IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-触媒粒子の製造方法 図1
  • 特許-触媒粒子の製造方法 図2
  • 特許-触媒粒子の製造方法 図3
  • 特許-触媒粒子の製造方法 図4
  • 特許-触媒粒子の製造方法 図5
  • 特許-触媒粒子の製造方法 図6
  • 特許-触媒粒子の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】触媒粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/06 20060101AFI20231219BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20231219BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20231219BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20231219BHJP
   D06M 23/08 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B01J31/06 Z
B01J35/08 B
B01J37/02 101A
B01J37/02 101Z
B01J37/02 301C
B01J37/04 102
D06M23/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019106121
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020199428
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】林 佑美
(72)【発明者】
【氏名】薮原 靖史
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038949(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095574(WO,A1)
【文献】特開2014-240538(JP,A)
【文献】特表平09-504991(JP,A)
【文献】特開平06-170245(JP,A)
【文献】特開2018-024471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
D06M 23/08
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース原料を溶媒中で解繊してセルロースナノファイバーの分散液を得る工程と、
前記セルロースナノファイバーの分散液にコア粒子前駆体を含む液滴を分散させ、前記液滴の表面を前記セルロースナノファイバーで被覆する工程と、
前記液滴の内部の前記コア粒子前駆体を固体化して、コア粒子の表面に前記セルロースナノファイバーが被覆されたセルロースナノファイバー被覆粒子の分散液を得る工程と、
前記セルロースナノファイバー被覆粒子の分散液中で前記セルロースナノファイバー被覆粒子の表面のセルロースナノファイバーに、触媒として機能する機能性材料を担持させる工程と、
を有し、
前記コア粒子前駆体として、重合性モノマー、溶解ポリマー、および溶融ポリマーの少なくともいずれかを用いる触媒粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒粒子、触媒粒子の製造方法、乾燥粉体、繊維シート、および多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木材中のセルロース繊維を、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化し、新規な機能性材料として利用しようとする試みが活発に行われている。
例えば、特許文献1には、木材セルロースに対しブレンダーやグラインダーによる機械処理を繰り返すことで、微細化セルロース(以下、セルロースナノファイバー、CNFとも称する)が得られることが開示されている。この方法で得られるCNFは、短軸径が10~50nm、長軸径が1μmから10mmに及ぶことが報告されている。このCNFは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さを誇り、250m2/g以上の膨大な比表面積を有することから、樹脂強化用フィラーや吸着剤としての利用が期待されている。
【0003】
また、木材中のセルロース繊維を微細化しやすいように予め化学処理したのち、家庭用ミキサー程度の低エネルギー機械処理により微細化してCNFを製造する試みが活発に行われている。上記化学処理の方法は特に限定されないが、セルロース繊維にアニオン性官能基を導入して微細化しやすくする方法が好ましい。セルロース繊維にアニオン性官能基が導入されることによってセルロースミクロフィブリル構造間に浸透圧効果で溶媒が浸入しやすくなり、セルロース原料の微細化に要するエネルギーを大幅に減少することができる。
【0004】
上記アニオン性官能基の導入方法としては特に限定されないが、例えば非特許文献1にはリン酸エステル化処理を用いて、セルロースの微細繊維表面を選択的にリン酸エステル化処理する方法が開示されている。
また、特許文献2には、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることにより、カルボキシメチル化を行う方法が開示されている。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入してもよい。
【0005】
また、比較的安定なN-オキシル化合物である2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル(TEMPO)を触媒として用い、セルロースの微細繊維表面を選択的に酸化する方法も報告されている(例えば、特許文献3を参照)。TEMPOを触媒として用いる酸化反応(TEMPO酸化反応)は、水系、常温、常圧で進行する環境調和型の化学改質が可能であり、木材中のセルロースに適用した場合、結晶内部には反応が進行せず、結晶表面のセルロース分子鎖が持つアルコール性1級炭素のみを選択的にカルボキシ基へと変換することができる。
【0006】
TEMPO酸化によって選択的に結晶表面に導入されたカルボキシ基同士の電離に伴う浸透圧効果により、溶媒中で一本一本のセルロースミクロフィブリル単位に分散させた、セルロースシングルナノファイバー(以下CSNF、TEMPO酸化セルロースナノファイバー、TEMPO酸化CNFとも称する)を得ることが可能となる。CSNFは表面のカルボキシ基に由来した高い分散安定性を示す。木材からTEMPO酸化反応によって得られる木材由来のCSNFは、短軸径が3nm前後、長軸径が数十nm~数μmに及ぶ高アスペクト比を有する構造体であり、その水分散液および成形体は高い透明性を有することが報告されている。
【0007】
また、特許文献4には、CSNF分散液を塗布乾燥して得られる積層膜が、ガスバリア性を有することが報告されている。
更に、CNFまたはCSNFに更なる機能性を付与する検討がなされている。例えば、CSNF表面のカルボキシ基を利用した更なる機能性付与も可能である。特許文献5には、CSNF表面のカルボキシ基に金属イオンを吸着させた状態で金属を還元析出させることにより、金属ナノ粒子がCSNFに担持された複合体(金属ナノ粒子担持CSNF)が開示されている。この特許文献5には、金属ナノ粒子担持CSNFを触媒として用いる例が開示されており、金属ナノ粒子を高比表面積な状態で分散安定化させることが可能となることにより触媒活性が向上することが報告されている。
【0008】
このように、カーボンニュートラル材料であるCNFまたはCSNFをはじめとする、セルロースナノファイバーに新たな機能性を付与する高機能部材開発に関して、様々な検討がなされている。
ここで、セルロースナノファイバーの実用化に向けては、得られるセルロースナノファイバー分散液の固形分濃度が0.1~5%程度と低くなってしまうことが課題となっている。例えばセルロースナノファイバー分散体を輸送しようとした場合、大量の溶媒を輸送するに等しいため、輸送費の高騰を招き、事業性が著しく損なわれるという問題がある。
【0009】
しかしながら、単純に熱乾燥などでセルロースナノファイバー分散液の溶媒を除去してしまうと、セルロースナノファイバー同士が凝集・角質化し、あるいは膜化してしまい、セルロースナノファイバーの高比表面積である特性を有効に活用することが困難であり、触媒活性等の安定な機能発現が困難になってしまう。さらに、セルロースナノファイバーの固形分濃度が低いため、乾燥による溶媒除去工程自体に多大なエネルギーがかかってしまうことも事業性を損なう一因となる。
このように、セルロースナノファイバーを分散液の状態で取り扱うこと自体が事業性を損なう原因となる。よって、セルロースナノファイバーの高比表面積である特性を有効に活用できる新たな取り扱い様態を有し、洗浄や溶媒からの分離が容易な触媒粒子が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2010-216021号公報
【文献】国際公開第2014/088072号パンフレット
【文献】特開2008-001728号公報
【文献】国際公開第2013/042654号パンフレット
【文献】国際公開第2010/095574号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【文献】Noguchi Y, Homma I, Matsubara Y. “Complete nanofibrillation of cellulose prepared by phosphorylation.” Cellulose. 2017;24:1295.10.1007/s10570-017-1191-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、高い触媒活性を有すると共に、安定的に繰り返し使用することができ、ろ過や遠心分離による洗浄や分離が容易な触媒粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様、第二態様、第三態様は以下の構成を有する。
〔第一態様〕
ポリマーを含有する材料で形成されたコア粒子と、前記コア粒子の表面に結合されて不可分の状態にあるセルロースナノファイバーと、前記セルロースナノファイバーに担持されている、触媒として機能する機能性材料と、を有する触媒粒子。
【0014】
〔第二態様〕
セルロース原料を溶媒中で解繊してセルロースナノファイバーの分散液を得る工程と、前記セルロースナノファイバーの分散液中で前記セルロースナノファイバーに、触媒として機能する機能性材料を担持させて、機能性材料担持セルロースナノファイバーの分散液を得る工程と、前記機能性材料担持セルロースナノファイバーの分散液にコア粒子前駆体を含む液滴を分散させ、前記液滴の表面を前記機能性材料担持セルロースナノファイバーで被覆する工程と、前記機能性材料担持セルロースナノファイバーで被覆された前記液滴の内部の前記コア粒子前駆体を固体化する工程と、を有する触媒粒子の製造方法。
【0015】
〔第三態様〕
セルロース原料を溶媒中で解繊してセルロースナノファイバーの分散液を得る工程と、前記セルロースナノファイバーの分散液にコア粒子前駆体を含む液滴を分散させ、前記液滴の表面を前記セルロースナノファイバーで被覆する工程と、前記液滴内部の前記コア粒子前駆体を固体化して、コア粒子の表面に前記セルロースナノファイバーが被覆されたセルロースナノファイバー被覆粒子の分散液を得る工程と、前記セルロースナノファイバー被覆粒子の分散液中で前記セルロースナノファイバー被覆粒子の表面のセルロースナノファイバーに、触媒として機能する機能性材料を担持させる工程と、を有する触媒粒子の製造方法。
第一態様の触媒粒子は、乾燥粉体、繊維シート、および多孔体に含有させることができる。
【発明の効果】
【0016】
第一態様の触媒粒子によれば、高比表面積のセルロースナノファイバーに触媒として機能する機能性材料が担持されているために、高い触媒活性を有すると共に、機能性材料がコア粒子の表面に不可分に結合されているために安定的に繰り返し使用可能であり、ろ過や遠心分離による洗浄や分離が容易になる。
また、第一態様の触媒粒子が磁性材料を内包することにより、磁石により回収可能な触媒粒子を提供することができる。
さらに、セルロースナノファイバーは生分解性ポリマーであるため、コア粒子に含まれるポリマーとして生分解性ポリマーを使用することにより、第一態様の触媒粒子は、環境への負荷が低減された触媒粒子となる。
本発明の第二態様および第三態様の製造方法によれば、本発明の第一態様の触媒粒子を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態の触媒粒子を示す概略図である。
図2】実施形態の触媒粒子の製造方法(製造方法I)を説明する図である。
図3】実施形態の触媒粒子の製造方法(製造方法II)を説明する図である。
図4】実施例1で得られたセルロースナノファイバーの水分散液について分光透過スペクトルを測定した結果を示すグラフである。
図5】実施例1で得られたセルロースナノファイバーの水分散液に対し、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行った結果を示すグラフである。
図6】実施例1で得られた銀微粒子が担持された触媒粒子の顕微鏡写真(SEM画像)である。
図7】実施例9で得られた金微粒子が担持された触媒粒子の顕微鏡写真(SEM画像)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、本実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の触媒粒子1は、ポリマーを含有する材料で形成されたコア粒子2と、コア粒子2の表面に結合されて不可分の状態にあるセルロースナノファイバー3と、触媒として機能する機能性材料4と、からなる。機能性材料4はセルロースナノファイバー3に担持されている。
本実施形態では、セルロースナノファイバー3がコア粒子2の表面を覆う被覆層として形成されていることが好ましい
触媒粒子1の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、化学的調製法や物理化学的調製法を用いることができる。
【0020】
化学的調製法としては、重合性モノマーから重合過程で粒子形成を行う重合造粒法(乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法、放射線重合法等)が挙げられる。
物理化学的調製法としては、微小液滴化したポリマー溶液から粒子形成を行う分散造粒法(スプレードライ法、液中硬化法、溶媒蒸発法、相分離法、溶媒分散冷却法等)が挙げられる。
例えば、セルロースナノファイバー3を用いたO/W型ピッカリングエマルションを形成することで、液滴内部のコア粒子前駆体を固体化させて、コア粒子2の表面にセルロースナノファイバー3Aが被覆されたセルロースナノファイバー被覆粒子10(セルロースナノファイバー3A被覆粒子)を作製する。得られたセルロースナノファイバー被覆粒子10の表面のセルロースナノファイバー3Aに、触媒として機能する機能性材料4を担持させる。これにより、コア粒子2とセルロースナノファイバー3とが結合して不可分の状態にある触媒粒子1を得ることができる。セルロースナノファイバー3を用いることで、界面活性剤等の添加物を用いることなく、安定した液滴を形成することが可能であるため、分散性が高く、高い触媒特性を発揮する触媒粒子1を得ることができる。
【0021】
コア粒子前駆体は、固体化してコア粒子2を形成するものであればよく、例えば、重合性モノマー、溶融ポリマー、溶解ポリマーが挙げられる。
コア粒子前駆体を固体化する方法は特に限定されず、重合性モノマーを重合させる方法、溶融ポリマーを凝固させる方法、溶解ポリマーから溶媒を除去する方法などが挙げられる。
【0022】
本実施形態の触媒粒子1は、図2および図3に示す製造方法で製造することができる。
図2に示す製造方法は、上述の第二態様の製造方法(製造方法I)に相当し、第1工程と第i工程と第2工程と第3工程を有する。
第1工程は、図2(a)に示すように、セルロース原料を親水性溶媒7中で解繊して、未担持のセルロースナノファイバー3Aの分散液11Aを得る工程である。
第i工程は、図2(b)に示すように、セルロースナノファイバーの分散液11A中で、セルロースナノファイバー3Aに、触媒として機能する機能性材料4を担持させて、機能性材料担持セルロースナノファイバー3Bの分散液11Bを得る工程である。
【0023】
第2工程は、図2(c)に示すように、機能性材料担持セルロースナノファイバー3Bの分散液11Bにコア粒子前駆体を含む液滴6を分散させ、液滴6の表面を機能性材料担持セルロースナノファイバー3Bで被覆する工程である。
第3工程は、図2(d)に示すように、液滴6の内部のコア粒子前駆体を固体化する工程である。この工程により、触媒粒子(コア粒子2の表面に機能性材料担持セルロースナノファイバー3Bが被覆された、機能性材料担持セルロースナノファイバー被覆粒子)1が得られる。
そして、図2(d)に示す状態の分散液をろ過することで、触媒粒子1を分離することができる。
つまり、製造方法Iでは、親水性溶媒7に分散した液滴6の界面に機能性材料担持セルロースナノファイバー3Bが吸着することによって、O/W型ピッカリングエマルションが安定化する。そして、この安定化状態を維持したまま、エマルションの液滴6内部のコア粒子前駆体を固体化することによって、触媒粒子1を得る。
【0024】
図3に示す製造方法は、上述の第三態様の製造方法(製造方法II)に相当し、第1工程と第2工程と第3工程と第ii工程を有する。
第1工程は、図3(a)に示すように、セルロース原料を親水性溶媒7中で解繊して、未担持のセルロースナノファイバー3Aの分散液11Aを得る工程である。第2工程は、図3(b)に示すように、未担持のセルロースナノファイバーの分散液11Aにコア粒子前駆体を含む液滴6を分散させ、液滴6の表面を未担持のセルロースナノファイバー3Aで被覆する工程である。
【0025】
第3工程は、図3(c)に示すように、液滴6内部のコア粒子前駆体を固体化して、コア粒子2の表面に未担持のセルロースナノファイバー3Aが被覆されたセルロースナノファイバー被覆粒子10の分散液12を得る工程である。
第ii工程は、図3(d)に示すように、セルロースナノファイバー被覆粒子10の分散液12中でセルロースナノファイバー被覆粒子10の表面のセルロースナノファイバー3Aに、触媒として機能する機能性材料4を担持させる工程である。この工程により、触媒粒子(コア粒子2の表面に機能性材料担持セルロースナノファイバー3Bが被覆された、機能性材料担持セルロースナノファイバー3B被覆粒子)1が得られる。
そして、図3(d)に示す状態の分散液をろ過することで、触媒粒子1を分離することができる。
【0026】
つまり、製造方法IIでは、親水性溶媒7に分散したコア粒子前駆体を含む液滴6の界面にセルロースナノファイバー3Aが吸着することによって、O/W型ピッカリングエマルションが安定化する。そして、この安定化状態を維持したまま、エマルション内部のコア粒子前駆体を固体化して、コア粒子2の表面がセルロースナノファイバー3Aで被覆されたセルロースナノファイバー被覆粒子10を得る。その後、セルロースナノファイバー被覆粒子10の表面のセルロースナノファイバー3Aに機能性材料4を担持させることにより、触媒粒子1を得る。
【0027】
ここで言う「不可分」とは、触媒粒子1を含む分散液を遠心分離処理して上澄みを除去し、さらに溶媒を加えて再分散することで触媒粒子1を精製・洗浄する操作、あるいはメンブレンフィルターを用いたろ過洗浄によって繰り返し溶媒による洗浄する操作を繰り返した後であっても、コア粒子2とセルロースナノファイバー3とが分離せず、セルロースナノファイバー3によるコア粒子2の被覆状態が保たれることを意味する。
【0028】
被覆状態の確認は走査型電子顕微鏡による触媒粒子1の表面観察により確認することができる。触媒粒子1においてセルロースナノファイバー3(3A,3B)とコア粒子2の結合メカニズムについては定かではないが、触媒粒子1がセルロースナノファイバー3によって安定化されたO/W型エマルションを鋳型として作製されるため、エマルションの液滴6内部のコア粒子前駆体にセルロースナノファイバー3が接触した状態で、コア粒子前駆体を固体化してコア粒子2とするために、物理的にセルロースナノファイバー3がコア粒子2表面に固定化されて、最終的にコア粒子2とセルロースナノファイバー3とが不可分な状態に至ると推察される。
【0029】
ここで、O/W型エマルションは、水中油滴型(Oil-in-Water)とも言われ、水を連続相とし、その中に油が油滴(油粒子)として分散しているものである。
特に限定されないが、セルロースナノファイバー3によって安定化されたO/W型エマルションを鋳型として触媒粒子1を作製すると、O/W型エマルションが安定化されるため、O/W型エマルションの形状に由来して真球状の触媒粒子1を得ることができる。詳細には、真球状のコア粒子2の表面にセルロースナノファイバー3からなる被覆層30が比較的均一な厚みで形成された様態となることが好ましい。
【0030】
触媒粒子1の粒径は光学顕微鏡観察により確認できる。100箇所ランダムに測定し、粒子の直径の平均値を取ることで平均粒径を算出できる。平均粒径は特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましい。
分散安定性の観点から、セルロースナノファイバー3は、コア粒子2の表面に被覆層30を形成することが好ましい。被覆層30はコア粒子2の表面の全面を覆うことが好ましいが、必ずしも全面を覆わなくてもよい。
【0031】
セルロースナノファイバー3で構成される被覆層の厚みは特に限定されないが、3nm以上1000nm以下であることが好ましい。
被覆層30の平均厚みは、触媒粒子1を包埋樹脂で固定したものをミクロトームで切削して走査型電子顕微鏡観察を行い、画像中の触媒粒子1の断面像における被覆層の厚みを画像上で100箇所ランダムに測定し、平均値を取ることで算出できる。
また、触媒粒子1は、比較的揃った厚みの被覆層30で均一に被覆されていることが好ましい。被覆層30の厚みが均一であると分散安定性が高い。具体的には、上述した被覆層30の厚みの値の変動係数は0.5以下となることが好ましく、0.4以下となることがより好ましい。
【0032】
本発明において、セルロースナノファイバー3は、セルロースおよび/またはセルロース誘導体からなる数平均短軸径が1nm以上1000nm以下のファイバーである。
なお、使用するセルロースナノファイバー3としては、結晶表面にイオン性官能基を有するものが好ましい。イオン性官能基を有することで、触媒粒子1の凝集を抑制することができ、高い触媒特性を発揮できる。更に、イオン性官能基を利用して機能性材料4を担持することにより、機能性材料4の脱離を抑制或いは制御することができる。
【0033】
イオン性官能基の種類は特に限定されないが、アニオン性官能基であることが好ましい。アニオン性官能基を有することで、例えば、金属微粒子を担持させる場合に、金属イオンをセルロースナノファイバー3のアニオン性官能基に配位させて還元析出することで、効率よく金属微粒子を担持させることができ、セルロースナノファイバー3が分散安定剤と機能するため、生成する金属微粒子の形状や粒子径を制御することができる。更に、触媒粒子1においてセルロースナノファイバー3からの金属微粒子の脱離を抑制できる。
【0034】
アニオン性官能基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基が挙げられる。中でも、カルボキシ基やリン酸基が好ましく、セルロース結晶表面への選択的な導入のしやすさから、カルボキシ基が好ましい。
イオン性官能基の含有量は、1gのセルロースナノファイバー3当たり0.1mmol以上5.0mmol以下であることが好ましい。0.1mmol未満であると、触媒粒子1の分散安定性が悪くなることがあり、5.0mmolを超えると機能性材料4を安定して担持することが難しくなることがある。
【0035】
さらに、セルロースナノファイバー3は、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であることが好ましい。具体的には、セルロースナノファイバー3は繊維状であって、数平均短軸径が1nm以上1000nm以下、数平均長軸径が50nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の5倍以上であることが好ましい。また、セルロースナノファイバー3の結晶構造は、セルロースI型であることが好ましく、結晶化度は50%以上であることが好ましい。
【0036】
本実施形態の触媒粒子1は、機能性材料4が担持されたセルロースナノファイバー3がコア粒子2表面に被覆されるため、比表面積が高くなり、高い触媒特性を発揮する。機能性材料4がセルロースナノファイバー3に「担持」されるとは、物理的或いは化学的に、可逆的或いは不可逆的に、結合或いは吸着することである。機能性材料4の担持方法は公知の方法が採用できる。
本実施形態の触媒粒子1では、機能性材料4とセルロースナノファイバー3は「不可分」の状態にあることが好ましい。セルロースナノファイバー3と機能性材料4とが「不可分」とは、触媒粒子1を含む分散液を遠心分離処理して上澄みを除去し、さらに溶媒を加えて再分散することで触媒粒子1を精製・洗浄する操作、あるいはメンブレンフィルターを用いたろ過洗浄によって繰り返し溶媒による洗浄する操作を繰り返した後であっても、セルロースナノファイバー3と機能性材料4が分離しないことである。
【0037】
機能性材料4としては、触媒特性を有するものであれば公知のものを用いることができる。機能性材料4の具体例としては、金属触媒(金属微粒子等)、金属酸化物触媒(遷移金属酸化物、典型金属酸化物等)、錯体触媒(ロジウム錯体、ルテニウム錯体、パラジウム錯体等)、硫化物触媒(モリブデン硫化物、ニッケル硫化物、ロジウム硫化物等)、酵素触媒(タンパク質等)、有機分子触媒(アミノ酸等)、塩化物触媒、有機塩触媒等が挙げられる。中でも、金属触媒、金属酸化物触媒、酵素触媒、有機分子触媒を用いることが好ましい。
【0038】
金属触媒としては、公知の金属微粒子を用いることができる。金属微粒子を構成する元素は特に限定されないが、少なくともルビジウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)のいずれかを含有することが好ましい。金属微粒子を構成する元素は単一でもよく、複数でもよい。
中でも、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)より選ばれた1種類以上の金属または金属化合物を含むことが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。複数の金属種を用いる場合、例えば析出した銀(Ag)微粒子の周りを銀より貴な金属あるいはシリカ等の金属酸化物などで被覆して、銀(Ag)微粒子の安定性を向上させてもよい。
【0039】
金属微粒子の平均粒子径は特に限定されないが、500nm以下であることが好ましい。平均粒子径が500nmを超えるとセルロースナノファイバー3に担持するのが難しくなる。より好ましくは0.1nm以上50nm以下である。金属微粒子の平均粒子径により触媒活性が変化することがあるため、金属微粒子の形状を制御することが重要である。金属微粒子の形状は、特に限定されない。例えば、球状、平板状、ロッド状が挙げられる。
【0040】
金属酸化物触媒としては、公知の遷移金属酸化物、典型金属酸化物を用いることができる。遷移金属酸化物としては、酸化クロム(Cr23)、五酸化バナジウム(V25)、酸化チタン(TiO2)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)、四酸化三コバルト(Co34)、酸化銅(CuO)、酸化マンガン(MnO2)等が挙げられる。典型元素酸化物としては、ゼオライト、ヘテロポリ酸が挙げられる。金属酸化物は公知の方法で製造することができ、例えば鉄酸化細菌やマンガン酸化細菌等の微生物に生産させることができる。
【0041】
酵素触媒は、生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子であり、多くの酵素触媒は生体内で作り出されるタンパク質を基にして構成されている。例えば、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、異性化酵素、リガーゼが挙げられる。
有機分子触媒は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)等からなる低分子化合物の触媒である。有機分子触媒としては、例えば、エナミン(プロリン及びその誘導体)、イミニウム塩(マクラミン触媒、エナミンおよびイミニウム塩触媒、ジアリールプロリノールシリルエーテル触媒)、相間移動触媒、ブロンステッド酸触媒(キラルリン酸触媒、チオ尿素触媒、TADOL誘導体)、カルベン(トリアゾリウム触媒、環状ケトン誘導体等が上げられる。
【0042】
特に、アミノ酸のプロリンであることが好ましい。プロリンは、α位に水素原子を有するカルボニル化合物が、アルデヒドまたはケトンと反応してβ-ヒドロキシカルボニル化合物が生成するアルドール反応を促進する触媒である。
セルロースナノファイバー3Aへの機能性材料4の担持方法は、特に限定されないが、図2のように、セルロースナノファイバー3Aに機能性材料4を担持して機能性材料担持セルロースナノファイバー3Bを作製した後、前記機能性材料担持セルロースナノファイバー3Bを用いてコア粒子前駆体を含む液滴6を有するO/W型ピッカリングエマルションを調製し、エマルションの液滴6内部のコア粒子前駆体を固体化して機能性材料担持セルロースナノファイバー3B被覆粒子(触媒粒子1)を作製することができる。
【0043】
図3のように、セルロースナノファイバー3Aを用いて、コア粒子前駆体を含む液滴6を有するO/W型ピッカリングエマルションを作製し、エマルションの液滴6内部のコア粒子前駆体を固体化してセルロースナノファイバー3A被覆粒子を作製後、セルロースナノファイバー3A被覆粒子の表面のセルロースナノファイバー3Aに機能性材料4を担持して機能性材料担持セルロースナノファイバー3B被覆粒子(触媒粒子1)を作製することができる。
【0044】
セルロースナノファイバー3Aへの機能性材料4の担持方法は特に限定されない。例えば、市販の或いは予め作製した機能性材料4をセルロースナノファイバー3Aまたはセルロースナノファイバー3A被覆粒子の表面に付着させてもよい。
好適には、セルロースナノファイバー3A或いはセルロースナノファイバー3A被覆粒子の存在下で機能性材料4を作製する方法である。セルロースナノファイバー3A或いはセルロースナノファイバー3A被覆粒子存在下で機能性材料4を作製することにより、セルロースナノファイバー3Aに機能性材料4が安定的に担持される。また、セルロースナノファイバー3Aが分散剤として機能するため、微小な機能性材料4を生成することができ、より高い触媒活性を発揮することが可能である。
【0045】
コア粒子2は、少なくとも一種類以上のポリマーを含む。ポリマーは、公知のポリマーを用いることができ、重合性モノマーを公知の方法で重合させたポリマーでもよい。
ポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、アミノ系ポリマー、シリコーン系ポリマー、フッ素系ポリマー、ウレタン・イソシアネート系ポリマー等が挙げられる。
特に限定されないが、ポリマーは生分解性ポリマーであることが好ましい。生分解性とは、土壌や海水中などの地球環境において分解して消滅するポリマー、または/および生体内で分解して消滅するポリマーのことである。一般的に、土壌や海水中では微生物がもつ酵素によりポリマーが分解されるのに対し、生体内では酵素を必要とせず物理化学的な加水分解により分解される。
【0046】
ポリマーの分解は、ポリマーが低分子化或いは水溶性化して形態を消失することである。ポリマーの分解は、特に限定されないが、主鎖、側鎖、架橋点の加水分解や、主鎖の酸化分解により起こる。
生分解性ポリマーは、天然由来の天然高分子、或いは合成高分子がある。
天然高分子としては、例えば、植物が生産する多糖(セルロース、デンプン、アルギン酸等)、動物が生産する多糖(キチン、キトサン、ヒアルロン酸等)、タンパク質(コラーゲン、ゼラチン、アルブミン等)、微生物が生産するポリエステル(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート))、多糖(ヒアルロン酸等)等が挙げられる。
【0047】
合成高分子としては、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリオール、ポリカーボネート等が挙げられる。
脂肪酸ポリエステルとしては、例えば、グリコール・ジカルボン酸重縮合系(ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等)、ポリラクチド類(ポリグリコール酸、ポリ乳酸等)、ポリラクトン類(β-カプロラクトン、ε-カプロラクトン等)、その他(ポリブチレンテレフタレート・アジペート等)が挙げられる。
【0048】
ポリオールとしては、例えば、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
ポリカーボネートとしては、例えば、ポリエステルカーボネート等が挙げられる。
その他、ポリ酸無水物、ポリシアノアクリレート、ポリオルソエステル、ポリフォスファゼン等も生分解性の合成高分子である。
コア粒子2はポリマー以外に機能性成分等他の成分を含んでも良い。例えば、防カビ剤、香料、肥料(生物肥料、化学肥料、有機肥料等)、pH調整剤、農薬(殺虫剤、殺菌剤、除草剤等)、植物活力剤、植物延命剤、害虫及び動物の忌避剤、土壌浸透剤、栄養成分(ミネラル等)、植物ホルモン、無機質粒子(酸化チタン、シリカ、クレー等)、磁性材料、抗菌性物質等が挙げられる。
【0049】
上記機能性成分は固体、気体、液体のいずれの形態であってもよい。機能性成分の触媒粒子1中の含有率は、特に限定されず、触媒粒子1が安定して形態を保つことができる範囲であることが好ましい。機能性成分の含有率は、触媒粒子1を100質量部とすると、機能性成分は0.001質量部以上80質量部以下であることが好ましい。
中でも、コア粒子2に磁性材料を内包することが好ましい。磁性材料を内包することにより、触媒粒子1を様々な環境下において、分散、分離、回収、攪拌、混合、流速制御、などの操作を可能となる。特に限定されないが、磁性材料としては、自発磁化を有する強磁性材料を用いることが好ましい。強磁性材料とは、フェロ磁性、フェリ磁性など自発磁化を有する磁性材料である。強磁性材料としては、例えば、金属、合金、金属間化合物、酸化物、金属化合物が挙げられる。また、本実施形態の触媒粒子1の使用方法によっては残留磁化の少ない磁性材料が求められ、一般的に軟磁性を示す磁性材料が好適である。強磁性材料をナノオーダーのサイズにした超常磁性材料も好適である。
【0050】
上記磁性材料に用いる金属としては遷移金属のFe、Ni、Coが代表的であるが、これらの金属との合金として、Fe-V、Fe-Cr、Fe-Ni、Fe-Co、Ni-Co、Ni-Cu、Ni-Zn、Ni-V、Ni-Cr、Ni-Mn、Co-Cr、Co-Mn、50Ni50Co-V、50Ni50Co-Cr系なども使用できる。これらのうち、飽和磁気モーメントの大きいFeや、Niを含む系が好ましく、Fe-Ni系が特に好ましい。他の金属材料としては、希土類のGdおよびその合金が挙げられる。
【0051】
上記金属間化合物としては、ZrFe2、HfFe2、FeBe2の他、ScFe2、YFe2、CeFe2、SnFe2、GdFe2、DyFe2、HoFe2、ErFe2、TmFe2、GdCo2などが挙げられる。また、YCo5、LaCo5、CeCo5、SmCo5、Sm2Co17、Gd2O17、さらに、Ni3Mn、FeCa、FeNi、Ni3Fe、CrPt3、MnPt3、FePd、FePd3、Fe3Pt、FePt、CoPt、CoPt3、Ni3Ptなどが挙げられる。
【0052】
上記酸化物としてはスピネル型、ガーネット型、ペロブスカイト型、マグネトプランバイト型などの結晶構造を有する磁性酸化物が使用できる。
スピネル型の例として、MnFe24、FeFe24、CoFe24、NiFe24、CuFe24、MgFe24、ZnFe24、Li0.5Fe0.5Fe24、FeMn24、FeCo24、NiCo24、γ-Fe23、などが挙げられる。γ-Fe23は、マグヘマイトと呼ばれる酸化鉄である。これは顔料として知られているα-Fe23(べんがら)とは異なり、比較的低密度(約3.6g/cm3)で飽和磁気モーメントの大きい材料として知られており、本発明に用いる磁性材料として特に好ましい。これらはいずれも軟磁性材料として知られているが、それらの中でも特にMn-ZnFe24、Ni-ZnFe24、すなわちマンガンジンクフェライト、ニッケルジンクフェライト等は残留磁化が少なく、磁性樹脂粒子の磁場による回収・分散操作特性が良好となり好ましい。
【0053】
ガーネット型酸化物としては、希土類鉄ガーネットが使用できる。Y3Fe512、Sm3Fe5O12、Zn3Fe512、Gd3Fe512、Tb3Fe512、Dy3Fe512、Ho3Fe512、Er3Fe512、Tm3Fe512、Yb3Fe512、Lu3Fe512においてフェリ磁性を示すことが知られている。このうち、Y、Sm、Yb、Luなどが、飽和磁化が大きい点で好ましい。中でも、Yは密度が低く(5.17g/cm3)特に好ましい。
【0054】
マグネトプランバイト型の酸化物としては、BaFe1219、SrFe1219、CaFe1219、PbFe1219、Ag0.5La0.5Fe1219、Ni0.5La0.5Fe1219、Mn2BaFe1627、Fe2BaFe1627、Ni2BaFe1627、FeZnBaFe1627、MnZnBaFe1627、Co2Ba3Fe2441、Ni2Ba3Fe2441、Cu2Ba3Fe2441、Mg2Ba3Fe2441、Co1.5Fe0.5Ba3Fe24O41、Mn2Ba2Fe1222、Co2Ba2Fe12O22、Ni2Ba2Fe1222、Mg2Ba2Fe1222、Zn2Ba2Fe1222、Fe0.5Zn1.5Ba2Fe1222などが挙げられる。
【0055】
ペロブスカイト型の酸化物としてはRFeO3(R=希土類イオン)が挙げられる。
金属化合物としては、ホウ化物(Co3B、CoB、Fe3B、MnB、FeBなど)、Al化合物(Fe3Al、Cu2MnAlなど)、炭化物(Fe3C、Fe2C、Mn3ZnC、Co2Mn2Cなど)、珪化物(Fe3Si、Fe5Si3、Co2MnSiなど)、窒化物(Mn4N、Fe4N、Fe8N、Fe3NiN、Fe3PtN、Fe20.75、Mn40.750.25、Mn40.50.5、Fe31-xxなど)の他、リン化物、ヒ素化合物、Sb化合物、Bi化合物、硫化物、Se化合物、Te化合物、ハロゲン化合物、希土類元素なども使用できる。
【0056】
一方、超常磁性体としては強磁性材料を数nmから数十nmサイズの粒子として得られるものであればいかなるものも使用できる。特に、マグネタイト等のナノ粒子が好ましい。
磁性材料の平均粒子径は0.001μm以上10μm以下が好ましい。平均粒子径が0.001μmよりも小さい場合、磁性材料を分散安定性が悪く、自己凝集しやすくなり、10μmより大きい場合、触媒粒子にした際にうまくコア粒子に内包されなくなってしまう。磁性材料の平均粒子径は走査型電子顕微鏡観察を行い、画像中の磁性材料の大きさを画像上で100箇所ランダムに測定し、平均値を取ることで算出できる。
【0057】
<触媒粒子の製造方法について>
上述したように、実施形態の触媒粒子1は、図2および図3に示す方法(製造方法Iおよび製造方法II)により製造することができる。
製造方法Iおよび製造方法IIにより得られた触媒粒子1は分散体として得られる。さらに溶媒を除去することにより乾燥固形物として得られる。溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば遠心分離法やろ過法によって余剰の水分を除去し、さらにオーブンで熱乾燥することで乾燥固形物として得ることができる。この際、得られる乾燥固形物は膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。
この理由としては定かではないが、通常、セルロースナノファイバー3分散体から溶媒を除去すると、セルロースナノファイバー3同士が強固に凝集、膜化することが知られている。
【0058】
一方、触媒粒子1を含む分散液の場合、セルロースナノファイバー3が表面に固定化された真球状の触媒粒子1であるため、溶媒を除去してもセルロースナノファイバー3同士が凝集することなく、触媒粒子1間の点と点で接するのみであるため、その乾燥固形物は肌理細やかな粉体として得られると考えられる。また、触媒粒子1同士の凝集がないため、乾燥粉体として得られた触媒粒子1を再び溶媒に再分散することも容易であり、再分散後も触媒粒子1の表面に結合されたセルロースナノファイバー3に由来した分散安定性と高い触媒活性を示す。
【0059】
なお、触媒粒子1の乾燥粉体は溶媒をほとんど含まず、さらに溶媒に再分散可能であることを特長とする乾燥固形物であり、具体的には固形分率を80%以上とすることができ、さらに90%以上とすることができ、さらに95%以上とすることができる。溶媒をほぼ除去することができるため、輸送費の削減、腐敗防止、添加率向上、樹脂との混練効率向上、といった観点から好ましい効果を得る。
なお、乾燥処理により固形分率を80%以上にした場合、セルロースナノファイバー3は吸湿しやすいため、空気中の水分を吸着して固形分率が経時的に低下することがある。
【0060】
以下に、各工程について、詳細に説明する。
上述のように、製造方法Iは第1工程と第i工程と第2工程と第3工程を有し、製造方法IIは第1工程と第2工程と第3工程と第ii工程を有する。
(第1工程)
第1工程はセルロース原料を溶媒中で解繊してセルロースナノファイバー3Aの分散液を得る工程である。まず、各種セルロース原料を溶媒中に分散し、懸濁液とする。懸濁液中のセルロース原料の濃度としては0.1%以上10%未満が好ましい。0.1%未満であると、溶媒過多となり生産性を損なうため好ましくない。10%以上になると、セルロース原料の解繊に伴い懸濁液が急激に増粘し、均一な解繊処理が困難となるため好ましくない。
【0061】
懸濁液作製に用いる溶媒としては、親水性溶媒7を用いることが好ましい。
親水性溶媒7については特に制限はないが、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、或いはこれらの混合物が好ましい。
好適には、水を50%以上含むことが好ましい。懸濁液中の水の割合が50%以下になると、後述するセルロース原料を溶媒中で解繊してセルロースナノファイバー分散液を得る工程において、セルロースナノファイバー3の分散が阻害される。また、水以外に含まれる溶媒としては前述の親水性溶媒が好ましい。
【0062】
必要に応じて、セルロースや生成するセルロースナノファイバー3の分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0063】
続いて、懸濁液に物理的解繊処理を施して、セルロース原料を微細化する。物理的解繊処理の方法としては特に限定されないが、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。このような物理的解繊処理を行うことで、上記親水性溶媒7を溶媒としたセルロース原料の懸濁液中のセルロースが微細化され、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化されたセルロースの分散液を得ることができる。また、このときの物理的解繊処理の時間や回数により、得られるセルロースナノファイバー3の数平均短軸径および数平均長軸径を調整することができる。
【0064】
上記のようにして、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化されたセルロースの分散体(セルロースナノファイバー分散液)が得られる。得られた分散体は、そのまま、または希釈、濃縮等を行って、後述するO/W型エマルションの安定化剤として用いることができる。
また、セルロースナノファイバー3の分散体は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。上記他の成分としては、特に限定されず、触媒粒子1の用途等に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤、磁性体、医薬品、農薬、香料、接着剤、酵素、顔料、染料、消臭剤、金属、金属酸化物、無機酸化物等が挙げられる。
【0065】
通常、セルロースナノファイバー3は、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であるため、本実施形態の製造方法に用いるセルロースナノファイバー3としては、以下に示す範囲にある繊維形状のものが好ましい。すなわち、セルロースナノファイバー3の形状としては、繊維状であることが好ましい。また、繊維状のセルロースナノファイバー3は、短軸径において数平均短軸径が1nm以上1000nm以下であればよく、好ましくは2nm以上500nm以下であればよい。ここで、数平均短軸径が1nm未満では高結晶性の剛直なセルロースナノファイバー3繊維構造をとることができず、エマルションの安定化と、エマルションを鋳型とした重合反応やポリマーの固体化等による触媒粒子1の形成が難しくなる。一方、1000nmを超えると、エマルションを安定化させるにはサイズが大きくなり過ぎるため、得られる触媒粒子1のサイズや形状を制御することが困難となる。また、数平均長軸径においては特に制限はないが、好ましくは数平均短軸径の5倍以上であればよい。数平均長軸径が数平均短軸径の5倍未満であると、触媒粒子1のサイズや形状を十分に制御することができないために好ましくない。
【0066】
なお、セルロースナノファイバー3の数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、セルロースナノファイバー3の数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
セルロースナノファイバー3の原料として用いることができるセルロースの種類や結晶構造も特に限定されない。具体的には、セルロースI型結晶からなる原料としては、例えば、木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いることができる。さらには、セルロースII型結晶からなるレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースも用いることができる。材料調達の容易さから、木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプ、など、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。
【0067】
さらにセルロースナノファイバー原料は化学改質されていることが好ましい。より具体的には、セルロースナノファイバー原料の結晶表面にイオン性官能基が導入されていることが好ましい。セルロース結晶表面にイオン性官能基が導入されていることによって浸透圧効果でセルロース結晶間に溶媒が浸入しやすくなり、セルロース原料の微細化が進行しやすくなるためである。さらに、イオン性官能基を介して機能性材料4を吸着させることにより、担持することができる。
【0068】
セルロースの結晶表面に導入されるイオン性官能基の種類は特に限定されない。例えば、アニオン性官能基を有することで、セルロースナノファイバー3とカチオン性の機能性材料4を担持することができる。
また、アニオン性官能基を有するセルロースナノファイバー3に金属イオンを配位させて還元析出することで、機能性材料4として金属微粒子を担持することができる。
アニオン性官能基の種類や導入方法は特に限定されないが、カルボキシ基やリン酸基が好ましい。セルロース結晶表面への選択的な導入のしやすさから、カルボキシ基が好ましい。
【0069】
セルロースの繊維表面にカルボキシ基を導入する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸またはモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行ってもよい。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入してもよい。さらには、水系の比較的温和な条件で、可能な限り構造を保ちながら、アルコール性一級炭素の酸化に対する選択性が高い、TEMPOをはじめとするN-オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた手法を用いてもよい。カルボキシ基導入部位の選択性および環境負荷低減のためにはN-オキシル化合物を用いた酸化がより好ましい。
【0070】
ここで、N-オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-エトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、等が挙げられる。そのなかでも、反応性が高いTEMPOが好ましい。N-オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01質量%以上5.0質量%以下である。
【0071】
N-オキシル化合物を用いた酸化方法としては、例えば木材系天然セルロースを水中に分散させ、N-オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N-オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N-オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、上記オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。この酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。
【0072】
共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。上記共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~200質量%程度である。
【0073】
また、N-オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。このような化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~50質量%程度である。
【0074】
酸化反応の反応温度は、4℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上70℃以下がより好ましい。4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう。80℃を超えると副反応が促進して試料が低分子化して高結晶性の剛直なセルロースナノファイバー3繊維構造が崩壊し、O/W型エマルションの安定化剤として用いることができない。
また、酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10分以上5時間以下である。
【0075】
酸化反応時の反応系のpHは特に限定されないが、9以上11以下が好ましい。pHが9以上であると反応を効率良く進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試料の分解が促進されてしまうおそれがある。また、酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9以上11以下に保つことが好ましい。反応系のpHを9以上11以下に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
【0076】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
N-オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは上記の範囲内に保つことが好ましい。 添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
【0077】
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N-オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては純水が好ましい。
得られたTEMPO酸化セルロースに対し解繊処理を行うと、3nmの均一な繊維幅を有するTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TEMPO酸化CNF、セルロースシングルナノファイバー、CSNFともいう)が得られる。CSNFを触媒粒子1のセルロースナノファイバー3の原料として用いると、その均一な構造に由来して、得られるO/W型エマルションの粒径も均一になりやすい。
【0078】
以上のように、本実施形態で用いられるCSNFは、セルロース原料を酸化する工程と、微細化して分散液化する工程と、によって得ることができる。また、CSNFに導入するカルボキシ基の含有量としては、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上2.0mmol/g以下がより好ましい。ここで、カルボキシ基量が0.1mmol/g未満であると、セルロースミクロフィブリル間に浸透圧効果による溶媒進入作用が働かないため、セルロースを微細化して均一に分散させることは難しい。また、5.0mmol/gを超えると化学処理に伴う副反応によりセルロースミクロフィブリルが低分子化するため、高結晶性の剛直なセルロースナノファイバー3繊維構造をとることができず、O/W型エマルションの安定化剤として用いることができない。
【0079】
(第i工程)
第i工程は、セルロースナノファイバー3A分散液中においてセルロースナノファイバー3Aに機能性材料4を担持させて機能性材料担持セルロースナノファイバー3Bの分散液を得る工程である。
セルロースナノファイバー3に機能性材料4を付与する方法については特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、セルロースナノファイバー3の分散液に機能性材料4を添加して混合し、付着させる方法が用いられる。また、セルロースナノファイバー3の分散液中で機能性材料4を合成して担持することができる。
【0080】
ここで、上述したように、セルロースナノファイバー3に対し、機能性材料4を担持する際、セルロースナノファイバー3の結晶表面に予めアニオン性官能基が導入されていることが好ましい。アニオン性官能基を有するセルロースナノファイバー3の分散液にカチオン性の機能性材料4を添加して混合することで、セルロースナノファイバー3に機能性材料4を安定的に担持することができる。また、分散液のpHを調整することにより、機能性材料4の担持或いは脱離を制御することができる。
【0081】
機能性材料4を担持する際のセルロースナノファイバー3Aの濃度は特に限定されないが、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。セルロースナノファイバー3Aの濃度が0.1%未満であると、機能性材料4を効率よく担持させることが難しい。セルロースナノファイバー3Bの濃度が20質量%を超えると、セルロースナノファイバー3Aの粘度が非常に高く、十分に攪拌できずに均一な反応が難しくなる。
【0082】
セルロースナノファイバー3Aの分散液の溶媒は特に限定されないが、親水性溶媒7であることが好ましい。
親水性溶媒7は、特に制限はないが、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。
特に、水を50質量%以上含むことが好ましい。懸濁液中の水の割合が50質量%未満になると、セルロースナノファイバー3の分散性が悪くなることがある。また、水以外に含まれる溶媒としては前述の親水性溶媒が好ましい。
【0083】
必要に応じて、セルロースや生成するセルロースナノファイバー3の分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0084】
アニオン性官能基を有するセルロースナノファイバー3Aに機能性材料4として金属微粒子を担持する方法としては、特に限定されないが、例えば以下の方法で製造することができる。
工程ia)少なくとも1種類のセルロースナノファイバー3Aを含有する分散液を調製する、セルロースナノファイバー分散液準備工程と、
工程ib)少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類のセルロースナノファイバー3とを含有する分散液を調製する、金属塩およびセルロースナノファイバー含有液準備工程と、
工程ic)上記金属塩およびセルロースナノファイバー含有液中の金属イオンを還元して金属微粒子を担持させる、金属微粒子担持セルロースナノファイバー分散液調製工程と、
を有する。
【0085】
(工程ia:セルロースナノファイバー分散液準備工程)
セルロースナノファイバー3Aへの金属微粒子の担持方法において、工程iaでは、少なくとも1種類のセルロースナノファイバー分散液を準備する。
まず、セルロースナノファイバー分散液を準備する。セルロースナノファイバー分散液の固形分濃度は、特に限定されないが、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上10質量%であることがより好ましい。
【0086】
セルロースナノファイバー分散液の固形分濃度が0.1質量%未満では、金属微粒子の粒子径の制御が難しい。一方、セルロースナノファイバー分散液の固形分濃度が20質量%を超えると、セルロースナノファイバー分散液の粘度が高くなり、工程ib(金属塩およびセルロースナノファイバー含有液準備工程)において、金属塩とセルロースナノファイバーとを均一に混ぜるのが難しくなり、工程ic(金属微粒子担持セルロースナノファイバー分散液調製工程)において、均一に還元反応を進行させることができなくなる。
【0087】
セルロースナノファイバー3を分散させる溶媒としては、セルロースナノファイバー3が充分に溶解または分散するものであれば、特に限定されない。環境への負荷の面からは、溶媒としては、水を用いることが好ましい。
金属微粒子およびセルロースナノファイバー3の分散性の観点からは、溶媒としては、水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。
【0088】
少なくとも1種類のセルロースナノファイバー分散液のpHは、特に限定されないが、pH2以上pH12以下であることが好ましい。
(工程ib:金属塩およびセルロースナノファイバー含有液準備工程)
セルロースナノファイバー3への金属微粒子の担持方法において、工程ibでは、少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類のセルロースナノファイバー3とを含有する分散液を調製し、金属塩およびセルロースナノファイバー含有液を準備する。
【0089】
少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類のセルロースナノファイバー3を含有する溶液または分散液を調製する方法は、特に限定されない。例えば、少なくとも1種類のセルロースナノファイバー3を含有する分散液(セルロースナノファイバー分散液)と、少なくとも1種類の金属塩を含有する溶液(金属塩含有溶液)とを用意し、セルロースナノファイバー分散液を攪拌しながら、セルロースナノファイバー分散液に金属塩含有溶液を添加して調製することができる。また、セルロースナノファイバー分散液に、直接、固体の金属塩を加えてもよく、金属塩含有溶液にセルロースナノファイバー分散液を添加してもよい。
【0090】
金属塩としては、硝酸銀、塩化銀、酸化銀、硫酸銀、酢酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、塩化金酸、塩化金酸ナトリウム、塩化金酸カリウム、塩化白金、酸化白金および酸化白金からなる群から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。これらの金属塩は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
金属塩含有溶液を準備する場合、金属塩含有溶液に用いる溶媒は、金属塩が充分に分散または溶解するものであれば、特に限定されない。
【0091】
環境への負荷の面からは、溶媒としては、水を用いることが好ましい。
金属塩の溶解性の観点からは、溶媒としては、水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。
また、金属塩含有溶液中の金属塩の濃度も特に限定されない。
金属塩およびセルロースナノファイバー分散液における金属塩の濃度は、特に限定されないが、0.002mmol/L以上20.0mmol/L以下であることが好ましい。特に、アニオン性官能基を有するセルロースナノファイバーを用いる場合、アニオン性官能基に金属イオンが配位するため、金属塩の濃度(金属イオンの濃度)が、アニオン性官能基量未満となるように調製することが好ましい。金属塩の濃度(金属イオンの濃度)がセルロースナノファイバー3のアニオン性官能基量を上回るとセルロースナノファイバー3が凝集することがある。
【0092】
金属塩およびセルロースナノファイバー含有液に用いる溶媒は、セルロースナノファイバー3が充分に分散または溶解するものであれば、特に限定されない。
環境への負荷の面からは、溶媒としては、水を用いることが好ましい。
セルロースナノファイバー3の分散性の観点からは、溶媒としては、水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。
【0093】
金属塩およびセルロースナノファイバー分散液におけるセルロースナノファイバー3の固形分濃度は、特に限定されないが、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
セルロースナノファイバー3の固形分濃度が0.1質量%未満では、金属微粒子の粒子径を制御するのが難しくなる。一方、セルロースナノファイバー3の固形分濃度が20質量%を超えると、セルロースナノファイバー分散液の粘度が高くなり、工程ibにおいて、金属塩とセルロースナノファイバー3とを均一に混ぜるのが難しくなり、工程icにおいて、均一に還元反応を進行させることができなくなる。
【0094】
金属塩およびセルロースナノファイバー含有液の溶媒としては、セルロースナノファイバー3が充分に溶解または分散するものであれば、特に限定されない。
環境への負荷の面からは、溶媒としては、水を用いることが好ましい。
金属微粒子およびセルロースナノファイバー3の分散性の観点からは、溶媒としては、水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。
金属塩およびセルロースナノファイバー含有液のpHは、特に限定されないが、pH2以上pH12以下であることが好ましい。
また、金属塩およびセルロースナノファイバー含有液の温度は、特に限定されないが、溶媒に水を用いる場合には4℃以上100℃以下であることが好ましい。
【0095】
(工程ic:金属微粒子担持セルロースナノファイバー分散液調製工程)
セルロースナノファイバー3Aへの金属微粒子の担持方法において、工程icでは、金属塩およびセルロースナノファイバー含有液中の金属イオンを還元し、反応液を調製して金属微粒子を担持したセルロースナノファイバー3を得る。
金属塩およびセルロースナノファイバー含有液中の金属イオンを還元させる方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、還元剤、紫外線、電子線、液中プラズマ等を用いる方法を採用することができる。金属イオンの還元に用いる還元剤としては、公知の還元剤を用いることができる。
還元剤としては、例えば、金属ヒドリド系、ボロヒドリド系、ボラン系、シラン系、ヒドラジンおよびヒドラジド系の還元剤が挙げられる。一般に、液相還元法では、還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸およびアスコルビン酸アルカリ金属塩、ヒドラジン等が用いられる。
【0096】
金属塩およびセルロースナノファイバー含有液における還元剤の添加量(還元剤の濃度)は、特に限定されないが、金属塩およびセルロースナノファイバー含有液における金属塩の濃度と等量以上となるようにすることが好ましく、0.002mmol/L以上2000mmol/L以下であることがより好ましい。
金属塩およびセルロースナノファイバー含有液における還元剤の濃度が、金属塩およびセルロースナノファイバー含有液における金属塩の濃度以下であると、未還元の金属イオンが金属塩およびセルロースナノファイバー含有液中に残存してしまう。
【0097】
還元剤を用いて、金属塩およびセルロースナノファイバー含有液中の金属イオンを還元させる場合の還元剤の添加方法は特に限定されないが、予め還元剤を水等の溶媒に溶解または分散させてから、その溶液または分散液を金属塩およびセルロースナノファイバー含有液に添加してもよい。
また、金属塩およびセルロースナノファイバー含有液に対する還元剤の添加速度は、特に限定されないが、還元反応が均一に進行するような方法で添加することが好ましい。
なお、セルロースナノファイバー3への金属微粒子の担持方法は、特に限定されないが、上述の工程ia、工程ib、工程icを少なくとも含むことが好ましい。各工程の間に他の工程が入ってもよい。
【0098】
必要に応じて、金属微粒子の表面を少なくとも一部が半導体または金属、その金属酸化物で被覆されてもよい。被覆に用いられる半導体や金属及びその酸化物は、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、白金、亜鉛、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、金属塩、金属錯体およびこれらの合金、または酸化物、複酸化物、シリカ等が挙げられる。特に、安定性や汎用性の観点から、金及びシリカを被覆するのが好ましい。
必要に応じて機能性材料担持セルロースナノファイバー3Bをろ過や遠心分離等により洗浄し、遊離の機能性材料4を除去してもよい。
【0099】
(第2工程)
第2工程は、上記セルロースナノファイバー3(3Aまたは3B)分散液中においてコア粒子前駆体を含む液滴6の表面を上記セルロースナノファイバー3(3Aまたは3B)で被覆し、エマルションとして安定化させる工程である。
具体的には、製造方法Iでは、第i工程で得られた機能性材料担持セルロースナノファイバー分散液11Bに、製造方法IIでは、第1工程で得られたセルロースナノファイバー分散液11Aに、コア粒子前駆体含有液を添加し、セルロースナノファイバー3の分散液中に液滴6として分散させ、液滴6の表面をセルロースナノファイバー3によって被覆し、セルロースナノファイバー3によって安定化されたO/W型エマルションを作製する工程である。セルロースナノファイバー3によって安定化されたO/W型エマルションをエマルション液と呼ぶ。
【0100】
O/W型エマルションを作製する方法としては特に限定されないが、一般的な乳化処理、例えば各種ホモジナイザー処理や機械攪拌処理を用いることができ、具体的には高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、万能ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突、ペイントシェイカーなどの機械的処理が挙げられる。また、複数の機械的処理を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
例えば超音波ホモジナイザーを用いる場合、セルロースナノファイバー3の分散液に対しコア粒子前駆体含有液を添加して混合溶媒とし、混合溶媒に超音波ホモジナイザーの先端を挿入して超音波処理を実施する。超音波ホモジナイザーの処理条件としては特に限定されないが、例えば周波数は20kHz以上が一般的であり、出力は10W/cm2以上が一般的である。処理時間についても特に限定されないが、通常10秒から1時間程度である。
【0102】
上記超音波処理により、セルロースナノファイバー3の分散液中にコア粒子前駆体を含む液滴6が分散してエマルション化が進行し、さらに液滴6とセルロースナノファイバー分散液の液/液界面に選択的にセルロースナノファイバー3が吸着することで、液滴6がセルロースナノファイバー3で被覆されO/W型エマルションとして安定した構造を形成する。このように、液/液界面に固体物が吸着して安定化したエマルションは、学術的には「ピッカリングエマルション」と呼称されている。前述のようにセルロースナノファイバー3によってピッカリングエマルションが形成されるメカニズムは定かではないが、セルロースはその分子構造において水酸基に由来する親水性サイトと炭化水素基に由来する疎水性サイトとを有することから両親媒性を示すため、両親媒性に由来して疎水性モノマーと親水性溶媒の液/液界面に吸着すると考えられる。
【0103】
O/W型エマルション構造は、光学顕微鏡観察により確認することができる。O/W型エマルションの粒径は特に限定されないが、平均粒径が0.1μm以上1000μm以下であることが好ましい。平均粒径は、ランダムに100個のエマルションの直径を測定し、平均値を取ることで算出できる。
O/W型エマルション構造において、液滴6の表層に形成された被覆層30(セルロースナノファイバー層)の厚みは特に限定されないが、3nm以上1000nm以下であることが好ましい。特に限定されないが、エマルション構造における粒径が第3工程において得られる触媒粒子1の粒径と同程度となる。被覆層の厚みは、例えばクライオTEMを用いて計測することができる。
【0104】
第2工程において用いることができるセルロースナノファイバー分散液とコア粒子前駆体の重量比については特に限定されないが、セルロースナノファイバー3が100質量部に対し、重合性モノマーが1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。重合性モノマーが1質量部以下となると触媒粒子1の収量が低下するため好ましくなく、50質量部を超えると液滴6をセルロースナノファイバー3で均一に被覆することが困難となり好ましくない。
【0105】
上記コア粒子前駆体含有液は、コア粒子前駆体を含有し、O/W型エマルションを形成することができればよく、O/W型エマルションを安定的に形成するためには、疎水性であることが好ましい。また、上記コア粒子前駆体は、化学的な変化或いは物理化学的な変化により固体化してコア粒子2を形成する前駆体である。コア粒子前駆体は、特に限定されないが、液滴6を安定して形成できるものであれば特に限定されない。コア粒子前駆体としては、例えば、重合性モノマー(モノマー)、溶融ポリマー、溶解ポリマーを用いることができる。
【0106】
第2工程で用いることができる重合性モノマーの種類としては、ポリマーの単量体であって、その構造中に重合性の官能基を有し、常温で液体であって、水と相溶せず、重合反応によってポリマー(高分子重合体)を形成できるものであれば特に限定されない。重合性モノマーは少なくとも一つの重合性官能基を有する。重合性官能基を一つ有する重合性モノマーは単官能モノマーとも称する。また、重合性官能基を二つ以上有する重合性モノマーは多官能モノマーとも称する。重合性モノマーの種類としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、ビニル系モノマーなどが挙げられる。また、エポキシ基やオキセタン構造などの環状エーテル構造を有する重合性モノマー(例えばε-カプロラクトン等)を用いることも可能である。
なお、「(メタ)アクリレート」の表記は、「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を含むこと示す。
【0107】
単官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0108】
2官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0109】
3官能以上の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0110】
単官能のビニル系モノマーとしては例えば、ビニルエーテル系、ビニルエステル系、芳香族ビニル系、特にスチレンおよびスチレン系モノマーなど、常温で水と相溶しない液体が好ましい。
単官能ビニル系モノマーのうち(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0111】
また、単官能芳香族ビニル系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロペニルトルエン、イソブチルトルエン、tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、1,1-ジフェニルエチレンなどが挙げられる。
多官能のビニル系モノマーとしてはジビニルベンゼンなどの不飽和結合を有する多官能基が挙げられる。常温で水と相溶しない液体が好ましい。
【0112】
例えば多官能性ビニル系モノマーとしては、具体的には、(1)ジビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン等のジビニル類、(2)エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-プロピレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート類、(3)トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート類、(4)エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ジプロピレングリコールジアクリレート、1,4-ジブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキシレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2-ビス(4-アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート類、(5)トリメチロールプロパントリアクリレート、トリエチロールエタントリアクリレート等のトリアクリレート類、(6)テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のテトラアクリレート類、(7)その他に、例えばテトラメチレンビス(エチルフマレート)、ヘキサメチレンビス(アクリルアミド)、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。
【0113】
例えば官能性スチレン系モノマーとしては、具体的には、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジビニルキシレン、ジビニルビフェニル、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン等が挙げられる。
また、これらの他にも重合性の官能基を少なくとも1つ以上有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができ、特にその材料を限定しない。
【0114】
上記重合性モノマーは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、重合性モノマーに重合開始剤を添加してもよい。一般的な重合開始剤としては有機過酸化物やアゾ重合開始剤などのラジカル開始剤が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えばパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシエステルなどが挙げられる。
【0115】
アゾ重合開始剤としては、例えばADVN,AIBNが挙げられる。
例えば2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル-2,2-アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2-アゾビス(2-メチルブチルアミド)、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2,2-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
【0116】
第2工程において、重合性モノマー及び重合開始剤を含んだコア粒子前駆体含有液を用いれば、後述の第3工程でO/W型エマルションの液滴6中に重合開始剤が含まれるため、後述の第3工程においてエマルションの液滴6内部のモノマーを重合させる際に重合反応が進行しやすくなる。
第2工程において用いることができる重合性モノマーと重合開始剤の重量比については特に限定されないが、通常、重合性モノマー100質量部に対し、重合性開始剤が0.1質量部以上であることが好ましい。重合性モノマーが0.1質量部未満となると重合反応が充分に進行せずに触媒粒子1の収量が低下するため好ましくない。
【0117】
コア粒子前駆体含有液は、溶媒を含んでも構わない。特に限定されないが、第2工程にてエマルションを安定化させるためには、有機溶媒を用いることが好ましい。例えば、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、イソホロン、セロソルブアセテート、イソホロン、ソルベッソ100、トリクレン、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、イソオクタン、ノナン等を用いることができる。
【0118】
第2工程において用いることができる重合性モノマーと溶媒の重量比については特に限定されないが、重合性モノマー100質量部に対し、溶媒が80質量部以下であることが好ましい。
溶解ポリマーを得るためのポリマーとしては、特に限定されないが、上記親水性溶媒7に溶解しにくいことが好ましい。ポリマーが親水性溶媒7に溶解すると、安定したエマルションを形成することができない。
【0119】
例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアセテート誘導体、キチン、キトサン等の多糖類、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリ乳酸類、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル類、ポリカプロラクトン、カプロラクトンとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリカプロラクトン類、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリヒドロキシブチレート類、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ酪酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等の脂肪族ポリエステル類、ポリアミノ酸類、ポリエステルポリカーボネート類、ロジン等の天然樹脂等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0120】
上記ポリマーが溶解する溶媒に溶解させることで溶解ポリマーを得ることができる。上記ポリマーを溶解させる溶媒としては、セルロースナノファイバー3の分散液への相溶性が低い溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒7への溶解度が高い場合、溶媒が液滴6相から親水性溶媒7相へ容易に溶解してしまうため、エマルション化が困難となる。また、上記溶媒は沸点が90℃以下であることが好ましい。沸点が90℃より高い場合、上記溶媒よりも先にセルロースナノファイバー3の分散液の親水性溶媒7が蒸発してしまい触媒粒子1を得ること困難となる。用いることができる溶媒として、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、イソホロン、セロソルブアセテート、イソホロン、ソルベッソ100、トリクレン、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、イソオクタン、ノナン等を用いることができる。
【0121】
溶解させるポリマーと溶媒の重量比については、特に限定されず、ポリマーを溶解することができればよい。好ましくは、ポリマー100質量部に対し、溶媒の重量は0.005質量部以上100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上80質量部以下であることが好ましい。
ポリマーを溶融させた溶融ポリマーを得る方法としては、例えば常温で固体のポリマーを溶融させて液体とする。上記溶融ポリマーを前述のように超音波ホモジナイザー等による機械処理を加えながら、ポリマーの溶融状態を維持可能な温度にまで加熱されたセルロースナノファイバー3の分散液に添加することによって、分散液中で溶融ポリマー液滴をO/W型エマルションとして安定化することが好ましい。
【0122】
溶融ポリマーとしては、セルロースナノファイバー3の親水性溶媒7への溶解性が低いものが好ましい。親水性溶媒7への溶解度が高い場合、溶融ポリマー液滴6相から親水性溶媒7相へポリマーが容易に溶解してしまうため、エマルション化が困難となる。また、溶融ポリマーは融点が90℃以下であることが好ましい。融点が90℃より高い場合、セルロースナノファイバー3の分散液4中の水が蒸発してしまい、エマルション化が困難となる。
【0123】
溶融ポリマーに用いるポリマーとしては、具体的には、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ステアリルステアレート、ステアリン酸バチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ジステアリン酸エチレングリコール、ベヘニルアルコール、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、炭化水素ワックス、脂肪酸アルキルエステル、ポリオール脂肪酸エステル、脂肪酸エステルとワックスの混合物、脂肪酸エステルの混合物、グリセリンモノパルミテート(/ステアリン酸モノグリセライド)、グリセリンモノ・ジステアレート(/グリセリンステアレート)、グリセリンモノアセトモノステアレート(/グリセリン脂肪酸エステル)、コハク酸脂肪族モノグリセライド(/グリセリン脂肪酸エステル)、クエン酸飽和脂肪族モノグリセライド、ソルビタンモノステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタントリベヘネート、プロピレングリコールモノベヘネート(/プロピレングリコール脂肪酸エステル)、アジピン酸ペンタエリスリトールポリマーのステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ステアリルシトレート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、超淡色ロジン、ロジン含有ジオール、超淡色ロジン金属塩、水素化石油樹脂、ロジンエステル、水素化ロジンエステル、特殊ロジンエステル、ノボラック、結晶性ポリαオレフィン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリ乳酸類;ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル類、ポリカプロラクトン、カプロラクトンとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリカプロラクトン類、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリヒドロキシブチレート類、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ酪酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等の脂肪族ポリエステル類、ポリアミノ酸類、ポリエステルポリカーボネート類、ロジン等の天然樹脂等を用いることができる。
【0124】
また、液滴6には予め重合開始剤以外の機能性成分が含まれていてもよい。具体的には磁性材料、医薬品、農薬、香料、接着剤、酵素、顔料、染料、消臭剤、金属、金属酸化物、無機酸化物、等が挙げられる。重合性モノマーに、予め重合開始剤以外の他の機能性成分が含まれている場合、触媒粒子1として形成した際のコア粒子2内部に上述の機能性成分を含有させることができ、用途に応じた機能発現が可能となる。
機能性成分は、液滴6へ溶解または分散しやすく、親水性溶媒7に溶解または分散しにくいことが好ましい。液滴6に溶解或いは分散することにより、O/W型エマルションを形成した際にエマルションの液滴6中に機能性成分を内包しやすく、機能性成分を内包する触媒粒子1を効率的に得ることができる。また、内包する機能性成分の量を増やすことが可能である。
【0125】
中でも、磁性材料を内包することが好ましい。磁性材料を内包することにより、触媒粒子1を様々な環境下において、分散、分離、回収、攪拌、混合、流速制御、などの操作を可能とさせることである。前述のように、磁性材料としては、自発磁化を有する強磁性材料を用いることが好ましい。強磁性材料とは、フェロ磁性、フェリ磁性など自発磁化を有する磁性材料である。強磁性材料としては、例えば、金属、合金、金属間化合物、酸化物、金属化合物が挙げられる。また、本発明の触媒粒子の使用方法によっては残留磁化の少ない磁性材料が求められ、一般的に軟磁性を示す磁性材料が好適である。強磁性材料をナノオーダーのサイズにした超常磁性材料も好適である。
【0126】
磁性材料は、液滴6内部のコア粒子前駆体との親和性、分散性との観点から表面が疎水化されたものが好ましい。磁性材料の表面の疎水化処理方法としては、磁性材料と極めて親和性の高い部分と疎水性の部分とを分子内に有する化合物を磁性材料に接触させて結合させる方法を挙げることができる。このような親和性の高い部分と疎水性の部分とを分子内に有する化合物としては、シランカップリング剤に代表されるシラン化合物を挙げることができる。
【0127】
シランカップリング剤に代表されるシラン化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ドデシルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシランなどがある。
【0128】
これらのシラン化合物を磁性材料に結合させる方法としては、例えば、磁性材料と、シラン化合物とを水などの無機媒質またはアルコール、エーテル、ケトン、エステルなどの有機媒質中で混合し、撹拌しながら加熱した後、磁性材料をデカンテーションなどにより分離して減圧乾燥により無機媒質または有機媒質を除去する手段を挙げることができる。また、磁性材料とシラン化合物とを直接混合し加熱させて両者を結合させてもよい。これらの手段において、加熱温度は通常30~100℃であり、加熱温度は0.5~2時間程度である。
【0129】
上記の様に磁性材料表面に疎水化処理を行うことで、磁性材料が液滴6内部に分散しやすくなり、磁性材料を内包した触媒粒子を得ることができる。磁性材料が触媒粒子に内包されることで、磁性材料を外部から保護することができ、磁性材料の劣化を防ぐことができる。
前述のように、磁性材料の平均粒子径は0.001μm以上、10μm以下が好ましい。平均粒子径が0.001μmよりも小さい場合、磁性材料を分散安定性が悪く、自己凝集しやすくなり、10μmより大きい場合、触媒粒子1にした際にコア粒子2に磁性材料が内包されにくくなる。磁性材料の平均粒子径は走査型電子顕微鏡観察を行い、画像中の磁性材料の大きさを画像上で100箇所ランダムに測定し、平均値を取ることで算出できる。
【0130】
さらに、コア粒子前駆体として、重合性モノマーおよび溶解ポリマー、溶融ポリマーを併用して用いて液滴6を形成し、エマルション化することも可能である。また、触媒粒子1のコア粒子2のポリマー種として生分解性ポリマー(樹脂)を選択した場合、得られる触媒粒子1は生分解性ポリマーからなるコア粒子2およびセルロースナノファイバー3で構成されることにより、生分解性材料を有する環境調和性の高い触媒粒子1として提供することも可能である。
【0131】
(第3工程)
上記液滴6内部の上記コア粒子前駆体を固体化させてコア粒子2の表面にセルロースナノファイバー3(3Aまたは3B)が被覆されたセルロースナノファイバー3(3Aまたは3B)被覆粒子の分散液を得る工程である。
コア粒子前駆体を固体化させる方法については特に限定されない。コア粒子前駆体として重合性モノマーを用いた場合、重合性モノマーを重合することによりポリマー化することで、固体化できる。コア粒子前駆体として溶解ポリマーを用いた場合、液滴6内部の溶媒を親水性溶媒7に拡散させる方法や、溶媒を蒸発させる方法により溶媒を除去し、ポリマーを固体化できる。コア粒子前駆体として溶融ポリマーを用いた場合、溶融ポリマーを冷却して凝固させて固体化させることができる。
【0132】
例えば第2工程で作製された、コア粒子前駆体として重合性モノマー、更に重合開始剤を含む液滴6がセルロースナノファイバー3によって被覆され安定化したO/W型エマルションを、攪拌しながら加熱して重合性モノマーを重合し、コア粒子前駆体を固体化する。攪拌の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができ、具体的にはディスパーや攪拌子を用いることができる。また、攪拌せずに加熱処理のみでもよい。
また、加熱時の温度条件については重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜設定することが可能であるが、20℃以上150℃以下が好ましい。20℃未満であると重合の反応速度が低下するため好ましくなく、150℃を超えるとセルロースナノファイバー3が変性する可能性があるため好ましくない。重合反応に供する時間は重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜設定することが可能であるが、通常1時間~24時間程度である。また、重合反応は電磁波の一種である紫外線照射処理によって実施してもよい。また、電磁波以外にも電子線などの粒子線を用いても良い。
【0133】
溶解ポリマーの溶媒を蒸発させる方法としては、具体的には、加熱または/および減圧乾燥により溶媒を蒸発させ、除去する。上記有機溶媒の沸点が水より低いと、有機溶媒を選択的に除去することが可能である。特に限定されないが、減圧条件下で加熱することにより効率的に溶媒を除去することができる。加熱温度は20℃以上100℃以下であることが好ましく、圧力は600mHg以上750mmHg以下であることが好ましい。
溶解ポリマーの溶媒を拡散させる方法は、具体的には上記O/W型エマルション液に更に溶媒や塩の添加により液滴6内部の溶媒を拡散させる。親水性溶媒7への溶解性の低い溶媒が経時的に親水性溶媒7相へと拡散して行くことで、溶解ポリマーが析出して粒子として固体化させることができる。
【0134】
溶融ポリマーを凝固させる方法としては、上記O/W型エマルション液を冷却することで、溶融ポリマーを凝固させることができる。
上述の工程を経て、コア粒子2がセルロースナノファイバー3によって被覆された粒子(セルロースナノファイバー被覆粒子10、触媒粒子1)を作製することができる。なお、セルロースナノファイバー被覆粒子10(セルロースナノファイバー3A被覆粒子)または触媒粒子1(機能性材料担持セルロースナノファイバー3B被覆粒子)の状態は、セルロースナノファイバー被覆粒子10または触媒粒子1の分散液中に多量の水と被覆層30に形成に寄与していない遊離したセルロースナノファイバー3が混在した状態となっている。そのため、触媒粒子1を回収・精製する必要があり、回収・精製方法としては、遠心分離による洗浄またはろ過洗浄が好ましい。また、残留溶媒を除去してもよい。
【0135】
遠心分離による洗浄方法としては公知の方法を用いることができ、具体的には遠心分離によってセルロースナノファイバー被覆粒子10または触媒粒子1を沈降させて上澄みを除去し、水・メタノール混合溶媒に再分散する操作を繰り返し、最終的に遠心分離によって得られた沈降物から残留溶媒を除去してセルロースナノファイバー被覆粒子10または触媒粒子1を回収することができる。ろ過洗浄についても公知の方法を用いることができ、例えば孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて水とメタノールで吸引ろ過を繰り返し、最終的にメンブレンフィルター上に残留したペーストからさらに残留溶媒を除去して触媒粒子1を回収することができる。
残留溶媒の除去方法は特に限定されず、風乾やオーブンで熱乾燥にて実施することが可能である。こうして得られた触媒粒子1を含む乾燥固形物は上述のように膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。
【0136】
(第ii工程)
第ii工程は、上記セルロースナノファイバー被覆粒子10(セルロースナノファイバー3A被覆粒子)の分散液中で上記セルロースナノファイバー3A被覆粒子の表面のセルロースナノファイバー3Aに機能性材料4を担持させる工程である。
セルロースナノファイバー3A被覆粒子の表面のセルロースナノファイバー3Aに機能性材料4を担持させる方法については特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、セルロースナノファイバー3A被覆粒子を水やアルコール等の親水性溶媒に再分散させてセルロースナノファイバー3A被覆粒子の分散液を作製し、機能性材料4をセルロースナノファイバー3A被覆粒子の分散液に添加、混合して付着させる方法が用いることができる。また、セルロースナノファイバー3A被覆粒子の分散液中で機能性材料4を合成して担持することができる。
【0137】
ここで、上述したように、セルロースナノファイバー3A被覆粒子に機能性材料4を担持する際、セルロースナノファイバー3の結晶表面に予めアニオン性官能基が導入されていることが好ましい。アニオン性官能基を有するセルロースナノファイバー3A被覆粒子の分散液にカチオン性の機能性材料4を添加して混合することで、セルロースナノファイバー3A被覆粒子の表面のセルロースナノファイバー3Aに機能性材料4を安定的に担持することができる。また、セルロースナノファイバー3A被覆粒子の分散液のpHを調整することにより、機能性材料4の担持或いは脱離を制御することができる。
【0138】
機能性材料4を担持する際のセルロースナノファイバー3A被覆粒子の濃度は特に限定されないが、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。セルロースナノファイバー3A被覆粒子の濃度が0.1%未満であると、機能性材料4を効率よく担持させることが難しい。セルロースナノファイバー3A被覆粒子の濃度が50質量%を超えると、セルロースナノファイバー3A被覆粒子の分散性が悪くなり、均一な反応が難しくなる。
【0139】
セルロースナノファイバー3A被覆粒子の分散液の溶媒は特に限定されないが、親水性溶媒7であることが好ましい。
親水性溶媒7は、特に制限はないが、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。特に、水を50質量%以上含むことが好ましい。懸濁液中の水の割合が50質量%未満になると、セルロースナノファイバー被覆粒子の分散性が悪くなることがある。また、水以外に含まれる溶媒としては前述の親水性溶媒が好ましい。
【0140】
必要に応じて、セルロースナノファイバー3A被覆粒子の分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0141】
アニオン性官能基を有するセルロースナノファイバー3A被覆粒子に、機能性材料4として金属微粒子を担持する方法としては、特に限定されないが、例えば以下の方法で製造することができる。
工程iia)少なくとも1種類のセルロースナノファイバー3A被覆粒子を含有する分散液を調製する、セルロースナノファイバー3A被覆粒子分散液準備工程と、
工程iib)少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類のセルロースナノファイバー3A被覆粒子とを含有する分散液を調製する、金属塩およびセルロースナノファイバー3A被覆粒子含有液準備工程と、
工程iic)上記金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液中の金属イオンを還元し、反応液を調製する、金属微粒子担持セルロースナノファイバー被覆粒子分散液調製工程と、
を有する。
【0142】
(工程iia:セルロースナノファイバー3A被覆粒子分散液準備工程)
セルロースナノファイバー被覆粒子10(セルロースナノファイバー3A被覆粒子)への金属微粒子の担持方法において、工程iiaでは、少なくとも1種類のセルロースナノファイバー3A被覆粒子分散液を準備する。
まず、セルロースナノファイバー被覆粒子分散液を準備する。セルロースナノファイバー被覆粒子分散液の固形分濃度は、特に限定されないが、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上20質量%であることがより好ましい。
【0143】
セルロースナノファイバー被覆粒子分散液の固形分濃度が0.01質量%未満では、金属微粒子の粒子径の制御が難しくなる。一方、セルロースナノファイバー被覆粒子分散液の固形分濃度が50質量%を超えると、セルロースナノファイバー被覆粒子の分散性が悪くなり、工程iib(金属塩およびセルロースナノファイバー含有液準備工程)において、金属塩とセルロースナノファイバー被覆粒子とを均一に混ぜるのが難しくなり、工程iic(金属微粒子担持セルロースナノファイバー被覆粒子分散液調製工程)において、均一に還元反応を進行させることができなくなる。
セルロースナノファイバー被覆粒子を分散させる溶媒、pHは第ia工程と同様である。
【0144】
(工程iib:金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液準備工程)
セルロースナノファイバー被覆粒子への金属微粒子の担持方法において、工程iibでは、少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類のセルロースナノファイバー被覆粒子とを含有する分散液を調製する。
少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類のセルロースナノファイバー被覆粒子分散液を調製する方法は、特に限定されない。例えば、少なくとも1種類のセルロースナノファイバー被覆粒子分散液と、少なくとも1種類の金属塩を含有する溶液(金属塩含有溶液)とを用意し、セルロースナノファイバー被覆粒子分散液を攪拌しながら、セルロースナノファイバー被覆粒子分散液に金属塩含有溶液を添加して調製することができる。また、セルロースナノファイバー被覆粒子分散液に、直接、固体の金属塩を加えてもよく、金属塩含有溶液にセルロースナノファイバー被覆粒子分散液を添加してもよい。
【0145】
金属塩、金属塩含有液としては、第ib工程と同じ同様に準備することができる。
金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子分散液における金属塩の濃度は、特に限定されないが、0.002mmol/L以上20.0mmol/L以下であることが好ましい。特に、アニオン性官能基を有するセルロースナノファイバー被覆粒子を用いる場合、アニオン性官能基に金属イオンが配位するため、金属塩の濃度(金属イオンの濃度)が、アニオン性官能基量未満となるように調製することが好ましい。金属塩の濃度(金属イオンの濃度)がセルロースナノファイバー被覆粒子のアニオン性官能基量を上回るとセルロースナノファイバー被覆粒子が凝集することがある。
【0146】
金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液に用いる溶媒は、第i工程と同じものを用いることができる。
金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子分散液におけるセルロースナノファイバー被覆粒子の固形分濃度は、特に限定されないが、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0147】
セルロースナノファイバー被覆粒子の固形分濃度が0.1質量%未満では、金属微粒子の粒子径を制御するのが難しくなる。一方、セルロースナノファイバー3の固形分濃度が50質量%を超えると、セルロースナノファイバー被覆粒子の分散性が悪くなり、工程iibにおいて、金属塩とセルロースナノファイバー被覆粒子とを均一に混ぜるのが難しくなり、工程iicにおいて、均一に還元反応を進行させることができなくなる。
金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液の溶媒としては、第ib工程と同じものを用いることができる。pH、温度も第i工程と同様にすることができる。
【0148】
(工程iic:金属微粒子担持セルロースナノファイバー被覆粒子分散液調製工程)
セルロースナノファイバー被覆粒子への金属微粒子の担持方法において、工程iicでは、金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液中の金属イオンを還元し、反応液を調製して金属微粒子を担持したセルロースナノファイバー被覆粒子を得る。
金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液中の金属イオンを還元させる方法は、工程icの方法と同様の方法を用いることができ、還元剤も同様のものを用いることができる。
金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液における還元剤の添加量(還元剤の濃度)は、特に限定されないが、金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液における金属塩の濃度と等量以上となるようにすることが好ましく、0.002mmol/L以上2000mmol/L以下であることがより好ましい。
【0149】
金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液における還元剤の濃度が、金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液における金属塩の濃度以下であると、未還元の金属イオンが金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液中に残存してしまう。
還元剤を用いて、金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液中の金属イオンを還元させる場合の還元剤の添加方法は特に限定されないが、予め還元剤を水等の溶媒に溶解または分散させてから、その溶液または分散液を金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液に添加してもよい。
【0150】
また、金属塩およびセルロースナノファイバー被覆粒子含有液に対する還元剤の添加速度は、特に限定されないが、還元反応が均一に進行するような方法で添加することが好ましい。
なお、セルロースナノファイバー被覆粒子への金属微粒子の担持方法は、特に限定されないが、上述の工程iia、工程iib、工程iicを少なくとも含むことが好ましい。各工程の間に他の工程が入ってもよい。
【0151】
必要に応じて、金属微粒子の表面を少なくとも一部が半導体または金属、その金属酸化物で被覆されてもよい。被覆に用いられる半導体や金属及びその酸化物は、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、白金、亜鉛、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、金属塩、金属錯体およびこれらの合金、または酸化物、複酸化物、シリカ等が挙げられる。特に、安定性や汎用性の観点から、金及びシリカを被覆するのが好ましい。
【0152】
必要に応じて機能性材料担持セルロースナノファイバー3B被覆粒子(触媒粒子1)をろ過や遠心分離等により洗浄し、遊離の機能性材料4を除去してもよい。
尚、特に記載のない限り、第ii工程においては、第i工程におけるセルロースナノファイバー3Aの代わりにセルロースナノファイバー3A被覆粒子を用いて同様の条件を適用することができる。
本実施形態の触媒粒子1を基材に吸着、或いは分散させて使用することができる。触媒粒子1の表面のセルロースナノファイバー3の特性を利用して容易に基材に固定化できる。基材としては、特に限定されないが、多孔体や繊維、紙等のシートを用いることができる。
【0153】
(触媒粒子の効果)
本発明の触媒粒子の一態様によれば、高比表面積の微細化セルロース(セルロースナノファイバー)に触媒特性を有する機能性材料が担持されるために、高い触媒活性を有すると共に、機能性材料の脱離を抑制して安定的に繰り返し使用可能であり、ろ過や遠心分離による洗浄や分離が容易な触媒粒子を提供できる。
また、磁性材料を内包することにより、磁石により回収可能な触媒粒子を提供できる。さらに、触媒粒子の乾燥粉体や触媒粒子を含有する多孔体や繊維シートを提供できる。
セルロースナノファイバーは生分解性が高いため、コア粒子も生分解性ポリマーを含む材料で構成することにより、環境への負荷を低減した触媒粒子を提供できる。
【0154】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。例えば、コア粒子2にはポリマー及び機能性成分の他にその他成分を含んでも構わない。
【実施例
【0155】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示す。
<実施例1>
(第1工程:セルロースナノファイバー分散液を得る工程)
(木材セルロースのTEMPO酸化)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの重量に対して、水酸化ナトリウムの添加量の合計が3.0mmol/gに達した時点で、約100mLのエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプ(酸化セルロース)を得た。
【0156】
(酸化セルロースのカルボキシ基量測定)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプおよび再酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めた。
(酸化セルロースの解繊処理)
上記TEMPO酸化で得た酸化セルロース0.5gを99.5gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、濃度0.5%のセルロースナノファイバー水分散液を得た。
(セルロースナノファイバーの評価)
得られた酸化セルロース、セルロースナノファイバーについて、カルボキシ基量、結晶化度、長軸の数平均軸径、光線透過率およびレオロジーの測定や算出を次のように行った。得られたセルロースナノファイバーの評価結果を表1、図4図5に示す。
【0157】
(カルボキシ基量の測定)
分散処理前の酸化セルロースについて、カルボキシ基量を以下の方法にて算出した。
酸化セルロースの乾燥重量換算0.2gをビーカーに採り、イオン交換水80mLを添加した。
そこに、0.01mol/L塩化ナトリウム水溶液5mLを加え、攪拌しながら、0.1mol/L塩酸を加えて、全体がpH2.8となるように調整した。
そこに、自動滴定装置(商品名:AUT-701、東亜ディーケーケー社製)を用いて、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を0.05mL/30秒で注入し、30秒毎の電導度とpH値を測定し、pH11まで測定を続けた。
得られた電導度曲線から、水酸化ナトリウムの滴定量を求め、カルボキシ基の含有量を算出した。
【0158】
(結晶化度の算出)
TEMPO酸化セルロースの結晶化度を算出した。
TEMPO酸化セルロースについて、試料水平型多目的X線回折装置(商品名:UltimaIII、Rigaku社製)を用い、X線出力:(40kv、40mA)の条件で、5°≦2θ≦35°の範囲でX線回折パターンを測定した。得られるX線回折パターンはセルロースI型結晶構造に由来するものであるため、下記の式(2)を用い、以下に示す手法により、TEMPO酸化セルロースの結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=〔(I22.6-I18.5)/I22.6〕×100・・・(2)
ただし、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。
【0159】
(セルロースナノファイバー3の長軸の数平均軸径の算出)
原子間力顕微鏡を用いて、セルロースナノファイバーの長軸の数平均軸径を算出した。
まず、セルロースナノファイバー水分散液を0.001%となるように希釈した後、マイカ板上に20μLずつキャストして風乾した。
乾燥後に原子間力顕微鏡(商品名:AFM5400L、日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、DFMモードでセルロースナノファイバーの形状を観察した。
セルロースナノファイバーの長軸の数平均軸径は、原子間力顕微鏡による観察画像から100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求めた。
【0160】
(セルロースナノファイバー水分散液の光線透過率の測定)
セルロースナノファイバー0.5質量%の水分散液について、光線透過率を測定した。
石英製のサンプルセルの一方にはリファレンスとして水を入れ、もう一方には気泡が混入しないようにセルロースナノファイバー水分散液を入れ、光路長1cmにおける波長220nmから800nmまでの光線透過率を分光光度計(商品名:NRS-1000、日本分光社製)にて測定した。
【0161】
(レオロジー測定)
セルロースナノファイバー0.5質量%の分散液のレオロジーをレオメータ(商品名:AR2000ex、ティー・エイ・インスツルメント社製)傾斜角1°のコーンプレートにて測定した。
測定部を25℃に温調し、せん断速度を0.01s-1から1000s-1について連続的にせん断粘度を測定した。その結果を図5に示す。図5から明らかなように、セルロースナノファイバー分散液はチキソトロピック性を示した。せん断速度が10s-1と100s-1のときのせん断粘度を表1に示す。
【0162】
【表1】
【0163】
図4から明らかなように、セルロースナノファイバー水分散液は高い透明性を示した。また、セルロースナノファイバー水分散液に含まれるセルロースナノファイバー(TEMPO酸化CNF)の数平均短軸径は3nm、数平均長軸径は831nmであった。さらに、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行った結果を図5に示す。図5から明らかなように、セルロースナノファイバー分散液はチキソトロピック性を示した。
【0164】
(第i工程:機能性材料の担持工程)
(工程ia:セルロースナノファイバー分散液の準備)
0.5質量%のセルロースナノファイバーの分散液50gを準備した。
(工程ib:硝酸銀水溶液及びセルロースナノファイバー含有液の調製)
100mMの硝酸銀(I)水溶液を調製した。0.5質量%のセルロースナノファイバーの分散液50gに対し、温度一定(25℃)に保ち、攪拌子で攪拌しながら、100mMの硝酸銀水溶液1.0gを添加し、30分攪拌を続けた。
(工程ic:還元析出)
水素化ホウ素ナトリウムを蒸留水に溶解し、100mM水素化ホウ素ナトリウム水溶液を調製した。硝酸銀水溶液及びセルロースナノファイバー含有液を温度一定(25℃)に保ち、攪拌子で攪拌しながら、100mM水素化ホウ素ナトリウム水溶液を1.0g添加し、さらに60分攪拌を続けることによって銀微粒子担持セルロースナノファイバー3Bの分散液を作製した。得られた分散液は銀微粒子由来の黄色を呈し、銀微粒子の生成が示された。
【0165】
(第2工程:O/W型エマルションを作製する工程)
次に、重合性モノマーであるジビニルベンゼン(以下、DVBとも称する。)10gに対し、重合開始剤である2、2-アゾビス-2、4-ジメチルバレロニトリル(以下、ADVNとも称する。)を1g溶解させた。
上記重合性モノマー混合液全量を、銀微粒子担持セルロースナノファイバー分散液40gに対し添加したところ、重合性モノマー混合液とセルロースナノファイバー分散液はそれぞれ2相に分離した。
次に、上記2相分離した状態の混合液における上相の液面から超音波ホモジナイザーのシャフトを挿入し、周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行った。超音波ホモジナイザー処理後の混合液の外観は白濁した乳化液の様態であった。混合液一滴をスライドグラスに滴下し、カバーガラスで封入して光学顕微鏡で観察したところ、数μm程度のエマルション液滴が無数に生成し、O/W型エマルションとして分散安定化している様子が確認された。
【0166】
(第3工程:コア粒子前駆体を固体化する工程)
O/W型エマルション分散液を、ウォーターバスを用いて70℃の湯浴中に供し、攪拌子で攪拌しながら8時間処理し、重合反応を実施した。8時間処理後に上記分散液を室温まで冷却した。重合反応の前後で分散液の外観に変化はなかった。
【0167】
(洗浄及び乾燥工程)
得られた分散液に対し、遠心力75,000gで5分間処理したところ、沈降物を得た。デカンテーションにより上澄みを除去して沈降物を回収し、さらに孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて、純水とメタノールで交互に2回ずつ洗浄した。こうして得られた精製・回収物を1%濃度で再分散させ、粒度分布計(NANOTRAC UPA-EX150、日機装株式会社)を用いて粒径を評価した。次に精製・回収物を風乾し、さらに室温25℃にて真空乾燥処理を24時間実施したところ、肌理細やかな乾燥粉体(触媒粒子)を得た。
【0168】
(走査型電子顕微鏡による形状観察)
得られた乾燥粉体を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。そのSEM画像を図6に示す。O/W型エマルション液滴を鋳型として重合反応を実施したことにより、エマルション液滴の形状に由来した、真球状の粒子が無数に形成していることが確認され、さらに、その表面は幅数nmのセルロースナノファイバーによって均一に被覆されていることが確認された。
ろ過洗浄によって繰り返し洗浄したにも拘らず、粒子の表面は等しく均一にセルロースナノファイバーによって被覆されていることから、コア粒子とセルロースナノファイバーは結合しており、不可分の状態にあることが示された。
更に、ろ過洗浄により繰り返し洗浄したのにも関わらず、粒子表面のセルロースナノファイバーには、微小な球状の銀微粒子が確認された。このことから、粒子表面のセルロースナノファイバーに機能性材料である銀微粒子が担持されており、セルロースナノファイバーと銀微粒子が不可分であることが示唆された。
【0169】
乾燥粉体を樹脂に包埋し、ミクロトームにより断面を切削して走査型電子顕微鏡にて観察を行ったところ、コア粒子の表面に均一な被覆層が形成されていることが確認された。
このように、ろ過洗浄によって繰り返し洗浄したにも拘らず、真球状の粒子表面は等しく均一にセルロースナノファイバーによって被覆され、セルロースナノファイバーの表面に機能性材料として球状銀微粒子が担持されていることから、本実施形態の触媒粒子を得られたことが示された。
【0170】
(分散性の評価)
乾燥粉体を1質量%の濃度で純水に添加し、攪拌子で24時間攪拌して再分散させたところ、容易に再分散し、目視で凝集も見られなかった。また、粒度分布計を用いて粒径を評価したところ、平均粒径は乾燥前と同程度であり、粒度分布計のデータにおいても凝集を示すようなシグナルは存在しなかった。以上のことから、触媒粒子はその表面がセルロースナノファイバーで被覆されているにもかかわらず、乾燥によって膜化することなく粉体として得られ、かつ再分散性も良好であることが示された。
【0171】
<実施例2>
実施例1の第2工程において、重合性モノマーであるジビニルベンゼン(以下、DVBとも称する。)10gに対し、重合開始剤である2、2-アゾビス-2、4-ジメチルバレロニトリル(以下、ADVNとも称する。)を1g溶解させ、さらに酸化鉄粒子(粒子径30nm、疎水化処理)を1g添加して混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で触媒粒子を作製した。
【0172】
<実施例3>
実施例1においてDVBの代わりにヘキサンジオールジアクリレート(商品名A-HD-N、新中村化学工業、以下、A-HD-Nとも称する。)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で触媒粒子を作製した。
<実施例4>
実施例1において、TEMPO酸化の代わりに、先行技術文献として挙げた特許文献2に従いカルボキシメチル化(以下、CM化とも称する。)処理を行って得られたCM化CNF分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で触媒粒子を作製した。
<実施例5>
実施例1において、TEMPO酸化の代わりに、先行技術文献として挙げた非特許文献1に従いリン酸エステル化処理を行って得られたリン酸エステル化CNF分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で触媒粒子を作製した。
【0173】
<実施例6>
(第1工程:セルロースナノファイバー3A分散液を得る工程)
実施例1と同様の条件でセルロースナノファイバー分散液を得た。
(第i工程:機能性材料担持工程)
実施例1と同様の条件で銀微粒子担持セルロースナノファイバー分散液を得た。
【0174】
(第2工程:O/W型エマルションを作製する工程)
次に、ポリ乳酸(PLA)10gを100gのジクロロエタンに溶解、混合し、溶解ポリマーを調製した。
溶解ポリマー全量を、0.5質量%の銀微粒子担持セルロースナノファイバー分散液500gに対し添加したところ、溶解ポリマーとセルロースナノファイバー分散液はそれぞれ2相に分離した。
次に、上記2相分離した状態の混合液における上層の液面から超音波ホモジナイザーを用いて実施例1の第2工程と同様に超音ホモジナイザー処理した。光学顕微鏡にて1~数十μm程度のエマルション液滴が無数に生成し、O/W型エマルションとして分散安定化している様子が確認された。
【0175】
(第3工程:コア粒子前駆体を固体化する工程)
上記O/W型エマルション液を700mgHgの減圧条件下で40℃で3時間減圧乾燥してジクロロエタンを完全に揮発させた。ジクロロエタンの揮発前後で分散液の外観に変化はなかった。
得られた分散液を実施例1と同様の条件で分離・精製したところ、1~数十μm程度の粒子径の触媒粒子を得た。実施例1と同様の条件で回収物を乾燥したところ、肌理細やかな乾燥粉体(触媒粒子)が得られた。
【0176】
<実施例7>
実施例6において、第1工程、第i工程と同様の条件で銀微粒子担持セルロースナノファイバーを調製し、第2工程にて、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL、和光純薬製)10gを200gの酢酸エチルに溶解して溶解ポリマーを調製した以外は第2工程と同様にO/W型エマルション液を調製後、第3工程にてO/W型エマルション液を700mgHgの減圧条件下で、40℃で5時間減圧乾燥し、酢酸エチルを完全に揮発させた。それ以外は実施例6と同様の条件で触媒粒子を得た。
【0177】
<実施例8>
実施例1において、第1工程の後に第i工程を行わずに第2工程を行い、第3工程を行い、洗浄及び乾燥工程を行った後に以下の第ii工程を行い、以下の方法で洗浄及び乾燥した。それ以外は実施例1と同様の条件で触媒粒子を得た。
(第ii工程:機能性材料4担持工程)
(工程iia:セルロースナノファイバー被覆粒子分散液の準備)
第1工程、第2工程、第3工程において得られた0.5質量%のセルロースナノファイバー被覆粒子の分散液50gを準備した。
(工程iib:硝酸銀水溶液及びセルロースナノファイバー被覆粒子含有液の調製)
100mMの硝酸銀(I)水溶液を調製した。0.5質量%のセルロースナノファイバー被覆粒子の分散液50gに対し、温度一定(25℃)に保ち、攪拌子で攪拌しながら、100mMの硝酸銀水溶液1.0gを添加し、30分攪拌を続けた。
【0178】
(工程iic:還元析出)
水素化ホウ素ナトリウムを蒸留水に溶解し、100mM水素化ホウ素ナトリウム水溶液を調製した。硝酸銀水溶液及びセルロースナノファイバー被覆粒子含有液を温度一定(25℃)に保ち、攪拌子で攪拌しながら、100mM水素化ホウ素ナトリウム水溶液を1.0g添加し、さらに60分攪拌を続けることによって銀微粒子担持セルロースナノファイバー被覆粒子の分散液を作製した。得られた分散液は銀微粒子由来の黄色を呈し、銀微粒子の生成が示された。
【0179】
(洗浄および乾燥工程)
孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて、純水を用いて4回洗浄した。こうして得られた精製・回収物を1%濃度で再分散させ、粒度分布計(NANOTRAC UPA-EX150、日機装株式会社)を用いて粒径を評価した。
次に精製・回収物を風乾し、さらに室温25℃にて真空乾燥処理を24時間実施したところ、球状銀微粒子に由来した黄色を呈する肌理細やかな乾燥粉体(触媒粒子)を得た。
【0180】
<実施例9>
実施例1の第i工程において、硝酸銀水溶液の代わりにテトラクロロ金(III)酸ナトリウムの水溶液を用いた以外は実施例1と同様の条件で触媒粒子を得た。得られた触媒粒子のSEM画像を図7に示す。
<実施例10>
実施例1の第i工程において、硝酸銀水溶液の代わりにヘキサクロロ白金(IV)酸ナトリウムの水溶液を用いた以外は実施例1と同様の条件で触媒粒子を得た。
<実施例11>
実施例1の第i工程において、硝酸銀水溶液の代わりに硝酸ニッケル(II)の水溶液を用いた以外は実施例1と同様の条件で触媒粒子を得た。
【0181】
<比較例1>
実施例1において、工程2及び工程3を行わなかった以外は実施例1と同様に実施した。
<比較例2>
実施例1において、TEMPO酸化CNF分散液の代わりに純水を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で実施した。
<比較例3>
実施例1において、TEMPO酸化CNF分散液の代わりにカルボキシメチルセルロース(以下、CMCとも称する。)水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で実施した。
【0182】
<比較例4>
実施例6において、第1工程において、セルロースナノファイバー3A分散液の代わりにポリビニルアルコール(PVA)を8質量部、ラウリン酸ポリグリセリル-10(PGLE ML10)0.5質量部を純水500gに溶かした水溶液を用い、第2工程は実施例6と同様の条件でO/W型エマルション液を調製した。第3工程において、得られたO/W型エマルション液を、スプレードライヤー装置を用いて乾燥温度100℃で噴霧乾燥し、粒子を作製した。
【0183】
<比較例5>
比較例4において、ラウリン酸ポリグリセリル-10(PGLE ML10)を添加しなかった以外は比較例4と同様の条件で実施した。
<比較例6>
実施例8において、TEMPO酸化CNF分散液の代わりにカルボキシメチルセルロース(以下、CMCとも称する。)水溶液を用いたこと以外は、実施例2と同様の条件で触媒粒子の作製を試みた。
【0184】
<比較例7>
比較例1において、硝酸銀水溶液の代わりにテトラクロロ金(III)酸ナトリウムの水溶液を用いた以外は実施例1と同様の条件で実施した。
<比較例8>
比較例1において、硝酸銀水溶液の代わりにヘキサクロロ白金(IV)酸ナトリウムの水溶液を用いた以外は実施例1と同様の条件で実施した。
<比較例9>
比較例1において、硝酸銀水溶液の代わりに硝酸ニッケル(II)の水溶液を用いた以外は実施例1と同様の条件で実施した。
【0185】
<評価方法>
(触媒粒子生成可否評価)
触媒粒子の形成可否は、走査型電子顕微鏡による形状観察により判断した。得られた乾燥粉体を走査型電子顕微鏡にて観察した。
○:真球状の粒子が得られ、表面にセルロースナノファイバーが被覆されており、セルロースナノファイバーに機能性材料が担持されていた。
×:上記粒子は得られなかった。
として判定した。
【0186】
(精製可否評価)
第3工程或いは第ii工程にて得られた分散液に対し、遠心力75,000gで5分間処理し、デカンテーションにより上澄みを除去して沈降物を回収し、さらに孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて、純水とメタノールで交互に2回ずつ洗浄した。
○:遠心分離により沈殿物を回収し、メンブレンフィルター上に試料を回収できた。
×:遠心分離により沈殿物を回収できなかった。または、メンブレンフィルター上に試料を回収できなかった
として判定した。
【0187】
(分散性の評価)
乾燥粉体を1質量%の濃度で純水に添加し、攪拌子で24時間攪拌して分散させ、目視で凝集があるか確認した。
〇:目視で凝集物が確認されなかった。
×:目視で凝集物が確認された。
として判定した。
【0188】
(金属微粒子の触媒活性の評価)
0.1mMの4-ニトロフェノール水溶液50mlを準備し、これに乾燥粉体1.0gを添加して攪拌子で攪拌して分散させた。続いて、室温で攪拌しながら、250mMの水素化ホウ素ナトリウム水溶液5mlを添加して還元反応を開始した。還元反応開始から30分後に、孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いてろ過して粒子を回収し、残りの溶液の吸光度を紫外―可視分光光度計により測定して転化率を算出した。4-ニトロフェノールの吸収ピークに由来する400nmの吸光度と、還元体である4-アミノフェノールの吸収ピークに由来する300nmの吸光度より算出した。
〇:30分後の転化率が60%以上であった。
△:30分後の転化率が30%以上60%未満であった。
×:30分後の転化率が30%未満であった。
として判定した。
【0189】
(磁気応答性の評価)
磁性材料内包触媒粒子の乾燥粉体を1%の濃度で純水に添加し、超音波照射により再分散させた分散液の入った容器の外部から永久磁石を近づけ、12時間静置させた。
〇:12時間以内に磁石に引き寄せられ、試料を分離できた。
×:12時間以内に試料を分離できなかった。
として判定した。
【0190】
以上の実施例および比較例を用いた評価結果については、以下の表2にまとめて掲載した。表2におけるエマルション安定化剤は、セルロースナノファイバーまたはセルロースナノファイバーの代わりに用いたエマルション安定化剤である。コア粒子についてはポリマー、コア粒子に内包した機能性成分を示した。図2に示した製造方法Iまたは図3に示した製造方法IIを用いて触媒粒子の作製を行った。
【0191】
【表2】
【0192】
表2比較例中の各セルにおける「-」の表記は、実施していない、或いは評価の遂行が不可能となり、実施していないことを示している。
表2の実施例1から実施例11の評価結果において明らかなように、セルロースナノファイバーの種類(TEMPO酸化CNF、CM化CNF、リン酸エステル化CNF)によらず、各種モノマーの重合物や生分解性ポリマーを含むコア粒子とする触媒粒子1を作製可能であることが確認された。また、実施例1及び実施例8に示すように、製造方法I及び製造方法IIにおいて機能性材料を担持した触媒粒子を作製できた。
実施例1及び実施例9から実施例11に示すように、銀、金、白金、ニッケルの微粒子を担持した触媒粒子を作製できた。
実施例1から実施例11で得られた触媒粒子は、ろ過洗浄が可能であり、乾燥後も再分散性が良好であり、高い触媒活性を示した。
【0193】
一方、比較例1、比較例7から比較例9においては機能性材料をセルロースナノファイバーに担持して機能性材料担持セルロースナノファイバーを作製した。比較例1及び比較例7から比較例9においては精製できなかったため、分散安定性及び機能性材料の安定性、触媒活性の評価を実施できなかった。
比較例2及び比較例5においては、第2工程の遂行が不可能であった。具体的には、超音波ホモジナイザー処理を実施してもモノマー相或いは溶解ポリマー相とセルロースナノファイバー分散液相が2相分離したままの状態、或いはエマルションがすぐに崩壊してしまい、安定したO/W型エマルションの作製が不可能であった。
【0194】
また、比較例3、比較例4、比較例6においては、第2工程におけるO/W型エマルションの形成は可能であった。これはCMCやPGLE ML10がセルロースナノファイバーと同様に両親媒性を示したため、エマルションの安定化剤として機能したと考えられる。しかしながら、続く第3工程において重合性モノマーの重合、或いは溶解ポリマーからの溶媒の除去によりコア粒子前駆体の固体化を実施すると、エマルションが崩壊してしまい、O/W型エマルションを鋳型とした触媒粒子を得ることができなかった。この理由としては定かではないが、CMCやPVA/PGLE ML10は水溶性であるため、コア粒子前駆体の固体化中にエマルション形状を維持するための被覆層としては脆弱である可能性が高く、そのためコア粒子前駆体の固体化中にエマルションが崩壊したと考えられる。
【0195】
比較例2から比較例6において、精製を行うと、比較例2から比較例6において試料を回収することが可能であった。分散安定性を評価すると、比較例2から比較例6の全てで、目視で凝集物が確認された。中でも、比較例2と比較例5において特に粗大な凝集物が確認された。
機能性材料の触媒活性を評価した結果、比較例2と比較例5においては触媒活性が低かった。比較例3、比較例4、比較例6においては、比較例2と比較例5に対して触媒活性が高かったが、実施例1から実施例11と比較すると触媒活性が低いことが示唆された。
実施例2において、磁気応答性を評価した結果、12時間以内に永久磁石により試料が引き寄せられ、分離をすることができ、磁気応答性の評価は「〇」であった。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明の触媒粒子によれば、高比表面積のセルロースナノファイバーに触媒特性を有する機能性材料が担持されるために、高い触媒活性を有すると共に、機能性材料の脱離を抑制して安定的に繰り返し使用可能であり、ろ過や遠心分離による洗浄や分離が容易な触媒粒子を提供できる。そのため、触媒粒子は、金属触媒、有機分子触媒、酵素触媒等として、燃料電池用の触媒、自動車の排ガスの無害化、壁紙用のVOC等の無害化、光触媒による殺菌処理や汚れ防止等に利用することができる。
また、磁性材料を内包することにより、磁石により回収可能な触媒粒子を提供できる。さらに、触媒粒子の乾燥粉体や触媒粒子を含有する多孔体や繊維シートを提供できる。
セルロースナノファイバーは生分解性が高いため、コア粒子も生分解性ポリマーを含む材料で構成することにより、環境への負荷を低減した触媒粒子を提供でき、環境中でも使用しやすい。
【符号の説明】
【0197】
1 触媒粒子
2 コア粒子
3 セルロースナノファイバー
3A 未担持のセルロースナノファイバー
3B 機能性材料が担持されたセルロースナノファイバー
30 セルロースナノファイバーからなる被覆層
4 機能性材料
6 液滴
7 親水性溶媒
10 セルロースナノファイバー被覆粒子(セルロースナノファイバー3A被覆粒子)
11 セルロースナノファイバーの分散液
11A 未担持のセルロースナノファイバーの分散液
11B 機能性材料が担持されたセルロースナノファイバーの分散液
12 セルロースナノファイバー被覆粒子(セルロースナノファイバー3A被覆粒子)の分散液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7