(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ビームフォーミング装置およびビームフォーミング方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20231219BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20231219BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H04B7/06 150
H01Q3/26 Z
H01Q21/06
(21)【出願番号】P 2019129568
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】志村 利宏
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/082887(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0223251(US,A1)
【文献】国際公開第2018/024333(WO,A1)
【文献】米国特許第09960883(US,B1)
【文献】特開2013-118620(JP,A)
【文献】特表2016-539541(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135305(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H01Q 3/26
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力信号それぞれの位相を制御して送信信号を生成する、複数の制御回路と、
前記複数の制御回路のそれぞれにより生成される前記送信信号を出力する、前記複数の制御回路のそれぞれに対応する複数のアンテナ素子と、を備え、
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記複数の入力信号それぞれの周波数領域を高くする、複数のミキサと、
前記複数の入力信号それぞれの位相を制御する、前記複数ミキサに対応する複数の移相器と、を備え、
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記複数のミキサによって信号の周波数領域が高くされ、且つ、前記複数の
移相器によって位相が制御された、前記複数の入力信号を合成することによって、前記送信信号を生成する
ことを特徴とするビームフォーミング装置。
【請求項2】
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記複数の入力信号それぞれの周波数領域を高くする、複数のミキサと、
前記複数のミキサの出力信号の位相をそれぞれ制御する、前記複数のミキサに対応する複数の移相器と、を備え
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記複数の移相器の出力信号を合成して前記送信信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のビームフォーミング装置。
【請求項3】
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記複数の入力信号の位相をそれぞれ制御する、複数の移相器と、
前記複数の移相器の出力信号それぞれの周波数領域を高くする、前記複数の
移相器に対応する複数のミキサと、を備え、
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記複数のミキサの出力信号を合成して前記送信信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のビームフォーミング装置。
【請求項4】
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記複数の入力信号にそれぞれ発振信号を掛け合わせる複数のミキサと、
前記複数のミキサに与えられる発振信号の位相をそれぞれ制御する、前記複数のミキサに対応する複数の移相器と、を備え
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記複数のミキサの出力信号を合成して前記送信信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のビームフォーミング装置。
【請求項5】
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記複数の入力信号または対応する前記制御回路内で周波数領域が高くされた、複数の入力信号の位相を、それぞれ制御する複数の第1の移相器と、
前記複数の第1の移相器の出力信号を合成することにより得られる前記送信信号の位相を制御する第2の移相器と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のビームフォーミング装置。
【請求項6】
前記ビームフォーミング装置が同時に形成可能なビーム数がMであり、Lが任意の整数であるとき、前記第1の移相器それぞれの位相制御ステップは360度/(L×M)である
ことを特徴とする請求項5に記載のビームフォーミング装置。
【請求項7】
前記第2の移相器の位相制御範囲は、360度/(L×M)である
ことを特徴とする請求項6に記載のビームフォーミング装置。
【請求項8】
前記複数の制御回路のそれぞれは、
複数の移相部を備え、
前記複数の移相部のそれぞれは、
対応する入力信号から、互いに位相が異なる周波数領域が高くされた2つの信号を生成する1組のミキサと、
前記1組のミキサから出力される2つの信号の振幅をそれぞれ制御する1組の可変増幅器と、を備え、
前記複数の移相部のそれぞれは、
前記1組の可変増幅器の出力信号を合成して出力し、
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記複数の移相部の出力信号を合成して出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のビームフォーミング装置。
【請求項9】
前記複数の制御回路のそれぞれは、
複数の移相部を備え、
前記複数の移相部のそれぞれは、
対応する入力信号から互いに振幅が異なる2つの信号を生成する1組の可変増幅器と、
前記1組の可変増幅器から出力される2つの信号それぞれの周波数領域を高くすると共に前記2つの信号の位相を互いに異ならせる1組のミキサと、を備え、
前記複数の移相部のそれぞれは、
前記1組のミキサの出力信号を合成して出力し、
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記複数の移相部それぞれの出力信号を合成して出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のビームフォーミング装置。
【請求項10】
複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれを介して与えられる受信信号それぞれの位相を制御して出力信号を生成する、前記複数のアンテナ素子に対応する複数の制御回路と、を備え、
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記受信信号それぞれの周波数領域を低くする、複数のミキサと、
前記受信信号それぞれの位相を制御する、前記複数ミキサに対応する複数の移相器と、を備え、
前記複数の制御回路のそれぞれは、
前記複数のミキサによって信号の周波数領域が低くされ、且つ、前記複数の
移相器によって位相が制御された、 前記出力信号を生成する
ことを特徴とするビームフォーミング装置。
【請求項11】
M個のデジタル/アナログ変換器、N個の位相制御回路、およびN個のアンテナ素子を備えるビームフォーミング装置を用いて送信ビームを形成するビームフォーミング方法であって、
各デジタル/アナログ変換器から出力される第1の周波数領域の信号は、それぞれ、N個の位相制御回路に分配され、
前記N個の位相制御回路のそれぞれは、
前記M個のデジタル/アナログ変換器から入力されるM個の信号それぞれに対して、位相制御および前記第1の周波数領域から第2の周波数領域へ周波数領域を高くする周波数制御を行い、
前記N個の位相制御回路のそれぞれにより前記位相制御および前記周波数制御が行われたM個の信号は、合成されて対応するアンテナ素子を介して出力される
ことを特徴とするビームフォーミング方法。
【請求項12】
N個のアンテナ素子、N個の位相制御回路、およびM個のアナログ/デジタル変換器を備えるビームフォーミング装置を用いて受信ビームを形成するビームフォーミング方法であって、
前記N個の位相制御回路のそれぞれは、
対応するアンテナ素子を介して受信する第1の周波数領域の信号をM個の受信信号に分割し、前記M個の受信信号それぞれに対して、位相制御および前記第1の周波数領域から第2の周波数領域へ周波数領域を低くする周波数制御を行い、
前記N個の位相制御回路のそれぞれにより前記位相制御および前記周波数制御が行われたM個の信号は、前記M個のアナログ/デジタル変換器に導かれる
ことを特徴とするビームフォーミング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線システムにおいて使用されるビームフォーミング装置およびビームフォーミング方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、高周波数帯(例えば、マイクロ波帯、ミリ波帯)において、通信の多重化またはセンシング(レーダ)の高精度化を実現するための技術の1つとして、ビームフォーミングが実用化されている。ビームフォーミングを実現するビームフォーミング装置は、アレイ状に配置された複数のアンテナ素子を備える。
【0003】
ビームフォーミング装置は、複数のアンテナ素子を使用して、各端末に対してビームを形成する。例えば、ビームフォーミング装置は、各アンテナ素子を介して送信する信号の位相および/または振幅を端末の位置に応じて制御することで、送信ビームの向きおよび形状を制御する。また、ビームフォーミング装置は、各アンテナ素子を介して受信する信号の位相および/または振幅を端末の位置に応じて制御することで、受信ビームの向きおよび形状を制御することもできる。
【0004】
さらに、複数の異なる信号を重畳し、且つ、異なる方向にビームを形成する方式(ビーム多重方式)の開発が進められている。ビーム多重を実現する方法の1つとして、フルデジタルビームフォーミングが提案されている。
【0005】
フルデジタルビームフォーミングにおいては、各アンテナ素子を介して送信または受信する信号の位相および/または振幅が、デジタル処理により制御される。このため、フルデジタルビームフォーミングを行うビームフォーミング装置(以下、「フルデジタルビームフォーミング装置」と呼ぶことがある。)は、送信ビームを形成するために、各アンテナ素子に対してデジタル/アナログ変換器(DAC)を備える。すなわち、フルデジタルビームフォーミング装置は、アンテナ素子と同じ数のDACを備える。また、フルデジタルビームフォーミング装置は、受信ビームを形成するために、アンテナ素子と同じ数のアナログ/デジタル変換器(ADC)を備える。ここで、DAC/ADCの消費電力は、データ信号のレートに依存する。したがって、ミリ波帯などを利用する広帯域通信システムにおいてデータ信号のレートが高くなると、ビームフォーミング装置の消費電力が大きくなる。
【0006】
ビームフォーミングを実現する他の方法として、アナログフルコネクションビームフォーミングが提案されている。アナログフルコネクションビームフォーミングを実現するビームフォーミング装置(以下、「アナログフルコネクションビームフォーミング装置」と呼ぶことがある。)の一例を
図1に示す。
【0007】
図1に示すビームフォーミング装置は、4台の端末を収容するために、4個のDACを備える。各DACは、対応する端末に送信すべき信号をアナログ信号に変換する。但し、ビームフォーミング装置は、端末の数(すなわち、信号の数)よりも多くのアンテナ素子を備えることが好ましい。
図1に示す例では、ビームフォーミング装置は、8個のアンテナ素子を備える。この場合、各端末に送信される信号S1~S4は、ローカル信号を用いて、RF帯にアップコンバートされた後、各位相制御回路に分配される。各位相制御回路は、信号S1~S4の位相および/または振幅を制御する。そして、各位相制御回路の出力信号は、それぞれアンテナ素子を介して出力される。ここで、各位相制御回路は、端末の位置に応じて信号S1~S4の位相を制御する。よって、各端末に対応するビームが形成される。
【0008】
なお、ビームフォーミングの構成および動作については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
フルデジタルビームフォーミング装置と比較すると、アナログフルコネクションビームフォーミング装置は、DACの数が少ないので、消費電力が抑制される。ただし、アナログフルコネクションビームフォーミング装置においては、DACと位相制御回路との間で多数の信号線が交差する。
図1に示す例では、4個のDACと8個の位相制御回路との間に32本の信号線が設けられる。ここで、従来のアナログフルコネクションビームフォーミング装置においては、上述の信号線を介して、高速の信号(例えば、RF帯の信号)が伝送される。よって、信号の損失が大きく、実用化は困難である。
【0011】
なお、上述の問題は、損失を補償する回路を付加すれば解決されるかも知れない。しかし、この構成では、損失補償回路を配置するためのスペースが必要になるので、ビームフォーミング装置の小型化が要求されるケースでは好ましくない。加えて、損失補償回路を付加することで消費電力が大きくなるおそれもある。
【0012】
本発明の1つの側面に係わる目的は、ビームフォーミング装置の損失を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの態様のビームフォーミング装置は、それぞれ複数の入力信号の位相または振幅の少なくとも一方を制御して送信信号を生成する複数の制御回路と、それぞれ対応する制御回路により生成される送信信号を出力する複数のアンテナ素子と、を備える。各制御回路により生成される送信信号の周波数領域は、各制御回路の入力信号の周波数領域よりも高い。
【発明の効果】
【0014】
上述の態様によれば、ビームフォーミング装置の損失が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来のビームフォーミング装置の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係わる無線システムの一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係わるビームフォーミング装置の一例を示す図である。
【
図6】
図5に示す構成による位相制御の一例を示す図である。
【
図7】移相機能を分割することによる効果を説明する図である。
【
図8】第2の実施形態に係わる位相制御回路の一例を示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係わる位相制御回路の他の例を示す図である。
【
図10】受信ビームを形成するビームフォーミング装置の一例を示す図である。
【
図11】受信回路に実装される位相制御回路の構成例を示す図(その1)である。
【
図12】受信回路に実装される位相制御回路の構成例を示す図(その2)である。
【
図13】受信回路に実装される位相制御回路の構成例を示す図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図2は、本発明の実施形態に係わる無線システムの一例を示す。この例では、無線システムは、ビームフォーミング装置1および複数の端末101~104を備える。ビームフォーミング装置1は、特に限定されるものではないが、例えば、無線通信システムの基地局に実装される。この場合、各端末は、スマートフォン等のユーザ装置である。
【0017】
ビームフォーミング装置1は、各端末に信号を送信するための送信ビームおよび各端末から信号を受信するための受信ビームを形成することができる。すなわち、ビームフォーミング装置1は、送信ビームを形成する送信回路および受信ビームを形成する受信回路を備える。以下では、送信ビームを形成する送信回路について記載する。
【0018】
ビームフォーミング装置1には、各端末に送信すべき信号が与えられる。例えば、端末101~104に送信すべき信号S1~S4がビームフォーミング装置1に与えられる。そうすると、ビームフォーミング装置1は、信号S1~S4をそれぞれ端末101~104に送信するための送信ビームB1~B4を形成する。送信ビームB1は、ビームフォーミング装置1から端末101に信号S1を伝送するように形成される。したがって、送信ビームB1は、ビームフォーミング装置1から端末101に向かう方向に形成される。同様に、送信ビームB2~B4は、ビームフォーミング装置1から端末102~104にそれぞれ信号S2~S4を伝送するように形成される。このように、ビームフォーミング装置1は、複数の送信ビームを同時に形成することができる。このとき、ビームフォーミング装置1は、端末に位置に応じて、各送信ビームの方向および形状を個々に制御できる。すなわち、ビームフォーミング装置1は、ビーム多重を実現する。
【0019】
<第1の実施形態>
図3は、本発明の実施形態に係わるビームフォーミング装置1の一例を示す。この例では、ビームフォーミング装置1は、複数のデジタル/アナログ変換器(DAC)2(2-1~2-4)、複数の位相制御回路3(3-1~3-8)、複数のアンテナ素子AN1~AN8、およびコントローラ4を備える。そして、ビームフォーミング装置1は、アナログフルコネクションビームフォーミング装置を構成する。なお、ビームフォーミング装置1は、
図3に示していない他の回路を備えていてもよい。また、
図3においては、受信ビームを形成するための受信回路は省略されている。
【0020】
ビームフォーミング装置1が備えるDACの数は、ビームフォーミング装置1が形成可能なビーム数またはビームフォーミング装置1が収容できる端末の数と同じである。この実施例では、ビームフォーミング装置1は、4台の端末を収容できる。よって、ビームフォーミング装置1は、4個のDAC2-1~2-4を備える。
【0021】
ビームフォーミング装置1が備えるアンテナ素子の数は、ビームフォーミング装置1が収容できる端末の数より多いことが好ましい。この実施例では、ビームフォーミング装置1は、8個のアンテナ素子AN1~AN8を備える。なお、アンテナ素子AN1~AN8は、アレイ状に配置されている。すなわち、ビームフォーミング装置1は、アレイアンテナシステムを備える。
【0022】
ビームフォーミング装置1が備える位相制御回路の数は、アンテナ素子の数と同じである。すなわち、各アンテナ素子に対してそれぞれ1個の位相制御回路が設けられる。この実施例では、8個のアンテナ素子AN1~AN8に対して8個の位相制御回路3-1~3-8が設けられている。
【0023】
なお、
図3に示す実施例では、8個のアンテナ素子が1列(1次元)に並べられているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、複数のアンテナ素子は、2次元に配置されてもよいし、3次元に配置されてもよい。
【0024】
コントローラ4は、各端末の位置に基づいて送信ビームを形成するための位相指示(下記の例では、重みW)を生成する。すなわち、コントローラ4は、端末101~104の位置に基づいて、送信ビームB1~B4を形成するための位相指示を生成する。位相指示は、位相制御回路3-1~3-8に与えられる。
【0025】
上記構成のビームフォーミング装置1において、DAC2-1~2-4にそれぞれ信号S1~S4が与えられる。この実施例では、信号S1~S4は、ベースバンド領域または中間周波数帯のデジタル信号である。中間周波数は、特に限定されるものではないが、この実施例では、1GHz程度以下であるものとする。そして、DAC2-1~2-4は、それぞれ、ベースバンド領域または中間周波数帯において、デジタル信号S1~S4をアナログ信号S1~S4に変換する。
【0026】
各DAC2-1~2-4の出力信号は、それぞれ、位相制御回路3-1~3-8に導かれる。すなわち、DAC2-1から出力される信号S1は、位相制御回路3-1~3-8に分配される。DAC2-2から出力される信号S2は、位相制御回路3-1~3-8に分配される。DAC2-3から出力される信号S3は、位相制御回路3-1~3-8に分配される。DAC2-4から出力される信号S4は、位相制御回路3-1~3-8に分配される。
【0027】
したがって、各位相制御回路3-1~3-8は、それぞれDAC2-1~2-4の出力信号を受信する。すなわち、位相制御回路3-1は、DAC2-1から出力される信号S1、DAC2-2から出力される信号S2、DAC2-3から出力される信号S3、DAC2-4から出力される信号S4を受信する。同様に、各位相制御回路3-2~3-8もそれぞれ信号S1~S4を受信する。
【0028】
各位相制御回路3-1~3-8は、各DAC2-1~2-4の出力信号の位相または振幅の少なくとも一方を制御して送信信号を生成する。すなわち、各位相制御回路3-1~3-8は、DAC2-1~2-4から出力される信号S1~S4の位相または振幅の少なくとも一方をそれぞれ制御して送信信号を生成する。
【0029】
ここで、位相制御回路3-1~3-8による信号処理を「重み」で表現する。そうすると、位相制御回路3-1~3-8の出力信号Sout_1~Sout_8は、下記(1)式で表される。
【0030】
【0031】
Sin_iは、DAC2-iから出力され、位相制御回路3-1~3-8に入力される信号を表す。
図3に示す実施例では、Mは4であり、iは1~4である。
【0032】
Sout_jは、位相制御回路3-jから出力される信号を表す。
図3に示す実施例では、Nは8であり、jは1~8である。
【0033】
Wj,iは、DAC2-iから位相制御回路3-jに入力される信号に対して与えられる重みを表す。なお、重みWは、信号の位相または振幅の少なくとも一方を表す。また、重みWは、例えば、複素数で表される。
【0034】
したがって、各位相制御回路3-1~3-8の出力信号は、DAC2-1~2-4の出力信号に対してそれぞれ対応する重みWを与えた後、それらの信号を足し合わせることで生成される。例えば、位相制御回路3-1の出力信号Sout_1は、下記(2)式で表される。
【0035】
【0036】
重みWは、コントローラ4により、信号の宛先端末の位置に基づいて計算される。例えば、
図2に示す端末101に信号S1が送信される場合、重みW1,1~WN,1は、ビームフォーミング装置1に対する端末101の位置に基づいて計算される。また、端末102に信号S2が送信される場合、重みW1,2~WN,2は、ビームフォーミング装置1に対する端末102の位置に基づいて計算される。なお、重みWは、端末の移動またはビームフォーミング装置1と端末との間の無線環境などに応じて更新される。
【0037】
さらに、位相制御回路3-1~3-8は、ベースバンド領域または中間周波数帯の入力信号を無線周波数帯(又は、ミリ波帯)にアップコンバートする機能を備える。無線周波数帯は、特に限定されるものではないが、この実施例では、1GHz以上であるものとする。また、無線周波数帯は、ミリ波帯を含むものとする。そして、位相制御回路3-1~3-8により生成される送信信号(Sout_1~Sout_8)は、それぞれアンテナ素子AN1~AN8を介して出力される。この結果、
図2に示す送信ビームB1~B4が形成される。なお、ビームフォーミング装置1は、
図3に示すように、位相制御回路3-1~3-8とアンテナ素子AN1~AN8との間にそれぞれ増幅器を備えてもよい。
【0038】
このように、
図3に示す構成においては、
図1に示す構成と比較すると、DACと位相制御回路との間で伝送される信号のキャリア周波数は低くなる。具体的には、
図1に示す構成では、DACと位相制御回路との間で無線周波数帯の信号が伝送される。これに対して、
図3に示す構成では、DACと位相制御回路との間において、ベースバンド領域の信号または中間周波数帯の信号が伝送される。よって、
図1に示す構成と比較して信号の損失が小さくなる。
【0039】
図4は、位相制御回路の構成例を示す。ここでは、ビームフォーミング装置1は、4個のDAC(2-1~2-4)を備える。また、位相制御回路3は、
図3に示す位相制御回路3-1~3-8に相当する。すなわち、各位相制御回路3には、DAC2-1~2-4から出力される信号S1~S4が与えられる。
【0040】
図4(a)に示す実施例では、位相制御回路3は、ミキサ11~14および移相器21~24を備える。ミキサ11~14には、それぞれ信号S1~S4が入力される。また、各ミキサ11~14には、ローカル信号が与えられる。なお、
図4(a)においては、ミキサ11のみにローカル信号が与えられているが、実際にはミキサ12~14にも同じローカル信号が与えられる。ローカル信号は、不図示の発振器により生成される。ローカル信号の周波数は、例えば、数GHz~数10GHzである。ローカル信号は、特に限定されるものではないは、例えば、正弦波信号である。そして、ミキサ11~14は、信号S1~S4とローカル信号とを掛け合わせることで、信号S1~S4を無線周波数帯にアップコンバートする。
【0041】
移相器21~24は、無線周波数帯にアップコンバートされた信号S1~S4の位相を制御する。なお、各移相器21~24は、0~360度の範囲で所望の位相シフトを実現できるものとする。ここで、各移相器21~24は、(1)式を参照して説明した重みWに応じて入力信号の位相を制御する。たとえば、
図3に示す位相制御回路3-1においては、(2)式に相当する位相制御が行われる。この場合、移相器21、22、23、24は、それぞれ、重みW1,1、W1,2、W1,3、W1,4により指示される位相制御を行う。
【0042】
移相器21~24の出力信号は、互いに合成される。この結果、対応するアンテナ素子を介して出力すべき送信信号が生成される。
【0043】
このように、
図4(a)に示す構成においては、信号S1~S4が無線周波数帯にアップコンバートされた後に、信号S1~S4の位相が制御される。すなわち、無線周波数帯で位相制御が行われる。よって、信号S1~S4の帯域が広い場合であっても、キャリア周波数に対して信号帯域の割合が小さい。すなわち、信号帯域内で群遅延差分が小さい。したがって、移相器21~24は、それぞれ全信号帯域にわたって容易に所望の位相制御を実現できる。他方、
図3に示す構成によれば、DAC2-1~2-4と位相制御回路3-1~3-8との間において伝送される信号の周波数が低いので、多数の信号線交差が存在しても、信号の損失が小さい。すなわち、
図3および
図4(a)に示す構成によれば、信号損失の抑制および広帯域通信の双方が実現される。
【0044】
なお、移相器21~24としてそれぞれ可変振幅移相器を実装すれば、位相制御回路3は、信号の位相および振幅を同時に制御できる。すなわち、位相制御回路3において位相振幅重み付けが実現される。よって、第1の実施形態に係わる以下の記載において「位相制御」は、位相のみを制御するケースだけでなく、位相および振幅の双方を制御するケースも含むものとする。
【0045】
図4(b)に示す実施例でも、位相制御回路3は、ミキサ11~14および移相器21~24を備える。ただし、
図4(b)に示す構成では、ミキサ11~14の入力側に移相器21~24が配置される。この場合、ベースバンド領域または中間周波数帯で信号S1~S4の位相(又は、位相および振幅の双方)が制御される。なお、
図4(b)に示す実施例では、各信号がミキサ11~14によりそれぞれアップコンバートされるが、これらの信号は、合成された後に1つのミキサによりアップコンバートされてもよい。
【0046】
図4(a)及び
図4(b)に示す実施例では、入力信号S1~S4の位相が直接的に制御される。これに対して、
図4(c)に示す実施例では、アップコンバートのために使用されるローカル信号の位相が制御される。すなわち、移相器31~34は、コントローラ4から与えられる重みWに応じて、それぞれローカル信号の位相を制御する。そして、ミキサ11~14は、それぞれ、信号S1~S4と移相器31~34の出力信号とを掛け合わせる。すなわち、ミキサ11~14において、信号S1~S4と位相が制御されたローカル信号とが掛け合わされる。
【0047】
図5は、位相制御回路の他の構成例を示す。この実施例では、位相制御回路3は、ミキサ11~14、移相器21~24、および移相器25を備える。ここで、移相器21~24は、信号S1~S4が合成される前に、各信号S1~S4の位相をそれぞれ制御する。また、移相器25は、信号S1~S4が合成された後に、合成信号の位相を制御する。すなわち、
図5に示す構成では、2段階で位相制御が行われる。なお、
図5に示す例では、ミキサ11~14の出力側に移相器21~24が設けられるが、ミキサ11~14の入力側に移相器21~24が設けられてもよい。
【0048】
移相器21~24は、0~360度の範囲で所望の位相を実現できる。ただし、移相器21~24は、粗い位相制御ステップで各信号の位相を制御する。位相制御ステップは、ビームフォーミング装置1が同時に収容できる端末の数(或いは、ビームフォーミング装置1が同時に形成できるビームの数)がMである場合、「360/(L×M)」度(Lは、自然数)と表すことができる。すなわち、例えば、位相制御ステップは、「360/M」度(L=1)または「360/2M」度(L=2)である。この実施例では、Mは4である。この場合、移相器21~24の位相制御ステップは、90度または45度である。
【0049】
ビームフォーミング装置1は、位相制御回路3-1~3-8の移相器21~24を用いて、送信ビームB1~B4を形成することができる。ここで、移相器21~24の位相制御ステップが90度である場合、
図6(a)に示すように、4個の角度領域内にそれぞれ送信ビームを形成できる。例えば、ビームフォーミング装置1は、位相制御回路3-1~3-8の移相器21を用いて、信号S1を伝送する送信ビームB1を第1の角度領域に形成する。また、ビームフォーミング装置1は、位相制御回路3-1~3-8の移相器22を用いて、信号S2を伝送する送信ビームB2を第2の角度領域に形成する。同様に、送信ビームB3およびB4は、第3の角度領域および第4の角度領域にそれぞれ形成される。なお、各送信ビームは、例えば、位相制御回路3-1~3-8のそれぞれの移相器25を調整することにより、選択された角度領域の中心方向に形成される。
【0050】
移相器21~24の位相制御ステップが45度である場合は、ビームフォーミング装置1は、位相制御ステップが90度である場合に設定される4個の角度領域をそれぞれ2等分することで得られる合計で8個の角度領域のうちの任意の4個の角度領域に送信ビームを形成できる。ここで、ビームフォーミング装置1は、各端末(この例では、4つの端末101~104)がそれぞれ8個の角度領域のうちのいずれの領域に位置しているのかを判定する。そして、ビームフォーミング装置1は、この判定結果に応じて、移相器21~24を用いて送信ビームB1~B4を形成する。なお、Lを大きくしていくと、それに応じて、角度領域の数が増え、且つ、各角度領域がそれぞれ分割されてゆき、各角度領域が狭くなる。
【0051】
移相器25は、移相器21~24により形成される送信ビームの方向を調整する。ここで、移相器25は、移相器21~24と比較して、細かい位相制御ステップで信号の位相を制御する。ただし、移相器25は、0~360度の範囲で位相制御を行う必要はない。例えば、移相器21~24の位相制御ステップが「360/M」度である場合、移相器25は、0~「360/M」度の範囲で所望の位相を実現できればよい。また、移相器21~24の位相制御ステップが「360/2M」度である場合、移相器25は、0~「360/2M」度の範囲で所望の位相を実現できればよい。
【0052】
図6(b)は、移相器25による送信ビームの調整の一例を示す。なお、移相器21~24により
図6(a)に示す送信ビームB1~B4が形成されるものとする。
【0053】
ビームフォーミング装置1は、位相制御回路3-1~3-8の移相器25を用いて送信ビームB1~B4の方向を調整することができる。ただし、移相器25は、信号S1~S4が合成された信号の位相を一括して制御する。したがって、送信ビームB1~B4の方向は、
図6(b)に示すように、一括して調整される。
【0054】
移相器25による位相制御は、各端末の位置に基づいて行われる。一例としては、可能な限り多くの端末に向かって送信ビームが形成されるように、各移相器25による位相調整量が決定される。例えば、
図6(a)に示す状態では、送信ビームB3のみが端末に向かって形成されているが、
図6(b)に示す状態では、送信ビームB1、B2、B4が端末に向かって形成されている。この場合、基地局は、より多くの端末を収容できる。或いは、優先度の高い端末に向かって送信ビームが形成されるように、各移相器25による位相調整量を決定してもよい。この場合、優先度の高い端末の通信が保証される。
【0055】
このように、
図5に示す位相制御回路3においては、2段階で位相制御が行われる。移相器21~24は、端末が属する角度領域内に送信ビームを形成する役割を担い、移相器25は、移相器21~24により形成される送信ビームの角度を調整する役割を担う。すなわち、移相器21~24は、粗い位相制御ステップで各信号の位相を制御するだけでよいので、その回路構成が簡単になる。この結果、位相制御回路3の小型化が実現される。
【0056】
ここで、位相制御の粒度が10ビットで表されるものとする。このビット数は、説明のための数であり、送信ビームの方向制御の粒度を表す。この例では、ビット数が多いほど送信ビームの方向が細かく制御される。ただし、ビット数が多いほど(即ち、送信ビームの方向制御の粒度が小さいほど)、移相器の回路が複雑になり、回路のサイズが大きくなる。
【0057】
図4に示す位相制御回路においては、
図7(a)に示すように、各信号S1~S4の位相が10ビットの粒度で制御される。この場合、ビームフォーミング装置1は、各送信ビームB1~B4を個々に所望の方向に形成することができる。ただし、各移相器21~24の構成が複雑になり、位相制御回路のサイズが大きくなってしまう。なお、位相制御回路のサイズは、各移相器の粒度を表すビット数の和に依存する。よって、この位相制御回路のサイズは「40ビット」に相当する。
【0058】
一方、
図5に示す位相制御回路においては、1段目の移相器および2段目の移相器により10ビットの位相制御が実現される。一例として、
図7(b)に示すように、1段目の各移相器(21~24)において3ビットの位相制御が行われ、2段目の移相器(25)において7ビットの位相制御が行われるものとする。ここで、3ビットの位相制御は、位相制御ステップが45度である状態に相当する。この場合、
図4に示す構成と比較して、各移相器21~24の構成が簡単になる。この結果、位相制御回路のサイズは「19ビット」に相当する。すなわち、
図4に示す構成と比較して、位相制御回路のサイズを小さくできる。ただし、この構成では、
図4に示す構成と比較して、各送信ビームを形成できる方向の自由度が低くなる。
【0059】
なお、各移相器21~24は、複数の移相器で実現してもよい。例えば、
図7(c)に示す例では、各移相器21~24が3ビットの位相制御を行うケースにおいて、各移相器21~24が3個の移相器26a~26cで実現されている。移相器26aは、ミキサの入力側に設けられ、1ビット相当の位相制御を行う。移相器26bは、アップコンバートのためのローカル(LO)信号に対して1ビット相当の位相制御を行う。移相器26cは、ミキサの出力側に設けられ、1ビット相当の位相制御を行う。
図7(c)に示す例では、移相器26aにおいて180度位相差の選択が行われ、移相器26bにおいて90度位相差の選択が行われ、移相器26cにおいて45度位相差の選択が行われる。ここで、1ビット相当の位相制御は、2値の1組の信号を生成してそのうちの一方を選択する簡単な回路により実現される。よって、この構成によれば、位相制御回路のサイズをさらに小さくできる。
【0060】
<第2の実施形態>
ビームフォーミング装置の構成は、第1の実施形態および第2の実施形態において実質的に同じである。すなわち、第2の実施形態においても、ビームフォーミング装置1は、
図3に示すように、複数のデジタル/アナログ変換器(DAC)2(2-1~2-4)、複数の位相制御回路3(3-1~3-8)、複数のアンテナ素子AN1~AN8、およびコントローラ4を備える。そして、ビームフォーミング装置1は、アナログフルコネクションビームフォーミング装置を構成する。ただし、各位相制御回路3の構成は、第1の実施形態および第2の実施形態で異なっている。なお、第2の実施形態に係わる記載においても、「位相制御」は、位相のみを制御するケースだけでなく、位相および振幅の双方を制御するケースも含むものとする。
【0061】
図8は、第2の実施形態において実装される位相制御回路3の一例を示す。第2の実施形態においては、位相制御回路3は、
図8に示すように、複数の移相部41~44を備える。移相部41~44は、
図3に示すDAC2-1~2-4に対して設けられている。すなわち、移相部41~44には、それぞれ、DAC2-1~2-4から出力される信号S1~S4が与えられる。なお、移相部41~44の構成および動作は、互いに実質的に同じなので、以下では、移相部41の構成および動作について記載する。
【0062】
移相部41は、ミキサ41a、41b、および可変増幅器41c、41dを備える。そして、移相部41には、対応するDAC(ここでは、
図3に示すDAC2-1)から出力される信号S1が与えられる。移相部41において、信号S1は、分岐されてミキサ41a、41bに導かれる。また、ミキサ41a、41bには、アップコンバートを行うためのローカル信号が与えられる。
【0063】
ローカル信号は、不図示の発振器により生成される、無線周波数帯の発振信号である。ただし、ミキサ41a、41bに与えられるローカル信号の位相は、コントローラ4により制御される。この実施例では、ミキサ41aには、基準位相を有するローカル信号、又は、基準位相に対して位相が180度シフトしたローカル信号の一方が与えられる。ミキサ41bには、基準位相に対して位相が90度シフトしたローカル信号、又は、基準位相に対して位相が270度シフトしたローカル信号の一方が与えられる。なお、以下の記載では、基準位相を有するローカル信号、基準位相に対して位相が90度シフトしたローカル信号、基準位相に対して位相が180度シフトしたローカル信号、基準位相に対して位相が270度シフトしたローカル信号を、それぞれ、LO(0)信号、LO(90)信号、LO(180)信号、LO(270)信号と呼ぶことがある。
【0064】
ここで、ミキサ41a、41bに対してそれぞれどちらのLO信号を与えるのかは、信号S1の位相をどのように制御するのかによって決まる。換言すれば、ミキサ41a、41bに対してそれぞれどちらのLO信号を与えるのかは、(1)式を参照して説明した重みWに応じて決定される。例えば、
図3に示す位相制御回路3-1に実装される移相部41においては、(1)式または(2)式に示す重みW1,1に基づいて、LO信号が選択される。
【0065】
具体的には、送信ビームB1を形成するために、信号S1の位相を0~90度の範囲内の所定の位相に制御するときは、LO(0)信号がミキサ41aに与えられ、LO(90)信号がミキサ41bに与えられる。信号S1の位相を90~180度の範囲内の所定の位相に制御するときは、LO(180)信号がミキサ41aに与えられ、LO(90)信号がミキサ41bに与えられる。信号S1の位相を180~270度の範囲内の所定の位相に制御するときは、LO(180)信号がミキサ41aに与えられ、LO(270)信号がミキサ41bに与えられる。信号S1の位相を270~360度の範囲内の所定の位相に制御するときは、LO(0)信号がミキサ41aに与えられ、LO(270)信号がミキサ41bに与えられる。このように、ミキサ41a、41bは、象限を選択する機能を有する。そして、ミキサ41a、41bは、それぞれ、与えられたローカル信号を用いて信号S1を無線周波数帯にアップコンバートする。この結果、対応する入力信号(即ち、信号S1)から互いに位相が異なるアップコンバートされた2つの信号が生成される。
【0066】
可変増幅器41c、41dは、それぞれ、ミキサ41a、41bの出力信号の振幅を制御する。可変増幅器41c、41dの利得は、信号S1の位相をどのように制御するのかによって決まる。換言すれば、可変増幅器41c、41dの利得は、(1)式を参照して説明した重みWに応じて決定される。例えば、
図3に示す位相制御回路3-1に実装される移相部41においては、(1)式または(2)式に示す重みW1,1に基づいて、可変増幅器41c、41dの利得が決定される。
【0067】
一例として、LO(0)信号がミキサ41aに与えられ、LO(90)信号がミキサ41bに与えられているものとする。すなわち、ミキサ41a、41bにより第1象限が選択されている。この場合、例えば、信号S1の位相を「45度」に制御するためには、可変増幅器41c、41dの利得が同じ値に制御される。また、信号S1の位相を「ゼロ度」に制御するためには、可変増幅器41cの利得が所定値に制御され、可変増幅器41dの利得がゼロに制御される。
【0068】
このように、各移相部41~44は、1組のミキサの出力信号の振幅を調整することにより、指定された位相を実現する。そして、位相制御回路3は、移相部41~44の出力信号を合成して送信信号を生成する。この送信信号は、対応するアンテナ素子を介して出力される。
【0069】
なお、可変増幅器41cおよび41dの利得の比率を固定しながら可変増幅器41cおよび41dの利得を可変させることにより、位相制御回路3の出力信号の振幅を可変させることが出来る。すなわち、「振幅制御」が可能となる。また、この「振幅制御」と上述の位相設定(「位相制御」)とを組み合わせれば、位相制御回路3は、「位相制御」及び「振幅制御」を実現できる。
【0070】
図9は、第2の実施形態において実装される位相制御回路3の他の例を示す。
図8に示す構成と同様に、
図9に示す位相制御回路3も、複数の移相部41~44を備える。そして、各移相部41~44は、ミキサ41a、41b、および可変増幅器41c、41dを備える。ただし、
図8に示す構成では、各移相部41~44は、1組のミキサの出力信号の振幅を調整することにより、指定された位相を実現する。これに対して、
図9に示す構成では、各移相部41~44は、1組のミキサの入力信号の振幅を調整することにより、指定された位相を実現する。
【0071】
すなわち、
図9に示す構成では、対応するDACから出力される信号(たとえば、信号S1)が分岐されて可変増幅器41c、41dに与えられる。可変増幅器41c、41dは、それぞれ、コントローラ4により指定された位相に応じて、信号S1の振幅を制御する。そして、ミキサ41a、41bは、それぞれ、可変増幅器41c、41dをアップコンバートする。このとき、可変増幅器41c、41dに与えられるLO信号の位相は、コントローラ4により指定された位相に応じて制御されている。
【0072】
このように、
図9に示す構成では、1組のミキサの入力信号の振幅を調整することで指定された位相が実現される。すなわち、可変増幅器41c、41dは、低周波数帯(この例では、ベースバンド領域または中間周波数帯)において入力信号の振幅を制御する。したがって、高周波数帯(例えば、無線周波数帯)において振幅を制御する構成と比べて、
図9に示す構成によれば、振幅制御の精度が高い。この結果、入力信号に対する位相制御の精度が高くなり、送信ビームの方向制御の精度も高くなる。これにより、通信品質の向上が実現される。
【0073】
なお、
図8に示す構成と同様に、可変増幅器41cおよび41dの利得の比率を固定しながら可変増幅器41cおよび41dの利得を可変させることにより、位相制御回路3の出力信号の振幅を可変させることが出来る。すなわち、「振幅制御」が可能となる。また、この「振幅制御」と上述の位相設定(「位相制御」)とを組み合わせれば、位相制御回路3は、「位相制御」及び「振幅制御」を実現できる。
【0074】
<受信ビームの形成>
図10は、受信ビームを形成するビームフォーミング装置の一例を示す。なお、ビームフォーミング装置1は、上述したように、送信ビームを形成する送信回路および受信ビームを形成する受信回路を備える。よって、
図10は、ビームフォーミング装置の受信回路の一例を示す。また、受信ビームの形成に係わる以下の記載においても、「位相制御」は、位相のみを制御するケースだけでなく、位相および振幅の双方を制御するケースも含むものとする。
【0075】
ビームフォーミング装置1の受信回路の構成は、
図3に示した送信回路とほぼ同じである。ただし、受信回路は、送信回路が備える位相制御回路3-1~3-8の代わりに、位相制御回路6-1~6-8を備える。また、受信回路は、送信回路が備えるDAC2-1~2-4の代わりに、アナログ/デジタル変換器(ADC)7-1~7-4を備える。なお、アンテナ素子AN1~AN8は、送信回路および受信回路により共用されてもよい。或いは、送信回路が複数の送信アンテナ素子を備え、受信回路が複数の受信アンテナ素子を備える構成であってもよい。コントローラ4は、この実施例では、送信回路および受信回路により共用される。
【0076】
上記構成のビームフォーミング装置1において、アンテナ素子AN1~AN8に到着する信号は、それぞれ位相制御回路6-1~6-8に導かれる。位相制御回路6-1~6-8は、コントローラ4から与えられる位相制御指示に従って受信信号の位相を制御する。このとき、各位相制御回路6-1~6-8は、端末ごとに位相制御を行う。また、位相制御回路6-1~6-8は、受信信号をベースバンド領域または中間周波数帯にダウンコンバートする。
【0077】
位相制御回路6-1~6-8により位相が制御された信号は、ADC7-1~7-4に導かれる。例えば、各位相制御回路6-1~6-8において端末101に対応する位相制御が行われた信号は、ADC7-1に導かれる。同様に、各位相制御回路6-1~6-8において端末102に対応する位相制御が行われた信号は、ADC7-2に導かれる。各位相制御回路6-1~6-8において端末103に対応する位相制御が行われた信号は、ADC7-3に導かれる。各位相制御回路6-1~6-8において端末104に対応する位相制御が行われた信号は、ADC7-4に導かれる。
【0078】
ADC7-1~7-4は、位相制御回路6-1~6-8から受信する信号をデジタル信号に変換する。すなわち、各ADC7-1~7-4は、8個の受信信号をそれぞれデジタル信号に変換する。なお、不図示のデジタル信号処理部は、ADCの出力信号からデータを再生する。
【0079】
このように、本発明の実施形態に係わるビームフォーミング装置1の受信回路においては、位相制御回路とADCとの間で伝送される信号の周波数は低くなる。具体的には、位相制御回路とADCとの間において、ベースバンド領域の信号または中間周波数帯の信号が伝送される。よって、多数の信号線交差が存在しても、信号の損失が小さくなる。
【0080】
図11~
図13は、ビームフォーミング装置の受信回路に実装される位相制御回路の構成例を示す。なお、
図11~
図13に示す各構成は、
図10に示す位相制御回路6-1~6-8のいずれか1つに相当する。以下の記載では、位相制御回路6は、位相制御回路6-1~6-8を表す。
【0081】
図11(a)に示す構成は、
図4(a)に示す位相制御回路3に対応している。すなわち、受信回路に実装される位相制御回路6は、移相器61~64およびミキサ71~74を備える。移相器61~64は、受信信号の位相を制御する。ここで、受信信号は、この例では、端末101~104から出力される無線周波数帯の信号を含む。また、移相器61~64は、それぞれ、コントローラ4により指示される位相制御を行う。なお、コントローラ4は、端末101~104に位置に応じて移相器61~64に指示を与える。ミキサ71~74は、それぞれ、ローカル信号を用いて移相器61~64の出力信号をダウンコンバートする。ローカル信号は、不図示の発振器により生成される。なお、ミキサ71の出力信号は、ADC7-1に導かれる。同様に、ミキサ72~74の出力信号は、それぞれADC7-2~7-4に導かれる。
【0082】
このように、
図11(a)に示す構成においては、受信信号の位相が無線周波数帯において制御される。このため、受信信号の帯域が広い場合であっても、キャリア周波数に対して信号帯域の割合が小さい。すなわち、信号帯域内で群遅延差分が小さい。よって、移相器61~64は、それぞれ全信号帯域にわたって容易に所望の位相制御を実現できる。
【0083】
図11(b)に示す実施例でも、位相制御回路6は、ミキサ71~74および移相器61~64を備える。ただし、
図11(b)に示す構成では、ミキサ71~74の出力側に移相器61~64が配置される。この場合、ベースバンド領域または中間周波数帯で受信信号の位相が制御される。なお、
図11(b)に示す実施例では、受信信号が分離された後にミキサ71~74によりダウンコンバートが行われるが、受信信号は、1つのミキサによりダウンコンバートされてもよい。この場合、ダウンコンバートされた受信信号が移相器61~64に導かれる。
【0084】
図11(c)に示す構成は、
図5に示す構成に対応する。すなわち、位相制御回路6は、移相器61~64およびミキサ71~74に加え移相器65を備え、2段階で位相制御を行う。なお、
図11(c)に示す例では、ミキサ71~74の入力側に移相器61~64が設けられるが、ミキサ71~74の出力側に移相器61~64が設けられてもよい。
【0085】
移相器65は、移相器61~64により形成される受信ビームの方向を調整する。ここで、
図5に示す構成と同様に、移相器61~64は、粗い位相制御ステップで受信信号の位相を制御し、移相器65は、移相器61~64と比較して、細かい位相制御ステップで信号の位相を制御する。この場合、移相器65は、0~360度の範囲で位相制御を行う必要はない。例えば、移相器61~64の位相制御ステップが「360/M」度である場合、移相器65は、0~「360/M」度の範囲で所望の位相を実現できればよい。また、移相器61~64の位相制御ステップが「360/2M」度である場合、移相器65は、0~「360/2M」度の範囲で所望の位相を実現できればよい。
【0086】
図11(a)及び
図11(b)に示す実施例では、移相器61~64により受信信号の位相が制御される。これに対して、
図12(a)に示す実施例では、ダウンコンバートに使用されるローカル信号の位相が制御される。すなわち、移相器81~84は、それぞれコントローラ4から与えられる重みWに応じてローカル信号の位相を制御する。そして、ミキサ71~74は、それぞれ、受信信号と移相器81~84の出力信号とを掛け合わせる。
【0087】
図12(b)に示す構成では、各受信信号に対する位相制御が複数の移相器により実現される。この例では、端末101から受信する信号の位相は、ミキサ71の入力側に設けられる移相器66a、ミキサ71の出力側に設けられる移相器66b、およびローカル信号の位相を制御する移相器66cにより制御される。同様に、他の端末からの受信信号の位相も3個の移相器により制御される。
【0088】
図13(a)に示す構成は、
図8に示す構成に対応する。すなわち、受信回路に実装される位相制御回路6は、移相部91~94を備える。そして、各移相部(ここでは、移相部91)は、可変増幅器91a、91b、およびミキサ91c、91dを備える。可変増幅器91a、91bは、それぞれ、コントローラ4から与えられる指示に従って受信信号の振幅を制御する。ミキサ91cには、コントローラ4により選択されたLO(0)信号またはLO(180)信号が与えられる。ミキサ91dには、コントローラ4により選択されたLO(90)信号またはLO(270)信号が与えられる。そして、ミキサ91c、91dは、それぞれ、与えられたLO信号を用いて、可変増幅器91a、91bの出力信号をダウンコンバートする。
【0089】
図13(a)に示す構成と同様に、
図13(b)に示す位相制御回路6においても、各移相部(ここでは、移相部91)は、可変増幅器91a、91b、およびミキサ91c、91dを備える。ただし、
図13(b)に示す構成では、ミキサ91c、91dの出力側に可変増幅器91a、91bが設けられる。即ち、可変増幅器91a、91bは、それぞれ、ミキサ91c、91dによりダウンコンバートされた受信信号の振幅を制御する。このように、
図13(b)に示す構成では、低周波数帯(この例では、ベースバンド領域または中間周波数帯)にダウンコンバートされた受信信号の振幅が制御される。よって、振幅制御の精度が高くなり、受信信号に対する位相制御の精度が高くなるので、受信ビームの方向制御の精度も高くなる。これにより、通信品質の向上が実現される。
【0090】
なお、送信ビームを形成する構成と同様に、
図13(a)および
図13(b)に示す受信ビームを形成する構成でも、可変増幅器91aおよび91bの利得の比率を固定しながら可変増幅器91aおよび91bの利得を可変させることにより、位相制御回路6の出力信号の振幅を可変させることが出来る。すなわち、「振幅制御」が可能となる。また、この「振幅制御」と上述の位相設定(「位相制御」)とを組み合わせれば、位相制御回路6は、「位相制御」及び「振幅制御」を実現できる。
【0091】
上述の実施例を含む実施形態に関し、さらに下記の付記を開示する。
(付記1)
それぞれ、複数の入力信号の位相または振幅の少なくとも一方を制御して送信信号を生成する複数の制御回路と、
それぞれ、対応する制御回路により生成される送信信号を出力する複数のアンテナ素子と、を備え、
各制御回路により生成される送信信号の周波数領域は、各制御回路の入力信号の周波数領域よりも高い
ことを特徴とするビームフォーミング装置。
(付記2)
各制御回路は、
前記複数の入力信号をそれぞれアップコンバートする複数のミキサと、
前記複数のミキサの出力信号の位相をそれぞれ制御する複数の移相器と、を備え
各制御回路は、前記複数の移相器の出力信号を合成して前記送信信号を生成する
ことを特徴とする付記1に記載のビームフォーミング装置。
(付記3)
各制御回路は、
前記複数の入力信号の位相をそれぞれ制御する複数の移相器と、
前記複数の移相器の出力信号をそれぞれアップコンバートする複数のミキサと、を備え、
各制御回路は、前記複数のミキサの出力信号を合成して前記送信信号を生成する
ことを特徴とする付記1に記載のビームフォーミング装置。
(付記4)
各制御回路は、
前記複数の入力信号にそれぞれ発振信号を掛け合わせる複数のミキサと、
前記複数のミキサに与えられる発振信号の位相をそれぞれ制御する複数の移相器と、を備え
各制御回路は、前記複数のミキサの出力信号を合成して前記送信信号を生成する
ことを特徴とする付記1に記載のビームフォーミング装置。
(付記5)
各制御回路は、
前記複数の入力信号または当該制御回路内でアップコンバートされた複数の入力信号の位相をそれぞれ制御する複数の第1の移相器と、
前記複数の第1の移相器の出力信号を合成することにより得られる送信信号の位相を制御する第2の移相器と、を備える
ことを特徴とする付記1に記載のビームフォーミング装置。
(付記6)
前記ビームフォーミング装置が同時に形成可能な送信ビーム数がMであり、Lが任意の整数であるとき、各第1の移相器の位相制御ステップは360度/(L×M)である
ことを特徴とする付記5に記載のビームフォーミング装置。
(付記7)
前記第2の移相器の位相制御範囲は、360度/(L×M)である
ことを特徴とする付記6に記載のビームフォーミング装置。
(付記8)
各制御回路は、複数の移相部を備え、
各移相部は、
対応する入力信号から互いに位相が異なるアップコンバートされた2つの信号を生成する1組のミキサと、
前記1組のミキサから出力される2つの信号の振幅をそれぞれ制御する1組の可変増幅器と、を備え、
各移相部は、前記1組の可変増幅器の出力信号を合成して出力し、
前記制御回路は、前記複数の移相部の出力信号を合成して出力する
ことを特徴とする付記1に記載のビームフォーミング装置。
(付記9)
各制御回路は、複数の移相部を備え、
各移相部は、
対応する入力信号から互いに振幅が異なる2つの信号を生成する1組の可変増幅器と、
前記1組の可変増幅器から出力される2つの信号をそれぞれアップコンバートすると共に前記2つの信号の位相を互いに異ならせる1組のミキサと、を備え、
各移相部は、前記1組のミキサの出力信号を合成して出力し、
前記制御回路は、前記複数の移相部の出力信号を合成して出力する
ことを特徴とする付記1に記載のビームフォーミング装置。
(付記10)
複数のアンテナ素子と、
それぞれ、対応するアンテナ素子を介して与えられる受信信号の位相または振幅の少なくとも一方を制御する複数の制御回路と、を備え、
各制御回路の出力信号の周波数領域は、各制御回路に与えられる受信信号の周波数領域よりも低い
ことを特徴とするビームフォーミング装置。
(付記11)
各制御回路は、
前記受信信号をそれぞれダウンコンバートする複数のミキサと、
前記複数のミキサの出力信号の位相をそれぞれ制御する複数の移相器と、を備える
ことを特徴とする付記10に記載のビームフォーミング装置。
(付記12)
各制御回路は、
前記受信信号の位相をそれぞれ制御する複数の移相器と、
前記複数の移相器の出力信号をそれぞれダウンコンバートする複数のミキサと、を備える
ことを特徴とする付記10に記載のビームフォーミング装置。
(付記13)
各制御回路は、
前記受信信号にそれぞれ発振信号を掛け合わせる複数のミキサと、
前記複数のミキサに与えられる発振信号の位相をそれぞれ制御する複数の移相器と、を備える
ことを特徴とする付記10に記載のビームフォーミング装置。
(付記14)
各制御回路は、
前記受信信号の位相を制御する第1の移相器と、
前記第1の移相器の出力信号の位相をそれぞれ制御する複数の移相器と、
前記複数の移相器の出力信号をダウンコンバートする複数のミキサと、を備える
ことを特徴とする付記10に記載のビームフォーミング装置。
(付記15)
前記ビームフォーミング装置が同時に形成可能な受信ビーム数がMであり、Lが任意の整数であるとき、各第2の移相器の位相制御ステップは360度/(L×M)である
ことを特徴とする付記14に記載のビームフォーミング装置。
(付記16)
前記第1の移相器の位相制御範囲は、360度/(L×M)である
ことを特徴とする付記15に記載のビームフォーミング装置。
(付記17)
各制御回路は、複数の移相部を備え、
各移相部は、
前記受信信号から互いに位相が異なるダウンコンバートされた2つの信号を生成する1組のミキサと、
前記1組のミキサから出力される2つの信号の振幅をそれぞれ制御する1組の可変増幅器と、を備え、
各移相部は、前記1組の可変増幅器の出力信号を合成して出力する
ことを特徴とする付記10に記載のビームフォーミング装置。
(付記18)
各制御回路は、複数の移相部を備え、
各移相部は、
前記受信信号から互いに振幅が異なる2つの信号を生成する1組の可変増幅器と、
前記1組の可変増幅器から出力される2つの信号をそれぞれダウンコンバートすると共に前記2つの信号の位相を互いに異ならせる1組のミキサと、を備え、
各移相部は、前記1組のミキサの出力信号を合成して出力する
ことを特徴とする付記10に記載のビームフォーミング装置。
(付記19)
M個のデジタル/アナログ変換器、N個の位相制御回路、およびN個のアンテナ素子を備えるビームフォーミング装置を用いて送信ビームを形成するビームフォーミング方法であって、
各デジタル/アナログ変換器から出力される第1の周波数領域の信号は、それぞれ、N個の位相制御回路に分配され、
各位相制御回路は、前記M個のデジタル/アナログ変換器から入力されるM個の信号それぞれに対して、位相制御および前記第1の周波数領域から第2の周波数領域へのアップコンバートを行い、
各位相制御回路により位相制御およびアップコンバートが行われたM個の信号は、合成されて対応するアンテナ素子を介して出力される
ことを特徴とするビームフォーミング方法。
(付記20)
N個のアンテナ素子、N個の位相制御回路、およびM個のアナログ/デジタル変換器を備えるビームフォーミング装置を用いて受信ビームを形成するビームフォーミング方法であって、
各位相制御回路は、対応するアンテナ素子を介して受信する第1の周波数領域の信号をM個の受信信号に分割し、前記M個の受信信号それぞれに対して、位相制御および前記第1の周波数領域から第2の周波数領域へのダウンコンバートを行い、
各位相制御回路により位相制御およびダウンコンバートが行われたM個の信号は、前記M個のアナログ/デジタル変換器に導かれる
ことを特徴とするビームフォーミング方法。
【符号の説明】
【0092】
1 ビームフォーミング装置
2(2-1~2-4) デジタル/アナログ変換器(DAC)
3(3-1~3-8) 位相制御回路
4 コントローラ
6-1~6-8 位相制御回路
7-1~7-4 アナログ/デジタル変換器(ADC)
11~14 ミキサ
21~24、25 移相器
31~34 移相器
41a、41b ミキサ
41c、41d 可変増幅器
61~64 移相器
71~74 ミキサ
81~84 移相器
91a、91b 可変増幅器
91c、91d ミキサ
101~104 端末