(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】シート後処理装置およびそれを備えた画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 37/04 20060101AFI20231219BHJP
B65H 31/38 20060101ALI20231219BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B65H37/04 D
B65H31/38
G03G15/00 432
G03G15/00 460
(21)【出願番号】P 2019142789
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 里菜
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 昌彦
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-076902(JP,A)
【文献】特開2015-001702(JP,A)
【文献】特開2016-108136(JP,A)
【文献】特開2005-060081(JP,A)
【文献】特開2015-040084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 37/04
B65H 31/38
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されてきたシートを積載する積載トレイと、
前記積載トレイ上に積載された複数枚の前記シートからなるシート束を整合する整合部材と、
前記整合部材によって整合された前記シート束の後端縁に対して綴じ処理を行うステープラーと、を備えたシート後処理装置であって、
前記ステープラーは、
前記整合部材により、前記積載トレイ上で第1の積載位置に整合された前記シート束に対して、前記後端縁の複数箇所へ移動して綴じ処理を行う第1のステープラーと、
前記シート束の前記後端縁に沿うシート幅方向の一方側において、前記移動範囲の外側に固定され、前記整合部材により、前記積載トレイ上で前記第1の積載位置から前記一方側にずれた第2の積載位置へ移動したシート束に対して、前記第1のステープラーとは異なる綴じ処理を、前記後端縁の前記一方側の端部の1か所で行う第2のステープラーと、を含み、
前記整合部材は、
前記積載トレイに対して、前記シート幅方向に相互にスライドして前記シート束を前記シート幅方向から挟み込むことにより、前記シート束を前記第1の積載位置で整合する第1の整合部材および第2の整合部材と、
前記第2のステープラーに対応する位置に固定され、前記シート幅方向にスライドする前記第1の整合部材との間で、前記シート束を前記第2の積載位置で前記シート幅方向から挟み込むことにより、前記シート束を前記第2の積載位置で整合する第3の整合部材と、
を含み、
前記第2の整合部材および前記第3の整合部材の一方は、前記シート幅方向に貫通する開口部を有し、他方は、前記開口部に入り込む凸部を有し、
前記第2の整合部材は、前記第1のステープラーが前記シート束を綴じるときには、前記シート幅方向において、前記第1の整合部材と前記第3の整合部材との間に位置する一方、前記第2のステープラーが前記シート束を綴じるときには、前記凸部が前記開口部内を通過するように前記シート幅方向に移動して、前記第3の整合部材に対して前記第1の整合部材とは反対側に位置することを特徴とするシート後処理装置。
【請求項2】
前記第2の整合部材および前記第3の整合部材は、それぞれ前記シート束と接触する第1整合面と第2整合面を有し、前記第1整合面と前記第2整合面の一方は、前記第1整合面と第2整合面の他方が通過可能な開口を有していることを特徴とする請求項1に記載のシート後処理装置。
【請求項3】
前記第3の整合部材は、前記第2のステープラーに固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシート後処理装置。
【請求項4】
前記積載トレイを保持するフレームの一部であり、前記シート幅方向に垂直な搬送方向に沿って延びる側板をさらに備え、
前記側板は、前記第2の整合部材が通過可能な開口を有しており、前記第3の整合部材を兼ねていることを特徴とする請求項1または2に記載のシート後処理装置。
【請求項5】
前記第2のステープラーに対する前記第3の整合部材の固定位置を調整する調整機構をさらに備えていることを特徴とする請求項3または4に記載のシート後処理装置。
【請求項6】
前記第2のステープラーが綴じ処理を行うことが可能な前記シート束の最大厚みは、前記第1のステープラーが綴じ処理を行うことが可能な前記シート束の最大厚みよりも小さいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のシート後処理装置。
【請求項7】
前記第1のステープラーが行う綴じ処理は、針ありの綴じ処理であり、
前記第2のステープラーが行う綴じ処理は、針なしの綴じ処理であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のシート後処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のシート後処理装置と、
前記シートに画像を形成して前記シート後処理装置に供給する画像形成装置とを備えていることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等の画像形成装置によって画像が形成された用紙等のシートを積載トレイ上に積載して綴じ処理を行うシート後処理装置およびそれを備えた画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像形成装置によって画像が形成されたシートに対して後処理を行うシート後処理装置が提案されている。上記の後処理としては、例えば、画像形成後のシートに対してパンチ穴(穿孔)を空けるパンチ穴形成処理や、上記シートを複数枚スタックしてまとめてステープラーで綴じる綴じ処理等がある。
【0003】
ところで、近年では、針を用いて綴じ処理を行う第1のステープラーと、針を用いずに綴じ処理を行う第2のステープラーとを併設したシート後処理装置が提案されている。このようなシート後処理装置では、互いに異なる綴じ処理を行う第1のステープラーと第2のステープラーとで、シート束が挿入される間口の上下方向の幅(高さ)が異なり、綴じ処理を行うことが可能な最大の綴じ枚数(シート束の最大厚み)が異なる。例えば、第2のステープラーの間口は、第1のステープラーの間口よりも上下方向に狭く、第2のステープラーで綴じることが可能なシート束(以下では、第2のシート束とも称する)の最大厚みは、第1のステープラーで綴じることが可能なシート束(以下では、第1のシート束とも称する)の最大厚みよりも小さい。
【0004】
このため、第1のステープラーで第1のシート束を綴じるときに、第1のシート束に近い位置に第2のステープラーがあると、第1のシート束が第2のステープラーと干渉し、第1のシート束を第1のステープラーによる綴じ処理位置に配置することができなくなる。したがって、第2のステープラーは、通常、第1のステープラーで綴じるときの第1のシート束と干渉しない位置(第1のシート束よりも外側の位置)に配置される。それゆえ、第2のステープラーで第2のシート束を綴じるときには、第2のシート束を、第1のステープラーで綴じるときの第1のシート束の位置から、第2のステープラーの間口に入る位置に移動させることが必要となる。
【0005】
この点に関して、例えば特許文献1では、積載トレイ上でシート束を第1の整合部材と第2の整合部材とで挟み込んでシート束を位置決めするとともに、シート幅方向(シート後端縁に沿う方向)において複数箇所に移動する第1のステープラーで第1のシート束を綴じるときと、移動しない第2のステープラーで第2のシート束の1か所を綴じるときとで、シート束を位置決めする2つの整合部材(第1の整合部材および第2の整合部材)をシート幅方向にそれぞれ移動させることにより、第1のシート束の位置と第2のシート束の位置とをシート幅方向に変えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1のシート後処理装置のように、第2のステープラーで第2のシート束を1か所で綴じるときに、2つの整合部材を両方とも移動させてシート束の位置決めを行う構成では、上記2つの整合部材のそれぞれについて位置決め制御が必要となる。このため、第2のステープラーで精度のよい綴じ処理を実現するためには、上記2つの整合部材の複雑な位置決め制御が必要になる。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、複数箇所に移動する第1のステープラーとは異なる綴じ処理を行う第2のステープラーでシート束を1か所で綴じるときに、シート束の位置決めに用いる整合部材について複雑な位置決め制御を必要とすることなく、第2のステープラーによる精度のよい綴じ処理を実現することができるシート後処理装置およびそれを備えた画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係るシート後処理装置は、搬送されてきたシートを積載する積載トレイと、前記積載トレイ上に積載された複数枚の前記シートからなるシート束を整合する整合部材と、前記整合部材によって整合された前記シート束の後端縁に対して綴じ処理を行うステープラーと、を備える。前記ステープラーは、前記整合部材により、前記積載トレイ上で第1の積載位置に整合された前記シート束に対して、前記後端縁の複数箇所へ移動して綴じ処理を行う第1のステープラーと、前記シート束の前記後端縁に沿うシート幅方向の一方側において、前記移動範囲の外側に固定され、前記整合部材により、前記積載トレイ上で前記第1の積載位置から前記一方側にずれた第2の積載位置へ移動したシート束に対して、前記第1のステープラーとは異なる綴じ処理を、前記後端縁の前記一方側の端部の1か所で行う第2のステープラーと、を含む。前記整合部材は、前記積載トレイに対して、前記シート幅方向に相互にスライドして前記シート束を前記シート幅方向から挟み込むことにより、前記シート束を前記第1の積載位置で整合する第1の整合部材および第2の整合部材と、前記第2のステープラーに対応する位置に固定され、前記シート幅方向にスライドする前記第1の整合部材との間で、前記シート束を前記第2の積載位置で前記シート幅方向から挟み込むことにより、前記シート束を前記第2の積載位置で整合する第3の整合部材と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
第2のステープラーに対応する位置に第3の整合部材が固定されているため、第2のステープラーに対してシート束を位置決めする際に、第1の整合部材を移動させて第3の整合部材との間でシート束を挟み込むだけで、上記シート束を簡単に所望の位置(第2の積載位置)に正確に配置(位置決め)することができる。したがって、第2のステープラーによる精度のよい綴じ処理を実現するにあたって、第1の整合部材の複雑な位置決め制御は不要である。つまり、整合部材の複雑な位置決め制御を必要とすることなく、第2のステープラーによる精度のよい綴じ処理を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの概略の構成を示す断面図である。
【
図2】上記画像形成システムに含まれるシート後処理装置におけるシート積載前の積載トレイ周辺の部分断面図である。
【
図3】上記シート後処理装置におけるシート積載時の上記積載トレイ周辺の部分断面図である。
【
図4】上記積載トレイ周辺の構成を示すとともに、上記積載トレイ上の第1のシート束に対して綴じ処理を行うときの第1の整合部材、第2の整合部材および第3の整合部材の位置を模式的に示す平面図である。
【
図5】シート搬送方向に垂直なシート幅方向から見た、上記第2の整合部材および上記第3の整合部材の形状の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】上記積載トレイ周辺の構成を示すとともに、上記積載トレイ上の第2のシート束に対して綴じ処理を行うときの上記第1の整合部材、上記第2の整合部材および上記第3の整合部材の位置を模式的に示す平面図である。
【
図7】上記シート幅方向から見た、上記第2の整合部材および上記第3の整合部材の形状の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図8】上記シート後処理装置の主要部の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図9】上記第2のシート束に対して綴じ処理を行うときの、上記第2の整合部材のシフト位置の他の例を示す平面図である。
【
図10】上記積載トレイ周辺の他の構成を示す平面図である。
【
図11】上記積載トレイを保持するフレームの一部である側板の断面図である。
【
図12】上記第3の整合部材の上記シート搬送方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の画像形成システム1の概略の構成を示す断面図である。画像形成システム1は、画像形成装置100と、シート後処理装置20とを備えて構成されている。画像形成装置100は、用紙としてのシートPに画像を形成してシート後処理装置20に供給する。このような画像形成装置100として、本実施形態では複合機を例示しているが、画像形成装置100は、例えばレーザープリンター、インクジェットプリンター、ファクシミリ装置など、複合機以外の画像形成装置であってもよい。
【0013】
画像形成装置100は、いわゆる胴内排紙型のデジタル複合機であって、大きくは、本体ハウジング2aと、その上部に配設された上ハウジング2bとで構成されている。上ハウジング2bには、原稿の画像を電気信号として読み取るための後述する各種機構が設けられている。上ハウジング2bの上部には、原稿搬送装置3が付設されている。他方、本体ハウジング2aには、読み取った原稿画像の電気信号に基づいてシートPに画像を転写するための後述する各種機構が設けられている。本体ハウジング2aの左側部には、シート後処理装置20が付設されている。
【0014】
本実施形態では、本体ハウジング2aは、下ハウジング2aaと、連結ハウジング2abとによって構成されている。下ハウジング2aaには、シートPの給紙部4、シートP上にトナー画像を形成する画像形成部6、シートP上のトナー画像を定着するための定着装置7等が設けられている。連結ハウジング2abは、下ハウジング2aaの上方でその右側部に沿って位置し、上ハウジング2bに連結されている。連結ハウジング2abには、定着後のシートPを搬送して本体ハウジング20から排出するためのシート排出部(排出部)18が設けられている。
【0015】
また、上ハウジング2bの直下における連結ハウジング2abの左側方には、左側面および正面に向けて大きく開放された胴内排紙空間16が形成されている。この胴内排紙空間16には、中継ユニット19が設けられている。中継ユニット19は、連結ハウジング2abの左側面から排出されるシートPを受け入れて積載するとともに、シートPに所定の後処理を施す場合には、シートPをシート後処理装置20に搬送する。
【0016】
本体ハウジング2a内には、下部に配設された給紙部4と、給紙部4の側方および上方に配設されたシート搬送部5と、給紙部4の上方に配設された画像形成部6と、画像形成部6のシート搬送方向下流側(
図1の右側)に配設された定着部7とが備えられている。
【0017】
給紙部4には、シート搬送方向下流側に給紙ローラー等の分離給送手段が設けられた複数の給紙カセット4aが備えられている。給紙ローラーの回転動作により、給紙カセット4aに載置されたシートPの束から、最上位のシートPが1枚ずつシート搬送部5に給紙される。シート搬送部5は、給紙部4から給紙されたシートPを、各搬送ローラー対5aによって画像形成部6へと搬送する。
【0018】
画像形成部6および定着部7は、装置本体100の内部でシート搬送方向と直交する幅方向(前後方向、
図1の紙面に直交する方向)に細長く配設される。下ハウジング2aa内の上部において、
図1における左側から、画像形成部6および定着部7がこの順でシートPの搬送方向(左から右方向)に沿って並設される。
【0019】
画像形成部6は、電子写真プロセスによって、シートP上に所定のトナー像を形成する。この画像形成部6は、回転可能に軸支された像担持体である感光体ドラム9を備えている。また、画像形成部6は、感光体ドラム9の周囲にその回転方向に沿って配設される帯電装置11、露光装置12、現像装置13、転写装置14、クリーニング装置15および不図示の除電装置を備えている。定着部7は、画像形成部6においてトナー像が転写されたシートPを、加熱ローラーと加圧ローラーとからなる一対の定着ローラー対7aに挟持させて加熱および加圧して、未定着トナー像をシートP上に定着させる。
【0020】
上ハウジング2b内には、原稿の画像情報を読み取る画像読取部8が設けられている。原稿を1枚ずつ手置きで読み取らせる場合には、原稿搬送装置3を開いて、上ハウジング2bの上面に設けられたコンタクトガラス8a上に原稿を載置する。一方、原稿束から原稿を1枚ずつ自動的に読み取らせる場合には、閉じた状態の原稿搬送装置3の給紙トレイ上3aに原稿束を載置する。この場合、給紙トレイ3a上に載置された原稿束から原稿が1枚ずつ自動的に順次コンタクトガラス8a上に送り込まれる。いずれの場合でも、コンタクトガラス8a上に位置した原稿に、不図示の露光ランプから光が照射され、その反射光が画像光として反射鏡および結像レンズ等の光学系(いずれも図示せず)を介して光電変換部(CCD)へ導かれ、原稿の画像情報が取得される。
【0021】
以下、上記のように構成された画像形成装置100の基本的な動作を説明する。先ず、
図1で反時計回りに回転する感光体ドラム9の表面が帯電装置11によって一様に帯電される。続いて、画像読取部8で読み取られた画像情報に基づいて露光装置12(レーザー装置等)からのレーザービームが感光体ドラム9の周面に照射され、これによって感光体ドラム9の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像に現像装置13から現像剤としてのトナーが供給されることによりトナー像が形成される。
【0022】
次いで、給紙部4からのシートPは、シート搬送路5を通過し、所定のタイミングでトナー像が形成された感光体ドラム9に向けて搬送される。そして、転写ローラー等からなる転写装置14により、感光体ドラム9の表面のトナー像がシートPに転写される。トナー像が転写されたシートPは感光体ドラム9から分離され、定着部7に向けて搬送される。シートPは、定着ローラー対7aを通過する際に加熱、加圧処理されてトナー像が定着される。
【0023】
トナー像のシートPへの転写処理が完了した後、感光体ドラム9の周面に残留している残留トナーは、クリーニング装置15によって除去される。続いて、感光体ドラム9の周面に対して、除電装置(図示せず)により、残留電荷を除去する除電処理が施される。その後、帯電装置11により、感光体ドラム9の周面に再び帯電処理が施され、以下同様にして画像形成が行われることとなる。
【0024】
定着部7を通過したシートPは、そのまま垂直上方に向けてシート搬送路5に沿って連結ハウジング2ab内に搬送される。シート搬送路5の上部は、連結ハウジング2ab内で左方に向かって上下2つの搬送路に分岐している。分岐部に配置された切り替え爪17により、シートPの搬送方向が切り替えられる。
【0025】
連結ハウジング2ab内には、シート排出部18が設けられている。シート排出部18は、上排出ローラー対18aと、上排出ローラー対18aの直下に配置された下排出ローラー対18bと、を有している。シート搬送路5を搬送されたシートPが切り替え爪17によって上方の搬送路若しくは下方の搬送路に案内される。
【0026】
切り替え爪17によって上方の搬送路に案内されたシートPは、上排出ローラー対18aから左方に排出される。一方、切り替え爪17によって下方の搬送路に案内されたシートPは、下排出ローラー対18bによって左方に排出される。切り替え爪17は、本体制御部90によって案内方向を切り替えるようになっている。
【0027】
中継ユニット19は、胴内排紙空間16の底面16aに着脱可能に装着される。胴内排紙空間16には、中継ユニット19の装着を検知する検知センサー(図示せず)が設けられている。検知センサーは、PIセンサー等から構成されており、検知結果を本体制御部90に送信する。
【0028】
また、底面16aには、シート排出方向下流側(
図1の左側)に向かって上方に傾斜する傾斜面が形成されており、中継ユニット19が胴内排紙空間16から離脱されているとき、底面16aがシート排出トレイとして用いられる。この場合、検知センサーは中継ユニット19が装着されていないことを検知し、検知結果が本体制御部90に送信されると、切り替え爪17はシートPを上排出ローラー対18aに案内する。そして、上排出ローラー対18aから排出されたシートPが、底面16a上に排出される。
【0029】
一方、中継ユニット19が胴内排紙空間16に装着されていることを検知センサーが検知し、検知結果が本体制御部90に送信されると、切り替え爪17はシートPを下排出ローラー対18bに案内する。そして、下排出ローラー対18bから排出されたシートPは中継ユニット19に搬入される。中継ユニット19内に搬入されたシートPは、中継ユニット19内を通過し、シート後処理装置20に搬入される。
【0030】
なお、検知結果を操作部(図示せず)に表示し、ユーザーが操作部の操作パネル上でシートPの案内方向を切り替えることもできる。また、中継ユニット19の上面部は、上排出ローラー対18aから排出されたシートPが載置されるシート排出トレイを構成している。
【0031】
次に、シート後処理装置20の構成について説明する。シート後処理装置20の内部には、搬入されたシートPに対してパンチ処穴形成を行うパンチ穴形成装置21と、搬入されたシートPを複数枚積載(スタック)して綴じ処理を行うステープラー部22とが設けられている。ステープラー部22は、搬入されたシートPを積載する積載トレイ30と、積載トレイ30上に積載されたシート束を綴じるステープラー40とを含む。シート後処理装置20の側面には、シートPの排出に適した位置に昇降可能な排出トレイ50が設けられている。シート後処理装置20の各部は、後処理制御部101によって制御される。
【0032】
パンチ穴形成装置21は、シート後処理装置20の上部に配置されており、シートPの搬送方向と平行な一方の側端縁(装置前側または後側)に沿って、またはシートPの後端に沿って、複数のパンチ穴を形成する。パンチ穴形成装置21の上流側かつシート搬送方向と直交する方向(
図1の紙面と垂直な方向)の略中央部には、中継ユニット19内のシート搬入ローラー対によってシート後処理装置20内に搬入されるシートPの先端を検知する搬入検知センサー(図示せず)が配置されている。
【0033】
図2および
図3は、シート後処理装置20内の積載トレイ30周辺の部分断面図である。シート搬送方向に対してパンチ穴形成装置21(
図1参照)の下流側には第1の排出ローラー対27が配設されている。第1の排出ローラー対27の上流側にはシートPの通過を検知するアクチュエーター型のシート検知センサー28が配置されている。
【0034】
さらに、第1の排出ローラー対27の下方には、第1の排出ローラー対27によって搬送されるシートPを所定枚数積載する上述した積載トレイ30と、積載トレイ30上に積載されたシートPの束(シート束)に綴じ処理を行うステープラー40(
図1参照)とが設けられている。
【0035】
また、シート搬送方向に対して積載トレイ30の下流側には、ステープラー40による綴じ処理後のシート束を搬送して排出トレイ50に排出する第2の排出ローラー対29が配設されている。第2の排出ローラー対29は、駆動モーター(図示せず)により正逆回転可能なゴム製の排出ローラー29aと、排出ローラー29aに従動して回転する樹脂製の排出コロ29bとで構成されている。排出ローラー29aは、回動軸31aを支点として上下に揺動可能なローラーホルダー31に支持されている。
【0036】
積載トレイ30の上方であって第1の排出ローラー対27の下流側(
図2の左側)には、第1の排出ローラー対27によって搬入されるシートPを積載トレイ30方向に叩いてトレイ面に沿わせるための叩き部材33が配設されている。積載トレイ30は積載されるシートPの後端側(
図2の右側)に向かって下向きに傾斜するように設けられており、第2の排出ローラー対29が逆回転することによってシートPが後端側から積載トレイ30上に引き込まれ、シートPの後端が突き当て部30aに当接する。これにより、後端が揃った状態でシート束が積載トレイ30上に積載される。また、積載トレイ30には、積載トレイ30上に積載されたシート束をシート幅方向(
図2の紙面と垂直な方向)に整合する複数の整合部材(整合カーソル)60が設けられている。
【0037】
次に、シート後処理装置20の動作について説明する。画像形成装置100で画像形成処理が行われたシートP(
図2、
図3の破線で表示)が搬入されると、パンチ穴形成が指示されている場合には、パンチ穴形成装置21によって搬送されるシートPの所定位置(例えば装置前側の側端縁に沿った2個所)にパンチ穴が形成され、パンチ穴形成が指示されていない場合はそのままパンチ穴形成装置21を通過する。
【0038】
そして、シートPは第1の排出ローラー対27によってさらに下流側に搬送される。このとき、
図2に示すように、ローラーホルダー31は上方に揺動しており、排出ローラー29aは排出コロ29bから離間した位置(退避位置)に配置されている。そのため、第1の排出ローラー対27によって搬送されてきたシートPは排出ローラー29aと排出コロ29bの隙間を通って排出トレイ50に突出する。
【0039】
シートPの後端が第1の排出ローラー対27を通過したタイミングで、ローラーホルダー31を下方に揺動させて排出ローラー29aを排出コロ29bに当接した位置(当接位置)に配置する。その後、叩き部材33を駆動してシートPを積載トレイ30に沿わせる。この状態で排出ローラー29aを逆回転(
図3の反時計回り方向)させることで、シートPが積載トレイ30に沿って引き込まれ、突き当て部30aにより後端が整合される。突き当て部30aは、シート幅方向全域に亘って連続的に形成されているのではなく、部分的に切り欠きが形成されている。このとき、シートPの上部は第2の排出ローラー対29にニップされた状態であり、シートPの先端は第2の排出ローラー対29から排出トレイ50上に突出している。シートPを積載トレイ30に沿って引き込むときは、シートPを必要以上に引き込むことのないように、ローラーホルダー31の自重だけで排出ローラー29aを排出コロ29bに圧接させた状態でシートPをニップする。
【0040】
そして、1束分のシートPの受け入れが終了すると、ステープラー40によってシート束の綴じ処理が行われる。ステープラー40で綴じ処理を行った後、シート束は第2の排出ローラー対29を正回転(
図3の矢印方向に回転)させることにより、積載トレイ30に沿って上方へ搬送され、排出トレイ50上に排出される。シート束を排出トレイ50に排出するときは、ローラーホルダー31の自重だけでなく、ローラーホルダー31をバネ等の付勢部材により下方に付勢して排出ローラー29aを排出コロ29bに圧接させる。これにより、シートPの引き込み時よりも強い力でシート束がニップされるため、シート束を排出トレイ50に確実に排出することができる。
【0041】
次に、上述したステープラー部22の詳細について説明する。
図4は、ステープラー部22の積載トレイ30周辺の構成を模式的に示す平面図である。なお、以下での説明の便宜上、第2の排出ローラー対29によるシート束の搬送方向(排出方向)をA方向とし、A方向に垂直なシート幅方向をB方向とする。なお、B方向は、シート束の後端縁P
R(A方向の上流側の端縁)に沿う方向でもある。
【0042】
ステープラー部22は、複数の整合部材60を備えている。複数の整合部材60は、積載トレイ30上に積載された複数枚のシートPからなるシート束を整合する。このような整合部材60は、第1の整合部材60aと、第2の整合部材60bと、第3の整合部材60cとで構成されている。第1の整合部材60a、第2の整合部材60b、および第3の整合部材60cはそれぞれ、A方向に長尺状に形成されている。
【0043】
第1の整合部材60aと、第2の整合部材60bとは、整合部材移動機構61(
図8参照)によってB方向にそれぞれ移動(シフト)することが可能である。一方、第3の整合部材60cは、積載トレイ30上に載置されて、後述する第2のステープラー40bに固定されている。したがって、第3の整合部材60cと第2のステープラー40bとの位置関係は固定されている。整合部材移動機構61は、第1の整合部材60aおよび第2の整合部材60bをそれぞれ支持する支持体や、各支持体を移動させるためのモーター等を含んで構成されており、これによって、第1の整合部材60aおよび第2の整合部材60bを独立してB方向に移動させることが可能となっている。
【0044】
図5は、B方向から見た第2の整合部材60bおよび第3の整合部材60cの形状の一例を模式的に示している。第3の整合部材60cは、B方向に貫通するとともに下方が開放した開口部60c
1を有している。また、第2の整合部材60bは、A方向に長尺状の平板部60b
0と、平板部60b
0から上方に突出する凸部60b
1とを有している。凸部60b
1は、B方向から見て、第3の整合部材60cの開口部60c
1に沿った断面形状を有しており、積載トレイ30に設けられたB方向に長尺状の溝部30bを介して、開口部60c
1に入り込むことが可能となっている。
【0045】
この構成では、凸部60b
1が溝部30bに沿ってB方向に移動することにより、凸部60b
1が開口部60c
1内を通過するため、第2の整合部材60bが第3の整合部材60cと干渉することなく、第3の整合部材60cをB方向に通過して移動することが可能となる。これにより、第2の整合部材60bを、
図4の状態から
図6の状態となるように、またはその逆となるように移動させることが可能となる。つまり、第2の整合部材60bを、B方向において、第3の整合部材60cに対して第1の整合部材60aと同じ側の位置から、第3の整合部材60cに対して第1の整合部材60aとは反対側の位置(第3の整合部材60cに対してB方向の外側)に移動させることが可能となり、また、その逆方向の移動も可能となる。
【0046】
なお、第2の整合部材60bおよび第3の整合部材60cの形状は、
図4で示した形状には限定されない。
図7は、B方向から見た第2の整合部材60bおよび第3の整合部材60cの形状の他の例を模式的に示している。同図に示すように、第2の整合部材60bと第3の整合部材60cとは、B方向から見て互いに噛み合う形状であってもよい。その他、第2の整合部材60bがB方向に貫通する開口部を有し、第3の整合部材60cが第2の整合部材60bの上記開口部に入り込む凸部を有していてもよい。
【0047】
ここで、上記した第2の整合部材60bおよび第3の整合部材60cは、以下の構成であるとも言える。すなわち、
図5に示すように、第2の整合部材60bは、整合時にシート束と接触する第1整合面60bsを有しており、第3の整合部材60cは、整合時にシート束と接触する第2整合面60csを有している。そして、第2整合面60csは、第1整合面60bsが通過可能な開口60cs
1を有している。なお、開口60cs
1は、上記した開口部60c
1の一部である。
【0048】
第1整合面60bsが開口60cs
1内をB方向に通過することにより、第2の整合部材60bが第3の整合部材60cと干渉することなく、第3の整合部材60cをB方向に通過して移動することが可能となる。これにより、第2の整合部材60bを、
図4の状態から
図6の状態となるように、またはその逆となるように移動させることが可能となる。なお、第2の整合部材60bの第1整合面60bsが、第3の整合部材60cの第2整合面60csが通過可能な開口を有する構成であっても勿論構わない。
【0049】
また、ステープラー部22は、上記したステープラー40を備えている。ステープラー40は、積載トレイ30上に複数の整合部材60によって整合されたシート束の後端縁P
Rに対して綴じ処理を行う。このようなステープラー40は、第1のステープラー40aと、第2のステープラー40bとを有して構成されている。第1のステープラー40aは、B方向においてシート束の後端縁P
Rの複数箇所へ移動して、針を用いてシート束に綴じ処理を行う。一方、第2のステープラー40bは、B方向の一方側において、第1のステープラー40aの移動範囲の外側に固定されており、シート束に対して、第1のステープラー40aとは異なる綴じ処理を、後端縁P
Rの上記一方側の端部P
RE(
図6参照)の1か所で行う。なお、第1のステープラー40aとは異なる綴じ処理としては、ここでは、針を用いずにシート束を綴じる処理であるとする。針を用いない綴じ処理としては、例えば、シート束を歯型で押圧して凹凸をつけることにより、積載されたシート同士を圧着する処理や、シート束に対して厚み方向に切れ目を入れ、切れ目に沿ってシート束の一部を折り返すことによってシート束をまとめる処理などがある。
【0050】
ここで、第1のステープラー40aによって綴じ処理が行われるシート束を、以下では、第1のシート束P1とも称する。また、第2のステープラー40bによって綴じ処理が行われるシート束を、以下では、第2のシート束P2とも称する。第2のステープラー40bが綴じ処理を行うことが可能な第2のシート束P2の最大厚みは、第1のステープラー40aが綴じ処理を行うことが可能な第1のシート束P1の最大厚みよりも小さい。つまり、第1のシート束P1および第2のシート束P2を構成するシートPの厚みを一定としたとき、第2のステープラー40bが綴じ処理を行うことが可能な第2のシート束P2の最大枚数は、第1のステープラー40aが綴じ処理を行うことが可能な第1のシート束P1の最大枚数よりも少ない。このため、第2のシート束P2が挿入される第2のステープラー40bの間口の上下方向(A方向およびB方向に垂直な方向)の幅は、第1のシート束P1が挿入される第1のステープラー40aの上下方向の間口よりも狭くなるように構成されている。
【0051】
したがって、
図4に示すように、第2のステープラー40bは、第1のステープラー40aで綴じられる第1のシート束P1と干渉しない位置、つまり、上記第1のシート束P1よりもB方向外側の位置に配置されている。このため、
図6に示すように、第1の積載位置L1と第2の積載位置L2とはB方向にずれている。なお、第1の積載位置L1とは、第1のステープラー40aが第1のシート束P1を綴じるときに(例えばコーナー綴じのときに)第1のシート束P1が積載トレイ30上に載置される矩形の範囲(第1のシート束P1と重なる領域)を指す。また、第2の積載位置L2とは、第2のステープラー40bが第2のシート束P2を綴じるときに第2のシート束P2が積載トレイ30上で載置される矩形の範囲(第2のシート束P2と重なる領域)を指す。
【0052】
また、本実施形態では、ステープラー部22は、第1のステープラー40aをB方向の複数箇所に移動させるステープラー移動機構45(
図8参照)を有している。ステープラー移動機構45は、第1のステープラー40aをB方向に沿って移動させるためのレール、第1のステープラー40aを支持する支持体、上記レールに沿って上記支持体をB方向に移動させるためのモーター等を含んで構成されている。ステープラー移動機構45によって第1のステープラー40aをB方向に移動させることにより、第1のステープラー40aは第1のシート束P1に対してB方向の少なくとも1か所で綴じ処理を行うことが可能となる。
【0053】
図8は、シート後処理装置20の主要部の構成を模式的に示すブロック図である。上述したステープラー40(第1のステープラー40a、第2のステープラー40b)、ステープラー移動機構45、整合部材移動機構61、第1の排出ローラー対27、第2の排出ローラー対29、ローラーホルダー31等の動作は、シート後処理装置20の後処理制御部101によって制御される。後処理制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)と呼ばれる中央演算処理装置や、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶部を含んで構成されている。
【0054】
次に、上記構成のステープラー部22において、ステープラー40(第1のステープラー40a、第2のステープラー40b)で綴じ処理を行うときの整合部材60の移動について説明する。
【0055】
まず、例えば画像形成装置100の操作パネル(図示せず)にて、ステープラー40による綴じ処理が指定されると、整合部材移動機構61は、第1の整合部材60aおよび第2の整合部材60bを、B方向において第1の積載位置L1の外側にそれぞれ位置させる(待機位置)。このとき、第2の整合部材60bは、B方向において、第3の整合部材60cよりも第1の整合部材60a側に位置する。画像形成装置100からシートPが排出され、シート後処理装置20の内部に搬送されると、搬送されてきたシートPが積載トレイ30の第1の積載位置L1に積載されるごとに、第1の整合部材60aと第2の整合部材60bとをB方向に移動させて、シートPをB方向から挟み込んで整合する整合動作を繰り返す。
【0056】
シートPの積載トレイ30上への積載が完了すると、操作パネルによって第1のステープラー40aでの綴じ処理が指定されている場合には、第1の積載位置L1に積載されて整合された第1のシート束P1に対して、所望の位置に第1のステープラー40aを移動させ、第1のステープラー40aによって綴じ処理が行われる。その後、第2の搬送ローラー対29によって第1のシート束P1が排出トレイ50に排出される。なお、第1のシート束P1の枚数が多い場合には、突き当て部30a(
図2~
図4等参照)をA方向に移動させて、綴じ処理後の第1のシート束P1を排出するようにしてもよい。また、第2の搬送ローラー対29の回転と突き当て部30aの移動とを併用して、第1のシート束P1を排出するようにしてもよい。
【0057】
一方、操作パネルによって第2のステープラー40bでの綴じ処理が指定されている場合、整合部材移動機構61は、第1の整合部材60aおよび第2の整合部材60bをB方向に移動させることにより、第1の積載位置L1に積載されたシート束を、第2の積載位置L2に移動させる。このとき、第2の整合部材60bについては、例えば第3の整合部材60cに対して第1の整合部材60aとは反対側に位置するようにB方向の外側に移動させる。したがって、上記のシート束は、第1の整合部材60aと第3の整合部材60cとでB方向において挟み込まれて第2の積載位置L2に第2のシート束P2として整合される。その後、第2の積載位置L2の第2のシート束P2に対して、第2のステープラー40bによって綴じ処理が行われる。綴じ処理後は、第2の搬送ローラー対29の回転および/または突き当て部30aのA方向の移動により、第2のシート束P2が排出トレイ50に排出される。
【0058】
移動する第1のステープラー40aに対してシート束(第1のシート束P1)を位置決めする場合、2つの整合部材(第1の整合部材60a、第2の整合部材60b)を両方ともB方向に移動させる位置決め制御が必要となる。一方、位置が固定された(移動しない)第2のステープラー40bに対してシート束(第2のシート束P2)を位置決めする場合、本実施形態のように、第2のステープラー40bに対応して第3の整合部材60cを固定して設けておくことにより、第1の整合部材60aを移動させて第3の整合部材60cとの間でシート束を挟み込むだけで、上記シート束を簡単に所望の位置(第2の積載位置L2)に配置(位置決め)することができる。したがって、第2のステープラー40bによる綴じ処理を行う場合に、シート束をB方向から挟み込む2つの整合部材を両方とも移動させてシート束を位置決めする場合のような、上記2つの整合部材についての複雑な位置決め制御を必要とすることなく、精度のよい綴じ処理を実現することが可能となる。
【0059】
また、第2の整合部材60bは、第1のステープラー40aが第1のシート束P1を綴じるときには、B方向において、第1の整合部材60aと第3の整合部材60cとの間に位置する一方、第2のステープラー40bが第2のシート束P2を綴じるときには、B方向において、第3の整合部材60cに対して第1の整合部材60aとは反対側(B方向の外側)に位置する。したがって、第1のステープラー40aが第1のシート束P1を綴じるときには、第1の整合部材60aと第2の整合部材60bとで第1のシート束P1を挟み込んで、第1のシート束P1を第1の積載位置L1で整合することができる。一方、第2のステープラー40bが第2のシート束P2を綴じるときには、第2の整合部材60bは、第1の整合部材60aと第3の整合部材60cとの間から退避した位置にあるため、第1の整合部材60aと第3の整合部材60cとの間で第2のシート束P2を挟み込んで、第2のシート束P2を第2の積載位置L2で整合することができる。
【0060】
また、第2の整合部材60bおよび第3の整合部材60cの一方は、B方向に貫通する開口部(例えば開口部60c1)を有し、他方は、上記の開口部に入り込む凸部(例えば凸部60b1)を有している。例えば凸部60b1が開口部60c1に入り込むことにより、上述したように、第2の整合部材60bが第3の整合部材60cと干渉せずに、B方向に第3の整合部材60cを通過してスライドすることが可能となる。また、第3の整合部材60cの第2整合面60csは、第2の整合部材60bの第1整合面60bsが通過可能な開口60cs1を有しているため、上記と同様に、第2の整合部材60bが第3の整合部材60cと干渉せずに、B方向に第3の整合部材60cを通過してスライドすることが可能となる。
【0061】
これにより、第1のステープラー40aによって綴じ処理を行う場合には、B方向において、第2の整合部材60bを第3の整合部材60cに対して第1の整合部材60aと同じ側に位置させて、第1の整合部材60aと第2の整合部材60bとで第1のシート束P1を挟み込み、第1のシート束P1を第1の積載位置L1で整合させることが確実に可能となる。また、第2のステープラー40bによって綴じ処理を行う場合には、B方向において、第2の整合部材60bを第3の整合部材60cに対して第1の整合部材60aとは反対側に位置させて、第1の整合部材60aと第3の整合部材60cとで第2のシート束P2を挟み込み、第2のシート束P2を第2の積載位置L2で整合させることが確実に可能となる。
【0062】
また、第3の整合部材60cは、第2のステープラー40bに直接固定されているため、第3の整合部材60cと第2のステープラー40bとの対応する位置関係を確実に実現して、上述した本実施形態の効果を得ることができる。
【0063】
また、第2のステープラー40bが綴じ処理を行うことが可能な第2のシート束P2の最大厚みは、第1のステープラー40aが綴じ処理を行うことが可能な第1のシート束P1の最大厚みよりも小さい。このような構成では、上述したように、第2のステープラー40bと第1のシートP1との干渉を防ぐために、B方向において第2のステープラー40bを第1のシートP1の第1の積載位置L1の外側に配置することが必要となり、その結果、第1の積載位置L1と第2のシートP2の積載位置L2とがB方向にずれる。したがって、第2のシート束P2に対して精度の高い綴じ処理を実現すべく、第2のステープラー40bとの位置関係を固定した第3の整合部材60cを用いて第2のシート束P2を整合する本実施形態の構成が非常に有効となる。
【0064】
また、第1のステープラー40aが行う綴じ処理は、針ありの綴じ処理であり、第2のステープラー40bが行う綴じ処理は、針なしの綴じ処理である。針なしの綴じ処理では、針ありの綴じ処理に比べて、綴じ処理を行うことができるシートPの厚み(枚数)が一般的に少ない。このため、上記と同様に、第2のステープラー40bと第1のシートP1との干渉を防ぐために、B方向において第2のステープラー40bを第1のシートP1の第1の積載位置L1の外側に配置することが必要となる。したがって、第2のシート束P2に対して精度の高い綴じ処理を実現すべく、第2のステープラー40bとの位置関係を固定した第3の整合部材60cを用いて第2のシート束P2を整合する本実施形態の構成が非常に有効となる。
【0065】
また、第1のステープラー40aは、B方向に移動することにより、B方向の少なくとも1か所で、第1のシート束P1に対して綴じ処理を行う。このように第1のステープラー40aをB方向に移動させて綴じ処理を構成では、第1のステープラー40aをB方向に複数並べて選択的に綴じ処理を行う構成に比べて、用いる第1のステープラー40aの数が少なく、コスト的にも有利である。したがって、そのような第1のステープラー40aと第2のステープラー40bとを併設した構成において、上述した本実施形態の効果を得ることができる。
【0066】
図9は、第2のステープラー40bで第2のシート束P2に対して綴じ処理を行うときの、第2の整合部材60bのシフト位置の他の例を示す平面図である。同図に示すように、第2のステープラー40bによる綴じ処理を行うときに、第2の整合部材60bを、第3の整合部材60cとB方向において同じ位置に配置してもよい。つまり、第2の整合部材60bの第1整合面60bsと、第3の整合部材60cの第2整合面60csとが同一平面となるように、第2の整合部材60bを位置させてもよい。この場合でも、第2の整合部材60bが、第1の整合部材60aと第3の整合部材60cとによるシート束の整合を阻害することがないため、第1の整合部材60aと第3の整合部材60cとによってシート束を第2の積載位置L2で整合して、第2のステープラー40bによる綴じ処理を確実に行うことができる。
【0067】
図10は、積載トレイ30周辺の他の構成を示す平面図である。シート後処理装置20は、側板67をさらに備えていてもよい。側板67は、積載トレイ30を保持するフレームの一部であり、A方向に沿って延びている。第2のステープラー40bは、側板67に固定されている。また、側板67は、
図11に示すように、第2の整合部材60b(例えば凸部60b
1)が通過可能な開口67aを有しており、上述した第3の整合部材60cを兼ねている。したがって、側板67の開口67aは、上述した第3の整合部材60cの開口部60c
1に対応している。このように、側板67は第3の整合部材60cを兼ねていることから、側板67は、第2のステープラー40bに対応する位置に固定されており、側板67と第2のステープラー40bとの位置関係が固定されていると言える。
【0068】
この構成では、第2のステープラー40bによって第2のシート束P2に対して綴じ処理を行う場合において、第1の整合部材60aをB方向にスライドさせて、第1の整合部材60aと側板67とでシート束をB方向において挟み込み、第2の積載位置L2に整合することができる。なお、第2の整合部材60bは、側板67の開口67aをB方向に通過することが可能であるため、第1の整合部材60aと側板67とによるシート束の挟み込みが第2の整合部材60bによって阻害されることはない。この構成では、側板67が第3の整合部材60cを兼ねるため、シート束を位置決めするにあたって第3の整合部材60cという別部品を新たに設ける必要がなくなり、部品点数を少なくして装置のコスト低減に寄与することができる。
【0069】
図12は、第3の整合部材60cのA方向からの側面図である。本実施形態のシート後処理装置20は、調整機構70をさらに有していてもよい。調整機構70は、第2のステープラー40bに対する第3の整合部材60cの固定位置を調整する機構である。この調整機構70は、例えば第3の整合部材60cの側面に設けられるB方向に長径の長穴70aと、長穴70aに挿通されて第3の整合部材60cを第2のステープラー40bに固定する調整ねじ70bとを有して構成されている。
【0070】
この構成では、調整ねじ70bを緩めることにより、第2のステープラー40bに対して第3の整合部材60cをB方向に移動させて位置を調整した後、調整ねじ70bを締めることにより、第3の整合部材60cのB方向の位置を固定することができる。したがって、第3の整合部材60cによって整合される第2のシート束Pの位置(第2の積載位置L2)をB方向に調整して、第2のステープラー40bによるB方向の綴じ深さを調整することが可能となる。
【0071】
なお、第3の整合部材60cは、
図10の側板67であってもよい。つまり、側板67が第3の整合部材60cを兼ねる構成であっても、調整機構70を適用して上記の効果を得ることができる。
【0072】
なお、以上で説明した実施形態において、第3の整合部材と第2のステープラー40bとの位置関係を固定するにあたり、第3の整合部材60c(または側板67)は、第2のステープラー40bと直接固定されていなくてもよく、何らかの部材を介して間接的に固定されていてもよい。
【0073】
また、上述した第2のステープラー40bは、第2のシート束P2に対してB方向の予め設定された1か所で綴じ処理を行うステープラーであればよく、本実施形態のように、針なしの綴じ処理を行うステープラーには限定されない。例えば、第2のステープラー40bは、第1のステープラー40aとは種類(針の深さ、針の幅、針の太さ、針の材質など)の異なる針を用いてシート束に対して綴じ処理を行う構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、画像形成装置から供給されるシートを積載したシート束に対して綴じ処理を行う画像形成システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 画像形成システム
20 シート後処理装置
29 第2の排出ローラー対
30 積載トレイ
40 ステープラー
40a 第1のステープラー
40b 第2のステープラー
50 排出トレイ
60 整合部材
60a 第1の整合部材
60b 第2の整合部材
60b1 凸部
60bs 第1整合面
60c 第3の整合部材
60c1 開口部
60cs1 開口
60cs 第2整合面
67 側板
67a 開口
70 調整機構
100 画像形成装置
F フレーム(第3の整合部材)
L1 第1の積載位置
L2 第2の積載位置
P シート
P1 第1のシート束
P2 第2のシート束
PR 後端縁
PRE 端部