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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ヘアドライヤ
(51)【国際特許分類】
   A45D 20/12 20060101AFI20231218BHJP
   A45D 20/10 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A45D20/12 B
A45D20/10 101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023092379
(22)【出願日】2023-06-05
(62)【分割の表示】P 2022021227の分割
【原出願日】2022-02-15
(65)【公開番号】P2023118707
(43)【公開日】2023-08-25
【審査請求日】2023-06-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000126676
【氏名又は名称】株式会社アデランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 龍一
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/090155(WO,A1)
【文献】特開2003-153731(JP,A)
【文献】特開2012-010863(JP,A)
【文献】特表2023-501790(JP,A)
【文献】特開昭53-143454(JP,A)
【文献】特開2006-181297(JP,A)
【文献】実開昭61-086102(JP,U)
【文献】特開2006-181265(JP,A)
【文献】実開昭61-010107(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 20/12
A45D 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口(3)と、吹出口(2)とを有する本体(6)と、
本体(6)内に設けられる送風装置(8a)と、
前記本体(6)に対して前記送風装置(8a)による空気の送風方向に交差する方向側に突出するように該本体(6)に設けられるハンドル(7)と、を備えたヘアドライヤであって、
前記本体(6)の吸気口(3)には、
前記送風装置(8a)に対して前記空気の送風方向に沿った上流側に相当する位置に一定以上の大きさの異物の進行を阻止可能に多数の孔を設けて構成された主フィルタ部(21)と、筒状の胴部(22)とを有するフィルタ(14)と、
前記主フィルタ部(21)より外側にて前記主フィルタ部(21)の孔より大きな孔が形成されたカバー(4)とが設けられ、
前記主フィルタ部(21)は、多数の孔が格子状又は網目状に設けられた平板状の金属部品(23)を用いて構成され、前記胴部(22)に対しては前記カバー(4)が位置する一端側にて前記胴部(22)の一端面を覆うようにして設けられ、前記空気の送風方向に対しては前記ハンドル(7)が設けられる方向側に面方向が向くように傾斜した傾斜面により構成され、
前記胴部(22)には、空気を通過可能とする副フィルタ部(25)が設けられ、
前記副フィルタ部(25)に対して外側に重なる位置には、前記副フィルタ部(25)に向けて空気を流入させることが可能に貫通した複数の横穴(16)が前記本体(6)に設けられ、
前記横穴(16)とは別に、外観上は穴が設けられているものの内面まで連通しない疑似的な横穴(16a)が、一部の前記横穴(16)に並んで設けられ、
前記横穴(16)よりも大きな孔が、前記吸気口(3)の吸い込み側、かつ前記主フィルタ部(21)の外側に重なる位置に設けられて構成されていることを特徴とするヘアドライヤ。
【請求項2】
前記フィルタ(14)と前記カバー(4)とが前記本体(6)から着脱自在に構成され、嵌め込み固定された前記カバー(4)を前記本体(6)から取り外すことにより前記フィルタ(14)の清掃が可能であり、ネジにより固定された前記フィルタ(14)を前記本体(6)から取り外すことにより前記フィルタ(14)の清掃や交換が可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘアドライヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気口の異物を好適に除去することができるヘアドライヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘアドライヤとして、本体内に配置される送風装置のファンが、吸気口から吹出口までの空気の流れを生成するものが知られている。また吸気口に付着したホコリ等の異物を除去することができるフィルタを備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-111226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、吸気口の異物を除去するためのフィルタの構造について、改良の余地がある可能性があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、吸気口の異物を好適に除去することが可能なヘアドライヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のヘアドライヤ(1)は、
吸気口(3)と、吹出口(2)とを有する本体(6)と、
本体(6)内に設けられる送風装置(8a)と、
前記本体(6)に対して前記送風装置(8a)による空気の送風方向に交差する方向側に突出するように該本体(6)に設けられるハンドル(7)と、を備えたヘアドライヤであって、
前記本体(6)の吸気口(3)には、
前記送風装置(8a)に対して前記空気の送風方向に沿った上流側に相当する位置に一定以上の大きさの異物の進行を阻止可能に多数の孔を設けて構成された主フィルタ部(21)と、筒状の胴部(22)とを有するフィルタ(14)と、
前記主フィルタ部(21)より外側にて前記主フィルタ部(21)の孔より大きな孔が形成されたカバー(4)とが設けられ、
前記主フィルタ部(21)は、多数の孔が格子状又は網目状に設けられた平板状の金属部品(23)を用いて構成され、前記胴部(22)に対しては前記カバー(4)が位置する一端側にて前記胴部(22)の一端面を覆うようにして設けられ、前記空気の送風方向に対しては前記ハンドル(7)が設けられる方向側に面方向が向くように傾斜した傾斜面により構成され、
前記胴部(22)には、空気を通過可能とする副フィルタ部(25)が設けられ、
前記副フィルタ部(25)に対して外側に重なる位置には、前記副フィルタ部(25)に向けて空気を流入させることが可能に貫通した複数の横穴(16)が前記本体(6)に設けられ、
前記横穴(16)とは別に、外観上は穴が設けられているものの内面まで連通しない疑似的な横穴(16a)が、一部の前記横穴(16)に並んで設けられ、
前記横穴(16)よりも大きな孔が、前記吸気口(3)の吸い込み側、かつ前記主フィルタ部(21)の外側に重なる位置に設けられて構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載のヘアドライヤ(1)は、請求項1に記載のヘアドライヤ(1)において、前記フィルタ(14)と前記カバー(4)とが前記本体(6)から着脱自在に構成され、嵌め込み固定された前記カバー(4)を前記本体(6)から取り外すことにより前記フィルタ(14)の清掃が可能であり、ネジにより固定された前記フィルタ(14)前記本体(6)から取り外すことにより前記フィルタ(14)の清掃や交換が可能に構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸気口の異物を好適に除去することが可能なヘアドライヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のヘアドライヤを示す正面図であり、(a)は使用形態、(b)は収納形態を示している。
図2】(a)は本発明のヘアドライヤの内部構造を示す断面図、(b)は吸気口側から見たヘアドライヤの右側面図、(c)はカバーを取り外した状態を示すヘアドライヤの右側面図である。
図3】フィルタの構成を示した図であり、(a)は正面図、(b)は斜視図、(c)は分解斜視図である。
図4】正面側から見たヘアドライヤの空気の流れを示した図であり、(a)は使用状態、(b)は逆噴射状態である。
図5】上面側から見たヘアドライヤの空気の流れを示した図であり、(a)は使用状態、(b)は逆噴射状態である。
図6】ヘアドライヤの電気的な構成を示すブロック図である。
図7】ヘアドライヤの制御の一例を示すフローチャートである。
図8】実施例2に係るヘアドライヤの電気的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のヘアドライヤ1は、使用状態では吹出口2から空気が吐出され、終了操作が実施された場合の一部において空気の送風方向を吸気口3の側から空気が吐出される逆噴射状態を経由してから送風装置8aの動作を終了する制御を実行可能に構成されている。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
<ヘアドライヤ1の全体構成>
図1は本発明のヘアドライヤ1を示す正面図であり、図1(a)は使用形態を示し、図1(b)は収納形態を示している。また、図2(a)は本発明のヘアドライヤ1の内部構造を示す断面図、図2(b)は吸気口3側から見たヘアドライヤ1の右側面図、(c)はカバー4を取り外した状態を示すヘアドライヤ1の右側面図である。なお、図1(a)には、送風操作部5aの側からハンドル7を見た矢視VAを併せて図示している。
【0013】
本発明のヘアドライヤ1は、吸気口3と吹出口2とを有する本体6と、本体6に対して下方側に突出するハンドル7とを備えている。ヘアドライヤ1の使用時における空気の送風方向S1は、本体6における吸気口3が設けられる側(図1(a)の右側)から吹出口2が設けられる側(図1(a)の左側)への直線的な方向に設定されている。
【0014】
図2(a)に示すように、本体6の内部には、送風装置8aを有する送風温熱ユニット8が設けられている。ヘアドライヤ1が使用状態になると、送風装置8aにより吸気口3から空気が本体6の内部に吸い込まれ、送風温熱ユニット8に内蔵されるヒータ装置8bを経由することで空気が暖められてから、吹出口2から空気が吐出される。
【0015】
ハンドル7には、ヘアドライヤ1を動作させる複数の操作部5が配置されている。具体的には、送風装置8aを作動させる送風操作部5aと、温度調節操作部5bと、風量調節操作部5c、冷風操作部5dとが設けられた場合を例示している。送風操作部5aは、ハンドル7に対して、上下の操作位置にスライド移動可能で、上方側に移動すると開始操作となってヘアドライヤ1の電源オンとなり、初期設定された温度による暖かい風が吹出口2から吐出される。一方、送風操作部5aが下方側に移動されると、使用状態の終了操作となって送風が停止される。送風操作部5aは、ヘアドライヤ1の電源を直接的にオンオフする機械的なものでなく、送風操作部5aに対する終了操作の後でも送風装置8aは動
作可能に構成される。送風操作部5aには送風スイッチが内蔵されており、送風スイッチの状態に基づいて制御部9により送風装置8aの動作が制御される。
【0016】
なお、開始操作及び終了操作は、上記に限らず、押しボタン式の操作部に対しての操作など、他の操作であってもよく、操作部の数も、上記に限らず、更に多く設けられてもよいし、逆に一部を省略してもよい。
【0017】
本体6は、吸気口3と吹出口2との間を連通させる筒状に形成されている。また、本体6は、空気の送風方向S1に沿った方向側の全長L1が本体6の筒状部分の上下幅L2よりも3倍以上の長さに設定されている。本体6の筒状部分の横幅L3(図2(b)参照)に対しても、全長L1は3倍以上に設定されている。これにより、スリムなヘアドライヤ1の外観を実現している。
【0018】
また、本体6の上下幅L2は、ハンドル7の太さ幅L4に対して大きすぎず、略2倍以下に設定され、これによっても、使用者にスリムな印象を与えやすくしている。また、本体6において、上下幅L2の方が横幅L3よりも短い設定とされ、これにより、使用者側から見てスリムな印象を与えつつ、本体6の内部に送風温熱ユニット8等を配置する領域を確保し易くしている。
【0019】
ハンドル7は、図1(a)に示す使用形態においては、本体6の吸込口に近い部分から下方側に連続して配置される。本体6には、ハンドル7が設けられる側に突出する連結部11が設けられ、ハンドル7が、本体6の連結部11の先端部分(下端部)に対して回動軸Rを中心に回動可能に接続される。使用者がハンドル7を回動させると、図1(a)に示す使用形態からハンドル7が回動軸Rを中心にして、ねじられるように回動すると(図1(a)の矢印T方向)、図1(b)に示すように、本体6とハンドル7とが近づいて配置された収納形態までハンドル7を回動することができる。
【0020】
本体6とハンドル7との接続部12の外観は、図1(a)に示すように、空気の送風方向S1を左右方向とし、本体6に対してハンドル7が鉛直下方側に位置した方向視において、直線状に形成されている。この直線状の部分は、図2(a)に示すように、本体6の連結部11の先端部分と、ハンドル7の上端部分とが互いに仮想平面Pで切断した平面部分で対面する形状にして接続部分(合わせ面)が構成されている。このため、使用形態においてヘアドライヤ1を視認した場合における接続部12の外観は合わせ面が直線的で短くスッキリしたものとなるし、曲面で接続するよりも接続部12の合わせ面と外周形状とを本体6とハンドル7とで一致させやすいために隙間を少なく設定し易くして美観を高めることができる。
【0021】
接続部12においては、図1(a)に示す方向視において直線状に視認可能な部分を含む仮想平面Pに直交する方向に、回動軸Rが位置している。接続部12は、本体6の連結部11と、ハンドル7とのいずれにおいても、対面する部分の外周部分が回動軸Rを中心とした略円形で略同一の外径に形成され、これにより、回動操作の前後でも回動途中でも、接続部分の外形が変化しないために見栄えの良い外観を実現し、また、操作中において接続部12に起伏した部分が形成されることがないために本体6とハンドル7との一体感を実現している。
【0022】
回動軸Rは、図1(a)に示すように、本体6の側が吸気口3に近い側に位置し、ハンドル7の側が吹出口2の側に位置するように設定されている。ハンドル7は、使用形態において、回動軸Rより下方側に向けて連続している。図2(a)には、回動機構の一例を示し、ハンドル7の側から本体6の連結部11の内側に突出した突出軸13に、先端側より一回り小さな溝状部分が形成され、その溝状部分に本体6の連結部11の先端部分が入
り込んで接続されることにより、本体6にハンドル7が回動可能な構成を例示している。
【0023】
ヘアドライヤ1が、回動軸Rを中心とした回動をすることで、本体6に対しての各操作部5の向きは反転する。具体的には、使用形態においては、図1(a)に示すように、ハンドル7における空気の送風方向S1の側に位置していた送風操作部5a及び冷風操作部5dは、収納形態においては、図1(b)に示すように、本体6から遠い側に移動することとなる。これにより、使用形態では、引き金を引くような指先による押しボタンの操作や、指先の上下移動によるスライド操作によって、冷風操作部5dや送風操作部5aを操作可能とし、且つ、収納形態であっても、送風操作部5aなどを、ヘアドライヤ1の外側から容易に操作可能とすることができる。ここで、ヘアドライヤ1は、細長いスリムな形状であるので、収納形態にしたヘアドライヤ1でも把持し易い。このため、収納形態でも、使用形態と同様に、送風操作部5aを含む各操作部5の操作に基づいて送風装置8a及びヒータ装置8bを動作可能とすることにより、ヘアドライヤ1の使用方法を多様化することができる。
【0024】
ハンドル7には、各操作部5に接続されて送風温熱ユニット8の動作を制御する制御部9が設けられている。制御部9は、プリント基板上にワンチップのマイクロプロセッサユニット(MPU)を含む複数の素子を配置して構成されている。制御部9は、使用形態では吹出口2から空気を吐出し、終了操作が実施された場合の一部において逆噴射状態によって吸気口3の側から空気を吐出する制御を実行する。制御部9の構成については、図5以降を参照して後述する。
【0025】
<吸気口3の構成>
次に、吸気口3の具体的な構成について、図2に加えて図3を参照して説明する。図3は、フィルタ14の構成を示した図であり、図3(a)は正面図、図3(b)は斜視図、図3(c)は分解斜視図である。
【0026】
吸気口3には、空気を通過可能な複数の孔を有するカバー4と、カバー4よりも小さな孔が設けられたフィルタ14とが取り付けられている。カバー4とフィルタ14は、本体6に対して着脱自在に固定され、例えば、カバー4は、本体6に対して嵌め込み固定され、フィルタ14は図示しないネジにより固定されている。カバー4とフィルタ14は、いずれも使用者が取り外して清掃や交換などのメンテナンスをすることができ、また、カバー4はフィルタ14よりも簡易に取り外し可能に構成されていて頻繁な清掃を容易に実施可能としている。
【0027】
カバー4は、大きめの異物の進入を阻止する機能を有し、長い髪の毛などはカバー4によってヘアドライヤ1の内部への進行が阻止される。カバー4を通過したホコリや短い毛などは、フィルタ14によってヘアドライヤ1の内部への進行が阻止される。
【0028】
カバー4は、図2(b)に示すように、空気の送風方向S1に沿った方向視において、横長の楕円形状を複数組み合わせて構成されている。具体的には、小さな楕円状の環状部15が内側に位置し、その環状部15の周囲に隙間を設けて囲うように、大きな楕円状の環状部15が順に組み合わされてカバー4が形成されている。各環状部15は、区画部15aにより連結されている。これら環状部15と区画部15aとによって形成された隙間部分が空気の通過孔となって、ヘアドライヤ1の内部に空気が進入する。区画部15aの数は、小さな環状部15を接続する数(例えば、4つ)より、大きな環状部15を接続する数(例えば、6つ)の方が多く設定され、カバー4に設けられる空気の通過孔のサイズ差を小さくしている。
【0029】
なお、カバー4の外形形状は、吸気口3の形状に合致するように横長の楕円形状である
場合について例示しているが、カバー4及び吸気口3の形状は、楕円形状に限らず、円形状、長円形状、略矩形の形状により構成してもよく、各環状部15についても、カバー4の外形形状に合わせた円形状や長円形状にしてもよい。また、カバー4の孔形状は、必ずしも環状部15の隙間部分の形状によって構成する必要はなく、他の形状(例えば、格子状や網目状)にしてもよい。
【0030】
環状部15は、図2(a)に示すように、正面側から見た断面視において、上側の部分が空気の送風方向S1に沿った上流側(図2(a)の右側)に位置し、下側の部分が上側よりも空気の送風方向S1に沿った下流側(図2(a)の左側)に位置するように配置されている。各環状部15の下側部分(下部15b)は、図2(a)に示すように、各環状部15の上側部分(上部15c)に対して空気の送風方向S1においてズレて配置され、環状部15の中でも、最小の環状部15を除いた3つの環状部15の下側部分に対して、鉛直上方側に、フィルタ14(主フィルタ部21)の表面が位置している。
【0031】
フィルタ14は、図3(c)に示すように、多数の孔が格子状又は網目状に設けられた3つの板状の金属部品23が、樹脂製の基体24に貼り付けられて構成される。図3(a)及び図3(b)に示すように、筒状に形成された胴部22に対してカバー4が位置する一端側(図3(a)の右側)は、斜め下側を表面が向くように傾斜した傾斜面が金属部品23により形成される。
【0032】
フィルタ14は、図2(a)に示すように、胴部22の連続する方向を空気の送風方向S1と一致するようにして本体6の内部に取り付けられている。また、フィルタ14は、カバー4が設けられる側に開口する部分を塞ぐ平板状の金属部品23により、傾斜面の向く面方向が斜め下側となるようにして、本体6に取り付けられている。
【0033】
フィルタ14の胴部22は、図3(b)及び図3(c)に示すように、基体24に設けられた開口部分を塞ぐように、湾曲した金属部品23を水平方向における両側(正面側及び背面側)に取り付けて構成されている。以下においては、フィルタ14の一部として、胴部22の一端面を覆いつつ傾斜面を構成して空気を通過可能とする部分を主フィルタ部21とし、胴部22の一部を構成して空気を通過可能とする部分を副フィルタ部25として説明する。
【0034】
主フィルタ部21に対して空気の送風方向S1における上流側には、カバー4が位置している。カバー4に設けられる孔は、主フィルタ部21の孔の大きさよりかなり大きく(例えば、5倍以上の内径を有する大きさにして)形成されている。また、副フィルタ部25に対して本体6が重なる外面部分には、図1に示すように、副フィルタ部25に連通する横穴16が複数形成されている。横穴16は、吸気口3とは別に空気が本体6の内部に通過可能に設けられている。ここで、フィルタ14の胴部22が空気の送風方向S1に沿って連続した形状であるので、主フィルタ部21と比べると、横穴16を通じた副フィルタ部25への空気の通過量は少なく設定されている。なお、横穴16及び副フィルタ部25の説明については、図5を参照して後述する。
【0035】
フィルタ14に対して、空気の送風方向S1の下流側には、図2(a)に示すように、送風温熱ユニット8が設けられている。送風温熱ユニット8には、送風装置8aの一部として複数の羽根を有するファン17が回転可能に設けられている。送風装置8aのファン17の外径は、フィルタ14と送風装置8aとの間に位置する壁部18の孔19の内径より僅かに小さく、孔19の近くにファン17が設けられている。孔19は、図2(c)に示すように、円形状に形成され、ファン17が空気の送風方向S1に向けて空気を進行させる方向(正方向)に回転することで、孔19の内側を通じて空気が送風温熱ユニット8の内部に進入し、ヒータ装置8bにより暖められた温風となって吹出口2へ向けて進行す
る。また、正方向とは逆の方向にファン17が回転することで、空気の送風方向S1とは逆の向きに空気を進行させることができ、吸気口3から空気を吐出させることができる。なお、図2(c)においては、理解の容易のために、主フィルタ部21を構成する金属部品23を省略している。
【0036】
ファン17及び壁部18の孔19の大きさと、主フィルタ部21の大きさとの関係については、ファン17の外径の範囲内、又は、壁部18の孔19の内径の範囲内に対して空気の送風方向S1に沿った全範囲を含むように、主フィルタ部21の大きさが設定されている。図3(c)に示すように、フィルタ14の胴部22が壁部18の孔19の周囲を囲う大きさに設定され、主フィルタ部21がファン17の外径及び壁部18の孔19より大きく設定されている。これにより、送風装置8aへの空気の流れを容易にし、且つ、主フィルタ部21によって送風装置8aへ向けて直線的に進行する空気に混入した異物を広い範囲で効率良く除去することができる。
【0037】
<逆噴射状態による異物除去>
次に、逆噴射状態を利用した異物除去について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、正面側から見たヘアドライヤ1の空気の流れを示した図であり、図4(a)は使用状態、図4(b)は逆噴射状態である。図5は、上面側から見たヘアドライヤ1の空気の流れを示した図であり、図5(a)は使用状態、図5(b)は逆噴射状態である。
【0038】
図4(a)に示すように、ヘアドライヤ1を正面側から見た状態では、主フィルタ部21は、空気の送風方向S1に対して斜め下側(すなわち、ハンドル7が設けられる方向側)に面方向が向くよう傾斜した傾斜面を構成している。ヘアドライヤ1が使用状態となって送風装置8aに進入するように送風方向S1に沿って空気が進行した場合、空気の中に混在したホコリ等の異物Bは、カバー4の内部へは進入し易いものの、主フィルタ部21によって進行を阻止される。そして、送風が停止されると、送風方向S1へと異物Bを進行させる力は無くなるので、異物Bの自重により下方側へと異物Bが落下し易い。このとき、主フィルタ部21の鉛直下方側に、カバー4における環状部15の一部(下部15b)が位置するので、環状部15に異物Bが支持され易い。このため、送風停止をした際に、ヘアドライヤ1の吸気口3から異物Bが落下する事態を少なくすることができる。
【0039】
また、主フィルタ部21は、空気の送風方向S1に対して傾斜して設けられているので、空気の送風方向S1に直交してフィルタ面を設ける場合と比べて異物Bが主フィルタ部21の表面に接触可能となる面積が大きくなる。このため、異物Bが主フィルタ部21に接触する圧力を抑えて異物Bが孔内に入り込み難くなり、その分、空気の送風が停止された際に、主フィルタ部21から異物Bが離れて落下し易くすることができる。
【0040】
また、異物Bが接触する主フィルタ部21の表面が斜め下側を向く配置となっているので、ヘアドライヤ1を収納する場合等において、主フィルタ部21を使用者が視認し難い。このため、主フィルタ部21に異物Bが付着していることが気になり難く、ヘアドライヤ1の外観としては綺麗な状態を維持し易くすることができる。
【0041】
ここで、空気の送風方向S1と、主フィルタ部21の面方向との相対角度Aは、本実施例では、略37度としている。この相対角度Aとしては、略20度以上に設定することがよく、略30度以上とすることが好ましく、略35度以上とすることが好適である。
【0042】
また、環状部15の断面形状としては、図4(a)に示すように、空気の送風方向S1が長手方向となるように、送風方向S1において一定の断面長さを有する断面形状に形成されることが好ましく、環状部15の厚みに対して断面長さが2倍以上とする部位を有する環状部15を含むことが好ましく、3倍以上の部位を有する構成とすることが好適であ
る。また、環状部15の隙間幅と比較しても、送風方向S1に沿った環状部15の断面長さを長く設定することが好ましい。これにより、カバー4に支持された異物Bが外観からは視認し難くなり、カバー4への異物Bの付着によりヘアドライヤ1の美観を損ねる事態を抑制することができる。
【0043】
図4(b)に示すように、逆噴射状態になると、送風装置8aの側からフィルタ14に向けた逆方向S2に空気が進行する。これにより、フィルタ14(主フィルタ部21)に付着していたり、カバー4に支持されていた異物Bが環状部15の孔を通じて外側へと吐出されることとなり、フィルタ14及びカバー4の内側部分を清掃することができる。
【0044】
ここで、上記したように、主フィルタ部21は、空気の送風方向S1に対して傾斜して配置されることで異物Bを捕獲し易く、また、環状部15を有するカバー4を取り付けたことで、異物Bが主フィルタ部21に付着しても外観上の美観は維持し易い。このため、逆噴射状態の制御は、頻繁に実行する必要がなく、一定量の異物Bが主フィルタ部21に付着するような複数回の使用後等、低い頻度で逆噴射状態を実行しても機能の低下が少なく、綺麗な外観を維持してヘアドライヤ1を利用可能とすることができる。
【0045】
図5(a)及び図5(b)には、ヘアドライヤ1が使用状態となっている場合に、主フィルタ部21だけでなく、副フィルタ部25と横穴16とを通じて、空気が本体6の内側と外側とを往来する状況を示している。横穴16は、図1(a)に示すように、ヘアドライヤ1の本体6の正面側に設けられ、また、背面側にも設けられている。これにより、逆噴射状態となった場合に、使用者の側へ僅かに空気を送風し、逆噴射状態となっていることによりヘアドライヤ1が動作中であることを使用者が識別し易い。すなわち、送風操作部5aを送風停止とするスライド操作をした後のヘアドライヤ1の動作が、逆噴射状態であることを、吸気口3の側だけでなく、ヘアドライヤ1の周りの広範囲において認識することができる。また、副フィルタ部25は、空気の送風方向S1に沿って連続するようにして配置されているため、ヘアドライヤ1の正面側及び背面側には、僅かな強さの送風とすることができる。このため、異物が使用者に向けて勢いよく進行してしまう事象は発生し難く、吸気口3の側には空気を多く通過させて効率良く異物Bを除去することができる。
【0046】
ここで、横穴16は、フィルタ14が設けられる内面まで貫通した横穴16以外に、外観上は穴が設けられているものの、内面まで連通しない疑似的な横穴16aが設けられている。これにより、図1に示すように、本体6のスリムな外観に対応した横穴16を配置し易くすることができ、本体6の美観を一層高めることができる。
【0047】
なお、図1には、横穴16を模式的に大きく表示したが、2mm以下の大きさ(内径)とすることが好ましく、1mm以下とすることが好適である。フィルタ14に設けられる金属部品23の孔径(または孔面積)は、横穴16より小さくすることがよく、横穴16の大きさの半分以下の径(又は面積)とすることが好適である。カバー4の穴の大きさは、内外の環状部15の間の隙間幅を2mm程度とし、金属部品23及び横穴16の孔径(または孔面積)よりも大きく設定することが好ましい。
【0048】
また、副フィルタ部25と横穴16は、ヘアドライヤ1の正面側と背面側にのみ設けられて、上方側には設けられていない。副フィルタ部25が上方側に設けられて横穴16が上方側にまで連続する場合には、上方側の異物を上昇させる程度の力が必要となって、その分、逆噴射状態では使用者側に強い風が進行して使用者が不快に感じてしまう可能性がある。これに対して、本体6の上方側に穴を設けない設定とすることで本体6の上側に異物が付着し難くなって綺麗な外観を維持可能とし、且つ、逆噴射状態での横穴16からの送風は僅かな強さにして使用者に逆噴射状態であることを好適に示唆することができる。
【0049】
<制御部9の構成>
次に、図6及び図7を参照して、制御部9の構成について説明する。図6はヘアドライヤ1の電気的な構成を示すブロック図であり、図7はヘアドライヤ1の制御の一例を示すフローチャートである。制御部9は、終了操作が実施された場合の一部として、一定時間以上の使用状態が累積された場合において逆噴射状態を経由してから送風装置8aの動作を終了する制御を実行する。
【0050】
制御部9は、中央演算処理装置を含む1チップのMPUが実装された制御基板により構成され、累積時間を計測可能とするためのタイマと、記憶装置としてのROM及びRAMを備えている。ROMには制御プログラムが記憶され、送風装置8aの動作を制御する送風制御処理や、ヒータ装置8bの動作を制御するヒータ制御処理等が制御プログラムの一部として記憶されている。RAMには、プログラムを実施するために必要な情報が一時的に記憶され、送風制御処理の実施に必要な各種カウンタの値が記憶される。また、RAMは、外部電源とヘアドライヤ1とがコンセントで接続されていない電源オフの状態でも記憶内容を維持可能なフラッシュメモリ等により構成される。制御部9は、各操作部5と、外部電源と、送風温熱ユニット8とに電気的に接続され、各操作部5に対しての操作を、各操作部5に対して設けられるスイッチによって検出し、その検出結果に基づいて、送風温熱ユニット8を構成する送風装置8aとヒータ装置8bを制御してヘアドライヤ1を動作させる。
【0051】
送風制御処理は、送風操作部5aに対する終了操作を契機として、使用状態から逆噴射状態を実行しないで送風装置8aの動作を停止する場合と、逆噴射状態を経由して送風装置8aの動作を停止する場合とを実行可能とする処理である。送風制御処理は、例えば、タイマを用いた割り込み処理として実行される一定時間(例えば、10ms)毎の定期処理の一部として実行される。
【0052】
送風制御処理では、まず、正常状態中であるかを判定し(S11)、正常状態中でなければ(S11:N)、異常対応処理を実施してから(S12)、送風制御処理を終了する。異常対応処理としては、ヒータ装置8bが異常に高温となった場合や、吸気口3からの空気の流入が異常に少ない状態が一定時間以上(例えば、2秒以上)継続した場合における緊急停止の処理や、一定時間(例えば、30分以上)以上、送風操作部5aのオン状態が継続した場合に消し忘れ機能として送風装置8aの動作を停止して電源オフの設定をする処理等が例示される。
【0053】
S11の処理で正常状態であると判定された場合(S11:Y)、送風操作部5aに内蔵された送風スイッチがオンであるかを判定する(S21)。送風スイッチがオンであれば(S21:Y)、ファン17を正方向に回転させて使用状態とし(S22)、累積回転時間カウンタを更新する(S23)。累積回転時間カウンタは、タイマの出力時間間隔に対応してファン17が正方向に回転した時間を計時するように、例えば、カウントアップして更新される。S23の処理後には、その他の処理(S24)を実施して、送風制御処理を終了する。その他の処理(S24)としては、例えば、消し忘れ防止機能を発揮させるためのカウンタの更新処理が例示される。
【0054】
S21の処理において、送風スイッチがオフであると判定された場合には(S21:N)、送風スイッチがオフされたタイミングであるか判定する(S31)。送風スイッチがオフされたタイミングであれば(S31:Y)、ファン17の回転を停止し(S32)、累積回転時間が逆噴射状態を実行する時間(逆噴射実行時間、例えば、1時間)に達したかを累積回転時間カウンタの値から判定する(S33)。累積回転時間が1時間以上に達していないと判定された場合(S33:N)、通常終了制御として電源オフの設定をして
から(S65)、S24の処理へ移行する。
【0055】
一方、S33の処理において累積回転時間が1時間以上に達していたと判定された場合(S33:Y)、インターバル時間を計測するインターバルカウンタに一定のインターバル時間(例えば、2秒)に対応する値を入力し(S34)、逆噴射状態を経由してから送風装置8aの動作を停止する逆噴射終了制御(S42からS64の各処理)を実行可能とする。
【0056】
S31の処理において、送風スイッチがオフされたタイミングでないと判定された場合(S31:N)、逆噴射状態を発生させる逆噴射終了制御の実行中であるか判定し(S41)、逆噴射終了制御の実行中でなければ(S41:N)、S24の処理へ移行する。逆噴射状態を発生させる場合には、インターバルカウンタと逆回転時間カウンタとの値のいずれかに初期値でない値が格納されるので、これらの値に基づいて逆噴射終了制御の実行中であるか否かを判定することができる。
【0057】
S41の処理で逆噴射終了制御の実行中であると判定された場合(S41:Y)、インターバル時間が経過したかを判定する(S42)。インターバル時間の経過は、インターバルカウンタがゼロであるか否かで判定することができ、インターバル時間が経過していなければ(S42:N)、インターバルカウンタを更新(減算)してから、S24へ処理を移行する。
【0058】
S41の処理でインターバル時間が経過していれば(S42:Y)、ファン17を逆方向に回転させている逆噴射状態中であるか判定し(S51)、ファン17を逆方向に回転させていなければ(S51:N)、逆回転時間を計時する逆回転時間カウンタを一定の時間(例えば、5秒)に対応する値に設定し(S52)、ファン17を逆方向に回転させて(S53)、逆噴射状態を開始する。S53の処理後には、S24へ処理を移行する。
【0059】
S51の処理において、ファン17が逆方向に回転中であれば(S51:Y)、逆回転時間カウンタを更新し(S61)、逆回転時間が経過したか判定する(S62)。逆回転時間が経過してなければ(S62:N)、ファン17の逆方向の回転を継続して、S24へ処理を移行する。
【0060】
S62の処理において、逆回転時間が経過したと判定した場合(S62:Y)、ファン17の回転を停止し(S63)、累積回転時間カウンタを初期値(例えば、「0」)に設定し(S64)、電源オフの設定をしてから(S65)、S24へ処理を移行する。電源オフの設定がされた後には、送風制御処理は実行されなくなり、その後、電源がオフされる。
【0061】
このように、ヘアドライヤ1においては、制御部9の送風制御処理によって、累積回転時間が逆噴射実行時間に達する前に送風操作部5aがオンからオフに切り替えられると、逆噴射状態としないで送風装置8aの動作が終了となる制御(通常終了制御)が実行される。一方、累積回転時間が逆噴射実行時間に達した後に送風操作部5aがオンからオフに切り替えられると、逆噴射状態を経由してから送風装置8aの動作が終了となる制御(逆噴射終了制御)が実行される。例えば、1時間の逆噴射実行時間の設定に対して、1回当たり5分でヘアドライヤ1が使用された場合、12回の使用に対して1回の割合で、逆噴射状態となってから電源オフとなる。
【0062】
このため、使用者は、送風操作部5aに対しての終了操作によって基本的には即座に送風装置8aの動作が停止し、たまに、逆噴射状態となってから送風装置8aの動作が停止することを認識することができる。よって、終了操作後において、毎回、逆回転の動作を
経由してから送風装置8aが停止するといったことはなく、即座にヘアドライヤ1が停止しない機種であると感じて不満を抱いてしまう事態を回避することができる。すなわち、逆噴射状態を利用して吸気口3の異物を除去し易く、且つ、送風を停止する終了操作後に速やかに送風装置8aが停止する機会を増やすことができる。
【0063】
また、送風操作部5aに対して終了操作を使用者が実施した場合に、ファン17が正方向に回転する使用状態にて予め定めた時間以上の時間が経過して逆噴射実行時間に達した使用状況であるかを判定する判定処理(S33の処理)が設けられ、判定処理によって逆噴射実行時間に達した使用状況であると判定された場合に、逆噴射状態を経由してから送風装置8aの動作を終了する逆噴射制御処理(S34~S65までの各処理)が実行される。このため、短時間だけヘアドライヤ1を使用する使用者には低い頻度で、長時間の使用をする使用者に限って高い頻度で、逆噴射状態を発生させることができる。
【0064】
また、逆噴射状態を経由してから送風装置8aの動作を終了する場合において、使用状態の後に、予め定めたインターバル時間が経過した後で、逆噴射状態が開始される。このため、インターバル時間を用いて使用者がヘアドライヤ1を頭部から離れた低い位置に移動することができる。これにより、ファン17の回転が即座に逆方向に切り替わってヘアドライヤ1が高い位置に配置された状況で逆噴射状態となる事態を回避し、フィルタ14に付着したホコリが高い位置から噴出され難くすることができる。
【0065】
<実施例2>
次に、上記した実施例1とは別の実施例2について、図8を参照して説明する。図8は実施例2に係るヘアドライヤの電気的な構成を示すブロック図である。実施例2に係るヘアドライヤ101は、上記した実施例1のヘアドライヤ1に対して通信機能が付加された点において相違し、逆噴射状態に関する制御が、ヘアドライヤ101とは別の装置を用いて実行する点において相違している。以下には、上記した実施例1とは異なる構成について説明する。
【0066】
ヘアドライヤ101には、図8に示すように、通信装置102が設けられて、携帯通信端末103と情報通信が可能に構成される。通信装置102としては、無線LANやBluetooth(登録商標)等の無線通信可能な機器が例示され、また、有線のケーブルとコネクタとを利用した機器が例示される。ヘアドライヤ101の送風装置8aの累積回転時間等の利用状況は、ヘアドライヤ101とは別の携帯通信端末103によって管理可能に構成される。
【0067】
携帯通信端末103は、インストールしたアプリケーションプログラムを実行可能な機能を有するスマートフォンや携帯電話により構成される。携帯通信端末103には、実施例1において説明した送風制御処理における逆噴射状態に関する制御プログラム(逆噴射制御処理)が記憶され、ヘアドライヤ101に対して送風装置8aやヒータ装置8bを動作させる指示コマンドを送信する。この制御プログラムは、インターネット等の通信回線を通じて、携帯通信端末103にダウンロードしてインストールされる。携帯通信端末103を利用したヘアドライヤ101の利用状況の監視結果は、携帯通信端末103に設けられる液晶表示装置などの表示部にて表示可能に構成される。携帯通信端末103に設けられる表示部には、逆噴射状態となるまでの累積回転時間等の各時間設定を選択可能に表示し、逆噴射状態となる条件を使用者が変更可能としてもよい。また、ヘアドライヤ101においては、逆噴射状態となるまでの時間を計測するためのカウンタ等の構成を省略し、ヘアドライヤ101の製造コストを低減してもよい。
【0068】
また、ヘアドライヤ101には、携帯通信端末103と通信していない状況でも、逆噴射状態を発生させる制御を除いた基本的な使用を可能とする送風制御処理を含む構成とし
てもよいし、逆噴射状態を発生させる制御をヘアドライヤ101の側にも含むようにし、実施例1と同様、ヘアドライヤ101の単体でも累積回転時間が逆噴射実行時間に達した場合に逆噴射状態を経由してから送風装置8aの動作を停止可能としてもよい。この場合、携帯通信端末103を用いた通信によりヘアドライヤ1の制御プログラムを更新可能とし、新たな機能(例えば、逆噴射状態とするまでの別の条件を付加する機能)をヘアドライヤ101に簡易に付加させることを可能としてもよい。携帯通信端末103に対して逆噴射状態の制御等について新たな制御プログラムを、ヘアドライヤ101の製造メーカーが配布するようにしてもよく、これにより、新たな機能を備えたヘアドライヤ101を使用者に容易に提供することができる。
【0069】
また、ヘアドライヤ101とは別の装置としては、携帯通信端末103でなく、ヘアドライヤ101を据え置き可能なスタンドを設ける構成とし、ヘアドライヤ101には充電池を内蔵してスタンドを通じてヘアドライヤ101を充電し、スタンドの内部に逆噴射状態を発生させる制御を実行する制御部を設ける構成としてもよい。
【0070】
なお、本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されず、上記した各効果と同様の効果を奏する別の実施の形態に変更できることは勿論である。
【0071】
例えば、上記実施の形態においては、カバー4とフィルタ14とを設ける場合について例示したが、必ずしもカバー4とフィルタ14とを設ける必要はなく、いずれか一方を省略してもよい。また、本体6の横穴16は、必ずしも必要でなく、この場合には、フィルタ14の副フィルタ部25を省略してもよい。
【0072】
また、上記の実施の形態においては、主フィルタ部21が平板状に形成される場合について説明したが、湾曲した形状であってもよい。ただし、送風装置8aのファン17の外径の範囲内、又は、フィルタ14と送風装置8aとの間に位置する壁部18の孔19の内径の範囲内に対して空気の送風方向S1に沿った範囲内に相当する部分においては、同一の方向側(正面視における斜め下方側)を全範囲が向く形状とし、水平方向側や斜め上側を向く範囲が設けられないように、主フィルタ部21を形成することが好ましい。
【0073】
また、上記の実施の形態においては、空気の送風方向S1が、吸気口3と吹出口2と途中部分とにおいて、いずれも一致して直線的な構成について例示したが、空気の送風方向S1が曲線状や折れ線状などの区間を含むようにしてもよい。この場合であっても、本体6が鉛直上方側で、ハンドル7が下側に位置した状態において、吸気口3の主フィルタ部21が斜め下側を向いて配置される構成とすることが好ましい。
【0074】
また、上記の実施の形態においては、逆噴射状態を発生させる条件として、ファン17の累積回転時間が一定時間以上となった場合について説明したが、これに代えて、または、これに加えて、他の条件で逆噴射状態を発生させるようにしてもよく、また、2以上の条件のいずれかが成立した場合に逆噴射状態を発生させるようにしてもよい。例えば、前回の逆噴射状態に対して使用状態となった回数をカウントし、その回数が予め設定した回数以上(例えば、10回以上)となったことを条件として、逆噴射状態を経由してから送風装置8aの動作を停止するように構成してもよいし、操作部5に対する特別な操作があった場合に逆噴射状態を発生させる構成としてもよい。例えば、送風操作部5aがオフ状態となっている状況で冷風操作部5dを一定時間(2秒以上)以上押し込んだ状態を継続した場合に逆噴射状態を実行する制御を含むように構成してもよい。また、逆噴射状態を停止する操作を設定してもよく、例えば、逆噴射状態中に、送風操作部5a以外の操作部5に対する使用者の操作があった場合に逆噴射状態を停止する構成としてもよい。
【0075】
また、上記の実施の形態においては、累積回転時間が一定時間以上となったと判定する
条件を、ファン17が回転している使用状態の時間を累積する場合について例示したが、これに限らず、他の条件としてもよい。例えば、送風装置8aの風力が複数段階に設定されている場合において、風力の強弱により累積回転時間を計時する条件を変化させてもよく、例えば、風力が弱、中、強の3段階に設定されている場合において、弱で使用した場合より、強で使用された場合の方が短時間で逆噴射状態となるように重み付けをして時間を計時してもよいし、一定以上の風力(例えば、中、及び、強)である動作状態における累積回転時間のみを計時して逆噴射状態となる構成としてもよい。逆噴射状態とする制御を実行するか全く実行しないかや逆噴射状態とする条件を選択可能とし、使用者のモード選択操作によって逆噴射状態となる条件が切り替わるように構成してもよい。
【0076】
また、上記の実施の形態において、操作部5の操作に対する好適な制御として、送風操作部5aを開始操作した場合には温風が出力され、温風が出力されている状況で冷風操作部5dに対する1回の押し操作により温風が冷風に切り替わり、再度、冷風操作部5dに対する1回の押し操作が行われた場合に元の温度による温風の出力に切り替わる制御を制御部9に付加することが、ヘアドライヤ1の操作を容易に実施することができて好ましい。
【0077】
また、送風操作部5aを開始操作した場合における温度の設定について、複数段階に設定される温度の中で最高の設定温度よりも低い設定温度にて温風の出力が開始され、温度調節操作部5bに対する操作により最高の設定温度に切り替え可能とすることが好ましく、温度の設定は、送風操作部5aに対する終了操作またはヘアドライヤ1の電源がオフされることにより、前回の温度設定が記憶されずに初期設定に戻ることが好ましい。これにより、長時間出力された場合には異常停止となるような高温の設定を、使用者が必要と考えたタイミングに限定して出力することができる。風量の設定についても、温度設定と同様、終了操作や電源オフにより初期設定(例えば、3段階の中の最強の設定)に戻る制御としてもよいし、風量については前回の風量設定が維持されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のヘアドライヤは、人間の髪や動物の毛を乾燥させる際に利用することができ、また、工業製品の製造や補修をする場合において塗料を乾燥させるなど、毛髪以外を乾燥させる作業にも利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1,101 ヘアドライヤ
2 吹出口
3 吸気口
6 本体
7 ハンドル
8a 送風装置
9 制御部
21 主フィルタ部(フィルタ部)
R 回動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8