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7404703窒化物半導体装置の製造方法及び窒化物半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置の製造方法及び窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20231219BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652P
H01L29/78 652G
H01L29/78 653A
H01L29/78 652N
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 652J
H01L21/265 601A
H01L21/265 F
H01L29/44 Y
H01L21/265 601Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019147387
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028932
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】高島 信也
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】上野 勝典
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/098271(WO,A1)
【文献】特開2019-106456(JP,A)
【文献】国際公開第2018/151227(WO,A1)
【文献】特開2017-168557(JP,A)
【文献】特開2002-176004(JP,A)
【文献】特開2004-356257(JP,A)
【文献】特開2003-124515(JP,A)
【文献】特開2018-182279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265、21/336
H01L 29/06、29/12、29/41、29/78、
29/861、29/868、29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウム層の第1面側に局所的に位置する第1領域に、p型不純物及びn型不純物とは異なる元素をイオン注入する工程と、
前記第1領域内に局所的に位置する第2領域に前記p型不純物をイオン注入する工程と、
前記元素と前記p型不純物とがイオン注入された前記窒化ガリウム層に熱処理を施す工程と、を備え、
前記熱処理を施す工程では、
前記第2領域から、前記第1領域内であって前記第2領域の周囲に位置する第3領域へ前記p型不純物を熱拡散させる、窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記p型不純物をイオン注入する工程では、
前記第1面と垂直に交わる第1方向において、前記第1面と前記元素の最も深い注入ピークとの間の位置に前記p型不純物の注入ピークを形成する、請求項1に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記窒化ガリウム層に熱処理を施す工程では、
前記p型不純物の濃度が1.0×1019cm-3以上1.0×1020cm-3以下である第1p型領域を前記第2領域に形成する、請求項1に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記窒化ガリウム層に熱処理を施す工程では、
前記p型不純物の濃度が1.0×1017cm-3以上1.0×1019cm-3以下である第2p型領域を前記第3領域に形成する、請求項1に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記元素は窒素である、請求項1に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記p型不純物はマグネシウムである、請求項1に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項7】
窒化ガリウム層の第1面側に局所的に設けられた、結晶欠陥を含む欠陥領域と、
前記欠陥領域内に局所的に設けられたp型領域と、を備え、
前記p型領域は、
p型不純物を含む第1p型領域と、
前記第1p型領域よりも前記p型不純物を低濃度に含み、前記第1p型領域の周囲に位置する第2p型領域と、を有し、
前記欠陥領域内において、前記第2p型領域から前記第1面に垂直な第1方向へ遠ざかるにしたがって前記p型不純物の濃度が前記第2p型領域の1/10以下まで低下する領域の幅は、100nm以下である、窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記第2p型領域は、前記第1面に垂直な第1方向において前記第1p型領域の下部に接し、かつ、前記第1面に平行な第2方向において前記第1p型領域の側部に接している、請求項7に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記第2p型領域において、前記第1p型領域の下部と接する部分の前記第1方向の長さと、前記第1p型領域の側部と接する部分の第2方向の長さは、それぞれ100nm以上である、請求項8に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記第2p型領域における前記p型不純物の濃度は、1.0×1017cm-3以上1.0×1019cm-3以下である、請求項7に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記第1p型領域における前記p型不純物の濃度は、1.0×1019cm-3以上1.0×1020cm-3以下である、請求項7に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
窒化ガリウム層の第1面側に局所的に設けられた元素高濃度領域と、
前記元素高濃度領域内に局所的に設けられたp型領域と、を備え、
前記元素高濃度領域は、前記窒化ガリウム層において他の領域よりも窒素元素を高濃度に含み、
前記p型領域は、
p型不純物を含む第1p型領域と、
前記第1p型領域よりも前記p型不純物を低濃度に含み、前記第1p型領域の周囲に位置する第2p型領域と、を有する窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体装置の製造方法及び窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガードリングを用いた終端構造により電界緩和し、デバイスの耐圧向上を行う上で、ガードリングを構成するp型領域はイオン注入で形成される。しかし、窒化ガリウム(GaN)の場合、イオン注入によるp型領域の形成は、比較的に高温での活性化熱処理が必要であるが、分解しやすく実施が困難である。このため、GaNの場合、イオン注入によるガードリングの形成は困難であり、電界緩和を十分に行うことができない可能性がある。
これに対して、特許文献1には、エピタキシャル成長法により形成されたp型の窒化ガリウム(以下、pGaNともいう)の一部をエッチングで除去し、pGaNが除去された部分にn型の窒化ガリウム(以下、nGaNともいう)を再成長させ、再成長させたnGaNの一部をエッチングで除去することで、ガードリング構造を形成することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-176941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された方法では、pGaNの一部をエッチングで除去する必要があるが、一般に、深さ方向へのエッチング量(以下、エッチング深さ)の制御は難しい。特許文献1に開示された方法では、エッチング深さが浅い場合はpGaNを分離できず、深い場合は空乏層の伸びが制限されて十分な電界緩和効果が得られない可能性がある。また、エッチング面にnGaNを再成長させるため、pGaNとnGaNとの接合界面にエッチングダメージが残る可能性もある。このため、エッチング技術に頼らずに、窒化ガリウム層にp型領域を容易に形成する技術が望まれる。
本発明は上記課題に着目してなされたものであって、窒化ガリウム層にp型領域を容易に形成することができる窒化物半導体装置の製造方法及び窒化物半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る窒化物半導体装置の製造方法は、窒化ガリウム層の第1面側に局所的に位置する第1領域に、p型不純物及びn型不純物とは異なる元素をイオン注入する工程と、第1領域内に局所的に位置する第2領域にp型不純物をイオン注入する工程と、元素とp型不純物とがイオン注入された窒化ガリウム層に熱処理を施す工程と、を備える。熱処理を施す工程では、第2領域から、第1領域内であって第2領域の周囲に位置する第3領域へp型不純物を熱拡散させる。
【0006】
本発明の一態様に係る窒化物半導体装置は、窒化ガリウム層の第1面側に局所的に設けられた、結晶欠陥を含む欠陥領域と、欠陥領域内に局所的に設けられたp型領域と、を備える。p型領域は、p型不純物を含む第1p型領域と、第1p型領域の周囲に位置する第2p型領域と、を有する。第2p型領域は、第1p型領域よりもp型不純物を低濃度に含む。
【0007】
本発明の別の態様に係る窒化物半導体装置は、窒化ガリウム層の第1面側に局所的に設けられた元素高濃度領域と、元素高濃度領域内に局所的に設けられたp型領域と、を備える。元素高濃度領域は、窒化ガリウム層において他の領域よりもp型不純物及びn型不純物とは異なる元素を高濃度に含む。p型領域は、p型不純物を含む第1p型領域と、第1p型領域の周囲に位置する第2p型領域と、を有する。第2p型領域は、第1p型領域よりもp型不純物を低濃度に含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、窒化ガリウム層にp型領域を容易に形成することができる窒化物半導体装置の製造方法及び窒化物半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置において、GaN層の深さ方向におけるMg濃度分布の一例を示すグラフである。
図4図4は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置において、GaN層の表面近傍の水平方向におけるMg濃度分布の一例を示すグラフである。
図5図5は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図7図7は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図10図10は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図11図11は、本発明の比較例に係るMg濃度分布を示すグラフである。
図12図12は、本発明の実施形態1の変形例に係るMg濃度分布を示すグラフである。
図13図13は、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
図14図14は、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
図15図15は、本発明の実施形態4に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
図16図16は、本発明の実施形態5に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
また、以下の説明では、Z軸の正方向を「上」と称し、Z軸の負方向を「下」と称する場合がある。「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」及び「下」は、領域、層、膜及び基板等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、紙面を180度回転すれば「上」が「下」に、「下」が「上」になることは勿論である。
また、以下の説明において、PやNに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じPとPとが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0012】
<実施形態1>
(GaN半導体装置の構成例)
図1は、本発明の実施形態1に係る窒化ガリウム半導体装置(以下、GaN半導体装置)100の構成例を示す平面図である。図1は、X-Y平面図である。例えば、第1方向(X軸方向及びY軸方向)は、後述のGaN基板10の第1主面10aに平行な方向である。第2方向(Z軸方向)は、第1主面10aに直交する方向であり、GaN半導体装置100の厚さ方向である。Z軸方向は、窒化ガリウム層(以下、GaN層)20の深さ方向でもある。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する。なお、GaN半導体装置100は、本発明の「窒化物半導体装置」の一例である。
【0013】
図1に示すように、GaN半導体装置100は、活性領域110とエッジ終端領域130とを有する。活性領域110は、GaN半導体装置100の厚さ方向に電流が流れる領域であり、縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が配置される領域である。活性領域110は、ゲートパッド112及びソースパッド114を有する。ゲートパッド112及びソースパッド114は、後述の図2に示すゲート電極62及びソース電極68にそれぞれ電気的に接続された電極パッドである。
【0014】
Z軸方向からの平面視で、エッジ終端領域130は、活性領域110の周囲を囲んでいる。エッジ終端領域130は、活性領域110の周りを細い複数のp型領域40(後述の図2参照)でリング状に囲むガードリング構造を有する。エッジ終端領域130は、活性領域110で発生した空乏層をエッジ終端領域130まで広げることにより、活性領域110での電界集中を防ぐ機能(すなわち、電界緩和機能)を有する。
【0015】
図2は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の構成例を示す断面図である。図2は、図1をA-A’線で切断した断面図である。図2に示すように、GaN半導体装置100は、窒化ガリウム基板(以下、GaN基板)10と、GaN基板10の第1主面10a側に設けられたGaN層20と、GaN層20上に設けられたゲート絶縁膜60と、ゲート絶縁膜60上に設けられたゲート電極62と、GaN層20上に設けられてゲート電極62を覆う層間絶縁膜64と、層間絶縁膜64上に設けられたソース電極68と、GaN基板10の第2主面10b側に設けられたドレイン電極70と、を有する。
【0016】
GaN基板10は、GaN単結晶基板である。GaN基板10は、n型の基板であり、例えばn型の基板である。GaN基板10は、第1主面10aと、第1主面10aの反対側に位置する第2主面10bとを有する。例えば、GaN基板10は、転位密度が1×10cm-2未満の低転位自立基板である。GaN基板10が低転位自立基板であることにより、GaN基板10上に形成されるGaN層20の転位密度も低くなる。
【0017】
また、低転位基板をGaN基板10に用いることで、GaN基板10に大面積のパワーデバイスが形成される場合でも、パワーデバイスにおけるリーク電流を少なくすることができる。これにより、製造装置は、パワーデバイスを高い良品率で製造することができる。また、熱処理において、イオン注入された不純物が転位に沿って深く拡散することを防止することができる。
GaN層20は、GaN基板10の第1主面10a上にエピタキシャル形成される。GaN層20は、n型の層であり、例えばn型の層である。GaN層20に含まれるn型の不純物は、Si(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)、及びO(酸素)の一種類以上の元素であってよい。本発明の実施形態では、n型の不純物の一例としてSiを用いる。
【0018】
GaN層20において、n型の不純物濃度から特性を補償する不純物濃度を相殺したドナー濃度Ndは、例えば1×1015cm-3以上5×1016cm-3以下であり、一例を挙げると1×1016cm-3である。特性を補償する不純物としては、例えばC(炭素)が挙げられる。また、GaN層20の厚さ(即ち、GaN基板10の第1主面10aからGaN層20の表面20aまでの距離)は、例えば1μm以上50μm以下であり、一例を挙げると10μmである。なお、GaN層20の表面20aは、本発明の「第1面」の一例である。
ゲート絶縁膜60は、例えばシリコン酸化膜(SiO膜)で構成されている。ゲート電極62は不純物をドープしたポリシリコン(Poly-Si)で構成されている。層間絶縁膜64は、例えばSiO膜で構成されている。層間絶縁膜64の厚さは、例えば0.5μm以上1μm以下である。
【0019】
ソース電極68は、層間絶縁膜64に設けられたコンタクトホール64Hを介して、ソース領域24とコンタクト領域26とに接している。ソース電極68は、例えば、接触界面のTi層と、Al、又は、Al合金(一例として、AlとSiとの合金であるAl-Si)で構成されている。ソース電極68は、ソースパッド114(図1参照)を兼ねていてもよい。ドレイン電極70は、GaN基板10の第2主面10bに接している。ドレイン電極70は、接触界面のTi層と、Al、又は、Al合金(一例として、Al-Si)で構成されている。
【0020】
活性領域110のGaN層20には、p型のウェル領域22と、n型のソース領域24と、p型のコンタクト領域26とが設けられている。ウェル領域22は、GaN層20の表面側に設けられている。ウェル領域22の表面及びその近傍であって、ゲート絶縁膜を60介してゲート電極62の直下に位置する領域に、縦型MOSFETのチャネルが形成される。また、ソース領域24とコンタクト領域26は、ウェル領域22の内側に配置されている。ソース領域24とコンタクト領域26は互いに接している。
【0021】
エッジ終端領域130のGaN層20には、N注入領域30(本発明の「欠陥領域」又は「元素高濃度領域」の一例)と、N注入領域30の内側に位置するp型領域40とが設けられている。p型領域40は、Mg注入領域41(本発明の「第1p型領域」の一例)と、Mg注入領域41の周囲に位置するMg拡散領域42(本発明の「第2p型領域」の一例)と、を含む。
N注入領域30は、イオン注入により窒素元素(N)が注入された領域である。N注入領域30における窒素元素の濃度は、N注入領域30の周囲における窒素元素の濃度よりも高い。N注入領域30における窒素元素の濃度は、例えば1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下である。なお、窒素元素は、本発明の「p型不純物及びn型不純物とは異なる元素」の一例である。
【0022】
Mg注入領域41は、イオン注入によりマグネシウム(Mg)が注入された領域である。Mg注入領域41におけるマグネシウムの濃度は、Mg注入領域41の周囲におけるマグネシウムの濃度よりも高い。
Mg拡散領域42は、Mg注入領域41に注入されたMgが周囲に熱拡散することにより形成された領域である。Mg拡散領域42におけるマグネシウムの濃度は、N注入領域30におけるマグネシウムの濃度よりも高く、Mg注入領域41におけるマグネシウムの濃度よりも低い。
【0023】
図3は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100において、GaN層20の深さ方向におけるMg濃度分布の一例を示すグラフである。図3の横軸は、GaN層20の表面20aからの深さ(nm)を示す。図3の縦軸は、GaN層20に含まれる元素の濃度(cm-3)を示す。図3は、図2に示すB-B’線に沿って、Mg濃度を示している。図3に示すように、GaN層20の深さ方向においてMg拡散領域42のMg濃度は概ね一定であり、例えば1.0×1018cm-3以上1.0×1019cm-3以下の範囲内で概ね一定である。また、GaN層20の深さ方向において、Mg注入領域41とMg拡散領域42との境界、及び、Mg拡散領域42とN注入領域30との境界で、Mg濃度がそれぞれ急峻に変化している。
なお、図3において、破線は、イオン注入直後のMg濃度の分布を示す。図3において、一点鎖線は、イオン注入直後の窒素元素(N)濃度の分布を示す。破線で示すMg濃度と、一点鎖線で示すN濃度とについては、後で説明する。
【0024】
図4は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100において、GaN層20の表面20a近傍の水平方向におけるMg濃度分布の一例を示すグラフである。図4の横軸は、GaN層20の水平方向における位置を示す。図4の縦軸は、マグネシウムの濃度(cm-3)を示す。図4に示すように、GaN層20の水平方向においてMg拡散領域42のMg濃度は、概ね一定である。また、GaN層20の水平方向においても、Mg注入領域41とMg拡散領域42との境界、及び、Mg拡散領域42とN注入領域30との境界では、Mg濃度がそれぞれ急峻に変化している。
【0025】
図2に示すように、GaN層20の表面20aからMg注入領域41の下端41bまでの距離(すなわち、Mg注入領域41の厚さ)をd1とすると、距離d1は、例えば10nm以上100nm以下である。Mg注入領域41の下端41bからMg拡散領域42の下端42bまでの距離(すなわち、Mg注入領域41直下におけるMg拡散領域42の厚さ)をd2とすると、距離d2は、例えば100nm以上1000nm以下である。Mg拡散領域42の下端42bからN注入領域30の下端30bまでの距離(すなわち、Mg拡散領域42直下におけるN注入領域30の厚さ)をd3とすると、距離d3は、例えば50nm以上500nm以下である。
【0026】
また、GaN層20の表面20aにおいて、Mg拡散領域42の水平方向の長さ(すなわち、Mg注入領域41に含まれるMgの水平方向への拡散長)をL1とすると、距離L1は、例えば100nm以上1000nm以下である。水平方向とは、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方向を含む方向であり、Z軸方向と直交する方向である。また、GaN層20の表面20aにおいて、隣り合う一方のMg拡散領域42と他方のMg拡散領域42との水平方向における間隔をL2とすると、間隔L2は例えば0.2μm以上1μm以下である。
【0027】
エッジ終端領域130のガードリング構造は、Mg注入領域41とMg拡散領域42とで構成されるp型領域40を複数備える。複数のp型領域40が、活性領域110の周りをリング状に囲むことによって、活性領域110周辺の電界が緩和され、GaN半導体装置100の耐圧が維持される。ガードリング構造による電界緩和機能を高めるため、p型領域40を構成するMg注入領域41とMg拡散領域42は、以下のように設計されていることが好ましい。
【0028】
Mg注入領域41におけるMg濃度は、表面20a近傍において、1×1019cm-3以上であることが好ましい。また、Mg拡散領域42におけるMg濃度は、1×1017cm-3以上1×1019cm-3以下であることが好ましく、1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下であることがより好ましい。
また、Mg拡散領域42は、Mg注入領域41の深さ方向及び水平方向の周囲において、それぞれ100nm以上の幅を有することが好ましい。すなわち、上記の距離d2と、距離L1はそれぞれ100nm以上であることが好ましい。
【0029】
また、Mg拡散領域42とN注入領域30との間において、Mg濃度が1×1018cm-3以上から1×1017cm-3以下に変化する(すなわち、Mg濃度が1/10以下となる)部分の幅は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
Mg注入領域41とMg拡散領域42とで構成されるp型領域40は、水平方向に繰り返し配置されていることが好ましい。この場合、Mg拡散領域42の間隔L2は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。p型領域40の数と、間隔L2は、ガードリング構造に要求される耐圧に応じて、任意に設計してよい。
【0030】
(GaN半導体装置の製造方法)
次に、本開示の実施形態に係るGaN半導体装置100の製造方法を説明する。図5から図10は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の製造方法を工程順に示す断面図である。GaN半導体装置100は、成膜装置、露光装置、エッチング装置、イオン注入装置、熱処理装置など、各種の製造装置によって製造される。
図5に示すように、製造装置は、GaN基板10上にGaN層20を形成する。例えば、製造装置は、有機金属成長法(MOCVD)またはハライド気相成長法(HVPE)等により、n型のGaN基板10上にn型のGaN層20をエピタキシャル形成する。
【0031】
次に、製造装置は、フォトリソグラフィ技術とイオン注入技術とを用いて、活性領域110(図2参照)のGaN層20にMgとSiとを局所的に注入する。例えば、製造装置は、p型のウェル領域22(図2参照)が形成される領域22’にMgをイオン注入する。製造装置は、n型のソース領域24(図2参照)が形成される領域24’にSiをイオン注入する。製造装置は、p型のコンタクト領域26(図2参照)が形成される領域26’にMgをイオン注入する。上記の領域22’、24’、26’に対する各イオン注入工程は、実行する順に制限はなく、任意の順で実行してよい。
【0032】
次に、図6に示すように、製造装置は、フォトリソグラフィ技術とイオン注入技術とを用いて、エッジ終端領域130(図2参照)のGaN層20に窒素元素(N)を局所的に注入する。窒素元素が注入される領域は、N注入領域30が形成される領域30’ (本発明の「第1領域」の一例)である。窒素元素をイオン注入する工程では、例えば、図3の一点鎖線で示すように、注入した窒素元素がGaN層20の表面20aから深さ300nmの位置まで概略一定濃度となるように、注入エネルギーと注入量を変えて複数回イオン注入を行う。窒素元素がイオン注入されることにより、上記の領域30’に結晶欠陥が生じる。
【0033】
次に、図7に示すように、製造装置は、フォトリソグラフィ技術とイオン注入技術とを用いて、エッジ終端領域130(図2参照)のGaN層20にマグネシウム(Mg)を局所的に注入する。Mgが注入される領域41’(本発明の「第2領域」の一例)は、Mg注入領域41が形成される領域30’である。Mgをイオン注入する工程では、図3の破線で示すように、Mgの注入ピークが窒素元素の注入深さ(例えば、GaN層20の表面20aから深さ300nmの位置)よりも十分に浅くなるように、注入エネルギーが設定される。GaN層の表面20aと窒素元素の最も深い注入ピークとの間の位置にMgの注入ピークを形成する。
【0034】
つまり、窒素元素の注入領域の中にMgの注入ピークが位置するように、Mgの注入エネルギーが設定される。また、窒素元素の注入領域のうち、GaN層20の表面20aに近い位置に、Mgの注入ピークが位置するように、Mgの注入エネルギーが設定されることが好ましい。これにより、図2に示した距離d2を大きくすることができる。
なお、上記の領域30’に対する窒素元素のイオン注入工程と、上記の領域41’に対するMgのイオン注入工程は、実行する順に制限はなく、任意の順で実行してよい。製造装置は、窒素元素のイオン注入を行った後でMgをイオン注入してもよいし、Mgをイオン注入した後で窒素元素をイオン注入してもよい。
【0035】
次に、図8に示すように、製造装置は、GaN層20上に保護膜50を形成する。保護膜50は、熱処理中においてGaN層20からSi、Mg、窒素元素が放出されることを防ぐ機能を有する。窒素元素がGaN層20から放出された位置には窒素空孔が形成される。窒素空孔は、ドナー型欠陥として機能し得るので、P型特性の発現が阻害される可能性がある。これを防ぐことを目的に、製造装置は、GaN層20上に保護膜50を形成する。なお、製造装置は、GaN層20上に図示しない絶縁膜を介して保護膜50を形成してもよい。また、製造装置は、GaN層20上だけでなく、GaN基板10の第2主面10b側にも保護膜50を形成してもよい。
保護膜50は、耐熱性が高く、絶縁膜と良好な密着性を有し、保護膜50からGaN層20側へ不純物が拡散せず、かつ、GaN層20に対して選択的に除去可能であることが好ましい。保護膜50は、窒化アルミニウム(AlN)膜、SiO膜または窒化シリコン(SiN)膜である。一例を挙げると、保護膜50は、AlN膜であり、厚さは300nmである。
【0036】
次に、製造装置は、GaN基板10とGaN層20とを含む積層体に熱処理を施す。熱処理の条件は、例えば、窒素雰囲気中で、1300℃、5分である。この熱処理により、GaN層20にイオン注入されたSi、Mgが拡散、活性化する。これにより、図9に示すように、GaN層20に、p型のウェル領域22と、n型のソース領域24と、p型のコンタクト領域26と、N注入領域30と、Mg注入領域41と、Mg拡散領域42とが形成される。Mg拡散領域42は、Mg注入領域41から、窒素元素のイオン注入によって結晶欠陥が生じた領域30’にMgが熱拡散し、活性化することによって形成される。
【0037】
次に、製造装置は、GaN層20上から保護膜50(図7参照)を除去する。次に、製造装置は、図10に示すように、GaN層20上にゲート絶縁膜60と、ゲート電極62と、層間絶縁膜64と、コンタクトホール64Hとを形成する。次に、製造装置は、コンタクトホール64Hを埋め込むようにソース電極68(図2参照)を形成する。以上の工程を経て、図2に示したGaN半導体装置100が完成する。
【0038】
以上説明したように、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の製造方法は、GaN層20の表面20a側に局所的に位置する領域30’に、窒素元素(N)をイオン注入する工程と、窒素元素がイオン注入される領域30’内に局所的に位置する領域41’にp型不純物の一例となるマグネシウム(Mg)をイオン注入する工程と、窒素元素とMgとがイオン注入されたGaN層20に熱処理を施す工程と、を備える。熱処理を施す工程では、Mgがイオン注入された領域41’から、窒素元素がイオン注入され領域30’内であって領域41’の周囲に位置する領域42’へMgを熱拡散させる。
【0039】
実施形態1に係る製造方法によれば、GaN層20の表面20a側に局所的に位置する領域30’は、窒素元素がイオン注入されることにより、GaN層20の他の領域よりも結晶欠陥を高濃度に含む欠陥領域となる。欠陥領域内にMgがイオン注入され、イオン注入されたMgは熱処理により熱拡散する。結晶欠陥がないGaNよりも結晶欠陥を含むGaNの方がMgは熱拡散しやすい。このため、領域41’に導入されたMgは、比較低温かつ短時間で、領域42’まで熱拡散する。これにより、n型のGaN層20に、p型のMg注入領域41と、p型のMg拡散領域42とを容易に形成することができる。
【0040】
また、実施形態1に係る製造方法によれば、エッチング技術に頼らずに、n型のGaN層20にp型領域40(p型のMg注入領域41と、p型のMg拡散領域42)を局所的に形成することができる。p型領域40の形成工程では、GaN層20をエッチングする必要はないため、n型のGaN層20とp型領域40との間のpn接合面にエッチングダメージは生じない。これにより、例えば、p型領域40を含むガードリング構造において、エッチングダメージに起因して耐圧等の特性がばらつくことを抑制することができる。
【0041】
また、実施形態1に係る製造方法によれば、nGaNにpGaNを再成長させることなく、n型のGaN層20にp型領域40を局所的に形成することができる。p型領域40の形成工程では、pGaNの再成長を行う必要はないため、n型のGaN層20とp型領域40との間のpn接合面にシリコン(Si)や酸素(O)の濃度が高い領域を形成しない。GaNにおいてシリコン(Si)及び酸素(O)は、n型不純物として機能する。上記のpn接合面に高濃度n型不純物領域は形成されないため、例えば、p型領域40を含むガードリング構造において、高濃度n型不純物領域に起因して耐圧等の特性がばらつくことを抑制することができる。
【0042】
また、実施形態1に係る製造方法によれば、Mgのイオン注入の処理条件(例えば、Mgのドーズ量、Mgの注入エネルギー)と、熱処理の条件(例えば、熱処理温度、熱処理時間)と、窒素元素(N)のイオン注入の処理条件(例えば、Nのドーズ量、Nの注入エネルギー)とによって、p型領域40におけるMg濃度の分布を調整することができる。例えば、p型領域40として、Mg濃度が1.0×1019cm-3以上1.0×1020cm-3以下であるMg注入領域41と、Mg濃度が1.0×1017cm-3以上1.0×1019cm-3以下であるMg拡散領域42とを形成することができる。
【0043】
また、図3に示したように、Mg拡散領域42のMg濃度について、深さ方向の分布を1×1018cm-3付近で一定にするとともに、n型のGaN層20との界面付近では深さ方向の分布を急峻に変化させることができる。例えば、GaN層20の深さ方向(Z軸方向)において、Mg拡散領域42から遠ざかるにしたがってMg濃度がMg拡散領域42の1/10以下(例えば、1×1017cm-3付近)まで低下する領域の幅を100nm以下とすることができる。
【0044】
図11は、本発明の比較例に係るMg濃度分布を示すグラフである。図11の横軸は、GaNの表面からの深さ(nm)を示す。図3の縦軸は、GaNに含まれるMg元素の濃度(cm-3)を示す。この比較例は、GaNに窒素元素をイオン注入しなかった場合の、Mg濃度の分布を示す図である。図11に示す比較例では、図3に示したデータを取得したときと同じ条件でGaNにMgをイオン注入し、熱処理を行っているが、窒素元素のイオン注入は行っていない。このため、図11に示す比較例では、Mg拡散領域のMg濃度について、深さ方向の分布を1×1018cm-3付近で一定にすることができていない。
【0045】
本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100は、GaN層20の表面20a側に局所的に設けられたN注入領域30と、N注入領域30内に局所的に設けられたp型領域40と、を備える。N注入領域30は、GaN層20において他の領域よりも窒素元素を高濃度に含む領域であり、窒素元素がイオン注入されることにより生じた結晶欠陥を含む領域である。p型領域40は、Mgを含むMg注入領域41と、Mg注入領域41よりもMgを低濃度に含み、Mg注入領域41の周囲に位置するMg拡散領域42と、を有する。例えば、Mg拡散領域42は、X軸方向及びY軸方向においてMg注入領域41の側部に接し、かつ、Z軸方向においてMg注入領域41の下部に接している。
上記の実施形態1に係る製造方法は、このような構造を有するGaN半導体装置100を製造することができる。
【0046】
(変形例)
図12は、本発明の実施形態1の変形例に係るMg濃度分布を示すグラフである。図12の横軸は、GaN層20の表面20aからの深さ(nm)を示す。図12の縦軸は、GaN層20に含まれる元素の濃度(cm-3)を示す。また、図12において、破線は、イオン注入直後のMg濃度の分布を示す。図3において、一点鎖線は、イオン注入直後の窒素元素(N)濃度の分布を示す。
【0047】
本発明の実施形態1では、図7に示したMgのイオン注入工程を、Mgの注入エネルギーを変えて複数行ってもよい。これにより、図12の破線で示すように、イオン注入直後のMg濃度の分布を、図3に示した分布とは異なる形にしてもよい。例えば、GaN層20の表面20aから深さ100nmから250nmの範囲内で、イオン注入直後のMg濃度の分布をほぼ一定にしてもよい。この場合、図12の実線で示すように、熱処理後のMg濃度の分布も、図3に示した分布とは異なる形となる。例えば、GaN層20の表面20aから深さ100nmから250nmの範囲内で、熱処理後のMg濃度の分布はほぼ一定になる。このような場合であって、上記の実施形態1と同様に、n型のGaN層20に、p型のMg注入領域41と、p型のMg拡散領域42とを容易に形成することができる。
なお、本発明の実施形態1では、図3に示した濃度分布を有するp型領域40と、図12に示した濃度分布を有するp型領域40とを同一基板内に形成してもよい。この場合、両方のp型領域40は、同一の熱処理工程を経て形成される。
【0048】
上記の実施形態1では、本発明の「p型不純物及びn型不純物とは異なる元素」として、窒素元素(N)を用いることを説明した。しかしながら、本発明の実施形態はこれに限定されない。本発明の実施形態では、「p型不純物及びn型不純物とは異なる元素」として、窒素元素(N)以外の元素を用いてもよく、例えば、リン(P)、ヒ素(As)を用いてもよい。このような態様であっても、GaN層20に結晶欠陥を形成することができる。
【0049】
<実施形態2>
図13は、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置100A(本発明の「窒化物半導体装置」の一例)の構成例を示す断面図である。GaN半導体装置100Aは、本発明の「窒化物半導体装置」の一例である。図13に示すように、GaN半導体装置100Aは、Mg注入領域41に接続する電極71を有する。電極71は、活性領域110に設けられたゲート電極62、ソース電極68、ゲートパッド112及びソースパッド114とは電気的に分離した、独立した電極である。
このような構成であっても、実施形態1と同様の効果を奏する。また、GaN半導体装置100Aでは、電極71を介してp型領域40に電圧を印加することができる。p型領域40からn型のGaN層20側へ空乏層を広げることができるので、GaN半導体装置100Aの耐圧向上に寄与することができる。
【0050】
<実施形態3>
図14は、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置100Bの構成例を示す断面図である。GaN半導体装置100Bは、本発明の「窒化物半導体装置」の一例である。図14に示すように、GaN半導体装置100Bでは、ガードリング構造を構成する複数のp型領域40について、水平方向の間隔L2が活性領域110からエッジ終端領域130の外周部に向かって徐々に広がっている。
例えば、活性領域110に近い側の間隔L2は1μm以下であり、活性領域110からエッジ終端領域130の外周部に向かって徐々に1μm以上の大きさに広がっていてもよい。
このような構成であっても、実施形態1と同様の効果を奏する。また、GaN半導体装置100Bでは、耐圧の設計値によって、間隔L2の大きさと、間隔L2の変化幅を調整することができる。これにより、GaN半導体装置100Bの耐圧向上に寄与することができる。
【0051】
<実施形態4>
図15は、本発明の実施形態4に係るGaN半導体装置100Cの構成例を示す断面図である。GaN半導体装置100Cは、本発明の「窒化物半導体装置」の一例であり、プレーナゲート構造の縦型MOSFETを備える。図15に示すように、本発明の実施形態4に係るGaN半導体装置100Cでは、活性領域110にN注入領域30Aが設けられている。活性領域110のN注入領域30A内に、p型のウェル領域22と、n型のソース領域24と、p型のコンタクト領域26とが設けられている。
【0052】
N注入領域30Aは、実施形態1で説明したN注入領域30と同様に、GaN層20の表面20aに窒素元素をイオン注入することによって形成される。また、p型のコンタクト領域26は、実施形態1で説明したMg注入領域41と同様に、N注入領域30AにMgがイオン注入され、熱処理が施されることによって形成される。p型のウェル領域22は、実施形態1で説明したMg拡散領域42と同様に、p型のコンタクト領域26に含まれるMgが、上記の熱処理でコンタクト領域26の周囲に熱拡散することによって形成される。
【0053】
このような構成であれば、GaN層20にp型のウェル領域22と、p型のコンタクト領域26とを容易に形成することができる。また、拡散領域にゲート構造を設けることによりp型特性の良い部分にチャネルを形成するため、チャネルの特性を向上させることができ、縦型MOSFETのオン抵抗を低減することができる。さらに、Mg拡散領域で形成するp型領域を活性部のpn接合に用いるため、活性領域のp型のウェル領域22の空乏化が緩和され接合耐圧が向上する。これにより、低オン抵抗で、高耐圧のデバイスを実現することができる。
【0054】
なお、実施形態4においても、実施形態1から3と同様に、エッジ終端領域130にN注入領域30とMg注入領域41とMg拡散領域42とを形成してもよい。この場合、活性領域110とエッジ終端領域130とで、窒素元素の注入条件を互いに同一とし、両領域に一括して窒素元素をイオン注入してもよい。また、活性領域110とエッジ終端領域130とで、窒素元素の注入条件を互いに異なる条件とし、両領域に対して窒素元素を打ち分けてもよい。
活性領域110とエッジ終端領域130とで窒素元素を打ち分ける場合は、活性領域110に形成されるp型のウェル領域22のMg濃度と、エッジ終端領域130に形成されるMg拡散領域42のMg濃度は、互いに異なる分布となる。窒素元素の注入条件を調整することによって、熱処理後のMg濃度を所望の分布に合わせ込むことが可能である。
【0055】
<実施形態5>
図16は、本発明の実施形態5に係るGaN半導体装置100Dの構成例を示す断面図である。GaN半導体装置100Dは、本発明の「窒化物半導体装置」の一例であり、トレンチゲート構造の縦型MOSFETを備える。
図16に示すように、本発明の実施形態5に係るGaN半導体装置100Dでは、活性領域110にN注入領域30Aが設けられている。活性領域110のN注入領域30A内に、p型のウェル領域22と、n型のソース領域24と、p型のコンタクト領域26とが設けられている。また、GaN半導体装置100Dでは、活性領域110のN注入領域30A内にトレンチが設けられ、トレンチ内にゲート絶縁膜60を介してゲート電極62が設けられている。
【0056】
実施形態4と同様に、N注入領域30Aは、GaN層20の表面20aに窒素元素をイオン注入することによって形成される。p型のコンタクト領域26は、N注入領域30AにMgがイオン注入され、熱処理が施されることによって形成される。p型のウェル領域22は、p型のコンタクト領域26に含まれるMgが、上記の熱処理でコンタクト領域26の周囲に熱拡散することによって形成される。
【0057】
実施形態5において、p型のウェル領域22は、複数のウェル領域が水平方向で互いにつながるような寸法で形成される。トレンチは、複数のウェル領域の水平方向におけるつなぎ目に相当する領域に形成される。トレンチは、ウェル領域22を突き抜けてN注入領域30Aが底部となるような寸法で形成される。ゲート絶縁膜60は、トレンチの底面及び内側面を覆うように形成される。ゲート電極62は、ゲート絶縁膜60を介してトレンチ内を埋め込むように形成される。
【0058】
実施形態5においても、拡散領域にゲート構造を設けることによりp型特性の良い部分にチャネルを形成するため、チャネルの特性を向上させることができ、縦型MOSFETのオン抵抗を低減することができる。また、Mg拡散領域で形成するp型領域を活性部のpn接合に用いるため、活性領域のp型のウェル領域22の空乏化が緩和され接合耐圧が向上する。これにより、低オン抵抗で、高耐圧のデバイスを実現することができる。
【0059】
<その他の実施形態>
上記のように、本発明は実施形態及び変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、変形例が明らかとなろう。
例えば、ゲート絶縁膜60には、シリコン酸窒化(SiON)膜、酸化アルミニウム(Al)膜、ハフニウムシリコン酸化(HfSiO)膜、シリコン窒化物(Si)膜も使用可能である。また、ゲート絶縁膜60には、単層の絶縁膜をいくつか積層した複合膜等も使用可能である。ゲート絶縁膜60としてSiO膜以外の絶縁膜を用いた縦型MOSFETは、縦型MISFETと呼んでもよい。MISFETは、MOSFETを含む、より包括的な絶縁ゲート型トランジスタを意味する。
【0060】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。上述した実施形態及び変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0061】
なお、本発明は以下のような構成も取ることができる。
(1)窒化ガリウム層の第1面側に局所的に位置する第1領域に、p型不純物及びn型不純物とは異なる元素をイオン注入する工程と、
前記第1領域内に局所的に位置する第2領域に前記p型不純物をイオン注入する工程と、
前記元素と前記p型不純物とがイオン注入された前記窒化ガリウム層に熱処理を施す工程と、を備え、
前記熱処理を施す工程では、
前記第2領域から、前記第1領域内であって前記第2領域の周囲に位置する第3領域へ前記p型不純物を熱拡散させる、窒化物半導体装置の製造方法。
【0062】
(2)前記p型不純物をイオン注入する工程では、
前記第1面と垂直に交わる第1方向において、前記第1面と前記元素の最も深い注入ピークとの間の位置に前記p型不純物の注入ピークを形成する、
前記(1)に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
(3)前記窒化ガリウム層に熱処理を施す工程では、
前記p型不純物の濃度が1.0×1019cm-3以上1.0×1020cm-3以下である第1p型領域を前記第2領域に形成する、
前記(1)又は(2)に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0063】
(4)前記窒化ガリウム層に熱処理を施す工程では、
前記p型不純物の濃度が1.0×1017cm-3以上1.0×1019cm-3以下である第2p型領域を前記第3領域に形成する、
前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
(5)前記元素は窒素である、
前記(1)から(4)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
(6)前記p型不純物はマグネシウムである、
前記(1)から(5)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0064】
(7)窒化ガリウム層の第1面側に局所的に設けられた、結晶欠陥を含む欠陥領域と、
前記欠陥領域内に局所的に設けられたp型領域と、を備え、
前記p型領域は、
p型不純物を含む第1p型領域と、
前記第1p型領域よりも前記p型不純物を低濃度に含み、前記第1p型領域の周囲に位置する第2p型領域と、を有する窒化物半導体装置。
(8)前記第2p型領域は、前記第1面に垂直な第1方向において前記第1p型領域の下部に接し、かつ、前記第1面に平行な第2方向において前記第1p型領域の側部に接している、
前記(7)に記載の窒化物半導体装置。
(9)前記第2p型領域において、前記第1p型領域の下部と接する部分の前記第1方向の長さと、前記第1p型領域の側部と接する部分の第2方向の長さは、それぞれ100nm以上である、
前記(8)に記載の窒化物半導体装置。
【0065】
(10)前記第2p型領域における前記p型不純物の濃度は、1.0×1017cm-3以上1.0×1019cm-3以下である、
前記(7)から(9)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(11)
前記第1p型領域における前記p型不純物の濃度は、1.0×1019cm-3以上1.0×1020cm-3以下である、前記(7から10のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(12)前記欠陥領域内において、前記第2p型領域から前記第1面に垂直な第1方向へ遠ざかるにしたがって前記p型不純物の濃度が前記第2p型領域の1/10以下まで低下する領域の幅は、100nm以下である、
前記(7)から(11)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【0066】
(13)窒化ガリウム層の第1面側に局所的に設けられた元素高濃度領域と、
前記元素高濃度領域内に局所的に設けられたp型領域と、を備え、
前記元素高濃度領域は、前記窒化ガリウム層において他の領域よりもp型不純物及びn型不純物とは異なる元素を高濃度に含み、
前記p型領域は、
p型不純物を含む第1p型領域と、
前記第1p型領域よりも前記p型不純物を低濃度に含み、前記第1p型領域の周囲に位置する第2p型領域と、を有する窒化物半導体装置。
【符号の説明】
【0067】
10 GaN基板
10a 第1主面
10b 第2主面
20 GaN層
20a 表面
22 ウェル領域
22’ ウェル領域が形成される領域
24 ソース領域
24’ ソース領域が形成される領域
26 コンタクト領域
26’ コンタクト領域が形成される領域
30、30A N注入領域
30’ N注入領域が形成される領域
30b、40b、42b 下端
40 p型領域
41 Mg注入領域
41’ Mg注入領域が形成される領域
42 Mg拡散領域
42’ Mg拡散領域が形成される領域
50 保護膜
60 ゲート絶縁膜
62 ゲート電極
64 層間絶縁膜
64H コンタクトホール
68 ソース電極
70 ドレイン電極
71 電極
100、100A、100B、100C GaN半導体装置
110 活性領域
112 ゲートパッド
114 ソースパッド
130 エッジ終端領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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