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  • 特許-回転電機 図1
  • 特許-回転電機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/02 20060101AFI20231219BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20231219BHJP
【FI】
H02K1/02 A
H02K1/276
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019094023
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020191693
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】眞保 信之
(72)【発明者】
【氏名】三竹 晃司
(72)【発明者】
【氏名】黒嶋 敏浩
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0358851(US,A1)
【文献】特開2008-167520(JP,A)
【文献】特開2001-197694(JP,A)
【文献】特開2004-104962(JP,A)
【文献】特開2012-110214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/02
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線周りに所定の回転方向に回転可能なロータとステータとを備え、前記ロータおよび前記ステータの一方が複数の永久磁石が取り付けられる磁石保持部を有し、他方が複数のコイルが取り付けられるコイル保持部を有する回転電機であって、
前記各永久磁石が、前記ロータの軸線方向に関し、前記磁石保持部の全長に亘って延在しており、
前記磁石保持部が、前記各永久磁石を保持するとともに前記ロータの軸線方向において複数のケイ素鋼板が積層された積層鋼板で構成されている本体部と、前記永久磁石とロータ-ステータ間のエアギャップとの間における前記回転方向の後方側の全体を占める第1部分とを有し、
前記第1部分が、軟磁性粉の圧粉成形体で構成されており、前記第1部分のみが、前記磁石保持部の前記本体部の透磁率より低い透磁率を有し、かつ、前記磁石保持部の前記本体部の飽和磁束密度より低い飽和磁束密度を有し、
前記ロータの軸線方向から見て、前記第1部分と前記永久磁石とが隣接しており、前記第1部分と前記永久磁石との間に前記本体部が介在していない、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転電機として、インナーロータ型モータの一種であり、ロータ内部に永久磁石が埋め込まれたIPMモータが知られている(たとえば下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-134842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したIPMモータでは、ロータ回転時における反磁界により、永久磁石に局所的な減磁が生じ得る。発明者らは、鋭意研究の末、ロータにおける永久磁石の局所的な減磁を抑制することができる技術を新たに見出した。
【0005】
本発明は、減磁の抑制が図られた回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る回転電機は、所定の軸線周りに所定の回転方向に回転可能なロータとステータとを備え、ロータおよびステータの一方が複数の永久磁石が取り付けられる磁石保持部を有し、他方が複数のコイルが取り付けられるコイル保持部を有する回転電機であって、各永久磁石が、ロータの軸線方向に関し、磁石保持部の全長に亘って延在しており、磁石保持部が、各永久磁石を保持する本体部と、永久磁石とロータ-ステータ間のエアギャップとの間における回転方向の後方側の第1部分とを有し、第1部分が、磁石保持部の本体部の透磁率より低い透磁率を有し、かつ、磁石保持部の本体部の飽和磁束密度より低い飽和磁束密度を有する。
【0007】
上記回転電機においては、第1部分が、磁石保持部の本体部の透磁率より低い透磁率を有し、かつ、磁石保持部の本体部の飽和磁束密度より低い飽和磁束密度を有するため、第1部分が磁石保持部の本体部と同じ透磁率および同じ飽和磁束密度を有する場合に比べて、ロータ回転時に生じ得る永久磁石の回転方向後方側の端部の局所的な減磁を抑制することができる。
【0008】
他の形態に係る回転電機は、磁石保持部の本体部が、ロータの軸線方向において複数のケイ素鋼板が積層された積層鋼板で構成されており、第1部分が、軟磁性粉の圧粉成形体で構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、効率の向上が図られた回転電機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るIPMモータを示した概略断面図である。
図2図1に示したIPMモータのII-II線断面図である。
図3図1に示したIPMモータの要部の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して種々の実施形態および実施例について説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
以下に示す実施形態では、回転電機として、モータ(より詳しくはIPMモータ)を例に説明する。図1に、実施形態に係るIPMモータ1を示す。図1は、軸線Xの方向から見たIPMモータ1の平面図を示している。IPMモータ1は、ロータ10とステータ20とを有し、ステータ20の内側にロータ10が位置するインナーロータ型のモータである。IPMモータ1は、8極12スロットの構成を有する。
【0013】
ロータ10は、シャフト12とロータコア14(磁石保持部)とを備えて構成されている。
【0014】
シャフト12は、円柱状の形状を有し、図1の紙面に垂直な方向に延びている。シャフト12は、たとえばステンレス等によって構成されている。
【0015】
ロータコア14は、円筒状の形状を有し、内側に軸孔14aを有する。シャフト12は、ロータコア14の軸孔14aに嵌め込まれており、ロータコア14とシャフト12とは軸線X周りに一体的に回転する。本実施形態では、ロータコア14は、外径が85mmであり、内径が158.4mmである。また、ロータコア14の幅(すなわち、軸線Xの方向に関する長さ)は、100mmである。
【0016】
図1および図2に示すように、ロータコア14には、複数の永久磁石30が取り付けられている。複数の永久磁石30は、同じ材料で構成された永久磁石とすることができる。本実施形態では、各永久磁石30は、希土類系永久磁石で構成されており、たとえばネオジム系焼結磁石である。各永久磁石30は、ネオジム系以外の焼結磁石であってもよく、焼結磁石以外の磁石(たとえばボンド磁石や熱間加工磁石等)であってもよい。
【0017】
各永久磁石30は、ロータ10の軸線Xに対して平行に延びる磁石用孔16に収容されている。磁石用孔16の内側寸法は、後述する永久磁石30の外形寸法よりわずかに大きく設計されている。そのため、永久磁石30は、磁石用孔16内において位置や姿勢が変わらない。
【0018】
本実施形態では、ロータ10は、同一形状の8個の永久磁石30を備えており、8個の永久磁石30は、永久磁石30の対が軸線Xに関して均等な角度間隔で配置されている。永久磁石30はいずれも、軸線Xの方向から見て、アーチ状(またはC字状)の端面形状および断面形状を有しており、その内弧側がロータコア14の外周面14bを向くように配置されている。永久磁石30は、いずれもラジアル配向されており、内弧側にN極を有するN極磁石30Aと内弧側にS極を有する極磁石30Bとが軸線X周りに交互に配置されている。本実施形態では、永久磁石30は、ロータコア14の外周面14bに露出しておらず、外周面14bからわずかに内側に入り込んでいる。本実施形態において、永久磁石30は、外弧の曲率半径35mm、内弧の曲率半径28.7mm、開き角100°の断面形状を有する。
【0019】
永久磁石30は、その延在方向がロータ10の軸線Xと平行になるようにロータコア14の磁石用孔16内に配置される。図2に示すように、磁石用孔16および永久磁石30は、軸線Xの方向に関し、ロータコア14の全長に亘って延在している。永久磁石30の延在方向に関する長さは、ロータコア14の幅と実質的に同一であり、本実施形態では100mmである。
【0020】
ステータ20は、ロータ10の外周を囲むように設けられた円筒状のステータコア21(コイル保持部)を備えている。ロータ10とステータ20との間には、均一幅のエアギャップG(一例として0.8mm幅)が設けられている。ステータコア21の内周側には、複数(本実施形態では12個)のコイル22が配置されている。複数のコイル22は、ロータ10の軸線Xに関して均等な角度間隔で配置されている。図示しないインバータ回路等から複数のコイル22に3相交流電圧が印加されると、ステータコア21の内周側に回転磁界が発生する。本実施形態では、ステータコア21は、外径が250mmであり、内径が160mmである。また、ステータコア21の幅(すなわち、軸線Xの方向に関する長さ)は、100mmである。
【0021】
図3に示すように、ロータコア14は、各永久磁石30を保持する本体部17と、第1部分18とを有する。
【0022】
本体部17は、軸線Xの方向において複数の鋼板19が積層された積層鋼板で構成されている。各鋼板19の厚さは、たとえば0.2~0.5mmである。鋼板19には、ケイ素鋼板が採用され得る。
【0023】
第1部分18は、永久磁石30とロータ-ステータ間のエアギャップGとの間における回転方向の後方側の部分である。より詳しくは、永久磁石30とロータ-ステータ間のエアギャップGとの間であって、永久磁石30の開き角の二等分線Lよりも回転方向の後方側の部分である。第1部分18は、軟磁性粉の圧粉成形体で構成されている。圧粉成形体の軟磁性粉として、FeSi粉等の純鉄系磁性粉を採用することができる。圧粉成形体の軟磁性粉の平均粒径(d50)は、たとえば20~100μmである。圧粉成形体は、軟磁性粉を結着することで得られ、結着には樹脂等の結着剤を用いることができる。圧粉成形体は、軟磁性粉を用いた熱間成形によって得ることができる。第1部分18がFeSi粉の圧粉成形体で構成されている場合には、第1部分18の透磁率および飽和磁束密度は、本体部17の透磁率および飽和磁束密度より低くなる。軟磁性粉の圧粉成形体で構成された第1部分18の透磁率はたとえば500~1000H/mであり、積層鋼板で構成された本体部17の透磁率はたとえば5000~20000H/m(一例として10000H/m)であるが、これらの数値範囲に限定されない。
【0024】
ここで、IPMモータ1のように永久磁石が取り付けられるモータでは、ロータが回転することで部分的磁石の磁化方向とは逆向きの磁界(逆磁界)がかかることが知られている。逆磁界がかかる領域は、永久磁石の配置等によって変わるが、たとえば、ロータの回転方向に対して後方側(回転方向とは逆側)の端部に逆磁界がかかることが知られている。例えば、図3で示す矢印Rがロータ10の回転方向であるとすると、永久磁石30の右側端部の内弧側部分31(すなわち、エアギャップG側の部分)付近に逆磁界がかかると考えられる。このように、逆磁界が生じる領域では永久磁石の減磁が発生することが懸念される。
【0025】
発明者らは、逆磁界がかかりやすい領域である永久磁石30の右側端部の内弧側部分31付近に、透磁率および飽和磁束密度がより低い材料を配置することで、局所的な減磁が抑制されるとの知見を得た。
【0026】
上述したIPMモータ1においては、永久磁石30の右側端部の内弧側部分31付近に、積層鋼板で構成された本体部17に比べて透磁率および飽和磁束密度が低い軟磁性粉の圧粉成形体で構成された第1部分18を置換配置することで、局所的な減磁が抑制されている。
【0027】
なお、第1部分18は、永久磁石30の右側端部の内弧側部分31に位置している限りにおいて、軸線方向から見たときの寸法および形状を適宜変更することができる。
【0028】
また、IPMモータ1では、ロータ回転時等における高温下において、永久磁石30の磁力が低下する現象(いわゆる熱減磁)が生じ得る。IPMモータ1においては、積層鋼板で構成された本体部17に比べて透磁率および飽和磁束密度が低い軟磁性粉の圧粉成形体で構成された第1部分18を置換配置することで、熱減磁の抑制も図られている。
【0029】
本発明に係るロータは、上述した実施形態に限らず、様々に変形することができる。
【0030】
たとえば、上述した実施形態においては、たとえば、IPMモータの極数やスロット数は、適宜増減することができる。また、永久磁石での端面形状および断面形状は、アーチ状に限らず、V字状等であってもよく、軸線Xの方向から見て複数に分割された形状であってもよい。上述した実施形態では、回転電機の一種であるモータ(電動機)について説明したが、本発明は回転電機の一種である発電機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…IPMモータ、10…ロータ、14…ロータコア、17…本体部、18…第1部分、20…ステータ、21…ステータコア、22…コイル、30、30A、30B…永久磁石。

図1
図2
図3