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特許7404595紡糸装置及び紡糸装置で紡糸開始を行なう方法、並びに紡糸開始装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】紡糸装置及び紡糸装置で紡糸開始を行なう方法、並びに紡糸開始装置
(51)【国際特許分類】
   D01F 2/00 20060101AFI20231219BHJP
   D01D 5/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
D01F2/00 Z
D01D5/06 105Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020517868
(86)(22)【出願日】2018-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2018077362
(87)【国際公開番号】W WO2019072779
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】17020468.9
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】デュルンベルガー、フランツ アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】シュレンプ、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュペルガー、クリスティアン
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-501371(JP,A)
【文献】特表平09-509703(JP,A)
【文献】国際公開第97/024476(WO,A1)
【文献】米国特許第05984655(US,A)
【文献】特表平10-505886(JP,A)
【文献】国際公開第96/021758(WO,A1)
【文献】特表平06-507936(JP,A)
【文献】米国特許第05589125(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00-13/02
D01F1/00-6/96
9/00-9/04
B65H57/00-57/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒と、前記溶媒に溶解しているセルロースと、を含有する紡糸溶液(6)を連続的に押し出して成形体(3)に紡糸する紡糸装置(1,101)で紡糸開始を行なう方法であって、
前記紡糸溶液(6)を前記紡糸装置(1)の紡糸口金(7)から押し出して、前記成形体(3)を開繊紡糸カーテン(2)の形態とすることと、
前記押し出し後に、前記開繊紡糸カーテン(2)をねじることにより、前記開繊紡糸カーテン(2)の前記成形体(3)を成形体束(4)に結束することと、
前記成形体束(4)を追加工程で、前記紡糸装置(1,101)の引き取り延伸部材(10)に送り込んで、前記成形体(3)の連続紡糸を開始することと、を含み、
前記開繊紡糸カーテン(2)の前記成形体(3)の引張強度を、記成形体を成形体束(4)に結束する前に、少なくとも幾つかの領域において増加させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記成形体(3)の前記引張強度を、少なくとも幾つかの領域において増加させて、前記成形体(3)が、前記成形体の自体の重量で破断しないようになることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
引張強度を増加させることにより、係合領域(29)が前記成形体束(4)に形成されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記成形体(3)を前記成形体束(4)に結束すること、及び/又は前記成形体束(4)を前記引き取り延伸部材(10)に送り込むことは、機械で行なわれることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
マニピュレータアーム(12)の自動把持装置(16)前記成形体束(4)を掴んで、前記成形体束(4)を前記紡糸装置(1,101)の前記引き取り延伸部材(10)に機械で送り込むことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記自動把持装置(16)は、前記成形体束(4)を係合領域(29)で掴むことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記成形体の引張強度を増加させるために、前記成形体(3)を却することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも10℃だけ冷却した後の前記成形体(3)の温度は、前記紡糸溶液(6)の温度よりも低いことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記成形体(3)の冷却は、冷気流(44)を前記成形体の少なくとも幾つかの領域に吹き付けることにより行なわれることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記成形体(3)の冷却は、少なくとも幾つかの領域に冷却液(43)を噴霧することにより、又は少なくとも幾つかの領域を冷却液(43)に浸漬することにより行なわれ、前記冷却液(43)は水溶液であることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記冷却液(43)は、溶解セルロースの凝固剤を含有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記成形体(3)を前記成形体束(4)に機械で、前記開繊紡糸カーテン(2)をねじり軸線(20)回りにねじる工程結束することを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
紡糸装置(1,101)で紡糸開始を行なうための紡糸開始装置であって、前記紡糸装置(1,101)の紡糸口金(7)から紡糸溶液(6)が押し出されて形成された開繊紡糸カーテン(2)の形態の成形体(3)を、前記開繊紡糸カーテン(2)をねじることにより成形体束(4)に結束する結束装置(5)と、形成された前記成形体(3)の強度を少なくとも幾つかの領域で増加させる補強装置(40)とを含み、前記紡糸開始装置(11,51)は、第1エンドエフェクタ(14)を備える第1マニピュレータアーム(12)を含み、前記第1エンドエフェクタ(14)は、前記成形体束(4)を掴むグリッパー(16)を含むことを特徴とする、紡糸開始装置。
【請求項14】
前記紡糸開始装置(11、51)は、第2エンドエフェクタ(15)を備える第2マニピュレータアーム(13)を含み、前記第2エンドエフェクタ(15)は前記結束装置(5)を含むことを特徴とする、請求項13に記載の紡糸開始装置。
【請求項15】
前記結束装置(5)は、前記成形体(3)をねじり軸線(20)回りにねじることにより前記成形体(3)を前記成形体束(4)に結束するねじり手段(17)として形成される回転可能な手段(18)含むことを特徴とする、請求項13又は請求項14に記載の紡糸開始装置。
【請求項16】
前記補強装置(40)は、冷却装置(41,42)を含むことを特徴とする、請求項13から15のいずれか1項に記載の紡糸開始装置。
【請求項17】
、セルロース、及び第三級アミンオキシドを含有する紡糸溶液(6)を連続的に押し出して成形体(3)に紡糸する紡糸装置であって、紡糸浴(9)を含む紡糸浴槽(8)と、前記紡糸浴槽(8)に関連付けられて、前記紡糸溶液(6)を前記紡糸浴(9)に押し出す紡糸口金(7)と、請求項13から請求項16のいずれか一項に記載の紡糸開始装置(11,51)と、を少なくとも含む、紡糸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸装置、及び紡糸装置で紡糸開始を行なって成形体を、溶媒及び溶媒に溶解したセルロースを含有する紡糸溶液から連続的に押し出す方法に関するものであり、この方法では、成形体を紡糸溶液から紡糸装置の紡糸口金を介して開繊紡糸カーテンの形態で押し出し、開繊紡糸カーテンの成形体を、押し出し後に成形体束に結束し、成形体束を、追加工程で、紡糸装置の引き取り延伸部材に供給して成形体の連続押出を開始する。
【0002】
さらに、本発明は、前記方法を実行する紡糸開始装置に関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭で述べたタイプの紡糸装置及び紡糸装置で行われる紡糸方法は、繊維、フィラメント、シートなどのような成形体を製造する先行技術から知られている。特に繊維産業では、前記方法は、紡糸ステープルまたは連続繊維の製造に使用される。成形体を押し出す場合、紡糸溶液が、このような場合では、複数の紡糸口金を介して押し出される。
【0004】
洗浄、プレス加工、乾燥などのような紡糸装置自体では行われない後続の方法工程で押出成形体をさらに処理する前に、押出成形体を紡糸装置から連続的に搬送する、例えば引き取り延伸部材を介して搬送する必要がある。成形体をこのような引き取り延伸部材に供給する前に、これらの成形体をまず、束に結束する必要がある。
【0005】
一般に、紡糸方法のこの最初の部分は、紡糸開始(spin-up)方法又は編み上げ(lace up)方法、若しくは、紡糸装置で紡糸開始を行なう、又は編み上げを行なう方法と表記される。紡糸装置の紡糸開始は、紡糸方法の第1段階を構成し、この第1段階では、成形体の連続押出を紡糸方法において可能にする、及び/又は開始する。したがって、紡糸開始方法は、紡糸方法の全ての方法工程を含み、これらの方法工程は、最初の連続押出の終了時と次の連続押出との間に必要である、例えば紡糸装置の停止後に、又は紡糸口金の下方の幾つかの成形体の破損のような紡糸欠陥が発生した後に必要である。
【0006】
国際公開第94/28218(A1)号パンフレットは、例えば冒頭に述べたタイプの紡糸装置を示しており、紡糸口金から押し出された紡糸カーテンは、紡糸浴槽の底面側開口部を通過する。この場合、底面側開口部は、紡糸カーテンの直径を小さくする効果をもたらすことにより、成形体を成形体束に結束する。しかしながら、国際公開第94/28218(A1)号パンフレットに関連して開示されている紡糸浴槽の非常に大きい浸漬深さは、紡糸カーテンを紡糸巻き取ること、及び操作することをかなり困難にしている。したがって、このような紡糸装置は、紡糸開始方法の再現性の程度が低い影響を受け、紡糸開始欠陥の影響を非常に受け易く、これにより成形体の満足のいく連続押出が可能ではなくなり、多くの場合、紡糸開始を再開する必要がある。
【0007】
紡糸開始プロセスを容易にする紡糸装置は、先行技術から知ることもできる。例えば、欧州特許公開第0574870(A1)号明細書は、紡糸口金から紡糸カーテンの形態で出て行った後の押出成形体を成形体束に掛合する紡糸装置を示している。これは、紡糸漏斗を紡糸浴槽の紡糸浴に使用することにより実現され、紡糸漏斗の断面は下方向に狭くなり、紡糸漏斗は、狭くなった底面出口開口部を有する。紡糸カーテンが紡糸漏斗を通過する場合、成形体束は、成形体が紡糸漏斗から出て行くときに形成され、これにより、紡糸開始中の紡糸装置における成形体のさらに別のハンドリングが容易になる。しかしながら、このような紡糸漏斗は、紡糸浴槽の深い箇所に配置されるので不利であり、これにより、作業者によるハンドリングが容易ではなくなる。さらに、このような紡糸装置の不具合は、大量の紡糸浴液が常時、紡糸浴槽の紡糸漏斗内を流れるようにして、満足できる機能を確保する必要があるが、これにより、乱流が紡糸浴に発生し、成形体の連続押出中の作業状態に悪影響を及ぼすことである。
【0008】
上に述べた不具合を改善するために、欧州特許公開第0746642(B1)号明細書は、成形体を結束する結束部材を紡糸浴槽内の搬送方向変更部材の形態で設ける紡糸装置について記載している。このような装置は、紡糸浴内の上記乱流を回避するのに役立つが、これらの装置が、紡糸カーテンを成形体束に作業者が手作業で最初に結束して成形体を搬送方向変更部材に供給する必要があるので、これらの装置は、紡糸開始プロセスをかなり一層難しくしている。しかしながら、これは、作業者の大きな物理的労力を必要とするので不利である。加えて、このような紡糸開始方法は、紡糸開始欠陥、より具体的には、紡糸カーテンの不完全な結束の影響を非常に受け易い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、プロセス技術に関してより簡単であり、より再現性のある冒頭で述べたタイプの紡糸開始方法を設計することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、定義された目的を独立請求項1の特徴により解決する。
【0011】
成形体の押し出し後の、かつ成形体を成形体束に掛合する前の開繊紡糸カーテンの成形体の引張強度を少なくとも幾つかの領域で増加させる場合、成形体を連続的に押し出して、均質な成形体束に結束するのを向上させて、かなり容易にすることができ、これにより特に、紡糸開始方法の確実性の恩恵がもたらされる。結局のところ、引張強度を増加させることにより、成形体束を、機械を使用することにより結束する、及び/又は掴むために必要な状態が形成される。より具体的には、開繊紡糸カーテンの成形体の引張強度を増加させて、機械を使用することにより成形体を掛合して、成形体を引き取り延伸部材に送り込むことが可能になる。結局のところ、成形体を形成するために押し出された未だに沈着していない紡糸溶液から実質的に成る押出成形体は、紡糸口金から押し出されている間に、及び押し出された直後に非常に低い粘性を示す。実際、低粘性により、紡糸溶液を紡糸口金から押し出すことが可能になる。しかしながら、他方では、低粘性により、成形体の引張強度が非常に低くなる。このようなことから、押出成形体は、機械ベースの操作中に生じる力に耐えることができず、破断することになる。このようなことから、引張強度を少なくとも幾つかの領域で増加させることにより、紡糸装置で紡糸開始を行なう非常に簡単かつ確実な方法を提供することが可能になる。追加の結果として、紡糸欠陥の発生を回避することができるので、これにより、紡糸プロセスがより堅実になり、より安定になってさらに有利となる。
【0012】
一般に、「molded bodies(成形体)」は、紡糸口金から押し出される紡糸ドープを指しており、例えばフィラメント又はシートの形態で存在し得る。このような成形体を引き続き処理して、ステープル繊維、連続繊維、不織布、シート、スリーブ、粉末などのような最終製品とすることができる。
【0013】
本発明はまた、成形体の連続押出がリヨセル法に従って行なわれる場合に、及び成形体がセルロース成形体、より具体的には、水、セルロース、及び第三アミンオキシドを含有する紡糸溶液から紡糸装置の紡糸口金を介して押し出されるセルロース繊維である場合に特に有利であることが分かっている。結局のところ、このような方法では、成形体を成形体束に掛合することは、紡糸口金と紡糸浴との間の空隙で既に行なわれている可能性があるので、より良好な作業性、したがってかなり簡単な方法が作製される。
【0014】
成形体の「Machine-based manipulation(機械ベースの操作)」とは普通、成形体を成形体束に掛合して、成形体束を引き取り延伸ユニットに送り込むことを指している。このような機械ベースの操作は、一部自動で、又は全自動で、若しくは人による制御下で行えることが好ましい。
【0015】
成形体の引張強度が少なくとも幾つかの領域で増加して、成形体が、成形体自体の重量で破断することがない場合、本発明による紡糸開始方法の確実性をさらに高めることができる。結局のところ、成形体が成形体自体の重量の負荷に破断することなく耐えられるほど引張強度が高い場合、開繊紡糸カーテンの押出成形体の機械ベースの安全な操作が行える。結局のところ、機械ベースの操作の送り速度は、これらの送り速度が、成形体を紡糸口金から押し出す速度に実質的に対応するように選択することができ、これが、このような操作中に、成形体が常に、成形体自体の重量により発生する重量力よりも小さい力を受けることになる理由である。このように、押出成形体の引張強度が十分高く、操作作用力により生じる成形体の変形を必ず、実質的に防止することができる。
【0016】
係合領域が成形体束の上に、少なくとも幾つかの領域における引張強度が増加することにより形成される場合、これにより、紡糸開始方法における成形体束のハンドリングを非常に有利にして簡単にすることができる。結局のところ、係合領域を成形体束の上に形成することにより、次の方法工程において、成形体束を操作して、成形体束に、さらなる処理を容易に、かつ確実に施すことができる。さらに、定義された係合領域により、成形体束の機械ベースのハンドリング及び操作を自動で行なうことができる。さらに、成形体が、紡糸溶液と比較して、1.5倍増加した粘性を係合領域に有する場合、成形体束の非常に確実なハンドリングを保証することができる。この目的のために、成形体の引張強度は、例えば成形体を成形体束に掛合した後に、係合領域に実質的に一致する領域において増加する。このようなことから、成形体束の安全かつ確実なハンドリング、より具体的には、機械ベースの全自動操作を可能にすることができる。
【0017】
成形体束のハンドリングは、成形体が、紡糸溶液と比較して、2倍、より具体的には、4倍増加した粘性を、成形体の係合領域に有する場合に、より一層確実に行なうことができる。
【0018】
係合領域における成形体の引張強度は、この場合、破断までの成形体当たりの負荷支持容量が、少なくとも0.5mN、より具体的には、少なくとも1mNとなるように増加するので有利となり得る。
【0019】
さらに、直径が1~20cmの直径、より具体的には、3~12cmの直径を有する成形体束の上の係合領域が形成される場合、紡糸開始方法の再現性をさらに高めることができる。結局のところ、このような成形体束は、追加の方法工程における非常に確実なハンドリング状態、より具体的には、確実な機械把持可能性により有利であることが分かっている。
【0020】
成形体を成形体束に掛合すること、及び/又は成形体束を引き取り延伸部材に送り込むことが機械で行なわれる場合、この場合も同じく、紡糸開始方法の確実性及び再現性をかなり向上させることができる。より具体的には、成形体を手作業で掛合することにより生じる破断した成形体又は不所望な結び目/厚化のような紡糸開始欠陥を回避することができる。このようなことから、このような紡糸開始欠陥に起因する紡糸開始の再開が必要になることを防止することができる。さらに、成形体を機械ベースで掛合すること、及び成形体束を引き取り延伸部材に機械ベースで送り込むことはそれぞれ、手作業による紡糸開始方法と比較して、作業労力を大幅に減らすこと、及び作業者に必要とされる物理的労力を大幅に減らすことの要因となることができる。このようなことから、紡糸開始機の手順的に簡単かつ確実な紡糸開始を確保することができる。
【0021】
特に簡単な紡糸開始方法は、自動把持装置が成形体束を掴み、機械を使用することにより、成形体束を紡糸装置の引き取り延伸部材に送り込む場合に作製することができる。この場合、自動把持装置は、例えばマニピュレータアームのグリッパーとすることができ、グリッパーは成形体束を、ねじった後に掴み、成形体束を引き取り延伸部材に、マニピュレータアームを移動させることにより搬送して、成形体束を引き取り延伸部材に供給する(例えば、締め付ける、クランプする、固定することなどにより)。この場合、成形体束を引き取り延伸部材に供給するマニピュレータアームは、移動速度及び運動様式の両方に関して成形体の押し出しに合わせるだけで済み、より具体的には、成形体の引き取り速度に合わせるだけで済み、有利である。運動経路における過度に速い速度、又は不所望な引き取り角度により今度は、紡糸開始欠陥が生じるようになり、より具体的には、紡糸カーテン内の成形体が破断するようになり、これにより、紡糸開始プロセスが再度行なわれる必要がある。本発明による紡糸開始方法により、より具体的には、成形体の引張強度が増加することにより、上に述べた紡糸開始欠陥を回避することができ、それに応じて、高度の再現性を有する紡糸開始方法を作製することができ、この紡糸開始方法は全自動で実行することもでき、プロセスの過程で紡糸システムの作業者に必要とされる労力を、既知の方法と比較して、大幅に減らすことができる。
【0022】
さらに、高度のプロセス安全性を、把持装置が成形体束を、形成された係合領域で掴む場合に保証することができる。
【0023】
さらに、紡糸開始方法は、成形繊維束を、自動把持装置で掴んだ後に、切り離す場合に、より一層確実となるように設計することができる。有利な点として、繊維体束をこの場合、係合領域の下で切り離して、成形体束の下側部分を切断するようにする。このように、切断した成形体束を挿入して紡糸浴槽中の搬送方向変更部材の周りに配置するだけでなく、成形体束を引き取り延伸部材に引き続き送り込むのをかなり容易にすることができる。
【0024】
成形体の引張強度を増加させるために、成形体の押し出し後に冷却する場合、紡糸開始方法の確実性を技術的に非常に簡単に増加させることができる。結局のところ、成形体を少なくとも幾つかの領域で冷却することにより、成形体を形成するために押し出される紡糸ドープの粘性を増加させることができるので、成形体の十分な引張強度を実現して、成形体及び成形体束の機械ベースの操作がそれぞれ可能になる。
【0025】
上に述べた利点は、冷却後の成形体の温度が、紡糸溶液の温度よりも少なくとも10℃低くなる場合に非常に簡単に実現することができる。例えば、成形体をリヨセル法に従って押し出す場合、成形体の温度、具体的には、紡糸溶液から押し出した直後の成形体の温度の10℃の減少により、粘性が少なくとも2倍増加する。成形体を少なくとも幾つかの領域で、紡糸溶液と比較して、少なくとも20℃、より好ましくは、少なくとも30℃冷却することが特に好ましい。このように、十分高い引張強度を成形体内で実現することができる。
【0026】
前記方法は、成形体の冷却が、冷気流を成形体に少なくとも幾つかの領域で吹き付けることにより行なわれる場合に非常に確実になるように設計することができる。この場合に使用される冷気流は、好ましくは、湿気量を有する気流とすることができ、より具体的には、5%超の湿気量を有する気流とすることができる。結局のところ、連続冷気流は、成形体の確実な冷却を、成形体を紡糸口金から押し出した後にもたらすことができる。
【0027】
前記方法は、成形体の冷却が、少なくとも幾つかの領域に対して冷却液を噴霧することにより行なわれる場合に非常に確実になるように設計することもできる。あるいは、成形体を、成形体の少なくとも幾つかの領域を冷却液に浸漬することにより冷却することも可能である。この場合、冷却液は、例えば水又は溶媒を含む水溶液であることが好ましい。結局のところ、冷却液を成形体に塗布することにより、非常に迅速かつ確実な冷却を行なうことができるので、成形体の強度を増加させることができる。
【0028】
上に述べた利点は、冷却液が溶解セルロースの凝固剤を含有する場合にさらに向上させることができる。例えば、成形体がリヨセル法に従って形成される場合、凝固剤は、水及び第三級アミンオキシドの混合物とすることができる。凝固剤により、成形体の強度がさらに増加して、成形体の非常に確実な機械ベースの操作及び/又は自動操作を可能にすることができる。
【0029】
成形体を成形体束に、紡糸カーテンをねじり軸線回りにねじることにより掛合する場合、均質な成形体束に機械ベースで結束することは、手順的に簡単に行なうことができる。紡糸カーテンをねじる場合、様々な成形体を共通接触点回りに互いにねじってコンパクトな成形体束が接触点に形成されるようにする。紡糸カーテンをねじることは、すなわち様々な成形体を共通接触点回りにねじることは、殆ど全ての成形体を束に確実に掛合することができるので、成形体を結束している間の欠陥率が低いことが好ましいという点で非常に有利な効果をもたらすこともできる。さらに、これは、かなり小さい物理的労力で行なうことができる。また、紡糸装置で紡糸開始を行なう既知の先行技術による方法では、より具体的には、成形体を紡糸口金から押し出した後に成形体を不十分な速さで取り出すことにより、成形体が積み重なって、紡糸カーテンが紡糸開始中に膨れることが起こり得る。紡糸カーテンが膨れている間、紡糸カーテン内の個々の成形体が今度は、互いにくっつく可能性があり、これは、成形体束の完全性及び均質性に非常に大きな悪影響を及ぼす。紡糸カーテンをねじることにより、より具体的には、コンパクトな成形体束が形成されるだけでなく、ねじることにより、成形体を紡糸口金から制御性良く連続的に取り出すことを確保することもでき、これにより、成形体が積み重なって、紡糸カーテンが膨れるのを確実に防止することができるので、これらの不具合を克服することができる。
【0030】
ねじり軸線が押出成形体の押出方向に略平行である場合、紡糸カーテンをねじって成形体束にすることは、行なうことが非常に容易である。さらに、ねじり軸線が紡糸カーテンの中心を通過する場合、紡糸カーテンのねじれが全ての成形体に対して均等に、かつ対称に作用することを確保することができる。このようなことから、紡糸開始過程において、内部応力のない非常に均質な成形体束を形成することが可能となり、これにより、紡糸開始欠陥の影響の受け易さをさらに低減することができる。これにより、非常に確実であり再現性のある紡糸開始方法を提供することが可能となる。
【0031】
上に述べた利点は、ねじり手段が回転可能なターンテーブルとして形成され、ターンテーブルの回転軸線が成形体の押出方向に略平行に延びている場合に、プロセス技術により非常に容易に実現される。
【0032】
紡糸カーテンをねじり軸線回りにねじる代わりに、機械ベースで結束して均質な成形体束にすることは、成形体を成形体束に、紡糸カーテンをスリングで包み、スリングをきつく引っ張ることにより掛合する場合に、手順的に簡単に行なうこともできる。結局のところ、開繊紡糸カーテンをスリングで包み、引き続きスリングをきつく引っ張ることにより、コンパクトな成形体束を確実に形成することができる。紡糸カーテンをスリングで包むことにより、紡糸カーテン全体を確実に包囲することができ、良好に定義された接触点に結束することができる。さらに、包むことは、非常に迅速に行なうことができ、これによりさらに、自動処理の恩恵がもたらされる。
【0033】
さらに、機械ベースで結束して均質な成形体束にすることは、成形体を成形体束に、紡糸カーテンを、断面が小さくなる漏斗内を通過させることにより掛合する場合に、手順的に簡単に行なうことができる。
【0034】
さらに、本発明は、紡糸装置で紡糸開始を行なうための紡糸開始装置に関するものであり、紡糸開始装置は、紡糸装置の紡糸口金から押し出される成形体を結束して成形体束にする結束装置を含む。
【0035】
したがって、本発明の別の目的は、前述したタイプの紡糸開始装置を改良して、紡糸装置で紡糸開始を行なう方法を容易に、かつ再現可能に、物理的労力を殆ど伴うことなく実施することができることにある。
【0036】
本発明は、紡糸開始装置に関して定義された目的を、独立請求項13に記載の特徴により達成する。
【0037】
さらに、紡糸開始装置が、第1エンドエフェクタを備える第1マニピュレータアームを含む場合、簡単で再現性のある紡糸開始を可能にする安定した紡糸装置を作製することができ、これにより、簡単で再現性のある開始が可能になる。この場合、より具体的には、紡糸開始装置は、紡糸装置の紡糸開始を機械ベースで行なって、紡糸装置の作業者に必要とされる物理的労力及びモータに関する労力を減らすことができる。冒頭に述べた既知の紡糸装置は、紡糸開始手順中に紡糸口金から押し出される成形体束を紡糸装置の引き取り延伸部材に供給するために膨大な物理的労力を必要とするが、本発明による紡糸装置に必要な物理的労力は比較的小さいので、作業者の負担を大幅に軽くすることができる。さらに、本発明による紡糸装置は、ハンドリングが非常に容易であり、操作の安全性が高いので、有利であることが分かっている。紡糸装置のハンドリングは、第1エンドエフェクタが成形体束を掴むグリッパーを含む場合にさらに簡易化することができる。この場合、第1マニピュレータアームのグリッパーは、前記グリッパーが、成形体束を確実に掴み、成形体束を紡糸装置の引き取り延伸部材に送り込むことができるように構成することができる。このようなグリッパーは、例えば1指グリッパー、2指グリッパー、又は多指グリッパー、吸引グリッパー、又は例えばネイルボードグリッパーのような機械式グリッパー、空圧式グリッパー、又は接着式グリッパーとすることができる。紡糸口金から引き取り延伸部材への成形体束の搬送は、第1マニピュレータアームを、より具体的には、空間内の自由に選択可能な軌跡に沿って移動させることにより行なうことができる。この場合、紡糸装置で紡糸開始を行なう方法は、成形体束を手作業で挿入する比較的物理的に非常に骨が折れる再現が困難な工程を省くことができる。これは、紡糸装置の作業者に必要とされる物理的労力の大幅な低減を表わすのみならず、紡糸装置を操作する際のエラーに対する安全性の強化に大きく寄与することもできる。このようなことから、本発明による紡糸開始装置は、紡糸装置の部分自動紡糸開始又は全自動紡糸開始を可能にする。
【0038】
一般に、本発明による紡糸開始装置は、セルロース成形体を、水、セルロース、及び第三級アミンオキシドを含有する紡糸溶液から押し出す紡糸装置で紡糸開始を行なうために適しているので非常に好ましい。
【0039】
さらに、紡糸開始装置が、第2エンドエフェクタを備える第2マニピュレータアームを含み、第2エンドエフェクタが結束装置を含む場合、結束装置を備える非常にフレキシブルな紡糸開始装置を作製することができ、前記結束装置はこのようなことから、使用位置と休止位置の間で必要に応じて移動可能なように設計される。したがって、紡糸開始装置は、前記方法の要求にフレキシブルに応えることができ:例えば、結束装置は、使用状態になっていないときに、休止位置に移動させることにより、紡糸装置の結束装置による不所望な干渉を回避することができる。このようなことから、結束装置は、プロセスの段階に応じて、紡糸口金と紡糸浴槽との間で後退及び前進させることができる。このように、より確実な紡糸装置を作製することができる。
【0040】
さらに、構造的に簡単な結束装置は、結束装置が回転装置により形成される場合に作製することができる。さらに、回転装置が、回転可能な手段を含む場合、及び回転可能な手段が成形体をねじるねじり手段として構成される場合、紡糸装置の非常に安定した簡単な紡糸開始装置を作製することができ、より具体的には、これにより、紡糸装置で紡糸開始を行なう方法をさらに簡易化することができる。この場合、ねじり手段を備える回転装置は、より具体的には、開繊紡糸カーテンの押出成形体の端部を受け入れて、成形体の端部をねじり手段に付着させることができ、紡糸カーテンのねじれを、ねじり手段の回転運動により生じさせるように構成することができる。このようなことから、ねじり手段の回転運動、及びそれに関連して、紡糸カーテンをねじって成形体束にすることにより、成形体を結束する難しい工程を構造的に非常に簡単な装置に置き換えることができる。
【0041】
紡糸開始装置の確実性は、ねじり手段が、成形体とねじり手段との間の接着を増加させる保持部材を含む場合に、さらに増加させることができる。これは特に、保持部材がフックとして形成される場合に当てはまる。
【0042】
ねじり手段の回転軸線が成形体の押出方向に略平行である場合、ねじり手段は、共通接触点回りの成形体の確実な低応力のねじれを可能にすることができる。
【0043】
ねじり手段がターンテーブルとして形成される場合、押出成形体のねじれは、構造的に非常に簡単な方法で実現することができる。これは特に、ターンテーブルを紡糸口金から押し出される成形体の押出方向に略平行に回転させることができるようにターンテーブルが構成される場合に当てはまる。結局のところ、この場合、成形体の押出方向に平行なねじり軸線回りの押出成形体からなる開繊紡糸カーテンをねじる回転装置を作製することができ、回転装置は、コンパクトな成形体束を、非常に安定した確実な方法で形成することができる。このようなことから、紡糸装置の全体的な確実性及び安定性をさらに増加させることができる。これは特に、ねじり手段が押出成形体を共通のねじり軸線回りにねじるように構成される場合、及び成形体のねじり軸線がねじり手段の回転軸線と一致する場合に当てはまる。
【0044】
紡糸開始装置による成形体束のハンドリングは、紡糸開始装置が、成形体束を切り離す切断装置も含む場合にさらに向上させることができる。好ましくは、切断装置は、第1マニピュレータアームに設けることができる、より好ましくは、グリッパーに操作可能に接続することができ、成形体束の切り離しが、グリッパーで掴む手順が無事に行なわれた後に自動的に行われるようにする。
【0045】
本発明の別の目的は、冒頭で述べたタイプの紡糸装置をより確実なものとし、紡糸装置の紡糸開始を容易にすることにある。
【0046】
本発明は、この目的を、成形体の連続押出を行なう紡糸装置、より具体的には、セルロース成形体を、水、セルロース、及び第三アミンオキシドを含有する紡糸溶液から押し出す紡糸装置を提供することにより解決し、紡糸装置は、紡糸浴を含む少なくとも1つの紡糸浴槽と、紡糸浴槽に関連付けられて成形体を紡糸口金から紡糸浴に押し出す紡糸口金と、請求項13から請求項15のいずれかに記載の紡糸装置で紡糸開始を行なうための紡糸開始装置と、を含む。
【0047】
紡糸装置が、押出成形体の少なくとも幾つかの領域を冷却する冷却装置も含む場合、紡糸装置は、紡糸開始を非常に確実に、かつ再現可能にすることができる。
【0048】
以下に、本発明の実施形態が、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、第1の実施形態による紡糸装置で紡糸開始を行なう本発明による方法を実行する前の本発明による紡糸装置の部分破断側面図を示している。
図2図2は、第1の方法工程中の第1の実施形態による紡糸装置で紡糸開始を行なう本発明による方法の概略図を示している。
図3図3は、第1の方法工程中の第2の実施形態による紡糸装置で紡糸開始を行なう本発明による方法の概略図を示している。
図4図4は、紡糸開始方法の完了後の本発明による紡糸装置の部分破断側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1図4を参照すると、本発明の第1及び第2の実施形態による紡糸装置1,101が、紡糸開始法の様々な段階で示されている。図1は、紡糸開始前の、すなわち図2及び図3に示すように、成形体3を成形体束4に結束装置5で掛合する前の押出成形体3の開繊紡糸カーテン2を備える紡糸装置1を示している。さらに、紡糸装置1は紡糸溶液6を含み、紡糸溶液は、複数の紡糸口金7から押し出されて成形体3を形成する。この場合、紡糸溶液6は、水、セルロース、及び第三級アミンオキシドを含有する溶液であることが好ましい。紡糸口金7の下に、紡糸浴9を含む紡糸浴槽8が設けられる。好ましくは、水及び第三級アミンオキシドの混合物が紡糸浴9として使用される。
【0051】
さらに、紡糸装置1は、押出成形体3の強度を少なくとも幾つかの領域において、これらの押出成形体を成形体束4に掛合いする前に増加させる補強装置40を含む。例えば、補強装置40は冷却装置41とすることができ、冷却装置41は、冷却液43を押出成形体3に対して塗工して押出成形体の強度を、押出成形体を冷却することにより増加させる。冷却することに替えて、又は冷却する他に、補強装置40は、凝固剤を成形体3に対して塗工することもでき、これにより、成形体3に溶解していたセルロースが沈着るので、強度がさらに増加する。
【0052】
図3は、別の冷却装置42を補強装置40として含む別の紡糸装置101を示している。この場合、冷却装置42は、冷気流44を生成し、冷気流44は、押出成形体3の上を流れて、押出成形体を少なくとも幾つかの領域において冷却することにより、押出成形体の強度を増加させる。
【0053】
冷却液43及び冷気流44はそれぞれ、それぞれの冷却装置41,42により押出成形体3の方に向かうようになって、より高くなった強度の係合領域29を成形体3の上に形成し、成形体3は、紡糸溶液6の粘性の少なくとも1.5倍の粘性を有する。好ましくは、係合領域29は、図2及び図3に示すように、掛合した後の成形体束4の最小直径領域28にある。
【0054】
図4の一部では、紡糸開始後の紡糸装置1を示している。したがって、成形体3を結束装置5で成形体束4に掛合しており、成形体束4は紡糸装置1の引き取り延伸部材10により連続的に搬送されていることにより、紡糸口金7からの成形体3の連続押出が行なわれる。
【0055】
図1図3からも分かるように、紡糸装置1,101の各紡糸装置は、本発明の第1及び第2の実施形態に従って、紡糸装置1,101で紡糸開始を行なう方法を実行する紡糸開始装置11及び51をそれぞれ含む。紡糸開始装置11,51の各紡糸開始装置が今度は、結束装置5、第1マニピュレータアーム12、及び第2マニピュレータアーム13を含む。第1マニピュレータアーム12には、第1エンドエフェクタ14が設けられ、前記エンドエフェクタ14はグリッパー16として形成される。この場合、グリッパー16は、前記グリッパーで成形体束4を力嵌めにより封止して掴むことができるように構成される。さらに、グリッパー16は、第1マニピュレータアーム12に移動可能かつ制御可能に接続される。マニピュレータアーム12が自由に移動可能であることに関連して、グリッパー16は、掴んだ成形体束4を任意の所定の軌跡に沿って移動させることができる。
【0056】
図1及び図2に示すように、紡糸開始装置11は、第1の実施形態に従って、回転装置17を含み、回転装置17により、開繊成形体カーテン2内の成形体3がねじれるようになるので、成形体3を成形体束4に掛合するようになる。この目的のために、回転装置17は、ターンテーブル31として形成されることが好ましい回転可能なねじり手段18を含み、ねじり手段18及びターンテーブル31はそれぞれ、第2マニピュレータアーム13の第2エンドエフェクタ15として設けられて、結束装置5の機能を実行する。ねじり手段18の回転軸線19、したがって紡糸カーテン2のねじり軸線20は、より具体的には、開繊紡糸カーテン2内の成形体3の押出方向32に平行に延びている。
【0057】
図3に示すように、紡糸開始装置51は、第2の実施形態に従って、包囲装置35を含み、包囲装置35は、開繊成形体カーテン2内の成形体3をスリング36で包むことができる。スリング36をきつく引っ張ることにより、成形体3を成形体束4に掛合する。包囲装置35は、第2マニピュレータアーム13のエンドエフェクタ15として設けられ、結束装置5の機能を実行する。
【0058】
紡糸開始装置11及び51の該当する結束装置5は、紡糸口金7と紡糸浴槽8との間で第2マニピュレータアーム13を介して前進及び後退させることができることにより、結束装置5を休止位置21から使用位置22に必要に応じて移動させることができる。このようなことから、結束装置5は、休止位置21に、成形体3の連続押出中に留まることができ、紡糸口金7と紡糸浴槽8との間の障害物を構成しないことになる。紡糸装置1の紡糸開始を再開することが必要になる場合、結束装置5を使用位置22に移動させて、本発明による紡糸開始方法の実行を可能にすることができる。
【0059】
紡糸装置1,101で紡糸開始を行なう本発明の方法は、図1図4に概略的に示されている。図1は、紡糸開始方法の第1工程における紡糸装置1及び同等の紡糸装置101を示している。成形体3は、紡糸口金7から開繊紡糸カーテン2の形態で押し出される。成形体3の押し出し後、成形体は、強度が少なくとも幾つかの領域において補強装置40を介して増加する。そのようにするために、係合領域29を成形体3の上に形成し、成形体3を成形体束4に掛合した後、成形体束をグリッパー16で掴んで確実に操作することができる。この場合、成形体の強度の増加は、冷却装置41及び42を介して、冷却液43又は冷気流44を成形体3に塗布することにより実現される。
【0060】
追加工程-図2又は図3に概略的に示されているような-では、結束装置5、より具体的には、紡糸装置1のねじり手段18及びターンテーブル31はそれぞれ、又は紡糸装置101の包囲装置35は、紡糸口金7と紡糸浴槽8との間に配置されて、押出成形体3の端部23に、結束装置5が係合することができるようにする。
【0061】
図2の第1の実施形態の変形例では、成形体端部23は、ターンテーブル31として形成されるねじり手段18の保持部材24及びフック25にそれぞれ接着することにより、成形体3とねじり手段18との間の接着を増加させて、成形体3がねじり手段18の上を不所望に滑るのが防止されるようにする。好ましくは、ねじり手段18は、前記方法の開始時に停止しているが、成形体端部23がねじり手段18に衝突する前に、回転し始めるようにすることもできる。成形体端部23がねじり手段18に衝突した後、ねじり手段18の回転速度は、所定の最終速度に達するまで増加させることになる。これは、例えば事前に定義された加速様式に従って、段階的に、又は連続的に行なうことができる。ねじり手段18の回転により、紡糸カーテン2は、ねじり軸線20回りにねじれるようになり、ねじり軸線20は、成形体3の押出方向32に平行に配置され、紡糸カーテン2の中心を通ることが好ましい。紡糸カーテン2のねじれにより、成形体束4が、成形体3の強度を増加させた係合領域29に形成されることが好ましい。
【0062】
図3の第2の実施形態の変形例では、成形体端部23は、包囲装置35のスリング開口部36内を移動する。次に、スリング36をきつく引っ張り、成形体3を成形体束4に掛合する。この場合、成形体束4が再び、成形体3の強度を以前に増加させた係合領域29に形成される。
【0063】
図2及び図3はそれぞれ、結束装置5を結束装置の休止位置21から結束装置の使用位置22に第2マニピュレータアーム13を介して移動させて紡糸口金7と紡糸浴層8との間に配置した後の紡糸装置1及び101をそれぞれ示している。次に、紡糸カーテン2を、上に説明したように、第2の方法工程で、結束装置5を介して形成することにより、成形体束4を形成した。続いて、成形体束4を次に、紡糸装置1,101の引き取り延伸部材10に供給することができる。
【0064】
この場合、図4は最後の方法工程を示しており、グリッパー16により確実に保持された成形体束4をまず、紡糸浴槽8内の搬送方向変更部材26の周りの紡糸浴9中を、第1マニピュレータアーム12を介して搬送する。成形体3の強度が、成形体束4の係合領域29において増加するので、成形体束4の確実な操作を実行することができ、操作中の個々の成形体3の破断を回避することができる。続いて、成形体束4を再び紡糸浴槽8から移動させて、引き取り延伸部材10に挿入し、引き取り延伸部材10は、具体的には、一列に並置される引き取りゴデットローラー10からなる。成形体束4を引き取り延伸部材10に挿入した後、成形体3を紡糸口金7から連続的に押し出すことが可能となることにより、紡糸開始法は無事に完了している。
図1
図2
図3
図4