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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ウォーム減速機および電動アシスト装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/16 20060101AFI20231219BHJP
   F16H 55/24 20060101ALI20231219BHJP
   F16C 27/06 20060101ALI20231219BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20231219BHJP
   F16C 19/06 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
F16H1/16 Z
F16H55/24
F16C27/06 B
B62D5/04
F16C19/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019133930
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021017930
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 徹
(72)【発明者】
【氏名】大澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】菅原 宏行
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002393(WO,A1)
【文献】特開2013-203257(JP,A)
【文献】特開2011-255811(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008009107(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/16
F16H 55/24
F16C 27/06
B62D 5/04
F16C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイール収容部と、前記ホイール収容部に対しねじれの位置に配置され、かつ、軸方向中間部が前記ホイール収容部に開口したウォーム収容部と、を有するハウジングと、
外周面にホイール歯を有し、かつ、前記ホイール収容部の内側に回転自在に支持される、ウォームホイールと、
外周面に、前記ホイール歯と噛合するウォーム歯を有し、かつ、前記ウォーム収容部の内側に回転自在に支持される、ウォームと、
前記ウォームの先端部に外嵌される内輪と、前記内輪の周囲に該内輪と同軸に配置される外輪と、を有する支持軸受と、
前記支持軸受を、直接、又は前記外輪に外嵌された他の部材を介して、前記ウォームホイールの側に向けて弾性的に付勢する、弾性付勢手段と、
前記支持軸受又は前記他の部材を、前記弾性付勢手段による付勢方向である第1方向と前記ウォーム収容部の中心軸とに直交する第2方向に関して両側から弾性的に挟持する、弾性挟持手段と、
前記外輪を、前記第1方向に関する変位を可能に内嵌し、かつ、前記ウォーム収容部の内側に内嵌されるガイド部材と、
を備え、
前記弾性挟持手段は、前記外輪と前記ガイド部材との間部分のうち、前記第2方向に関して両側部分に配置された、それぞれが略平板状の1対の第2板ばねを有し、
前記ガイド部材は、内周面のうち、前記第1方向に関して互いに対向する1対の内側面に、前記1対の第2板ばねを配置するための1対の係合面部を有し、
前記1対の係合面部のそれぞれは、前記第2方向に直交する平坦面状の係合基部と、前記第1方向に関して前記係合基部を挟んだ両側に配置され、かつ、前記係合基部よりも突出した台座面部とを有し、
前記1対の第2板ばねのそれぞれは、前記1対の係合面部のそれぞれのうちの前記台座面部と当接している、
ウォーム減速機。
【請求項2】
前記ガイド部材は、内周面のうち、前記ウォームホイールから遠い側部分の円周方向少なくとも1箇所に、前記外輪に直接対向する支承面部を備える、
請求項に記載のウォーム減速機。
【請求項3】
前記1対の第2板ばねのそれぞれは、前記ガイド部材の軸方向に関して前記支承面部の両側に配置される1対の遠位側腕部と、前記1対の遠位側腕部の基端部同士を接続し、かつ、前記ガイド部材の径方向に関する内側面を、前記外輪の外周面に弾性的に当接させた基部と、を備える、
請求項に記載のウォーム減速機。
【請求項4】
ホイール収容部と、前記ホイール収容部に対しねじれの位置に配置され、かつ、軸方向中間部が前記ホイール収容部に開口したウォーム収容部と、を有するハウジングと、
外周面にホイール歯を有し、かつ、前記ホイール収容部の内側に回転自在に支持される、ウォームホイールと、
外周面に、前記ホイール歯と噛合するウォーム歯を有し、かつ、前記ウォーム収容部の内側に回転自在に支持される、ウォームと、
前記ウォームの先端部に外嵌される内輪と、前記内輪の周囲に該内輪と同軸に配置される外輪と、を有する支持軸受と、
前記支持軸受を、直接、又は前記外輪に外嵌された他の部材を介して、前記ウォームホイールの側に向けて弾性的に付勢する、弾性付勢手段と、
前記支持軸受又は前記他の部材を、前記弾性付勢手段による付勢方向である第1方向と前記ウォーム収容部の中心軸とに直交する第2方向に関して両側から弾性的に挟持する、弾性挟持手段と、
前記外輪を、前記第1方向に関する変位を可能に内嵌し、かつ、前記ウォーム収容部の内側に内嵌されるガイド部材と、
を備え、
前記ガイド部材は、内周面のうち、前記ウォームホイールから遠い側部分の円周方向少なくとも1箇所に、前記外輪に直接対向する支承面部を有し、
前記弾性挟持手段は、前記外輪と前記ガイド部材との間部分のうち、前記第2方向に関して両側部分に配置された、1対の第2板ばねを有し、
前記1対の第2板ばねのそれぞれは、前記ガイド部材の軸方向に関して前記支承面部の両側に配置される1対の遠位側腕部と、前記1対の遠位側腕部の基端部同士を接続し、かつ、前記ガイド部材の径方向に関する内側面を、前記外輪の外周面に弾性的に当接させた基部と、を有する、
ウォーム減速機。
【請求項5】
前記1対の第2板ばねのそれぞれは、前記ガイド部材の軸方向に関する前記基部の両側の端部から、前記第1方向に関して前記ウォームホイールに近い側に向けてそれぞれ延出する1対の近位側腕部をさらに備える、
請求項3または4に記載のウォーム減速機。
【請求項6】
前記弾性付勢手段は、前記外輪と前記ガイド部材との間、又は、前記外輪と前記ウォーム収容部との間に配置されている、
請求項1~5のいずれかに記載のウォーム減速機。
【請求項7】
前記ウォーム収容部の内周面と前記ガイド部材の外周面との間に弾性的に挟持された弾性リングをさらに備える、
請求項1~6のいずれかに記載のウォーム減速機。
【請求項8】
前記ウォームホイールに近い側部分における前記弾性リングの弾性圧縮量が、前記ウォームホイールから遠い側部分における前記弾性リングの弾性圧縮量よりも大きい、
請求項に記載のウォーム減速機。
【請求項9】
前記弾性リングは、前記ガイド部材の外周面に、前記弾性リングの中心軸を前記ガイド部材の中心軸に対し、前記第1方向に関して前記ウォームホイールに近い側にオフセットさせた状態で係止されている、
請求項に記載のウォーム減速機。
【請求項10】
前記弾性付勢手段は、前記外輪と前記ガイド部材との間部分、又は、前記外輪と前記ウォーム収容部の内周面との間部分のうち、前記第1方向に関して前記ウォームホイールから遠い側の部分に配置された、第1板ばねを備える、
請求項1~9のいずれかに記載のウォーム減速機。
【請求項11】
前記1対の第2板ばねのそれぞれは、該1対の第2板ばねのそれぞれを、前記ガイド部材に係止するための係止片をさらに備える、
請求項1~10のいずれかに記載のウォーム減速機。
【請求項12】
前記ガイド部材のうち、前記ウォームの先端側の開口部に支持されたカバーをさらに備える、
請求項1~11のいずれかに記載のウォーム減速機。
【請求項13】
電動モータと、
前記電動モータのトルクを増大して、ステアリングホイールの回転に伴って回転する回転軸またはステアリングギヤユニットを構成する直動軸に付与するウォーム減速機と、
を備え、
前記ウォーム減速機が、請求項1~12のいずれかに記載のウォーム減速機である、電動アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォームとウォームホイールとを備えるウォーム減速機、および、該ウォーム減速機を備える電動アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のステアリング装置では、運転者がステアリングホイールを操作する(回転させる)と、前記ステアリングホイールの回転は、ステアリングシャフトや中間シャフトにより、ステアリングギヤユニットの入力軸に伝達される。前記入力軸が回転することにより、ステアリングギヤユニットのラック軸が車両の幅方向に変位すると、1対のタイロッドが押し引きされて、操舵輪に舵角が付与される。
【0003】
特開2005-42913号公報(特許文献1)や特開2004-306898号公報(特許文献2)には、電動モータを補助動力源として、操舵輪に舵角を付与するために運転者がステアリングホイールを操作するのに要する力を低減する電動パワーステアリング装置が開示されている。電動パワーステアリング装置では、電動モータのトルクを、ウォーム減速機により増大させてから、ステアリングシャフト若しくはステアリングギヤユニットの入力軸など、ステアリングホイールの回転に伴って回転する回転軸、または、ステアリングギヤユニットのラック軸やねじ軸などである直動軸に付与する。
【0004】
図16は、特開2004-306898号公報に記載されている、ウォーム減速機の構造を示している。ウォーム減速機100は、ハウジング101と、ウォームホイール102と、ウォーム103とを備える。
【0005】
ハウジング101は、ホイール収容部104と、自身の中心軸がホイール収容部104の中心軸に対しねじれの位置に存在し、かつ、軸方向中間部がホイール収容部104内に開口したウォーム収容部105とを有する。
【0006】
ウォームホイール102は、外周面にホイール歯106を有し、ホイール収容部104の内側に回転自在に支持された回転軸107の周囲に、該回転軸107と同軸に支持固定されている。
【0007】
ウォーム103は、軸方向中間部外周面に、ホイール歯106と噛合するウォーム歯108を有する。ウォーム103は、ウォーム歯108を挟んだ軸方向2箇所位置を、1対の玉軸受109a、109bにより、ウォーム収容部105の内側に回転自在に支持されている。1対の玉軸受109a、109bのうち、ウォーム103の先端側(図16の右側)の玉軸受109aの外輪は、ウォーム収容部105の奥端側部分の内側に内嵌固定されたホルダ110に圧入されている。玉軸受109aの内輪は、ウォーム103のうちでウォーム歯108よりも先端側に位置する部分に設けられた大径部111に、合成樹脂製のブッシュ112を介して隙間嵌により外嵌されている。すなわち、玉軸受109aの内輪は、ウォーム103の大径部111に隙間嵌で外嵌されたブッシュ112に、がたつきなく外嵌されている。ウォーム103の基端側(図16の左側)の玉軸受109bの外輪は、ウォーム収容部105の開口部に圧入されており、玉軸受109bの内輪は、ウォーム103の基端部に外嵌されている。ウォーム103の基端部には、電動モータ113の出力軸が、トルクの伝達を可能に接続されている。すなわち、ウォーム103は、電動モータ113により回転駆動可能となっている。
【0008】
ウォーム減速機100では、ホイール歯106とウォーム歯108との噛合部に、ウォーム減速機100を構成する部品のそれぞれの寸法誤差や組立誤差などに基づいて、不可避のバックラッシュが存在する。このバックラッシュの存在に基づき、ステアリングホイールの回転方向を変える際に、噛合部で耳障りな歯打ち音が発生する場合がある。図示の例では、このような歯打ち音の発生を抑えるために、ウォーム103の先端部を、ウォームホイール102の側に向けて弾性的に付勢している。
【0009】
すなわち、ウォーム103の基端部はウォーム収容部105に対し、ラジアル隙間を有する玉軸受109bにより、若干の揺動変位を可能に支持されている。ウォーム103の大径部111の外周面と、ブッシュ112の内周面との間には環状隙間が全周にわたって存在する。ウォーム103の先端部にはパッド114が締り嵌めで外嵌され、パッド114とホルダ110との間にねじりコイルばね115が設置されている。ねじりコイルばね115によって、パッド114を、電動モータ113の中心軸とウォームホイール102の中心軸とに直交する第1方向(図16の上下方向)に関して、ウォームホイール102の側に向けて弾性的に押圧することにより、ウォーム103の先端部を、第1方向に関して、ウォームホイール102の側に向けて弾性的に押圧している。これにより、ホイール歯106とウォーム歯108との間のバックラッシュが抑えられ、歯打ち音の発生が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2005-42913号公報
【文献】特開2004-306898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、ウォーム減速機100を構成する部品のそれぞれの寸法誤差や組立誤差を許容できる範囲(寸法公差)を大きく確保するためには、ウォーム103の先端部が、第1方向に関して変位できる量を大きく確保する必要がある。
【0012】
また、ウォーム歯とホイール歯との噛合部で発生する歯打ち音の低減や軽量化などのために、ウォームホイールとして、金属製の内側ホイール素子と、外周面にホイール歯を有する合成樹脂製の外側ホイール素子とを結合してなるものを使用することができる。ただし、このようなウォームホイールを使用した場合、吸水や熱などにより、合成樹脂製の外側ホイール素子が膨張し、ウォーム歯とホイール歯との噛合部の摩擦が増大してしまう可能性がある。外側ホイール素子の膨張に基づく、ウォーム歯とホイール歯との噛合部の摩擦の増大を防止する面からも、ウォーム103の先端部が、第1方向に関して変位できる量を大きく確保する必要がある。
【0013】
特開2004-306898号公報に記載の構造では、ウォーム103の大径部111の外周面と、ブッシュ112の内周面との間に隙間が全周にわたって存在する。したがって、ウォーム103の先端部が、第1方向に関して変位できる量を大きく確保するために、前記隙間のうち、第1方向に関する間隔を大きくすると、第1方向と直角な方向(図16の表裏方向)に関する間隔も大きくなってしまう。このため、ステアリングホイールの回転方向を変える際に、ウォーム103の先端部が、ねじりコイルばね115による押圧方向と直角な方向(図16の表裏方向)に変位してしまう可能性がある。
【0014】
本発明は、上述のような事情に鑑み、ウォームの先端部に、ウォームホイールに近づく方向の弾力を付与する手段を備えるウォーム減速機において、ウォームの先端部が、前記弾力の方向と直角な方向に変位するのを抑えることができる構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のウォーム減速機は、ハウジングと、ウォームホイールと、ウォームと、支持軸受と、弾性付勢手段と、弾性挟持手段とを備える。
前記ハウジングは、ホイール収容部と、前記ホイール収容部に対しねじれの位置に配置され、かつ、軸方向中間部が前記ホイール収容部に開口したウォーム収容部と、を有する。
前記ウォームホイールは、外周面にホイール歯を有し、かつ、前記ホイール収容部の内側に回転自在に支持される。
前記ウォームは、外周面に、前記ホイール歯と噛合するウォーム歯を有し、かつ、前記ウォーム収容部の内側に回転自在に支持される。
前記支持軸受は、前記ウォームの先端部に外嵌される内輪と、前記内輪の周囲に該内輪と同軸に配置される外輪と、を有する。
前記弾性付勢手段は、前記支持軸受を、直接、又は前記外輪に外嵌された他の部材を介して、前記ウォームホイールの側に向けて弾性的に付勢する。
前記弾性挟持手段は、前記支持軸受又は前記他の部材を、前記弾性付勢手段による付勢方向である第1方向と前記ウォーム収容部の中心軸とに直交する第2方向に関して両側から弾性的に挟持する。
【0016】
本発明のウォーム減速機は、前記外輪を、前記第1方向に関する変位を可能に内嵌し、かつ、前記ウォーム収容部の内側に内嵌されるガイド部材をさらに備え、前記弾性挟持手段を、前記外輪と前記ガイド部材との間に配置することができる。
【0017】
前記弾性付勢手段を、前記外輪と前記ガイド部材との間、又は、前記外輪と前記ウォーム収容部との間に配置することができる。
【0018】
前記ガイド部材は、内周面のうち、前記第1方向に関して前記ウォームホイールから遠い側部分の円周方向少なくとも1箇所、好ましくは円周方向に離隔した2箇所に、前記外輪に直接対向する支承面部を備えることができる。
【0019】
本発明のウォーム減速機は、前記ウォーム収容部の内周面と前記ガイド部材の外周面との間に弾性的に挟持された弾性リングをさらに備えることができる。
この場合、前記ウォームホイールに近い側部分における前記弾性リングの弾性圧縮量を、前記ウォームホイールから遠い側部分における前記弾性リングの弾性圧縮量よりも大きくすることができる。
具体的には、前記弾性リングを、前記ガイド部材の外周面に、前記弾性リングの中心軸を前記ガイド部材の中心軸に対し、前記第1方向に関して前記ウォームホイールに近い側にオフセットさせた状態で係止することができる。
【0020】
前記弾性付勢手段は、前記外輪と前記ガイド部材との間部分、又は、前記外輪と前記ウォーム収容部の内周面との間部分のうち、前記第1方向に関して前記ウォームホイールから遠い側の部分に配置された、第1板ばねを備えることができる。
【0021】
前記弾性挟持手段は、前記外輪と前記ガイド部材との間部分のうち、前記第2方向に関して両側部分に配置された、1対の第2板ばねを備えることができる。
【0022】
前記1対の第2板ばねのそれぞれは、前記ガイド部材の軸方向に関して前記支承面部の両側に配置される1対の遠位側腕部と、前記1対の遠位側腕部の基端部同士を接続し、かつ、前記ガイド部材の径方向に関する内側面を、前記外輪の外周面に弾性的に当接させた基部と、を備えることができる。
【0023】
前記1対の第2板ばねのそれぞれは、前記ガイド部材の軸方向に関する前記基部の両側の端部から、前記第1方向に関して前記ウォームホイールに近い側に向けてそれぞれ延出する1対の近位側腕部をさらに備えることができる。
【0024】
前記1対の第2板ばねのそれぞれは、該1対の第2板ばねのそれぞれを、前記ガイド部材に係止するための係止片をさらに備えることができる。
【0025】
本発明のウォーム減速機は、前記ガイド部材のうち、前記ウォームの先端側の開口部に支持されたカバーをさらに備えることができる。
【0026】
あるいは、本発明のウォーム減速機は、ガイド部材を備えることなく、前記外輪を、前記第1方向に関する変位を可能に、前記ウォーム収容部の内周面に直接内嵌することもできる。この場合には、前記弾性付勢手段を、前記外輪と前記ウォーム収容部との間に配置し、かつ、前記弾性挟持手段を、前記外輪と前記ウォーム収容部との間に配置する。
【0027】
本発明の電動アシスト装置は、電動モータと、前記電動モータのトルクを増大して、ステアリングホイールの回転に伴って回転する回転軸またはステアリングギヤユニットを構成する直動軸に付与するウォーム減速機とを備える。
特に本発明の電動アシスト装置は、前記ウォーム減速機を、本発明のウォーム減速機としている。
【発明の効果】
【0028】
上述のような本発明のウォーム減速機および電動アシスト装置によれば、ウォームホイールの回転方向を変える際に、ウォームの先端部が、弾性付勢手段による付勢方向と直角な方向に変位するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の実施の形態の1例にかかる電動アシスト装置を組み込んだ、コラムアシスト型の電動パワーステアリング装置を示す部分切断側面図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3(A)は、ガイド組立体を取り出して示す斜視図であり、図3(B)は、図3(A)と反対側から見た斜視図である。
図4図4(A)は、ガイド組立体を、ウォームの軸方向に関して先端側から見た正面図であり、図4(B)は、図4(A)の上側から見た平面図であり、図4(C)は、図4(A)の下側から見た底面図であり、図4(D)は、図4(A)の右側から見た側面図であり、図4(E)は、図4(D)の右側から見た背面図である。
図5図5は、図4(A)のB-B断面図である。
図6図6は、図4(A)のC-C断面図である。
図7図7は、ガイド組立体の分解斜視図である。
図8図8(A)は、ガイド部材を、ウォームの軸方向に関して先端側から見た正面図であり、図8(B)は、図8(A)の上側から見た平面図であり、図8(C)は、図8(A)の下側から見た底面図であり、図8(D)は、図8(A)の右側から見た側面図である。
図9図9は、図8(A)のD-D断面図である。
図10図10は、図8(A)のE-E断面図である。
図11図11(A)は、第1板ばねを取り出して示す平面図であり、図11(B)は、図11(A)の下側から見た正面図であり、図11(C)は、図11(A)の左側から見た側面図であり、図11(D)は、図11(A)の右側から見た側面図である。
図12図12(A)は、第2板ばねを取り出して示す正面図であり、図12(B)は、図12(A)の右側から見た側面図であり、図12(C)は、図12(A)の上側から見た平面図であり、図12(D)は、図12(B)の右側から見た背面図である。
図13図13(A)は、カバーを、ウォームの軸方向に関して基端側から見た背面図であり、図13(B)は、図13(A)の上側から見た平面図であり、図13(C)は、図13(A)の下側から見た底面図であり、図13(D)は、図13(A)の右側から見た側面図である。
図14図14は、本発明の電動アシスト装置を組み込み可能な、ラックアシスト型の電動パワーステアリング装置の1例を示す、部分切断側面図である。
図15図15は、本発明の電動アシスト装置を組み込み可能な、ピニオンアシスト型の電動パワーステアリング装置の1例を示す、部分切断側面図である。
図16図16は、ウォーム減速機の従来構造の1例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1図13(D)は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例は、本発明の電動アシスト装置を、コラムアシスト型の電動パワーステアリング装置に適用した例である。図1に示すように、電動パワーステアリング装置1では、ステアリングホイール2の回転が、ステアリングギヤユニット3の入力軸4に伝達され、該入力軸4の回転に伴って、1対のタイロッド5が押し引きされると、操舵輪に舵角が付与される。ステアリングホイール2は、ステアリングシャフト6の後端部に支持固定されており、ステアリングシャフト6は、ステアリングコラム7の内側に回転自在に支持されている。ステアリングシャフト6の前端部は、自在継手8aを介して中間シャフト9の後端部に接続され、中間シャフト9の前端部は、別の自在継手8bを介して、入力軸4に接続されている。
【0031】
電動パワーステアリング装置1は、運転者がステアリングホイール2を操作するのに要する力を低減すべく、ステアリングシャフト6に補助動力を付与する電動アシスト装置10を備える。電動アシスト装置10は、電動モータ11と、ウォーム減速機12を備える。すなわち、電動アシスト装置10は、電動モータ11の出力軸13の回転トルクを、ウォーム減速機12により増大させつつ、ステアリングシャフト6に付与する。
【0032】
ウォーム減速機12は、ハウジング14と、ウォームホイール15と、ウォーム16と、支持軸受17と、ガイド部材18と、第1板ばね19と、1対の第2板ばね20とを備える。
【0033】
ハウジング14は、鉄系合金の鋳造品、アルミニウムなどの軽合金のダイキャスト成形品、又は、合成樹脂の射出成形品などであって、ホイール収容部21と、ホイール収容部21に対しねじれの位置に配置され、かつ、軸方向中間部がホイール収容部21に開口したウォーム収容部22とを備える。
【0034】
ホイール収容部21は、自身の中心軸とステアリングコラム7の中心軸とが同軸となるように、ステアリングコラム7の前端部に支持固定されている。
【0035】
ウォーム収容部22は、筒状に構成され、かつ、軸方向両側の端部に開口部を有する。ウォーム収容部22の軸方向片側(図2の右側)の開口部は、ハウジング14に結合固定された電動モータ11により塞がれており、ウォーム収容部22の軸方向他側(図2の左側)の開口部は、蓋体23により塞がれている。
【0036】
なお、ウォーム収容部22、ウォーム収容部22の内側に回転自在に支持されるウォーム16、および、ウォーム16の周囲に配置される部材に関して、軸方向片側とは、ウォーム16の基端側であって、図2の右側を言い、軸方向他側とは、ウォームの先端側であって、図2の左側を言う。
【0037】
ウォーム収容部22は、軸方向片側部分の内周面に、円筒面状の円筒面部24を有し、かつ、円筒面部24の軸方向他側の端部に、軸方向片側を向いた段差部25を有する。ウォーム収容部22は、軸方向他側部分の内周面に、円筒面状のガイド保持部26を有し、ガイド保持部26の軸方向片側に隣接する部分に、径方向内側に突出する内向フランジ部27を有する。さらに、ウォーム収容部22は、内向フランジ部27の軸方向他側面のうち、円周方向に関してホイール収容部21から遠い側の端部に、軸方向片側に凹んだ係合凹部28を有する。
【0038】
ウォームホイール15は、外周面に、はすば歯車であるホイール歯29を有し、かつ、ホイール収容部21の内側に回転自在に支持される。本例では、ウォームホイール15は、ホイール収容部21の内側に回転自在に支持されたステアリングシャフト6の前端部の周囲に、ステアリングシャフト6と一体に回転するように支持固定されている。なお、本例のウォームホイール15は、金属製で円輪板状の内側ホイール素子30の周囲に、外周面にホイール歯29を有する合成樹脂製の外側ホイール素子31を結合固定してなる。
【0039】
ウォーム16は、軸方向中間部外周面に、ウォームホイール15のホイール歯29と噛合する、ねじ状のウォーム歯32を有し、かつ、ウォーム収容部22の内側に回転自在に支持される。ウォーム16は、基端部を、電動モータ11の出力軸13に、トルク伝達継手33を介して、トルクの伝達を可能に接続している。
【0040】
トルク伝達継手33は、電動モータ11の出力軸13の先端部(図2の左端部)に外嵌固定された駆動側伝達部材34と、ウォーム16の基端部に外嵌固定された被駆動側伝達部材35と、それぞれがゴムのごときエラストマーなどの弾性材製である1対の弾性部材36と、合成樹脂製または金属材料製のカップリング37とを備える。
【0041】
トルク伝達継手33は、電動モータ11の出力軸13とウォーム16との間で伝達されるトルクが比較的小さいときには、出力軸13の回転トルクを、駆動側伝達部材34から軸方向片側の弾性部材36を介してカップリング37に伝達し、さらに、該カップリング37の回転トルクを、軸方向他側の弾性部材36を介して被駆動側伝達部材35に伝達する。これに対し、電動モータ11の出力軸13とウォーム16との間で伝達されるトルクが大きいときには、1対の弾性部材36が円周方向に弾性的に押しつぶされるため、トルク伝達継手33は、出力軸13の回転トルクを、駆動側伝達部材34からカップリング37に直接伝達し、さらに、該カップリング37の回転トルクを被駆動側伝達部材35に直接伝達する。
【0042】
なお、トルク伝達継手33の具体的な構造については、従来から知られている各種構造を採用することができる。いずれにしても、本例では、電動モータ11の出力軸13の先端部と、ウォーム16の基端部とをトルク伝達継手33を介してトルクの伝達を可能に接続することにより、電動モータ11の出力軸13とウォーム16とのトルク伝達部での歯打ち音の発生を防止し、かつ、出力軸13に対するウォーム16の揺動を可能としている。ただし、電動モータ11の出力軸13とウォーム16との間のトルクの伝達、および、出力軸13に対するウォーム16の揺動が可能である限り、電動モータ11の出力軸13の先端部と、ウォーム16の基端部との接続方法は特に限定されず、スプライン係合などにより接続することもできる。
【0043】
ウォーム16は、被駆動側伝達部材35が外嵌固定された基端部と、ウォーム歯32が備えられた軸方向中間部との間部分に、基端側(軸方向片側)から順に、嵌合筒部38と、径方向外方に突出した鍔部39とを備える。ウォーム16は、嵌合筒部38を、ウォーム収容部22の円筒面部24に対して、玉軸受40により回転自在に支持している。玉軸受40は、外輪41と、内輪42と、複数個の玉43とを備える。
【0044】
外輪41は、ウォーム収容部22の円筒面部24に隙間嵌で内嵌されており、段差部25と、円筒面部24に係止された止め輪44との間で軸方向両側から挟持されている。換言すれば、外輪41は、軸方向他側面を、段差部25に突き当て、かつ、軸方向片側面を、止め輪44に突き当てている。ただし、外輪41を、ウォーム収容部22の円筒面部24に締り嵌めで内嵌することもできる。
【0045】
内輪42は、ウォーム16の嵌合筒部38にがたつきなく外嵌されており、鍔部39の軸方向片側面と、ウォーム16の基端部に外嵌固定された被駆動側伝達部材35の軸方向他側面との間で、1対の弾性部材76を介して、軸方向両側から挟持されている。換言すれば、内輪42は、軸方向片側面を、軸方向片側の弾性部材76を介して、被駆動側伝達部材35の軸方向他側面に突き当て、かつ、軸方向他側面を、軸方向他側の弾性部材76を介して、鍔部39の軸方向片側面に突き当てている。
【0046】
複数個の玉43は、外輪41の内周面に備えられた外輪軌道と、内輪42の外周面に備えられた内輪軌道との間に、転動自在に配置されている。
【0047】
玉軸受40は、外輪41および内輪42と、玉43との間にラジアル隙間を有する。したがって、ウォーム16の嵌合筒部38は、ウォーム収容部22の円筒面部24に対して、回転および揺動変位を可能に支持されている。
【0048】
さらに、ウォーム16は、先端部(軸方向他端部)に、基端側(軸方向片側)に隣接する部分よりも外径が小さい小径筒部45を有する。ウォーム16は、小径筒部45を、ウォーム収容部22のガイド保持部26に対して、支持軸受17およびガイド部材18により、回転を自在に、かつ、ウォームホイール15に対する遠近動を可能に支持している。
【0049】
支持軸受17は、小径筒部45に外嵌固定された内輪46と、内輪46の周囲に該内輪46と同軸に配置された外輪47と、内輪46の外周面に備えられた内輪軌道と外輪47の内周面に備えられた外輪軌道との間に転動自在に配置された複数個の転動体48とを備える。なお、本例では、支持軸受17として、転動体48が玉である玉軸受を使用しているが、ラジアルころ軸受やラジアルニードル軸受を使用することもできる。
【0050】
本例の支持軸受17は、ウォーム収容部22のガイド保持部26の内側に、ガイド部材18を介して、ウォームホイール15に対する遠近動を可能に配置される。支持軸受17は、外輪47とガイド部材18との間部分のうち、ウォームホイール15から遠い側の端部に配置された第1板ばね19により、ウォームホイール15側に向けて弾性的に付勢される。さらに、支持軸受17は、外輪47とガイド部材18との間部分のうち、第1板ばね19による付勢方向である第1方向(図2図4(A)および図6の上下方向)とウォーム収容部22の中心軸とに直交する第2方向(図4(A)および図5の左右方向)に関して両側部分に配置された1対の第2板ばね20により、第2方向の両側から弾性的に挟持される。即ち、本例では、支持軸受17をウォームホイール15側に向けて弾性的に付勢する弾性付勢手段は、第1板ばね19により構成され、かつ、支持軸受17を、第2方向に関して両側から挟持する弾性挟持手段は、1対の第2板ばね20により構成される。
【0051】
ガイド部材18は、合成樹脂製で、筒状の本体部49と、該本体部49の軸方向片側面のうち、第1方向に関してウォームホイール15から遠い側であって、第2方向に離隔した2箇所位置から軸方向片側に向けて突出した1対の係合凸部50とを備える。
【0052】
ガイド部材18は、本体部49の外周面に、矩形の断面形状を有する係止溝51を全周にわたり備える。ガイド部材18は、係止溝51に弾性リング52を係止した状態で、本体部49を、ウォーム収容部22のガイド保持部26の内側に内嵌している。本例では、ウォームホイール15に近い側部分における弾性リング52の弾性圧縮量を、ウォームホイール15から遠い側部分における弾性圧縮量よりも大きくしている。このために、具体的には、係止溝51の中心軸を、本体部49の中心軸に対し、第1方向に関してウォームホイール15に近い側にオフセットさせている。これにより、ガイド部材18を、第1方向に関してウォームホイール15から遠い側に向けて弾性的に付勢し、本体部49の外周面のうち、ウォームホイール15から遠い側部分を、ガイド保持部26に押し付けることで、ガイド部材18のがたつきを抑えている。なお、本例では、弾性リング52は、係止溝51に係止する以前の自由状態において円形の断面形状を有するOリングにより構成されている。ただし、弾性リング52の断面形状は、円形に限らず、楕円形や矩形等とすることもできる。
【0053】
本体部49は、軸方向中間部内周面のうち、第1方向に関してウォームホイール15から遠い側部分で円周方向に離隔した2箇所位置に、部分円筒面状の支承面部53を備える。支承面部53のそれぞれは、支持軸受17の外輪47の外周面の曲率半径と同じか、又は、わずかに大きい曲率半径を有する。また、本例では、本体部49は、軸方向中間部内周面のうち、第1方向に関してウォームホイール15に近い側部分に、略半円筒面状の凹曲面部54を有する。凹曲面部54は、支持軸受17の外輪47の外周面の曲率半径と同じか、又は、わずかに大きい曲率半径を有する。
【0054】
本体部49は、内周面のうち、第2方向に関して互いに対向する1対の内側面に、第2方向から見て略H字形で、第2板ばね20を配置するための係合面部55を備える。係合面部55は、第2方向に直交する平坦面状の係合基部56と、支承面部53を挟んだ軸方向両側部分と凹曲面部54を挟んだ軸方向両側部分との四隅に配置され、かつ、係合基部56よりも突出した台座面部57a、57bと、係合基部56の中央付近から突出した抑え面部58とを備える。台座面部57a、57bのそれぞれは、第2方向に直交する同一の仮想平面上に存在する。係合基部56からの台座面部57a、57bの突出量は、係合基部56からの抑え面部58の突出量よりも大きい。
【0055】
本体部49は、軸方向中間部内周面のうち、第1方向に関してウォームホイール15から遠い側の端部であって、円周方向に関して支承面部53の間部分に、径方向外側(第1方向に関してウォームホイール15から遠い側)に向けて凹んだ係止凹部79を備え、該係止凹部79の底面に、第1方向に関してウォームホイール15に近い側に向けて突出した係止凸部59を備える。なお、係止凹部79の軸方向両側の端部は、本体部49の軸方向両側面に開口している。
【0056】
本体部49は、軸方向他側面のうち、第1方向に関する両側の端部に、切り欠き部60を有し、かつ、該切り欠き部60から円周方向に外れた部分であって、第2方向に関する両側部分に、軸方向から見て略弓形の側壁部61を有する。また、本体部49は、軸方向他側部分の外周面のうち、第2方向に関する両側部分に、第1方向に伸長する凹溝62を有する。さらに、本体部49は、軸方向両側面のうち、第2方向両側の端部に、当該部分を径方向に貫通する係止切り欠き63a、63bを有する。なお、係止切り欠き63a、63bのうち、軸方向他側面に備えられた係止切り欠き63aは、側壁部61の中央部を径方向に貫通し、かつ、凹溝62の軸方向他側面の中央部に開口している。
【0057】
1対の係合凸部50は、本体部49を、ウォーム収容部22のガイド保持部26の内側に内嵌した状態で、ウォーム収容部22の係合凹部28の内側に配置される。これにより、ウォーム収容部22に対するガイド部材18の円周方向に関する位相決めを図るとともに、ガイド部材18が、ウォーム収容部22の内側で回転することを阻止している。
【0058】
第1板ばね19は、図11(A)~図11(D)に示すように、鋼板等の弾性を有する金属板を略U字形に曲げ成形してなる。本例では、第1板ばね19は、基部64と、該基部64の長手方向片側(ガイド部材18の軸方向片側)の端部からU字形に折り返された折り返し部65と、該折り返し部65の先端部(ガイド部材18の軸方向他側の端部)から第1方向に関してウォームホイール15に近い側が凸となるように部分円筒状に湾曲した湾曲部66とを備える。さらに、第1板ばね19は、基部64に、矩形の係止孔67を有する。
【0059】
第1板ばね19は、基部64を、ガイド部材18の係止凹部79の内側に配置(挿入)し、かつ、係止孔67を、係止凸部59に嵌合させることにより、ガイド部材18の内側に支持される。ガイド部材18の内側に支持された状態で、第1板ばね19の湾曲部66により、ガイド部材18の内側に配置された支持軸受17の外輪47の外周面のうち、ウォームホイール15から遠い側の端部を弾性的に押圧することで、支持軸受17をウォームホイール15側に向けて弾性的に付勢する。なお、第1板ばね19を、ガイド部材18の内側に支持された状態で、折り返し部65は、ガイド部材18の1対の係合凸部50同士の間に配置される。
【0060】
第2板ばね20は、図12(A)~図12(D)に示すように、鋼板等の弾性を有する金属板を略H字形に打ち抜き成形してなる。具体的には、第2板ばね20は、全体として略平板状に構成されており、基部68と、該基部68の第1方向に関する両側縁のうち、長手方向(ガイド部材18の軸方向)両側の端部から第1方向に延出する4つの腕部69a、69bと、基部68の長手方向(ガイド部材18の軸方向)両側縁から、基部68の板厚方向に関して支持軸受17から離れる方向(ガイド部材18の径方向外側)に折れ曲がった1対の係止片70とを備える。第2板ばね20は、4つの腕部69a、69bを、係合面部55の台座面部57a、57bに当接させ、かつ、係止片70を、係止切り欠き63a、63bに引っ掛けることにより、ガイド部材18の内側に支持される。このようにして、ガイド部材18の内周面のうち、第2方向両側部分に支持された1対の第2板ばね20により、支持軸受17の外輪47を、第2方向両側から弾性的に挟持する。なお、第2板ばね20をガイド部材18の内側に支持した状態においては、4つの腕部69a、69bのうち、ウォームホイール15から遠い側の腕部(遠位側腕部)69a同士の間から支承面部53が張り出し、かつ、ウォームホイール15に近い側の腕部(近位側腕部)69b同士の間から凹曲面部54が張り出す。換言すれば、ウォームホイール15から遠い側の腕部69aは、ガイド部材18の軸方向に関して支承面部53の両側に配置され、かつ、ウォームホイール15に近い側の腕部69bは、ガイド部材18の軸方向に関して凹曲面部54の両側に配置される。
【0061】
本例のウォーム減速機12は、ガイド部材18の軸方向他側の開口部を支持されたカバー71をさらに備える。カバー71は、図13(A)~図13(D)に示すように、ガイド部材18の軸方向から見て、略長円形の端面形状を有する。カバー71は、中央部に円孔72を有し、かつ、ガイド部材18の軸方向に関する片側面のうち、第1方向に関する両側部分に、ガイド部材18の軸方向に突出する1対の係止爪73を有する。ただし、円孔72は、省略することもできる。カバー71は、本体部49の1対の側壁部61同士の間に配置した状態で、係止爪73を、本体部49の軸方向他側の端部に引っ掛けることにより、ガイド部材18に支持される。
【0062】
ウォーム減速機12を組み立てる際には、ガイド部材18の内側に、第1板ばね19および1対の第2板ばねと、支持軸受17とを配置した後で、カバー71を、ガイド部材18の軸方向他側の開口部に支持することにより、図3(A)~図4(E)に示すような、ガイド組立体77を構成する。そして、このようなガイド組立体77を、ウォーム収容部22のガイド保持部26と、ウォーム16の小径筒部45との間に挿入(圧入)することで、ウォーム16の先端部を、ガイド保持部26の内側に回転自在に、かつ、ウォームホイール15側に向いた弾力を付与された状態で支持される。ガイド組立体77を、ウォーム収容部22のガイド保持部26と、ウォーム16の小径筒部45との間に挿入した後、ガイド保持部26の軸方向他側の端部に止め輪78を係止する。これにより、ガイド組立体77の軸方向他側への変位を阻止するとともに、ガイド部材18からカバー71が脱落する(外れる)のを阻止している。
【0063】
本例の電動アシスト装置10では、ウォーム16の先端部に備えられた小径筒部45を、ウォーム収容部22のガイド保持部26に対して、支持軸受17およびガイド部材18を介して、回転を自在に、かつ、ウォームホイール15に対する遠近動を可能に支持している。また、支持軸受17を、第1板ばね19により、第1方向に関して、ウォームホイール15側に向けて弾性的に付勢しているため、ウォーム歯32とホイール歯29との間のバックラッシュを抑えることができる。
【0064】
さらに本例の電動アシスト装置10では、1対の第2板ばね20により、支持軸受17を、第2方向に関して両側から弾性的に挟持している。このため、運転者がステアリングホイール2を操作することに基づいて、ステアリングシャフト6に支持固定されたウォームホイール15の回転方向が変わった場合でも、ウォーム16の先端部が、第2方向に変位するのを抑えることができる。
【0065】
なお、電動モータ11に通電することにより、ウォーム16からウォームホイール15にトルクを伝達すると、ホイール歯29とウォーム歯32との噛合部からウォーム16に噛み合い反力が加わる。この噛み合い反力には、第1方向に関する成分だけでなく、第1方向と直角な第2方向に関する成分も含まれる。噛み合い反力のうち、第2方向に関する成分の向きは、ウォーム16が一方に回転する場合と、同じく他方に回転する場合とで、互いに逆方向となる。すなわち、ウォーム16とウォームホイール15との間でトルクを伝達する際には、ウォーム16の先端部に、ウォーム16の回転方向に応じて、第1方向に対し傾斜した噛み合い反力が加わる。
【0066】
ウォーム16とウォームホイール15との間でトルクを伝達する際に、ウォーム16に加わる噛み合い反力のうち、第1方向に関する成分が、第1板ばね19による弾性的な付勢力よりも大きくなると、ウォーム16の先端部は、第1方向に関してウォームホイール15から離れる方向に変位する。本例では、ウォーム16の先端部がウォームホイール15から離れる方向に変位すると、支持軸受17の外輪47の外周面が、ガイド部材18の内周面に備えられた支承面部53に当接し、ガイド部材18の外周面が、ウォーム収容部22のガイド保持部26に押し付けられることで、噛み合い反力が支承される。本例では、支承面部53は、ガイド部材18の内周面のうち、ウォームホイール15から遠い側部分であって、円周方向に離隔した2箇所位置に備えられている。このため、ウォーム16の回転方向にかかわらず、噛み合い反力の方向に、外輪47の外周面と支承面部53との当接部を位置させることができて、噛み合い反力を、ハウジング14により、効率良く支承することができる。
【0067】
また、本例では、1対の第2板ばね20のそれぞれを、略H字形、かつ、略平板状に構成している。このため、第2板ばね20を安価に製造することができ、かつ、第2板ばね20をガイド部材18に取り付ける際に、第1方向に関する方向性を考慮する必要がなく、組立性の向上を図れる。ただし、支持軸受を、第2方向に関して両側から挟持する弾性挟持手段は、全体を一体に構成することもできる。すなわち、前記弾性挟持手段を、1対の第2板ばね20のうち、第1方向に関してウォームホイール15に近い側の端部同士を接続した如き構造とすることができる。さらに、前記弾性挟持手段と、支持軸受をウォームホイール側に向けて弾性的に付勢する弾性付勢手段とを一体に構成することもできる。
【0068】
また、本例では、カバー71を、ガイド部材18の軸方向他側の開口部に支持しているため、ガイド組立体77を所定の位置に組み込む以前の状態においても、ガイド部材18の内側から、支持軸受17や第1板ばね19、1対の第2板ばね20が脱落するのを防止することができる。したがって、支持軸受17と、ガイド部材18と、第1板ばね19と、1対の第2板ばね20と、カバー71とをサブアッセンブリとして一体に取り扱うことができて、ウォーム減速機12の組立性を向上することができる。さらに、本例では、ガイド組立体77を、ウォーム収容部22のガイド保持部26と、ウォーム16の小径筒部45との間に配置した状態で、ガイド保持部26の軸方向他側の端部に係止した止め輪78により、ガイド組立体77の軸方向他側への変位を阻止するとともに、ガイド部材18からカバー71が脱落する(外れる)のを阻止している。このため、ウォームホイール15とウォーム16との間でのトルクの伝達に伴い、ウォーム16に軸方向他側を向いた力が加わった場合でも、ウォーム16が軸方向他側に過度に変位するのを防止でき、ホイール歯29とウォーム歯32との噛合部がロックするのを防止することができる。
【0069】
また、本例では、第1方向から見た場合に、ウォームホイール15の中心軸と、ウォーム16の中心軸とが直交する構造に、本発明を適用した場合について説明したが、本発明のウォーム減速機は、第1方向から見た場合に、ウォームホイールの中心軸と、ウォームの中心軸とが斜交する(鋭角をなす)構造に適用することもできる。
【0070】
本例では、ハウジング14のウォーム収容部22の内側にがたつきなく配置したガイド部材18と、支持軸受17の外輪47との間に、弾性付勢手段を構成する第1板ばね19と、弾性挟持手段を構成する1対の第2板ばね20とを配置しているが、第1板ばねを、ウォーム収容部と支持軸受の外輪との間に配置することもできる。あるいは、本発明のウォーム減速機においては、支持軸受の外輪を、第1方向に関する変位を可能に、ウォーム収容部の内周面に直接内嵌し、弾性付勢手段と弾性挟持手段とを、前記ウォーム収容部と、前記外輪又は該外輪に外嵌した他の部材(ホルダ部材)との間に配置することもできる。
【0071】
なお、本発明の電動アシスト装置は、コラムアシスト型の電動パワーステアリング装置に限らず、各種構造の電動パワーステアリング装置に組み込むことができる。
【0072】
具体的には、例えば、図14に示すようなラックアシスト型の電動パワーステアリング装置1aでは、ステアリングギヤユニット3の入力軸4から車両の幅方向に外れた部分に、ウォームホイール15を外嵌固定した回転軸74を配置し、該回転軸74の先端部に備えられたピニオン歯を、ステアリングギヤユニット3を構成するラック75の歯部に噛合させる。
【0073】
また、図15に示すようなピニオンアシスト型の電動パワーステアリング装置1bでは、ステアリングギヤユニット3aの入力軸4aに、ウォーム減速機12のウォームホイール15を支持固定する。
【0074】
また、本発明のウォーム減速機は、電動アシスト装置に限らず、各種機械装置に組み込むことができる。
【符号の説明】
【0075】
1、1a、1b 電動パワーステアリング装置
2 ステアリングホイール
3、3a ステアリングギヤユニット
4、4a 入力軸
5 タイロッド
6 ステアリングシャフト
7 ステアリングコラム
8a、8b 自在継手
9 中間シャフト
10、10a 電動アシスト装置
11 電動モータ
12 ウォーム減速機
13 出力軸
14 ハウジング
15 ウォームホイール
16 ウォーム
17 支持軸受
18 ガイド部材
19 第1板ばね
20 第2板ばね
21 ホイール収容部
22 ウォーム収容部
23 蓋体
24 円筒面部
25 段差部
26 ガイド保持部
27 内向フランジ部
28 係合凹部
29 ホイール歯
30 内側ホイール素子
31 外側ホイール素子
32 ウォーム歯
33 トルク伝達継手
34 駆動側伝達部材
35 被駆動側伝達部材
36 弾性部材
37 カップリング
38 嵌合筒部
39 鍔部
40 玉軸受
41 外輪
42 内輪
43 玉
44 止め輪
45 小径筒部
46 内輪
47 外輪
48 転動体
49 本体部
50 係合凸部
51 係止溝
52 弾性リング
53 支承面部
54 凹曲面部
55 係合面部
56 係合基部
57a、57b 台座面部
58 抑え面部
59 係止凸部
60 切り欠き部
61 側壁部
62 凹溝
63a、63b 係止切り欠き
64 基部
65 折り返し部
66 湾曲部
67 係止孔
68 基部
69a、69b 腕部
70 係止片
71 カバー
72 円孔
73 係止爪
74 回転軸
75 ラック
76 弾性部材
77 ガイド組立体
78 止め輪
79 係止凹部
100 ウォーム減速機
101 ハウジング
102 ウォームホイール
103 ウォーム
104 ホイール収容部
105 ウォーム収容部
106 ホイール歯
107 回転軸
108 ウォーム歯
109a、109b 玉軸受
110 ホルダ
111 大径部
112 ブッシュ
113 電動モータ
114 パッド
115 ねじりコイルばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16