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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】発泡化粧材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20231219BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231219BHJP
   D06N 7/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/00 E
B32B27/18 J
D06N7/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019088427
(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公開番号】P2020183076
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 正幸
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-301406(JP,A)
【文献】特開平03-283308(JP,A)
【文献】特開2017-166080(JP,A)
【文献】特開2010-208302(JP,A)
【文献】特開昭59-062141(JP,A)
【文献】特開平02-206545(JP,A)
【文献】特開昭61-206641(JP,A)
【文献】特開2009-096108(JP,A)
【文献】特開2011-093303(JP,A)
【文献】特開2011-093302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J9/00-9/42
D06N 1/00- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材と発泡樹脂層とを具備する発泡化粧材であって、
発泡樹脂層は水性エマルジョン系樹脂、および導電性フィラーを含有し、
前記水性エマルジョン系樹脂が、酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルエステル系共重合体、アクリル系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系共重合体からなる群から選ばれた1種以上であり、
前記発泡樹脂層は前記水性エマルジョン系樹脂100重量部に対して前記導電性フィラーが0.1~20重量部含有されており、
前記導電性フィラーが炭素繊維であり、
前記導電性フィラーのアスペクト比が3~300であることを特徴とする発泡化粧材。
【請求項2】
前記導電性フィラーを含有する層の表面抵抗率が1013Ω/□以下であることを特徴とする請求項1に記載の発泡化粧材。
【請求項3】
前記導電性フィラーの長さが5~300μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡化粧材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の発泡化粧材よりなる壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレン-ビニルエステル系共重合体等の熱可塑性樹脂を主体とする発泡性樹脂組成物からなる発泡樹脂層を設けた壁紙が知られている(例えば特許文献1参照)。例えば、水性エマルジョン系樹脂に発泡剤を加えて得られる樹脂組成物を基材上に塗布、乾燥、発泡させる方法等で製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-94312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発泡化粧材は、内部に気泡を有していることから、軽量で断熱性に優れる反面、強度不足となる傾向がある。また、これらの発泡化粧材は、施工時の糊付けによる伸縮や施工後の継ぎ目部分の伸縮により目隙や突き上げが生じる恐れがある。さらに、特に低湿度環境下で帯電しやすいため、ホコリ等の汚れが付着しやすいという懸念がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、高い発泡倍率においても優れた強度が得られ、かつ施工時および施工後の寸法安定性に優れ、さらにホコリ等の汚れが付着しにくい発泡化粧材と、これを用いた壁紙の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係る発泡化粧材は、少なくとも基材と発泡樹脂層と表面樹脂層とをこの順に具備する発泡化粧材であって、泡樹脂層は少なくとも水性エマルジョン系樹脂および発泡剤を含む樹脂組成物からなり、表面樹脂層は少なくとも水性エマルジョン系樹脂および導電性フィラーを含む樹脂組成物からなり、表面樹脂層は水性エマルジョン系樹脂100重量部に対して該導電性フィラーが0.1~20重量部含有されており、導電性フィラーのアスペクト比が3~300であることを特徴とする。
【0007】
本発明のある態様に係る発泡化粧材は、少なくとも基材と発泡樹脂層とを具備する発泡化粧材であって、発泡樹脂層は少なくとも水性エマルジョン系樹脂、発泡剤、および導電性フィラーを含む樹脂組成物からなり、発泡樹脂層は該水性エマルジョン系樹脂100重量部に対して導電性フィラーが0.1~20重量部含有されており、導電性フィラーのアスペクト比が3~300であることを特徴とする。
【0008】
また、発泡化粧材においては、導電性フィラーを含有する面側の表面抵抗率が1013Ω/□以下であっても良い。
【0009】
また、発泡化粧材においては、導電性フィラーの長さが5~300μmであっても良い。
【0010】
また、発泡化粧材においては、導電性フィラーが炭素繊維であっても良い。
【0011】
また、発泡化粧材よりなる壁紙であっても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い発泡倍率においても優れた強度が得られ、かつ施工時および施工後の寸法安定性に優れ、さらにホコリ等の汚れが付着しにくい発泡化粧材と、これを用いた壁紙を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の発泡化粧材の第1実施形態の一例の層構成を示す模式断面図。
図2】本発明の発泡化粧材の第2実施形態の一例の層構成を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図1を参照しながら本発明の第1実施形態について説明する。
【0015】
図1は本発明の発泡化粧材における第1実施形態の一例の層構成を示す模式断面図である。図1に示すように、支持体となる基材1の表面上に、少なくとも発泡剤22が水性エマルジョン系樹脂21中に混合分散された樹脂組成物からなる発泡樹脂層2を積層し、さらに発泡樹脂層2上に、少なくとも導電性フィラー32が水性エマルジョン系樹脂31中に混合分散された樹脂組成物からなる表面樹脂層3を積層して構成されるものである。発泡樹脂層2および表面樹脂層3は2層以上の多層から構成されていてもよい。また、絵柄模様4や凹凸模様5を設けてもよい。
【0016】
基材1は、本発明の発泡化粧材の基材となるものであって、その材質は適宜選択することができる。本発明の発泡化粧材よりなる壁紙とする場合には、基材1として、壁紙用の上質紙、薄葉紙、和紙等の一般紙、あるいは、難燃紙、無機質紙など、いわゆる壁紙用裏打紙といわれるものを用いることができる。その坪量としては、30~300g/mが適当であり、好ましくは50~150g/mである。
【0017】
発泡樹脂層2は、基材1上に設けられ、水性エマルジョン系樹脂21中に少なくとも発泡剤22が混合分散されて構成されるものである。水性エマルジョン系樹脂21は、エチレン-ビニルエステル系共重合体等の熱可塑性樹脂に適宜充填剤を加えたものである。必要に応じて、可塑剤、着色剤、分散剤、ブロッキング防止剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、艶消剤、滑剤、減摩剤、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤等の種々の添加剤が加えられてもよい。発泡樹脂層2は2層以上の多層から構成されていてもよく、このとき、層によって樹脂組成物の配合を変更してもよい。
【0018】
水性エマルジョン系樹脂21に用いる熱可塑性樹脂として具体的には、例えば、酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルエステル系共重合体、アクリル系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系共重合体等を挙げることができ、これらの2種以上の共重合体または混合物を有効成分として含有していてもよい。
【0019】
発泡剤22としては、例えば炭酸水素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤や、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等の有機系発泡剤、熱可塑性樹脂からなる殻の内部に低沸点液体を封入した熱膨張性中空微小球体(マイクロカプセル発泡剤)等を、それぞれ単独又は適宜組み合わせて使用することができる。このとき、透気度の高い水性エマルジョン系樹脂に対しては、発泡効果の高い熱膨張性中空微小球体が最も好ましく使用できる。
【0020】
熱膨張性中空微小球体とは、加熱により膨張、発泡させることができる微小球体からなる発泡剤であり、例えば、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリルとアクリル酸メチルの共重合体などからなる殻の内部にイソブタン、イソペンタン等の低沸点炭化水素を含有する粒径1~50μm程度、好ましくは2~30μm程度の球体などが挙げられる。
【0021】
発泡樹脂層2に含まれる充填剤としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化第一鉄、塩基性炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛、珪砂、クレー、タルク、シリカ類、二酸化チタン、珪酸マグネシウム等が挙げられる。中でも、樹脂組成物配合の際の作業性等の理由から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが好適である。
【0022】
表面樹脂層3は、発泡樹脂層2上に設けられ、水性エマルジョン系樹脂31中に少なくとも導電性フィラー32が混合分散されて構成されるものである。水性エマルジョン系樹脂31としては、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂により構成され、発泡樹脂層2中の水性エマルジョン系樹脂21と同種のものを用いても良い。必要に応じて、可塑剤、着色剤、分散剤、ブロッキング防止剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、艶消剤、滑剤、減摩剤、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤等の種々の添加剤を加えてもよい。表面樹脂層3は2層以上の多層から構成されていてもよく、このとき、層によって樹脂組成物の配合を変更してもよい。
【0023】
水性エマルジョン系樹脂31に用いる熱可塑性樹脂として具体的には、例えば、酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルエステル系共重合体、アクリル系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系共重合体等を挙げることができ、これらの2種以上の共重合体または混合物を有効成分として含有していてもよい。
【0024】
表面樹脂層3に含まれる導電性フィラー32としては、導電性を有するものであれば特に限定されず、炭素系、金属系、金属酸化物系、導電性高分子系等の材料を用いることができる。これらの中でも軽量性と安全性の観点から炭素系のものが好適に用いられる。また、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
導電性フィラー32の形状は特に限定するものではなく、繊維状、針状、フレーク状、プレート状、粉末状等のフィラーを用いることができる。これらの中でも、導電性やアスペクト比の観点から繊維状のものが好適に用いられる。
【0026】
導電性フィラー32の配合量は、水性エマルジョン系樹脂100質量部に対して、0.1~20重量部、好ましくは0.5~10重量部である。該配合量が0.1重量部未満であると、所望の機械強度、寸法安定性、帯電防止性を得ることができず、一方、20質量部を超えると、発泡性やエンボス性が悪化し、発泡化粧材としての性能が低下する。
【0027】
導電性フィラー32のアスペクト比は、3~300のものが好ましく、さらに好ましくは10~200である。アスペクト比が3未満であると、所望の機械強度、寸法安定性、帯電防止性を得ることができず、一方、300を超えると、導電性フィラーの一部が塗工層から突き出たりして外観を損なう恐れがあるため好ましくない。
【0028】
導電性フィラー32の平均長さは、5~300μmのものが好ましく、さらに好ましくは10~200μmである。長さが5μm未満であると、所望の機械強度、寸法安定性、帯電防止性を得ることができず、一方、300μmを越えるとアスペクト比と同様、導電性フィラーの一部が塗工層から突き出たりして外観を損なう恐れがあるため好ましくない。
【0029】
導電性フィラー32として炭素繊維を用いる場合には、例えば、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、カーボンウィスカー等の炭素繊維を用いることができる。
【0030】
次に、本発明の発泡化粧材の製造方法の一例について説明する。
【0031】
まず、発泡樹脂層2および表面樹脂層3を構成する樹脂組成物を配合する。このとき、水性エマルジョン系樹脂31としてエチレン-ビニルエステル系共重合体、また導電性フィラー32として炭素繊維を用いる場合、樹脂組成物に含まれるエチレン-ビニルエステル系共重合体不揮発分を100重量部として、炭素繊維が不揮発分で0.1~20重量部であることが好ましい。
【0032】
次に、配合した樹脂組成物を基材1上に塗工し、発泡樹脂層2および表面樹脂層3を形成する。樹脂組成物の塗工方法としては特に限定されるものではなく、例えばナイフコート法、ノズルコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、グラビアコート法、ロータリースクリーンコート法、リバースロールコート法等の塗工方法が挙げられる。
【0033】
この際、発泡樹脂層2と表面樹脂層3は1層ずつ順次塗工形成しても良いし、多層塗工装置を用いて全層を同時に塗工形成しても良い。前者の場合には、より下層の層を乾燥固化した後により上側の層を塗工形成しても良いが、より下側の層を乾燥させずに湿潤状態において上側の層を塗工形成すると、各層間が相溶して層間密着性に優れる。
【0034】
発泡樹脂層2を構成する各層の厚さは特に限定されず、目的とする用途や要求特性に応じて適宜決定すればよい。例えば、壁紙として使用する場合、発泡樹脂層2の乾燥後の塗布量は50~300g/m、更に好ましくは、100~250g/m程度とすることが好ましい。
【0035】
表面樹脂層3を構成する各層の厚さは特に限定されず、目的とする用途や要求特性に応じて適宜決定すればよい。例えば、壁紙として使用する場合、表面樹脂層3の乾燥後の塗布量は5~100g/m、更に好ましくは、10~50g/m程度とすることが好ましい。
【0036】
次に、基材1に塗工した発泡樹脂層2および表面樹脂層3の乾燥を行う。樹脂組成物の塗工後の乾燥方法としては、例えば熱風乾燥法、赤外線照射乾燥法、真空乾燥法等の、公知の各種の乾燥方法から選ばれる1種の単独、又は2種以上を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥温度は、発泡性樹脂組成物の発泡開始温度を越えない範囲であることが必要である。例えば、エチレン-ビニルエステル系共重合体に熱膨張性マイクロカプセル発泡剤を添加した樹脂組成物を使用する場合、80~120℃の範囲であることが好ましい。このとき、発泡樹脂層2はゲル状となることもある。
【0037】
次に、必要に応じて表面樹脂層3に絵柄模様4を印刷する。表面樹脂層3の表面に水性インキを使用して、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等にて適宜、絵柄模様4を印刷形成してもよい。
【0038】
発泡樹脂層2の発泡のための加熱方法としては、熱風加熱法又は赤外線加熱法、若しくはその併用などを用いることができる。加熱温度や加熱時間は、発泡樹脂層2を構成する樹脂組成物の主体となる熱可塑性樹脂の溶融粘度特性と、樹脂組成物に添加された発泡剤の発泡温度特性とによって決定される。例えば、エチレン-ビニルエステル系共重合体に熱膨張型マイクロカプセル発泡剤を添加した樹脂組成物を使用する場合の一般的な条件は、加熱温度140~200℃、加熱時間20~80秒の範囲である。
【0039】
また、表面樹脂層3の表面に凹凸模様5を形成してもよい。形成法としては、加熱発泡後、発泡した表面樹脂層3の表面にエンボス版を押圧するメカニカルエンボス法、発泡抑制剤や発泡促進剤を使用したケミカルエンボス法が挙げられる。
【0040】
(第2実施形態)
続いて、図2を参照しながら本発明の第2実施形態について説明する。
【0041】
図2は本発明の発泡化粧材における第2実施形態の一例の層構成を示す模式断面図である。図2に示すように、支持体となる基材1の表面上に、少なくとも発泡剤22および導電性フィラー23が水性エマルジョン系樹脂21中に混合分散された樹脂組成物からなる発泡樹脂層2を積層して構成されるものである。発泡樹脂層は2層以上の多層から構成されていてもよい。また、絵柄模様4や凹凸模様5を設けてもよい。
【0042】
基材1および水性エマルジョン系樹脂21、発泡剤22、導電性フィラーについては、前述した第1実施形態で説明したものを用いることができる。導電性フィラー23の配合量は、水性エマルジョン系樹脂100質量部に対して、0.1~20重量部、好ましくは0.5~10重量部である。この場合、発泡樹脂層が最表面となるため強度低下しやすい場合があるが、発泡樹脂層を複数層とし、各層における発泡剤22と導電性フィラー23の配合量や各層の厚さを適宜調整することで強度低下を抑制することができる。
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【実施例
【0044】
(実施例1~9)
実施例1~9においては、第1実施形態の層構成の発泡化粧材を作成した。坪量100g/mの一般紙からなる基材1上に、下記に示す配合の樹脂組成物を、目付量(乾燥後の塗布量)150g/mに塗工して、発泡樹脂層2を形成した。続いて、発泡樹脂層2上に、下記に示す配合の樹脂組成物を、目付量(乾燥後の塗布量)30g/mに塗工して、表面樹脂層3を形成した。その後、乾燥炉にて乾燥温度を90℃、時間1分にて乾燥を行った。さらに、この表面樹脂層3上に水性インキを用いてグラビア印刷にて絵柄模様4を印刷した。最後に、発泡炉にて加熱温度を180℃、時間40秒にて発泡させ、メカニカルエンボス法にてエンボスを行い、凹凸模様5を形成し、実施例1~9の壁紙を得た。
【0045】
(発泡樹脂層形成組成物の配合) 重量部
熱可塑性樹脂 エチレン-酢酸ビニル共重合体 100
充填剤 炭酸カルシウム 100
着色剤 二酸化チタン 20
発泡剤 熱膨張性中空微小球体 10
【0046】
(表面樹脂層形成組成物の配合) 重量部
熱可塑性樹脂 エチレン-酢酸ビニル共重合体 100
充填剤 炭酸カルシウム 100
着色剤 二酸化チタン 20
導電性フィラー 炭素繊維 ※表1に示す
【0047】
<比較例>
樹脂組成物中に含有される導電性フィラーを表2に記載のとおり変更して、比較例1~8の壁紙を作成した。
【0048】
(実施例10~18)
実施例10~18においては、第2実施形態の層構成の発泡化粧材を作成した。坪量100g/mの一般紙からなる基材1上に、下記に示す配合の樹脂組成物を、目付量(乾燥後の塗布量)150g/mに塗工して、発泡樹脂層2を形成した。その後、乾燥炉にて乾燥温度を90℃、時間1分にて乾燥を行った。さらに、この発泡樹脂層2上に水性インキを用いてグラビア印刷にて絵柄模様4を印刷した。最後に、発泡炉にて加熱温度を180℃、時間40秒にて発泡させ、メカニカルエンボス法にてエンボスを行い、凹凸模様5を形成し、実施例10~18の壁紙を得た。
【0049】
(発泡樹脂層形成組成物の配合) 重量部
熱可塑性樹脂 エチレン-酢酸ビニル共重合体 100
充填剤 炭酸カルシウム 100
着色剤 二酸化チタン 20
発泡剤 熱膨張性中空微小球体 10
導電性フィラー 炭素繊維 ※表3に示す
【0050】
<比較例>
樹脂組成物中に含有される導電性フィラーを表4に記載のとおり変更して、比較例9~16の壁紙を作成した。
【0051】
実施例1~18および比較例1~16で得られた壁紙および樹脂組成物について、後述する方法で表面強度、寸法安定性、帯電防止性、外観を評価した。その結果を表1~表4に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
(表面強度)
ホフマンスクラッチハードネステスター(BYK社製PE-1610)を用い、以下の荷重にて、試料表面をひっかき、傷付きの有無を目視判定した。500g荷重で傷がないものを壁紙として好ましく、750g荷重で傷がないものを特に好ましいものとした。
〇:750g荷重で傷無し
△:500g荷重で傷無し、750g荷重で傷有り
×:500g荷重で傷有り
【0057】
(寸法安定性)
試料を90cm×90cmの大きさに裁断し、試験片の基材1側に糊を塗布し、両端を合わせて折りたたんだ。30分後、試料を半分の大きさに裁断し、石膏ボードに貼り付けた。そして、貼り付けた試料の中央部分を更にナイフカッターで真っ直ぐに裁断し、乾燥温度25℃で1週間乾燥後、試験片の目隙を測定した。目隙が0.2mm未満のものを壁紙として好ましく、0.15mm未満のものを特に好ましいものとした。
〇:目隙が0.15mm未満
△:目隙が0.15mm以上0.2mm未満
×:目隙が0.2mm以上
【0058】
(帯電防止性)
試料を5cm×5cmの大きさに裁断し、表面抵抗率計(三菱化学社製MCP-HT450)を用いて試料の表面抵抗率を測定した。表面抵抗率が1×1013Ω/□以下のものを壁紙として好ましいものとした。
〇:表面抵抗率が1×1013Ω/□以下
×:表面抵抗率が1×1013Ω/□より大きい
【0059】
(外観)
作製した試料の外観形状を評価した。外観形状が良好のものを壁紙として好ましいものとした。
○:外観形状良好
×:外観形状不良
【0060】
実施例1~18及び比較例1~16で得た壁紙の表面強度、寸法安定性、帯電防止性、外観を評価したところ、実施例1~18で得た壁紙については、いずれの項目も良好(評価で○または△)であった。一方、比較例1~16で得た壁紙については、いずれかの項目で好ましくない(評価で×)結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本実施形態の発泡樹脂層および壁紙によれば、高い発泡倍率においても優れた強度が得られ、かつ施工時および施工後の寸法安定性に優れ、さらにホコリ等の汚れが付着しにくい発泡化粧材と、これを用いた壁紙を提供することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 基材
2 発泡樹脂層
21 水性エマルジョン系樹脂
22 発泡剤
23 導電性フィラー
3 表面樹脂層
31 水性エマルジョン系樹脂
32 導電性フィラー
4 絵柄印刷層
5 エンボス凹凸模様
図1
図2