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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】生体情報計測装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20231219BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20231219BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20231219BHJP
【FI】
A61B5/256
A41D13/00 102
A41D1/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019067522
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020162946
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】権 義哲
(72)【発明者】
【氏名】森本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】小松 陽子
(72)【発明者】
【氏名】表 雄一郎
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0281087(US,A1)
【文献】特表2002-519089(JP,A)
【文献】特表2016-508187(JP,A)
【文献】特開2004-181025(JP,A)
【文献】特開2005-253610(JP,A)
【文献】特開2011-184846(JP,A)
【文献】特開2012-012758(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047814(WO,A1)
【文献】特表2009-510276(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0100803(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05 - 5/0538
A61B 5/24 - 5/398
A41D 13/00 -13/12
A41D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも衣服部と、前記衣服部の着用者に接触する面に生体接触電極とを有する衣服型の生体情報計測装置であって、
前記衣服部の生地が、自着性のある不織布であり、
前記衣服部は、未着用時に一枚の平面形状とすることが可能であり、着用時に、前記不織布の自着性を用いて前記生地を部分的に合わせることにより前記一枚の平面形状から上半身用または下半身用の下着形状となる
ことを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項2】
前記衣服部が、衣服を閉じるための係合部材を有さないことを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
前記生体接触電極が、ホットメルト型接着材によって前記衣服部の着用者に接触する面に接着されており、前記生体接触電極と、前記衣服部の生地との接着強度が、T字剥離法において、7N/cm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
前記衣服部が、自着性のある不織布を平面裁断して得られる可展面であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
前記衣服部が、無縫製であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の生体情報計測装置。
【請求項6】
前記衣服部が、着用時に上半身用の下着形状であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の生体情報計測装置。
【請求項7】
前記衣服部が、着用時に下半身用の下着形状であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の生体情報計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも生体と接触する電極を有する生体情報計測装置に関し、好ましくは介護並びに看護の現場にて有用に利用できる生体情報計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者、入院患者、乳幼児などの要介護者の見守り、介護、看護の分野において、体調管理を遠隔操作型の生体情報計測機器にて行うことにより介護者の省力化ならびに診断などに応用する試みが成されている。
ここに生体情報とは体温、脈拍、呼吸数などに加え皮膚接触形電極を用いて測定される心電、筋電などの生体電位情報ならびに、皮膚インピーダンスの変化から読み取ることが出来る発汗状態などである。
これらのうち、特に皮膚接触形電極を用いる計測の場合には、電極の固定と、電気的接触状態の安定化のために電極と皮膚表面との間にゲル又はペーストの使用、あるいは粘着テープ等の使用が行われてきた。このため、長時間の連続計測においては発汗による不快感、掻痒感や違和感の発生を伴い、粘着テープ等の粘着性の高い貼り付け電極ではさらに皮膚炎を生じやすいという問題点があった。
【0003】
一方で、主にスポーツ分野などでは、衣服に電極と配線を取り付けて、運動中の生体情報を取得する試みが盛んに行われている(特許文献1)。特にスポーツ分野では、コンプレッション型ウェアと呼ばれる、身体にフィットしてやや締め付けるタイプのスポーツウェアが好まれているため、皮膚接触形電極の装着には好都合であった。
しかしながら、これらコンプレッションタイプの衣類は、高齢者の多い介護施設や、病院などでは、着用者が嫌うことに加えて、介護者による着用補助の手間が多大に必要となるため好まれない。介護施設や病院などでは、要介護者、患者らに、容易に着脱させることができる衣服型の生体情報計測装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6073776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、衣類として着脱性に優れた生体情報計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明者は以下の構成である
[1]少なくとも衣服部と、衣服部の着用者に接触する面に体接触電極を有する衣服型の生体情報計測装置において、前記衣服部の生地が、自着性のある不織布である事を特徴とする生体情報計測装置。
[2]前記衣服部が、衣服を閉じるための係合部材を有さないことを特徴とする[1]に記載の生体情報計測装置。
[3]前記生体接触電極が、ホットメルト型接着材によって前記衣服部の着用者に接触する面に接着されており、前記生体接触電極と、前記衣服部の生地との接着強度が、T字剥離法において、7N/cm以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の生体情報計測装置。
[4]前記衣服部が、自着性のある不織布を平面裁断して得られる可展面であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の生体情報計測装置。
[5]前記衣服部が、無縫製であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の生体情報計測装置。
[6]前記衣服部が上半身用の下着形状であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の生体情報計測装置。
[7]前記衣服部が下半身用の下着形状であることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の生体情報計測装置。
[8]前記衣服部が帯状形状であることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の生体情報計測装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、自着性のある不織布にて、縫製加工を行うことなく作製した衣服に電極、配線などを取り付けた生体情報計測装置(以下、単に装置と表現する場合もある)ということができる。本発明の装置は、生地の自着性を利用して、被着用者を包むように着用させたのちに生地同士を合わせることにより、寝た姿勢の要介護者の場合にも身体の上側で衣服を閉じることができる。そのため、例えばTシャツ形状の衣服のように、着用時に着用者の首や腕を入れる操作を行う必要が無く、介護者により簡易に着用させることができる。また本発明において、衣服部を無縫製で作製すれば、縫い目による凹凸が無いため、着用者の不快感が少なく、床ずれなども生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明における上半身用の生体情報計測装置の一例を示す概略図である。
図2図2図1に示した生体情報計測装置を着用者に着せるときの手順の一部を示した図である。
図3図3図1に示した生体情報計測装置を着用者に着せるときの手順の一部を示した図である。
図4図4図1に示した生体情報計測装置を着用者に着せるときの手順の一部を示した図である。
図5図5は下半身用の生体情報計測装置の一例を示す概略図である。
図6図6は下半身用の生態情報計測装置を着用者に着せた際の形状の一例を示す概略図である。
図7図7はベルト形状の生体情報計測装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を図を用いて説明する。
図1は本発明における上半身用の生体情報計測装置の一例を示す概略図である。当該生体情報計測装置の衣服部は、上半身用の下着形状とすることが可能である。衣服部分は、図中の点線を境に、便宜上前身頃相当部分と後身頃相当部分を分かれているが、点線は縫い目では無く、全体は連続した切れ目や縫い目の無い一枚の不織布で構成されている。衣服を閉じるための、スナップファスナー、ホック、フック、ボタンなどは用いられていない。
【0010】
本発明の衣服部を構成する不織布は自着性のある不織布である。衣服部は、例えば、自着性のある不織布を平面裁断して得られる可展面である。
自着性のある不織布とは、生地自体には粘着性がないが、生地同士がくっつくテープである。自着性のある不織布は、具体的には、短繊維や仮撚倦縮加工糸等のかさ高い糸を用いて得られた織物や編物の起毛が、表面のランダムな毛羽により相手生地に張り付く現象(ファスナー現象)を利用したものである。
【0011】
上記自着性のある不織布としては、例えば、綿やセルロース系繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維からなる短繊維、ポリエステルやナイロンの仮撚倦縮加工糸、伸長性に優れたポリウレタン繊維などの組み合わせにより伸縮性と膨らみを持たせたストレッチ性の織物や編物に、ポリウレタン樹脂や合成ゴム素材、天然ゴム素材などの粘着性の弱い樹脂を加工し、自着性をもたせたものや、起毛加工によって自着性をもたせたものなどが挙げられる。起毛加工では、起毛面と非起毛面での自着性が高いため、表面同志、裏面同志では、自着性が低いが、表面と裏面の組み合わせでは、自着性が高い生地を製造できる。
また、二種類の生地を貼り合わせることによって、自着性を高めるとともに、裁断面からのほつれを防ぐこともできる。
【0012】
上記自着性のある不織布は、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸を用いて構成された織布または編布を用いることによって、容易に製造できる。上記ナノ繊維の繊維径とは、単繊維の直径を意味する。単繊維の断面形状が円形でない異形断面の場合は、単繊維の異形断面の外接円と内接円の直径の平均値を繊維径とする。ナノ繊維の繊維径は、好ましくは900nm以下であり、より好ましくは800nm以下である。ナノ繊維の繊維径の下限は特に限定されないが、ナノ繊維の製造容易性の点から、ナノ繊維の繊維径は100nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましい。
【0013】
ナノ繊維の種類は特に限定されず、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、あるいは合成繊維等を用いることができる。ナノ繊維が合成繊維である場合、ナノ繊維の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド類等が挙げられる。ナノ繊維の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、多角形、星形等が挙げられる。
ナノ繊維は、複数束ねられて、織布または編布を構成する糸が形成されていることが好ましい。即ち、ナノ繊維はマルチフィラメント糸として織布または編布中に配されていることが好ましい。
【0014】
ナノ繊維を含むマルチフィラメント糸の繊度は特に限定されないが、繊度は10dtex以上が好ましく、20dtex以上がより好ましく、500dtex以下が好ましく、300dtex以下がより好ましい。ナノ繊維を含むマルチフィラメント糸がこのような繊度を有していれば、マルチフィラメント糸が適度な強度を有するようになるとともに、マルチフィラメント糸から織布または編布を容易に形成できるようになる。
自着性のある不織布は、伸縮性を有していることが好ましい。また、自着性のある不織布は、通気性を有していることが好ましい。
【0015】
次に、上記衣類に設ける生体接触電極について説明する。当該電極は、衣服部の着用者に接触する面に設けられる。当該電極は、例えば、ホットメルト型接着材によって衣服部の着用者に接触する面に接着されており、当該電極と、衣服部の生地との接着強度が、T字剥離法において7N/cm以上である。上記電極は、主として皮膚接触によって生体電位を検出するために用いられるが、コネクタ等の電気接点として用いても良く、その他の近接的非接触的なセンサーの検知端として用いてもよい。
【0016】
上記電極は、被測定者の運動動作に追従できるように伸縮性を有することが好ましい。
上記伸縮性を有する電極としては、例えば、導電性ファブリックで構成されている電極や、導電性フィラーと伸縮性を有する樹脂を含む導電性組成物から形成されたシート状の電極が挙げられる。
【0017】
上記導電性ファブリックで構成されている電極としては、例えば、基材繊維に導電性高分子を被覆した導電性繊維または導電糸、あるいは銀、金、銅、ニッケルなどの導電性金属によって表面を被覆した繊維、導電性金属の微細線からなる導電糸、導電性金属の微細線と非導電性繊維とを混紡した導電糸などからなる織物、編物、不織布、あるいはこれら導電性の糸を非導電性の布帛に刺繍した物を導電性ファブリックからなる電極として用いることができる。
【0018】
上記導電性ファブリックは、身丈方向または身幅方向に14.7Nの荷重をかけたときに、少なくとも一方の伸長率が3%以上60%以下であることが好ましい。上記伸長率が下限値を下回ると、電極が衣類の生地の動きに充分に追従しにくくなり、生地から電極が剥がれることがある。従って上記伸長率は、3%以上が好ましく、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上である。しかし、伸長率が上限値を超えると、電極が伸びすぎて生体情報を精度良く計測できないことがある。従って上記伸長率は、60%以下が好ましく、より好ましくは55%以下、更に好ましくは50%以下である。
上記伸長率は、身丈方向または身幅方向で上記範囲を満足することが好ましく、身丈方向および身幅方向の両方において上記範囲を満足することがより好ましい。
【0019】
上記シート状の電極の材料としては、例えば、導電性が高い導電性フィラーを用いることによって、繊維状電極よりも電気抵抗値を低くすることができるため、微弱な電気信号を検知できる。
【0020】
上記電極は、生体に直接接触する電極表面以外の部分は絶縁カバーされることが好ましい。絶縁層は、生地側と肌側の双方に設けられることが好ましい。
また、本発明の装置は、電極の他、該電極と、該電極で取得した電気信号を演算する機能を有する電子ユニット等とを接続する配線ならびにコネクタが設けられる。
【0021】
本発明の装置は、例えば介護者によって、以下の様にして着用者に着用させることができる。
まず、介護者は、本装置をベッドの上などに広げ、次いで着用者を後身頃相当部分の上に寝かせる。次いで図2のように装置の(左)前身頃相当部分を着用者の胸および腹側に被せ、さらに図3に示すように(右)前身頃相当部分を重ねて、生地の自着性を使って身体の全面で衣服部を閉じる。さらに続いて図4に示すように肩部分を前面側に被せて、同様に生地の自着性を用いて接着する。図では左側のみを図示しているが、もちろん右側も同様に閉じることができる。また左右を入れ替えても問題は無い。
【0022】
図5には下半身用の生体情報計測装置の一例を示す。当該生体情報計測装置の衣服部は、下半身用の下着形状とすることが可能であり、上半身用途同様、縫い目の無い一枚の平面から構成されており、スナップファスナー、ホック、フック、ボタンなどの係合部材は使われていない。図6に示すように、いわゆる「おむつ」を装着する手順で着用させることが出来るため、一般的なパンツ形状の下着に足を通す手間を省くことができる。
【0023】
図7にはベルト形状の生体情報計測装置の一例を示す。ベルト形状の装置の場合には胸部、腹部、あるいは必要に応じて四肢などに簡単に装着させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上述べてきたように、本発明の生体情報計測装置は、自着性のある不織布にて、好ましくは縫製加工を行うことなく作製した衣服に電極、配線などを取り付けて生体情報計測装置としており、自着性を利用して、被着用者を包むように着用させたのちに生地どうしを合わせることにより、寝た姿勢の要介護者の場合にも身体の上側で衣服を閉じることができる。
本発明の生体情報計測装置は、介護者により着用者に簡易に着用させることができ、衣服部分に縫製による凹凸が無いため、着用者の不快感が少なく、床ずれなども生じにくい。
また廉価な不織布を材料とするため、装置の衣服部分をディスポーザルとすることにより、さらなる省力化とともに、清潔性も得ることができ、介護施設、病院、リハビリテーション施設はもちろん、一般家庭においても有用に用いる事ができる。
【符号の説明】
【0025】
1.後身頃相当部分
2.前身頃相当部分
3.生体情報計測部の電極部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7