(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】配線基板および素子付配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20231219BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20231219BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H05K1/02 R
H05K3/00 X
H01L23/12 Z
(21)【出願番号】P 2019063901
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-01-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 裕之
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-143395(JP,A)
【文献】特開平10-056272(JP,A)
【文献】特開2011-233853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/00
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板の第一面側および第二面側の少なくとも一方に形成された配線層と、
前記支持基板の前記第一面側に形成された識別情報部と、
を有する配線基板であって、
前記識別情報部は、前記配線基板の内部に存在し、
前記配線基板は、平面視上、前記識別情報部と重複する位置に透明部材を有し、
前記配線基板の外部から、前記透明部材を介して、前記識別情報部を確認可能であ
り、
前記配線基板が、前記透明部材として、透明性を有する前記支持基板を有し、
前記支持基板、前記識別情報部および前記配線層が、この順に形成されており、
平面視上、前記配線層が、前記識別情報部の全体を包含するように重複している、配線基板。
【請求項2】
支持基板と、
前記支持基板の第一面側および第二面側の少なくとも一方に形成された配線層と、
前記支持基板の前記第一面側に形成された識別情報部と、
を有する配線基板であって、
前記識別情報部は、前記配線基板の内部に存在し、
前記配線基板は、平面視上、前記識別情報部と重複する位置に透明部材を有し、
前記配線基板の外部から、前記透明部材を介して、前記識別情報部を確認可能であり、
前記配線基板が、前記透明部材として、絶縁性樹脂を含有する透明絶縁層を有し、
前記配線基板が、前記透明絶縁層として、前記支持基板の前記第一面側に形成された第一透明絶縁層を有し、
前記支持基板、前記識別情報部および前記第一透明絶縁層が、この順に形成されており
前記支持基板および前記識別情報部の間に、非透明絶縁層が形成されている、配線基板。
【請求項3】
前記識別情報部が、前記支持基板と直接接触している、請求項1
または請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
請求項1から
請求項3までのいずれかの請求項に記載の配線基板と、
前記配線基板に実装された素子と、
を有する素子付配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板および素子付配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の素子を実装するための配線基板が知られている。配線基板に、製造時の情報が記載された識別情報部が形成される場合があり、識別情報部は、例えば配線基板の不具合の原因を究明するために用いられる。
【0003】
特許文献1には、基板の一側面に電子部品を実装して電子部品モジュールを構成する配線基板であって、基板の他側面に配される導電性パターンに除去部を設け、導電性パターンの除去部を、識別情報を表示する二次元コードの形成部位とした配線基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配線基板において、識別情報部が外部に露出するように配置されていると、薬液等の化学的作用や、擦れ等の物理的作用により、識別情報部が破損する場合がある。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、識別情報部の破損を防止した配線基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示においては、支持基板と、上記支持基板の第一面側および第二面側の少なくとも一方に形成された配線層と、上記支持基板の上記第一面側に形成された識別情報部と、を有する配線基板であって、上記識別情報部は、上記配線基板の内部に存在し、上記配線基板は、平面視上、上記識別情報部と重複する位置に透明部材を有し、上記配線基板の外部から、上記透明部材を介して、上記識別情報部を確認可能である、配線基板を提供する。
【0007】
本開示によれば、識別情報部が配線基板の内部に存在することから、識別情報部の破損を防止できる。さらに、内部に存在する識別情報部を、透明部材を介して確認可能であることから、最終製品である配線基板から、製造時の情報を確認することができる。そのため、追跡可能性(トレイサビリティ)が良好な配線基板とすることができる。
【0008】
上記開示においては、上記配線基板が、上記透明部材として、絶縁性樹脂を含有する透明絶縁層を有していてもよい。
【0009】
上記開示においては、上記配線基板が、上記透明絶縁層として、上記支持基板の上記第一面側に形成された第一透明絶縁層を有し、上記支持基板、上記識別情報部および上記第一透明絶縁層が、この順に形成されていてもよい。
【0010】
上記開示においては、上記配線基板が、上記透明部材として、透明性を有する上記支持基板を有していてもよい。
【0011】
上記開示においては、上記支持基板、上記識別情報部および上記配線層が、この順に形成されていてもよい。
【0012】
上記開示においては、平面視上、上記配線層が、上記識別情報部の全体を包含していてもよい。
【0013】
上記開示においては、上記配線基板が、上記透明部材として、透明性を有する上記支持基板、および、絶縁性樹脂を含有する透明絶縁層を有していてもよい。
【0014】
上記開示においては、上記配線基板が、上記透明絶縁層として、上記支持基板の上記第二面側に形成された第二透明絶縁層を有し、上記第二透明絶縁層、上記支持基板、上記識別情報部および上記配線層が、この順に形成されていてもよい。
【0015】
上記開示においては、上記配線基板が、上記透明絶縁層として、上記支持基板の上記第一面側に形成された第一透明絶縁層と、上記支持基板の上記第二面側に形成された第二透明絶縁層とを有し、上記第二透明絶縁層、上記支持基板、上記識別情報部および上記第一透明絶縁層が、この順に形成されていてもよい。
【0016】
上記開示においては、上記識別情報部が、上記支持基板と直接接触していてもよい。
【0017】
上記開示においては、上記支持基板および上記識別情報部の間に、非透明絶縁層が形成されていてもよい。
【0018】
また、本開示においては、上述した配線基板と、上記配線基板に実装された素子と、を有する素子付配線基板を提供する。
【0019】
本開示によれば、上述した配線基板を用いることにより、識別情報部の破損を防止した素子付配線基板とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示における配線基板は、識別情報部の破損を防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示における、多面付された配線基板を例示する概略平面図である。
【
図2】本開示における配線基板を例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における配線基板を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における配線基板を例示する概略断面図である。
【
図5】本開示における配線基板を例示する概略断面図である。
【
図6】本開示における配線基板を例示する概略断面図である。
【
図7】本開示における配線基板を例示する概略断面図である。
【
図8】本開示における配線基板を例示する概略断面図である。
【
図9】本開示における配線基板を例示する概略断面図である。
【
図10】本開示における配線基板を例示する模式図である。
【
図11】本開示における素子付配線基板を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
下記に、図面等を参照しながら本開示における実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示における解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0023】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。同様に、本明細書において、「ある部材の面側に」と表記する場合、特段の断りのない限りは、ある部材の面に接するように直接、他の部材を配置する場合と、ある部材の面に別の部材の介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0024】
A.配線基板
図1は、本開示における、多面付された配線基板を例示する概略平面図である。
図1においては、4個の配線基板10が面付されており、面付された配線基板の全体の識別情報部16と、各々の配線基板10の識別情報部6とが形成されている。カットラインCに沿って切断することにより、各々の配線基板10が得られる。
【0025】
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図2に示される配線基板10は、支持基板1と、支持基板1の第一面S
1側および第二面S
2側に形成された複数の配線層3と、支持基板1の第一面S
1側に形成された識別情報部6と、を有する。また、配線基板10は、外側に位置する配線層3および内側に位置する配線層3の間に層間絶縁層2を有し、外側に位置する配線層3を覆うカバー絶縁層4を有する。外側に位置する配線層3には、素子と接続するための接続部5が形成されている。
【0026】
また、
図2に示すように、識別情報部6は配線基板10の内部に存在する。また、配線基板10は、平面視上、識別情報部6と重複する位置に透明部材を有する。
図2においては、支持基板1の第一面S
1側に形成された第一透明絶縁層T
1が、透明部材に該当する。
図2では、層間絶縁層2およびカバー絶縁層4の両方が、第一透明絶縁層T
1である。本開示においては、配線基板10の外部から、透明部材を介して、識別情報部6を確認可能である。
図2においては、支持基板1の第一面S
1から支持基板1の第二面S
2側に向かう方向D
12から観察することで、第一透明絶縁層T
1を介して識別情報部6を確認可能である。なお、
図2において、支持基板1の第二面S
2側に形成された層間絶縁層2およびカバー絶縁層4は、非透明絶縁層Nである。
【0027】
本開示によれば、識別情報部が配線基板の内部に存在することから、識別情報部の破損を防止できる。さらに、内部に存在する識別情報部を、透明部材を介して確認可能であることから、最終製品である配線基板から、製造時の情報を確認することができる。そのため、追跡可能性(トレイサビリティ)が良好な配線基板とすることができる。
【0028】
また、従来、製品設計の関係で、製造時の情報を、配線基板に残すことが困難な場合がある。さらに、配線基板の最表面に識別情報部を形成する場合、製造時の情報を事後的に記録することになり、タイムラグによる記録ミスが生じる可能性がある。これに対して、本開示においては、例えば、製造初期段階で識別情報部を形成することで、製造時の情報を、比較的自由度が高い状況で、タイムラグなく記録することができる。
【0029】
1.配線基板の構成
本開示における配線基板は、支持基板、配線層、識別情報部を少なくとも有する。また、識別情報部は、配線基板の内部に存在する。内部とは、外部に露出しない位置をいう。さらに、配線基板は、平面視上、識別情報部と重複する位置に透明部材を有する。「透明部材」とは、配線基板の外部から、透明部材を介して、識別情報部を確認可能な程度に透明性を有する部材である。透明部材の全線透過率は、高いことが好ましく、例えば15%以上であり、20%以上であってもよく、30%以上であってもよい。全線透過率は、JIS K 7361-1(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)に基づいて測定される。測定には、例えば、紫外・可視・近赤外分光光度計(島津製作所UV-3600)および積分球付属装置(ISR-3100)を用いることができる。また、標準板として、例えば、米国ラブスフェア社製スペクトラロン(テフロン(登録商標)製)を用いることができる。
【0030】
なお、後述するように、支持基板、カバー絶縁層および層間絶縁層は、透明性を有しなくてもよい。これらの部材は、非透明部材と称することができる。非透明部材の全線透過率は、例えば1%以下であり、0.5%以下であってもよく、0.1%以下であってもよい。
【0031】
配線基板は、透明部材として、(i)絶縁性樹脂を含有する透明絶縁層を有していてもよく(第一実施態様)、(ii)透明性を有する支持基板を有していてもよく(第二実施態様)、(iii)絶縁性樹脂を含有する透明絶縁層、および、透明性を有する支持基板を有していてもよい(第三実施態様)。また、透明絶縁層は、一層であってもよく、二層以上であってもよい。
【0032】
(1)第一実施態様
配線基板は、透明部材として、絶縁性樹脂を含有する透明絶縁層を有していてもよい。例えば、
図3に示される配線基板10は、透明部材として、支持基板1の第一面S
1側に形成された第一透明絶縁層T
1を有する。なお、
図3における第一透明絶縁層T
1はカバー絶縁層4であるが、第一透明絶縁層T
1が層間絶縁層であってもよい。
【0033】
また、
図3に示すように、支持基板1、識別情報部6および第一透明絶縁層T
1が、この順に形成されていてもよい。この場合、支持基板1の第一面S
1から支持基板1の第二面S
2側に向かう方向D
12から観察することで、第一透明絶縁層T
1を介して識別情報部6を確認可能である。なお、
図3では、支持基板1の第二面S
2側に、他の層が形成されていないが、任意の他の層を設けることもできる。この点は、後述する
図4~
図6、
図9等においても同様である。
【0034】
また、
図4に示すように、支持基板1および識別情報部6の間に、非透明絶縁層Nが形成されていてもよい。具体的には、支持基板1、非透明絶縁層N、識別情報部6および第一透明絶縁層T
1が、この順に形成されていてもよい。このような場合であっても、方向D
12から観察することで、第一透明絶縁層T
1を介して識別情報部6を確認可能である。また、通常は、非透明絶縁層に用いられる材料の種類が、透明絶縁層に用いられる材料の種類よりも多い。そのため、例えば
図2に示すように、二層の透明絶縁層を形成する場合に比べて、
図4では、材料選択の幅が広がる。
【0035】
(2)第二実施態様
配線基板は、透明部材として、透明性を有する支持基板を有していてもよい。すなわち、支持基板を透明部材として用いてもよい。例えば、
図5に示される配線基板10は、透明部材として、透明性を有する支持基板1を有する。この場合、支持基板1の第二面S
2側から支持基板1の第一面S
1に向かう方向D
21から観察することで、支持基板1を介して識別情報部6を確認可能である。
【0036】
また、
図5に示すように、支持基板1、識別情報部6および配線層3が、この順に形成されていてもよい。配線層3が存在することで、識別情報部6のコントラストを明確にでき、識別情報部6の識別性が向上する。また、平面視上、配線層3は、識別情報部6の全体を包含していることが好ましい。すなわち、識別情報部6上に位置する配線層3はベタパターンであることが好ましい。コントラストが不均一になることを防止でき、識別情報部6の識別性が向上するからである。
【0037】
また、
図6に示すように、支持基板1、識別情報部6および非透明絶縁層Nが、この順に形成されていてもよい。非透明絶縁層Nが存在することで、識別情報部6のコントラストを明確にでき、識別情報部6の識別性が向上する。なお、
図6における非透明絶縁層Nはカバー絶縁層4であるが、非透明絶縁層Nが層間絶縁層であってもよい。
【0038】
(3)第三実施態様
配線基板は、透明部材として、絶縁性樹脂を含有する透明絶縁層、および、透明性を有する支持基板を有していてもよい。また、透明絶縁層は、支持基板の第一面側に形成された第一透明絶縁層であってもよく、支持基板の第二面側に形成された第二透明絶縁層であってもよく、第一透明絶縁層および第二透明絶縁層の両方であってもよい。
【0039】
例えば、
図7に示される配線基板10は、透明部材として、第二透明絶縁層T
2、および、透明性を有する支持基板1を有する。この場合、支持基板1の第二面S
2側から支持基板1の第一面S
1に向かう方向D
21から観察することで、第二透明絶縁層T
2および支持基板1を介して識別情報部6を確認可能である。
【0040】
また、
図7に示すように、第二透明絶縁層T
2、支持基板1、識別情報部6および配線層3が、この順に形成されていてもよい。配線層3が存在することで、識別情報部6のコントラストを明確にでき、識別情報部6の識別性が向上する。また、平面視上、配線層3は、識別情報部6の全体を包含していることが好ましい。すなわち、識別情報部6上に位置する配線層3はベタパターンであることが好ましい。コントラストが不均一になることを防止でき、識別情報部6の識別性が向上するからである。なお、
図7における第二透明絶縁層T
2はカバー絶縁層4であるが、第二透明絶縁層T
2が層間絶縁層であってもよい。
【0041】
例えば、
図8に示される配線基板10は、透明部材として、第二透明絶縁層T
2、透明性を有する支持基板1、および、第一透明絶縁層T
1を有する。
図8では、第二透明絶縁層T
2、支持基板1、識別情報部6および第一透明絶縁層T
1が、この順に形成されている。この場合、方向D
12および方向D
21の双方から、第二透明絶縁層T
2および支持基板1を介して識別情報部6を確認可能である。また、
図8に示すように、光源50からの透過光を利用すると、識別情報部6の識別性が向上する。なお、
図8における第一透明絶縁層T
1および第二透明絶縁層T
2はカバー絶縁層4であるが、それぞれ層間絶縁層であってもよい。なお、本開示における配線基板は、透過光により識別情報部の確認可能であってもよく、反射光により識別情報部の確認可能であってもよい。
【0042】
2.配線基板の部材
本開示における配線基板は、支持基板、配線層、識別情報部を少なくとも有する。さらに、層間絶縁層、カバー絶縁層、端子部等の他の層を有していてもよい。
【0043】
(1)識別情報部
本開示における識別情報部は、配線基板の内部に存在する。識別情報部には、製造時の情報が記録されている。製造時の情報としては、例えば、製造工程における管理情報(例えば、配線形成時の生産情報)が挙げられる。
図3に示すように、識別情報部6は、支持基板1と直接接触していてもよい。一方、
図4に示すように、識別情報部6は、支持基板1と直接接触していなくてもよい。また、配線基板は、識別情報部を一つ有していてもよく、二つ以上有していてもよい。
【0044】
本開示においては、平面視上、識別情報部と重複する位置に透明絶縁層が存在し、断面視上、厚さ方向と直交する方向において、透明絶縁層と隣り合うように、非透明樹脂層が存在していてもよい。例えば
図9に示すように、平面視上、識別情報部6と重複する位置に透明絶縁層Tが存在し、断面視上、厚さ方向D
Aと直交する方向D
Bにおいて、透明絶縁層Tと隣り合うように、非透明樹脂層Nが存在していてもよい。通常は、非透明絶縁層に用いられる材料の種類が、透明絶縁層に用いられる材料の種類よりも多い。そのため、識別情報部の近傍領域に透明絶縁層を用い、その周辺領域に非透明絶縁層を用いることで、材料選択の幅が広がるという利点がある。なお、
図9における透明絶縁層Tおよび非透明絶縁層Nはカバー絶縁層4であるが、それぞれ層間絶縁層であってもよい。
【0045】
本開示においては、識別情報部と、支持基板の端部との間に、配線層が形成されていることが好ましい。
図10(a)は、本開示における配線基板の一例を示す概略平面図であり、
図10(b)は
図10(a)のA-A線断面図である。
図10(a)、(b)に示すように、識別情報部6と、支持基板1の端部Xとの間に、配線層3が形成されていることが好ましい。配線層3が存在することで、例えば、透明絶縁層Tおよび支持基板1の間から薬液が侵入することを抑制できるからである。
【0046】
本開示においては、配線基板の外部から、透明部材を介して、識別情報部を確認可能である。識別情報部は、目視または検査機により、確認可能であることが好ましい。識別情報部の一例としては、インクパターンが挙げられる。インクパターンは、薬液等の化学的作用や、擦れ等の物理的作用により特に破損しやすい。これに対して、インクパターンを配線基板の内部に形成することで、インクパターンの破損を効果的に防止することができる。
【0047】
また、識別情報部として、支持基板の一部を用いてもよい。支持基板に対して、例えばレーザー照射を行うことで、識別情報部を形成することができる。また、識別情報部として、配線層の一部を用いてもよい。配線層の形成時に、所望のパターニングを行うことで、識別情報部を形成することができる。
【0048】
識別情報部の種類としては、例えば、バーコード等の一次コード、マトリックスコード、スタックコード等の二次コードが挙げられる。マトリックスコードの具体的としては、QRコード(登録商標)、ベリコードが挙げられる。また、識別情報部として、数字情報または文字情報を用いてもよい。
【0049】
(2)支持基板
支持基板は、後述する配線層等を支持する層である。支持基板は、透明性を有する支持基板であってもよく、透明性を有しない支持基板であってもよい。また、支持基板は、柔軟性を有していてもよく、有していなくてもよい。支持基板としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、セラミックス基板等の無機基板、樹脂基板、紙基板、金属基板が挙げられる。ガラス基板としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラスが挙げられる。樹脂基板としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル、アクリル樹脂、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレ)、ポリシクロオレフィン(例えばポリノルボルネン)、液晶性高分子化合物が挙げられる。また、支持基板として、ガラス-エポキシ樹脂、紙エポキシ、紙フェノール等の複合材を用いてもよい。さらに、支持基板として、TFT(Thin Film Transistor)基板を用いることもできる。
【0050】
支持基板の平面視形状は、特に限定されないが、例えば、長方形、正方形等の矩形が挙げられる。支持基板が矩形である場合、一辺の長さは、例えば10mm以上であり、100mm以上であってもよい。一方、一辺の長さは、例えば2000mm以下である。一辺の長さは、例えば、10mm以上2000mm以下であり、100mm以上2000mm以下であってもよい。また、支持基板の厚さは、例えば10μm以上であり、100μm以上であってもよく、300μm以上であってもよい。一方、支持基板の厚さは、例えば、1000μm以下である。支持基板の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下であり、100μm以上1000μm以下であってもよく、300μm以上1000μm以下であってもよい。
【0051】
(3)配線層
配線層は、支持基板の第一面側および第二面側の少なくとも一方に形成される。配線層は、支持基板の第一面側のみに形成されていてもよく、支持基板の第二面側のみに形成されていてもよく、支持基板の両面側に形成されていてもよい。また、配線層は、接続部を形成するためのパッド部を有することが好ましい。また、上述したように、平面視上、配線層が、識別情報部の全体を包含していてもよい。
【0052】
また、配線基板は、配線層を一層のみ有していてもよく、二層以上有していてもよい。後者の場合、支持基板および層間絶縁層の少なくとも一方を介して、二層の配線層が厚さ方向に積層されていることが好ましい。厚さ方向に積層された配線層は、ビアを介して、電気的に接続されていてもよい。
【0053】
配線層の材料としては、例えば、金属単体、合金、金属化合物の金属材料が挙げられる。金属材料に含まれる金属元素としては、例えは、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、モリブデン、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウムが挙げられる。中でも、配線層の材料は、銅、金、銀、白金、ロジウム、スズ、アルミニウム、ニッケル、クロム等の金属単体、または、これらの金属元素の少なくとも一種を含む合金が好ましい。また、配線層として、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の金属酸化物を用いることもできる。
【0054】
配線層の用途としては、例えば、グランド用配線、電源用配線、共通(コモン)配線、信号配線、ゲート配線、ドレイン配線、ソース配線、走査配線が挙げられる。
【0055】
配線層の形成方法は、アディティブ法であってもよく、サブトラクティブ法であってもよい。アディティブ法では、例えばフォトリソグラフィー法によりレジストパターンを作製し、レジストパターンから露出した部分に、めっき法を行うことにより、パターン状の配線層が得られる。電解めっき法を用いる場合は、レジストパターンを作製する前に、配線層を形成する基材(例えば支持基板、層間絶縁層)上に導電層を形成してもよい。サブトラクティブ法では、例えば、全面形成した配線層上にレジストパターンを作製し、レジストパターンから露出した部分をエッチングすることにより、パターン状の配線層が得られる。
【0056】
配線層の厚さは、例えば0.1μm以上であり、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。一方、配線層の厚さは、例えば20μm以下であり、15μm以下であってもよい。配線層の厚さは、例えば0.1μm以上20μm以下であり、0.5μm以上15μm以下であってもよく、1μm以上15μm以下であってもよく、3μm以上15μm以下であってもよく、5μm以上15μm以下であってもよい。例えばスパッタリング法により配線層を形成する場合、比較的薄い配線層を得ることができる。また、例えばめっき法により配線層を形成する場合には、比較的厚い配線層を得ることができる。
【0057】
(4)カバー絶縁層
カバー絶縁層は、配線層を覆い、パッド部に対応する位置に開口部を有することが好ましい。カバー絶縁層は、配線層の劣化および短絡を防止する機能を有する。カバー絶縁層は、支持基板の第一面側のみに形成されていてもよく、支持基板の第二面側のみに形成されていてもよく、支持基板の両面側に形成されていてもよい。また、カバー絶縁層は、透明性を有する絶縁層(透明絶縁層)であってもよく、透明性を有しない絶縁層(非透明絶縁層)であってもよい。
【0058】
カバー絶縁層の材料は、感光性材料であってもよく、非感光性材料であってもよい。また、カバー絶縁層の材料は、絶縁性樹脂であることが好ましい。絶縁性樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル、アクリル樹脂、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレ)、ポリシクロオレフィン(例えばポリノルボルネン)、液晶性高分子化合物が挙げられる。特に、透明絶縁層に用いられる絶縁性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂が挙げられる。カバー絶縁層の厚さは、例えば、1μm以上8μm以下である。
【0059】
カバー絶縁層の形成方法は、カバー絶縁層の材料に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、カバー絶縁層の材料が感光性材料である場合、全面形成したカバー絶縁層に対して、露光現像を行うことにより、パターン状のカバー絶縁層が得られる。一方、カバー絶縁層の材料が非感光性材料である場合、全面形成したカバー絶縁層上にレジストパターンを作製し、レジストパターンから露出した部分をエッチングすることにより、パターン状のカバー絶縁層が得られる。また、例えば、カバー絶縁層に対して、レーザー加工を行うことにより、パターン状のカバー絶縁層を形成してもよい。
【0060】
(5)層間絶縁層
配線基板は、層間絶縁層を有していてもよく、有していなくてもよい。層間絶縁層は、支持基板の第一面側のみに形成されていてもよく、支持基板の第二面側のみに形成されていてもよく、支持基板の両面側に形成されていてもよい。また、層間絶縁層は、透明性を有する絶縁層(透明絶縁層)であってもよく、透明性を有しない絶縁層(非透明絶縁層)であってもよい。
【0061】
また、配線基板は、層間絶縁層を一層のみ有していてもよく、二層以上有していてもよい。層間絶縁層は、支持基板および配線層の間に形成されていてもよく、二層の配線層の間に形成されていてもよい。
【0062】
層間絶縁層の材料は、絶縁性樹脂であることが好ましい。絶縁性樹脂については、上述したカバー絶縁層に用いられる絶縁性樹脂と同様である。層間絶縁層の厚さは、例えば1.5μm以上であり、2.5μm以上であってもよい。一方、層間絶縁層の厚さは、例えば6μm以下である。層間絶縁層の厚さは、例えば1.5μm以上6μm以下であり、2.5μm以上6μm以下であってもよい。層間絶縁層の形成方法については、上述したカバー絶縁層の形成方法と同様である。
【0063】
(6)接続部
配線基板は、配線層のパッド部上に、接続部を有していてもよい。接続部は、平面視上、カバー絶縁層の開口部により露出したパッド部と重複する位置において、カバー絶縁層から突出していることが好ましい。また、接続部は、凸部形状を有することが好ましい。
【0064】
接続部は、無電解めっき部であることが好ましい。さらに、無電解めっき部は、カバー絶縁層から突出していることが好ましい。無電解めっき部は、例えば、PdおよびNiを含有することが好ましい。具体的には、パッド部から順に、Pd部およびNi部が形成されていることが好ましい。無電解めっき法では、最初にPdがパッド部の表面に吸着し、その後、Pdが触媒として機能してNiが析出する。そのため、パッド部から順に、Pd部およびNi部が形成される。また、無電解めっき法では、通常、次亜リン酸等の還元剤を用いるため、無電解めっき部は、Pをさらに含有していてもよい。
【0065】
また、接続部上に、保護めっき部が形成されていてもよい。保護めっき部としては、例えば、金めっき部が挙げられる。金めっき部を設けることで、接続信頼性が向上する。金めっき部は、例えば、無電解金めっき法により形成することができる。
【0066】
また、接続部上に、はんだ部が形成されていてもよい。はんだ部は、例えば、Sn、Cu、Pbの少なくとも一種を含有することが好ましい。はんだ部は、例えば、印刷法または無電解めっき法により形成することができる。
【0067】
B.素子付配線基板
図11は、本開示における素子付配線基板の一例を示す概略断面図である。
図11に示される素子付配線基板30は、配線基板10と、配線基板10に実装された素子20と、を有する。
図11では、接続部5により、配線基板10および素子20が電気的に接続されている。
【0068】
本開示によれば、上述した配線基板を用いることにより、識別情報部の破損を防止した素子付配線基板とすることができる。
【0069】
1.配線基板
本開示における配線基板については、上記「A.配線基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0070】
2.素子
本開示における素子は、配線基板の素子実装領域に実装される部材である。素子は、能動素子であってもよく、受動素子であってもよく、機構素子であってもよい。また、素子は、半導体素子であることが好ましい。素子としては、例えば、トランジスタ、集積回路(例えばLSI)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、リレー、発光素子(例えばLED、OLED)、センサ、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バッテリーが挙げられる。
【0071】
3.素子付配線基板
本開示における素子付配線基板の用途は、特に限定されないが、例えば、表示装置、情報処理端末(例えばパソコン、タブレット、スマートフォン)、車用品(例えば車用内装品、車用外装品)、プリント配線基板、電磁波シールド材、アンテナ、パワー半導体、ノイズフィルタが挙げられる。
【0072】
本開示における素子付配線基板は、例えば、配線基板に素子を実装することにより得ることができる。素子を実装する方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができる。素子を実装する方法としては、例えば、転写法を用いて複数の素子を一括して実装する方法が挙げられる。転写法の一例としては、転写用基板に複数の素子を仮固定した転写用積層体を準備し、転写用積層体における複数の素子を、配線基板に転写する方法が挙げられる。
【0073】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0074】
[実施例1]
図5に示す配線基板を作製した。まず、ガラス基板(AGC社製、A100、370mm×470mm)に紫外線を照射し、洗浄した。洗浄後、インクジェットプリンタ(キーエンス社製、MK-U6000)にて、識別情報部である2次元コード(DataMatrix)を、基材の第一面に形成した。次に、第一面にクロムスパッタ処理および銅スパッタ処理を行い、その上に、ドライフィルムレジスト(旭化成エレクトロニスク社製、サンフォート AQ4038)を用いてレジストパターンを形成した。このとき、2次元コードを形成した箇所がレジストパターンの開口部に含まれるように、レジストパターンを形成した。
【0075】
その後、レジストパターンの開口部に、硫酸銅電解めっき(奥野製薬社製、トップルチナSF)を行い、配線層(厚さ3μm)を形成した。次に、ドライフィルムレジストを、50℃の水酸化ナトリウム水溶液にて剥離し、露出したクロム層および銅層を、それぞれ、クロム用エッチング液(佐々木化学薬品工業社製、エスクリーンS-24)および銅用エッチング液(メルテック社製、AD-331)にて除去した。その後、感光性レジスト(東レ社製、フォトニースPW-1000)を用いて、配線層を覆うようにカバー絶縁層(厚さ3μm)を形成した。これにより、
図5に示す配線基板を作製した。
図5に示すように、2次元コード(識別情報部6)は、方向D
21から、ガラス基板を介して確認可能であった。
【符号の説明】
【0076】
1…支持基板
2…層間絶縁層
3…配線層
4…カバー絶縁層
5…接続部
10…配線基板
20…素子
30…素子付配線基板