(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】三次元造形装置、および、距離に関する値の測定方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20231219BHJP
B22F 10/18 20210101ALI20231219BHJP
B22F 10/85 20210101ALI20231219BHJP
B22F 12/53 20210101ALI20231219BHJP
B22F 12/90 20210101ALI20231219BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20231219BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20231219BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20231219BHJP
B29C 64/25 20170101ALI20231219BHJP
B29C 64/35 20170101ALI20231219BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231219BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231219BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20231219BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20231219BHJP
【FI】
B29C64/393
B22F10/18
B22F10/85
B22F12/53
B22F12/90
B28B1/30
B29C64/118
B29C64/209
B29C64/25
B29C64/35
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2019116843
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-05-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯脇 康平
(72)【発明者】
【氏名】合津 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 功一
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500251(JP,A)
【文献】特開2017-087578(JP,A)
【文献】特開2017-217792(JP,A)
【文献】国際公開第2018/206497(WO,A1)
【文献】特開2018-075825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0339455(US,A1)
【文献】特表2003-502184(JP,A)
【文献】特開2017-087562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B28B 1/30
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元造形装置であって、
先端面に形成された吐出口から造形材料を吐出するノズルと、
前記造形材料が堆積される堆積面を有するステージと、
前記ノズルと対向可能な位置に配置された距離測定機構と、
前記ノズルの先端面を清掃する清掃機構と、
前記清掃機構によって、前記ノズルの先端面を清掃した後、前記距離測定機構によって、前記ノズルの先端面と前記堆積面との間の対向距離に関する値を測定する制御部と、を備え、
前記距離測定機構は、前記ノズルと対向可能な位置に配置された測定子を備え、
前記測定子を移動させる測定子移動機構と、
造形空間を有するチャンバーと、
前記チャンバーの隔壁に形成された開口部の周縁部と、前記ステージとの間に配置され、前記ステージの、前記堆積面と交差する方向に沿った移動に応じて、前記堆積面と交差する方向に沿って伸縮可能であり、前記造形空間から分離された分離空間を形成する筒状の耐熱部材と、を更に備え、
前記距離測定機構は、前記測定子の移動量を検出する測定子移動量検出部を更に備え、
前記制御部は、前記測定子移動機構を制御することによって、前記測定子を前記ノズルの先端面に接触させて、前記測定子の移動量から、前記対向距離に関する値を測定し、
前記距離測定機構のうち、
前記測定子の少なくとも先端部は、前記造形空間内に配置され、
前記測定子移動量検出部は、前記分離空間内に配置される、三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記測定子の前記ノズル側の端部は、前記堆積面と交差する方向において、前記堆積面と前記ノズルの先端面との間に配置される、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の三次元造形装置であって、
前記清掃機構は、前記ノズルの先端面と接触することによって前記ノズルの先端面を清掃可能な接触部を備え、
前記接触部のビッカース硬さは、前記ノズルの先端面のビッカース硬さより低い、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記清掃機構は、
前記堆積面と交差する方向において前記ノズルに向かって開口した箱状の廃棄材料収容部と、
前記廃棄材料収容部内に配置され、前記ノズルの先端面と接触することによって前記ノズルの先端面を清掃可能な清掃部材と、を備える、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記清掃機構を移動させる移動機構を有し、
前記制御部は、前記移動機構を制御して、前記ノズルの先端面を清掃する、三次元造形装置。
【請求項6】
ノズルとステージとを備える三次元造形装置において実行される、距離に関する値の測定方法であって、
前記ノズルの先端面に形成された吐出口から造形材料を吐出する前記ノズルの前記先端面を、清掃機構によって清掃した後、
前記ノズルと対向可能な位置に配置された距離測定機構によって、前記先端面と前記吐出口から吐出された前記造形材料が堆積する前記ステージ上の堆積面との間の対向距離に関する値を測定し、
前記距離測定機構は、前記ノズルと対向可能な位置に配置された測定子と、前記測定子の移動量を検出する測定子移動量検出部と、を備え、
前記三次元造形装置は、
造形空間を有するチャンバーの隔壁に形成された開口部の周縁部と、前記ステージとの間に配置され、前記ステージの、前記堆積面と交差する方向に沿った移動に応じて、前記堆積面と交差する方向に沿って伸縮可能であり、前記造形空間から分離された分離空間を形成する筒状の耐熱部材を備え、
前記測定子の少なくとも先端部は、前記造形空間内に配置され、
前記測定子移動量検出部は、前記分離空間内に配置され、
前記測定子を移動させる測定子移動機構によって前記測定子を前記先端面に接触させて、前記測定子移動量検出部を用いて、前記測定子の移動量から、前記対向距離に関する値を測定する、距離に関する値の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置、および、距離に関する値の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形装置に関し、例えば、特許文献1に記載された三次元造形装置は、造形材料が堆積される載置面と、載置面に対向する位置に配置され、造形材料を吐出するノズルと、造形利用距離検出手段を有する。この造形利用距離検出手段は、載置面とノズルの先端面との間の距離を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載した装置では、ノズルの先端面に異物が付着した場合、載置面とノズルの先端面との間の正確な距離を検出することが難しい。検出した距離が正確でない場合、三次元造形装置の造形精度に影響が及ぶ可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、先端面に形成された吐出口から造形材料を吐出するノズルと、前記造形材料が堆積される堆積面を有するステージと、前記ノズルと対向可能な位置に配置された距離測定機構と、前記ノズルの先端面を清掃する清掃機構と、前記清掃機構によって前記ノズルの先端面を清掃した後、前記距離測定機構によって前記ノズルと前記ステージとの間の対向距離に関する値を測定する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態における三次元造形装置の外観斜視図である。
【
図2】三次元造形装置の内部構成を示す概略断面図である。
【
図4】第1耐熱部材の外観構造を示す斜視図である。
【
図5】フラットスクリューの下面側の構成を示す概略斜視図である。
【
図6】スクリュー対面部の上面側の構成を示す概略平面図である。
【
図7】第1実施形態における三次元造形物の製造方法の工程図である。
【
図8】ノズルの変位量の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100の外観斜視図である。
図2は、三次元造形装置100の内部構成を示す概略断面図である。これらの図には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X方向およびY方向は、水平方向に沿った方向であり、Z方向は、鉛直上向きの方向である。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。
【0008】
図1および
図2に示すように、三次元造形装置100は、チャンバー10と、加熱部20と、ステージ30と、ノズル260を有する吐出部200と、第1駆動部50と、第2駆動部60と、第1耐熱部材70と、第2耐熱部材16と、温度センサー80と、冷却機構90と、冷却制御部110と、造形制御部120と、清掃機構130と、距離測定機構140と、を備える。なお、冷却制御部110と造形制御部120とは一体的に構成されてもよい。
【0009】
チャンバー10は、三次元造形物が造形される造形空間11を内部に有する。チャンバー10は、造形空間11を囲う隔壁12を備える。隔壁12は、例えば、ステンレス鋼等の金属によって構成された内壁と外壁との間に、ロックウール等の断熱材を配することにより構成される。隔壁12は、チャンバー10内の造形空間11を断熱する。
【0010】
チャンバー10の側面を構成する隔壁12の一部には、開閉扉15が設けられている。開閉扉15は、例えば、二重ガラスを有しており、造形空間11において造形中の三次元造形物を外部から視認可能に構成されている。造形空間11において造形された三次元造形物は、開閉扉15を開くことにより外部に取り出すことができる。チャンバー10の下面を構成する隔壁12には、第1開口部13が形成されている。チャンバー10の第1開口部13に対向する隔壁12には、第2開口部14が形成されている。
【0011】
加熱部20は、吸気管21および排気管22を通じてチャンバー10に接続される。加熱部20は、吸気管21および排気管22を通じて造形空間11内の空気を循環させつつ加熱することにより、造形空間11の温度を所定の温度に調整する。本実施形態では、加熱部20は、造形空間11内の温度が、120~150℃の温度になるように調整を行う。この温度は、造形材料のガラス転移点よりも高い温度であることが好ましい。
【0012】
ステージ30は、チャンバー10内に配置されている。ステージ30は、造形空間11に露出する堆積面31を有する。ステージ30は、堆積面31の傾きや高さを調整可能な機構を備えてもよい。また、ステージ30は、堆積面31を加熱するためのヒーターを備えてもよい。
【0013】
第1駆動部50は、ノズル260とステージ30との相対位置を、第1方向に沿って変化させる。第1方向とは、本実施形態において鉛直方向である。第1方向は、例えば、鉛直方向に対して±10度の範囲で傾斜していてもよい。本実施形態では、第1駆動部50は、ステージ30を、第1方向に沿って移動させる。第1駆動部50とステージ30とは、第1駆動部50の一部を構成する支柱51によって接続されている。本実施形態において、第1駆動部50は、軸部材としてのボールねじと、ボールねじを駆動するモーターとを備えたリニアアクチュエーターを有する。なお、第1駆動部50は、ノズル260を第1方向に沿って移動させる機構であってもよいし、ノズル260とステージ30との両方を第1方向に沿って移動させる機構であってもよい。
【0014】
図3は、吐出部200の構成を示す概略断面図である。吐出部200は、ノズル260を有する。吐出部200は、ノズル260の先端面280に形成された吐出口290から造形材料を吐出する。吐出部200は、加熱部20によって加熱された造形空間11において、ノズル260とステージ30との相対位置を、第1方向と交わる第2方向に沿って変化させながら、ステージ30の堆積面31に向かって、ノズル260から造形材料を吐出することにより、三次元造形物を造形する。第2方向とは、本実施形態において水平方向である。吐出部200のことをヘッドともいう。吐出部200の具体的な構成については後述する。本実施形態では、加熱されたチャンバー10内で吐出部200が造形材料を吐出するため、堆積面31に対する造形材料の密着性を高めることができ、また、造形材料が急激に冷却されることによって反りが生じることを抑制できる。なお、第2方向は第1方向に対して、例えば、±10度の範囲で傾斜していてもよい。
【0015】
第2駆動部60は、ノズル260とステージ30との相対位置を第2方向に沿って変化させる。本実施形態では、第2駆動部60は、吐出部200を水平方向に移動させる。第2駆動部60は、造形空間11から分離された位置に配置されている。本実施形態では、第2駆動部60は、チャンバー10の上面に備えられている。本実施形態において、第2駆動部60は、吐出部200をX方向に沿って移動させる第1リニアアクチュエーター61と、吐出部200をY方向に沿って移動させる第2リニアアクチュエーター62とを備えている。第1リニアアクチュエーター61と第2リニアアクチュエーター62とは、それぞれ、ボールねじと、ボールねじを駆動するモーターとを備える。第2リニアアクチュエーター62は、チャンバー10の上面に開口する第2開口部14をX方向に挟むようにY方向に沿って配置された1組のレールに沿って駆動する。それらのレールには長尺状の第1リニアアクチュエーター61がX方向に沿って掛け渡されており、第1リニアアクチュエーター61に吐出部200が取り付けられている。なお、第2駆動部60は、ステージ30をX方向に沿って移動させるリニアアクチュエーターと、ステージ30をY方向に沿って移動させるリニアアクチュエーターと、を備え、ステージ30を第2方向に沿って移動させてもよい。また、第2駆動部60は、ノズル260とステージ30との両方を第2方向に沿って移動させてもよい。
【0016】
チャンバー10の下面には第1開口部13が形成されている。第1開口部13の周縁部とステージ30との間には、第1耐熱部材70が配置されている。
【0017】
図4は、第1耐熱部材70の外観構造を示す斜視図である。第1耐熱部材70は、ステージ30が載置される上壁72と、上壁72の下方に位置し、Z方向に沿って伸縮可能な蛇腹部73と、を有している。蛇腹部73は、ステージ30のZ方向に沿った移動に応じて伸縮する。蛇腹部73は、筒状に構成されており、上壁72とともに造形空間11から分離された分離空間71を形成する。分離空間71には、ステージ30を駆動する第1駆動部50の一部が配置されている。本実施形態では、分離空間71には、第1駆動部50の先端部の一部を構成する支柱51が配置される。なお、分離空間71には、第1駆動部50の全てが配置されてもよい。第1耐熱部材70は、造形空間11内の温度に耐え得る耐熱性能を有している。本実施形態では、第1耐熱部材70は、ガラス繊維の織布にシリコーンコーティングを施すことにより構成されている。なお、第1耐熱部材70の構成はこれに限らず、例えば、シリコーンに代えてフッ素樹脂をガラス繊維の織布にコーティングすることによって構成されてもよい。
【0018】
図2に示すように、チャンバー10の上部には第2開口部14が形成されている。第2開口部14には、吐出部200が配置されている。第2開口部14の周縁部と吐出部200との間には、第2耐熱部材16が配置されている。
【0019】
第2耐熱部材16は、吐出部200の水平方向への移動に応じて水平方向に伸縮する構造を備える。第2耐熱部材16は、X方向に伸縮する第1カバー17とY方向に伸縮する第2カバー18とから構成される。本実施形態において、第1カバー17および第2カバー18は、それぞれ、第1耐熱部材70と同様に、造形空間11内の温度に耐え得る耐熱性能を有しており、蛇腹状の伸縮構造を有している。
【0020】
図2に示すように、温度センサー80は、第1耐熱部材70内の分離空間71に配置されている。温度センサー80は、分離空間71の温度を測定するセンサーである。本実施形態において、温度センサー80は、支柱51に取り付けられている。
【0021】
冷却機構90は、分離空間71の冷却を行う。本実施形態において、冷却機構90は、冷却ファンによって構成されている。冷却機構90は、分離空間71の下部に配置されており、分離空間71に向かって送風を行う。第1耐熱部材70の下方は開放されており、冷却機構90によって分離空間71中に導入された空気は、分離空間71の下方から外部に排出される。なお、冷却機構90は、分離空間71内の空気を吸引して外部に排出する機構であってもよい。また、冷却機構90は、冷却ファンに限らず、例えば、冷媒が流れる配管を分離空間71内に配置することによって構成してもよい。
【0022】
冷却制御部110は、温度センサー80によって測定された分離空間71の温度に従って冷却機構90を制御する。より具体的には、冷却制御部110は、温度センサー80によって測定された分離空間71の温度が、目標温度となるように、冷却機構90をフィードバック制御して分離空間71内の温度を調整する。本実施形態では、冷却制御部110は、目標温度として、50~60℃の温度を設定する。目標温度は、第1駆動部50の耐熱温度以下の温度であり、第1駆動部50によるステージ30の鉛直方向への熱ひずみによる移動誤差が、予め定めた範囲に収まる温度として設定されている。冷却制御部110は、回路によって構成されていてもよいし、コンピューターによって構成されていてもよい。
【0023】
造形制御部120は、記録媒体や外部のコンピューター等から取得した三次元造形データに従って、吐出部200と第1駆動部50と第2駆動部60とを制御することによって、ステージ30の堆積面31上の指定位置に造形材料を吐出させ、三次元造形物を造形する。造形制御部120は、コンピューターとして構成されており、1以上のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備える。プロセッサーは、メモリーに記憶された所定のプログラムを実行することによって、三次元造形物を造形するための造形処理を実現する。なお、造形制御部120の機能の一部または全部を、回路により実現するようにしてもよい。造形制御部120のことを、単に制御部ともいう。
【0024】
図2に示すように、清掃機構130は、上面が開口した箱状の廃棄材料収容部131と、廃棄材料収容部131内に配置される清掃部材132と、を有する。廃棄材料収容部131と清掃部材132とは、造形空間11を形成する隔壁12の内側に配置されている。清掃部材132は、ノズル260の先端面280と接触可能な接触部133を有する。本実施形態では、接触部133は、ブラシ状の部材である。接触部133は、ブラシ状に限らず、ヘラ状の部材であってもよい。
【0025】
本実施形態では、造形制御部120は、第2駆動部60を制御することによって、ノズル260の先端面280を清掃する。具体的には、造形制御部120は、第2駆動部60を制御して、吐出部200に備えられたノズル260を清掃部材132上に移動させ、清掃部材132の接触部133にノズル260の先端面280をこすり付けることで、ノズル260の先端面280に付着した造形材料をノズル260の先端面280から除去し、廃棄材料収容部131により回収する。
【0026】
清掃部材132の接触部133のビッカース硬さは、ノズル260の先端面280のビッカース硬さよりも低い。本実施形態においては、清掃部材132の接触部133はSUSで構成され、ノズル260は合金工具鋼で構成される。これに限らず、例えば、ノズル260は真鍮で構成されてもよい。清掃部材132の接触部133のビッカース硬さが、ノズル260の先端面280のビッカース硬さよりも低いことによって、清掃部材132の接触部133とノズル260の先端面280とが接触する際に、ノズル260の先端面280が破損することを抑制できる。
【0027】
図2に示すように、距離測定機構140は、測定子150と、測定子移動量検出部142と、を備える。
【0028】
測定子移動量検出部142は、分離空間71内に備えられる。本実施形態において、測定子移動量検出部142は、軸状の接触式変位センサーであり、先端部の押し込み量を差動トランスによって検出する。測定子移動量検出部142は、一端が支柱51に固定された第2固定具53を介して、先端部を+Z方向に向けて支柱51に固定される。
【0029】
測定子150は、軸状の形状を有する。測定子150は、第1耐熱部材70の上壁72に設けられた孔から、測定子150の先端部を、造形空間11に向かって+Z方向に突出させている。測定子150の先端部は、後述するノズル260の先端面280と接触する部分を含む部分である。測定子150の先端部のノズル260側の端部は、Z方向において、堆積面31とノズル260の先端面280との間に配置される。測定子150は、上壁72の下面に一端が固定される伸縮部151を介して、上壁72に固定される。伸縮部151はバネによって構成され、Z方向に沿って伸縮できる。伸縮部151は、測定子150を上方に向けて付勢する。
【0030】
測定子150は、鍔部152を備える。鍔部152の外径は、測定子150が挿通される上壁72に設けられた孔の直径よりも大きい。本実施形態では、伸縮部151が伸びていない状態において、鍔部152の上面は、-Z方向からOリングを挟んで第1耐熱部材70の上部に接触する。これによって、上壁72に設けられた孔を通じて、造形空間11から分離空間71に、加熱された空気が漏れることを抑制できる。
【0031】
測定子150は、支柱51に第1固定具52を介して備えられた略円筒状のガイド部153に対して、摺動可能に挿入されている。ガイド部153によって、測定子150の第1方向への移動が許容され、第2方向への移動が規制される。
【0032】
本実施形態における測定子150および測定子移動量検出部142の動作を説明する。測定子150の上端がノズル260の先端面280と接触し、測定子150の上端が+Z方向から相対的に押されることによって、測定子150が-Z方向に移動する。-Z方向に移動した測定子150によって測定子移動量検出部142の先端部が押し込まれ、その押し込み量を測定子移動量検出部142が検出する。測定子移動量検出部142によって電気信号に変換された押し込み量を、造形制御部120が読み取る。
【0033】
測定子150のビッカース硬さは、ノズル260のビッカース硬さよりも低い。より具体的には、測定子150のノズル260の先端面280と接触する部分のビッカース硬さは、ノズル260の先端面280のビッカース硬さよりも低い。本実施形態においては、測定子150がSUSで構成され、ノズル260が合金工具鋼で構成される。これに限らず、例えば、ノズル260が真鍮で構成されてもよい。測定子150のビッカース硬さが、ノズル260のビッカース硬さよりも低いことによって、測定子150とノズル260とが接触する際に、ノズル260が破損することを抑制できる。
【0034】
測定子150は、測定子150を移動させる測定子移動機構によって移動する。本実施形態では、第1駆動部50が測定子移動機構として機能する。すなわち、第1駆動部50は、ステージ30を第1方向に沿って移動させることによって、ステージ30に固定された測定子150を第1方向に沿って移動させる。造形制御部120は、第1駆動部50および第2駆動部60を制御することによって、ノズル260の先端面280と堆積面31との間の対向距離に関する値として、対向距離を測定する。対向距離とは、ノズル260の先端面280と堆積面31との間の距離である。対向距離の測定方法の詳細については、後述する。
【0035】
図3に示すように、吐出部200は、造形材料に転化される前の材料MRの供給源である材料供給部220と、材料MRを溶融させて造形材料とする材料溶融部230と、造形材料を堆積面31に向けて吐出するノズル260と、を備える。
【0036】
材料供給部220は、材料溶融部230に、造形材料を生成するための材料MRを供給する。材料供給部220は、例えば、材料MRを収容するホッパーによって構成される。材料供給部220は、連通路222を介して、材料溶融部230に接続されている。材料MRは、例えば、ペレットや粉末等の形態で材料供給部220に投入される。材料MRの詳細については後述する。
【0037】
材料溶融部230は、材料供給部220から供給された材料MRを可塑化して流動性を発現させたペースト状の造形材料を生成し、ノズル260へと導く。材料溶融部230は、スクリューケース231と、駆動モーター232と、フラットスクリュー240と、スクリュー対面部250と、を有する。フラットスクリュー240は、「スクロール」とも呼ばれる。スクリュー対面部250は、「バレル」とも呼ばれる。なお、材料溶融部230は、造形材料を構成する全ての種類の物質を溶融しなくてもよい。材料溶融部230は、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質を溶融させることによって、全体として流動性を有する状態に造形材料を転化すればよい。
【0038】
フラットスクリュー240は、その中心軸RXに沿った高さが直径よりも小さい略円柱状を有する。本実施形態において、フラットスクリュー240は、その中心軸RXがZ方向に平行になるように配置される。
【0039】
フラットスクリュー240は、スクリューケース231内に収納されている。フラットスクリュー240の上面側は駆動モーター232に連結されており、フラットスクリュー240は、駆動モーター232が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース231内において中心軸RXを中心に回転する。駆動モーター232は、造形制御部120の制御下において駆動される。
【0040】
フラットスクリュー240の下面には、溝部242が形成されている。上述した材料供給部220の連通路222は、フラットスクリュー240の側面から溝部242に連通する。
【0041】
フラットスクリュー240の下面は、スクリュー対面部250の上面に面している。フラットスクリュー240の下面の溝部242と、スクリュー対面部250の上面との間には空間が形成される。この空間には、材料供給部220から材料MRが供給される。フラットスクリュー240および溝部242の具体的な構成については後述する。
【0042】
スクリュー対面部250には、材料MRを加熱するためのヒーター258が埋め込まれている。フラットスクリュー240の溝部242に供給された材料MRは、溝部242において溶融されながら、フラットスクリュー240の回転によって溝部242に沿って流動し、造形材料としてフラットスクリュー240の中央部246へと導かれる。中央部246に流入したペースト状の造形材料は、スクリュー対面部250の中心に設けられた連通孔256を介してノズル260に供給される。
【0043】
ノズル260は、スクリュー対面部250の連通孔256に接続されている。ノズル260は、材料溶融部230において生成された造形材料を、先端面280に形成された吐出口290から、堆積面31に向けて吐出する。
【0044】
図5は、フラットスクリュー240の下面側の構成を示す概略斜視図である。
図5には、フラットスクリュー240の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。スクリュー対面部250に対向するフラットスクリュー240の下面には、溝部242が設けられている。以下、フラットスクリュー240の下面のことを、「溝形成面248」と呼ぶ。
【0045】
フラットスクリュー240の溝形成面248の中央部246は、溝部242の一端が接続されている凹部として構成されている。中央部246は、スクリュー対面部250の連通孔256に対向する。第1実施形態では、中央部246は、中心軸RXと交差する。
【0046】
フラットスクリュー240の溝部242は、いわゆるスクロール溝を構成する。溝部242は、中央部246から、フラットスクリュー240の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。溝部242は、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面248には、溝部242の側壁部を構成し、各溝部242に沿って延びている凸条部243が設けられている。
【0047】
溝部242は、フラットスクリュー240の側面に形成された材料流入口244まで連続している。この材料流入口244は、材料供給部220の連通路222を介して供給された材料MRを受け入れる部分である。
【0048】
図5には、3つの溝部242と、3つの凸条部243と、を有するフラットスクリュー240の例が示されている。フラットスクリュー240に設けられる溝部242や凸条部243の数は、3つには限定されない。フラットスクリュー240には、1つの溝部242のみが設けられていてもよいし、2以上の複数の溝部242が設けられていてもよい。また、溝部242の数に合わせて任意の数の凸条部243が設けられてもよい。
【0049】
図5には、材料流入口244が3箇所に形成されているフラットスクリュー240の例が図示されている。フラットスクリュー240に設けられる材料流入口244の数は、3箇所に限定されない。フラットスクリュー240には、材料流入口244が1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0050】
図6は、スクリュー対面部250の上面側の構成を示す概略平面図である。スクリュー対面部250の上面は、上述したように、フラットスクリュー240の溝形成面248に対向する。以下、スクリュー対面部250の上面を、「スクリュー対向面252」と呼ぶ。スクリュー対向面252の中心には、造形材料をノズル260に供給するための連通孔256が形成されている。
【0051】
スクリュー対向面252には、連通孔256に接続され、連通孔256から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝254が形成されている。複数の案内溝254は、フラットスクリュー240の中央部246に流入した造形材料を連通孔256に導く機能を有する。
【0052】
フラットスクリュー240が回転すると、材料流入口244から供給された材料MRが、溝部242に誘導されて、溝部242内において加熱されながら中央部246に向かって移動する。材料MRは、中央部246に近づくほど、溶融し、流動性が高まっていき、造形材料へと転化する。中央部246に集められた造形材料は、中央部246で生じる内圧により連通孔256からノズル260に流出する。
【0053】
図7は、第1実施形態における三次元造形物の製造方法の工程図である。本実施形態において、造形制御部120は、三次元造形物を作成するための造形用プログラムを実行して、三次元造形物の製造を行う。まず造形制御部120は、ステップS100にて、三次元造形物の造形に用いる、造形用データを取得する。この造形用データは、例えば、三次元造形物の形状を表すSTL形式やAMF形式のデータがスライサーによって変換された、ツールパスデータである。造形用データには、ヘッド温度と、ステージ温度と、チャンバー内温度と、を含んでもよい。他にも、例えば、ユーザーが個別にこれらの温度を設定してもよい。
【0054】
造形制御部120は、ステップS102にて、加熱部20を制御して、チャンバー10内を予め定めた温度まで加熱する。このとき、造形制御部120は、ヒーター258を制御して吐出部200を予め定めた温度まで加熱してもよい。また、ステージ30にヒーターが備えられている場合、造形制御部120は、ステージ30に備えられているヒーターを制御して、ステージ30を加熱してもよい。
【0055】
造形制御部120は、ステップS104にて、第2駆動部60を制御して、清掃部材132とノズル260の先端面280とを接触させて、ノズル260の先端面280を清掃する。
【0056】
造形制御部120は、ステップS106にて、第1駆動部50および第2駆動部60を制御して、ノズル260の変位量Aを測定する。ノズル260の変位量Aとは、予め定められたノズル260と堆積面31との間のZ方向の距離L0と、造形制御部120が距離測定機構140を制御することによって測定する対向距離L1との差である。
【0057】
図8は、上記ステップS106におけるノズル260の変位量Aの測定方法を示す説明図である。まず、造形制御部120は、第2駆動部60を制御して、ノズル260の先端面280と測定子150の上端とが対向する位置へ、吐出部200を第2方向に沿って移動させる。その後、造形制御部120は、第1駆動部50を制御して、距離測定機構140を第1方向の基準位置まで移動させる。第1方向の基準位置とは、例えば、造形制御部120によって、ステージ30のZ方向の座標が0と認識されている位置である。その後、造形制御部120は、第1駆動部50を制御して、ノズル260の先端面280によって測定子150が押されるまで、測定子150をノズル260に向けて移動させる。造形制御部120は、第1方向の基準位置からノズル260の先端面280と測定子150とが接触する位置までの、測定子150の移動距離を距離L3として算出する。具体的には、測定子移動量検出部142によって検出された測定子150の-Z方向の移動量をステージ30の移動量から差し引いた値が、距離L3として算出される。
【0058】
造形制御部120は、距離L3に、堆積面31と測定子150の上端面との間のZ方向の距離L4を加えた値を対向距離L1として算出する。距離L4は、例えば、三次元造形装置100の工場出荷時に予め測定され、メモリーに記録されている。
【0059】
造形制御部120は、対向距離L1から、予め定められたノズル260の先端面280と堆積面31との間の距離L0を差し引いた値を、ノズル260の変位量Aとして、メモリーに記録する。距離L0は、三次元造形装置100の設計時に予め設定された値である。
【0060】
造形制御部120は、ステップS108にて、Z軸オフセット量に変位量Aを指定する。造形制御部120は、ステップS110にて、Z軸オフセットを行う。Z軸オフセットとは、造形制御部120が、ステップS108で指定された変位量Aに基づいて、ステージ30のZ方向の基準位置を変更することを指す。本実施形態では、造形制御部120は、変位量Aに基づいて、第1駆動部50を制御することによってステージ30を移動させ、移動した先のステージ30の位置を、新たなZ方向の基準位置としてメモリーに記録する。
【0061】
造形制御部120は、ステップS112にて、造形材料をノズル260から堆積面31に向けて吐出させながら、駆動モーター232と、第1駆動部50と、第2駆動部60と、を制御することによって、三次元造形物を造形する。
【0062】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置100によれば、造形制御部120が、清掃機構130によってノズル260の先端面280を清掃した後に、ノズル260の先端面280と堆積面31との間の対向距離を測定する。そのため、正確な対向距離を測定することができる。
【0063】
また、本実施形態では、造形制御部120が、第1駆動部50および第2駆動部60を制御することによって、測定子150をノズル260の先端面280に接触させて、対向距離を測定する。そのため、簡易な構成によって、正確な対向距離を測定することができる。
【0064】
また、本実施形態では、測定子150のノズル260側の端部は、Z方向において、堆積面31とノズル260の先端面280との間に配置される。そのため、対向距離を測定する際、ノズル260がステージ30に接触することを抑制できる。これによって、正確な対向距離を測定することができる。
【0065】
また、本実施形態では、測定子150の先端部が造形空間11内に配置され、筒状の第1耐熱部材70によって造形空間11から分離された分離空間71内に、測定子移動量検出部142が配置される。これによって、測定子移動量検出部142が熱的影響を受けることを抑制できる。そのため、正確な対向距離を測定することができる。
【0066】
また、本実施形態では、清掃部材132の接触部133のビッカース硬さは、ノズル260の先端面280ビッカース硬さよりも低い。そのため、清掃部材132の接触部133とノズル260の先端面280とが接触する際に、ノズル260の先端面280が破損することを抑制できる。
【0067】
ここで、上述した三次元造形装置100において用いられる三次元造形物の材料について説明する。三次元造形装置100では、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として三次元造形物を造形することができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0068】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、材料溶融部230において、当該材料が可塑化することによって、造形材料が生成される。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。
【0069】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック。
【0070】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、材料溶融部230において、フラットスクリュー240の回転とヒーター258の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。熱可塑性を有する材料の溶融によって生成された造形材料は、ノズル260から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0071】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル260から射出されることが望ましい。例えば、ABS樹脂は、ガラス転移点が約120℃であり、ノズル260からの吐出時には約200℃であることが望ましい。このように高温の状態で造形材料を吐出するために、ノズル260の周囲にはヒーターが設けられてもよい。
【0072】
三次元造形装置100では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、材料MRとして材料溶融部230に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金。
<前記合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
【0073】
三次元造形装置100においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、堆積面31に吐出された造形材料は焼結によって硬化されてもよい。
【0074】
材料供給部220に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、材料溶融部230において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0075】
材料供給部220に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等。
【0076】
その他に、材料供給部220に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂あるいはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)あるいはその他の熱可塑性樹脂。
【0077】
B.他の実施形態:
(B-1)上記実施形態では、三次元造形装置100は、冷却機構90、温度センサー80および冷却制御部110を備えている。これに対して、第1耐熱部材70によって十分な断熱効果が得られる場合、三次元造形装置100は、冷却機構90、温度センサー80および冷却制御部110を備えていなくてもよい。また、三次元造形装置100は、温度センサー80および冷却制御部110を用いることなく、冷却機構90のみによって分離空間71を冷却してもよい。
【0078】
(B-2)上記実施形態では、第1駆動部50は分離空間71内に配置されている。これに対して、第1駆動部50は分離空間71内に配置されていなくてもよい。また、三次元造形装置100は、分離空間71を有していなくてもよい。
【0079】
(B-3)上記実施形態では、加熱部20は、吸気管21および排気管22を通じて空気を循環させつつ加熱を行うものとしている。これに対して、加熱部20は、チャンバー10の隔壁12に取り付けられたヒーターとして構成されてもよい。
【0080】
(B-4)上記実施形態では、造形制御部120は、第2駆動部60を制御することによってノズル260を移動させて、ノズル260の先端面280を清掃している。これに対して、例えば、清掃機構130を移動させる機構を設け、清掃機構130を移動させる機構を造形制御部120が制御することによって、ノズル260の先端面280を清掃してもよい。
【0081】
(B-5)上記実施形態では、第1駆動部50が、測定子移動機構として機能している。これに対して、測定子移動機構は、第1駆動部50と独立して設けられてもよい。すなわち、測定子移動機構は、測定子150をステージ30と独立して移動させる機構であってもよい。例えば、測定子150を第1方向に沿って移動させるアクチュエーターを、第1駆動部50と独立して設け、そのアクチュエーターおよび第2駆動部60を造形制御部120が制御することによって、ノズル260の先端面280と測定子150とを接触させて、対向距離を測定してもよい。また、測定子150を第2方向に沿って移動させるアクチュエーターを、第2駆動部60と独立して設けてもよい。
【0082】
(B-6)上記実施形態では、距離測定機構140は測定子150と、測定子移動量検出部142を備え、造形制御部120は、測定子150とノズル260の先端面280とを接触させることによって対向距離を測定する。これに対して、距離測定機構140は、測定子150と、測定子移動量検出部142と、を備えていなくてもよい。例えば、造形制御部120は、レーザー式の距離測定器を用いることによって、対向距離を測定してもよい。この場合、例えば、レーザーによって距離測定器とノズル260の先端面280との間の距離を測定し、測定した距離に基づいて、対向距離を測定してもよい。
【0083】
(B-7)上記実施形態では、測定子移動量検出部142は、接触式変位センサーである。これに対して、測定子移動量検出部142は、レーザー式の距離測定器であってもよい。この場合、例えば、測定子移動量検出部142は、測定子150と測定子移動量検出部142との間の距離の変化によって生じる、レーザー反射光の結像位置の変化から、測定子150の移動量を検出してもよい。
【0084】
(B-8)上記実施形態では、測定子150の先端部のノズル側260側の端部は、第1方向において、堆積面31とノズル260の先端面280との間に配置される。これに対して、例えば、測定子150の先端部のノズル260側の端部は、第1方向において、上壁72と堆積面31との間に配置されてもよい。換言すれば、堆積面31が、第1方向において、測定子150の先端部の第1ノズル側の端部とノズル260の先端面280との間に配置されてもよい。
【0085】
(B-9)上記実施形態では、測定子150とステージ30とは独立した構成である。これに対して、測定子150はステージ30の一部であってもよい。例えば、造形制御部120は、ノズル260と測定子であるステージ30の一部とを接触させて、対向距離を測定してもよい。
【0086】
(B-10)上記実施形態では、第1耐熱部材70は、Z方向に伸縮可能なテレスコピック構造であってもよい。また、上記実施形態では、第2耐熱部材16は、第2方向に伸縮可能なテレスコピック構造であってもよい。なお、テレスコピック構造のことを、シャッター構造と呼ぶことも可能である。
【0087】
(B-11)上記実施形態では、造形制御部120は、加熱部20を制御してチャンバー10内を加熱した後、清掃機構130によってノズル260の先端面280を清掃し、距離測定機構140によってノズル260の先端面280と堆積面31との間の対向距離を測定している。これに対して、チャンバー10内を加熱することなく、ノズル260の先端面280を清掃し、対向距離を測定してもよい。
【0088】
(B-12)上記実施形態では、清掃部材132の接触部133のビッカース硬さは、ノズル260の先端面280のビッカース硬さより低い。これに対して、清掃部材132の接触部133のビッカース硬さは、ノズル260の先端面280のビッカース硬さより高くてもよい。
【0089】
(B-13)上記実施形態では、ノズル260の先端面280と堆積面31との間の対向距離に関する値として、ノズル260の先端面280と堆積面31との間の対向距離L1を算出したが、ノズル260の先端面280と堆積面31との間の対向距離に関する値として、前述した変位量Aを直接的に算出してもよい。具体的には、造形制御部120は、第1駆動部50を制御して、測定子150を上方に向けて予め定められた距離だけ移動させたときの測定子150の理想的な移動量から、実測された測定子150の移動量を差し引いた値を変位量Aとして算出してもよい。
【0090】
C.他の形態:
本開示は、上述の各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態によって実現することができる。例えば、本開示は以下の形態として実現可能である。以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する上記の各実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中において必須であると説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0091】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、先端面に形成された吐出口から造形材料を吐出するノズルと、前記造形材料が堆積される堆積面を有するステージと、前記ノズルと対向可能な位置に配置された距離測定機構と、前記ノズルの先端面を清掃する清掃機構と、前記清掃機構によって前記ノズルの先端面を清掃した後、前記距離測定機構によって前記ノズルと前記堆積面との間の対向距離に関する値を測定する制御部と、を備える。
このような形態によれば、ノズルの先端面の付着物を除去した後に、ノズルの先端面と堆積面との間の対向距離に関する値が測定される。これによって、正確な対向距離に関する値を測定することができる。
【0092】
(2)上記形態の三次元造形装置において、前記距離測定機構は、前記ノズルと対向可能な位置に配置された測定子を備え、前記測定子を移動させる測定子移動機構を備え、前記制御部は、前記移動機構を制御することによって、前記測定子を前記ノズルの先端面に接触させて、前記測定子の移動量から、前記対向距離に関する値を測定してもよい。
このような形態によれば、簡易な構成によって、正確な対向距離に関する値を測定することができる。
【0093】
(3)上記形態の三次元造形装置において、前記測定子の前記ノズル側の端部は、前記堆積面と交差する方向において、前記堆積面と前記ノズルの先端面との間に配置されてもよい。
このような形態によれば、ノズルの先端面を測定子に接触させて対向距離に関する値を測定する際、ノズルがステージに接触することを抑制できる。これによって、正確な対向距離に関する値を測定することができる。
【0094】
(4)上記形態の三次元造形装置は、更に、造形空間を有するチャンバーと、前記チャンバーの隔壁に形成された開口部の周縁部と、前記ステージとの間に配置され、前記ステージの、前記堆積面と交差する方向に沿った移動に応じて、前記堆積面と交差する方向に沿って伸縮可能であり、前記造形空間から分離された分離空間を形成する筒状の耐熱部材と、を備え、前記距離測定機構は、前記測定子の移動量を検出する測定子移動量検出部を備え、前記距離測定機構のうち、前記測定子の少なくとも先端部は、前記造形空間内に配置され、前記測定子移動量検出部は、前記分離空間内に配置されてもよい。
このような形態によれば、測定子移動量検出部が熱的影響を受けることを抑制できる。そのため、正確な対向距離に関する値を測定できる。
【0095】
(5)上記形態の三次元造形装置において、前記清掃機構は、前記ノズルの先端面と接触することによって前記ノズルの先端面を清掃可能な接触部を備え、前記接触部のビッカース硬さが、前記ノズルのビッカース硬さより低くてもよい。
このような形態によれば、清掃部材とノズルとが接触する際に、ノズルが破損することを抑制できる。
【0096】
本開示は、上述した三次元造形装置や三次元造形物の製造方法に限らず、種々の態様で実現可能である。例えば、三次元造形物の造形方法や、三次元造形装置の制御方法、三次元造形物を造形するためのコンピュータープログラム、コンピュータープログラムを記録した一時的でない有形な記録媒体等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0097】
10…チャンバー、11…造形空間、12…隔壁、13…第1開口部、14…第2開口部、15…開閉扉、16…第2耐熱部材、17…第1カバー、18…第2カバー、20…加熱部、21…吸気管、22…排気管、30…ステージ、31…堆積面、50…第1駆動部、51…支柱、52…第1固定具、53…第2固定具、60…第2駆動部、61…第1リニアアクチュエーター、62…第2リニアアクチュエーター、70…第1耐熱部材、71…分離空間、72…上壁、73…蛇腹部、80…温度センサー、90…冷却機構、100…三次元造形装置、110…冷却制御部、120…造形制御部、130…清掃機構、131…廃棄材料収容部、132…清掃部材、133…接触部、140…距離測定機構、142…測定子移動量検出部、150…測定子、151…伸縮部、152…鍔部、153…ガイド部、200…吐出部、220…材料供給部、222…連通路、230…材料溶融部、231…スクリューケース、232…駆動モーター、240…フラットスクリュー、242…溝部、243…凸条部、244…材料流入口、246…中央部、248…溝形成面、250…スクリュー対面部、252…スクリュー対向面、254…案内溝、256…連通孔、258…ヒーター、260…ノズル、280…先端面、290…吐出口