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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20231219BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01L29/78 655G
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 657D
H01L29/78 658H
H01L29/78 652N
H01L29/78 652F
H01L29/78 652K
H01L29/78 655D
H01L29/78 655B
H01L29/78 652H
H01L27/06 102A
H01L29/78 652P
H01L29/91 J
H01L29/91 L
H01L29/78 652M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019147282
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028930
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 浩大
(72)【発明者】
【氏名】安喰 徹
(72)【発明者】
【氏名】三塚 要
(72)【発明者】
【氏名】白川 徹
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-263215(JP,A)
【文献】特開2004-363327(JP,A)
【文献】特開2017-135339(JP,A)
【文献】特開2004-363328(JP,A)
【文献】国際公開第2017/146148(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/204227(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 29/06
H01L 29/861
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の下面と接する第2導電型のコレクタ領域を有するトランジスタ部と、
前記半導体基板の下面と接する第1導電型のカソード領域を有し、前記半導体基板の上面における配列方向に沿って前記トランジスタ部と交互に配置されたダイオード部と
を備え、
前記トランジスタ部のうち、前記半導体基板の前記配列方向における中央に近いものから順番に選択した2つ以上の第1のトランジスタ部のそれぞれは、前記配列方向において第1の幅を有し、
前記トランジスタ部のうち、前記第1のトランジスタ部よりも前記中央から離れて配置された2つ以上の第2のトランジスタ部のそれぞれは、前記配列方向において前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有し、
前記第1の幅は、700μmより大きく、1100μmより小さい
半導体装置。
【請求項2】
第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の下面と接する第2導電型のコレクタ領域を有するトランジスタ部と、
前記半導体基板の下面と接する第1導電型のカソード領域を有し、前記半導体基板の上面における配列方向に沿って前記トランジスタ部と交互に配置されたダイオード部と
を備え、
前記トランジスタ部のうち、前記半導体基板の前記配列方向における中央に近いものから順番に選択した2つ以上の前記トランジスタ部の前記配列方向における幅が、他のいずれかの前記トランジスタ部の前記配列方向における幅よりも大きく、
それぞれの前記ダイオード部の前記配列方向における幅は、前記半導体基板の厚みの2.5倍より大きい
半導体装置。
【請求項3】
第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の下面と接する第2導電型のコレクタ領域を有するトランジスタ部と、
前記半導体基板の下面と接する第1導電型のカソード領域を有し、前記半導体基板の上面における配列方向に沿って前記トランジスタ部と交互に配置されたダイオード部と
を備え、
前記トランジスタ部のうち、前記半導体基板の前記配列方向における中央に近いものから順番に選択した2つ以上の前記トランジスタ部の前記配列方向における幅が、他のいずれかの前記トランジスタ部の前記配列方向における幅よりも大きく、
前記トランジスタ部に電気的に接続されたゲートパッドを更に備え、
前記ゲートパッドに最も近い前記ダイオード部と前記ゲートパッドとの前記配列方向における距離が、当該ダイオード部の前記配列方向における幅よりも大きい
半導体装置。
【請求項4】
前記第2の幅を前記第1の幅で除算した値は、0.5より大きく、1より小さい
請求項に記載の半導体装置。
【請求項5】
それぞれの前記ダイオード部の前記配列方向における幅は、300μmより大きく700μmより小さ
請求項に記載の半導体装置。
【請求項6】
それぞれの前記ダイオード部は、前記配列方向において同一の幅を有する
請求項1からのいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記トランジスタ部のうち、前記半導体基板の前記配列方向における中央に最も近い第1のトランジスタ部の前記配列方向における幅は、前記第1のトランジスタ部よりも前記中央から離れた第2のトランジスタ部の前記配列方向における幅よりも大きく、前記第2のトランジスタ部の前記配列方向における幅は、前記第2のトランジスタ部よりも前記中央から離れた第3のトランジスタ部の前記配列方向における幅よりも大きい
請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基板の上面において、前記トランジスタ部および前記ダイオード部が前記配列方向に沿って交互に配置された領域を囲んで設けられた外周ダイオード部を更に備える
請求項1からのいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ドリフト領域と前記半導体基板の下面との間に設けられ、水素を含み、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い濃度ピークを前記半導体基板の深さ方向に複数有する第1導電型のバッファ領域を更に備える
請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体基板の深さ方向における結晶欠陥密度分布は、前記バッファ領域における前記濃度ピークの間に配置された欠陥密度ピークを有する
請求項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ドリフト領域と前記半導体基板の下面との間に設けられ、リンを含み、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い濃度ピークを前記半導体基板の深さ方向に有する第1導電型のバッファ領域を更に備える
請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体基板の深さ方向における結晶欠陥密度分布は、前記バッファ領域における前記濃度ピークより下面からの距離が長い位置に欠陥密度ピークを有する
請求項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一つの半導体基板にIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等のトランジスタ部と、FWD(還流ダイオード)等のダイオード部を形成した逆導通型の半導体装置が知られている(例えば、特許文献1から3参照)。
特許文献1 特開2018-46187号公報
特許文献2 特開2013-138069号公報
特許文献3 特開2018-78153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置においては、基板の中央部の温度が高くなりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様においては、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板を備える半導体装置を提供する。半導体装置は、半導体基板の下面と接する第2導電型のコレクタ領域を有するトランジスタ部備えてよい。半導体装置は、半導体基板の下面と接する第1導電型のカソード領域を有し、半導体基板の上面における配列方向に沿ってトランジスタ部と交互に配置されたダイオード部を備えてよい。トランジスタ部のうち、半導体基板の配列方向における中央に近いものから順番に選択した2つ以上のトランジスタ部の配列方向における幅が、他のいずれかのトランジスタ部の配列方向における幅よりも大きくてよい。
【0005】
トランジスタ部のうち、半導体基板の配列方向における中央に近いものから順番に選択した2つ以上の第1のトランジスタ部のそれぞれは、配列方向において第1の幅を有してよい。トランジスタ部のうち、第1のトランジスタ部よりも中央から離れて配置された2つ以上の第2のトランジスタ部のそれぞれは、配列方向において第1の幅よりも小さい第2の幅を有してよい。
【0006】
第2の幅を第1の幅で除算した値は、0.5より大きくてよい。第2の幅を第1の幅で除算した値は、1より小さくてよい。
【0007】
第1の幅は、700μmより大きくてよい。第1の幅は、1100μmより小さくてよい。
【0008】
それぞれのダイオード部の配列方向における幅は、300μmより大きくてよい。
【0009】
それぞれのダイオード部の配列方向における幅は、半導体基板の厚みの2.5倍より大きくてよい。
【0010】
それぞれのダイオード部は、配列方向において同一の幅を有してよい。
【0011】
トランジスタ部のうち、半導体基板の配列方向における中央に最も近い第1のトランジスタ部の配列方向における幅は、第1のトランジスタ部よりも中央から離れた第2のトランジスタ部の配列方向における幅よりも大きくてよい。第2のトランジスタ部の配列方向における幅は、第2のトランジスタ部よりも中央から離れた第3のトランジスタ部の配列方向における幅よりも大きくてよい。
【0012】
半導体装置は、半導体基板の上面において、トランジスタ部およびダイオード部が配列方向に沿って交互に配置された領域を囲んで設けられた外周ダイオード部を備えてよい。
【0013】
半導体装置は、トランジスタ部に電気的に接続されたゲートパッドを備えてよい。ゲートパッドに最も近いダイオード部とゲートパッドとの配列方向における距離が、当該ダイオード部の配列方向における幅よりも大きくてよい。
【0014】
半導体基板における酸素濃度が、1.0×1017/cm3以上であってよい。
【0015】
半導体装置は、ドリフト領域と半導体基板の下面との間に設けられ、水素を含み、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い濃度ピークを半導体基板の深さ方向に複数有する第1導電型のバッファ領域を備えてよい。
【0016】
半導体基板の深さ方向における結晶欠陥密度分布は、バッファ領域における濃度ピークの間に配置された欠陥密度ピークを有してよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。
図2】半導体装置100の他の構造例を示す上面図である。
図3】トランジスタ部70に電気的に接続されたゲートパッド112の近傍における、ダイオード部80およびトランジスタ部70の配置例を示す図である。
図4図1および図2における領域Aの拡大図である。
図5図4におけるb-b断面の一例を示す図である。
図6図5のC-C線におけるドーピング濃度分布、結晶欠陥密度分布およびヘリウム濃度分布の一例を示す図である。
図7】半導体装置100の他の構造例を示す上面図である。
図8】活性部120におけるダイオード部80およびトランジスタ部70の他の配置例を示す図である。
図9】活性部120におけるダイオード部80およびトランジスタ部70の他の配置例を示す図である。
図10】活性部120の他の構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0021】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。また本明細書では、+Z軸方向から見ることを上面視と称する場合がある。
【0022】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0023】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。ただし、各ドーピング領域の導電型は、それぞれ逆の極性であってもよい。また、本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。
【0024】
本明細書においてドーピング濃度とは、ドナーまたはアクセプタとして活性化した不純物の濃度を指す。本明細書において、ドナーおよびアクセプタの濃度差を、ドーピング濃度とする場合がある。当該濃度差は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR)により計測されるキャリア濃度を、ドーピング濃度としてよい。また、ドーピング濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドーピング濃度としてよい。ドナーまたはアクセプタが存在する領域におけるドーピング濃度がほぼ均一な場合等においては、ドーピング濃度の平均値を当該領域におけるドーピング濃度としてよい。また、本明細書においてドーパントの濃度とは、ドナーおよびアクセプタのそれぞれの濃度を指す。
【0025】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。図1においては、各部材を半導体基板10の上面に投影した位置を示している。図1においては、半導体装置100の一部の部材だけを示しており、一部の部材は省略している。
【0026】
半導体装置100は、半導体基板10を備えている。半導体基板10は、シリコンまたは化合物半導体等の半導体材料で形成された基板である。半導体基板10は、上面視において端辺102を有する。本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板10の上面側から見ることを意味している。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺102を有する。図1においては、X軸およびY軸は、いずれかの端辺102と平行である。またZ軸は、半導体基板10の上面と垂直である。
【0027】
半導体基板10には活性部120が設けられている。活性部120は、半導体装置100が動作した場合に半導体基板10の上面と下面との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。活性部120の上方には、エミッタ電極が設けられているが図1では省略している。
【0028】
活性部120には、IGBT等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70と、還流ダイオード(FWD)等のダイオード素子を含むダイオード部80とが設けられている。トランジスタ部70およびダイオード部80は、半導体基板10の上面における所定の配列方向(本例ではX軸方向)に沿って、交互に配置されている。
【0029】
図1においては、トランジスタ部70が配置される領域には記号「I」を付し、ダイオード部80が配置される領域には記号「F」を付している。本明細書では、上面視において配列方向と垂直な方向を延伸方向(図1ではY軸方向)と称する場合がある。トランジスタ部70およびダイオード部80は、それぞれ延伸方向に長手を有してよい。つまり、トランジスタ部70のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。同様に、ダイオード部80のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。トランジスタ部70およびダイオード部80の延伸方向と、後述する各トレンチ部の長手方向とは同一であってよい。
【0030】
ダイオード部80は、半導体基板10の下面と接する領域に、N+型のカソード領域を有する。本明細書では、カソード領域が設けられた領域を、ダイオード部80と称する。つまりダイオード部80は、上面視においてカソード領域と重なる領域である。半導体基板10の下面には、カソード領域以外の領域には、P+型のコレクタ領域が設けられてよい。本明細書では、ダイオード部80を、後述するゲート配線までY軸方向に延長した延長領域81も、ダイオード部80に含める場合がある。延長領域81の下面には、コレクタ領域が設けられている。
【0031】
トランジスタ部70は、半導体基板10の下面の接する領域に、P+型のコレクタ領域を有する。また、トランジスタ部70は、半導体基板10の上面側に、ゲート導電部およびゲート絶縁膜を有するゲート構造が周期的に配置されている。
【0032】
半導体装置100は、半導体基板10の上方に1つ以上のパッドを有してよい。本例の半導体装置100は、ゲートパッド112を有している。半導体装置100は、アノードパッド、カソードパッドおよび電流検出パッド等のパッドを有してもよい。各パッドは、端辺102の近傍に配置されている。端辺102の近傍とは、上面視における端辺102と、エミッタ電極との間の領域を指す。半導体装置100の実装時において、各パッドは、ワイヤ等の配線を介して外部の回路に接続されてよい。
【0033】
ゲートパッド112には、ゲート電位が印加される。ゲートパッド112は、活性部120のゲートトレンチ部の導電部に電気的に接続される。半導体装置100は、ゲートパッド112とゲートトレンチ部とを接続するゲート配線を備える。図1においては、ゲート配線に斜線のハッチングを付している。
【0034】
本例のゲート配線は、外周ゲート配線130と、活性側ゲート配線131とを有している。外周ゲート配線130は、上面視において活性部120と半導体基板10の端辺102との間に配置されている。本例の外周ゲート配線130は、上面視において活性部120を囲んでいる。上面視において外周ゲート配線130に囲まれた領域を活性部120としてもよい。また、外周ゲート配線130は、ゲートパッド112と接続されている。外周ゲート配線130は、半導体基板10の上方に配置されている。外周ゲート配線130は、アルミニウム等を含む金属配線であってよい。
【0035】
活性側ゲート配線131は、活性部120に設けられている。活性部120に活性側ゲート配線131を設けることで、半導体基板10の各領域について、ゲートパッド112からの配線長のバラツキを低減できる。
【0036】
活性側ゲート配線131は、活性部120のゲートトレンチ部と接続される。活性側ゲート配線131は、半導体基板10の上方に配置されている。活性側ゲート配線131は、不純物がドープされたポリシリコン等の半導体で形成された配線であってよい。
【0037】
活性側ゲート配線131は、外周ゲート配線130と接続されてよい。本例の活性側ゲート配線131は、Y軸方向の略中央で一方の外周ゲート配線130から他方の外周ゲート配線130まで、活性部120を横切るように、X軸方向に延伸して設けられている。活性側ゲート配線131により活性部120が分割されている場合、それぞれの分割領域において、トランジスタ部70およびダイオード部80がX軸方向に交互に配置されてよい。
【0038】
また、半導体装置100は、ポリシリコン等で形成されたPN接合ダイオードである不図示の温度センス部や、活性部120に設けられたトランジスタ部の動作を模擬する不図示の電流検出部を備えてもよい。
【0039】
本例の半導体装置100は、外周ゲート配線130と端辺102との間に、エッジ終端構造部90を備える。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部90は、例えば、活性部120を囲んで環状に設けられたガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0040】
半導体装置100を動作させると、半導体装置100に流れる電流により発熱する。半導体基板10の上面視における中央位置104の近傍は、周囲を発熱源が囲んでいるので、端辺102の近傍の領域に比べて温度が上昇しやすい。
【0041】
ダイオード部80の発熱はトランジスタ部70へ拡散できるため抑制できる。このため、ダイオード部80の電流密度をトランジスタ部70の電流密度よりも高くすることができる場合がある。例えばトランジスタ部70には、IE効果(電子注入促進効果)を高める、または、ゲート容量を調整する等の目的に応じて、ダミーのゲート構造が配置されている。このため、トランジスタ部70の電流密度は、ダイオード部80の電流密度よりも小さくなりやすい。このため、ダイオード部80の単位面積当たりの発熱は、トランジスタ部70の単位面積当たりの発熱よりも大きくなりやすい。
【0042】
半導体装置100においては、中央位置104の近傍におけるダイオード部80の密度を、中央位置104から離れた位置におけるダイオード部80の密度よりも低くする。これにより、中央位置104の近傍における温度上昇を抑制できる。
【0043】
また、ダイオード部80に定格の二分の一以上の電流を流し続け自己発熱温度が上昇すると、ダイオード部80の順方向電圧が低下する場合がある。例えばダイオード部80におけるキャリアライフタイムを短くするために、ダイオード部80に結晶欠陥を形成する場合がある。ダイオード部80におけるキャリアライフタイムを短くすることで、ダイオード部80の逆回復時間を短くして、逆回復損失を低減できる。
【0044】
上記のように電流を流し続けることでダイオード部80の温度が上昇すると、ダイオード部80における結晶欠陥が回復する場合がある。結晶欠陥が回復して結晶欠陥の密度が変化すると、ダイオード部80における半導体基板10の抵抗値が変化して、ダイオード部80の順方向電圧の低下とともに逆回復損失が上昇する。
【0045】
半導体装置100においては、中央位置104の近傍におけるダイオード部80の密度を、中央位置104から離れた位置におけるダイオード部80の密度よりも低くする。これにより、中央位置104の近傍における温度上昇に伴う、ダイオード部80の特性変動を抑制できる。
【0046】
本例では、X軸方向に離散的に配置された複数のトランジスタ部70のうち、X軸方向において半導体基板10の中央位置104に近いものから順番に選択した2つ以上のトランジスタ部70を、第1のトランジスタ部70-1とする。図1の例では、X軸方向において中央位置104に近い3つのトランジスタ部70を、第1のトランジスタ部70-1としている。第1のトランジスタ部70-1以外のトランジスタ部70を、第2のトランジスタ部70-2とする。第2のトランジスタ部70-2は、第1のトランジスタ部70-1よりもX軸方向において外側に配置されている。外側とは、中央位置104から遠い側を指す。
【0047】
第2のトランジスタ部70-2は、中央位置104から一方の端辺102までの間に、X軸方向において2つ以上配置されることが好ましい。つまり、2つ以上の第1のトランジスタ部70-1の両側に、2つ以上の第2のトランジスタ部70-2が配置されることが好ましい。図1の例では、3つの第1のトランジスタ部70-1の両側に、3つの第2のトランジスタ部70-2がそれぞれ配置されている。
【0048】
第1のトランジスタ部70-1は、X軸方向において3つ以上連続して配置されてよい。第1のトランジスタ部70-1が連続して配置されるとは、第2のトランジスタ部70-2を含まずに、第1のトランジスタ部70-1と、ダイオード部80とが交互に配置されることを指す。第2のトランジスタ部70-2は、X軸方向において3つ以上連続して配置されてよい。第2のトランジスタ部70-2が連続して配置されるとは、第1のトランジスタ部70-1を含まずに、第2のトランジスタ部70-2と、ダイオード部80とが交互に配置されることを指す。
【0049】
第1のトランジスタ部70-1のX軸方向における第1の幅W1は、いずれかの第2のトランジスタ部70-2のX軸方向における第2の幅W2よりも大きい。本例では、第1のトランジスタ部70-1の第1の幅W1は同一である。また、それぞれの第2のトランジスタ部70-2の第2の幅W2は同一である。つまり、中央位置104の近傍には、他の領域に比べて、幅の大きいトランジスタ部70が配置されている。
【0050】
X軸方向において、それぞれのトランジスタ部70の間にはダイオード部80が配置されている。それぞれのダイオード部80の幅Wfは同一であってよく、異なっていてもよい。ダイオード部80の幅Wfは、第2の幅W2よりも小さくてよく、同一であってもよく、大きくてもよい。
【0051】
本例においては、中央位置104の近傍には、幅の大きい第1のトランジスタ部70-1が配置され、中央位置104から離れた位置には、幅の小さい第2のトランジスタ部70-2が配置されている。このため、中央位置104の近傍においては、中央位置104から離れた位置に比べて、ダイオード部80の密度が小さくなる。このため、中央位置104の近傍における温度上昇を抑制できる。また、中央位置104と外周部とでは、外周部の方がトランジスタ部70とダイオード部80の温度差が小さい。そのため、チップ全体の温度を下げることができ、中央付近に集まる熱も上がりにくくなり、ダイオード部80の順方向電圧の低下を抑制できる。
【0052】
また、X軸方向において第1のトランジスタ部70-1を2つ以上配置することで、X軸方向における温度分布をなだらかにできる。例えば、幅の異なるトランジスタ部70を1つずつ交互に配置すると、面積の大きい発熱源と、面積の小さい発熱源が短い周期で配置されるので、X軸方向における温度分布に山および谷が短い周期で生じてしまう。これに対して、同一の幅のトランジスタ部70を2つ以上連続して配置することで、X軸方向における温度分布における山および谷の数を少なくできる。
【0053】
なお、半導体基板10のX軸方向における中央位置104には、第1のトランジスタ部70-1が配置されることが好ましい。これにより、X軸方向における中央位置104にダイオード部80が配置されることを防ぎ、ダイオード部80の特性変動を抑制できる。
【0054】
第2の幅W2を、第1の幅W1で除算した値W2/W1は、0.5より大きくてよい。これにより、中央位置104の近傍におけるダイオード部80の密度を小さくできる。W2/W1は、0.6より大きくてよく、0.7より大きくてもよい。
【0055】
W2/W1は、1より小さくてよい。これにより、第1のトランジスタ部70-1が設けられた領域と、第2のトランジスタ部70-2が設けられた領域との境界において、チャネル密度、温度分布等の特性の変動が大きくなりすぎるのを制限できる。W2/W1は、0.9より小さくてよく、0.8より小さくてもよい。
【0056】
第1の幅W1は、700μmより大きくてよい。これにより、中央位置104の近傍におけるダイオード部80の密度を小さくできる。第1の幅W1は、800μmより大きくてよく、900μmより大きくてもよい。
【0057】
第1の幅W1は、1100μmより小さくてよい。これにより、第1のトランジスタ部70-1が大きくなりすぎて、第2のトランジスタ部70-2が設けられた領域との境界において、チャネル密度、温度分布等の特性の変動が大きくなりすぎるのを制限できる。第1の幅W1は、1000μmより小さくてよく、900μmより小さくてもよい。
【0058】
第1の幅W1は、ゲートパッド112のX軸方向における幅より大きくてよい。第1の幅W1は、ダイオード部80の幅Wfより大きくてよい。また、中央位置104と、ダイオード部80とのX軸方向における最短距離は、X軸方向における半導体基板10の幅の10%以上であってよい。当該最短距離は、半導体基板10の幅の15%以上であってよく、20%以上であってもよい。
【0059】
第2の幅W2は、200μmより大きくてよい。第2の幅W2は、300μmより大きくてよく、400μmより大きくてもよい。第2の幅W2は、700μmより小さくてよい。第2の幅W2は、600μmより小さくてよく、500μmより小さくてもよい。
【0060】
ダイオード部80の幅Wfは、200μmより大きくてよい。半導体基板10の上面におけるダイオード部80の総面積は、半導体装置100に要求される性能に応じて定まる。ダイオード部80の幅Wfを大きくすると、ダイオード部80の一つあたりの面積が大きくなるので、ダイオード部80の個数は少なくなる。ダイオード部80の個数が多いと、ダイオード部80とトランジスタ部70との境界の面積が増大し、トランジスタ部70からダイオード部80に流れるキャリアにより、ダイオード部80の逆回復時のピーク電流が大きくなる。このため、逆回復損失が大きくなりやすい。ダイオード部80の個数が少なくなるほど、トランジスタ部70との境界部分を少なくできるが、トランジスタ部70とダイオード部80との温度差が大きくなり、チップの発熱が大きくなる。ダイオード部80の個数は、ダイオード損失又はチップ発熱量とトレードオフ関係にある。
【0061】
ダイオード部80の幅Wfは、400μmより大きくてよく、500μmより大きくてもよい。ダイオード部80の幅Wfは、半導体基板10のZ軸方向における厚みの2.5倍以上であってよく、3.5倍以上であってよく、4.5倍以上であってもよい。
【0062】
図2は、半導体装置100の他の構造例を示す上面図である。本例においても、中央位置104に近いものから順番に選択した2つ以上のトランジスタ部70の幅が、他のトランジスタ部70の配列方向における幅よりも大きい。本例の半導体装置100においては、トランジスタ部70は、1つ以上の第1のトランジスタ部70-1、1つ以上の第2のトランジスタ部70-2および1つ以上の第3のトランジスタ部70-3を含む。
【0063】
第1のトランジスタ部70-1は、中央位置104の最も近くに配置されている。第1のトランジスタ部70-1の第1の幅W1は、図1において説明した第1のトランジスタ部70-1の第1の幅W1と同一であってよい。
【0064】
第2のトランジスタ部70-2は、X軸方向において、第1のトランジスタ部70-1よりも中央位置104から離れて配置されている。第3のトランジスタ部70-3は、X軸方向において、第2のトランジスタ部70-2よりも中央位置104から離れて配置されている。
【0065】
第1のトランジスタ部70-1のX軸方向における第1の幅W1は、第2のトランジスタ部70-2のX軸方向における第2の幅W2よりも大きい。また、第2のトランジスタ部の第2の幅W2は、第3のトランジスタ部70-3の軸方向における第3の幅W3よりも大きい。つまり、本例の半導体装置100においては、中央位置104から離れるほど、トランジスタ部70の幅が段階的に減少している。本例の第2のトランジスタ部70-2および第3のトランジスタ部70-3の一方は、図1に示した第2のトランジスタ部70-2と同一の幅を有してよい。
【0066】
本例の半導体装置100は、中央位置104から離れるほど、トランジスタ部70の幅が減少している。図2の例では、トランジスタ部70の幅はW1、W2、W3の3種類であったが、他の例では、トランジスタ部70の幅は4種類以上であってもよい。また、同一の幅を有するトランジスタ部70が、X軸方向において2つ以上連続して配置されていてもよい。本例においても、中央位置104の近傍におけるダイオード部80の密度を、中央位置104から離れた位置におけるダイオード部80の密度よりも低くできる。これにより、中央位置104の近傍における温度上昇を抑制し、また、ダイオード部80の特性変動を抑制できる。
【0067】
図3は、トランジスタ部70に電気的に接続されたゲートパッド112の近傍における、ダイオード部80およびトランジスタ部70の配置例を示す図である。本例の配置は、図1および図2のいずれに適用してもよい。
【0068】
本例のゲートパッド112は、第1の幅W1を有する第1のトランジスタ部70-1と、Y軸方向において向かい合う位置に配置されている。ゲートパッド112は、第1のトランジスタ部70-1の上方に配置されていてもよい。
【0069】
本例においては、X軸方向においてゲートパッド112に最も近いダイオード部80と、ゲートパッド112とのX軸方向における距離をDとする。ゲートパッド112の下方における半導体基板10の上面には、P+型のウェル領域が設けられている。ウェル領域は、後述するドリフト領域よりもドーピング濃度が高く、且つ、後述するベース領域よりも深い位置まで設けられている。
【0070】
ダイオード部80の下面にはN+型のカソード領域が設けられている。このため、ゲートパッド112とダイオード部80との距離Dが小さくなると、高濃度のウェル領域とカソード領域との距離が近くなり、逆回復耐量が低下してしまう。本例の距離Dは、ダイオード部80の幅Wfよりも大きい。これにより、逆回復耐量の低下を抑制できる。距離Dは、幅Wfの0.25倍以上であってよく、1倍以上であってもよい。
【0071】
図4は、図1および図2における領域Aの拡大図である。領域Aは、トランジスタ部70、ダイオード部80、および、活性側ゲート配線131を含む領域である。本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面側の内部に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。また、本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面の上方に設けられたエミッタ電極52および活性側ゲート配線131を備える。エミッタ電極52および活性側ゲート配線131は互いに分離して設けられる。
【0072】
エミッタ電極52および活性側ゲート配線131と、半導体基板10の上面との間には層間絶縁膜が設けられるが、図4では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。図4においては、それぞれのコンタクトホール56に斜線のハッチングを付している。
【0073】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられる。エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、半導体基板10の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52は、Y軸方向におけるダミートレンチ部30の先端において、ダミートレンチ部30のダミー導電部と接続されてよい。
【0074】
活性側ゲート配線131は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを通って、ゲートトレンチ部40と接続する。活性側ゲート配線131は、Y軸方向におけるゲートトレンチ部40の先端部41において、ゲートトレンチ部40のゲート導電部と接続されてよい。活性側ゲート配線131は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。
【0075】
エミッタ電極52は、金属を含む材料で形成される。図においては、エミッタ電極52が設けられる範囲を示している。例えば、エミッタ電極52の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成される。エミッタ電極52は、アルミニウム等で形成された領域の下層に、チタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。さらにコンタクトホール内において、バリアメタルとアルミニウム等に接するようにタングステン等を埋め込んで形成されたプラグを有してもよい。
【0076】
ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重なって設けられている。ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重ならない範囲にも、所定の幅で延伸して設けられている。本例のウェル領域11は、コンタクトホール56のY軸方向の端から、活性側ゲート配線131側に離れて設けられている。ウェル領域11は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のベース領域14はP-型であり、ウェル領域11はP+型である。
【0077】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれは、配列方向に複数配列されたトレンチ部を有する。本例のトランジスタ部70には、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられている。本例のダイオード部80には、複数のダミートレンチ部30が、配列方向に沿って設けられている。本例のダイオード部80には、ゲートトレンチ部40が設けられていない。
【0078】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な延伸方向に沿って延伸する2つの直線部分39(延伸方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの直線部分39を接続する先端部41を有してよい。図4における延伸方向はY軸方向である。
【0079】
先端部41の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられることが好ましい。2つの直線部分39のY軸方向における端部どうしを先端部41が接続することで、直線部分39の端部における電界集中を緩和できる。
【0080】
トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30はゲートトレンチ部40のそれぞれの直線部分39の間に設けられる。それぞれの直線部分39の間には、1本のダミートレンチ部30が設けられてよく、複数本のダミートレンチ部30が設けられていてもよい。ダミートレンチ部30は、延伸方向に延伸する直線形状を有してよく、ゲートトレンチ部40と同様に、直線部分29と先端部31とを有していてもよい。図4に示した半導体装置100は、先端部31を有さない直線形状のダミートレンチ部30と、先端部31を有するダミートレンチ部30の両方を含んでいる。
【0081】
ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30のY軸方向の端部は、上面視においてウェル領域11に設けられる。つまり、各トレンチ部のY軸方向の端部において、各トレンチ部の深さ方向の底部は、ウェル領域11に覆われている。これにより、各トレンチ部の当該底部における電界集中を緩和できる。
【0082】
配列方向において各トレンチ部の間には、メサ部が設けられている。メサ部は、半導体基板10の内部において、トレンチ部に挟まれた領域を指す。一例としてメサ部の上端は半導体基板10の上面である。メサ部の下端の深さ位置は、トレンチ部の下端の深さ位置と同一である。本例のメサ部は、半導体基板10の上面において、トレンチに沿って延伸方向(Y軸方向)に延伸して設けられている。本例では、トランジスタ部70にはメサ部60が設けられ、ダイオード部80にはメサ部61が設けられている。本明細書において単にメサ部と称した場合、メサ部60およびメサ部61のそれぞれを指している。
【0083】
それぞれのメサ部には、ベース領域14が設けられる。メサ部において半導体基板10の上面に露出したベース領域14のうち、活性側ゲート配線131に最も近く配置された領域をベース領域14-eとする。図4においては、それぞれのメサ部の延伸方向における一方の端部に配置されたベース領域14-eを示しているが、それぞれのメサ部の他方の端部にもベース領域14-eが配置されている。それぞれのメサ部には、上面視においてベース領域14-eに挟まれた領域に、第1導電型のエミッタ領域12および第2導電型のコンタクト領域15の少なくとも一方が設けられてよい。本例のエミッタ領域12はN+型であり、コンタクト領域15はP+型である。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、深さ方向において、ベース領域14と半導体基板10の上面との間に設けられてよい。
【0084】
トランジスタ部70のメサ部60は、半導体基板10の上面に露出したエミッタ領域12を有する。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40に接して設けられている。ゲートトレンチ部40に接するメサ部60は、半導体基板10の上面に露出したコンタクト領域15が設けられていてよい。
【0085】
メサ部60におけるコンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、X軸方向における一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで設けられる。一例として、メサ部60のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿って交互に配置されている。
【0086】
他の例においては、メサ部60のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿ってストライプ状に設けられていてもよい。例えばトレンチ部に接する領域にエミッタ領域12が設けられ、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が設けられる。
【0087】
ダイオード部80のメサ部61には、エミッタ領域12が設けられていない。メサ部61の上面には、ベース領域14およびコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてベース領域14-eに挟まれた領域には、それぞれのベース領域14-eに接してコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてコンタクト領域15に挟まれた領域には、ベース領域14が設けられてよい。ベース領域14は、コンタクト領域15に挟まれた領域全体に配置されてよい。
【0088】
それぞれのメサ部の上方には、コンタクトホール56が設けられている。コンタクトホール56は、ベース領域14-eに挟まれた領域に配置されている。本例のコンタクトホール56は、コンタクト領域15、ベース領域14およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。コンタクトホール56は、ベース領域14-eおよびウェル領域11に対応する領域には設けられない。コンタクトホール56は、メサ部60の配列方向(X軸方向)における中央に配置されてよい。
【0089】
ダイオード部80において、半導体基板10の下面と隣接する領域には、N+型のカソード領域82が設けられる。半導体基板10の下面において、カソード領域82が設けられていない領域には、P+型のコレクタ領域22が設けられてよい。図4においては、カソード領域82およびコレクタ領域22の境界を点線で示している。
【0090】
図5は、図4におけるb-b断面の一例を示す図である。b-b断面は、エミッタ領域12およびカソード領域82を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面に設けられている。層間絶縁膜38は、ボロンまたはリン等の不純物が添加されたシリケートガラス等の絶縁膜、熱酸化膜、および、その他の絶縁膜の少なくとも一層を含む膜である。層間絶縁膜38には、図2において説明したコンタクトホール56が設けられている。
【0091】
エミッタ電極52は、層間絶縁膜38の上方に設けられる。エミッタ電極52は、層間絶縁膜38のコンタクトホール56を通って、半導体基板10の上面21と接触している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成されている。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向(Z軸方向)を深さ方向と称する。
【0092】
半導体基板10は、N-型のドリフト領域18を有する。ドリフト領域18は、トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれに設けられている。
【0093】
トランジスタ部70のメサ部60には、N+型のエミッタ領域12およびP-型のベース領域14が、半導体基板10の上面21側から順番に設けられている。ベース領域14の下方にはドリフト領域18が設けられている。メサ部60には、N+型の蓄積領域16が設けられてもよい。蓄積領域16は、ベース領域14とドリフト領域18との間に配置される。
【0094】
エミッタ領域12は半導体基板10の上面21に露出しており、且つ、ゲートトレンチ部40と接して設けられている。エミッタ領域12は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。エミッタ領域12は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高い。
【0095】
ベース領域14は、エミッタ領域12の下方に設けられている。本例のベース領域14は、エミッタ領域12と接して設けられている。ベース領域14は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。
【0096】
蓄積領域16は、ベース領域14の下方に設けられている。蓄積領域16は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高い。ドリフト領域18とベース領域14との間に高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減できる。蓄積領域16は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。
【0097】
ダイオード部80のメサ部61には、半導体基板10の上面21に接して、P-型のベース領域14が設けられている。ベース領域14の下方には、ドリフト領域18が設けられている。メサ部61において、ベース領域14の下方に蓄積領域16が設けられていてもよい。
【0098】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれにおいて、ドリフト領域18の下にはN+型のバッファ領域20が設けられてよい。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下端から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。バッファ領域20は、深さ方向のドーピング濃度分布において、複数のピークを有してよく、単一のピークを有してもよい。
【0099】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下には、P+型のコレクタ領域22が設けられる。ダイオード部80において、バッファ領域20の下には、N+型のカソード領域82が設けられる。コレクタ領域22およびカソード領域82は、半導体基板10の下面23に露出しており、コレクタ電極24と接続している。
【0100】
半導体基板10の上面21側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が設けられる。各トレンチ部は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達している。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらのドーピング領域も貫通して、ドリフト領域18に到達している。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0101】
上述したように、トランジスタ部70には、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30が設けられている。ダイオード部80には、ダミートレンチ部30が設けられ、ゲートトレンチ部40が設けられていない。本例においてダイオード部80とトランジスタ部70のX軸方向における境界は、カソード領域82とコレクタ領域22の境界である。
【0102】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0103】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ベース領域14よりも長く設けられてよい。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44は、ゲート配線に電気的に接続されている。ゲート導電部44に所定のゲート電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチ部40に接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0104】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー導電部34は、エミッタ電極52に電気的に接続されている。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。
【0105】
本例のゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われている。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は、下側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0106】
ダイオード部80は、上面側ライフタイム制御領域92を有する。ライフタイム制御領域は、半導体基板10の深さ方向におけるキャリアライフタイム分布が谷部を有する領域である。
【0107】
上面側ライフタイム制御領域92は、半導体基板10の上面21側に設けられている。上面21側とは、半導体基板10の深さ方向における中央と、上面21との間の領域を指す。例えば上面側ライフタイム制御領域92は、半導体基板10の上面21側から、ヘリウムやプロトン等の不純物を所定の飛程で注入することで形成できる。不純物を注入することで結晶欠陥が形成され、結晶欠陥とキャリアが結合することでキャリアライフタイムが小さくなる。上面側ライフタイム制御領域92には、深さ方向における結晶欠陥密度分布の欠陥密度ピーク93が設けられてよい。図5においては、欠陥密度ピーク93を、模式的に×印で示している。欠陥密度ピーク93の位置において、キャリアライフタイム分布は極小値となってよい。
【0108】
上面側ライフタイム制御領域92は、X軸方向におけるダイオード部80の全体に設けられてよい。また、上面側ライフタイム制御領域92は、トランジスタ部70のうち、ダイオード部80と接する領域にも設けられてよい。つまり上面側ライフタイム制御領域92は、ダイオード部80から、トランジスタ部70の一部まで、X軸方向に連続して設けられてよい。
【0109】
ダイオード部80およびトランジスタ部70は、下面側ライフタイム制御領域94を有してよい。下面側ライフタイム制御領域94は、X軸方向におけるトランジスタ部70およびダイオード部80の全体に設けられてよい。下面側ライフタイム制御領域94は、半導体基板10の下面23側に設けられている。下面23側とは、半導体基板10の深さ方向における中央と、下面23との間の領域を指す。例えば下面側ライフタイム制御領域94は、半導体基板10の下面23側から、ヘリウム等の不純物を所定の飛程で注入することで形成できる。下面側ライフタイム制御領域94には、深さ方向における結晶欠陥密度分布の欠陥密度ピーク95が設けられてよい。欠陥密度ピーク95の位置において、キャリアライフタイム分布は極小値となってよい。
【0110】
図6は、図5のC-C線におけるドーピング濃度分布、結晶欠陥密度分布およびヘリウム濃度分布の一例を示す図である。C-C線は、ダイオード部80において、上面側ライフタイム制御領域92の上方から、下面側ライフタイム制御領域94の下方まで通る線である。
【0111】
本例のドーピング濃度分布は、バッファ領域20に1つ以上の濃度ピーク25を有する。濃度ピーク25は、深さ方向において複数設けられてよい。バッファ領域20におけるドーピング濃度は、ドリフト領域18におけるドーピング濃度よりも高い。
【0112】
それぞれの濃度ピーク25は、プロトン等の水素イオンを注入することで形成できる。水素イオンを半導体基板10に注入してアニールすることで、水素自体がドナー化し、または、半導体基板10における空孔等の結晶欠陥が水素や酸素により終端されることでドナー化する。バッファ領域20は、それぞれの濃度ピーク25に対応する、水素濃度ピークを有してよい。濃度ピーク25と、水素濃度ピークとの位置は同一であってよい。
【0113】
ダイオード部80における結晶欠陥密度分布は、1つ以上の欠陥密度ピークを有する。図6の例では、結晶欠陥密度分布は、欠陥密度ピーク93および欠陥密度ピーク95を有する。結晶欠陥は、ヘリウム等の不純物が通過した領域にも形成される。このため、それぞれの欠陥密度ピークは、不純物が注入された側にゆるやかなスロープを有し、不純物が注入されていない側に急峻なスロープを有する。また、欠陥密度ピークにおける密度は、ヘリウム等の不純物のドーズ量等によって制御できる。
【0114】
欠陥密度ピーク95は、バッファ領域20に設けられている。欠陥密度ピーク95は、バッファ領域20における濃度ピーク25の間に配置されてよい。本明細書において所定のピークが他の2つのピークの間に配置されるとは、他の2つのピークの頂点の間に所定のピークの頂点が配置され、且つ、他の2つのピークのそれぞれの半値幅に、所定のピークの頂点が含まれていないことを指す。
【0115】
また、ヘリウム濃度分布は、1つ以上の濃度ピークを有する。図6の例では、欠陥密度ピーク93に対応する濃度ピーク96を有し、欠陥密度ピーク95に対応する濃度ピーク97を有する。対応する密度ピークと濃度ピークとは、同一の深さ位置に設けられてよい。
【0116】
このような構成により、所定の深さ位置に、所定の密度の欠陥密度ピークを設けることができ、キャリアライフタイムを調整できる。しかし、上述したように、半導体装置100の動作時に温度が上昇すると、ヘリウム照射を起因とする空孔(V)からなる結晶欠陥と、半導体基板10中の水素(H)や酸素(O)とが結合してVOH欠陥が増加し、ヘリウム照射を起因とする空孔からなる結晶欠陥の密度が低下する場合がある。特に本例では、バッファ領域20には水素が多量に存在するので、バッファ領域20に設けられたヘリウム照射を起因とする空孔からなる結晶欠陥の密度が低下しやすい。
【0117】
これに対して半導体装置100においては、温度が上昇しやすい半導体基板10の中央位置104の近傍においては、ダイオード部80が少ない。このため、ダイオード部80におけるヘリウム照射を起因とする空孔からなる結晶欠陥密度の低下を抑制できる。
【0118】
ヘリウム照射を起因とする空孔からなる結晶欠陥は、半導体基板10における酸素濃度が高いと、水素とともにVOH欠陥を形成しやすい。このため、半導体基板10における酸素濃度が高い場合に、半導体装置100によるダイオード部80のヘリウム照射を起因とする空孔からなる結晶欠陥の密度低下が顕著になる。半導体基板10の酸素濃度は、1.0×1017/cm3以上であってよい。半導体基板10の酸素濃度は、2.0×1017/cm3以上であってよく、5.0×1017/cm3以上であってもよい。半導体基板10の酸素濃度は、平均値であってよく、最大値であってもよい。また、半導体基板10は、MCZ基板であってよい。MCZ基板とは、MCZ(Magnetic field applied CZochralski)法で形成された基板である。MCZ基板は、酸素濃度が比較的に高い。なお、欠陥密度ピーク95を、濃度ピーク25の間に配置することで、結晶欠陥が水素で終端されることを更に抑制できる。
【0119】
本例では、欠陥密度ピーク95を濃度ピーク25の間に配置する構成について示したが、複数の濃度ピーク25のうち最も下面23から距離が長い位置の濃度ピーク25よりも、下面23からの距離が長い位置に欠陥密度ピーク95が配置されてもよい。また、濃度ピーク25は、リンイオンを注入することで形成してもよい。さらに、濃度ピーク25が1つの場合は、欠陥密度ピーク95を濃度ピーク25よりも下面からの距離が長い位置に配置してもよい。また、濃度ピーク25が1つの場合は、欠陥密度ピーク95を濃度ピーク25とカソード領域82の濃度ピークとの間に配置してもよい。
【0120】
図7は、半導体装置100の他の構造例を示す上面図である。本例の半導体装置100は、図1から図6において説明した形態に対して、外周ダイオード部85を更に備える。外周ダイオード部85は、半導体基板10の上面において、トランジスタ部70およびダイオード部80がX軸方向に沿って交互に配置された領域を囲んでいる。外周ダイオード部85に囲まれた領域における、トランジスタ部70およびダイオード部80の配置は、図1または図2に示した例と同様である。
【0121】
外周ダイオード部85の構造は、ダイオード部80と同様である。つまり、外周ダイオード部85は、半導体基板10の下面23にカソード領域82を有し、上面21にダミートレンチ部30、ベース領域14等を有する。このような構成によっても、半導体基板10の中央位置104近傍におけるダイオード部80の密度を小さくできる。
【0122】
図8は、活性部120におけるダイオード部80およびトランジスタ部70の他の配置例を示す図である。本例の活性部120は、ダイオード部80-1およびダイオード部80-2を有する。ダイオード部80-1は、中央位置104を含む領域に設けられている。ダイオード部80-1のX軸方向の中央が、中央位置104であってよい。ダイオード部80-1の幅Wfは、図1から図7において説明したダイオード部80と同様である。
【0123】
ダイオード部80-2は、ダイオード部80-1よりも、X軸方向において半導体基板10の端辺102側に配置されている。つまり、ダイオード部80-2は、活性部120のX軸方向における端部に配置されている。ダイオード部80-2の幅Wfは、トランジスタ部70の第1の幅W1と同一か、または、幅W1より大きい。2つのダイオード部80-2が、X軸方向においてダイオード部80-1を挟んで配置されてよい。トランジスタ部70は、それぞれのダイオード部80を挟むように配置されている。
【0124】
本例によれば、中央位置104の近傍におけるダイオード部80の密度を小さくすることで、中央位置104の近傍における発熱を抑制することができる。また、ダイオード部80-2の幅Wfを大きくすることでトランジスタ部70と、ダイオード部80の境界領域を減らすことができ、ダイオード損失を改善することができる。なお、ダイオード部80-1は、設けなくてもよい。ダイオード部80-1に代えて、トランジスタ部70を設けてもよい。
【0125】
図9は、活性部120におけるダイオード部80およびトランジスタ部70の他の配置例を示す図である。本例の活性部120は、領域Aおよび領域Bを有する。領域Bは、中央位置104を含む領域である。領域Bは、領域Aよりも、X軸方向において半導体基板10の端辺102側に配置されている。領域Bには、ダイオード部80-1およびトランジスタ部70-1が配置されている。領域Bにおけるダイオード部80-1およびトランジスタ部70-1の配置は、図1から図7において説明した活性部120と同様であってよい。
【0126】
領域Aには、ダイオード部80と、トランジスタ部70とがX軸方向に沿って交互に配置されている。本例の領域Aは、中央位置104側から、端辺102側に向かって、ダイオード部80-3~80-8が配置されている。ダイオード部80-3~80-8は、X軸方向において中央位置104から離れるに従って、幅Wfが大きくなっている。また、本例の領域Aは、中央位置104側から、端辺102側に向かって、トランジスタ部70-2~70-7が配置されている。領域Aに設けられた複数のトランジスタ部70-2~70-6は、X軸方向において中央位置104から離れるに従って、第1の幅W1が大きくなっている。ただし、X軸方向において最も端に配置されたトランジスタ部70-7の第1の幅W1は、隣り合うトランジスタ部70-6の第1の幅W1よりも小さくてもよい。
【0127】
領域Aにおいては、中央位置104に近いほどダイオード部80の密度が大きい。本例では、領域Aにおいてトランジスタ部70とダイオード部80の境界が多いため、トランジスタ部70とダイオード部80の温度差が小さくなり、チップ発熱温度が下がる。また領域Bでは温度が上がりやすいが、領域Aで発熱が抑えられているためチップ全体としての温度上昇を抑制することができる。
【0128】
また、領域Aのダイオード部80の幅は、半導体基板10の端辺102に近づくにつれて大きくなっている。このため、領域Aのうち、中央位置104に近い領域Cでの発熱を抑制できる。領域Cではトランジスタ部70と、ダイオード部80の境界領域が多く、ダイオード損失が悪くなる。しかし、領域Aのうち、中央位置104から遠い領域Dのダイオード部80の幅を拡げることで境界領域を少なくできる。このためダイオード損失を改善できる。よって、領域Cでの損失悪化を領域Dでカバーすることができるため、ダイオード個数と、ダイオード損失又は発熱量とのトレードオフを改善できる。なお、領域Bにおけるダイオード部80-1は設けなくてもよい。なお、図8および図9においても、図1等に示した活性側ゲート配線131が設けられてよい。
【0129】
図10は、活性部120の他の構造例を示す図である。本例の活性部120には、図1から図9において説明した構造に加えて、連結トランジスタ部75が更に設けられている。連結トランジスタ部75は、X軸方向において隣り合う2つのトランジスタ部70を連結している。連結トランジスタ部75は、一方のトランジスタ部70から、他方のトランジスタ部70まで、X軸方向に延伸して設けられてよい。
【0130】
ダイオード部80は、連結トランジスタ部75により、Y軸方向に分断されている。つまり少なくとも一つのダイオード部80は、上面視においてトランジスタ部70に囲まれた島形状を有している。
【0131】
島形状のダイオード部80は、半導体基板10の中央位置104から離れるほど、高密度に配置されてよい。ダイオード部80の密度とは、半導体基板10の上面の単位面積に含まれるダイオード部80の面積である。このような配置によっても、中央位置104の近傍におけるダイオード部80の密度を小さくできる。
【0132】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0133】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、25・・・濃度ピーク、29・・・直線部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・先端部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・直線部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・先端部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、52・・・エミッタ電極、56・・・コンタクトホール、60、61・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、75・・・連結トランジスタ部、80・・・ダイオード部、81・・・延長領域、82・・・カソード領域、85・・・外周ダイオード部、90・・・エッジ終端構造部、92・・・上面側ライフタイム制御領域、93・・・欠陥密度ピーク、94・・・下面側ライフタイム制御領域、95・・・欠陥密度ピーク、96、97・・・濃度ピーク、100・・・半導体装置、102・・・端辺、104・・・中央位置、112・・・ゲートパッド、120・・・活性部、130・・・外周ゲート配線、131・・・活性側ゲート配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10