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特許7404592ディーゼルエンジンの排気処理装置およびディーゼルエンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジンの排気処理装置およびディーゼルエンジン
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/26 20060101AFI20231219BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20231219BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20231219BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
F01N3/26 A
F01N3/24 E
F01N3/28 301W
B01D53/94 300
B01D53/94 ZAB
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020211470
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098112
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 怜央
(72)【発明者】
【氏名】沖見 昇一
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆志
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-043545(JP,A)
【文献】特開2008-106663(JP,A)
【文献】特表2016-516949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
F01N 3/02
F01N 3/04-3/38
F01N 9/00-11/00
B01D 53/94
F16L 59/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル酸化触媒およびディーゼル微粒子捕集フィルタを収容し、円筒状のケーシング断熱材を有するケーシングと、
前記ケーシングの内部に形成され排気ガスを通す排気ガス流路と、
前記排気ガス流路と隣り合う位置に設けられ、前記排気ガス流路側に位置する一方の面と、前記一方の面とは反対側の他方の面と、外周囲面と、を有する板状の断熱材と、
前記排気ガス流路と前記断熱材との間に設けられ、前記排気ガス流路と前記断熱材とを仕切る仕切り部材と、
を備え、
前記仕切り部材は、前記断熱材の前記一方の面と前記外周囲面とを覆う第1構成体と、前記断熱材の前記他方の面を覆う第2構成体と、を有し、
前記第1構成体は、前記第2構成体内に圧入されることで固定され、前記断熱材の前記一方の面を密着して覆う一方の面覆い部分と、前記断熱材の前記外周囲面を覆う外周囲面覆い部分と、を有し、
前記第2構成体は、前記ケーシングに固定され、前記断熱材の前記他方の面を覆う他方の面覆い部分と、前記第1構成体の前記外周囲面覆い部分と嵌まり合い前記第1構成体を固定する側面延長部と、前記側面延長部から延長して形成され前記ケーシング断熱材に対して全周囲に渡って半径方向に差し込まれた延長縁部と、を有し、
前記断熱材は、前記第1構成体と前記第2構成体とにより覆われ封止されていることを特徴とするディーゼルエンジンの排気処理装置。
【請求項2】
前記ケーシングは、前記ケーシング断熱材の開口部を封止する封止板をさらに有し、
前記第2構成体は、前記封止板に保持されたことを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンの排気処理装置。
【請求項3】
前記外周囲面覆い部分の縁部分は、前記断熱材の前記他方の面の側へ折り返して形成されており、前記断熱材の前記他方の面の縁部分に固定されたことを特徴とする請求項1または2に記載のディーゼルエンジンの排気処理装置。
【請求項4】
前記断熱材および前記仕切り部材は、前記排気ガスを前記ディーゼル酸化触媒へ導入する排気ガス導入部側の端面部に配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のディーゼルエンジンの排気処理装置。
【請求項5】
ディーゼル酸化触媒およびディーゼル微粒子捕集フィルタを収容し、円筒状のケーシング断熱材を有するケーシングと
前記ケーシングの内部に形成され排気ガスを通す排気ガス流路と、
前記排気ガス流路と隣り合う位置に設けられ、前記排気ガス流路側に位置する一方の面と、前記一方の面とは反対側の他方の面と、外周囲面と、を有する板状の断熱材と、
前記排気ガス流路と前記断熱材との間に設けられ、前記排気ガス流路と前記断熱材とを仕切る仕切り部材と、
を有するディーゼルエンジンの排気処理装置を備えたディーゼルエンジンであって、
前記仕切り部材は、前記断熱材の前記一方の面と前記外周囲面とを覆う第1構成体と、前記断熱材の前記他方の面を覆う第2構成体と、を有し、
前記第1構成体は、前記第2構成体内に圧入されることで固定され、前記断熱材の前記一方の面を密着して覆う一方の面覆い部分と、前記断熱材の前記外周囲面を覆う外周囲面覆い部分と、を有し、
前記第2構成体は、前記ケーシングに固定され、前記断熱材の前記他方の面を覆う他方の面覆い部分と、前記第1構成体の前記外周囲面覆い部分と嵌まり合い前記第1構成体を固定する側面延長部と、前記側面延長部から延長して形成され前記ケーシング断熱材に対して全周囲に渡って半径方向に差し込まれた延長縁部と、を有し、
記断熱材は、前記第1構成体と前記第2構成体とにより覆われ封止されていることを特徴とするディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気処理装置およびディーゼルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気処理装置は、DPFマフラともいい、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ:ディーゼル微粒子捕集フィルタ)およびDOC(ディーゼル酸化触媒)等を有している。DPFは、PM(粒子状物質の略称)を捕集する。DOCは、HC(炭化水素)とCO(一酸化炭素)を酸化させる。DOCは、排気ガスを昇温させ、DPF内のPMを燃焼させる。排気処理装置は、DPFで捕捉したPMの堆積量を予測するために、差圧センサを用いて圧力を測定している。差圧センサは、DPFの上流側と下流側との差圧を検出する。排気処理装置は、DPFにより排気中のPMを捕捉して、差圧センサにより検出したDPFの上流側と下流側との差圧に基づいて、PM堆積量を推定する。PM堆積量が所定の再生要求量になると、排気処理装置は、排気温度を上げて、DPFに堆積したPMを燃焼して除去することで、DPFを再生する。
【0003】
一般的には、排気処理装置では、DOCを活性化させるために、まずは排気ガス温度を200℃付近に保つ必要がある。また、DPF再生時には、排気処理装置自体が高温になるために、周辺部品への熱害の影響にも注意を払う必要がある。従って、排気処理装置の外側には、断熱材が配置されている。特許文献1には、DPFとDOCとを有する排気処理装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の排気処理装置では、排気ガスの流路と断熱材が組み込まれている部屋とは、一枚の仕切り板によって互いに仕切られている。例えば特許文献1に記載されたような排気処理装置において、一枚の仕切り板は、排気処理装置のカバーの内壁に対して全周に渡って溶接されているのではなく、数点でスポット溶接されている場合がある。このような場合には、仕切り板とカバーの内壁との間に隙間が形成されてしまい、しかもカバーの内壁に対する仕切り板の正確な位置決めが難しい。従って、仕切り板が傾いてカバーの内壁に固定されてしまうと、断熱材が局部的に仕切り板により圧縮される。圧縮された状態の断熱材は、熱が加わると硬化して繊維状に分解されてしまう。断熱材が硬化して繊維状に分解されると、排気処理装置の寿命の低下が避けられない。しかも、仕切り板とカバーの内壁との間に隙間が形成されると、隙間から断熱材へ直接高温の排気ガスが流れる。そうすると、隙間から音の放射が生じるので、騒音が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-208571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、断熱材へ直接高温の排気ガスが流れるのを防いで断熱材の分解を防ぎ、音の放射による騒音を抑制して、排気処理装置の長寿命化を図ることができるディーゼルエンジンの排気処理装置およびディーゼルエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、ディーゼル酸化触媒およびディーゼル微粒子捕集フィルタを収容するケーシングと、前記ケーシングの内部に形成され排気ガスを通す排気ガス流路と、前記排気ガス流路と隣り合う位置に設けられた断熱材と、前記排気ガス流路と前記断熱材との間に設けられ、前記排気ガス流路と前記断熱材とを仕切る仕切り部材と、を備え、前記断熱材は、前記仕切り部材により囲まれ封止されていることを特徴とする本発明に係るディーゼルエンジンの排気処理装置により解決される。
【0008】
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置によれば、仕切り部材は、断熱材を囲むようにして封止する構成である。そのため、断熱材へ直接高温の排気ガスが流れるのを防いで断熱材の分解を防ぐとともに、音の放射による騒音を抑制することができる。これにより、排気処理装置の長寿命化を図ることができる。
【0009】
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置において、好ましくは、前記断熱材は、前記排気ガス流路側に位置する一方の面と、前記一方の面とは反対側の他方の面と、外周囲面と、を有する板状の部材であり、前記仕切り部材は、前記断熱材の前記一方の面と前記外周囲面とを覆う第1構成体と、前記断熱材の前記他方の面を覆う第2構成体と、を有し、前記第1構成体は、前記第2構成体内に圧入されることで固定されていることを特徴とする。
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置によれば、第1構成体は、第2構成体内に圧入されることで固定される。そのため、第1構成体と第2構成体とは、断熱材を囲むようにして封止できる。これにより、作業者等は、第1構成体を第2構成体内に圧入して組み立てるだけなので組み立て作業を容易に行える。
【0010】
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置において、好ましくは、前記第1構成体は、前記断熱材の前記一方の面を密着して覆う一方の面覆い部分と、前記断熱材の前記外周囲面を覆う外周囲面覆い部分と、を有し、前記第2構成体は、前記ケーシングに固定され、前記断熱材の前記他方の面を覆う他方の面覆い部分と、前記第1構成体の前記外周囲面覆い部分と嵌まり合い前記第1構成体を固定する側面延長部と、を有することを特徴とする。
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置によれば、第2構成体は、ケーシングに固定され、他方の面覆い部分と、側面延長部と、を有する。第2構成体の側面延長部は、第1構成体の外周囲面覆い部分と嵌まり合い第1構成体を固定する。そのため、第1構成体と第2構成体とは、断熱材を囲むようにして封止できる。これにより、作業者等は、第1構成体を第2構成体内に圧入して組み立てるだけなので組み立て作業を容易に行える。
【0011】
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置において、好ましくは、前記断熱材および前記仕切り部材は、前記排気ガスを前記ディーゼル酸化触媒へ導入する排気ガス導入部側の端面部に配置されていることを特徴とする。
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置によれば、高温の排気ガスが導入される排気ガス導入部側の断熱材に対して仕切り部材が配置されるので、断熱材の劣化が熱により進行するのを抑制して、排気処理装置の長寿命化を図ることができる。
【0012】
また、前記課題は、ディーゼル酸化触媒およびディーゼル微粒子捕集フィルタを収容するケーシングと、前記ケーシングの内部に形成され排気ガスを通す排気ガス流路と、前記排気ガス流路と隣り合う位置に設けられた断熱材と、前記排気ガス流路と前記断熱材との間に設けられ、前記排気ガス流路と前記断熱材とを仕切る仕切り部材と、を有するディーゼルエンジンの排気処理装置を備えたディーゼルエンジンであって、前記ディーゼルエンジンの排気処理装置の前記断熱材は、前記仕切り部材により囲まれ封止されていることを特徴とする本発明に係るディーゼルエンジンにより解決される。
【0013】
本発明のディーゼルエンジンによれば、ディーゼルエンジンの排気処理装置の仕切り部材は、断熱材を囲むようにして封止する構成である。そのため、断熱材へ直接高温の排気ガスが流れるのを防いで断熱材の分解を防ぐとともに、音の放射による騒音を抑制することができる。これにより、排気処理装置の長寿命化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、断熱材へ直接高温の排気ガスが流れるのを防いで断熱材の分解を防ぎ、音の放射による騒音を抑制して、排気処理装置の長寿命化を図ることができるディーゼルエンジンの排気処理装置およびディーゼルエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンの排気処理装置を示す断面図である。
図2図1に示す断熱材を含む領域Pの構造例を示す断面図である。
図3図2に示す断熱材と断熱材の周辺部分の構造例を拡大して示す断面図である。
図4】本発明の範囲外である比較例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0017】
(ディーゼルエンジンの排気処理装置1の構成例)
図1は、本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンの排気処理装置を示す断面図である。
図1に示すディーゼルエンジンの排気処理装置1は、例えば産業用のディーゼルエンジンに搭載される。産業用のディーゼルエンジンとしては、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機等に搭載されるが、ディーゼルエンジン100が搭載される機器の種類は、特に限定されない。
【0018】
ディーゼルエンジンの排気処理装置(以下、排気処理装置という)1は、DPFマフラともいい、耐熱性を有する金属製の円筒状のケーシング2と、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ:ディーゼル微粒子捕集フィルタ)3と、DOC(ディーゼル酸化触媒)4と、一方と他方の断熱材5,6と、排気ガス導入部7と、排気ガス排出部8等を有している。ケーシング2は、DPF3とDOC4を収容している。
【0019】
ディーゼルエンジン100から排出される排気ガスGは、矢印で示すように、排気ガス導入部7からケーシング2内の排気ガス流路内に導入され、DOC4に通して排気ガスGの昇温を行うことで排気ガスG中のHCとCOが酸化され、そしてDPF3を通過すると、排気ガスG中のPM(粒子状物質の略称)がDPF3に捕集されてPMは燃焼される。その後、排気ガスGは、排気ガス排出部8からディーゼルエンジン100の排気系に送られる。
【0020】
図1に示すディーゼルエンジン100は、排気処理装置1を搭載している。排気処理装置1のケーシング2の断熱材6寄りの位置は、ディーゼルエンジン100に対して、図示しないブラケットとボルト等を用いて固定されている。同様にして、排気処理装置1の断熱材5寄りの位置は、ディーゼルエンジン100に対して、図示しないブラケットとボルト等を用いて固定されている。
【0021】
図2は、図1に示す断熱材5を含む領域Pの構造例を示す断面図である。
ただし、図2に示す排気処理装置1は、図1に示す排気処理装置1を、ケーシング2の中心軸F-Fを中心にして90度回転させた状態である。
図2に示すように、ケーシング2は、排気ガス導入部7の付近に、円筒状のケーシング断熱材11を有する。ケーシング断熱材11の一方の開口部12には、DOC4の排気ガス導入端面4Aが配置されている。ケーシング断熱材11の他方の開口部13は、耐熱性を有する円形の金属製の封止板14により封止されている。封止板14の内面には、複数の突起15が形成されている。
【0022】
(断熱材5と断熱材5の周辺部分の構造例)
図3は、図2に示す断熱材5と断熱材5の周辺部分の構造例を拡大して示す断面図である。
図2図3を参照して、断熱材5と断熱材5の周辺部分の構造例を説明する。
断熱材5は、例えば円形の厚みのある断熱板であり、ケーシング2の内部に形成された排気ガス流路50と隣り合う位置に設けられている。断熱材5は、一方の面(内面)5Aと、他方の面(外面)5Bと、外周囲面5Cと、を有する。断熱材5は、仕切り部材20に取り囲まれるようにして封止されている。
【0023】
仕切り部材20は、ケーシング2内の排気ガス流路50から断熱材5を保護するために配置されていて、仕切り部材20は、排気ガス流路50と断熱材5とを仕切っている。仕切り部材20は、例えば耐熱性を有する鉄板のような金属板を板金加工するにより作られている。しかし、仕切り部材20は、金属板以外に、耐熱性を有するセラミクス板等により作られていても良い。
【0024】
図2図3に示すように、仕切り部材20は、第1構成体20Aと、第2構成体20Bと、を有する。仕切り部材20の第1構成体20Aと第2構成体20Bは、断熱材5の全周囲を覆って囲むことで、排気ガス流路50を流れる排気ガスGから断熱材5を保護している。
図3に示すように、仕切り部材20の第1構成体20Aは、円形状の一方の面覆い部分21と、外周囲面覆い部分22と、を有する。外周囲面覆い部分22は、一方の面覆い部分21から連続して形成されていて、第1構成体20Aはほぼ断面U字型を有する。一方の面覆い部分21は、断熱材5の一方の面5Aの全領域を密着して覆っており、外周囲面覆い部分22は、断熱材5の外周囲面5Cの全領域を密着して覆っている。
【0025】
しかも、外周囲面覆い部分22の縁部分23は、断熱材5の他方の面5Bの縁部分領域側へ、半径方向内側に90度折り返すことで形成されており、縁部分23は、他方の面5Bの縁部分に固定されている。従って、仕切り部材20の第1構成体20Aは、断熱材5の一方の面5Aと外周囲面5Cの全領域を、包み込むようにして密着して保護している。このため、断熱材5は、仕切り部材20の第1構成体20Aを用いて、排気ガス流路50に流れる高温の排気ガスGに対して直接接触しないことから、断熱材5は、排気ガスGから保護されている。
【0026】
図3に示すように、仕切り部材20の円形状の第2構成体20Bは、断熱材5の他方の面5Bの全領域に密着して覆っている。第2構成体20Bは、他方の面覆い部分30と、側面延長部31と、延長縁部32を有する。側面延長部31は、他方の面覆い部分30から90度曲げることで全周囲に渡って形成されており、第1構成体20Aの外周囲面覆い部分22の全領域を覆う大きさを有する。延長縁部32は、側面延長部31からはさらに90度外側に折り返すことで半径方向に延長して形成されている。
【0027】
図3に示すように、第2構成体20Bの延長縁部32は、ケーシング断熱材11に対して、全周囲に渡って半径方向に差し込まれている。これにより、第2構成体20Bは、ケーシング断熱材11に対して固定されている。第1構成体20Aの外周囲面覆い部分22の外面は、第2構成体20Bの側面延長部31の内面に対して、溶接ではなく、隙間の無いように差し込まれて、圧入により固定されている。ケーシング2の封止板14の各突起15は、第2構成体20Bの他方の面覆い部分30に突き当てるようにして、第2構成体20Bを保持している。第2構成体20Bは、ケーシング2に対して固定され、第1構成体20Aは、第2構成体20Bに対して圧入により固定されている。断熱材5は、一方の面5Aと、他方の面5Bと、外周囲面5Cの全領域が、第1構成体20Aと第2構成体20Bにより覆われており、完全に封止されている。
【0028】
図4は、本発明の範囲外である比較例を示している。
図4に示す比較例では、仕切り板107が断熱材105の一方の面105Aを覆っている。カバー部材120が断熱材105の他方の面105Bと外周囲面105Cを覆っている。仕切り板107の縁部101がカバー部材120の内面121に突き当てられている。しかも、仕切り板107が、ケーシング102の内面に対して、スポット溶接130により固定されている。しかし、溶接作業の際に、ケーシング102の内面に対して仕切り板107を固定するためのスポット溶接130の位置が所定の位置からずれてしまうと、仕切り板107が傾いて固定されてしまう。仕切り板107が傾くと、仕切り板107の縁部101は、カバー部材120の内面121に対してうまく密着できず、仕切り板107の縁部101とカバー部材120の内面121との間に隙間ができてしまう。このため、比較例では、高温の排気ガスが、この隙間を通じて断熱材105に直接入るので、断熱材105は高温の排気ガスに晒されて、断熱材105の熱劣化が生じる。また、仕切り板107が傾いて固定されてしまうと、断熱材105の一部分が仕切り板107により局部的に圧縮されてしまい、本来の断熱材105の性能を発揮できない。また、仕切り板107の縁部101とカバー部材120の内面121との間に隙間ができると、放射音が抑制できない。
【0029】
以上説明したように、本発明の実施形態のディーゼルエンジンの排気処理装置1およびディーゼルエンジン100では、断熱材5は、仕切り部材20の内部に収容して封止されており、断熱材5は、排気ガス流路50を流れる高温の排気ガスGが、断熱材5に直接接触しない。このため、高温の排気ガスGが、断熱材5には直接触れないことから、断熱材5が排気ガスGの影響により熱劣化するのを抑制できる。また、断熱材5は、仕切り部材20の内部に収容して封止されているので、排気処理装置1からの放射音を低減でき、排気処理装置1の消音性能が向上する。断熱材5へ直接高温の排気ガスGが流れるのを防いで断熱材5の分解を防ぎ、音の放射による騒音を抑制して、コストアップを抑制しながら排気処理装置1の長寿命化を図ることができる。
【0030】
仕切り部材20は、簡単な構成でありながら、断熱材5を封止してしかもケーシング2側に固定できることから、コストダウンを図ることができる。断熱材5は、仕切り部材20により囲まれるようにして封止されているので、断熱材に高温の排気ガスが直接触れることがなく、断熱材5の熱による劣化を抑制できる。仕切り部材20の第1構成体20Aと断熱材5は、第2構成体20B内に圧入することで固定でき、従来取り付け時に生じた断熱材の一部分が局部的に圧縮されてしまうことが全くない。このため、断熱材の断熱性能が低下することを防ぐことができ、排気処理装置1の耐久性が向上する。
【0031】
第1構成体20Aは、第2構成体20B内に圧入することで固定するだけで、第1構成体20Aと第2構成体20Bは断熱材5を囲むようにして封止でき、圧入して組み立てるだけなので組み立て作業が容易に行え、スポット溶接作業が不要になる。第2構成体20Bはケーシング2に固定されている。第2構成体20Bの側面延長部31は、第1構成体20Aの外周囲面覆い部分22と嵌まり合い、第1構成体20Aを固定する。そのため、第1構成体20Aと第2構成体20Bとは、断熱材5を囲むようにして封止できる。これにより、作業者等は、第1構成体20Aを第2構成体20B内に圧入して組み立てるだけなので組み立て作業を容易に行える。高温の排気ガスGが導入される排気ガス導入部7側の断熱材5に対して仕切り部材20を配置するので、断熱材5の劣化が熱により進行するのを抑制して、断熱材5と排気処理装置1の長寿命化を図ることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
例えば、図示例では、ケーシング2の排気ガス流路50は断面円形状の円筒状の部材であるが、ケーシングの排気ガス流路は例えば断面矩形状であっても良い。この場合には、断熱材と仕切り部材は、排気ガス流路の形状に合わせて、円形ではなく矩形状になる。
【符号の説明】
【0033】
1:排気処理装置、 2:ケーシング、 3:DPF、 4:DOC、 4A:排気ガス導入端面、 5:断熱材、 5A:一方の面、 5B:他方の面、 5C:外周囲面、 6:断熱材、 7:排気ガス導入部、 8:排気ガス排出部、 11:ケーシング断熱材、 12:開口部、 13:開口部、 14:封止板、 15:突起、 20:仕切り部材、 20A:第1構成体、 20B:第2構成体、 21:一方の面覆い部分、 22:外周囲面覆い部分、 23:縁部分、 30:他方の面覆い部分、 31:側面延長部、 32:延長縁部、 50:排気ガス流路、 100:ディーゼルエンジン、 101:縁部、 102:ケーシング、 105:断熱材、 105A:一方の面、 105B:他方の面、 105C:外周囲面、 107:仕切り板、 120:カバー部材、 121:内面、 130:スポット溶接、 G:排気ガス、 P:領域
図1
図2
図3
図4