(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】電気光学パネル、電気光学装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20231219BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20231219BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G09F9/00 304Z
G09F9/00 309Z
G03B21/00 E
G02F1/1333
(21)【出願番号】P 2019135178
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】藤川 紳介
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-051090(JP,A)
【文献】特開2013-080041(JP,A)
【文献】特開2012-155007(JP,A)
【文献】特開2011-018676(JP,A)
【文献】特開2018-128489(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0302463(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101419386(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
G03B 21/00
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度検出素子と、前記温度検出素子に電気的に接続される半導体素子を含む静電保護回路と、
画素領域に設けられた複数の画素電極と、を有する第1基板と、
液晶層と、
共通電極を有し、前記液晶層を介して前記第1基板と貼り合わされる第2基板と、
を備え、
前記温度検出素子は、平面視において、前記第2基板と重なる位置に設けられ、
前記半導体素子は、平面視において、前記第2基板と重ならない位置に設けられていることを特徴とする電気光学パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学パネルにおいて、
前記半導体素子は、前記第1基板の前記温度検出素子が設けられた位置より温度が低い位置に設けられていることを特徴とする電気光学パネル。
【請求項3】
請求項2に記載の電気光学パネルにおいて
、
前記温度検出素子は、平面視において、前記画素領域と前記第1基板の端部との間に設けられていることを特徴とする電気光学パネル。
【請求項4】
請求項1に記載の電気光学パネルにおいて
、
平面視において、前記第1基板の前記画素領域の端部から前記温度検出素子までの第1距離は、前記第1基板の前記画素領域の端部から前記半導体素子までの第2距離より短いことを特徴とする電気光学パネル。
【請求項5】
請求項4に記載の電気光学パネルにおいて、
前記温度検出素子は、平面視において、前記画素領域と前記第1基板の端部との間に設けられていることを特徴とする電気光学パネル。
【請求項6】
請求項3または5に記載の電気光学パネルにおいて、
前記第1基板には、クロック信号によって動作する駆動回路が設けられ、
前記第1基板のいずれかの端部に沿って複数の端子が配列されており、
前記半導体素子は、前記複数の端子の配列方向において前記配列方向の中央より一方側に偏った位置に設けられ、
前記第1基板には、前記配列方向の中央より他方側に偏った位置に前記クロック信号を生成するクロック信号生成回路が設けられていることを特徴とする電気光学パネル。
【請求項7】
請求項3、5、6の何れか1項に記載の電気光学パネルにおいて、
前記第1基板の第1短辺部と前記画素領域との距離が、前記第1基板の前記第1短辺部と対向する第2短辺部と前記画素領域との距離よりも長くなっており、
前記半導体素子は、前記画素領域より前記第1短辺部の側に設けられていることを特徴とする電気光学パネル。
【請求項8】
請求項3、5、6、7の何れか一項に記載の電気光学パネルにおいて、
前記第2基板には、前記画素領域の外縁に沿って延在する遮光部が設けられており、
前記温度検出素子は、前記遮光部と重なる位置に設けられていることを特徴とする電気光学パネル。
【請求項9】
請求項8に記載の電気光学パネルにおいて、
前記遮光部の一部は、他の部分より広い幅をもって前記第2基板の端部に沿って延在しており、
前記半導体素子は、前記遮光部の前記一部と前記第1基板の端部との間に設けられていることを特徴とする電気光学パネル。
【請求項10】
請求項6に記載の電気光学パネルを備えた電気光学装置において、
前記端子に接続された可撓性の配線基板と、
前記電気光学パネルを保持するホルダーと、
を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電気光学装置において、
前記ホルダーは、
前記電気光学パネルに前記第1基板側から重なる第1ホルダー部材と、
前記電気光学パネルに前記第2基板側から重なる第2ホルダー部材と、
を含み、
前記第2基板は、前記第2ホルダー部材に設けられた第1凹部に配置され、
前記第2基板と前記第1凹部の側壁との間のうち、少なくとも、前記半導体素子が位置する側には熱伝導部材が設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電気光学装置において、
前記第2ホルダー部材には前記半導体素子と重なる位置に第2凹部が設けられ、
前記第2凹部には、熱伝導部材が設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の電気光学装置において、
前記配線基板にはICが実装され、
前記第2ホルダー部材には、前記配線基板の延在方向における前記ICと前記半導体素子との間に貫通穴が設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項14】
請求項13に記載の電気光学装置において、
前記半導体素子は、前記配線基板の延在方向と交差する幅方向の中央から一方側に偏った位置に設けられ、
前記貫通穴は、前記幅方向の中央から一方側に偏った位置に設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項15】
請求項10から14までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記ホルダーは、複数のボルト穴を有し、
前記複数のボルト穴のうち、前記半導体素子に最も近いボルト穴は、最も大きいことを特徴とする電気光学装置。
【請求項16】
請求項10から15までの何れか一項に記載の電気光学装置を有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検出素子が基板に設けられた電気光学パネル、電気光学装置、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の電気光学装置では、複数の画素が配列された画素領域において画像を表示する際、電気光学パネルの温度が上昇する。例えば、投射型表示装置において、ライトバルブとして用いられる液晶装置では、画素領域に照明光が高強度で照射されるため、液晶パネルの温度が上昇する。このような場合、液晶層の変調特性や応答特性が変化するが、液晶パネルの温度を検出した結果に基づいて、投射型表示装置を制御すれば、画像に対する温度の影響を緩和することができる。例えば、液晶パネルの温度を検出した結果に基づいて、投射型表示装置に設けた冷却ファンの制御を行えば、画像に対する温度の影響を緩和することができる。
【0003】
一方、液晶パネルの温度を検出する方法として、画素が形成された基板の隅に温度検出素子および温度検出素子に対する静電保護回路を設けた構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶パネルでは画素領域の温度が最も高くなるため、画素領域の温度を検出することが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、画素が形成された基板の隅に温度検出素子および静電保護回路を設けた場合には、温度検出素子が画素領域から大きく離間しているため、画素領域の温度を適正に検出することが困難である。一方、画素領域の近傍に温度検出素子および静電保護回路を設けると、画素領域の温度が上昇した際、静電保護回路において温度検出素子と並列に電気的接続された半導体素子の漏れ電流が大きくなり、温度検出素子からの出力が変動してしまう。それ故、従来構成では、画素領域の温度を適正に監視することができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る電気光学パネルの一態様は、画素領域に複数の画素が設けられた第1基板と、前記第1基板に設けられた温度検出素子と、前記第1基板に設けられ、前記温度検出素子に電気的に接続された静電保護回路と、を備え、前記静電保護回路は、半導体素子を含み、前記半導体素子は、前記第1基板の前記温度検出素子が設けられた位置より温度が低い位置に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る電気光学パネルの別態様は、画素領域に複数の画素が設けられた第1基板と、前記第1基板に設けられた温度検出素子と、前記第1基板に設けられ、前記温度検出素子に電気的に接続された静電保護回路と、を備え、前記静電保護回路は、半導体素子を含み、前記半導体素子は、前記基板の前記画素領域の中心からの距離が前記温度検出素子より遠い位置に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る電気光学装置は各種電子機器に用いることができる。電子機器が投射型表示装置である場合、投射型表示装置は、前記電気光学装置に供給される光を出射する光源部と、前記電気光学装置によって変調された光を投射する投射光学系と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明を適用した電気光学装置の一態様の斜視図。
【
図5】
図4に示す温度検出素子および静電保護回路の説明図。
【
図6】
図5に示す温度検出素子の温度特性等を示す説明図。
【
図7】本発明の実施形態2に係る電気光学装置の説明図。
【
図8】本発明の実施形態3に係る電気光学装置の説明図。
【
図9】本発明の実施形態4に係る電気光学装置の説明図。
【
図10】本発明の実施形態5に係る電気光学装置の説明図。
【
図11】本発明の実施形態6に係る電気光学装置の説明図。
【
図12】本発明の実施形態7に係る電気光学装置の説明図。
【
図13】本発明を適用した電気光学装置を用いた投射型表示装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各部材等を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材の縮尺を相違させるともに、部材の数を減らしてある。以下、x軸、y軸およびz軸からなる直交座標系を用いて各方向を表す。z軸方向は、電気光学装置1の厚さ方向であり、y軸方向は、配線基板の延在方向であり、x軸方向は、配線基板の延在方向に対して直交する幅方向である。
【0011】
[電気光学装置1の構成]
(基本構成)
図1は、本発明を適用した電気光学装置1の一態様の斜視図である。
図2は、
図1に示す電気光学装置1の分解斜視図である。
図3は、
図1に示すホルダー70の説明図であり、
図3には、ホルダー70等の平面図(a)、およびホルダー70等の断面図(b)を示してある。なお、
図3では、ホルダー70のうち、第2基板20の側に設けられる第2ホルダー部材72のみを示してある。
【0012】
図1、
図2および
図3において、電気光学装置1は、後述するライトバルブ等として用いられる液晶装置であり、電気光学パネル100としての液晶パネルを備えている。電気光学装置1は、第1基板10に形成された複数の画素電極16と、第2基板20に形成された共通電極(図示せず)と、画素電極16と共通電極との間に設けられた液晶層(図示せず)とを備えている。ここで、第1基板10に形成された画素電極16は、液晶層を介して共通電極と対向することによって、画素17を構成している。電気光学装置1において、第1基板10に対して、第2基板20がシール材(図示せず)によって貼り合わされている。電気光学装置1において、シール材で囲まれた領域に液晶層(図示せず)が設けられている。
【0013】
本形態の電気光学装置1は、透過型の液晶装置である。従って、第1基板10の基板本体、および第2基板20の基板本体は、耐熱ガラスや石英基板等の透光性基板からなる。このように構成した透過型の電気光学装置1では、例えば、第1基板10および第2基板20のうちの一方の基板から入射した照明光が他方の基板の側から出射する間に変調され、表示光として出射される。本形態では、
図1に矢印Laで示すように、第2基板20の側から入射した照明光が第1基板10の側から出射する間に変調され、表示光として出射される。
【0014】
電気光学装置1は、第1基板10の第2基板20側とは反対側の面に接着剤等を介して重ねて配置された貼付された透光性の第1防塵ガラス30と、第2基板20の第1基板10側とは反対側の面に接着剤等を介して重ねて配置された透光性の第2防塵ガラス40とを有している。
【0015】
電気光学装置1において、画素電極16(画素17)がx軸方向およびy軸方向に配列されている領域が画素領域110であり、画素領域110の全体あるいは一部によって表示領域が構成される。
【0016】
第1基板10は、第2基板20の端部からy軸方向に張り出した張出部105を有している。張出部105には、第1基板10の幅方向(x軸方向)に延在する第1長辺部101に沿って複数の端子111が所定のピッチで配列された端子領域11が設けられている。電気光学装置1は、端子領域11に接続された可撓性の配線基板60を有しており、配線基板60は、第1基板10から離間するようにy軸方向に延在している。配線基板60は、第1基板10側の端部に端子111に異方性導電フィルム等を介して接続される電極66を有する一方、第1基板10と接続されている側とは反対側の端部にボード・ツー・ボードコネクター等の端子69が形成されている。また、配線基板60には、延在方向の途中位置に駆動用IC(Integrated Circuit)50が実装されている。
【0017】
電気光学装置1は、電気光学パネル100を厚さ方向(z方向)の両側から支持するホルダー70を有している。ホルダー70は、電気光学パネル100を第1基板10の側から支持する金属製の第1ホルダー部材71と、電気光学パネル100を第2基板20の側から支持する金属製の第2ホルダー部材72とを有している。第1ホルダー部材71は、表示光を出射する出射窓712が、少なくとも画素領域110と重なるように形成された枠部710を有しており、枠部710は、電気光学パネル100を第1基板10の側から支持する。第1ホルダー部材71と第2ホルダー部材72を構成する金属は、熱伝導性のよいアルミニウム、マグネシウム等である。
【0018】
第2ホルダー部材72は、照明光が入射する基板配置穴722が、少なくとも画素領域110と重なるように形成された枠部720を有しており、枠部720は、電気光学パネル100を第2基板20の側から支持する。
【0019】
本形態において、基板配置穴722は、第2防塵ガラス40を内側に収容可能なサイズである。基板配置穴722の内部のうち、側壁722aに形成された段部722bより第1基板10が位置する側は、第2基板20が配置される第1凹部723になっており、段部722bおよび第1凹部723の側壁723aに設けられた熱伝導性接着剤82によって、第2ホルダー部材72は、第2基板20および第2防塵ガラス40と固定されている。第1ホルダー部材71の枠部710、および第2ホルダー部材72の枠部720に形成された4対のボルト穴711、721にボルト(図示せす)を止める等の方法によって結合されている。
【0020】
ホルダー70は、第2ホルダー部材72の枠部720から配線基板60と重なるようにy軸方向に延在した放熱部74を有しており、放熱部74には複数の放熱フィン740が形成されている。また、ホルダー70は、第1ホルダー部材71の枠部710から配線基板60と重なるようにy軸方向に延在した放熱部73を有しており、放熱部73には、放熱部74と同様、複数の放熱フィン(図示せず)が形成されている。放熱部73と放熱部74とは、配線基板60のうち、駆動用IC50が実装されている領域にz軸方向の両側から重なる。その際、配線基板60の駆動用IC50の反対側の面のうち、駆動用IC50と重なる部分と放熱部74との間には、シリコングリス等の熱伝導部材81が設けられる。
【0021】
第2ホルダー部材72には、枠部720と放熱部74との間でx軸方向に延在するスリット状の貫通穴75が形成されており、貫通穴75は、駆動用IC50で発生した熱が電気光学パネル100に伝わることを抑制している。
【0022】
(電気光学パネル100の構成)
図4は、
図2に示す電気光学パネル100の説明図であり、電気光学パネル100の平面構造を模式的に示してある。
図4では特に、第2基板20の端部と遮光部25との間を広く示してある。
図4に示すように、電気光学パネル100において、第2基板20には枠状の遮光部25が形成されており、遮光部25の内側が画素領域110になっている。第1基板10の第2基板20の角部と重なる位置には基板間導通部106が設けられている。従って、基板間導通部106を介して第1基板10の側から第2基板20の共通電極に共通電位が供給される。
【0023】
第1基板10において、端子領域11と画素領域110との間にはデータ線駆動回路108が設けられている。データ線駆動回路108は、
図2に示す複数の画素電極16にデータ線(図示せず)、および画素スイッチング素子(図示せず)を介して画像信号を供給する。また、第1基板10において、第1長辺部101の両端からy軸方向に延在する第1短辺部103、および第2短辺部104のうち、第2短辺部104と画素領域110との間には、走査線駆動回路109が設けられている。走査線駆動回路109は走査線(図示せず)を介して画素スイッチング素子に走査信号を供給する。走査線駆動回路109は、第2短辺部104と画素領域110との間、および第1短辺部103と画素領域110との間の双方に設けられることもある。本形態において、データ線駆動回路108および走査線駆動回路109は、第2基板20の遮光部25と重なっている。また、第1基板10において、第1長辺部101と対向する第2長辺部102と画素領域110との間には検査回路(図示せず)が設けられることもある。
【0024】
(温度検出素子13および静電保護回路14の構成)
図5は、
図4に示す温度検出素子13および静電保護回路14の説明図であり、室温時における電流の成分(a)と、温度上昇した際の電流の成分(b)とを示してある。
図6は、
図5に示す温度検出素子13の温度特性等を示す説明図である。なお、温度検出素子13および静電保護回路14を合わせて温度検出回路とも称する。
【0025】
図4において、第1基板10には、温度検出素子13と、温度検出素子13に電気的に接続された静電保護回路14とが設けられている。本形態において、温度検出素子13、および静電保護回路14はいずれも、第1基板10に画素スイッチング素子等を形成する工程を利用して形成される。
【0026】
図5に示すように、温度検出素子13はダイオードからなる。本形態において、温度検出素子13は、温度変化の検出感度を高めるために直列に接続された複数のダイオードからなる。ダイオードはPN接合のみならず、トランジスターのダイオード接続の形態としてもよい。温度検出素子13の両端には、
図4に示す端子111のうち、2つの端子111a、111bの各々から延在する2つの配線112a、112bが電気的に接続されており、配線112a、112bの途中位置には、抵抗R1、R2が接続されている。従って、端子111aから温度検出素子13(ダイオード)に100nA~数μA程度の微小な順方向の定電流Icを供給すると、電流Iaが温度検出素子13を流れる。ここで、温度検出素子13を構成するダイオードの順方向電圧は、
図6に実線P0で示すように、温度によって略直線的に変化する。従って、端子111a、111bの間の電圧が温度によって変化するので、端子111a、111bの間の電圧を検出すれば、温度を検出することができる。
【0027】
再び
図5において、静電保護回路14は、2つの配線112a、112bに対して、温度検出素子13と並列に電気的に接続されている。静電保護回路14は、温度検出素子13に並列に電気的に接続された半導体素子140を有している。本形態において、半導体素子140は、n型の電界効果型トランジスター141である。電界効果型トランジスター141のソース電極は配線112bに接続され、ドレイン電極は配線112aに接続されている。電界効果型トランジスター141のゲート電極は、ゲート配線146に接続され、ゲート配線146は抵抗R3を介して配線112bに接続されている。従って、静的状態では電界効果型トランジスター141のゲート電圧Vgsは0Vであり、電界効果型トランジスター141はオフである。また、ゲート配線146と配線112aとの間にはキャパシタC1が接続され、ゲート配線146と配線112bとの間にはキャパシタC2が接続されている。
【0028】
このように構成した静電保護回路14において、端子111aと端子111bとの間に静電気によるサージが入ると、例えば、端子111a側の電位が上昇し、キャパシタC1、C2の容量分圧により、電界効果型トランジスター141のゲート電極の電位が上昇する。このため、電界効果型トランジスター141がオン状態となるので、サージによる電流が電界効果型トランジスター141を介して端子111bに流れる。それ故、温度検出素子13に流れるサージ起因の電流は、静電保護回路14によって抑制されるので、温度検出素子13を保護することができる。
【0029】
ここで、n型の電界効果型トランジスター141のドレイン電極からソース電極に流れる漏れ電流Irが測定温度域で無視できるほどに小さいのであれば、温度検出素子13を流れる電流Iaは、端子111aから供給される定電流Icと略等しい。従って、
図6に実線P0で示すように、温度検出回路の出力電圧の温度特性は、温度検出素子13のダイオードの温度特性であり、環境温度に対して略線形に変化する。つまり、較正曲線を線形近似で定めることができる。
【0030】
n型の電界効果型トランジスター141は放電回路としての機能を実現するためにチャネル幅が比較的大きく、例えば80℃まで上昇すると漏れ電流Irは無視できないものとなる。その場合、温度検出素子13を流れる電流Iaは、定電流Icから漏れ電流Irを差し引いた値となる。しかも、電界効果型トランジスター141の漏れ電流Irは、温度上昇によって指数関数的に増加する。従って、温度検出回路の出力電圧の温度特性は、
図6に一点鎖線P1で示すように、電界効果型トランジスター141の漏れ電流Irの影響を受けて温度検出素子13を構成するダイオードの温度特性から変わってしまう。詳細には、温度検出素子13を流れる電流がIc-Irとなるので、温度検出素子13を構成するダイオードの本来の温度特性よりも小さな出力電圧にずれる。特に高温域でのずれが大きくなる。換言すれば、温度検出回路の出力電圧の温度特性を、線形近似することが難しくなる。その場合、較正曲線を例えば多点較正にする必要があり、較正曲線を求める作業が膨大となる。従って、製造コストを増加させることになる。また、電界効果型トランジスター141の漏れ電流のばらつきにより較正曲線が容易にばらつくので、製品化は非常に困難となる。漏れ電流Irを無視できるようにするには、定電流Icを大きくする方法がある。しかしながら、定電流Icを大きくするには、温度検出素子13を大きく形成する必要があり、画素領域110の間際に配置することが困難である。
【0031】
このような問題は
図5に示した静電保護回路の特有の問題ではない。温度検出素子13を構成するダイオードについて、アノード側の配線にダイオードの動作点電位とは異なる電位との放電回路なす半導体素子があれば起こり得る問題である。
【0032】
(温度検出素子13および静電保護回路14のレイアウト)
本形態では、
図5および
図6を参照して説明した特性に基づいて、
図4に示すように、静電保護回路14の半導体素子140は、第1基板10の画素領域110の中心からの距離が温度検出素子13より遠い位置に配置されている。ここで、電気光学装置1において、照明光が入射した際、概ね、画素領域110の中心Cの温度が最も高く、等温線T1、T2、T3、T4は、画素領域110の中心Cの周りで略同心円状に現れる。従って、画素領域110の中心Cと各等温線の温度関係は、中心C>T1>T2>T3>T4である。電気光学パネル100とホルダー70は、熱伝導性接着剤82を介して熱的に接触している。従って、電気光学パネル100に入射した光によって生じた熱は、冷却ファンによって強制冷却されるホルダー70へ向かって排熱される。そのため、上記のような温度分布となる。そこで、静電保護回路14の半導体素子140は、第1基板10の温度検出素子13が設けられた位置より温度が低い位置に配置されている。本形態においては、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が、第1基板10の画素領域110の中心からの距離が温度検出素子13より遠い位置に配置されており、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が、第1基板10の温度検出素子13が設けられた位置より温度が低い位置に配置されている。例えば、画素領域110の中心Cが約70℃のとき、温度検出素子13近傍では65℃程度であり、静電保護回路14の半導体素子140の配置場所を第2基板20の基板端付近にするならば、半導体素子140の温度を40℃程度に下げることができる。
【0033】
本形態において、温度検出素子13は、画素領域110と第1基板10の基板縁との間に設けられており、静電保護回路14は、温度検出素子13と第1基板10の基板縁との間に設けられている。より具体的には、温度検出素子13は、画素領域110と第1基板10の基板縁との間のうち、第2基板20の遮光部25と重なる位置に設けられ、静電保護回路14は、遮光部25と第1基板10の基板縁との間に設けられている。例えば、温度検出素子13は、遮光部25の4つの角のうち、第1基板10の第1長辺部101と第1短辺部103との間の角107と対向する角251と重なる位置に設けられ、静電保護回路14は、第2基板20と重ならない張出部105のうち、角107付近に設けられている。換言すれば、静電保護回路14、特に半導体素子140は、
図4に示すように、温度検出回路の端子111aおよび端子111bから第1短辺部103側に寄せた位置に配置する。つまり、温度検出回路の静電保護回路14の少なくとも半導体素子140と、端子111a、111bの位置関係は、他の信号線151に設けられた静電保護回路150と対応する端子111との位置関係と異なっている。このようにすると、第1基板10の画素領域110の中心から半導体素子140までの距離を大きくできる。つまり、第1基板10において温度が低い位置に半導体素子140が配置することができる。また、温度検出素子13は、遮光部25の幅方向の中心より画素領域110に近い位置に設けられている。
【0034】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、電気光学パネル100に用いた第1基板10に温度検出素子13を設けたため、温度検出結果に基づいて、電気光学装置1、および後述する投射型表示装置を制御することができる。また、第1基板10には静電保護回路14を設けたため、温度検出素子13をサージから保護することができる。また、電気光学パネル100の画素領域110近傍の温度を検出すると、液晶層の温度が最も高い個所の温度を熱分布シミュレーション等により推定しやすくすることができることから、本形態では、温度検出素子13が画素領域110の近傍に配置され、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が第1基板10の画素領域110の中心からの距離が温度検出素子13より遠い位置に配置されている。従って、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が、第1基板10の温度検出素子13が設けられた位置より温度が低い位置に配置されている。それ故、半導体素子140の温度が上昇した際の漏れ電流の影響で、温度検出回路の出力電圧の温度特性が特に高温域において温度検出素子13の温度特性から大きくずれることを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。
【0035】
[実施形態2]
図7は、本発明の実施形態2に係る電気光学装置1の説明図であり、電気光学パネル100の平面構造を模式的に示してある。なお、本形態の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0036】
図7に示すように、本形態の電気光学装置1においても、実施形態1と同様、第1基板10において、遮光部25の4つの角のうち、第1基板10の角107と対向する角251と重なる位置に温度検出素子13が設けられ、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が、張出部105の角107付近に設けられている。従って、画素領域110で発生した熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。
【0037】
本形態において、第1基板10の端子111にはクロック信号入力用の端子111X、111XB、111Y、111YBが含まれている。また、第1基板10には、端子111X、111XBから入力された信号に基づいて、データ線駆動回路108に出力するクロック信号を生成して出力するクロック信号生成回路108cと、端子111Y、111YBから入力された信号に基づいて、クロック信号を生成して出力する走査線駆動回路109に出力するクロック信号生成回路109cとが構成されている。本形態では。クロック信号生成回路108c、109cは、容量負荷の大きい信号線を駆動するため、大きなバッファ回路を備えている。また、クロック信号生成回路108c、109cは駆動周波数が高い。加えて、レベルシフト回路や、対を成すクロック信号間の位相を補正する位相差補正回路などによる貫通電流も存在する。それ故、クロック信号生成回路108c、109cは、消費電力の大きな回路であり、発熱量が大きい。
【0038】
なお、データ線駆動回路108としては、本形態で説明した相展開駆動方式以外にも、デマルチプレクス回路によって共通の画像信号線から複数のデータ線に画像信号を供給する部分ドライバ駆動方式にも適用可能である。部分ドライバ駆動方式の場合、
図7のデータ線駆動回路108がデマルチプレクス回路に置き換わり、クロック信号生成回路108cがデマルチプレクス回路を構成するスイッチのオン・オフを制御する選択信号線のバッファ回路に置き換わる。デマルチプレクス回路のスイッチは、例えば複数のN型の電界効果型トランジスターからなり、ゲート電極が選択信号線に接続され、ソース電極またはドレイン電極の一方が例えば8画素列毎に共通に設けられた画像信号線(図示せず)に接続され、他方がデータ線(図示せず)に接続される。選択信号線のバッファ回路は例えばインバータが多段に接続された回路である。クロック信号入力用の端子(111X、111XB)は選択信号線の選択信号SELとその反転信号SELXB入力用の端子に置き換わる。デマルチプレクス回路が8本のデータ線を1単位として構成されているのならば、選択信号SELとその反転信号SELXBからなる組は8組入力される。その場合、選択信号線のバッファ回路は駆動負荷が大きく、かつ駆動周波数が大きい。従って、消費電力が大きく、発熱量が大きい。電気光学パネル100の高精細化によりこれらの発熱量は増大する傾向にある。
【0039】
そこで、本形態では、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が、複数の端子111の配列方向の中央を示す中心線C0より一方側(第1短辺部103の側)に設けられ、中心線C0より他方側(第2短辺部104の側)にクロック信号生成回路108c、109cが配置されている。すなわち、半導体素子140は、複数の端子111の配列方向において配列方向の中央より一方側に偏った位置に設けられ、クロック信号生成回路108c、109cは、配列方向の中央より他方側に偏った位置に設けられている。従って、クロック信号生成回路108c、109cで発生した熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。クロック信号生成回路108c、109cで発生した熱の排熱は最も近い熱伝導性接着剤82の塗付部、例えば、第2短辺部104に対応する第2基板20の基板端部へ向かう経路となる。従って、クロック信号生成回路108c、109cで発生した熱が半導体素子140に与える影響は小さくなる。
【0040】
なお、部分ドライバ駆動方式の場合、デマルチプレクス回路の選択信号線のバッファ回路で発生した熱が半導体素子140に与える影響が小さくなる。
【0041】
[実施形態3]
図8は、本発明の実施形態3に係る電気光学装置1の説明図であり、電気光学パネル100の平面構造を模式的に示してある。なお、本形態の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0042】
図8に示すように、本形態の電気光学装置1においても、実施形態1と同様、第1基板10において、遮光部25と重なる位置に温度検出素子13が設けられ、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が、張出部105に設けられている。従って、画素領域110で発生した熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。
【0043】
ここで、第1基板10の第1短辺部103と画素領域110との距離D1が、第1基板10の第2短辺部104と画素領域110との距離D2よりも長くなっている。それ故、画素領域110の中心Cは、第1基板10の第1長辺部101の中心を通る中心線C4より第2短辺部104の側に位置する。このような構成は電気光学パネル100が液晶表示装置であり、液晶注入口(図示せず)が第1短辺部103に設けられている場合に採用される構成である。液晶注入口から画素領域110までの距離を大きくしたので、液晶注入口の封止材料から浸透する不純物が、画素領域110に到達するリスクが低下する。従って、液晶注入口の封止材料からの不純物が画素領域110に侵入して表示不良を生じることを減じる効果がある。本形態では、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が、画素領域110より第1短辺部103の側に設けられている。従って、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が、張出部105のうち、第1長辺部101と第1短辺部103との間の角107付近に設けられており、
図4に示す態様に比して、画素領域110の中心Cと半導体素子140との距離が長い。それ故、画素領域110の熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。
【0044】
[実施形態4]
図9は、本発明の実施形態4に係る電気光学装置1の説明図であり、電気光学パネル100の平面構造を模式的に示してある。なお、本形態の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0045】
図9に示すように、本形態の電気光学装置1においても、実施形態1と同様、第1基板10において、遮光部25と重なる位置に温度検出素子13が設けられ、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が、張出部105に設けられている。従って、画素領域110で発生した熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。
【0046】
ここで、遮光部25の一部が他の部分より幅が広くなっており、本形態では、遮光部25の幅が広くなっている部分と重なる位置に温度検出素子13が設けられている。本形態では、遮光部25のうち、画素領域110と第1短辺部103との間で延在する部分の幅W1は、画素領域110と第2短辺部104との間で延在する部分の幅W2より広くなっており、温度検出素子13は、画素領域110と第1短辺部103との間で遮光部25と重なる位置に設けられている。電気光学パネル100が液晶表示装置である場合、画素領域110の周辺回路を遮光部25下に配置したい。この理由を詳細に説明する。液晶表示装置では、遮光部25の周囲を取り囲むようにシール材(図示せず)が存在する。第1基板10と第2基板20の貼りあわせ精度を高くするためには、熱硬化型のシール材ではなく例えば紫外線硬化型のシール材を用いる。紫外線硬化型シール材の硬化を確実にするために、紫外光を電気光学パネル100の表面および裏面から照射したい。そのため、シール材を遮蔽するような周辺回路を遮光部25から第2基板20の端部までの領域には配置し難いのである。ここで、本形態のように遮光部25の幅が大きくなった領域に温度検出素子13を配置すると、例えば、走査線駆動回路109を回避しながらの温度検出素子13の配置が容易となる。従って、温度変化の検出感度をより高めるために、例えば温度検出素子13を構成するダイオードの直列接続数を増やすことが容易となり、高性能な温度検出回路を実現できる。
【0047】
すなわち、第1基板10の第1短辺部103と遮光部25との距離D3が、第1基板10の第2短辺部104と遮光部25との距離D4と等しいが、遮光部25のうち、画素領域110と第1短辺部103との間で延在する部分の幅W1は、画素領域110と第2短辺部104との間で延在する部分の幅W2より広くなっている。このため、画素領域110の中心Cは、第1基板10の第1長辺部101の中心を通る中心線C4より第2短辺部104の側に位置する。従って、静電保護回路14が画素領域110の中心Cから離間することになる。それ故、画素領域110の熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。
【0048】
[実施形態5]
図10は、本発明の実施形態5に係る電気光学装置1の説明図であり、
図10には、第2ホルダー部材72等を照明光の入射側からみた平面図(a)、および第2ホルダー部材72を照明光の入射側とは反対側からみた平面図(b)を示してある。なお、本形態の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0049】
図10に示すように、本形態の電気光学装置1においても、実施形態1と同様、第1基板10において、遮光部25と重なる位置に温度検出素子13が設けられ、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が、張出部105に設けられている。従って、画素領域110で発生した熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。
【0050】
また、本形態でも、
図3を参照して説明したように、基板配置穴722の段部722b、および第1凹部723の側壁723aに設けられた熱伝導性接着剤82によって、第2ホルダー部材72は、第2基板20および第2防塵ガラス40と固定されている。ここで、半導体素子140を含む静電保護回路14は、第1基板10のうち、第1凹部723の側壁723aと重なる位置、または側壁723aと重なる位置の近傍に設けられており、側壁723aのうち、静電保護回路14が位置する側には、熱伝導性接着剤82が熱伝導部材として設けられている。このため、画素領域110から半導体素子140に伝わろうとする熱を熱伝導性接着剤82(熱伝導部材)を介して第2ホルダー部材72に逃がすことができる。それ故、画素領域110の熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。熱伝導性接着剤82は第2基板20および第2防塵ガラス40の全周囲に設けてもよいのはもちろんである。
【0051】
[実施形態6]
図11は、本発明の実施形態6に係る電気光学装置1の説明図であり、
図11には、第2ホルダー部材72等を照明光の入射側からみた平面図(a)、および第2ホルダー部材72を照明光の入射側とは反対側からみた平面図(b)を示してある。なお、本形態の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0052】
図11に示すように、本形態の電気光学装置1においても、実施形態1と同様、第1基板10において、遮光部25と重なる位置に温度検出素子13が設けられ、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が、張出部105に設けられている。従って、画素領域110で発生した熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。
【0053】
また、本形態でも、
図3を参照して説明したように、基板配置穴722の段部722b、および第1凹部723の側壁723aに設けられた熱伝導性接着剤82によって、第2ホルダー部材72は、第2基板20および第2防塵ガラス40と固定されている。本形態では、第2基板20の全周にわたって熱伝導性接着剤82が設けられている。
【0054】
ここで、半導体素子140を含む静電保護回路14は、第1基板10のうち、第1凹部723の側壁723aと重なる位置、または側壁723aと重なる位置の近傍に設けられている。本形態において、第2ホルダー部材72の第2基板20側の面には、静電保護回路14と重なる第2凹部724が形成されており、第2凹部724には、熱伝導性接着剤82が熱伝導部材として設けられている。
【0055】
電気光学装置1が投射型表示装置のライトバルブであれば、ホルダー70が冷却ファンによって強制冷却されている。従って、ホルダー70の一部である第2ホルダー部材72は、点灯中の電気光学装置1の中で最も冷たい部位である。例えば画素領域110の中心Cが約70℃のとき第2ホルダー部材72は40℃以下である。つまり熱伝導性接着剤82(熱伝導部材)を介して半導体素子140と第2ホルダー部材72の熱的接触を大きくすることにより半導体素子140の冷却を促し、温度上昇を抑制することができる。それ故、画素領域110の熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。第2凹部724を設けたので熱伝導性接着剤82の塗付位置を間違うことはない。第2凹部724に熱伝導性接着剤82を盛り付ければ、静電保護回路14に熱伝導性接着剤82を接触させることが容易である。凹部になっているので、熱伝導性接着剤82の塗付範囲は自ずから決まる。第2凹部724は凹部に限らず、例えば第1基板10と接触しない程度のわずかな凸部を形成するようにしてもよい。その場合でも、熱伝導性接着剤82の塗付位置を間違うことはなく、凸部に熱伝導性接着剤82を盛り付ければ、静電保護回路14に熱伝導性接着剤82を接触させることが容易である。また、凸部であれば、静電保護回路14に熱伝導性接着剤82を接触させることもさらに確実となる。
【0056】
[実施形態7]
図12は、本発明の実施形態7に係る電気光学装置1の説明図であり、
図12には、第2ホルダー部材72等を照明光の入射側からみた平面図(a)、および第2ホルダー部材72を照明光の入射側とは反対側からみた平面図(b)を示してある。なお、本形態の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0057】
図12に示すように、本形態の電気光学装置1においても、実施形態1と同様、第1基板10において、遮光部25と重なる位置に温度検出素子13が設けられ、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体が、張出部105に設けられている。従って、画素領域110で発生した熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。
【0058】
また、本形態でも、実施形態6と同様、基板配置穴722の段部722b、および第1凹部723の側壁723aに設けられた熱伝導性接着剤82によって、第2ホルダー部材72は、第2基板20および第2防塵ガラス40と固定されている。本形態では、第2基板20の全周にわたって熱伝導性接着剤82が設けられている。また、第2ホルダー部材72には、静電保護回路14と重なる第2凹部724が形成されており、第2凹部724には、熱伝導性接着剤82が熱伝導部材として設けられている。つまり、熱伝導性接着剤82(熱伝導部材)を介して半導体素子140と第2ホルダー部材72の熱的接触を大きくしたことにより半導体素子140の冷却を促し、温度上昇を抑制することができる。それ故、画素領域110の熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。
【0059】
本形態において、第2ホルダー部材72には、配線基板60の延在方向(y軸方向)における駆動用IC50と半導体素子140を含む静電保護回路14との間にスリット状の貫通穴75が設けられている。ここで、半導体素子140を含む静電保護回路14は、配線基板60の延在方向と交差する幅方向(x軸方向)の中央から一方側に偏った位置に設けられ、貫通穴75は、幅方向の中央から一方側に偏った位置に設けられている。従って、駆動用IC50から貫通穴75の一方側を通る第1熱伝達経路QRと、駆動用IC50から貫通穴75の他方側を通る第2熱伝達経路QLとを比較した場合、第1熱伝達経路QRの方が、熱伝達抵抗が大きい。
【0060】
さらに本形態では、第2ホルダー部材72の第1基板10が位置する側の面において、貫通穴75の一方側に位置するボルト穴721と、貫通穴75とが溝728によって繋がっている。溝728としたので第2ホルダー部材72の剛性が過剰に低下することはない。溝728は第2ホルダー部材72の放熱フィン740が設けられている面に設けてもよい。溝728はボルト穴721と、貫通穴75を連結しなくてもよい。いずれの構成としても、第1熱伝達経路QRにおける熱伝達抵抗が溝728によってさらに大きくなっている。それ故、駆動用IC50の熱によって、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。
【0061】
また、
図12に示すように、第1ホルダー部材71と第2ホルダー部材72とをボルトによって結合する4カ所のボルト穴721のうち、静電保護回路14に最も近いボルト穴721については、他の個所のボルト穴721より内径を大きくし、太いボルトで締結してもよい。この場合、図示しないが、第1ホルダー部材71のボルト穴711も大きくする。すなわち、第1ホルダー部材71と第2ホルダー部材72とを連結する複数のボルトのうち、半導体素子140に最も近いボルトは最も太い態様であってもよい。換言すれば、半導体素子140に最も近いホルダー70のボルト穴は最も大きい態様であってもよい。電気光学装置1がライトバルブであれば、4カ所のボルト穴711、721の穴全てを大きくするとホルダー70が肥大化するので、電気光学装置1のコンパクト化は難しい。しかし、配線基板60側の1ヵ所のみを大きくするのであれば、ホルダー70の肥大化を抑制できる。かかる構成によれば、静電保護回路14に最も近いボルト穴711、721での熱伝達抵抗を小さくすることができるので、ホルダー70の放熱効率が向上する。結果として静電保護回路14の熱を効率よく逃がすことができる。それ故、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。なお静電保護回路14に最も近いボルト穴721について、他の個所のボルト穴721と同じボルトを使用し、円形でなくx軸方向に長い長円形としてもよい。つまり静電保護回路14に最も近いボルト穴721は他の個所のボルト穴721より大きくなる。この場合、貫通穴75や溝728と同様に第1熱伝達経路QRにおける熱伝達抵抗を大きくできるので、駆動用IC50の熱の影響を小さくできる。それ故、半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができるので、画素領域110の温度を適正に監視することができる。
【0062】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、半導体素子140を含む静電保護回路14の全体を、温度検出素子13が設けられた位置より、画素領域110の中心Cからの距離が遠く、温度が低い位置に設けたが、半導体素子140のみを温度検出素子13が設けられた位置より、画素領域110の中心Cからの距離が遠く、温度が低い位置に設けてもよい。
【0063】
上記実施の形態では、電気光学装置1が透過型の液晶装置であったが、電気光学装置1が反射型の液晶装置である場合や、電気光学装置1が有機エレクトロルミネッセンス装置である場合に本発明を適用してもよい。
【0064】
反射型の液晶装置であれば、例えば1ピースのホルダーに液晶パネルが接着固定され、液晶パネルの背面に熱伝導性接着剤によってヒートシンクが装着される形態となる。画素領域に入射した光によって液晶パネルは高温化する。光の入射側において、画素領域の周辺は開口部を有する概ね矩形状の金属製カバー部材によって入射光が遮蔽されているので、液晶パネルはやはり画素領域中央部の温度が高い傾向となる。従って、例えば第1の実施形態の
図4に示した構成に従って、温度検出回路の静電保護回路を液晶パネルの角部に配置すれば、静電保護回路を構成する半導体素子140の温度が上昇することを抑制することができる。
【0065】
[電子機器への搭載例]
上述した実施形態に係る電気光学装置1を用いた電子機器について説明する。
図13は、本発明を適用した電気光学装置1を用いた投射型表示装置(電子機器)の概略構成図である。
図13に示す投射型表示装置2100は、電気光学装置1を用いた電子機器の一例である。投射型表示装置2100において、電気光学装置1がライトバルブとして用いられ、装置を大きくすることなく高精細で明るい表示が可能である。この図に示されるように、投射型表示装置2100の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源を有するランプユニット2104(光源部)が設けられている。ランプユニット2104から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によってR(赤)色、G(緑)色、B(青)色の3原色に分離される。分離された投射光は、各原色に対応するライトバルブ1R、1G、1Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124を有するリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0066】
投射型表示装置2100において、ライトバルブ1R、1G、1Bの構成は、
図1等を参照して説明した電気光学装置1と同様であり、ライトバルブ1R、1G、1Bは各々、
図1等に示す配線基板60を介して投射型表示装置2100内の上位回路と接続される。R色、G色、B色のそれぞれの原色成分の階調レベルを指定する画像信号がそれぞれ外部上位回路から供給されて、投射型表示装置2100内の上位回路で処理され、ライトバルブ1R、1G、1Bがそれぞれ駆動される。ライトバルブ1R、1G、1Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、ダイクロイックプリズム2112において、R色およびB色の光は90度に反射し、G色の光は透過する。したがって、各原色の画像が合成された後、スクリーン2120には、投射レンズ群2114(投射光学系)によってカラー画像が投射される。
【0067】
かかる投射型表示装置2100には、ライトバルブ1R、1G、1Bを冷却するための冷却ファン(図示せず)が設けられている。従って、
図4等に示す温度検出素子13での検出結果に基づいて、冷却ファンの制御を行えば、画像に対するライトバルブ1R、1G、1Bの温度の影響を緩和することができる。
【0068】
(他の投射型表示装置)
なお、投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶装置に供給するように、構成してもよい。なお、画素については、DMD(Digital Micromirror Device)等の表示素子(MEMSデバイス)を採用した構成としてもよい。
【0069】
(他の電子機器)
本発明を適用した電気光学装置1を備えた電子機器は、上記実施形態の投射型表示装置2100に限定されない。例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ等の電子機器に用いてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…電気光学装置、1B、1G、1R…ライトバルブ、10…第1基板、11…端子領域、13…温度検出素子、14…静電保護回路、16…画素電極、20…第2基板、25…遮光部、30…第1防塵ガラス、40…第2防塵ガラス、50…駆動用IC、60…配線基板、70…ホルダー、71…第1ホルダー部材、72…第2ホルダー部材、73、74…放熱部、75…貫通穴、81…熱伝導部材、82…熱伝導性接着剤(熱伝導部材)、100…電気光学パネル、101…第1長辺部、102…第2長辺部、103…第1短辺部、104…第2短辺部、105…張出部、108c、109c…クロック信号生成回路、110…画素領域、140…半導体素子、141…n型トランジスター、710、720…枠部、722…基板配置穴、722a、723a…側壁、722b…段部、723…第1凹部、724…第2凹部、728…溝、740…放熱フィン、2100…投射型表示装置、2104…ランプユニット(光源部)、2112…ダイクロイックプリズム、2114…投射レンズ群(投射光学系)、QL…第2熱伝達経路、QR…第1熱伝達経路