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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】検知システム
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/22 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
E04H15/22
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019131925
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021017688
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大出 大輔
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-147595(JP,A)
【文献】特開2003-291897(JP,A)
【文献】特開平01-215697(JP,A)
【文献】特開平08-279715(JP,A)
【文献】特開2002-362500(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0038455(KR,A)
【文献】特開2004-176464(JP,A)
【文献】米国特許第05833176(US,A)
【文献】米国特許第02948286(US,A)
【文献】特開昭60-098067(JP,A)
【文献】特開2001-303796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 15/00-15/64
E04B 1/343-1/346
B64G 1/22
B66D 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張可能なインフレータブル構造物と、
前記インフレータブル構造物の膨張状態を検知する検知装置と、
を有する検知システムであって、
前記検知装置は、
が前記インフレータブル構造物に固定された索状体と、
前記インフレータブル構造物に設けられ、前記索状体を繰り出す繰出機と、
前記インフレータブル構造物の膨張に伴う前記繰出機から前記索状体の引出量を測定する引出量測定器と、
前記繰出機から離れた位置において前記インフレータブル構造物に設けられ、前記繰出機から引き出される前記索状体の前記端を固定する末端止めと、
前記繰出機から引き出された前記索状体の方向を転換するための方向転換器と、
を備え、
前記索状体、前記繰出機、前記引出量測定器、前記末端止め、及び前記方向転換器は、前記インフレータブル構造物の内面に設置され、
前記末端止めが設置される位置は、前記インフレータブル構造物の膨張に伴って前記方向転換器から離間するような位置であることを特徴とする検知システム。
【請求項2】
前記検知装置が、前記引出量測定器による測定値に従って信号を変調させて電波を送信する無線通信機を更に備える請求項1に記載の検知システム
【請求項3】
前記インフレータブル構造物が、
前記繰出機からの前記索状体の繰り出しを拘束ないし解放するロック機構と、
前記引出量測定器による測定値と所定の閾値を比較し、比較の結果、前記引出量測定器による測定値が前記所定の閾値を超えた場合に前記繰出機からの前記索状体の繰り出しを拘束ないし解放させるよう、前記ロック機構を制御する制御回路と、
を備える請求項1または2に記載の検知システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張可能なインフレータブル構造物と、インフレータブル構造物の膨張状態を検知する検知装置とを有する検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙、深海、極寒地域等の極限環境下に太陽光発電装置、居住スペース等の構造物を設置することの必要性が高まっている(特許文献1、非特許文献1参照)。そして、極限環境下では構造物の建造及び組立をすることが困難であるため、インフレータブル構造物及び展開構造物の利用のための研究及び開発が行われている(非特許文献1参照)。インフレータブル構造物は中空を有した膜構造物であり、展開構造物は展開・折り畳み可能な構造物である。インフレータブル構造物又は展開構造物を極限環境下に輸送した上で、インフレータブル構造物を膨張させ、又は展開構造物を展開させる。これにより、極限環境下にインフレータブル構造物や展開構造物を容易に設置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-7878号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】石田良平ほか3名,“宇宙でのインフレータブル構造の利用について”,スペース・エンジニアリング・コンファレンス講演論文集、一般社団法人日本機械学会、2001年9月,p.71-76
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、極限環境下に設置したインフレータブル構造物の膨張状態又は展開構造物の展開状態を簡易に把握出来るような技術が開発されていない。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インフレータブル構造物の膨張状態又は展開構造物の展開状態を検知する検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、膨張可能なインフレータブル構造物と、前記インフレータブル構造物の膨張状態を検知する検知装置と、を有する検知システムであって、前記検知装置は、端が前記インフレータブル構造物に固定された索状体と、前記インフレータブル構造物に設けられ、前記索状体を繰り出す繰出機と、前記インフレータブル構造物の膨張に伴う前記繰出機から前記索状体の引出量を測定する引出量測定器と、前記繰出機から離れた位置において前記インフレータブル構造物に設けられ、前記繰出機から引き出される前記索状体の前記端を固定する末端止めと、前記繰出機から引き出された前記索状体の方向を転換するための方向転換器と、を備え、前記索状体、前記繰出機、前記引出量測定器、前記末端止め、及び前記方向転換器は、前記インフレータブル構造物の内面に設置され、前記末端止めが設置される位置は、前記インフレータブル構造物の膨張に伴って前記方向転換器から離間するような位置であることを特徴とする検知システムが提供される。
【0008】
以上によれば、引出量測定器によって測定された索状体の引出量からインフレータブル構造物の膨張状態又は展開可能な展開構造物を把握することができる。また、検知装置の構造がシンプルである。
【0009】
好ましくは、前記検知装置が、前記繰出機から離れた位置において前記インフレータブル構造物又は前記展開構造物に設けられ、前記繰出機から引き出される前記索状体の端を固定する末端止めを更に備える。
【0010】
以上のように索状体の端が末端止めに固定されるため、インフレータブル構造物の膨張又は展開構造物の展開に伴って索状体が確実に引き出される。
【0011】
好ましくは、前記検知装置が、前記引出量測定器による測定値に従って信号を変調させて電波を送信する無線通信機を更に備える。
【0012】
以上によれば、引出量測定器による測定値が乗った電波が遠隔地に送信されるため、遠隔地においてもインフレータブル構造物の膨張状態又は展開可能な展開構造物を把握することができる。
【0013】
好ましくは、構造物が、前記検知装置と、前記インフレータブル構造物又は前記展開構造物と、前記繰出機を拘束・解放するロック機構と、前記引出量測定器による測定値と所定の閾値を比較し、比較の結果、前記引出量測定器による測定値が前記所定の閾値を超えた場合に前記ロック機構に前記繰出機を拘束させる制御回路と、を備える。
【0014】
以上によれば、膨張後のインフレータブル構造物或いは展開後の展開構造物が所望の形状に調整される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インフレータブル構造物の膨張状態又は展開可能な展開構造物を検知装置によって把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の構造物の概略的に示した図面である。
図2】第1実施形態の構造物の概略的に示した図面である。
図3】第1実施形態の変形例の構造物の概略的に示した図面である。
図4】第2実施形態の構造物の概略的に示した図面である。
図5】第2実施形態の構造物の概略的に示した図面である。
図6】第3実施形態の構造物の概略的に示した図面である。
図7】第3実施形態の構造物の概略的に示した図面である。
図8】第4実施形態の構造物の概略的に示した図面である。
図9】第4実施形態の構造物の概略的に示した図面である。
図10】第4実施形態の変形例の構造物の概略的に示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0018】
<<第1の実施の形態>>
図1は、宇宙に設置された構造物10のインフレータブル構造物20が膨張する前の図面である。図2は、インフレータブル構造物20が膨張した後の図面である。
【0019】
構造物10は、インフレータブル構造物20と、インフレータブル構造物20の膨張状態を検知する検知装置30と、制御回路40と、ロック機構32aとを備える。
【0020】
インフレータブル構造物20は宇宙に、例えば衛星又は惑星の地表又は地中に設置される。但し、インフレータブル構造物20は地面に固定されていなくてもよく、例えば宇宙空間に浮遊又は飛行してもよい。インフレータブル構造物20は中空を有した膜構造物であり、より具体的には空気膜構造物(エアサポート構造物又はニューマチック構造物ともいう。)である。
【0021】
インフレータブル構造物20は膨張可能なものである。インフレータブル構造物20は、宇宙に設置された当初において、収縮した状態にある。空気等のガスがガス供給装置(例えば、液体ガスボンベ)からインフレータブル構造物20の中空に供給されて、中空の気圧が適切に調整されると、インフレータブル構造物20が膨張する。また、中空の気圧が適切に調整されると、インフレータブル構造物20の形態が維持されて、膨張及び収縮しない。なお、膨張したインフレータブル構造物20は有人構造物であり、中空は居住スペースとして利用される。
【0022】
インフレータブル構造物20の内面には、床版39が設置されている。インフレータブル構造物20が衛星又は惑星の地表に設置される場合、床版39がインフレータブル構造物20の膜を介して地表に支持される。
【0023】
検知装置30は索状体31、繰出機32、方向転換器33、末端止め34、引出量測定器35、無線通信機36及びアンテナ37を備える。
【0024】
索状体31は細長く線状のものであり、例えば糸、紐、綱、縄、ワイヤー、ロープ又はストランドである。索状体31は可撓性を有する。索状体31の組成は例えば金属、樹脂、ゴム若しくは繊維又はこれらの複合材である。
【0025】
繰出機32はインフレータブル構造物20の内面に、より具体的には床版39に設置されている。繰出機32は索状体31の供給源であり、例えば索状体31が繰出機32に巻回されている。繰出機32は例えばドラム、ウィンチ、リール、ロール又は回転軸である。なお、索状体31が繰出機32から引き出されている際に、繰出機32が引出の抵抗力を索状体31に発生させてもよい。これにより、索状体31に張力が生じて索状体31が弛まず、後述の引出量測定器35により索状体31の引出長さが正確に測定される。
【0026】
繰出機32には,繰出機32を拘束・解放するロック機構32aが設けられている。ロック機構32aによって繰出機32が拘束されている場合には、繰出機32からの索状体31の引出が止められて、索状体31がそれ以上に引き出されない。一方、ロック機構32aによって繰出機32が解放されている場合には、索状体31が繰出機32から引出可能である。
【0027】
方向転換器33はインフレータブル構造物20の内面の繰出機32近傍に、より具体的には床版39に設置されている。繰出機32から引き出された索状体31が方向転換器33に掛けられて、方向転換器33によって方向転換されている。方向転換器33は例えば滑車、ロール、スプロケット、フック、回転軸、索状体通しリング又は索状体案内である。
【0028】
末端止め34は方向転換器33及び床版39から離れて、インフレータブル構造物20の内面に設置されている。末端止め34の設置位置は、インフレータブル構造物20の膨張に伴って方向転換器33から離間するような位置であり、例えば方向転換器33の設置位置に相対する位置である。索状体31の末端が末端止め34に固定されている。
【0029】
引出量測定器35は、繰出機32から引き出される索状体31の引出量(引出長さ)を測定して、その引出量を電気信号に変換する装置である。引出量測定器35は例えばエンコーダ又はポテンショメータである。引出量測定器35は繰出機32から末端止め34までの索状体31の経路の中途部に設置されている。例えば、引出量測定器35は、繰出機32と方向転換器33の間の位置に設置されている。ここで、引出量測定器35の設置位置は、引出量測定器35から繰出機32までの索状体31に沿った距離がインフレータブル構造物20の膨張に伴って変化しないような位置である。なお、引出量測定器35が繰出機32又は方向転換器33に内蔵されていてもよい。
【0030】
引出量測定器35は、索状体31の引出量を表す電気信号を無線通信機36に出力する。また、引出量測定器35の出力信号が制御回路40に入力されて、制御回路40が索状体31の引出量を認識する。
無線通信機36は、引出量測定器35から入力した電気信号を高周波信号に変換して、その高周波信号をアンテナ37に出力する。
アンテナ37は、無線通信機36から入力した高周波信号によって励振されて、電波を放射する。その電波は直接又は中継器を介して地球に到達する。
【0031】
なお、繰出機32、方向転換器33、引出量測定器35及び無線通信機36は、床版39に設置されずに、インフレータブル構造物20の内面に直接設置されていてもよい。
【0032】
続いて、インフレータブル構造物20の膨張に伴う検知装置30の動作について説明する。
インフレータブル構造物20の中空にガス供給装置によって空気等のガスを供給すると、インフレータブル構造物20が膨張する。末端止め34が方向転換器33から離れるため、索状体31が繰出機32から引き出される。索状体31の引出量が引出量測定器35によって測定されて、その測定値が電気信号として引出量測定器35から無線通信機36に転送される。無線通信機36が測定値に従って高周波信号を変調させて、高周波信号をアンテナ37に出力する。よって、測定値の乗った電波がアンテナ37によって送信される。なお、インフレータブル構造物20の膨張中、繰出機32はロック機構によって拘束されていない。
【0033】
インフレータブル構造物20の膨張中、制御回路40が、引出量測定器35の出力信号に基づく引出量と所定の閾値とを比較する。ここで、インフレータブル構造物20が所望の形状にまで膨張すると、索状体31の引出量が所定の閾値に至る。その結果、制御回路40は、引出量測定器35の出力信号に基づく引出量が所定の閾値を超えたと判断して、繰出機32のロック機構32aを作動させる。そうすると、繰出機32がロック機構32aによって拘束されて、索状体31がそれ以上引き出されなくなり、索状体31が張った状態になる。これにより、インフレータブル構造物20の形状が所望の形状に保持される。
なお、インフレータブル構造物20が所望の形状にまで膨張した時に、索状体31の全てが繰出機32から引き出されて、索状体31が繰出機32から末端止め34まで張った状態で配索されてもよい。この場合には、制御回路40及びロック機構32aが無くとも、インフレータブル構造物20の形状が所望の形状に保持される。
【0034】
また、制御回路40は、引出量測定器35の出力信号に基づく引出量が所定の閾値を超えたと判断して、ガス供給装置を停止させてもよい。そうすると、インフレータブル構造物20の膨張が止まる。これにより、インフレータブル構造物20の形状が所望の形状に保持される。
【0035】
以上のような検知装置30がインフレータブル構造物20に採用されることによって、以下のような有利な効果が生じる。
【0036】
(1) インフレータブル構造物20の膨張に応じて索状体31が引き出されるため、引出量測定器35によって測定された索状体31の引出量からインフレータブル構造物20の膨張状態を把握することができる。
【0037】
(2) 検知装置30の構成がシンプルであり、検知装置30の製造コストも低い。
【0038】
(3) 検知装置30は軽量であり、検知装置30の輸送コストが低い。
【0039】
(4) 検知装置30の原理は、索状体31がインフレータブル構造物20の膨張に伴って繰出機32から引き出され、その引出量を引出量測定器35によって測定するだけという簡便なものである。そのため、検知装置30は故障もしくは誤動作しにくい。よって、この検知装置30は宇宙等の極限環境下の使用に適している。
【0040】
(5) 索状体31の引出量に応じてインフレータブル構造物20の膨張時の形状を調整することができる。また、インフレータブル構造物20の膨張後に索状体31の引出を止めることによって、インフレータブル構造物20の形状を保持することができる。
【0041】
<<<第1の実施の形態の変形例>>>
上記実施形態では、索状体31、繰出機32、方向転換器33、末端止め34及び引出量測定器35の組み合わせが1組である。それに対して、図3に示すように、索状体31、繰出機32、方向転換器33、末端止め34及び引出量測定器35の組み合わせが2組以上あってもよい(図3では、繰出機32、方向転換器33、末端止め34及び引出量測定器35を1つのみ図示)。索状体31ごとに最大引出量(索状体31の引出を止める際の索状体31の引出量)が調整されることによって、インフレータブル構造物20の形状をより精細に調整することができる。
【0042】
<<第2の実施の形態>>
図4及び図5は、検知装置30Aを備えた構造物10Aの図面である。第2実施形態の構造物10Aと第1実施形態の構造物10との間で互いに対応する構成要素には同一の符号を付し、第2実施形態の検知装置30Aと第1実施形態の検知装置30との間で互いに対応する構成要素には同一の符号を付す。第2実施形態の構造物10Aと第1実施形態の構造物10との間で互いに相違する点について説明する。
【0043】
第1実施形態では、繰出機32、ロック機構32a、末端止め34及び引出量測定器35がインフレータブル構造物20の内側に設置されている。
【0044】
それに対して、第2実施形態では、繰出機32、ロック機構32a、末端止め34及び引出量測定器35がインフレータブル構造物20の外側に設置されている。以下、具体的に説明する。
繰出機32及び末端止め34がインフレータブル構造物20の外面に設置され、繰出機32と末端止め34が互いに離間している。索状体31は繰出機32から引き出されてインフレータブル構造物20の外面に沿って末端止め34まで配索されて、索状体31の末端が末端止め34に固定されている。索状体31の経路が一定に決まるように、複数の索状体案内38がインフレータブル構造物20の外面に設置されており、索状体31が繰出機32から末端止め34まで索状体案内38によって案内されている。
【0045】
第2実施形態においても、インフレータブル構造物20が膨張すると、この膨張に応じて繰出機32からインフレータブル構造物20の外面に沿って末端止め34までの距離が増加するため、索状体31が繰出機32から引き出される。索状体31の引出量が引出量測定器35によって測定され、測定引出量に従って変調された電波が無線通信機36によってアンテナ37から送信される。
【0046】
また、インフレータブル構造物20の膨張中、制御回路40が引出量測定器35による引出量を所定の閾値と比較する。そして、引出量測定器35による引出量が所定の閾値を超えた場合、制御回路40がロック機構32a及びガス供給装置を制御する。これにより、ロック機構32aによって拘束されたり、ガス供給装置のガス供給が止められたりする。
【0047】
なお、第2実施形態においても、索状体31、繰出機32、方向転換器33、末端止め34及び引出量測定器35の組み合わせが2組以上あってもよい。
【0048】
<<第3の実施の形態>>
図6及び図7は、検知装置30Bを備えた構造物10Bの図面である。第3実施形態の構造物10Bと第1実施形態の構造物10との間で互いに対応する構成要素には同一の符号を付し、第3実施形態の検知装置30Bと第1実施形態の検知装置30との間で互いに対応する構成要素には同一の符号を付す。第3実施形態の構造物10Bと第1実施形態の構造物10との間で互いに相違する点について説明する。
【0049】
第3実施形態では、構造物10Bは、インフレータブル構造物20に代えて、展開構造物20Bを備える。展開構造物20Bは、その展開及び折り畳みが容易にできるように設計されている。例えば、展開構造物20Bは、複数の構造要素(例えば太陽光発電パネル、アンテナパネル等のパネル)22Bと、これら構造要素22Bを回転可能に連結した複数のヒンジ構造23Bとを備え、ヒンジ構造23Bにおいて山折り又は谷折りに折り畳み可能となっている。
【0050】
また、第3実施形態では、検知装置30Bは展開構造物20Bの展開状態を検知するものであり、索状体31、繰出機32、末端止め34、引出量測定器35、無線通信機36及びアンテナ37を備える。繰出機32、末端止め34、引出量測定器35、無線通信機36及びアンテナ37は展開構造物20Bに取り付けられている。ここで、繰出機32が何れかの構造要素22Bに取り付けられ、末端止め34が別の構造要素22Bに取り付けられ、展開構造物20Bが展開されることによって繰出機32と末端止め34が互いに離間する。索状体31は繰出機32から末端止め34まで配索されて、索状体31の末端が末端止め34に固定されている。引出量測定器35は繰出機32に取り付けられていることが好ましい。
【0051】
第3実施形態においては、展開構造物20Bが展開されると、索状体31が繰出機32から引き出される。索状体31の引出量が引出量測定器35によって測定され、測定引出量に従って変調された電波が無線通信機36によってアンテナ37から送信される。展開構造物20Bの展開動作は、バネ等の弾性体の弾性力を利用したものでもよいし、モーター、アクチュエータ又はエンジン等の動力源の動力を利用したものでもよい。弾性体又は動力源はヒンジ構造23Bに設置されていてもよい。
【0052】
なお、展開構造物20Bが展開しきると、それ以上展開し得ない場合、ロック機構32a及び制御回路40が設けられていなくてもよい。
【0053】
<<<第4の実施の形態>>>
図8及び図9は、検知装置30Cを備えた構造物10Cの図面である。第4実施形態の構造物10Cと第1実施形態の構造物10との間で互いに対応する構成要素には同一の符号を付し、第4実施形態の検知装置30Cと第1実施形態の検知装置30との間で互いに対応する構成要素には同一の符号を付す。第4実施形態の構造物10Cと第1実施形態の構造物10との間で互いに相違する点について説明する。
【0054】
第4実施形態では、構造物10Cは、インフレータブル構造物20に代えて、展開構造物20Cを備える。展開構造物20Cは、2枚のパネル22Cと、これらパネル22Cを回転可能に連結したヒンジ構造23Cとを備え、ヒンジ構造23Cにおいて折り畳み可能となっている。
【0055】
また、第4実施形態では、検知装置30Cが索状体31、繰出機32、方向転換器33、末端止め34、引出量測定器35、無線通信機36及びアンテナ37を備える。繰出機32、無線通信機36、アンテナ37及び制御回路40が一方のパネル22Cに取り付けられ、方向転換器33がその一方のパネル22Cの先端部に取り付けられ、末端止め34が他方のパネル22Cの先端部に取り付けられている。繰出機32には、繰出機32を拘束・解放するロック機構32aが設けられている。また、繰出機32から引き出された索状体は方向転換器33によって方向転換されて、末端止め34まで配索されて、その索状体31の末端が末端止め34によって他方のパネル22Cに固定されている。
【0056】
第4実施形態においては、展開構造物20Cが弾性体の弾性力又は動力源の動力によって展開されると、索状体31が繰出機32から引き出される。索状体31の引出量が引出量測定器35によって測定され、測定引出量に従って変調された電波が無線通信機36によってアンテナ37から送信される。
【0057】
展開構造物20Cの展開中、制御回路40が引出量測定器35による引出量を所定の閾値と比較する。そして、引出量測定器35による引出量が所定の閾値を超えた場合、制御回路40がロック機構32aを制御するとともに、動力源を停止させる。これにより、ロック機構32aによって拘束され、展開構造物20Cの展開が止まる(図9参照)。
【0058】
なお、図10に示すように、方向転換器33が一方のパネル22Cの中間部に取り付けられ、末端止め34が他方のパネル22Cの中間部に取り付けられていてもよい。
【0059】
<<第1~第4の実施形態の変形例>>
以下、上記各実施形態の幾つかの変形例について説明する。以下に説明する2以上の変更箇所を組み合わせて適用してもよい。
【0060】
(1) 上記構造物10,10A,10B,10Cが宇宙に設置され、浮遊し又は飛行するものとしたが、地球に設置されてもよい。例えば、構造物10,10A,10Bが地球の地上、水中(例えば、海中)、地中(例えばトンネル、地下空間等)又は高所(例えば、高層建物の上、鉄塔の上、山上)に設置されてもよい。
【0061】
(2) 索状体31がインフレータブル構造物20の膨張又は展開構造物20B,20Cの展開に伴って伸長して繰出機32から引き出されるものとしてもよい。この場合、引出量測定器35は、索状体31の伸び量(歪み)を測定する歪みゲージであってもよい。引出量測定器35によって測定される伸び量は引出量に換算可能であるので、その伸び量は引出量を表す。
【0062】
(3) 上記実施形態では、引出量測定器35がインフレータブル構造物20の膨張又は展開構造物20B,20Cの展開の際にリアルタイムで引出量を測定するものである。それに対して、引出量測定器35がインフレータブル構造物20の膨張又は展開構造物20B,20Cの展開の後に事後的に引出量を測定するものとしてもよい。例えば、索状体31に塗料が付され、インフレータブル構造物20の膨張又は展開構造物20B,20Cの展開により索状体31がインフレータブル構造物20又は展開構造物20B,20Cに接触して、これにより塗料の線がインフレータブル構造物20又は展開構造物20Bに付着するが、その塗料の線の長さが引出量測定器35によって測定されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
20…インフレータブル構造物
20B,20C…展開構造物
30,30A,30B…検知装置
31…索状体
32…繰出機
32a…ロック機構
34…末端止め
35…引出量測定器
40…制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10