓄圧器ユニットに水素ガスを供給する圧縮機ユニットと、蓄圧器ユニットから水素ガスを動力源とする装置の水素燃料容器に水素ガスを供給する水素ガス供給手段とを備えた水素ステーションであって、各バンクが、予め設定した所定圧力よりも圧力が低下した際に、水素ガスを充填すべき状態のバンク(対象バンク)であるか否かを判定する圧力判定手段と、この対象バンクが複数の場合に、水素燃料容器の満充填までに必要な水素ガス量と、各バンクの容量及び水素残圧を考慮し、最も効率よく水素燃料容器に水素ガスの供給を行うことができるバンクを水素燃料容器への水素ガス供給を行う供給バンクとして選定する水素ガス供給手段と、水素ガス供給手段側の情報を受領し、供給バンクから水素燃料容器への水素ガスの供給を行うことにより当該供給バンクの水素残圧が低くなることを想定し、それを考慮した上で最も早く満充填状態とすることができる充填バンクを選択し、該充填バンクに水素ガスを充填する水素ガス充填制御手段と、を備える水素ステーションである。
【0019】
請求項5に係る発明は、複数のバンクには、他のバンクと容量が異なるバンクが少なくとも一つ含まれている水素ステーションである。
【0020】
請求項6に係る発明は、圧縮機ユニットから蓄圧器ユニットに水素ガスを供給するときに、バンクに水素ガス充填を開始してから満充填状態になるまでの時間及び圧力変動を含む水素充填データを記録しておく水素充填データ記録手段と、所定の時点での水素充填データと、水素充填データ記録手段に記録されている水素充填データとを対比して水素ステーションの故障予測又は診断を行う故障予測診断手段と、をさらに備える水素ステーションである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によると、予め設定した所定圧力より圧力が低下したバンクに水素ガスを供給する際に、最も早く満充填状態にできるバンクを選択するようにしているので、最短時間でバンクを満充填状態にして高圧のバンクを維持することができる。また、最短時間で充填可能なバンクの選択にあたり、各対象バンクのその時点での圧力に基づいて対象バンク毎に満充填までに必要な水素ガス充填量を算出し、これに基づいて対象バンク毎に満充填までに要する時間を求め、この充填時間が最も短い対象バンクを充填バンクに選択しているから、バンクの容量に差異があっても最も早く満充填状態にできるバンクを選択して満充填状態にし、高圧のバンクを維持することができる。
【0022】
請求項2に係る発明によると、予め設定した所定圧力より圧力が低下したバンクに水素ガスを供給する際に、最も早く満充填状態にできるバンクを選択するようにしているので、最短時間でバンクを満充填状態にして高圧のバンクを維持することができる。また、最短時間で充填可能なバンクの選択にあたり、圧力と満充填までに要する時間との関係と、この関係に基づき各バンク同士の圧力の比較により満充填までに要する時間の大小を判断する基準とを予め設けておき、この基準に基づいて最も早く満充填状態にできるバンクを選択するので、バンクの容量に差異があっても最も早く満充填状態にできるバンクを簡単に選択して満充填状態にし、高圧のバンクを維持することができる。
【0023】
請求項3に係る発明によると、複数のバンクのうちの一つから所定の水素供給先である例えば、燃料電池自動車(FCV)の水素燃料容器に水素ガスを供給しつつ、複数のバンクのうちの一つのバンクに圧縮機ユニットから水素ガス充填を行うときでも、予め設定した所定圧力より圧力が低下したバンクに水素ガスを供給する際に、最も早く満充填状態にできるバンクを選択するようにしているので、最短時間でバンクを満充填状態にして高圧のバンクを維持することができる。
これにより、複数のバンクから構成される蓄圧器ユニットと、蓄圧器ユニットに水素ガスを供給する圧縮機ユニットと、蓄圧器ユニットから水素ガスを動力源とする装置の水素燃料容器に水素ガスを供給する水素ガス供給手段とを備えた水素ステーションにおいて、複数のバンクのうちの一つから所定の水素供給先である水素燃料容器に水素を供給しつつ、複数のバンクのうちの一つのバンクに圧縮機ユニットから水素ガス充填を行う際に、予め設定した所定圧力より圧力が低下したバンク(対象バンク)に対して圧縮機ユニットから水素ガス充填を行うようにし、この対象バンクが複数の場合には、圧縮機ユニットからの水素ガス充填により最も早く満充填状態にできるバンクを充填バンクに選択し、且つ、水素供給先である水素燃料容器への水素供給が完了した状態となったら、又は、最も早く満充填状態にできるバンクが切り変わったと判断されたら、圧縮機ユニットからの水素ガス充填を行う充填バンクを切り替えるから、最短時間でバンクを満充填状態にして高圧のバンクを維持することができる。
【0024】
請求項4に係る発明によると、水素ガス供給手段側の情報を受領し、水素ガスを供給するバンク(供給バンク)から水素燃料容器への水素ガスの供給を行うことにより当該供給バンクの水素残圧が低くなることを想定し、それを考慮した上で最も早く満充填状態とすることができる充填バンクを選択するので、例えばFCVの水素燃料容器への満充填までに必要な水素ガス量と、各バンクの容量及び水素残圧を考慮し、最も効率よくFCVの水素燃料容器に水素ガスの供給を行うことができるバンクを水素燃料容器への水素ガス供給を行うバンクとして選定するとともに、圧縮機ユニットからの水素ガス充填を行うバンクは、当該水素燃料容器への水素ガスの供給を考慮して最も早く満充填できるものを選択して、水素燃料容器への水素ガス供給の効率向上を図ると共に、例えば2台目以降のFCVの水素燃料容器への水素ガスの供給時間の遅れを低減させることができる。
【0025】
請求項5に係る発明によると、特定のバンクを優先することなく、バンクの容量に差異があっても最も早く満充填状態にできるバンクを選択して満充填状態にし、高圧のバンクを維持することができる。この高圧バンクはある程度水素が充填されて圧力が高くなったFCVに対しても水素を充填できる。そのため、例えば、それ以前の水素供給にて圧力が低下したとはいえ十分な水素量を維持している大容量のバンクによりまず水素供給を行った後に、高圧を維持しているバンクで満充填までにもっていくなど、高圧のバンクと大容量バンクとをうまく組み合わせることにより全体として短時間で水素供給を行うことができる。すなわち、常に高圧のバンクを維持できるようにすることにより、2台目以降のFCVを満充填にするのに有利となるので、効率よく水素ステーションを運営することができる。
【0026】
請求項6に係る発明によると、圧縮機ユニットで蓄圧器ユニットに水素ガス供給するときに、バンクに水素ガス充填を開始してから満充填状態になるまでの時間や圧力変動を記録しておき、水素ステーションパッケージユニット及び水素ステーションの設備の故障予測や診断が可能な構成としたので、バンクに水素ガス充填を開始してから満充填状態になるまでの時間や圧力変動を予め記憶したデータと対比して、水素ステーションパッケージユニット及び水素ステーションの設備の故障予測や診断ができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態における水素ステーションパッケージユニットを使用した簡易型水素ステーションの構成の一例を説明する図面である。
図2図1の本発明における水素ステーションパッケージユニットの構成を模式的に説明する図面である。
図3】本発明の第1の方法における水素ガス充填方法のフローチャートである。
図4】本発明の第2の方法における水素ガス充填方法のフローチャートである。
図5】本発明の実施例における水素ガスの供給のチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明における水素ステーションパッケージユニット及び水素ステーションパッケージユニットを使用した簡易型水素ステーションの構成の一例を示している。図1において、簡易型水素ステーション10は、いわゆるオフサイト方式の簡易型水素ステーションであり、H受入ユニット12と、水素ステーションパッケージユニット13と、ディスペンサーユニット14と、パージ用Nユニット15と、冷凍機ユニット16により構成されている。
【0029】
受入ユニット12は、既存の工業プラント等で大規模に製造され、大型のボンベを束ねたトレーラー、或いはカードルにより水素ステーションに輸送されてきた水素ガスを受領し、水素ステーションパッケージユニット13に供給する。
【0030】
水素ステーションパッケージユニット13は、筐体17内に、圧縮機ユニット18と、蓄圧器ユニット19と、バルブユニット20とをパッケージ化して設けている。圧縮機ユニット18と蓄圧器ユニット19との間はバルブユニット20を介して充填流路21で接続されており、蓄圧器ユニット19とディスペンサーユニット14との間はバルブユニット20を介して供給流路22で接続されている。
【0031】
ディスペンサーユニット(水素ガス供給手段)14は、水素ステーションパッケージユニット13内の蓄圧器ユニット19から供給される高圧水素ガスを流量制御弁(図示せず)により流量制御しながら、充填用ノズル(図示せず)を介してFCV(燃料電池自動車)に水素ガスを供給する。また、ディスペンサーユニット(水素ガス供給手段)14には、FCVに供給する水素ガスを所定温度(例えば、-40℃)に冷却するプレクーラー(熱交換器)(図示せず)を備えている。
【0032】
パージ用Nユニット15は、水素ステーションパッケージユニット13の流路内、バルブ内に残留する水素の他、空気等の不純物を除去するパージ用の窒素(N)ガスを貯蔵し、必要によりH受入ユニット12を介して水素ステーションパッケージユニット13に窒素を供給し、流路内に残留する水素ガス等をパージする。
【0033】
冷凍機ユニット16は、ディスペンサーユニット14のプレクーラーに冷媒を循環供給し、FCVに供給する水素を所定温度に冷却している。
【0034】
次いで、図2により水素ステーションパッケージユニット13の構成を説明する。図2に模式的に示すように、水素ステーションパッケージユニット13は、筐体17内に、圧縮機ユニット18と、蓄圧器ユニット19と、バルブユニット20とをパッケージ化して設けている。
【0035】
この水素ステーションパッケージユニット13においては、外部水素供給源(水素カードル等)からの水素ガスを圧縮機ユニット18にて所定の圧力(例えば、約82MPa)にまで昇圧し、これをバルブユニット20を介して蓄圧器ユニット19内に設けた蓄圧器24a、24b、24c、24dに蓄圧する。蓄圧器24a、24b、24c、24dに蓄圧された水素ガスは、バルブユニット20を通り、ディスペンサー14を介して最終的にFCVに供給される。
なお、「所定圧力」は、各蓄圧器において設定し得る任意の圧力を意味し、満充填状態の圧力を所定圧力として設定してもよい。
【0036】
この水素ステーションパッケージユニット13は、バンク1を蓄圧器24aと蓄圧器24bにより、バンク2を蓄圧器24cにより、バンク3を蓄圧器24dにより構成するスリーバンク構造となっており、バンク1、2、3とFCVの水素タンクとの圧力差により水素ガスの供給を行う、いわゆる差圧充填方式に構成されている。
【0037】
このように、バンク1は2本の蓄圧器から構成されており、バンク2及びバンク3はそれぞれ1本の蓄圧器から構成されている。この蓄圧器は何れも同じ容量を有しているので、バンク1はバンク2及びバンク3に対して2倍の容量となっている。
【0038】
各バンクからFCVへの水素ガスの供給は、ディスペンサー14によりコントロールされ、バンクとFCVの水素タンクの圧力差の関係に応じて適宜水素ガスを供給するバンクを切替え、できるだけ短時間でFCVへの水素ガスの供給が完了するようにコントロールされる。
【0039】
圧縮機ユニット18は、圧縮機(ガスコンプレッサー)25と、遮断弁として機能する自動ボールバルブ26、27と、逆止弁28とを備え、H受入ユニット12から供給される水素ガスを昇圧(圧縮)し、充填流路21を介して蓄圧器ユニット19に充填している。
【0040】
蓄圧器への水素ガスの充填と取出しのため、バンク1には流路31aが、バンク2には流路31bが、バンク3には流路31cが接続されている。なお、バンク1は2本の蓄圧器24a、24bで構成されているため、流路31aは蓄圧器24a、24bの直前で分岐して蓄圧器24a、24bに各々接続されている。
【0041】
バルブユニット20は、圧縮機ユニット18で昇圧した水素ガスの蓄圧器ユニット19内の蓄圧器24a、24b、24c、24dへの充填と、蓄圧器24a、24b、24c、24dに充填した水素ガスの取出しを制御する。このため、バルブユニット20には、分岐流路21が着脱可能な水素ガスの流入口33と、供給流路22が着脱可能な水素ガスの流出口34とを設けるとともに、蓄圧ユニット19の3本の流路31a、31b、31cを着脱可能な水素ガスの出入口35a、35b、35cを設けている。
【0042】
充填流路21は、バルブユニット20内でバンク1に水素ガスを供給する分岐流路21aと、バンク2に水素ガスを供給する分岐流路21bと、バンク3に水素ガスを供給する分岐流路21cに分岐し、分岐流路21aは水素ガスの出入口35aに、分岐流路21bは水素ガスの出入口35bに、分岐流路21cは水素ガスの出入口35cに接続されている。
【0043】
また、蓄圧器ユニット19内の蓄圧器24a、24b、24c、24dからディスペンサーユニット14へ水素ガスを供給するため、バンク1から水素ガスを取出す支流路22a、バンク2から水素ガスを取出す支流路22b、バンク3から水素ガスを取出す支流路22cを設け、支流路22aと水素ガスの出入口35a、支流路22bと水素ガスの出入口35b、支流路22cと水素ガスの出入口35cとを接続するとともに、バルブユニット20内で支流路22a、22b、22cを集合させて供給流路22を構成している。
【0044】
分岐流路21aには自動ボールバルブ37aと逆止弁38aを、分岐流路21bには自動ボールバルブ37bと逆止弁38bを、分岐流路21cには自動ボールバルブ37cと逆止弁38cを設けている。これら自動ボールバルブ37a、37b、37cは、圧縮機ユニット18から蓄圧器ユニット19への水素ガスの供給を開閉する第1バルブである。これにより、圧縮機ユニット18から蓄圧器ユニット19への水素ガスの供給を制御するとともに、水素ガスの逆流を防止している。
【0045】
また、支流路22aには自動ボールバルブ39aと逆止弁40aを、支流路22bには自動ボールバルブ39bと逆止弁40bを、支流路22cには自動ボールバルブ39cと逆止弁40cを設けている。これら自動ボールバルブ39a、39b、39cは、蓄圧器ユニット19から水素ガスの流出口34まで水素ガスの供給を開閉する第2バルブである。これにより、蓄圧器ユニット19から水素ガスの流出口34への水素ガスの供給を制御するとともに、水素ガスの逆流を防止している。
【0046】
また、バンク1の流路31a、バンク2の流路31b、バンク3の流路31cには図示しない圧力計を設け、バンク1、2、3の残圧を計測している。
【0047】
以上のように、水素ステーションパッケージユニット13は構成されており、H受入ユニット12から供給された水素ガスを圧縮機ユニット18で昇圧(圧縮)して蓄圧ユニット19に充填し、必要に応じてディスペンサーユニット14に供給することができる。
【0048】
続いて、本発明の水素ガスの充填方法について説明する。
本発明の水素ステーションパッケージユニットでは、各バンクからFCVへの水素ガスの供給は、ディスペンサーによりコントロールされ、バンクとFCVの水素タンクの圧力差の関係に応じて適宜水素ガスを供給するバンクを切替え、できるだけ短時間でFCVへの水素ガスの供給が完了するようにコントロールされる。
【0049】
一方、圧縮機から各バンクへの水素ガスの供給は、バンクからFCVへの水素ガスの供給とは別にコントロールされる。本発明においては、水素ガスの圧力が一定以下に低下したバンクに対し、圧縮機から水素ガスの充填を行うようにしている。この際、水素ガスの圧力が一定以下に低下しており、水素ガスの充填を行うべきバンク(対象バンク)が複数ある場合には、その時点の圧力から圧縮機による水素ガスの供給を行った場合に、最も短時間で満充填状態にできるバンクを一つ選択するようにしている。
【0050】
具体的には、水素ガスの残圧が一定以下に低下した対象バンクが複数あるときには、最も早く満充填状態にできるバンクを充填バンクに選定して、圧縮機で水素ガスを供給して充填を行うようにしている。
【0051】
この充填バンクを選定する方法には、(1)バンクの水素残圧と容量を考慮して充填時間を計算する方法(第1の方法)と、(2)バンクの水素残圧に基づいて選択するバンクを予めテーブル化しておく方法(第2の方法)の二つがある。以下、これら二つの方法について詳細に説明する。
【0052】
先ず、第1の方法である、バンクの水素残圧と容量を考慮して充填時間を計算する方法について説明する。図3は、第1の方法による水素ガスの充填方法のフローチャートである。
【0053】
水素ガスを充填する充填バンクを選定するには、先ず図示しない圧力計により各バンク(バンク1、バンク2、バンク3)の圧力を測定する(ステップS1)。次に、計測した各バンクの圧力値を図示しない制御部に供給して、所定の圧力よりも低下したバンクが複数あるか判定する(ステップS2)。
【0054】
予め設定した所定の圧力よりも低下したバンクが複数あるときには、各バンクの容積からバンクの満充填状態に必要な水素ガス量を計算する(ステップS3)。次に、計算した満充填状態に必要な水素ガス量に基づき圧縮機ユニットの水素ガス供給能力も考慮して、各バンクの満充填状態に必要な時間を算出する(ステップS4)。そして、各バンクの満充填に必要な時間を比較して、バンクを満充填状態にできる時間が最も短いバンクを、充填バンク(最も早く満充填状態にすることができるバンク)に決定する(ステップS5)。
【0055】
充填バンク(最も早く満充填状態にすることができるバンク)が決定されると、圧縮機ユニット18からバンクに水素ガスを供給するためにバルブユニット20を制御して、充填バンク(最も早く満充填状態にすることができるバンク)に水素ガスの充填を開始する(ステップS6)。圧縮機ユニット18による水素ガス供給は、充填中のバンクが満充填状態になるまで行われる(ステップS7)。バンクが満充填状態になるとバルブユニット20を制御して、選択したバンクの水素ガス供給を停止する。次に、圧縮機ユニット18による水素ガス供給の制御を終了するか判定をする(ステップS8)。制御終了と判定された場合には制御を終了する。また、他の複数のバンクに水素ガスを充填する必要があると判定された場合には、ステップS1に戻りバンク選択のフローを繰り返す。
【0056】
このように、水素残圧が一定以下に低下した対象バンクが複数あるときには、最も早く満充填状態にできるバンクを選択して、圧縮機で水素ガスを供給して、バンクに水素ガスの充填を行うため、複数のバンクを回復する必要があるときには、最短時間でバンクを満充填状態にすることができるとともに、なるべく高圧のバンクを短時間で多く維持することができる。
【0057】
そして、満充填状態までの時間が短いバンクを充填バンクに選定して圧縮機から水素ガスの充填を行うので、単に残圧の高いバンクから水素ガスの充填を行う充填方法に比べ、より高圧のバンクを維持し易いものとなる。特に、複数のバンクの全ての残圧が低下している状態でもFCVへの水素ガスの供給を行う場合などは、圧縮機によるバンクへの水素ガスの供給もシビアな状態となるため、バンクの残圧だけでなく充填容量も考慮してバンクの水素圧の回復を図る充填方法が有効となる。
【0058】
すなわち、差圧充填方式では、FCVに連続して水素ガス供給しなければならない場合や、ブランクの時間が短い場合には、バンクの稼働率を高めておく必要があり、バンクを満充填状態に回復するための時間が短ければ、より多くの高圧バンクで水素ガス供給が可能になり、FCVに水素ガス供給する時間を短縮することができ、かつ、水素ガス供給の待機時間を短縮することができる。
【0059】
なお、圧縮機から水素ガス供給を行うべき対象バンクが複数ある場合に、対象のバンクを選択するタイミングとして、FCVへの水素ガス供給が終了したタイミング以外に、圧縮機から水素ガス供給により1つのバンクが満充填となったタイミング等、任意のタイミングで、圧縮機から水素ガスを供給するバンクを選択してもよい。
【0060】
次に、第2の方法について説明する。この方法では、最も早く満充填状態にできるバンクを選択する基準を予め定めておき、この基準に基づいて、圧力が低下したバンクが複数あるときには、最も早く満充填状態にできるバンクを選択して水素ガスの充填をする。
【0061】
この基準は、各バンクについて圧力と、圧縮機ユニットによる水素ガス供給能力を考慮したバンクを満充填状態までに必要な時間との関係をテーブル化しておき、各バンクの圧力を比較すれば、どのバンクが最も早く満充填状態にすることができるか判断できるようにしておく。基準を予め設定しておくことで、各バンクの圧力を測定するだけで即座に、対象となるバンクを選択することができる。
【0062】
また、この基準は、例えば、バンクを満充填状態にするのに要する時間であってもよく、バンクの容積やピーク時間帯とその他の関係パラメータ等から総合評価した指数により予め設定した基準であってもよい。
【0063】
続けて、第2の方法である、バンクの水素残圧に基づいて選択するバンクを予めテーブル化しておく方法について説明する。図4は、第2の方法による水素ガスの充填方法のフローチャートである。水素ガスを供給するバンクを制御するには、先ず図示しない圧力計により各バンクの圧力を測定する(ステップS21)。次に、計測した各バンクの圧力値を図示しない制御部に供給して、所定の圧力よりも低下したバンクが複数あるか判定する(ステップS22)。
【0064】
予め設定した所定の圧力よりも圧力が低下したバンクが複数あるときには、各バンクの測定圧力に基づく情報を、予め定めておいた基準と対比する(ステップS23)。テーブル化した基準はデータベースに記憶されており、このデータベースの情報を参酌して、判断する基準を決定する。例えば、この判断基準がバンクを満充填にするのに必要な時間であるときは、各バンクの満充填に必要な時間が決定される(ステップS24)。そして、各バンクの基準を対比し(満充填に必要な時間を比較して)、充填バンク(最も早く満充填状態にすることができるバンク)を決定する(ステップS25)。
【0065】
充填バンク(最も早く満充填状態にすることができるバンク)が決定されると、圧縮機ユニット18からバンクに水素ガスを供給するためにバルブユニット20を制御して、充填バンク(最も早く満充填状態にすることができるバンク)に水素ガスの充填を開始する(ステップS26)。圧縮機ユニット18による水素ガス供給は、充填中のバンクが満充填状態になるまで行われる(ステップS27)。バンクが満充填状態になるとバルブユニット20を制御して、選択したバンクの水素ガス供給を停止する。次に、圧縮機ユニット18による水素ガス供給の制御を終了するか判定をする(ステップS28)。制御終了と判定された場合には制御を終了する。また、他の複数のバンクに水素ガスを充填する必要があると判定された場合には、ステップS21に戻りバンク選択のフローを繰り返す。
【0066】
このように、水素残圧が一定以下に低下した対象バンクが複数あるときには、最も早く満充填状態にできるバンクを充填バンクに選択して水素ガスを充填する。
【0067】
なお、データベースの情報はインターネット回線等を介してサバーから判断基準となる情報やバンクの圧力に基づく情報を受信・送信可能な構成としてもよい。また、圧縮機ユニットで蓄圧器ユニットに水素ガス供給するときに、バンクに水素ガス充填を開始してから満充填状態になるまでの時間や圧力変動を記録しておき、水素ステーションパッケージユニット及び水素ステーションの設備の故障予測や診断が可能な構成としてもよい。
【0068】
以下に本発明の実施例を模式図により説明する。図5は、圧縮機からバンクへの水素ガスの供給の一例を示すチャート図である。本例においては、各バンクは82MPaで満充填状態とする。また圧縮機からバンクへの水素ガスの供給は、バンクの残圧が80MPaを下回ったら開始する。なお、各バンクの残圧は、連続的に計測しても、一定時間間隔毎に計測するようにしても良い。
【0069】
なお、バンクの満充填状態での圧力及び圧縮機からバンクへの水素ガスの充填を開始する圧力の条件は、適宜変更可能である。
【0070】
先ず、全てのバンクが満充填状態からFCVに水素ガスの供給を行う。T1の時点では、最も容量の大きいバンク1から1台目のFCVに水素ガスを供給する(破線)。FCVへの水素ガスの供給により、バンク1の水素圧は徐々に低下し、残圧が80MPaを下回った時点で圧縮器からバンク1への水素ガスの供給が開始される(破線)。
【0071】
この段階では、バンク1からFCVに水素ガスが供給されながら、圧縮機からバンク1への水素ガスの充填も行われる。ただし、圧縮機からの水素ガスの供給量は、バンク1からFCVへの水素ガスの供給量に比べると極めて少量であるため、この状態でバンク1の圧力が回復することはなく、バンク1の圧力の低下率が僅かに緩やかになる程度である。
【0072】
バンク1からFCVに水素ガスが供給されると、バンク1の水素圧は低下する一方で、FCVの水素タンクの水素圧は上昇するため、バンク1とFCVの水素タンクとの差圧が徐々に小さくなり、それによってFCVの水素タンクへの水素ガスの供給速度も徐々に遅くなる。
【0073】
そこで、予め定めた条件(例えば、FCVの水素タンクの水素圧、バンクとFCVの水素タンクとの差圧、水素ガスの供給速度等)を下回ったら、FCVの水素タンクへの水素ガスの供給を行うバンクをバンク1からバンク2に切替える(一点鎖線)。これにより、バンクとFCVの水素タンクとの差圧を大きくし、FCVへの水素ガスの供給速度を大きくする。
【0074】
バンク2からFCVへの水素ガスの供給がなされると、バンク2の圧力が徐々に低下して80MPaを下回る。この時点で、バンク2も圧縮機から水素ガスの充填が開始される条件を満たす。本例では、そのままバンク1への水素ガスの充填を継続する。
【0075】
1台目のFCVに対しては、バンク2によるFCVへの水素ガスの供給によりFCVが満充填状態となり、FCVへの水素ガスの供給が完了する。T2の時点で、圧縮機から水素ガスを供給するバンクの見直しを行う。
【0076】
図5に示すように、水素残圧で比較すれば、バンク2よりもバンク1の方が高いものの、圧縮機からの水素ガスの供給を行う対象バンクとしては、バンク2を選択する。
【0077】
このようにバンク2を対象バンクに選択する理由は、この時点では、圧縮機から水素ガスの供給を行うべき対象バンク(水素残圧が80MPaを下回っているバンク)は、バンク1とバンク2の二つであるが、バンク1の容量の方がバンク2の容量よりも大きいところ、満充填状態にできるまでの時間を比較すると、より短時間で満充填状態にすることができるのは、バンク2であると判断できるため、圧縮機から水素ガスを供給する充填バンクには、バンク2を選択する。
【0078】
ここで、「満充填状態までに要する時間」は、各バンクの満充填までに必要な水素ガスの充填量、及び圧縮機によるバンクへの水素ガスの供給能力による。そこで、充填バンクの判断は、例えば、以下の(1)又は(2)により行うことができる。
【0079】
(1)先ず、圧縮機から水素ガスの供給を行うべきバンクの水素圧(残圧)から、そのバンクが満充填状態となるまでに必要な水素ガス量を算出する。次に、その水素ガス量を充填するのに要する時間を圧縮機の水素ガス供給能力から計算する。この算出された時間が短い方の対象バンクを充填バンクに選定する。
【0080】
(2)先ず、各バンクについて、水素圧(残圧)と、圧縮機による水素ガス供給能力に基づき、その水素圧から満充填状態までに要する時間との関係に基づいて、各バンクの水素圧を比較した場合に、どのバンクを充填バンクとして選定するのかの基準を予め求めておく。この基準は、予めパラメータ、或いはテーブル化しておくことで、バンクの水素圧を測定するだけで即座に充填バンクを選択することができる。
【0081】
図5に示す例では、バンク2への水素ガスの供給を行っている間に、T3の時点から2台目のFCVへの水素ガスの供給を行う場合を示す。この場合、先ず、バンク1によりFCVへの水素ガスの供給を行う。この間、圧縮機からバンク2への水素ガスの供給は継続する。次に、バンク1の水素圧の低下に伴い、FCVへの水素ガスの供給をバンク2に切替える。この間も、圧縮機からバンク2への水素ガスの供給を継続する。
【0082】
バンク2の水素圧が低下し、FCVの水素タンクとの圧力差が小さくなれば、さらに、FCVへの水素ガスの供給をバンク2からバンク3に切替える(二点鎖線)。バンク3からFCVへの水素ガスの供給を行っている間も、圧縮機からバンク2への水素ガスの供給は継続する。
バンク3からの水素ガスの供給により2台目のFCVが満充填状態となると、2台目のFCVへの水素ガスの供給は終了する。T4の時点では、圧縮機から水素ガスの充填を行うべき対象バンクは、バンク1、バンク2、バンク3の全てとなる。そこで、バンク1乃至3の残圧をそれぞれ測定し、上述した(1)又は(2)の手法により、圧縮機から水素ガスを充填する充填バンクを選定する。ここでは、バンク3を充填バンクとして選定する。
【0083】
図5に示す例では、全てのバンクが満充填状態となるまでは、バンクからFCVへの水素ガスの供給は行わないものとし、バンク3が満充填状態となった時点で、同様の手法により、次に圧縮機から水素ガスの充填を行う充填バンクとしてバンク2を選定する。バンク2、バンク1の順で満充填状態となったら、圧縮機からバンクへの水素ガスの充填を終了し、3台目以降のFCVに対する水素ガスの供給まで待機する。
【0084】
上述した例は一例であり、FCVの到来頻度やその水素タンクの残圧等の相違により、様々なパターンが考えられる。例えば、1台目のFCVへの水素ガス供給の完了後、全てのバンクが満充填状態となるのに十分な時間がある場合や、2台目のFCVへの水素ガス供給の完了後、全てのバンクが満充填状態となる前に次のFCVへの水素ガスの供給を行う場合がある。何れの場合であっても、上述した手法により圧縮機から水素ガスの供給を行う充填バンクを選定することで、常に、高圧のバンクを維持しておくことができ、FCVへの水素ガスの供給が有利となる。
【0085】
圧縮機から水素ガスの供給を行うべき対象バンクが複数ある場合に、充填バンクを選定するタイミングとしては、例えば、FCVへの水素ガスの供給が終了した時点や、圧縮機からの水素ガスの供給により一つのバンクが満充填状態となった時点等が挙げられる。ただし、これらに限定されることなく、適宜に選定タイミングを設定することができる。
例えば、対象バンクが複数になった時点で充填バンクを選択するようにしてもよい。先の例でいえば、1台目のFCVへの水素ガス供給時に、バンク2の圧力が80MPaを下回ったタイミングがそれに該当し、この時点で、水素ガスを充填するバンクをバンク1からバンク2に切り替えてもよい。また、このタイミングで直ちにバンクの切り替えを行ってもよいが、このタイミング以降、任意の時点で切り替えを行うようにしてもよい。
【0086】
以上は一例であり、対象バンクが複数ある場合に、最も早く満充填状態にできるバンクを選定する技術の範囲内で、他の実施形態とすることもできる。例えば、バンクからFCVへ水素ガスの供給を行う場合、バンクの選択や切替えは、基本的にディスペンサーにて制御する。上述の例においては、全てのバンクが満充填状態でFCVに水素ガスを供給する場合、通常、最も容量の大きいバンク1から水素ガスの供給がなされ、必要に応じてバンク2やバンク3に切替えられる。仮に、各バンクが満充填状態からそれぞれ残圧が減った状態でFCVへの水素ガスの供給を行う場合、FCVの満充填までに必要な水素ガス量と、各バンクの容量及び水素残圧を考慮し、最も効率良く水素ガスの供給を行うようにバンクを選定することができる。
【0087】
例えば、FCVへの水素ガスの供給は、FCVの水素残圧と差圧が大きいバンクにて行うことが有利であるが、相対的に水素残圧が低いバンクであっても、バンク容量が大きく、同じ時間で多くの水素ガスの供給が可能である場合には、そのバンクを選択する場合もある。
【0088】
上述のような場合において、FCVへの水素ガスの供給を行う際のディスペンサーによるバンクの選択も考慮して、圧縮機から水素ガスの充填を行う充填バンクを選定することもできる。すなわち、上述の例において、バンク1が最も早く満充填状態とすることができる状態であったとしても、例えば、FCVへの水素ガスの供給の効率を考慮して、先ずバンク1から水素ガスの供給を行うことでバンク1の水素残圧が低くなることが想定される場合、バンク1以外のバンクを充填バンクに選定することも可能である。このように、ディスペンサー側の情報を受領しそれと連携してバンクへの水素ガス充填を制御することで、一層効率よく高圧バンクを維持することが可能となる場合がある。
【0089】
以上説明したように、本発明の充填方法では、圧縮機から水素ガスを充填すべき充填バンクの選定にあたり、バンクの残圧ではなく、バンクを満充填状態にするまでの時間の長短により選定している。そして、その具体的な手法として、(1)バンクの水素残圧と容量を考慮して充填時間を計算する手法と、(2)バンクの水素残圧に基づいて選択するバンクを予めテーブル化しておく手法を提案した。
【0090】
そして、本発明によれば、満充填状態までの時間が短いバンクを充填バンクに選定して圧縮機から水素ガスの充填を行うので、単に残圧の高いバンクから水素ガスの充填を行う充填方法に比べ、より高圧のバンクを維持し易いものとなる。特に、複数のバンクの全ての残圧が低下している状態でもFCVへの水素ガスの供給を行う場合などは、圧縮機によるバンクへの水素ガスの供給もシビアな状態となるため、バンクの残圧だけでなく充填容量も考慮してバンクの水素圧の回復を図る充填方法が有効となる。
【符号の説明】
【0091】
10 簡易型水素ステーション
14 ディスペンサーユニット(水素ガス供給手段)
18 圧縮機ユニット
19 蓄圧器ユニット
20 バルブユニット
図1
図2
図3
図4
図5