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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/165 401
B41J2/165 503
B41J2/165 207
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019103320
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020196188
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003443
【氏名又は名称】弁理士法人TNKアジア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】古川 徳昭
(72)【発明者】
【氏名】染手 隆志
(72)【発明者】
【氏名】石原 力
(72)【発明者】
【氏名】上田 博之
(72)【発明者】
【氏名】仲辻 弘臣
(72)【発明者】
【氏名】中野 一成
(72)【発明者】
【氏名】大棚 愛一朗
(72)【発明者】
【氏名】中野 潤
(72)【発明者】
【氏名】乾 靖隆
(72)【発明者】
【氏名】荒木 拓馬
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-136991(JP,A)
【文献】特開2001-180013(JP,A)
【文献】特開2010-194923(JP,A)
【文献】特開2018-114660(JP,A)
【文献】特開2017-140812(JP,A)
【文献】特開2012-183664(JP,A)
【文献】特開2018-089832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが吐出される複数のインク吐出口を有するインク吐出面を備える記録ヘッドと、
複数の前記インク吐出口が並ぶ方向における前記記録ヘッドの端部に設けられた洗浄液供給部と、
板状とされ、先端縁部が前記インク吐出面に対して押圧された状態で接触して、複数の前記インク吐出口が並ぶ方向である予め定められたワイピング方向に移動することにより、前記ワイピング方向における前記洗浄液供給部の上流側から前記洗浄液供給部及び前記インク吐出面をワイピングするクリーニング動作を行うワイパー部材と、
前記ワイパー部材を駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御して前記ワイパー部材にクリーニング動作を行わせる制御部と、
前記ワイピング方向における前記記録ヘッドの下流側となる前記記録ヘッドの端部に隣接して配置され、前記ワイパー部材の前記先端縁部に接触する接触部材とを備え、
前記接触部材は、前記ワイパー部材との接触面が前記インク吐出面よりも前記ワイパー部材から遠い位置に配設され、前記接触面は前記インク吐出面に対して予め定められた高低差を有して設けられ、
前記接触面は、前記ワイピング方向において前記記録ヘッドの端部に隣接する前記高低差を有する部分を含み、前記ワイピング方向において前記ワイパー部材が前記インク吐出面から離れるに連れて前記ワイパー部材の前記先端縁部から離れる傾斜面とされ、
更に、前記ワイパー部材は、前記接触面に対する前記先端縁部のオーバーラップ量を予め定められた値だけ有するインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記接触部材は、前記ワイピング方向において前記記録ヘッドの端部に隣接する部分と記接触面との間の距離が0mmよりも大きく、前記インク吐出面に対する前記ワイパー部材の前記先端縁部のオーバーラップ量から、前記接触面に対する前記先端縁部のオーバーラップ量を差し引いた値以下とされている請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記接触部材は、前記ワイピング方向における長さが、前記クリーニング動作終了時の前記記録ヘッドの端部における前記ワイパー部材の停止位置のワイピング方向におけるばらつきのレンジと、前記インク吐出面に対する前記ワイパー部材の前記ワイピング方向における撓み量との合算値以上の長さとされている請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記接触部材の前記接触面は、前記インク吐出面よりも撥インク性が低く形成されている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記接触部材は、前記ワイパー部材の前記先端縁部が延びる方向における寸法が、当該方向において前記先端縁部の一部にのみ接触する寸法とされている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、特に、記録ヘッドのインク吐出面を清掃する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドのノズルから用紙などの記録媒体にインクを吐出して、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置がある。このようなインクジェット記録装置では、記録ヘッドのノズルから吐出されたインクがノズル面に付着することを防止するために、例えば下記特許文献1に示されるように、板状のワイパーをその先端縁部をインク吐出面に接触させてワイピング方向に移動させることでインク吐出面をワイピングするクリーニング動作が提案されている。
【0003】
上記特許文献1に記載のクリーニング動作では、ワイパーがインク吐出面に接触しつつワイピング方向に移動し、インク吐出面を清掃し終わったときに、ワイパーがインク吐出面の終端となる側端部に到達する。この側端部では、ワイパーは、インク吐出面に押圧されて接触している状態から解放されるため、当該押圧により撓んでいた湾曲状態から、押圧を受けず真っ直ぐに伸びた状態に戻ろうとする。このとき、ワイパーによりインク吐出面から掻き取られてワイパーに付着していたインクは、ワイパーが湾曲状態から真っ直ぐに伸びた状態に戻るときの弾性変形による力で周囲に飛散する。このように飛散した場合、装置内で飛散したインクが付着した部分に汚染・劣化が生じ、更には故障の原因にもなる。
【0004】
この問題を解決するために、下記特許文献2では、記録ヘッド横に設けたスロープ形状のブレード干渉材(以下、接触部材という)をワイパー全体に接触させることによりワイパーの急激な弾性変形を抑制する技術が提案されている。また、下記特許文献3では、吸液に優れた素材で構成した接触部材により、ワイパーに付着したインクを効果的に回収する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-205816号公報
【文献】特開平7-214785号公報
【文献】特開2001-180013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に記載された技術では、接触部材によりワイパーの弾性変形によるインク飛散は低減できるが、ワイパーが掻き取ったインクは接触部材に移って付着する。このため、接触部材に付着したインクの堆積が進むと、接触部材は記録ヘッド横にあることから、印刷時に記録紙が接触部材の配設位置を通過したときに、接触部材に付着しているインクが記録紙に付着する。これにより、記録紙汚れによる画像不良が発生するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、接触部材によりワイパーの弾性変形を更に小さくしてインク飛散をより低減して、ワイパーが掻き取ったインクが接触部材に移って付着する量を削減することで、ワイパー部材から移って接触部材に付着したインクを原因とする画像不良の発生を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係るインクジェット記録装置は、インクが吐出される複数のインク吐出口を有するインク吐出面を備える記録ヘッドと、板状とされ、先端縁部が前記インク吐出面に対して押圧された状態で接触して予め定められたワイピング方向に移動することにより、前記インク吐出面をワイピングするクリーニング動作を行うワイパー部材と、前記ワイパー部材を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御して前記ワイパー部材にクリーニング動作を行わせる制御部と、前記ワイピング方向における前記記録ヘッドの端部に隣接して配置され、前記ワイパー部材の前記先端縁部に接触する接触部材とを備え、前記接触部材は、前記ワイパー部材との接触面が前記インク吐出面よりも前記ワイパー部材から遠い位置に配設され、更に、前記ワイパー部材は、前記接触面に対する前記先端縁部のオーバーラップ量を予め定められた値だけ有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接触部材によりワイパーの弾性変形が更に小さくなってインク飛散がより低減され、ワイパーが掻き取ったインクが接触部材に移って付着する量が削減するため、ワイパー部材から移って接触部材に付着したインクを原因とする画像不良の発生を従来よりも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示した断面正面図である。
図2】搬送ユニットが下方のメンテナンス位置に移動し、クリーニング部が記録部の直下位置に移動した状態を示す図である。
図3】第1実施形態に係るインクジェット記録装置の主要内部構成を概略的に示した機能ブロック図である。
図4A】記録部と搬送ユニットとを示した図である。
図4B】搬送ユニット及び記録部を上方から見た平面図である。
図5】(A)はクリーニング部のインクトレイ及びワイパーユニットが記録部の下方に配置された状態を示す一部破断側面図である。(B)は記録ヘッドのインク吐出面を下方から見た図である。
図6】(A)(B)はインク吐出面及びワイパー部材を下方から視認した状態を示す図である。
図7】ワイピング方向における記録ヘッドの端部であって接触部材が取り付けられている部分の拡大図である。
図8】(A)~(E)は、クリーニング動作を説明するための一部破断側面図である。
図9】(A)は、記録ヘッドの端部であって接触部材の接触面部分を示す斜視図、(B)は、記録ヘッドの端部であって接触部材の接触面部分を示す側面図である。
図10】接触面に付着したインクによる汚れの影響度を実験により測定した結果を示す図である。
図11】接触面に付着したインクによる汚れの影響度を実験により測定した結果を示す図である。
図12】接触面に付着したインクによる汚れの影響度を実験により測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示した断面正面図である。図2は、搬送ユニットが下方のメンテナンス位置に移動し、クリーニング部が記録部の直下位置に移動した状態を示す図である。インクジェット記録装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えた複合機であり、装置本体11に、操作部47、原稿給送部6、原稿読取部5、画像記録部12、給紙部14、用紙搬送部19、搬送ユニット125、及びクリーニング部8を含んで構成されている。
【0012】
操作部47は、インクジェット記録装置1が実行可能な各種動作及び処理について、操作者から、画像記録動作実行指示等の指示を受け付ける。操作部47は、操作者への操作案内等を表示する表示部473を備えている。
【0013】
インクジェット記録装置1で原稿読取動作が行われる場合について説明する。原稿給送部6により給送されてくる原稿、又はプラテンガラス161に載置された原稿の画像を、原稿読取部5が光学的に読み取り、そして画像データを生成する。原稿読取部5により生成された画像データは、図略の画像メモリー等に保存される。
【0014】
原稿読取部5は、光源射部及びCCD(Charge Coupled Device)センサー等を有する読取機構163を備えており、原稿読取部5は、光源を有する光照射部を使って原稿を照射し、その反射光をCCDセンサーで受光することによって、原稿から画像を読み取る。
【0015】
インクジェット記録装置1で画像記録動作が行われる場合について説明する。原稿読取動作により生成された原稿画像データや、画像メモリー等に記憶されている原稿画像データ、ネットワーク接続されたコンピューターから受信した原稿画像データ等に基づいて、画像記録部12が、給紙部14から給紙され用紙搬送部19により搬送される用紙Pに画像を記録する。
【0016】
給紙部14は、給紙カセット141を備えている。給紙カセット141の上方には、給紙ローラー145が設けられており、給紙ローラー145により給紙カセット141に収容された用紙Pが搬送路190へ向けて繰り出される。
【0017】
また、給紙部14は、装置本体11の壁面に開閉自在に設けられた手差しトレイ142を備えている。手差しトレイ142にセットされた用紙Pは、給紙ローラー146により搬送路190へ向けて繰り出される。
【0018】
用紙搬送部19は、給紙部14から排出トレイ151に向けて用紙Pを搬送する搬送路190、搬送路190の適所に設けられた搬送ローラー対191、及び排出ローラー対192を備えている。
【0019】
給紙部14から給紙された用紙Pは、搬送ローラー対191により搬送路190内を搬送される。また、画像記録部12により画像が記録された用紙Pはフェイスアップで、排紙搬送路193(搬送路190の一部)を通って、排出ローラー対192により排出トレイ151に排出される。
【0020】
また、用紙搬送部19は、排出ローラー対192を用紙搬送方向に対して直角方向へ移動させて、排出トレイ151に排出する用紙Pを用紙幅方向にずらすオフセット機構(図示せず)を有する。
【0021】
画像記録部12は、給紙部14から給紙され搬送路190を搬送される用紙Pに原稿画像データに基づく画像を記録するものであり、搬送ユニット125と、吸着ローラー126と、記録部3と、インクタンク122とを備える。
【0022】
搬送ユニット125は、駆動ローラー125Aと、従動ローラー125Bと、テンションローラー127と、搬送ベルト128と、を備える。搬送ベルト128は、無端状のベルトであり、駆動ローラー125A、従動ローラー125B、及びテンションローラー127に架け渡されている。駆動ローラー125Aは、図略のモーターにより反時計回りに回転駆動されるローラーであり、駆動ローラー125Aが回転駆動されることで、搬送ベルト128が反時計回りに走行するとともに、従動ローラー125B及びテンションローラー127が反時計回りに従動的に回転する。
【0023】
テンションローラー127は、搬送ベルト128の緊張状態を適切な状態で保つためのローラーである。吸着ローラー126は、搬送ベルト128に接触した状態で従動ローラー125Bに対向配置されており、搬送ベルト128を帯電させることで、給紙部14から給紙された用紙Pを搬送ベルト128に静電的に吸着させる。
【0024】
記録部3は、異なる4色(ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエロー)のインク滴を、用紙搬送部19により搬送されてくる用紙Pに向かって吐出し、画像を順次記録する。インクタンク122には、各色に対応したインクが充填されている。
【0025】
具体的には、記録部3は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応するラインヘッド31,32,33,34を有している。このため、インクジェット記録装置1は、ラインヘッド型のインクジェット記録装置である。また、記録部3は、ラインヘッド31~34を支持するヘッドフレーム35(図4A図4B参照)を有している。ヘッドフレーム35は装置本体11に支持されている。
【0026】
昇降機構129は、搬送ユニット125を下方から支持しており、搬送ユニット125をラインヘッド31~34に対して上下に昇降させる。即ち、昇降機構129は、搬送ユニット125をラインヘッド31~34に相対的に移動させることにより、搬送ユニット125及びラインヘッド31~34を離間及び接近させる。具体的には、昇降機構129は、記録部3による印刷が可能な記録位置(図1に示される位置)と、前記記録位置から下方へ所定距離を隔てたメンテナンス位置(図2に示される位置)との間で搬送ユニット125を移動させる。
【0027】
図3は、第1実施形態に係るインクジェット記録装置の主要内部構成を概略的に示した機能ブロック図である。インクジェット記録装置1は、制御ユニット10、原稿給送部6、原稿読取部5、画像記録部12、給紙部14、用紙搬送部19、操作部47、駆動機構88、搬送ユニット125、昇降機構129、洗浄液ポンプ130、及びクリーニング部8を備える。なお、図1に示したインクジェット記録装置1と同様の構成部分については同符号を付し、ここではその詳しい説明を省略する。
【0028】
給紙部14及び用紙搬送部19は、それぞれローラー駆動部14A,19Aを備える。ローラー駆動部14A,19Aは、モーター、ギア、ドライバー等から構成され、ローラー駆動部14Aは、給紙ローラー145,146に回転駆動力を付与する駆動源として機能を果たす。ローラー駆動部19Aは、搬送ローラー対191及び排出ローラー対192の駆動ローラーに回転駆動力を付与する駆動源として機能を果たす。
【0029】
制御ユニット10は、プロセッサー、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び専用のハードウェア回路を含んで構成される。プロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はMPU(Micro Processing Unit)等である。制御ユニット10は、制御部100を備えている。
【0030】
制御ユニット10は、内蔵する不揮発性メモリー等に記憶されている制御プログラムに従って上記プロセッサーが動作することにより、制御部100として機能するものである。但し、制御部100等は、制御ユニット10による制御プログラムに従った動作によらず、それぞれハードウェア回路により構成することも可能である。以下、特に触れない限り、各実施形態について同様である。
【0031】
制御部100は、インクジェット記録装置1の全体的な動作制御を司る。制御部100は、原稿給送部6、原稿読取部5、画像記録部12、給紙部14、用紙搬送部19、クリーニング部8、操作部47、搬送ユニット125、昇降機構129、駆動機構88及び洗浄液ポンプ130と接続され、これら各部の駆動制御等を行う。
【0032】
制御部100は、駆動機構88を駆動制御することによって、後述するように洗浄液831を用いてワイパー部材821によってインク吐出面361をワイピングするクリーニング動作を行わせる。駆動機構88は、ラック-ピニオン機構及び駆動源(駆動モーター等)などからなるワイパー部材821の駆動機構である。
【0033】
ここで、記録部3の構成について、図面を用いて詳細に説明する。図4Aは、記録部と搬送ユニットとを示した図である。図4Bは、搬送ユニット及び記録部を上方から見た平面図である。
【0034】
搬送ユニット125は、図4Aに示すように、ラインヘッド31~34の下方に配置されている。搬送ユニット125は、用紙Pをインク吐出面361に対向させつつ搬送ベルト128により搬送する。なお、搬送ベルト128とインク吐出面361との間隙は、用紙Pが通過可能な大きさとされ、画像記録時の用紙Pの表面とインク吐出面361との間隙が例えば1mmとなるように調整される。
【0035】
記録部3は、図4Bに示すように、ラインヘッド31~34を備えている。ラインヘッド31~34は、用紙Pの搬送方向D1に垂直な方向D2(用紙Pの幅方向)に長い。ラインヘッド31~34の幅は、搬送される最大幅の用紙Pの幅に対応する長さを有する。ラインヘッド31~34のそれぞれは、用紙Pの搬送方向D1に沿って所定間隔を隔てられて、ヘッドフレーム35に固定されている。ラインヘッド31~34のそれぞれは、複数(本実施形態では3個である例を示す)の記録ヘッド36を有する。このため、記録部3は、12個の記録ヘッド36を備えている。
【0036】
記録ヘッド36は、インクが吐出されるインク吐出口371を有する複数のインクノズル37を有する。なお、図4Bでは、複数のインクノズル37は、1列に配置された態様で簡略して示しているが、後述する図5(B)に示すように千鳥状に3列に配置されてもよい。記録ヘッド36の下面(用紙Pに対向する面)は、インク吐出口371が設けられたインク吐出面361である。本実施形態では、ラインヘッド31は、方向D2に沿って3つの記録ヘッド36が千鳥状に配列されている。また、他のラインヘッド32~34それぞれも、ラインヘッド31と同じように、方向D2に沿って3つの記録ヘッド36が千鳥状に配列されている。
【0037】
記録部3は、搬送ユニット125によって搬送される用紙Pに対して各記録ヘッド36の各インクノズル37からインクが吐出されることにより用紙Pに画像を記録する。ラインヘッド31~34のインクの吐出方式としては、例えばピエゾ素子を利用してインクを吐出させるピエゾ方式、又は加熱により気泡を発生させてインクを吐出させるサーマル方式などが採用される。
【0038】
図1に示すように、インクタンク122は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応するインクが収容されたインクタンク41,42,43,44を備えている。インクタンク41~44は、不図示のインクチューブによって同色のラインヘッド31~34のそれぞれに接続されている。ラインヘッド31~34には、インクタンク41~44それぞれからインクが補給される。ここで、インクとしては、例えば溶剤及び水に対して、各色に対応する色材などを含有させたものが用いられる。
【0039】
続いて、図5(A)(B)を参照してクリーニング部8を説明する。図5(A)は、クリーニング部のインクトレイ及びワイパーユニットが記録部の下方に配置された状態を示す一部破断側面図である。図5(B)は、記録ヘッドのインク吐出面を見た図である。
【0040】
クリーニング部8は、図2に示すように搬送ユニット125が前記メンテナンス位置にあるときに、クリーニング動作(パージ動作を含む)を行うことにより、ラインヘッド31~34各々の記録ヘッド36の機能を回復させる装置である。クリーニング部8は、図1図5(A)に示すように、インクトレイ81と、ワイパーユニット82と、駆動機構88とを有している。
【0041】
インクトレイ81は、それぞれの記録ヘッド36のインクノズル37から排出されるインクを受ける。インクトレイ81は、図略の第1移動機構により水平方向(図1における左右方向)に移動可能に支持されている。前記第1移動機構は、例えば、モーターの回転軸に連結されたギアの回転運動を直線運動に変換するラック-ピニオン機構などを利用してインクトレイ81を水平方向に移動させる既知の駆動機構である。インクトレイ81は、通常時(印刷時)は、記録部3よりも搬送方向D1の下流側に退避した退避位置(図2の一点鎖線で示される位置を参照)に配置されている。
【0042】
そして、制御部100は、ユーザーによる操作部47の操作でクリーニング動作を行うための指示が入力されると、昇降機構129により搬送ユニット125を前記メンテナンス位置に移動させ、更に、インクトレイ81を、ラインヘッド31~34の対向箇所に生じたスペースに、前記第1移動機構によって移動させる(図2の実線で示される位置を参照)。また、インクトレイ81は、鉛直方向(図2における上下方向)に昇降可能に支持されている。インクトレイ81は、ラインヘッド31~34の対向箇所に移動すると、昇降機構129により搬送ユニット125が前記メンテナンス位置から所定距離だけ上昇させられることで、上方向に移動する。
【0043】
ワイパーユニット82は、それぞれのインク吐出面361に付着したインクなどを洗浄する複数のワイパー部材821を、複数のステイ822を介して一対のサイドフレーム823に支持した構成を有する。また、ワイパーユニット82は、方向D2に沿って移動可能である。特に、複数のワイパー部材821は、記録ヘッド36のインク吐出面361に接触して洗浄液供給部83の位置からワイピング方向D21に移動可能である。
【0044】
複数のワイパー部材821は、ワイピング方向D21に沿って移動することにより洗浄液供給部83から供給される洗浄液831によってインク吐出面361を洗浄する。
【0045】
洗浄液収容部85は、図5(A)に示すように、洗浄液831を収容する。ここで、洗浄液831としては、例えばインクから色材を除いたものを使用できる。即ち、洗浄液831としては、溶剤及び水を主成分とするものを使用できる。また、洗浄液831には、必要に応じて界面活性剤、防腐防かび剤などが添加される。
【0046】
ここで、複数のワイパー部材821は、例えばエラストマーにより、厚みが1mm~2mmの板状に形成されており、弾性を有する。エラストマーとしては、例えば、ウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、スチレンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムが挙げられる。ワイパー部材821は、板状の形状を有するが、平面部分がインク吐出面361に対して直交する姿勢で設けられている。更に、ワイパー部材821は、その先端縁部がインク吐出面361に対して押圧された状態で接触して予め定められたワイピング方向である方向D2に移動することによりインク吐出面361をワイピングするクリーニング動作を行う。
【0047】
複数のステイ822は、搬送方向D1に沿って延びる。各ステイ822は、その両方の端部がそれぞれサイドフレーム823に連結されている。すなわち、平行に設けられた一対のサイドフレーム823の間に、複数のステイ822が、各サイドフレーム823に直交する姿勢で取り付けられている。本実施形態では、複数のステイ822の数は、3本である。図4Bに破線で示すように、各ステイ822は、各色用に設けられた複数のラインヘッドが並ぶ方向に延びている。同じく図4Bに示すように、各ラインヘッドは3つの記録ヘッド36を有している。そして、ラインヘッドに含まれる3つの記録ヘッド36は、他のラインヘッドに含まれる対応する記録ヘッド36と方向D2において同一位置に、ステイ822の延びる方向に並べて配置されている。ステイ822は、方向D2において同一位置に並ぶ各ラインヘッド内の記録ヘッド36に差し掛かる位置にそれぞれ配置されている。各ステイ822には、このように並ぶ4つの記録ヘッド36に対向する位置にそれぞれワイパー部材821が固定されている(1つのステイ822に設けられるワイパー部材821は計4つ)。複数のワイパー部材821の数は、記録ヘッド36の数に対応して12個である。
【0048】
一対のサイドフレーム823は、駆動機構88(図3)によって方向D2に沿って往復移動する構成とされている。駆動機構88は、上記と同様にラック-ピニオン機構などからなる駆動機構である。例えば、ラックとして機能するサイドフレーム823に対し、駆動機構88のピニオンギア(図略)を介して、駆動機構88の駆動源(駆動モーター等)から供給される回転力を付与することで、サイドフレーム823が方向D2に沿って往復移動する構成とされている。これにより、各ステイ822及び複数のワイパー部材821を含めたワイパーユニット82の全体が方向D2に沿って往復移動する。これにより、各ワイパー部材821が、対向する位置に設けられている記録ヘッド36のインク吐出面361をワイピングする。サイドフレーム823、ステイ822、及び駆動機構88が特許請求の範囲における「駆動部」の一例となる。
【0049】
ここで、図6(A)を参照してワイパー部材821の姿勢を説明する。インク吐出面361及びワイパー部材821を下方から視認したときに、ワイパー部材821は、その先端縁部が、上記ワイピング方向に直交する方向に延びる姿勢で設けられている。ワイパー部材821は、当該姿勢を保った状態で、制御部100による制御の下、上記サイドフレーム823、ステイ822、及び駆動機構88により、インク吐出面361に先端縁部を接触させながら方向D2に移動してクリーニング動作を行う。
【0050】
また、ワイパー部材821の先端縁部の高さは、インク吐出面361に対して、予め定められた長さ(例えば、2mm)だけオーバーラップする設定とされている。これにより、ワイパー部材821は、インク吐出面361に押圧されて接触しているときに撓んだ状態となる。
【0051】
記録ヘッド36には、図5(A)及び図5(B)に示すように、インク吐出面361よりもワイピング方向D21の上流側に洗浄液供給部83が設けられている。洗浄液供給部83は、ワイパー部材821によるインク吐出面のワイピングに用いる洗浄液831を供給する洗浄液供給口834を有する洗浄液供給面865を備え、インク吐出面361よりもワイピング方向D21の上流側に設けられている。
【0052】
洗浄液供給部83は、洗浄液供給面865に連続してワイピング方向D21の上流側に位置すると共にワイピング方向D21の上流側に進むにつれて洗浄液供給面865に対して上方側に傾斜した傾斜面866を備えている。
【0053】
記録部3は、図4Bに示すように、12個の記録ヘッド36を備えるため、複数(12個)の洗浄液供給部83を有する。複数(12個)の洗浄液供給部83は、インク吐出面361を洗浄するための洗浄液831を供給する。洗浄液供給部83は、ワイパー部材821によるインク吐出面361の洗浄時に、収容空間832に収容された洗浄液831を収容空間832に連通する洗浄液ノズル833を介して供給する。
【0054】
後述する図8(A)に示すように、洗浄液831は、インク吐出面361の洗浄時に洗浄液ノズル833に設けられた洗浄液供給口834から半球状に突出した状態で供給される。一方、洗浄液831は、インク吐出面361の洗浄時以外では、洗浄液ノズル833の内部に凹状メニスカスを形成する。ここで、凹状メニスカスは、洗浄液ノズル833の内径、収容空間832が洗浄液ノズル833の内部に作用させる負圧などを調整することで形成する。
【0055】
また、記録ヘッド36は、図5(A)及び図5(B)に示すように、インク吐出面361よりもワイピング方向D21の下流側に接触部材84が設けられている。接触部材84は、ワイピング方向D21における記録ヘッド36(インク吐出面361)の端部に隣接して配置され、ワイパー部材821の先端縁部に接触する。
【0056】
そして、接触部材84は、図6(A)に示すように、インク吐出面361及びワイパー部材821を下方から視認したときに、上記ワイピング方向に直交する方向における寸法が、当該方向におけるインク吐出面361の幅と同一とされている。
【0057】
なお、接触部材84は、図6(B)に示すように、インク吐出面361及びワイパー部材821を下方から視認したときに、ワイパー部材821の先端縁部が延びる方向(上記ワイピング方向に直交する方向)における寸法が、当該方向において上記先端縁部の一部にのみ接触する寸法とされていてもよい。
【0058】
本実施形態では、接触部材84は、図6(A)に示した形態を例にして説明する。
【0059】
ここで、上記接触部材84を更に詳細に説明する。図7は、ワイピング方向における記録ヘッド36の端部であって接触部材が取り付けられている部分の拡大図である。
【0060】
図7に示すように、接触部材84は、ワイパー部材821との接触面840がインク吐出面361よりも上方に設けられている。すなわち、接触面840はインク吐出面361よりもワイパー部材821から遠い位置に配設されている。
【0061】
接触面840とインク吐出面361との高低差dは、例えば、ワイパー部材821の先端縁部のインク吐出面361に対するオーバーラップ量E1が2mmの場合、0mmよりも大きく1.8mm以下の値とされる。この場合において、更に、ワイパー部材821の先端縁部は、接触面840に対してもオーバーラップさせて設けられており、そのオーバーラップ量E2は、例えば、少なくとも0.2mmとされる。すなわち、インク吐出面361と接触部材84の接触面840との間の距離dは、0mmよりも大きく、インク吐出面361に対するワイパー部材821の先端縁部のオーバーラップ量から、接触面840に対するワイパー部材821の先端縁部のオーバーラップ量を差し引いた値以下とされる(0<d≦E1-E2)。
【0062】
また、接触部材84は更に次の構成を備えることが好ましい。接触部材84は、上記ワイピング方向における長さLが、上記クリーニング動作終了時の記録ヘッド36の端部におけるワイパー部材821の停止位置のワイピング方向におけるばらつきのレンジRと、インク吐出面361に対するワイパー部材821の上記ワイピング方向における撓み量DF(直立しているとしたワイパー部材821のワイピング方向における中心の位置から、インク吐出面361への押圧で曲がっている状態の先端縁部までの上記ワイピング方向における距離)との合算値以上の長さとされている(L≧R+DF)。例えば、上記ばらつきのレンジRが1mmであり、撓み量DFが1.5mmであるときは、接触部材48の上記ワイピング方向における長さは、2.5mm以上となる。
【0063】
接触部材84は、例えばポリアセタール樹脂(POM)により形成されている。記録ヘッド36のインク吐出面361は、例えばフッ素系の撥水膜処理が施されている。接触部材84の接触面840は、インク吐出面361よりも撥インク性が低く形成されている。
【0064】
図8(A)~(E)は、クリーニング動作を説明するための一部破断側面図である。
【0065】
図8(A)に示すように、制御部100は、パージインク45を記録ヘッド36に供給し、インクノズル37のインク吐出口371からパージインク45を排出させる。これにより、インクノズル37内の増粘インク、異物、気泡などがインクノズル37に供給されたパージインク45と共にインクトレイ81に向けて排出される。このようなパージ動作が行われることにより、インクノズル37の目詰まりが解消される。なお、インクトレイ81に排出されたインクなどは、インクトレイ81の底部に設けられた排出口からインクチューブ(図略)を通じて所定の廃棄インク貯留部に排出される。
【0066】
前記パージ動作の後、クリーニング部8は、クリーニング動作を行う。クリーニング動作は、インク吐出面361に付着したパージインク45をワイパー部材821によって拭き取るための動作である。クリーニング動作では、制御部100は、予め定められた量(例えば1.5mL)の洗浄液831を押し出し、洗浄液831が洗浄液供給部83の洗浄液供給口834から半球状に突出されて供給される(図8(A)参照)。なお、前記予め定められた量(例えば1.5mL)は、各ラインヘッド31~34の合計の押し出し量、つまり、4色合計分の押し出し量である。また、洗浄液831の供給は、パージインク45の排出と同時に、又はパージインク45の排出前或いは排出後に行ってもよい。
【0067】
制御部100は、洗浄液831の供給が終了した後、図8(B)~図8(D)に示すように、駆動機構88を駆動してワイパーユニット82をワイピング方向D21に沿って水平移動させる。具体的には、制御部100は、ワイパー部材821を移動開始位置(図8(B)参照)に位置させ、当該移動開始位置から、接触部材84に接触する位置である終了位置(図8(D)参照)までワイパー部材821を移動させる。このとき、図8(B)~図8(D)に示すように、ワイパー部材821は、傾斜面866、洗浄液供給口834、及びインク吐出面361を経て移動し、接触部材84に接触する。
【0068】
図8(D)に示すように、複数のワイパー部材821は、インク吐出面361に接触して移動するときに、インク吐出面361に付着したパージインク45などを拭き取った後、インク吐出面361の終端となる側端部に到達し、更に、接触部材84の位置に到達する。ワイパー部材821によって拭き取られた残存インクなどは、ワイパー部材821と共に移動するか、或いは、洗浄液831と共にワイパー部材821の表面を伝って下方に移動し、インクトレイ81に落下する。このため、ワイパー部材821が接触部材84から離間するので、インク吐出面361に液残りを生じさせない。
【0069】
ワイパー部材821がインク吐出面361に接触しつつ上記ワイピング方向に移動してインク吐出面361を清掃し終わったとき、ワイパー部材821はインク吐出面361の終端となる側端部に到達するが、このとき、当該側端部において、ワイパー部材821は、インク吐出面361に押圧されて接触している状態から解放される。そして、ワイパー部材821は、上記押圧により撓んで曲がっていた湾曲状態から、押圧を受けず真っ直ぐに伸びた状態に戻り始める。
【0070】
そして、ワイパー部材821の先端縁部は、インク吐出面361から離れると、接触部材84の接触面840に接触する。上述したように、接触部材84の接触面840は、高低差dを有してインク吐出面361よりも上方に設けられており、更に、ワイパー部材821の先端縁部はインク吐出面361に対してオーバーラップ量E1を有している。このため、ワイパー部材821がインク吐出面361から離れるときに発生させる弾性変形は、先端縁部が接触面840に当接するまでのものに抑制される。このため、ワイパー部材821がこのときの弾性変形により周囲に飛散させるインクの量が低減される。
【0071】
この後、ワイパー部材821は、接触部材84の接触面840に接触しながらワイピング方向D21に進み、当該ワイピング方向D21における接触面840の端部において、その先端縁部が接触面840から離れる。ワイパー部材821はその先端縁部が接触面840に対する押圧から解放され、押圧を受けず真っ直ぐに伸びた状態に戻ろうとするが、このときの弾性変形は、ワイパー部材821がインク吐出面361から離れて真っ直ぐに伸びた状態に直接戻る場合よりも低減されている。また、ワイパー部材821の先端縁部が接触面840から離れるときには、ワイパー部材821に付着していたインクの一部は接触面840との接触で接触面840に移って付着している。このため、ワイパー部材821がこのときの弾性変形により周囲に飛散するインクの量は、ワイパー部材821がインク吐出面361から離れて真っ直ぐに伸びた状態に直接戻る場合よりも一層低減されたものとなる。
【0072】
そして、接触部材84の接触面840は、インク吐出面361よりも撥インク性が低く形成されているため、ワイピング方向D21への移動でワイパー部材821から接触面840に移って接触面840に付着したインクの液滴高さ(液滴厚み)は、インク吐出面361に付着した場合のインクの液滴高さよりも低くなる(液滴厚みの場合は小さくなる)。更に、接触面840は、インク吐出面361に対して高低差dを有しているため、インクが付着した接触面840の下方を用紙Pがワイピング方向D21に通過したときに、接触面840から用紙Pにインクが移って付着するおそれを、低い撥インク性という上記条件がなくかつ高低差dを有していない接触面840の下方を用紙Pが通過する場合よりも低減することができる。なお、この実施形態では、用紙Pは、インク吐出面361に対して1mmの隙間を空けて搬送されるものとする。
【0073】
また、図9(A)(B)に示すように、接触部材84は、傾斜面841を有していてもよい。この傾斜面841は、インク吐出面361に連続してワイピング方向D21の下流側に位置し、ワイピング方向D21の下流側に進むにつれてインク吐出面361に対して上方側に傾斜している。すなわち、接触部材84は、ワイパー部材821の先端縁部との接触面が、上記ワイピング方向においてワイパー部材821がインク吐出面361から離れるに連れて、上記高低差dを大きくして上記先端縁部から離れる傾斜面841とされている。傾斜面841は接触面840としても機能する。
【0074】
このため、ワイパー部材821は、接触部材84の傾斜面841に接触しながらワイピング方向D21に進むに連れて、当該ワイパー部材821の撓みが徐々に小さくなっていき、最終的にワイパー部材821の先端縁部が傾斜面841から緩やかに離れる。このため、ワイパー部材821の先端縁部が傾斜面841に対する押圧から解放されるときに発生させる弾性変形が小さくなるため、このときに周囲に飛散するインクの量を更に低減できる。また、用紙Pの搬送時に、用紙Pに対してインク吐出面361及び接触面840から離れる方向に(下方に向けて)負圧を掛けて用紙Pを吸引する構成を採る場合は、当該吸引をしない場合よりも、インクの液滴高さ(液滴厚み)が大きくなるため、傾斜面841を設けることで、インクが付着した接触面840の下方を用紙Pが通過したときに、接触面840から用紙Pにインクが移って付着するおそれを更に低減することができる。
【0075】
続いて、図8(E)に示すように、制御部100は、昇降機構129を駆動して搬送ユニット125を所定距離だけ下降させて前記メンテナンス位置に戻す。
【0076】
その後、制御部100は、昇降機構129を駆動して搬送ユニット125を前記メンテナンス位置に降下させ(図2参照)、駆動機構88を駆動してクリーニング部8のインクトレイ81を前記退避位置に復帰させる(図1参照)。また、制御部100は、昇降機構129を駆動して搬送ユニット125を前記記録位置(図1に示される位置)に復帰させる。
【0077】
このように、制御部100は、クリーニング動作の制御として、記録ヘッドのインク吐出口371からパージインク45を押し出すと共に、洗浄液供給口834から洗浄液831を押し出し、ワイパー部材821を、移動開始位置からインク吐出面361を経て接触部材84に接触する位置である終了位置までワイピング方向D21に移動させ、ワイパー部材821を終了位置から離間させる制御を行う。
【0078】
また、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、接触部材84の接触面840の撥インク性をインク吐出面361の撥インク性よりも低くしているが、(i)このように接触面840の撥インク性を低くした場合に、上記傾斜面841を設ける場合は、当該傾斜面841のインク吐出面361に対する角度を45度未満とし、(ii)接触面840の撥インク性をインク吐出面361の撥インク性と同等とした場合には、当該角度を45度以上としてもよい。これにより、インクが付着した接触面840の下方を用紙Pが通過したときに、接触面840から用紙Pにインクが移って付着するおそれをより的確に低減することができる。
【0079】
実施例1
ワイパー部材821の接触面840(傾斜なし)に対するオーバーラップ量を変更した各形態について、接触面840に付着したインクによる汚れの影響度を実験により測定した結果を、幅が異なる接触部材84毎に図10に示す。接触部材84の幅は、上記ワイピング方向に直交する方向における寸法が2mmの場合(接触部材84がワイパー部材821の先端縁部の一部にのみ接触する寸法)、当該方向における寸法が24mmの場合(接触部材84の幅がインク吐出面361の幅と同一)の2つである。
【0080】
接触面840に付着したインクによる汚れの影響度は、ワイピング方向においてワイパー部材821が接触部材84から離れる位置よりも先の位置の下方に白紙(10cm四方)を置き、ワイパー部材821によるクリーニング動作20回後に観察したものである。当該白紙にインクが付着したら×、付着がなければ○とした。
【0081】
実施例2
ワイパー部材821の傾斜面841に対するオーバーラップ量を変更した各形態について、接触面840に付着したインクによる汚れの影響度を実験により測定した結果を、幅が異なる接触部材84毎に図11に示す。接触部材84の幅は、上記ワイピング方向に直交する方向における寸法が2mmの場合(接触部材84がワイパー部材821の先端縁部の一部にのみ接触する寸法)、当該方向における寸法が24mmの場合(接触部材84の幅がインク吐出面361の幅と同一)の2つである。他の条件は実験1と同様である。
【0082】
実施例3
実施例1,2において、接触部材84の幅を異ならせた各形態の実験結果を示しているが、用紙搬送がファンにより負圧を掛けた吸引方式の場合は、接触面840に付着したインクによる汚れの影響度は実施例1,2とは異なる。図12には、用紙搬送がファンにより負圧を掛けた吸引方式である場合の実験結果を示す。接触部材84は、接触面840(傾斜なし)及び傾斜面841のそれぞれについて実験した。
【0083】
用紙搬送に用いる搬送ベルト面とインク吐出面361との距離を1.0mmとし、負圧吸引は2m/secの風速とした。当該負圧吸引を行った状態で、負圧吸引開始時から5分間経過後、搬送ベルト面にインクが付着したら×、付着がなければ○とした。
【0084】
また、上記実施形態では、図1乃至図9を用いて上記実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0085】
1 インクジェット記録装置
10 制御ユニット
100 制御部
3 記録部
31,32,33,34 ラインヘッド
36 記録ヘッド
361 インク吐出面
8 クリーニング部
82 ワイパーユニット
821 ワイパー部材
84 接触部材
840 接触面
841 傾斜面
88 駆動機構
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12