(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】埋設物検出装置および埋設物検出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/32 20060101AFI20231219BHJP
G01S 13/88 20060101ALI20231219BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01S7/32 230
G01S13/88 200
G01S7/32 210
G01V3/12 B
(21)【出願番号】P 2019127555
(22)【出願日】2019-07-09
【審査請求日】2022-05-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 康平
(72)【発明者】
【氏名】清水 良治
(72)【発明者】
【氏名】岡村 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】鶴巣 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 充典
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-140542(JP,A)
【文献】特開2010-281643(JP,A)
【文献】特開2009-008455(JP,A)
【文献】特開平08-194057(JP,A)
【文献】特開平05-288844(JP,A)
【文献】特開平11-183635(JP,A)
【文献】特開平02-126176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
G01V 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対して照射されたインパルス波の反射波を受信して対象物内の埋設物の有無を検出する埋設物検出装置であって、
インパルス波を前記対象物へ放射する送信部と、
前記インパルス波の反射波を受信するサンプル・ホールド回路を有する受信部と、
サンプリングパルスをデジタル信号によって任意に遅延させるように、前記サンプリングパルスを生成するサンプリングパルス生成回路を制御する可変遅延素子と、
前記受信部において受信した前記反射波がノイズを含むと判定した場合には、前記ノイズを含むと判定したn回目のサンプリングと同じ遅延時間で前記反射波を前記受信部に再取得させるように、前記可変遅延素子を制御して前記受信部において反射波を受信するタイミングおよび期間を設定するサンプリングパルスを調整する制御部と、
を備えている埋設物検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、n回目に取得した前記反射波の値と、(n-1)回目に取得した前記反射波の値との差が、所定の閾値以上である場合に、n回目に取得した前記反射波の値にはノイズが含まれると判定する、
請求項1に記載の埋設物検出装置。
【請求項3】
前記対象物の表面に沿って移動する移動速度を検出する移動速度検出部を、さらに備え、
前記制御部は、前記移動速度検出部において検出された前記移動速度の大きさに応じて、前記所定の閾値の値を変更する、
請求項2に記載の埋設物検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記移動速度が予め設定された所定速度より大きい場合には、前記所定の閾値を初期設定値よりも大きい値に設定する、
請求項3に記載の埋設物検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記移動速度が予め設定された所定速度より小さい場合には、前記所定の閾値を初期設定値よりも小さい値に設定する、
請求項3に記載の埋設物検出装置。
【請求項6】
前記移動速度の速度範囲として複数段階設定されている場合には、前記制御部は、前記移動速度検出部において検出された前記移動速度の速度範囲が属する段階に応じて、前記閾値を変化させる、
請求項3に記載の埋設物検出装置。
【請求項7】
前記制御部には、前記反射波が前記ノイズを含むと判定した場合に実施される前記反射波の再取得の繰り返し回数の上限値が設定されている、
請求項1から6のいずれか1項に記載の埋設物検出装置。
【請求項8】
対象物に対して照射されたインパルス波の反射波を受信して対象物内の埋設物の有無を検出する埋設物検出方法であって、
サンプリングパルスをデジタル信号によって任意に遅延させるように前記サンプリングパルスを生成するサンプリングパルス生成回路を制御する可変遅延素子を用いて
、前記反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間を設定する遅延時間設定ステップと、
インパルス波を前記対象物へ複数回放射する送信ステップと、
前記遅延時間設定ステップにおいて設定された前記遅延時間に基づいて、前記インパルス波の反射波を複数回受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信した前記反射波がノイズを含むと判定した場合には、前記ノイズを含むと判定されたn回目のサンプリングと同じ遅延時間で前記反射波を再取得するように、前記可変遅延素子を制御して前記受信部において反射波を受信するタイミングおよび期間を設定するサンプリングパルスを調整する再取得ステップと、
を備えている埋設物検出方法。
【請求項9】
前記再取得ステップでは、n回目に取得した前記反射波の値と、(n-1)回目に取得した前記反射波の値との差が、所定の閾値以上である場合に、n回目に取得した前記反射波の値にはノイズが含まれると判定する、
請求項8に記載の埋設物検出方法。
【請求項10】
前記対象物の表面に沿って移動する移動速度を検出する移動速度検出部において検出された前記移動速度の大きさに応じて、前記所定の閾値の値を変更する閾値変更ステップを、さらに備えている、
請求項9に記載の埋設物検出方法。
【請求項11】
前記閾値変更ステップでは、前記移動速度が予め設定された所定速度より大きい場合には、前記所定の閾値を初期設定値よりも大きい値に設定する、
請求項10に記載の埋設物検出方法。
【請求項12】
前記閾値変更ステップでは、前記移動速度が予め設定された所定速度より小さい場合には、前記所定の閾値を初期設定値よりも小さい値に設定する、
請求項10に記載の埋設物検出方法。
【請求項13】
前記閾値変更ステップでは、前記移動速度の速度範囲として複数段階設定されている場合には、前記移動速度検出部において検出された前記移動速度の速度範囲が属する段階に応じて、前記閾値を変化させる、
請求項10に記載の埋設物検出方法。
【請求項14】
前記再取得ステップでは、前記反射波が前記ノイズを含むと判定した場合に実施される前記反射波の再取得の繰り返し回数の上限値が設定されている、
請求項8から13のいずれか1項に記載の埋設物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、壁や地中等に含まれる埋設物を検出する埋設物検出装置および埋設物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、コンクリート内に含まれる鉄筋等の埋設物を探索する装置として、コンクリートの表面を移動させながら、コンクリートの表面に向かって放射した電磁波の反射波の変化に基づいて、埋設物を検出する装置が用いられている。
例えば、特許文献1には、電磁波を送信アンテナから放射し、受信アンテナで受信された対象物からの反射波を、高速鋸歯状波発生器と低速鋸歯状波発生器および交点パルス発生器を用いて生成したサンプリングパルスによってサンプリングするチャープサンプリング方式地中レーダについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された装置では、高速鋸歯状波と低速鋸歯状波とを比較して、電磁波の反射波を取得するタイミング(ディレイ時間)を調整している。このため、サンプリング期間の途中でノイズが検出された場合でも、再サンプリングを実施するためには、再度、サンプリング期間の最初から1セット分のサンプリングを実施する必要があり、時間がかかってしまう。また、装置が移動している場合には、ノイズが検出された位置で再サンプリングすることはできないため、再サンプリングによってノイズを除去することは困難である。
【0005】
特に、放射される電磁波としてインパルス波が用いられた場合には、例えば、サイン波の電磁波が放射される場合と比較して、インパルス波には広い周波数成分が含まれるため、受信部として広帯域アンテナが用いられる。その結果、ノイズを受信しやすく除去し難いという課題がある。
本発明の課題は、埋設物の検出精度を向上させることが可能な埋設物検出装置および埋設物検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る埋設物検出装置は、対象物に対して照射されたインパルス波の反射波を受信して対象物内の埋設物の有無を検出する埋設物検出装置であって、送信部と、受信部と、可変遅延素子と、制御部と、を備えている。送信部は、インパルス波を対象物へ放射する。受信部は、インパルス波の反射波を受信するサンプル・ホールド回路を有する。可変遅延素子は、放射するインパルス波またはサンプリングパルスをデジタル信号によって任意に遅延させることが可能である。制御部は、受信部において受信した反射波がノイズを含むと判定した場合には、ノイズを含むと判定したn回目のサンプリングと同じ遅延時間で反射波を受信部に再取得させるように、可変遅延素子を制御する。
【0007】
ここでは、放射された電磁波の反射波を受信して、例えば、コンクリート内に存在する鉄筋等の埋設物を検出する埋設物検出装置において、デジタル信号によって反射波のサンプリングパルスを設定するとともに、受信部において受信した反射波がノイズを含むと判定した場合には、ノイズを含むと判定したn回目のサンプリングと同じ遅延時間(タイミング)で反射波を受信部に再取得させる。
【0008】
ここで、可変遅延素子は、例えば、ディレイICであって、デジタル信号によって反射波を受信するサンプリングパルスの遅延時間を設定する。
なお、送信部から放射される電磁波としてインパルス波を用いた場合には、例えば、サイン波等の他の電磁波を比較して広い周波数成分が含まれるため、受信部として広帯域アンテナを用いる必要がある。このため、広帯域アンテナを用いた結果、ノイズを受信しやすく除去し難いという課題がある。
【0009】
そこで、本発明の埋設物検出装置では、受信部において受信した反射波にノイズが含まれると判定した場合には、ノイズを含むと判定したn回目のサンプリングと同じ遅延時間(タイミング)で反射波を受信部に再取得させるように、可変遅延素子を制御する。
これにより、ノイズを受信しやすいインパルス波を電磁波として用いた場合でも、外乱ノイズ等のノイズを検出するとすぐにその位置で反射波を再取得することができる。
この結果、インパルス波の反射波に含まれるノイズを効果的に除去して、埋設物の検出精度を向上させることができる。
【0010】
第2の発明に係る埋設物検出装置は、第1の発明に係る埋設物検出装置であって、制御部は、n回目に取得した反射波の値と、(n-1)回目に取得した反射波の値との差が、所定の閾値以上である場合に、n回目に取得した反射波の値にはノイズが含まれると判定する。
これにより、n回目に取得した反射波の値と直前に取得した反射波の値との差が所定の閾値以上であった場合には、直前の(n-1)回目の取得値から大きな差があることから、その差はノイズの影響によるものと判断して、ノイズを含むと判定することができる。
【0011】
第3の発明に係る埋設物検出装置は、第2の発明に係る埋設物検出装置であって、対象物の表面に沿って移動する移動速度を検出する移動速度検出部を、さらに備えている。制御部は、移動速度検出部において検出された移動速度の大きさに応じて、所定の閾値の値を変更する。
【0012】
これにより、例えば、埋設物検出装置の移動速度が大きい場合にはノイズ検出処理も高速で実施する必要があるため、細かいノイズを検出しないように、閾値を基準値よりも大きく設定し、反対に、移動速度が小さい場合にはノイズ検出処理を充分に確保することができるため、ノイズの検出精度を向上させるために、閾値を基準値よりも小さく設定することで、移動速度に応じて、適切な大きさの閾値を設定することができる。
【0013】
第4の発明に係る埋設物検出装置は、第3の発明に係る埋設物検出装置であって、制御部は、移動速度が予め設定された所定速度より大きい場合には、所定の閾値を初期設定値よりも大きい値に設定する。
これにより、作業者によって走査される埋設物検出装置の移動速度が大きい場合には、閾値の値を初期設定値よりも大きくすることで、細かいノイズを検出しないようにすることができる。
この結果、埋設物検出装置の移動速度が大き過ぎて、ノイズ検出処理が移動速度に追いつかないという不具合の発生を防止することができる。
【0014】
第5の発明に係る埋設物検出装置は、第3の発明に係る埋設物検出装置であって、制御部は、移動速度が予め設定された所定速度より小さい場合には、所定の閾値を初期設定値よりも小さい値に設定する。
【0015】
これにより、作業者によって走査される埋設物検出装置の移動速度が小さい、つまり、埋設物検出装置がゆっくり移動している場合には、充分な処理時間を確保できるため、閾値の値を初期設定値よりも小さくすることで、細かいノイズを検出することができる。
この結果、埋設物検出装置の移動速度が小さい場合は、ノイズ検出精度を向上させることができる。
【0016】
第6の発明に係る埋設物検出装置は、第3の発明に係る埋設物検出装置であって、移動速度の速度範囲として、複数段階設定されている場合には、制御部は、移動速度検出部において検出された移動速度の速度範囲が属する段階に応じて、閾値を変化させる。
これにより、例えば、移動速度が“高”、“中”、“低”の3段階で設定されている場合には、移動速度“高”に対応する第1閾値(>初期設定値)、移動速度“中”に対応する基準閾値、移動速度“低”に対応する第2閾値(<初期設定値)に、閾値を変更することができる。
【0017】
第7の発明に係る埋設物検出装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る埋設物検出装置であって、制御部には、反射波がノイズを含むと判定した場合に実施される反射波の再取得の繰り返し回数の上限値が設定されている。
これにより、再取得の回数に上限が設定されることで、直前に取得された反射波の値との比較において、何度、再取得しても閾値以上となってしまうことを回避して、次の回(n+1)回目の反射波のサンプリングを実施することができる。
【0018】
第8の発明に係る埋設物検出方法は、対象物に対して照射されたインパルス波の反射波を受信して対象物内の埋設物の有無を検出する埋設物検出方法であって、遅延時間設定ステップと、送信ステップと、受信ステップと、再取得ステップと、を備えている。遅延時間設定ステップでは、デジタル信号によって制御される可変遅延素子を用いて、放射するインパルス波または反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間を設定する、送信ステップでは、インパルス波を対象物へ複数回放射する。受信ステップでは、遅延時間設定ステップにおいて設定された遅延時間に基づいて、インパルス波の反射波を複数回受信する。再取得ステップでは、受信ステップにおいて受信した反射波がノイズを含むと判定した場合には、ノイズを含むと判定されたn回目のサンプリングと同じ遅延時間で反射波を再取得するように、可変遅延素子を制御する。
【0019】
ここでは、放射された電磁波の反射波を受信して、例えば、コンクリート内に存在する鉄筋等の埋設物を検出する埋設物検出方法において、デジタル信号によって反射波のサンプリングパルスを設定するとともに、受信部において受信した反射波がノイズを含むと判定した場合には、ノイズを含むと判定したn回目のサンプリングと同じ遅延時間(タイミング)で反射波を受信部に再取得させる。
【0020】
ここで、デジタル信号によって行われるサンプリングパルスの遅延時間の設定は、例えば、ディレイICを用いて行われる。
なお、送信部から放射される電磁波としてインパルス波を用いた場合には、例えば、サイン波等の他の電磁波を比較して広い周波数成分が含まれるため、受信部として広帯域アンテナを用いる必要がある。このため、広帯域アンテナを用いた結果、ノイズを受信しやすく除去し難いという課題がある。
【0021】
そこで、本発明の埋設物検出装置では、受信部において受信した反射波にノイズが含まれると判定した場合には、ノイズを含むと判定したn回目のサンプリングと同じ遅延時間(タイミング)で反射波を受信部に再取得させるように、可変遅延素子を制御する。
これにより、ノイズを受信しやすいインパルス波を電磁波として用いた場合でも、外乱ノイズ等のノイズを検出するとすぐにその位置で反射波を再取得することができる。
この結果、インパルス波の反射波に含まれるノイズを効果的に除去して、埋設物の検出精度を向上させることができる。
【0022】
第9の発明に係る埋設物検出方法は、第8の発明に係る埋設物検出方法であって、再取得ステップでは、n回目に取得した反射波の値と、(n-1)回目に取得した反射波の値との差が、所定の閾値以上である場合に、n回目に取得した反射波の値にはノイズが含まれると判定する。
これにより、n回目に取得した反射波の値と直前に取得した反射波の値との差が所定の閾値以上であった場合には、直前の(n-1)回目の取得値から大きな差があることから、その差はノイズの影響によるものと判断して、ノイズを含むと判定することができる。
【0023】
第10の発明に係る埋設物検出方法は、第9の発明に係る埋設物検出方法であって、対象物の表面に沿って移動する移動速度を検出する移動速度検出部において検出された移動速度の大きさに応じて、所定の閾値の値を変更する閾値変更ステップを、さらに備えている。
【0024】
これにより、例えば、移動速度が大きい場合にはノイズ検出処理も高速で実施する必要があるため、細かいノイズを検出しないように、閾値を基準値よりも大きく設定し、反対に、移動速度が小さい場合にはノイズ検出処理を充分に確保することができるため、ノイズの検出精度を向上させるために、閾値を基準値よりも小さく設定することで、移動速度に応じて、適切な大きさの閾値を設定することができる。
【0025】
第11の発明に係る埋設物検出方法は、第10の発明に係る埋設物検出方法であって、閾値変更ステップでは、移動速度が予め設定された所定速度より大きい場合には、所定の閾値を初期設定値よりも大きい値に設定する。
これにより、作業者によって走査される埋設物検出装置の移動速度が大きい場合には、閾値の値を初期設定値よりも大きくすることで、細かいノイズを検出しないようにすることができる。
この結果、埋設物検出装置の移動速度が大き過ぎて、ノイズ検出処理が移動速度に追いつかないという不具合の発生を防止することができる。
【0026】
第12の発明に係る埋設物検出方法は、第10の発明に係る埋設物検出方法であって、閾値変更ステップでは、移動速度が予め設定された所定速度より小さい場合には、所定の閾値を初期設定値よりも小さい値に設定する。
【0027】
これにより、作業者によって走査される埋設物検出装置の移動速度が小さい、つまり、埋設物検出装置がゆっくり移動している場合には、充分な処理時間を確保できるため、閾値の値を初期設定値よりも小さくすることで、細かいノイズを検出することができる。
この結果、埋設物検出装置の移動速度が小さい場合は、ノイズ検出精度を向上させることができる。
【0028】
第13の発明に係る埋設物検出方法は、第10の発明に係る埋設物検出方法であって、閾値変更ステップでは、移動速度の速度範囲として複数段階設定されている場合には、移動速度検出部において検出された移動速度の速度範囲が属する段階に応じて、閾値を変化させる。
例えば、移動速度が“高”、“中”、“低”の3段階で設定されている場合には、移動速度“高”に対応する第1閾値(>初期設定値)、移動速度“中”に対応する基準閾値、移動速度“低”に対応する第2閾値(<初期設定値)に、閾値を変更することができる。
【0029】
第14の発明に係る埋設物検出方法は、第8から第13の発明のいずれか1つに係る埋設物検出方法であって、再取得ステップでは、反射波がノイズを含むと判定した場合に実施される反射波の再取得の繰り返し回数の上限値が設定されている。
これにより、再取得の回数に上限が設定されることで、直前に取得された反射波の値との比較において、何度、再取得しても閾値以上となってしまうことを回避して、次の回(n+1)回目の反射波のサンプリングを実施することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る埋設物検出装置によれば、インパルス波の反射波に含まれるノイズを効果的に除去して、埋設物の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態に係る埋設物検出装置の構成を示す斜視図。
【
図2】
図1の埋設物検出装置の構成を示すブロック図。
【
図3】
図2の埋設物検出装置に含まれるインパルス制御モジュールの構成を示すブロック図。
【
図4】
図3のMPUが取得する反射波のデータを示す図。
【
図5】
図2の埋設物検出装置に含まれるメイン制御モジュールの構成を示すブロック図。
【
図6】(a)はインパルス波の波形とインパルス波の周波数成分とを示すグラフ。(b)は、サイン波の波形とサイン波の周波数成分とを示すグラフ。
【
図7】(a)は、正常な反射波の波形図。(b)は、ノイズを含む反射波の波形図。
【
図8】インパルス波の反射波をサンプリングした際に、ノイズの影響を受けたサンプリング結果と再取得されたサンプリング結果とを示す図。
【
図9】本発明の一実施形態に係る埋設物検出方法の処理の流れを示すフローチャート。
【
図10】本発明の一実施形態に係る埋設物検出方法における移動速度に応じた閾値の設定変更処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態に係る埋設物検出装置について、
図1~
図10を用いて説明すれば以下の通りである。
図1は、本実施形態の埋設物検出装置1をコンクリート(対象物)100上に配置した状態を示す斜視図である。
図2は、本実施形態の埋設物検出装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0033】
(1-1.埋設物検出装置1の構成)
本実施形態の埋設物検出装置1は、コンクリート100等の対象物の表面100aを移動しながらコンクリート100に向かってインパルス波(電磁波)を放射し、その反射波を受信して解析することによって、コンクリート100内の埋設物101a,101b,101cの位置を検出する。そして、
図1では、埋設物検出装置1の移動方向が、矢印Aで示されている。
【0034】
なお、
図1に示す例では、埋設物101a,101b,101cは、鉄筋であって、例えば、コンクリート100の表面100aから15cm,10cm,5cmの深さ位置にそれぞれ埋設されている。
図1では、コンクリート100の深さ方向が矢印Bで示されており、その反対向き(表面方向)が矢印Cで示されている。
コンクリート100内に埋設された3本の鉄筋(埋設物101a~101c)は、それぞれ、コンクリート100の表面100aに略平行な方向に沿って、埋設物検出装置1の移動方向に交差する向きで配置されている。
【0035】
埋設物検出装置1は、
図2に示すように、本体部2と、把手3と、4つの車輪4と、インパルス制御モジュール5と、メイン制御モジュール6と、エンコーダ(移動速度検出部)7と、表示部8と、を備えている。
把手3は、作業者(ユーザ)によって把持される取っ手部分であって、本体部2の上面に設けられている。4つの車輪は、回転可能な状態で、本体部2の下部に取り付けられている。作業者は、コンクリート100内部の埋設物101を検出する際には、把手3を把持して車輪4を回転させながら、コンクリート100の表面100a上で埋設物検出装置1を移動させる。
【0036】
インパルス制御モジュール5は、コンクリート100の表面100aに向けてインパルス波を放射するタイミング、および放射したインパルス波の反射波を受信するタイミング等の制御を行う。
エンコーダ7は、車輪4に接続されており、車輪4の回転に関する情報を検出する。そして、エンコーダ7は、その検出された情報に基づいて、インパルス制御モジュール5に対して、インパルス波の放射タイミングおよび反射波の受信タイミングを制御するための信号を送信する。さらに、エンコーダ7は、車輪4の回転速度および回転方向の情報を、インパルス制御モジュール5へ送信する。
【0037】
メイン制御モジュール6は、インパルス制御モジュール5で受信された反射波に関するデータを受け取り、埋設物101の検出を行う。
表示部8は、本体部2の上面に設けられており、埋設物101a,101b,101cの位置を示す画像等を表示する。
【0038】
(1-2.インパルス制御モジュール5)
図3は、インパルス制御モジュール5の構成を示すブロック図である。
インパルス制御モジュール5は、制御部10と、送信アンテナ(送信部)11と、受信アンテナ(受信部)12と、インパルス生成回路13と、ディレイIC14と、サンプリングパルス生成回路15と、高速サンプル・ホールド回路16と、A/Dコンバータ17と、記憶部18と、を有している。
制御部10は、MPU(Micro Processing Unit)等によって構成されており、エンコーダ入力をトリガとして、インパルス生成回路13にインパルス波の発生を指令する。
【0039】
また、制御部10は、受信アンテナ12において反射波を受信するタイミングおよび期間を設定するサンプリングパルスを調整するディレイIC14を制御する。
さらに、制御部10は、受信アンテナ12において取得した反射波に含まれるノイズの有無を検出するノイズ検出判定処理を実施する。そして、制御部10は、取得した反射波にノイズが含まれると判定した場合には、ノイズを含むと判定されたn回目のサンプリングを再度実施する再取得制御を実施するように、ディレイIC14を制御する。
【0040】
送信アンテナ11は、本体部2の底面側に設けられており、パルスの周期に基づいて、一定周期でインパルス波を放射する。
受信アンテナ12は、本体部2の底面側に設けられた広帯域アンテナ(例えば、0~5GHz)であって、主に、送信アンテナ11から放射されたインパルス波の反射波を受信する。具体的には、例えば、送信アンテナ11から放射されたインパルス波がコンクリート100内を往復する時間を5ns(=5000ps)とすると、受信アンテナ12は、送信アンテナ11からインパルス波が放射されてから5ns(5000ps)間に受信される反射波を受信することで、
図4に示すような受信波形を得ることができる。
【0041】
インパルス生成回路13は、制御部10によって制御されており、制御部10を介して入力されたエンコーダ7の入力をトリガとし、MPUからの指令に基づいてインパルス波を所定の時間間隔で所定の回数(例えば、10ps間隔で500回)だけ発生させ、送信アンテナ11に出力する。
ディレイIC14は、制御部10によって制御されており、デジタル信号によって、受信アンテナ12において反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間およびサンプリング期間を設定する。具体的には、ディレイIC14は、例えば、10psの間隔で5ns間、サンプリングパルス生成回路15がサンプリングパルスを生成するように、制御部10によって制御される。これにより、受信アンテナ12は、送信アンテナ11からインパルス波が放射されてから5ns間に受信した反射波を高速サンプル・ホールド回路16に取り込ませることができる。
【0042】
サンプリングパルス生成回路15は、ディレイIC14によって設定された遅延時間(例えば、10ps)に基づいて、受信アンテナ12において受信した反射波を取り込むように、高速サンプル・ホールド回路16にサンプリングパルスを送信する。
高速サンプル・ホールド回路16は、サンプリングパルス生成回路15からサンプリングパルスを受信して、受信アンテナ12において受信した反射波を取り込んで、A/Dコンバータ17へ送信する。
【0043】
A/Dコンバータ17は、高速サンプル・ホールド回路16から受信した反射波の信号を、A/D(Analog/Digital)変換して制御部10へ送信する。
記憶部18は、制御部10に接続されており、A/Dコンバータ17によってA/D変換された反射波に関するデータを保存するとともに、後述する移動速度に応じてノイズ判定用の閾値を変化させるための移動速度と閾値との関係を示すテーブル等を保存している。なお、移動速度に応じて閾値を変更する閾値変更制御については、後段にて詳述する。
【0044】
本実施形態の埋設物検出装置1では、以上の構成により、インパルス制御モジュール5が、エンコーダか7からの入力をトリガとして、送信アンテナ11からインパルス波を複数回出力する。そして、インパルス制御モジュール5は、ディレイIC14を用いて、インパルス波が放射されてからの遅延時間を設定し、反射波の取得タイミングを遅らせることで、コンクリート100の表面100aからの距離ごとの反射波のデータを取得することができる。
【0045】
ここで、
図4は、MPUが取得する反射波のデータを示す図である。縦軸は、2048階調を軸Oとして、0~4095階調の範囲で受信信号の強度を示し、矢印方向がマイナス側を示す。横軸は、受信アンテナ12との距離を示し、矢印方向(深さ方向Bに対応)が受信アンテナ12からの距離が長いことを示す。また、距離が長いとは、深さが大きいことに相当する。
【0046】
なお、
図4に示す波形W1には、コンクリート100内に放射されずにアンテナで反射した反射波も含まれる(p1等)ため、基準波形との差分を算出することにより、コンクリート100内からの反射波のデータの変化が抽出される。
また、
図4に示すデータは、エンコーダ7の入力があった後、エンコーダ7から次の入力があるまでの受信信号の強度を示すデータである。ディレイIC14によって設定された遅延時間に基づいて、反射波の取得タイミングを除々に遅らせることによって、受信アンテナ12からの距離が長い位置からの反射波を受信するが、エンコーダ7からの入力があると、受信タイミングの遅延が元に戻され、再び受信タイミングを除々に遅らせる。すなわち、移動方向Aにおける所定の計測位置(エンコーダ7からの入力があった位置)における深さ方向Bの反射波を受信する。このような
図4に示すエンコーダ7の入力があった後、次のエンコーダの入力があるまでに受信した反射波のデータを、1ライン分のデータという。制御部10は、1ライン分のデータが貯まるごとに、その1ライン分のRF(Radio Frequency)データをメイン制御モジュール6へ送信する。
【0047】
なお、埋設物検出装置1は、作業者(ユーザ)によってコンクリート100の表面100a上を移動しているため、計測位置は厳密に同じ位置ではなく、深さ方向Bもコンクリート100の表面100aに対して厳密に垂直な方向ではない。
【0048】
(1-3.メイン制御モジュール6)
図5は、メイン制御モジュール6の構成を示すブロック図である。
メイン制御モジュール6は、受信部21と、RFデータ管理部22と、埋設物判定部24と、判定結果登録部25と、表示制御部26と、を有している。
受信部21は、インパルス制御モジュール5の制御部10から送信されるごとに、1ライン分のRFデータを受信する。
RFデータ管理部22は、受信部21が受信した1ライン分のRFデータを記憶する。
【0049】
埋設物判定部24は、RFデータ管理部22において記憶された1ライン分のRFデータを用いて、埋設物101の有無を判定するとともに、埋設物101の位置を検出する。
なお、埋設物判定部24における埋設物101の検出処理については、受信アンテナ12において受信した複数の1ライン分のRFデータに基づいて、既知の方法を用いて実施すればよい。具体的には、例えば、埋設物101が鉄筋等の金属である場合には、送信アンテナ11から放射されたインパルス波は、その表面において反射される。このため、受信アンテナ12において、このような埋設物101の表面で反射された反射波の速度(強度)と、反射波を受信するまでの時間とを検出することで、コンクリート100内の埋設物101の有無およびその位置を検出することができる。
判定結果登録部25は、埋設物判定部24によって検出された埋設物101の位置をRFデータ管理部22に登録する。
表示制御部26は、移動方向Aと深さ方向Bの平面において信号強度を色で階調処理した画像、および埋設物101の位置を表示するように、表示部8の制御を行う。
【0050】
<インパルス波を用いた埋設物の検出>
本実施形態の埋設物検出装置1では、インパルス制御モジュール5の制御部10が、送信アンテナ11からインパルス波が所定の時間間隔で放射されるように、インパルス生成回路13を制御している。
【0051】
ここで、送信アンテナ11から放射される電磁波として用いられるインパルス波には、
図6(a)に示すように、広範囲の周波数成分が含まれている。
これに対して、電磁波として用いられるサイン波には、
図6(b)に示すように、特定の帯域(例えば、2.4GHz)に限定された周波数成分が含まれている。
このため、送信アンテナ11から放射される電磁波として
図6(a)に示すインパルス波が用いられる場合には、その反射波の検出にも、広範囲の周波数成分(例えば、0~2.4GHz)を検出可能な広帯域アンテナが用いられる。
【0052】
この結果、受信アンテナ12として広帯域アンテナが用いられているため、受信アンテナ12は、例えば、無線LANや携帯電話等の外乱電磁波(ノイズ)を受信しやすいという課題がある(
図7(b)参照)。
反射波の波形に外乱電磁波(ノイズ)が含まれる場合には、
図7(a)に示すノイズを含まない正常な反射波の波形ではなく、
図7(b)に示す一部の波形が乱れた波形に変化する。
そこで、本実施形態の埋設物検出装置1では、
図7(b)に示すノイズを含む反射波の波形を検出した場合でも、
図7(a)に示すノイズを含まない反射波の波形になるように、ノイズ成分を除去する制御を行う。
【0053】
<ノイズを含む反射波の再取得制御>
本実施形態の埋設物検出装置1では、以上のように、受信アンテナ12として広帯域アンテナが用いられたために生じやすいノイズを含む反射波の波形からノイズ成分を効果的に除去するために、ノイズを含む反射波を取得した同じ遅延時間で反射波を再取得する制御を行う。
【0054】
具体的には、インパルス制御モジュール5の制御部10が、反射波の波形の一部に生じるノイズ成分の有無を判定し、ノイズを含むと判定した場合には、ノイズを含むn回目のサンプリングと同じ遅延時間で、再度、反射波のデータを取得するように、ディレイIC14を制御する。
より詳細には、制御部10は、まず、受信アンテナ12において受信した反射波がノイズを含むか否かについて、n回目のサンプリングによって取得したA/D変換後の反射波の値を、直前の(n-1)回目のサンプリングによって取得したA/D変換後の反射波の値と比較して、その差が所定の閾値(ここでは、30(デジタル値)に設定)を超える場合には、ノイズ有りと判定する。
【0055】
すなわち、本実施形態の埋設物検出装置1では、所定の時間間隔でサンプリングパルス生成回路15から高速サンプル・ホールド回路16へと送信される500個のサンプリングパルスに基づいて取得される反射波のデータを取得する毎に、その直前(n-1)回目に取得した反射波のデータとの差が30以上である場合には(
図8参照)、そのn回目に受信した反射波のデータにはノイズが含まれると判定する。そして、制御部10は、ノイズを含むと判定されたn回目の反射波のデータを破棄して、同じ遅延時間(タイミング)で再度、反射波のデータを取得するように、ディレイIC14を制御する。
【0056】
このように、ノイズを含む反射波のデータを取得した際の反射波の再取得制御を実施することで、
図8に示すように、図中点線の円で示されるデータを破棄して、図中黒丸で示されるデータを再取得することができる。
これにより、送信アンテナ11からインパルス波を放射し、その反射波を広帯域アンテナ(受信アンテナ12)において受信する場合でも、外乱ノイズ等のノイズを検出するとすぐにその位置で反射波のデータを再取得することができる。
この結果、インパルス波の反射波に含まれるノイズを効果的に除去して鮮明な反射波の画像を得ることができるため、埋設物101の検出精度を向上させることができる。
【0057】
<ノイズを含む反射波の再取得制御の処理の流れ>
本実施形態の埋設物検出方法では、上述した埋設物検出装置1を用いてコンクリート100内の埋設物101の検出を行う際に、制御部10が、
図9に示すフローチャートに従って、ノイズを含む反射波の再取得制御の処理を実施する。
【0058】
なお、本実施形態では、サンプリング期間の基準長さを5ns(5000ps)、ディレイ時間の初期値を10psとし、インパルス波を500回放射してサンプリングを500回実施する例を挙げて説明する。
すなわち、ステップS11では、制御部10が、サンプリング期間の初期値として設定された遅延時間でサンプリングを行うように、ディレイIC14を制御する。
【0059】
次に、ステップS12では、制御部10が、サンプリングを実施する繰り返し回数として、繰り返しカウンタ=500(回)を設定する。
次に、ステップS13では、制御部10が、送信アンテナ11から、基準となるインパルス波の出力を開始するように、インパルス生成回路13を制御する。
次に、ステップS14では、制御部10が、サンプリングパルス生成回路15において生成されたサンプリングパルスに応じて、受信アンテナ12において受信した(n-1)回目の反射波の信号を取得するように、高速サンプル・ホールド回路16を制御するとともに、高速サンプル・ホールド回路16において取得した反射波の信号をA/Dコンバータ17においてA/D変換させる。
【0060】
次に、ステップS15では、制御部10が、A/Dコンバータ17においてA/D変換された反射波のデジタルデータを、(n-1)回目のサンプリングに対応するデータとして記憶部18に保存させる。
次に、ステップS16では、(n-1)回目のサンプリングに対応した反射波の受信が完了したため、制御部10が、繰り返しカウンタを“-1”とする。
【0061】
次に、ステップS17では、サンプリング期間の2つ目のサンプリングパルスに対応する反射波を受信するために、制御部10が、ディレイ値を“+1”とするようにディレイIC14を制御する。
次に、ステップS18では、サンプリングパルス生成回路15において生成されたサンプリングパルスに応じて、受信アンテナ12において受信したn回目の反射波の信号を取得するように、高速サンプル・ホールド回路16を制御するとともに、高速サンプル・ホールド回路16において取得した反射波の信号をA/Dコンバータ17においてA/D変換させる。
【0062】
次に、ステップS19では、制御部10が、前回の値、すなわち、(n-1)回目のサンプリングに対応するデータと、今回の値、すなわち、n回目のサンプリングに対応するデータとを比較して、その差が所定の閾値30以上であるか否かを判定する。
ここで、閾値30以上である場合には、ノイズを含むと判断し、再度、同じ遅延時間(タイミング)で取得したA/D変換後のデータを再取得するために、ステップS20へ進む。一方、閾値30未満である場合には、ノイズを含まないと判断し、ステップS21へ進む。
【0063】
なお、ステップS19における閾値との比較において、ステップS18のデータの再取得処理を複数回実施してもステップS21へ進めないケースも考えられる。このため、ステップS19における比較処理を実施する上限回数が設定されていることが好ましい。
よって、制御部10は、ステップS19における比較処理においてノイズを含むと判定された場合には、ステップS20において、ステップS19の比較処理の回数が上限回数に達しているか否かを判定する。
【0064】
例えば、上限回数として3回が設定されている場合には、3回目の比較処理においてノイズを含むと判定した場合には、ステップS18へ戻ってデータを再取得することなく、ステップS21へと進むものとする。
次に、ステップS21では、制御部10が、A/Dコンバータ17においてA/D変換された反射波のデジタルデータを、n回目のサンプリングに対応するデータとして記憶部18に保存させる。
【0065】
次に、ステップS22では、n回目のサンプリングに対応した反射波の受信が完了したため、制御部10が、繰り返しカウンタを“-1”とする。
次に、ステップS23では、制御部10が、繰り返しカウンタが“0”になっていないかを確認し、繰り返しカウンタ=0になるまで、すなわち、500回目のサンプリングが完了するまで、ステップS17~ステップS23の処理を繰り返し実施する。
【0066】
これにより、ノイズを受信しやすいインパルス波を電磁波として用いた場合でも、外乱ノイズ等のノイズを検出すると、すぐに同じ遅延時間(タイミング)で反射波のデータを再取得することができる。
この結果、インパルス波の反射波に含まれるノイズを効果的に除去して鮮明な反射波の画像を得ることができるため、埋設物の検出精度を向上させることができる。
【0067】
<移動速度に応じた閾値の変更制御>
以上の説明では、n回目に取得した反射波のデータがノイズを含むか否かの判定を、直前の(n-1)回目に取得したデータと比較して、その差が所定の閾値よりも大きいか否かを判定している。
本実施形態の埋設物検出方法では、ステップS19の比較判定で使用される閾値の大きさが、埋設物検出装置1の移動速度に応じて複数段階で設定されていてもよい。
【0068】
このような移動速度に応じた閾値の設定変更制御は、
図10に示すフローチャートに従って実施される。
すなわち、ステップS31では、制御部10は、エンコーダ7から車輪4の回転速度に関する情報が入力されると、埋設物検出装置1の移動方向、移動速度を算出する。
次に、ステップS32では、算出された移動速度が、予め設定された「高」、「中」、「低」の移動速度のうち、どの速度範囲に属するかを判定する。
【0069】
ここで、算出された移動速度が「高」に属する場合には、ステップS33へ進む。算出された移動速度が「中」に属する場合には、ステップS34に進む。算出された移動速度が「低」に属する場合には、ステップS35に進む。
次に、ステップS33では、ステップS32において移動速度「高」と判定されているため、初期設定値(30)よりも大きい第1閾値(例えば、40)に設定を変更する。
【0070】
これにより、ユーザ(作業者)によって走査される埋設物検出装置1の移動速度が大きい場合には、閾値の値を初期設定値(30)よりも大きくすることで、細かいノイズを検出しないようにすることができる。
この結果、埋設物検出装置1の移動速度が大き過ぎて、ノイズ検出処理が移動速度に追いつかないという不具合の発生を防止することができる。
【0071】
次に、ステップS34では、ステップS32において移動速度「中」と判定されているため、初期設定値(30)のまま閾値を設定する。
次に、ステップS35では、ステップS32において移動速度「低」と判定されているため、初期設定値(30)よりも小さい第2閾値(例えば、20)に設定を変更する。
これにより、ユーザ(作業者)によって走査される埋設物検出装置1の移動速度が小さい、つまり、埋設物検出装置1がゆっくり移動している場合には、充分な処理時間を確保できるため、閾値の値を初期設定値(30)よりも小さい値に設定することで、細かいノイズを検出することができる。
【0072】
この結果、埋設物検出装置1の移動速度に応じて、ノイズ検出精度を向上させることができる。
なお、ステップS33~ステップS35における閾値の設定が完了した後、
図9に示すフロー(ステップS11)へ進む。
本実施形態の埋設物検出方法では、以上のように、例えば、埋設物検出装置1の移動速度が大きい場合には、ノイズ検出処理に当てられる時間も少なくなるため、細かいノイズを検出しないように、閾値を基準値よりも大きく設定する。反対に、埋設物検出装置1の移動速度が小さい場合には、ノイズ検出処理にかけられる時間を充分に確保することができるため、ノイズの検出精度を向上させるために、閾値を基準値よりも小さく設定する。
これにより、埋設物検出装置1の移動速度に応じて、ノイズの有無の判定に用いられる閾値の大きさを適切な大きさで設定することができる。
【0073】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0074】
(A)
上記実施形態では、制御部10が、n回目に取得した反射波の値と、(n-1)回目に取得した反射波の値との差が、所定の閾値以上である場合に、n回目に取得した反射波の値にはノイズが含まれると判定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
例えば、直前の1回の反射波の値との比較によってノイズの有無を判定するのではなく、直前の複数回の反射波の値の平均値との比較によってノイズの有無を判定してもよい。
あるいは、n回目の反射波の値と、(n-1)回目の反射波の値および(n+1)回目の反射波の値とそれぞれ比較して、n回目の値にノイズが含まれるか否かを判定してもよい。
【0076】
(B)
上記実施形態では、制御部10が、埋設物検出装置1の3段階の移動速度(高・中・低)に応じて、ノイズの有無の判定に用いられる閾値を変更する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、埋設物検出装置1の移動速度が、2段階あるいは4段階以上に分類されており、各段階の移動速度ごとに異なる大きさの閾値が設定されてもよい。
【0077】
(C)
上記実施形態では、取得した反射波にノイズが含まれるか否かの判定を行う閾値の初期設定値として、30が設定されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ノイズの有無を判定するために設定される閾値の初期設定値(基準値)としては、対象物や埋設物の種類に応じて、30より小さい値であってもよいし、30より大きい値であってもよい。
【0078】
(D)
上記実施形態では、埋設物検出装置1の移動速度を検出する移動速度検出部として、車輪4に接続されており車輪4の回転に関する情報を検出するエンコーダ7を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、埋設物検出装置の移動速度を検出するセンサ等、他の手段を用いて移動速度を検出してもよい。
【0079】
(E)
上記実施形態では、埋設物検出装置1によって検出される埋設物101として、コンクリート100内の鉄筋を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、他の材料あるいは地中内に存在する異物を検出する用途に使用されてもよい。
【0080】
(F)
上記実施形態では、本発明を、埋設物検出装置および埋設物検出方法として実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上述した埋設物検出方法における各ステップをコンピュータに実行させる埋設物検出プログラムとして、本発明を実現してもよい。
【0081】
この埋設物検出プログラムは、記憶部に保存されており、CPUが記憶部に保存されたプログラムを読み込むことで、ハードウェアに各ステップを実行させる。
あるいは、この埋設物検出プログラムを格納した記録媒体として、本発明を実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の埋設物検出装置は、インパルス波の反射波に含まれるノイズを効果的に除去して、埋設物の検出精度を向上させることができるという効果を奏することから、各種埋設物の検出を行う装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 埋設物検出装置
2 本体部
3 把手
4 車輪
5 インパルス制御モジュール
6 メイン制御モジュール
7 エンコーダ(移動速度検出部)
8 表示部
10 制御部
11 送信アンテナ(送信部)
12 受信アンテナ(受信部)
13 インパルス生成回路
14 ディレイIC(可変遅延素子)
15 サンプリングパルス生成回路
16 高速サンプル・ホールド回路
17 A/Dコンバータ
18 記憶部
21 受信部
22 RFデータ管理部
24 埋設物判定部
25 判定結果登録部
26 表示制御部
100 コンクリート
100a 表面
101a~101c 埋設物