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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】慣性センサー、電子機器および移動体
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/08 20060101AFI20231219BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20231219BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20231219BHJP
【FI】
G01P15/08 102D
G01P15/125 Z
G01P15/08 101C
G01P15/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019086653
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020183870
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】松浦 由幸
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-17886(JP,A)
【文献】特開2018-146330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0045515(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とし、前記X軸および前記Y軸を含む面をX-Y面としたとき、
基板と、
前記Y軸に沿う揺動軸まわりに揺動し、前記揺動軸を挟んで配置されている第1可動部と第2可動部とを備える可動体と、
前記可動体を支持し、前記第1可動部と前記第2可動部との間で前記基板に固定されている固定部と、
前記可動体と前記固定部とを繋ぐ揺動梁と、
前記固定部から前記X軸方向に延出している梁と、
前記梁に設けられ、前記可動体と接触することにより、前記可動体の前記X-Y面方向の変位を規制するストッパーと、を有し、
前記揺動軸まわりの回転モーメントは前記第1可動部よりも前記第2可動部が小さく、
前記ストッパーは、前記固定部に対して前記第1可動部側に設けられ、
前記ストッパーは、前記第2可動部の前記揺動軸からの前記X軸方向の長さより、前記揺動軸から遠い位置に設けられていることを特徴とする慣性センサー。
【請求項2】
互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とし、前記X軸および前記Y軸を含む面をX-Y面としたとき、
基板と、
前記Y軸に沿う揺動軸まわりに揺動し、前記揺動軸を挟んで配置されている第1可動部と第2可動部とを備える可動体と、
前記可動体を支持し、前記第1可動部と前記第2可動部との間で前記基板に固定されている固定部と、
前記可動体と前記固定部とを繋ぐ揺動梁と、
前記固定部から前記X軸方向に延出している梁と、
前記梁に設けられ、前記可動体と接触することにより、前記可動体の前記X-Y面方向の変位を規制するストッパーと、
前記基板に配置され、平面視で、前記第1可動部と重なっている第1固定検出電極と、
前記基板に配置され、平面視で、前記第1固定検出電極に対して前記固定部の反対側に位置し、前記第1可動部と重なっているダミー電極と、
前記基板に配置され、平面視で、前記第2可動部と重なっている第2固定検出電極と、を有し、
平面視で、前記ストッパーは、前記ダミー電極と重なっていることを特徴とする慣性センサー。
【請求項3】
前記第1固定検出電極の前記第1可動部と重なっている部分の面積と、前記第2固定検出電極の前記第2可動部と重なっている部分の面積と、が等しい請求項に記載の慣性センサー。
【請求項4】
前記第2固定検出電極の前記第2可動部と重なっている部分の前記X軸方向の長さは、前記第1固定検出電極の前記第1可動部と重なっている部分の前記X軸方向の長さよりも短い請求項またはに記載の慣性センサー。
【請求項5】
前記ストッパーは、前記固定部よりも前記第1可動部側に位置し、前記第1可動部と接触する第1ストッパーと、前記固定部よりも前記第2可動部側に位置し、前記第2可動部と接触する第2ストッパーと、を有する請求項1ないしのいずれか1項に記載の慣性センサー。
【請求項6】
前記ストッパーと前記可動体との離間距離は、前記梁と前記可動体との離間距離よりも小さい請求項1ないしのいずれか1項に記載の慣性センサー。
【請求項7】
前記ストッパーは、前記梁から前記Y軸方向に突出する突起で構成されている請求項1ないしのいずれか1項に記載の慣性センサー。
【請求項8】
前記可動体に設けられ、前記突起と対向している可動体側突起を有する請求項に記載の慣性センサー。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の慣性センサーと、
前記慣性センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の慣性センサーと、
前記慣性センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路と、を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性センサー、電子機器および移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載された慣性センサーは、Z軸方向の加速度を検出可能なセンサーであり、基板と、基板に対してY軸方向に沿う揺動軸まわりにシーソー揺動する可動体と、基板に設けられた固定検出電極と、を有する。また、可動体は、揺動軸を挟んで設けられ、互いに揺動軸まわりの回転モーメントが異なる第1可動部および第2可動部を有する。また、固定検出電極は、可動部の第1可動部と対向して基板に配置された第1固定検出電極と、可動部の第2可動部と対向して基板に配置された第2固定検出電極と、を有する。
【0003】
このような構成の慣性センサーでは、Z軸方向の加速度が加わると可動体が揺動軸まわりにシーソー揺動し、それに伴って、第1可動部と第1固定検出電極との間の静電容量および第2可動部と第2固定検出電極との間の静電容量が互いに逆相で変化する。そのため、この静電容量の変化に基づいてZ軸方向の加速度を検出することができる。
【0004】
また、特許文献1に記載された慣性センサーは、基板に固定され、可動体の回転変位を抑制するためのストッパーを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-017886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された慣性センサーでは、ストッパーが可動体よりも揺動軸から遠い位置において基板に固定されている。そのため、例えば、熱膨張等によって基板に反りが生じると、その反りに起因して、ストッパーが可動体に対して変位し易く、その変位量も大きくなり易い。したがって、例えば、ストッパーが可動体に接近し過ぎて、可動体の揺動軸まわりの揺動を阻害するおそれがある。また、反対に、ストッパーが可動体から離間し過ぎて、可動体が回転変位してもストッパーに接触せず、ストッパーとしての機能を発揮できなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に記載の慣性センサーは、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とし、前記X軸および前記Y軸を含む面をX-Y面としたとき、
基板と、
前記Y軸に沿う揺動軸まわりに揺動し、前記揺動軸を挟んで配置されている第1可動部と第2可動部とを備える可動体と、
前記可動体を支持し、第1可動部と第2可動部との間で前記基板に固定されている固定部と、
前記可動体と前記固定部とを繋ぐ揺動梁と、
前記固定部からX軸方向に延出している梁と、
前記梁に設けられ、前記可動体と接触することにより、前記可動体の前記X-Y面方向の変位を規制するストッパーと、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る慣性センサーを示す平面図。
図2図1中のA-A線断面図。
図3】慣性センサーが有するストッパーの機能を説明するための平面図。
図4】従来構成の問題を説明するための断面図。
図5】本実施形態の効果を説明するための断面図。
図6】第2実施形態に係る慣性センサーを示す平面図。
図7】第3実施形態に係る慣性センサーを示す平面図。
図8】第4実施形態に係る慣性センサーを示す平面図。
図9】第5実施形態に係る慣性センサーを示す平面図。
図10】第6実施形態に係る電子機器としてのスマートフォンを示す平面図。
図11】第7実施形態に係る電子機器としての慣性計測装置を示す分解斜視図。
図12図11に示す慣性計測装置が有する基板の斜視図。
図13】第8実施形態に係る電子機器としての移動体測位装置の全体システムを示すブロック図。
図14図13に示す移動体測位装置の作用を示す図。
図15】第9実施形態に係る移動体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の慣性センサー、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る慣性センサーを示す平面図である。図2は、図1中のA-A線断面図である。図3は、慣性センサーが有するストッパーの機能を説明するための平面図である。図4は、従来構成の問題を説明するための断面図である。図5は、本実施形態の効果を説明するための断面図である。
【0011】
以下では、説明の便宜上、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸およびZ軸とする。また、X軸に沿う方向すなわちX軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に沿う方向すなわちY軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に沿う方向すなわちZ軸に平行な方向を「Z軸方向」とも言う。また、X軸およびY軸を含む面を「X-Y面」とも言う。また、各軸の矢印方向先端側を「プラス側」とも言い、反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z軸方向プラス側を「上」とも言い、Z軸方向マイナス側を「下」とも言う。また、本願明細書において「直交」とは、技術常識的に見て直交と同視できるもの、具体的には、90°で交わっている場合の他、90°から若干傾いた角度、例えば90°±5°程度の範囲内で交わっている場合も含む。同様に、「平行」についても、技術常識的に見て平行と同視できるもの、具体的には、両者のなす角度が0°の場合の他、±5°程度の範囲内の差を有する場合も含む。
【0012】
図1に示す慣性センサー1は、Z軸方向の加速度Azを検出する加速度センサーである。このような慣性センサー1は、基板2と、基板2上に配置されたセンサー素子3と、基板2に接合され、センサー素子3を覆う蓋5と、を有する。
【0013】
図1に示すように、基板2は、上面側に開口する凹部21を有する。また、Z軸方向からの平面視で、凹部21は、センサー素子3を内側に内包し、センサー素子3よりも大きく形成されている。また、図2に示すように、基板2は、凹部21の底面から突出しているマウント22を有する。そして、マウント22の上面にセンサー素子3が接合されている。また、図1に示すように、基板2は、上面に開口する溝25、26、27を有する。
【0014】
基板2としては、例えば、Na等の可動イオンであるアルカリ金属イオンを含むガラス材料、例えば、パイレックスガラス、テンパックスガラス(いずれも登録商標)のような硼珪酸ガラスで構成されたガラス基板を用いることができる。ただし、基板2としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板やセラミックス基板を用いてもよい。
【0015】
また、図1に示すように、基板2には電極8が設けられている。電極8は、凹部21の底面に配置され、平面視で、センサー素子3と重なっている第1固定検出電極81、第2固定検出電極82およびダミー電極83を有する。また、基板2は、溝25、26、27に配置された配線75、76、77を有する。
【0016】
各配線75、76、77の一端部は、蓋5外に露出し、外部装置との電気的な接続を行う電極パッドPとして機能する。また、配線75は、センサー素子3およびダミー電極83と電気的に接続され、配線76は、第1固定検出電極81と電気的に接続され、配線77は、第2固定検出電極82と電気的に接続されている。
【0017】
図2に示すように、蓋5は、下面側に開口する凹部51を有する。蓋5は、凹部51内にセンサー素子3を収納するように、基板2の上面に接合されている。そして、蓋5および基板2によって、その内側に、センサー素子3を収納する収納空間Sが形成されている。収納空間Sは、気密空間であり、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが封入され、使用温度(-40℃~125℃程度)で、ほぼ大気圧となっていることが好ましい。ただし、収納空間Sの雰囲気は、特に限定されず、例えば、減圧状態であってもよいし、加圧状態であってもよい。
【0018】
また、蓋5としては、例えば、シリコン基板を用いることができる。ただし、蓋5としては、特に限定されず、例えば、ガラス基板やセラミックス基板を用いてもよい。また、基板2と蓋5との接合方法としては、特に限定されず、基板2や蓋5の材料によって適宜選択すればよく、例えば、陽極接合、プラズマ照射によって活性化させた接合面同士を接合させる活性化接合、ガラスフリット等の接合材による接合、基板2の上面および蓋5の下面に成膜した金属膜同士を接合する拡散接合等を用いることができる。本実施形態では、低融点ガラスからなるガラスフリット59によって基板2と蓋5とが接合されている。
【0019】
センサー素子3は、例えば、リン(P)、ボロン(B)、砒素(As)等の不純物がドープされた導電性のシリコン基板をエッチング、特に、深溝エッチング技術であるボッシュ・プロセスによってパターニングすることにより形成される。センサー素子3は、図1に示すように、マウント22の上面に接合されているH型の固定部31と、固定部31に対してY軸に沿う揺動軸Jまわりに揺動可能な可動体32と、固定部31と可動体32とを接続する揺動梁33と、を有する。マウント22と固定部31とは、例えば、陽極接合されている。
【0020】
可動体32は、Z軸方向からの平面視で、X軸方向を長手とする長方形状となっている。また、可動体32は、Z軸方向からの平面視で、揺動軸Jを間に挟んで配置された第1可動部321および第2可動部322を有する。第1可動部321は、揺動軸Jに対してX軸方向プラス側に位置し、第2可動部322は、揺動軸Jに対してX軸方向マイナス側に位置する。また、第1可動部321は、第2可動部322よりもX軸方向に長く、加速度Azが加わったときの揺動軸Jまわりの回転モーメントが第2可動部322よりも大きい。
【0021】
この回転モーメントの差によって、加速度Azが加わった際に可動体32が揺動軸Jまわりにシーソー揺動する。なお、シーソー揺動とは、第1可動部321がZ軸方向プラス側に変位すると、第2可動部322がZ軸方向マイナス側に変位し、反対に、第1可動部321がZ軸方向マイナス側に変位すると、第2可動部322がZ軸方向プラス側に変位することを意味する。
【0022】
また、可動体32は、第1可動部321と第2可動部322との間に位置する開口324を有する。そして、開口324内に固定部31および揺動梁33が配置されている。このように、可動体32の内側に固定部31および揺動梁33を配置することにより、センサー素子3の小型化を図ることができる。また、可動体32は、平面視で、第1固定検出電極81とダミー電極83との間から凹部21の底面が露出している部分211と重なっている開口329を有する。これにより、部分211と可動体32との間に静電引力が作用するのを効果的に抑制することができる。また、可動体32は、その全域に均一に形成された複数の貫通孔325を有する。ただし、開口329や貫通孔325は、省略してもよい。
【0023】
基板2の底面に配置された電極8の説明に戻ると、図1および図2に示すように、Z軸方向からの平面視で、第1固定検出電極81は、第1可動部321の基端部と重なって配置され、第2固定検出電極82は、第2可動部322と重なって配置され、ダミー電極83は、第1可動部321の先端部と重なって配置されている。すなわち、ダミー電極83は、第1固定検出電極81よりも固定部31から遠い側で、第1可動部321と対向している。
【0024】
慣性センサー1の駆動時には、配線75を介してセンサー素子3に駆動電圧が印加され、第1固定検出電極81とQVアンプとが配線76により接続され、第2固定検出電極82と別のQVアンプとが配線77により接続される。これにより、第1可動部321と第1固定検出電極81との間に静電容量Caが形成され、第2可動部322と第2固定検出電極82との間に静電容量Cbが形成される。
【0025】
慣性センサー1に加速度Azが加わると、可動体32が揺動軸Jを中心にしてシーソー揺動する(以下、この揺動を「検出振動」とも言う)。この可動体32のシーソー揺動により、第1可動部321と第1固定検出電極81とのギャップと、第2可動部322と第2固定検出電極82とのギャップと、が逆相で変化し、これに応じて静電容量Ca、Cbが互いに逆相で変化する。そのため、慣性センサー1は、静電容量Ca、Cbの差分(変化量)に基づいて加速度Azを検出することができる。
【0026】
慣性センサー1では、平面視で、第1固定検出電極81の第1可動部321と重なっている部分の面積S1と、第2固定検出電極82の第2可動部322と重なっている部分の面積S2と、が等しい。これにより、加速度Azが加わっていない初期状態において、静電容量Ca、Cbが実質的にほぼ等しくなるため、加速度Azをより検出し易くなる。なお、面積S1、S2が等しいとは、製造上生じ得る僅かな誤差等、技術常識的に等しいと同視できる程度のずれ、例えば、±5%以内のずれを含む意味である。
【0027】
また、第2固定検出電極82の第2可動部322と重なっている部分のX軸方向の長さL2は、第1固定検出電極81の第1可動部321と重なっている部分のX軸方向の長さL1よりも短い。すなわち、L2<L1である。後述するように、第1可動部321には、梁34およびストッパー35が位置する開口326が形成されているため、その分、第1固定検出電極81の面積S1が小さくなる。そこで、第2固定検出電極82の長さL2を長さL1よりも短くし、第2固定検出電極82の面積S2を小さくすることにより、簡単に、面積S1、S2を等しくすることができる。
【0028】
ただし、第1固定検出電極81および第2固定検出電極82の構成としては、特に限定されず、面積S1、S2が異なっていてもよいし、L2≧L1であってもよい。
【0029】
慣性センサー1は、さらに、固定部31からX軸方向プラス側に延出する梁34と、この梁34の先端部すなわちX軸方向プラス側の端部に設けられているストッパー35と、を有する。第1可動部321には、開口324に連通し、開口329を貫いてX軸方向に延在する略矩形の開口326が形成されており、これら開口324、326内に梁34が配置されている。そして、この梁34の先端部にストッパー35が設けられ、ストッパー35と開口326の内面326aとが対向している。
【0030】
ストッパー35は、上述のような可動体32の検出振動以外の不要な変位、特に、X軸方向への変位、Y軸方向への変位、固定部31を中心としたZ軸まわりの回転変位等のX-Y面内方向への変位を抑制する機能を有する。ストッパー35は、可動体32が検出振動するときには可動体32と接触しないが、図3に示すように、可動体32がX-Y面方向に変位するときには可動体32と接触する。このようなストッパー35を設けることにより、可動体32の検出振動を許容しつつ、可動体32の不要な方向への過度な変位を効果的に抑制することができる。そのため、センサー素子3の破損を効果的に抑制することができる。
【0031】
特に、ストッパー35が可動体32を基板2に固定する固定部31に接続されているため、例えば、基板2と蓋5との熱膨張係数差に起因して基板2に反りが生じても、可動体32とストッパー35との位置ずれが生じ難くなる。そのため、基板2の反り状態によらず、ストッパー35としての機能をより効果的に発揮することができる。
【0032】
以下、具体的に説明すると、例えば、図4に示すように、ストッパー35が基板2に固定されている場合、基板2が反ると、それに伴ってストッパー35が可動体32に対して変位し、可動体32とストッパー35との位置関係が大きくずれてしまう。ストッパー35が可動体32に接近してしまうと、ストッパー35が可動体32の検出振動を阻害するおそれがあり、反対に、ストッパー35が可動体32から離間してしまうと、可動体32がX-Y面内に不要な変位をした際にストッパー35に接触することができないおそれがある。つまり、ストッパー35としての機能を発揮することができなくなる。
【0033】
これに対して、図5に示すように、ストッパー35が固定部31に接続されている場合には、基板2の反りに伴うストッパー35の可動体32に対する変位が図4よりも抑制され、その分、可動体32とストッパー35との位置ずれを抑制することができる。そのため、本実施形態の慣性センサー1によれば、基板2の反りに影響されることなく、ストッパー35としての機能をより効果的に発揮することができる。
【0034】
図1に示すように、ストッパー35は、梁34の先端部からY軸方向両側に突出している突起350で構成されている。そのため、ストッパー35の構成が簡単となる。本実施形態では、突起350のY軸方向プラス側に突出している部分およびY軸方向マイナス側に突出している部分は、共に半円形状となっているが、これらの形状は、特に限定されない。また、突起350と内面326aとのY軸方向の離間距離D1は、梁34と内面326aとのY軸方向の離間距離D2よりも小さい。これにより、可動体32がX-Y面内方向へ変位した際に、より効果的に、可動体32が梁34と接触する前にストッパー35と接触させることができる。したがって、ストッパー35は、その機能をより効果的に発揮することができる。
【0035】
前述したように、第2可動部322よりも第1可動部321の方がX軸方向に長い。そのため、第1可動部321内にストッパー35を配置することにより、第2可動部322内にストッパー35を配置する場合と比べて、ストッパー35を固定部31からより離間させて配置することができる。より具体的には、ストッパー35は、第1可動部321内に位置するととともに、第2可動部322の揺動軸JからのX軸方向の長さより揺動軸Jから遠い位置に設けられている。そのため、その分、ストッパー35と可動体32とのギャップ、すなわち、前述の離間距離D1を大きく設定することができる。その結果、センサー素子3の形成が容易となり、離間距離D1の管理が容易となる。なお、離間距離D1としては、特に限定されず、センサー素子3のサイズ等によっても異なるが、例えば、1~5μm程度とすることができる。
【0036】
特に、本実施形態のストッパー35は、平面視で、ダミー電極83と重なっている。これにより、揺動軸Jとストッパー35との離間距離D3が、揺動軸Jと第2可動部322の先端との離間距離D4よりも大きくなる。そのため、慣性センサー1は、上述の効果をより顕著に発揮することができる。ただし、これに限定されず、例えば、ストッパー35は、平面視で、第1固定検出電極81と重なっていてもよい。
【0037】
以上、慣性センサー1について説明した。慣性センサー1は、前述したように、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とし、前記X軸および前記Y軸を含む面をX-Y面としたとき、基板2と、Y軸に沿う揺動軸Jまわりに揺動し、揺動軸Jを挟んで配置されている第1可動部321と第2可動部322とを備える可動体32と、可動体32を支持し、第1可動部321と第2可動部322との間で基板2に固定されている固定部31と、可動体32と固定部31とを繋ぐ揺動梁33と、固定部31からX軸方向に延出している梁34と、梁34に設けられ、可動体32と接触することにより、可動体32のX-Y面方向の変位を規制するストッパー35と、を有する。このように、ストッパー35を固定部31に接続することにより、基板2の反りに伴うストッパー35の可動体32に対する変位が抑制され、可動体32とストッパー35との位置ずれを効果的に抑制することができる。そのため、ストッパー35は、基板2の反りに影響されることなく、その機能をより効果的に発揮することができる。
【0038】
また、前述したように、ストッパー35と可動体32との離間距離D1は、梁34と可動体32との離間距離D2よりも小さい。これにより、可動体32がX-Y面内に変位した際、より効果的に、ストッパー35と可動体32とを接触させることができる。また、前述したように、ストッパー35は、梁34からY軸方向に向けて突出する突起350で構成されている。これにより、ストッパー35の構成が簡単なものとなる。
【0039】
また、前述したように、揺動軸Jまわりの回転モーメントは、第1可動部321よりも第2可動部322が小さい。また、ストッパー35は、固定部31に対して第1可動部321側に設けられ、ストッパー35は、第2可動部322の揺動軸JからのX軸方向の長さより、揺動軸Jから遠い位置に設けられている。これにより、第2可動部322側にストッパー35を配置する場合と比べて、ストッパー35を固定部31からより離間させて配置することができる。そのため、その分、離間距離D1を大きく設定することができる。その結果、センサー素子3の形成が容易となり、離間距離D1の管理が容易となる。
【0040】
また、前述したように、慣性センサー1は、基板2に配置され、平面視で、第1可動部321と重なっている第1固定検出電極81と、基板2に配置され、平面視で、第1固定検出電極81に対して固定部31の反対側に位置し、第1可動部321と重なっているダミー電極83と、基板2に配置され、第2可動部322と重なっている第2固定検出電極82と、を有し、平面視で、ストッパー35は、ダミー電極83と重なっている。これにより、ストッパー35を固定部31からより離間させて配置することができる。そのため、その分、離間距離D1を大きく設定することができる。その結果、センサー素子3の形成が容易となり、離間距離D1の管理が容易となる。
【0041】
また、前述したように、第1固定検出電極81の第1可動部321と重なっている部分の面積S1と、第2固定検出電極82の第2可動部322と重なっている部分の面積S2と、が等しい。これにより、加速度Azが加わっていない初期状態において、静電容量Ca、Cbが実質的にほぼ等しくなるため、加速度Azをより検出し易くなる。
【0042】
また、前述したように、第2固定検出電極82の第2可動部322と重なっている部分のX軸方向の長さL2は、第1固定検出電極81の第1可動部321と重なっている部分のX軸方向の長さL1よりも短い。これにより、簡単な構成で、面積S1、S2を等しくすることができる。
【0043】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る慣性センサーを示す平面図である。
【0044】
本実施形態は、センサー素子3の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図6において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0045】
図6に示す慣性センサー1では、可動体32は、開口326の内面326aから突起350に向けて突出する一対の可動体側突起328を有する。一方の可動体側突起328は、突起350のY軸方向プラス側に位置し、他方の可動体側突起328は、突起350のY軸方向マイナス側に位置している。また、一対の可動体側突起328は、それぞれ、半円形状である。そして、可動体32がY軸方向に変位した際には、これら可動体側突起328がストッパー35を構成する突起350と接触する。このように、可動体32に突起350と接触させるための可動体側突起328を設けることにより、接触時の衝撃を緩和することができ、センサー素子3の破損を効果的に抑制することができる。
【0046】
以上のように、本実施形態の慣性センサー1は、可動体32に設けられ、突起350と対向している可動体側突起328を有する。これにより、接触時の衝撃を緩和することができ、センサー素子3の破損を効果的に抑制することができる。
【0047】
以上のような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の構成を発揮することができる。
【0048】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態に係る慣性センサーを示す平面図である。
【0049】
本実施形態は、センサー素子3の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図7において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0050】
図7に示す慣性センサー1では、ストッパー35は、平面視で、第1固定検出電極81と重なっている。このような構成によれば、前述した第1実施形態と比べて、ストッパー35が位置する開口326の面積を小さくすることができる。そのため、可動体32の剛性の低下を抑制することができる。特に、本実施形態では、開口326は、開口329に連通しておらず、これらの間にも第1可動部321が存在している。そのため、当該部分が開口326の両側を繋ぐ梁のように機能し、可動体32の剛性の低下をより効果的に抑制することができる。
【0051】
以上のような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の構成を発揮することができる。
【0052】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態に係る慣性センサーを示す平面図である。
【0053】
本実施形態は、センサー素子3の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図8において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0054】
図8に示す慣性センサー1では、ストッパー35は、可動体32がX-Y面内に変位した際、第1可動部321と接触する第1ストッパー35Aと、第2可動部322と接触する第2ストッパー35Bと、を有する。これにより、固定部31を挟んだ両側で、可動体32のX-Y面内への変位を規制することができる。そのため、可動体32のX-Y面内への変位を、より効果的に規制することができる。
【0055】
第1ストッパー35Aは、固定部31よりもX軸方向プラス側に位置している。具体的には、慣性センサー1は、固定部31からX軸方向プラス側に延出する梁34Aを有し、この梁34Aの先端部に第1ストッパー35Aが設けられている。第1可動部321には、開口324に連通し、X軸方向に延在する略矩形の開口326が形成されており、この開口326内に梁34Aが配置されている。そして、この梁34Aの先端部に第1ストッパー35Aが設けられ、第1ストッパー35Aは、開口326の内面326aと対向している。
【0056】
第2ストッパー35Bは、固定部31よりもX軸方向マイナス側に位置している。具体的には、慣性センサー1は、固定部31からX軸方向マイナス側に延出する梁34Bを有し、この梁34Bの先端部に第2ストッパー35Bが設けられている。第2可動部322には、開口324に連通し、X軸方向に延在する略矩形の開口327が形成されており、この開口327内に梁34Bが配置されている。そして、この梁34Bの先端部に第2ストッパー35Bが設けられ、第2ストッパー35Bは、開口327の内面327aと対向している。
【0057】
また、第1、第2ストッパー35A、35Bは、揺動軸Jに対して線対称である。つまり、揺動軸Jと第1ストッパー35Aとの離間距離D5と、揺動軸Jと第2ストッパー35Bとの離間距離D6と、が等しい。そのため、可動体32が固定部31を中心にZ軸まわりに回転変位したとき、可動体32が第1、第2ストッパー35A、35Bに同時に接触する。これにより、接触時の衝撃を緩和することができ、センサー素子3の破損を効果的に抑制することができる。なお、第1、第2ストッパー35A、35Bの構成は、特に限定されず、例えば、揺動軸Jに対して非対称であってもよい。
【0058】
以上のように、本実施形態のストッパー35は、固定部31よりも第1可動部321側に位置し、第1可動部321と接触する第1ストッパー35Aと、固定部31よりも第2可動部322側に位置し、第2可動部322と接触する第2ストッパー35Bと、を有する。これにより、固定部31を挟んだ両側で、可動体32のX-Y面内への変位を規制することができる。そのため、可動体32のX-Y面内への変位をバランスよく、より効果的に規制することができる。
【0059】
以上のような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の構成を発揮することができる。
【0060】
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態に係る慣性センサーを示す平面図である。
【0061】
本実施形態は、センサー素子3の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図9において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0062】
図9に示す慣性センサー1では、第2可動部322に、一端が開口324に連通し、他端が第2可動部322の先端に開放し、X軸方向に延在する略矩形の開口327が形成されている。この開口327の幅W2は、開口326の幅W1と等しい。また、慣性センサー1は、開口327内に配置され、固定部31からX軸方向マイナス側に延出する梁34Bを有する。梁34Bの幅W4は、梁34Aの幅W3と等しい。
【0063】
このように、第2可動部322側に、第1可動部321側に配置されている開口326および梁34Aに対応する開口327および梁34Bを配置することにより、第1可動部321の第1固定検出電極81と重なっている部分と、第2可動部322の第2固定検出電極82と重なっている部分とが、揺動軸Jに対して線対称となる。そのため、例えば、前述した第1実施形態のように、第2固定検出電極82の第2可動部322と重なっている部分のX軸方向の長さL2と、第1固定検出電極81の第1可動部321と重なっている部分のX軸方向の長さL1と、を異ならせなくても、すなわち、L1=L2とすることにより、面積S1、S2を等しくすることができる。その結果、慣性センサー1の設計が容易となる。
【0064】
以上のような第5実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の構成を発揮することができる。
【0065】
<第6実施形態>
図10は、第6実施形態に係る電子機器としてのスマートフォンを示す平面図である。
【0066】
図10に示すスマートフォン1200は、本発明の電子機器を適用したものである。スマートフォン1200には、慣性センサー1と、慣性センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1210と、が内蔵されている。慣性センサー1によって検出された検出データは、制御回路1210に送信され、制御回路1210は、受信した検出データからスマートフォン1200の姿勢や挙動を認識して、表示部1208に表示されている表示画像を変化させたり、警告音や効果音を鳴らしたり、振動モーターを駆動して本体を振動させることができる。
【0067】
このような電子機器としてのスマートフォン1200は、慣性センサー1と、慣性センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1210と、を有する。そのため、前述した慣性センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0068】
なお、本発明の電子機器は、前述したスマートフォン1200の他にも、例えば、パーソナルコンピューター、デジタルスチールカメラ、タブレット端末、時計、スマートウォッチ、インクジェットプリンタ、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器、魚群探知機、各種測定機器、移動体端末基地局用機器、車両、航空機、船舶等の各種計器類、フライトシミュレーター、ネットワークサーバー等に適用することができる。
【0069】
<第7実施形態>
図11は、第7実施形態に係る電子機器としての慣性計測装置を示す分解斜視図である。図12は、図11に示す慣性計測装置が有する基板の斜視図である。
【0070】
図11に示す電子機器としての慣性計測装置2000(IMU:Inertial Measurement Unit)は、自動車や、ロボットなどの被装着装置の姿勢や、挙動を検出する慣性計測装置である。慣性計測装置2000は、3軸加速度センサーおよび3軸角速度センサーを備えた6軸モーションセンサーとして機能する。
【0071】
慣性計測装置2000は、平面形状が略正方形の直方体である。また、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に固定部としてのネジ穴2110が形成されている。この2ヶ所のネジ穴2110に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測装置2000を固定することができる。なお、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンや、デジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
【0072】
慣性計測装置2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300と、を有し、アウターケース2100の内部に、接合部材2200を介在させて、センサーモジュール2300を挿入した構成となっている。アウターケース2100の外形は、前述した慣性計測装置2000の全体形状と同様に、平面形状が略正方形の直方体であり、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、それぞれネジ穴2110が形成されている。また、アウターケース2100は、箱状であり、その内部にセンサーモジュール2300が収納されている。
【0073】
センサーモジュール2300は、インナーケース2310と、基板2320と、を有する。インナーケース2310は、基板2320を支持する部材であり、アウターケース2100の内部に収まる形状となっている。また、インナーケース2310には、後述する角速度センサーや加速度センサー等の電子部品を収容するための凹部2311や後述するコネクター2330を露出させる開口2312が形成されている。このようなインナーケース2310は、接合部材2200によってアウターケース2100に接合されている。また、インナーケース2310の下面は接着剤によって基板2320が接合されている。
【0074】
図12に示すように、基板2320の上面には、コネクター2330、Z軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340z、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサー2350などが実装されている。また、基板2320の側面には、X軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340xおよびY軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340yが実装されている。そして、加速度センサー2350として、本発明の慣性センサーを用いることができる。
【0075】
また、基板2320の下面には、制御IC2360が実装されている。制御IC2360は、MCU(Micro Controller Unit)であり、慣性計測装置2000の各部を制御する。記憶部には、加速度および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラムや、検出データをデジタル化してパケットデータに組込むプログラム、付随するデータなどが記憶されている。なお、基板2320にはその他にも複数の電子部品が実装されている。
【0076】
<第8実施形態>
図13は、第8実施形態に係る電子機器としての移動体測位装置の全体システムを示すブロック図である。図14は、図13に示す移動体測位装置の作用を示す図である。
【0077】
図13に示す移動体測位装置3000は、移動体に装着して用い、当該移動体の測位を行う装置である。なお、移動体としては、特に限定されず、自転車、自動車、自動二輪車、電車、飛行機、船等のいずれでもよいが、本実施形態では移動体として四輪自動車を用いた場合について説明する。
【0078】
移動体測位装置3000は、慣性計測装置3100(IMU)と、演算処理部3200と、GPS受信部3300と、受信アンテナ3400と、位置情報取得部3500と、位置合成部3600と、処理部3700と、通信部3800と、表示部3900と、を有する。なお、慣性計測装置3100としては、例えば、前述した慣性計測装置2000を用いることができる。
【0079】
慣性計測装置3100は、3軸の加速度センサー3110と、3軸の角速度センサー3120と、を有する。演算処理部3200は、加速度センサー3110からの加速度データおよび角速度センサー3120からの角速度データを受け、これらデータに対して慣性航法演算処理を行い、移動体の加速度および姿勢を含む慣性航法測位データを出力する。
【0080】
また、GPS受信部3300は、受信アンテナ3400でGPS衛星からの信号を受信する。また、位置情報取得部3500は、GPS受信部3300が受信した信号に基づいて、移動体測位装置3000の位置(緯度、経度、高度)、速度、方位を表すGPS測位データを出力する。このGPS測位データには、受信状態や受信時刻等を示すステータスデータも含まれている。
【0081】
位置合成部3600は、演算処理部3200から出力された慣性航法測位データおよび位置情報取得部3500から出力されたGPS測位データに基づいて、移動体の位置、具体的には移動体が地面のどの位置を走行しているかを算出する。例えば、GPS測位データに含まれている移動体の位置が同じであっても、図14に示すように、地面の傾斜θ等の影響によって移動体の姿勢が異なっていれば、地面の異なる位置を移動体が走行していることになる。そのため、GPS測位データだけでは移動体の正確な位置を算出することができない。そこで、位置合成部3600は、慣性航法測位データを用いて、移動体が地面のどの位置を走行しているのかを算出する。
【0082】
位置合成部3600から出力された位置データは、処理部3700によって所定の処理が行われ、測位結果として表示部3900に表示される。また、位置データは、通信部3800によって外部装置に送信されるようになっていてもよい。
【0083】
<第9実施形態>
図15は、第9実施形態に係る移動体を示す斜視図である。
【0084】
図15に示す自動車1500は、本発明の移動体を適用した自動車である。この図において、自動車1500は、エンジンシステム、ブレーキシステムおよびキーレスエントリーシステムの少なくとも何れかのシステム1510を含んでいる。また、自動車1500には、慣性センサー1が内蔵されており、慣性センサー1によって車体の姿勢を検出することができる。慣性センサー1の検出信号は、制御回路1502に供給され、制御回路1502は、その信号に基づいてシステム1510を制御することができる。
【0085】
このように、移動体としての自動車1500は、慣性センサー1と、慣性センサー1からの出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1502と、を有する。そのため、前述した慣性センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0086】
なお、慣性センサー1は、他にも、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。また、移動体としては、自動車1500に限定されず、例えば、飛行機、ロケット、人工衛星、船舶、AGV(無人搬送車)、二足歩行ロボット、ドローン等の無人飛行機等にも適用することができる。
【0087】
以上、本発明の慣性センサー、電子機器および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、前述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…慣性センサー、2…基板、21…凹部、211…部分、22…マウント、25、26、27…溝、3…センサー素子、31…固定部、32…可動体、321…第1可動部、322…第2可動部、324…開口、325…貫通孔、326…開口、326a…内面、327…開口、327a…内面、328…可動体側突起、329…開口、33…揺動梁、34、34A、34B…梁、35…ストッパー、35A…第1ストッパー、35B…第2ストッパー、350…突起、5…蓋、51…凹部、59…ガラスフリット、75、76、77…配線、8…電極、81…第1固定検出電極、82…第2固定検出電極、83…ダミー電極、1200…スマートフォン、1208…表示部、1210…制御回路、1500…自動車、1502…制御回路、1510…システム、2000…慣性計測装置、2100…アウターケース、2110…ネジ穴、2200…接合部材、2300…センサーモジュール、2310…インナーケース、2311…凹部、2312…開口、2320…基板、2330…コネクター、2340x、2340y、2340z…角速度センサー、2350…加速度センサー、2360…制御IC、3000…移動体測位装置、3100…慣性計測装置、3110…加速度センサー、3120…角速度センサー、3200…演算処理部、3300…GPS受信部、3400…受信アンテナ、3500…位置情報取得部、3600…位置合成部、3700…処理部、3800…通信部、3900…表示部、Az…加速度、Ca、Cb…静電容量、D1、D2、D3、D4、D5、D6…離間距離、J…揺動軸、P…電極パッド、S…収納空間、S1…面積、S2…面積、W1、W2、W3、W4…幅、θ…傾斜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15