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特許7404655金属調化粧シート、金属調化粧板及び金属調化粧部材
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  • 特許-金属調化粧シート、金属調化粧板及び金属調化粧部材 図1
  • 特許-金属調化粧シート、金属調化粧板及び金属調化粧部材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】金属調化粧シート、金属調化粧板及び金属調化粧部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20231219BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019096091
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020189441
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】河西 優衣
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-285960(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199694(WO,A1)
【文献】特開平05-177802(JP,A)
【文献】特開2013-212639(JP,A)
【文献】特開2005-074637(JP,A)
【文献】特開2005-335151(JP,A)
【文献】特開2017-042974(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02316643(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第101549578(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面にプライマー層を有する熱可塑性樹脂着色原反層の表面に、絵柄模様層、接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、トップコート層、艶調整トップコート層をこの順序に有する化粧シートであって、
熱可塑性樹脂着色原反層はポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなり、透明熱可塑性樹脂層はポリプロピレン樹脂からなり、トップコート層及び艶調整トップコート層は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂のいずれかまたはこれらから選択される2種以上の混合物からなり、
絵柄模様層は、光輝成分を含む印刷インキを用いて金属表面のヘアライン加工面を模した絵柄を印刷したものであって、該絵柄は、幅が0.05mm以上0.1mm以下であり長さが1.0mm以上15mm以下の線状の柄抜け部分から構成され、柄の無い部分が幅1mm当たり1箇所以上存在するように不規則に配置されており、
艶調整トップコート層は、トップコート層よりも艶が低く、そのパターンは、太さが5mm以下で長さが100mm以下であり、太さと長さに揺らぎを持たせたパターンを組み合わせた模様状に形成されたものであり、
絵柄模様層は、光輝成分として、光輝性アルミニウム顔料を含むことを特徴とする金属調化粧シート。
【請求項2】
透明熱可塑性樹脂層は、ホモポリプロピレン樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の金属調化粧シート。
【請求項3】
艶調整トップコート層は、シリカを添加したアクリルウレタン樹脂からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属調化粧シート。
【請求項4】
トップコート層は、アクリルウレタン樹脂からなることを特徴とする請求項に記載の金属調化粧シート。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の金属調化粧シートを任意の基材に貼り合わせた金属調化粧板。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の金属調化粧シートを任意の基材に貼り合わせた金属調化粧部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内装飾部材、家具、キッチンユニット等の表面に用いる化粧シートに関し、特に金属調の意匠を備えた化粧シート、化粧板及び化粧部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や住宅の内装に用いられる化粧シートとしては、合成樹脂シートに木目模様や石目模様、抽象柄などの絵柄を印刷した化粧シートが一般的に用いられている。化粧シートの表面には、用途に応じて様々な艶、質感が再現されており、例えば居室用の空間では落ち着いた雰囲気を出すために艶を低くしたり、キッチンなどでは高級感が出るように高光沢な塗装風の鏡面仕上げにしたりすることが行われる。
【0003】
装飾部材としてステンレス板やアルミニウム板にヘアライン研磨加工を施した化粧材が用いられることがあるが、金属そのものを用いる場合、加工性や価格の問題に加え、重量が重いという問題もある。そこで従来より、化粧シートにおいて金属調の表現、特にヘアライン加工の表現を実現しようとする試みが種々なされて来た。
【0004】
特許文献1に記載された金属調の化粧シートは、表面にヘアライン状のエンボスを設けた透明熱可塑性樹脂層の裏面に接着剤を介して金属箔または金属蒸着層を設けた第1シートと熱可塑性樹脂からなる第2シートとを接着剤を介して貼り合わせた化粧シートである。
【0005】
特許文献1に記載された金属調の化粧シートは、実際の金属箔または金属蒸着層を用いる点でコスト的に不利であるばかりでなく、エンボス加工によるヘアライン表現には、実物と比較して物足りないものがあった。
【0006】
特許文献2に記載された金属調化粧シートは、透明合成樹脂フィルムの裏面にヘアラインまたはスピン加工による多数の微細な溝を有し、さらにプライマー層、金属薄膜層または光輝性顔料含有着色層および化粧層を積層した金属調化粧シートである。
【0007】
特許文献2に記載された金属調化粧シートは、実際のヘアライン加工物では最外面に微細な凹凸が存在するのに対して最外面が平滑であるため、斜光で見た場合の質感が全く異なるものである。またヘアライン加工は加工コストがかかるという問題もある。
【0008】
特許文献3に記載された金属調化粧シートは、合成樹脂基材シート、一面に微細な研磨模様を設けた金属箔層、非晶状態にある結晶性ポリエステル系樹脂からなる透明合成樹脂層を少なくともこの順に設けてなる金属調化粧シートである。
【0009】
特許文献3に記載された金属調化粧シートは、実際にヘアライン加工を施した金属箔を用いているため、一見実物と見まがうものであるが、コストの問題に加えて、特許文献2に記載された金属調化粧シートと同様に最外面が平滑であるため、斜光で見た場合の質感が異なるという同様の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平8-216334号公報
【文献】特開2001-1444号公報
【文献】特開2005-343114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は、金属箔や金属蒸着膜を使用することなく、ヘアライン加工を施した金属板に近似した表面外観を有する金属調化粧シートを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、裏面にプライマー層を有する熱可塑性樹脂着色原反層の表面に、絵柄模様層、接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、トップコート層、艶調整トップコート層をこの順序に有する化粧シートであって、熱可塑性樹脂着色原反層はポリオレフィン系熱可塑性樹脂を主成分とし、透明熱可塑性樹脂層はポリプロピレン樹脂を主成分とし、トップコート層及び艶調整トップコート層は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂のいずれかまたはこれらから選択される2種以上の混合物からなり、絵柄模様層は、光輝成分を含む印刷インキを用いて金属表面のヘアライン加工面を模した絵柄を印刷したものであって、該絵柄は、幅が0.05mm以上0.1mm以下であり長さが1.0mm以上15mm以下の線状の柄抜け部分から構成され、柄の無い部分が幅1mm当たり1箇所以上存在するように不規則に配置されており、艶調整トップコート層は、トップコート層よりも艶が低く、そのパターンは、太さが5mm以下で長さが100mm以下であり、太さと長さに揺らぎを持たせたパターンを組み合わせた模様状に形成されたものであることを特徴とする金属調化粧シートである。
【0013】
本発明に係る金属調化粧シートは、金属箔や金属蒸着膜を使用せずに、印刷手法のみでヘアライン加工を施した金属表面に類似した外観を得ることができたものである。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金属調化粧シートを任意の基材に貼り合わせた金属調化粧板または金属調化粧部材である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る金属調化粧シートは、光輝成分を含む印刷インキを用いて特定のヘアライン調の絵柄を印刷し、さらに最外面であるトップコート面に艶調整トップコート層を特定のパターン状に設けたことにより、実際のヘアライン加工金属板に類似した外観を得ることができた。
【0016】
従来、ヘアラインをアルミニウム顔料やパール顔料等の光輝性顔料を用いて柄として再現して印刷しても、光り方に変化がなく平坦な表情となり、いかにも印刷といった表現になってしまい、実際の金属のヘアラインの意匠性には程遠いものであった。様々な建材に使用されるオレフィン系化粧シートは、印刷絵柄を保護するために透明熱可塑性樹脂層を表面に貼り合わせたものが多いが、金属のヘアライン柄を印刷し、表面に透明熱可塑性樹脂層を貼り合わせても、実際の金属のヘアラインのような意匠にはならなかった。本発明においては、ヘアライン柄印刷を施したものの表面に、透明熱可塑性樹脂層を貼り合わせ、尚且つ、その上に表面保護層であるトップコート層を設け、これを特定の特徴を持ったパターンの艶変化模様とすることで本物の金属のヘアラインを再現することができた。特徴を持ったパターンとは、金属を研磨した際の研磨むらを艶変化模様で再現したものであり、ヘアライン柄印刷と表面の艶変化模様効果とが相まって本物の金属のヘアラインを再現することができた。
【0017】
また本発明に係る金属調化粧シートは、最外面に艶調整トップコート層をパターン状に設けたことにより、斜光で見た時にも平滑な表面とならず、従来の金属調化粧シートに見られた実際の金属板との違いに基づく違和感がなくなった。
【0018】
また本発明に係る金属調化粧シートは、実際の金属箔や金属蒸着膜を使用していないため、これらに起因するシールド効果による電波障害を引き起こすことがないという効果も有している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係る金属調化粧シートの一実施態様における層構成を示した断面模式図である。
図2図2は、図1に示した金属調化粧シートを接着剤を用いて基材に貼り合わせた金属調化粧板の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照しながら本発明に係る金属調化粧シートについて詳細に説明する。図1は、本発明に係る金属調化粧シートの一実施態様における層構成を示した断面模式図である。本発明に係る金属調化粧シート1は、裏面にプライマー層8を有する熱可塑性樹脂着色原反層2の表面に、絵柄模様層3、接着剤層4、透明熱可塑性樹脂層5、トップコート層6、艶調整トップコート層7をこの順序に有する化粧シートである。
【0021】
熱可塑性樹脂着色原反層2としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系熱可塑性樹脂を主成分とし、これに着色顔料、充填剤、安定剤等を添加した樹脂組成物をシート状に成形したものを使用する。
【0022】
熱可塑性樹脂着色原反層2の表面に光輝成分を含む印刷インキを用いて絵柄模様層3を印刷形成する。印刷方法としては、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等任意であるが、グラビア輪転印刷法が最も適している。光輝成分としては、光輝性アルミニウム顔料や、パール顔料、合成パール顔料等を用いることができる。
【0023】
絵柄模様層3は、光輝成分を含む印刷インキを用いて金属表面のヘアライン加工面を模した絵柄を印刷したものであって、絵柄としては、幅が0.05mm以上0.1mm以下であり長さが1.0mm以上15mm以下の線状の柄抜け部分から構成され、柄の無い部分が幅1mm当たり1箇所以上存在するように不規則に配置することが必要である。
【0024】
絵柄模様層3の上に、接着剤層4を介して透明熱可塑性樹脂層5を設ける。透明熱可塑性樹脂層5としてはポリプロピレン樹脂を主成分とし、これに必要に応じて添加剤として安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を添加した樹脂組成物をフィルム状に成形したものをドライラミネート法によって貼り合わせたり、樹脂組成物を押出機のTダイから押し出して同時ラミネートする押し出しラミネート法によって下地層と貼り合わせる。
【0025】
透明熱可塑性樹脂層5を押し出しラミネート法によって形成する場合、2軸押出機を用いて、接着性樹脂と表面樹脂の2層を共押出法によって同時に形成しても良い。この場合接着剤層4を省略することができる場合もある。
【0026】
透明熱可塑性樹脂層5の表面にトップコート層6及び艶調整トップコート層7を設ける。これらは、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂のいずれかまたはこれらから選択される2種以上の混合物からなるものを使用する。艶調整トップコート層7は、トップコート層6よりも艶が低く、そのパターンは、太さが5mm以下で長さが100mm以下であり、太さと長さに揺らぎを持たせたパターンを組み合わせた模様状に形成する。
【0027】
図2は、図1に示した金属調化粧シートを接着剤を用いて基材に貼り合わせた金属調化粧板の断面模式図である。基材層10としては、合板、MDF(中密度木質繊維板)、パーティクルボード等の木質基材の他、鋼板、合成樹脂板等任意の材質の材料を基材として用いることができる。
【0028】
金属調化粧シートを木質基材に貼り合わせた化粧板をVカット等により立体的な形状の部材としたり、あるいは立体的な形状に加工した基材にラッピング法によって化粧シートを貼り合わせても良い。また、金属板を基材として用いた場合には、貼り合わせた後に折曲げ加工やロールフォーミング加工によって立体的な形状の部材としても良い。以下実施例に基づいて本発明に係る金属調化粧シートについて具体的に説明する。
【実施例
【0029】
熱可塑性樹脂着色原反層として厚さ70μmの顔料配合ランダムポリプロピレン樹脂シートを用い、この表面に絵柄模様層としてウレタン樹脂グラビアインキ(東洋インキ社製ラミスター)を用いてグラビア印刷により金属のヘアライン柄を印刷した。ヘアライン柄は、幅が0.05mm以上0.1mm以下であり長さが1.0mm以上15mm以下の線状の柄抜け部分から構成され、柄の無い部分が幅1mm当たり1箇所以上存在するように不規則に配置されたものである。
【0030】
絵柄模様層上に、透明熱可塑性樹脂層として厚さ70μmのホモポリプロピレン樹脂フィルムを接着剤を用いたドライラミネート法によって貼り合わせた。透明熱可塑性樹脂層の表面にトップコート層としてアクリルウレタン樹脂系2液硬化型樹脂(DICグラフィック社製)を6μmの厚さになるように塗布し、更に艶調整トップコート層としてトップコート層に用いたアクリルウレタン樹脂にシリカを添加した艶消しトップコート剤を用いてグラビア印刷法により、太さが5mm以下で長さが100mm以下であり、太さと長さに揺らぎを持たせたパターンを組み合わせた模様状に形成して金属調化粧シートを作製した。
【0031】
<比較例>
比較例として、艶調整トップコート層を設けない以外は、実施例1と同様にして金属調化粧シートを作製した。
【0032】
実施例と比較例の化粧シートについて10人の評価者による金属ヘアライン意匠感の評価を行った。
<評価基準>
良いとした人の人数0人・・・×
良いとした人の人数1~6人・・・△
良いとした人の人数7~10人・・・〇
結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
このように、本発明に係る金属調化粧シートは、金属ヘアライン意匠感が高いと感じる人が多いことが分かる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・金属調化粧シート
2・・・熱可塑性樹脂着色原反層
3・・・絵柄模様層
4・・・接着剤層
5・・・透明熱可塑性樹脂層
6・・・トップコート層
7・・・艶調整トップコート層
8・・・プライマー層
9・・・接着剤層
10・・・基材層
20・・・金属調化粧板
図1
図2