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特許7404714判断方法、判断装置、保守支援システム及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】判断方法、判断装置、保守支援システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20231219BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20231219BHJP
【FI】
G06Q50/06
G01R31/392
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019156001
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021001859
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2019114666
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】栗澤 勇
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 理
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-123847(JP,A)
【文献】特開2004-126669(JP,A)
【文献】特開2006-080032(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069328(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/125213(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G01R 31/392
H01M 10/42
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムに含まれる複数の蓄電素子に関する測定データを、記憶装置に定期的に記憶しているか否かを判断し、
測定データを記憶していると判断された場合、前記記憶装置に記憶されている測定データに基づき、前記複数の蓄電素子夫々について、所定温度での標準使用期間に相当する期間内に寿命に至るか否かを判断し、
寿命に至ると判断された蓄電素子について交換要と判断する
判断方法。
【請求項2】
寿命に至ると判断された蓄電素子の数が、前記システムに含まれる全蓄電素子の数の所定の割合以上であるか否かを判断し、
所定の割合未満であると判断された場合、前記寿命に至ると判断された蓄電素子を交換要と判断し、
所定の割合以上であると判断された場合、前記システムに含まれる全蓄電素子について交換要と判断する
請求項1に記載の判断方法。
【請求項3】
前記蓄電素子は鉛蓄電池であり、前記測定データに含まれる内部抵抗値を用い、所定温度での鉛蓄電池の使用期間における内部抵抗値の推移に関する蓄積データに基づいて前記蓄電素子が寿命に至るか否かを判断する
請求項1又は2に記載の判断方法。
【請求項4】
前記測定データに含まれる温度データに基づき、前記測定データに含まれる内部抵抗値を前記所定温度における内部抵抗値へ変換するか、又は、前記所定温度での鉛蓄電池の使用期間における内部抵抗値の推移を前記温度データにおける内部抵抗値の推移へ変換することによって、前記鉛蓄電池の前記測定データが取得される時点までの使用期間を導出し、
導出した使用期間に基づいて前記蓄電素子が寿命に至るか否かを判断する
請求項3に記載の判断方法。
【請求項5】
システムに含まれる複数の蓄電素子に関する測定データを、記憶装置に定期的に記憶しているか否かを判断する第1判断部と、
測定データを記憶していると判断された場合、前記記憶装置に記憶されている測定データに基づき、前記複数の蓄電素子夫々について、所定温度での標準使用期間に相当する期間内に寿命に至るか否かを判断する第2判断部と、
寿命に至ると判断された蓄電素子について交換要と判断する第3判断部と
を備える判断装置。
【請求項6】
システムに含まれる蓄電素子に関する測定データを定期的に取得し逐次記憶する記憶装置と、前記蓄電素子の保守担当者が用いる保守端末装置と、前記保守端末装置から通信接続が可能な保守支援装置とを含み、
前記保守支援装置は、
前記システムに含まれる複数の蓄電素子に関する測定データが、前記記憶装置に定期的に記憶されているか否かを判断し、
測定データが記憶されていると判断した場合、前記記憶装置に記憶されている測定データに基づき、前記複数の蓄電素子夫々について、所定温度での標準使用期間に相当する期間内に寿命に至るか否かを判断し、
寿命に至ると判断された蓄電素子について交換要と判断し、
判断結果を前記保守端末装置へ通知する
保守支援システム。
【請求項7】
コンピュータに、
システムに含まれる複数の蓄電素子に関する測定データを、記憶装置に定期的に記憶しているか否かを判断し、
測定データを記憶していると判断された場合、前記記憶装置に記憶されている測定データに基づき、前記複数の蓄電素子夫々について、所定温度での標準使用期間に相当する期間内に寿命に至るか否かを判断し、
寿命に至ると判断された蓄電素子について交換要と判断する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子を含むシステムの長期保証を実現する、蓄電素子の交換に関する判断方法、判断装置、保守支援システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子は、無停電電源装置、安定化電源に含まれる直流又は交流電源装置等に広く使用されている。再生可能エネルギー又は既存の発電システムにて発電された電力を蓄電しておく大規模なシステムでの蓄電素子の利用も拡大している。
【0003】
蓄電素子には寿命がある産業用に用いられる蓄電素子の寿命は10年以上であることが多く、蓄電素子の製造業者としても蓄電素子を購入し運用する所有者としても長寿命であることを期待する。しかしながら、鉛蓄電池又はリチウム電池のような二次電池は、環境温度が寿命に大きく影響し、期待されている寿命よりも短い期間で交換を余儀なくされる場合がある。
【0004】
特許文献1には、使用環境の温度を考慮して蓄電素子の寿命を適切に判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-070920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蓄電素子の使用環境のデータを確認できる場合には、蓄電素子の寿命を精度よく算出できる。多数の蓄電素子を接続して使用されるシステムで、各々の蓄電素子の寿命を精度よく算出できても、各々の蓄電素子の寿命の都度に交換作業をする、交換作業毎に保守費用が必要であり、保守担当者の作業も増大する。このような保守所有者としては負担が大きく、保守担当者としても多くの人的資源を必要とする。蓄電素子の寿命の高精度な算出に基づき、蓄電素子を含むシステムを所有者が安心して長く使用できる保証がされることが望ましい。
【0007】
本発明は、蓄電素子を含むシステムの長期保証を実現する判断方法、判断装置、保守支援システム及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
判断方法は、システム(電源関連装置)に含まれる複数の蓄電素子に関する測定データを、記憶装置に定期的に記憶しているか否かを判断し、測定データを記憶していると判断された場合、取得した測定データに基づき、前記複数の蓄電素子夫々について、所定温度で標準使用期間に相当する期間内に寿命に至るか否かを判断し、寿命に至ると判断された蓄電素子について交換要と判断する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】保守支援システムの概要を示す。
図2】保守支援システムが含む装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】保守用機器の内部構成を示すブロック図である。
図4】保守支援装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】蓄電素子夫々に対する寿命に至るか否かの判断の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】一例における蓄電素子の交換の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
判断方法は、システムに含まれる複数の蓄電素子に関する測定データを、記憶装置に定期的に記憶しているか否かを判断し、測定データを記憶していると判断された場合、取得した測定データに基づき、前記複数の蓄電素子夫々について、所定温度で標準使用期間に相当する期間内に寿命に至るか否かを判断し、寿命に至ると判断された蓄電素子について交換要と判断する。
【0011】
測定データが定期的に記憶され、それを取得できることを条件に、交換要否の判断がされる。判断時点で寿命が既に到来している蓄電素子に限らず、判断時点よりも先の使用期間内に寿命に至る蓄電素子についても交換要と判断される。高い確率で交換が必要になると予想される蓄電素子については、寿命が残っていても他の蓄電素子と共に交換して交換工事の回数を抑制することが可能になる。所有者にとっては、蓄電素子の交換工事毎に必要になる工事費用を抑えることができる。このように所有者にとってメリットがある判断方法は、測定データが取得できることを条件にしているので、製造業者は、使用環境が不明な蓄電素子について保証するリスクを回避でき、長期保証が可能になる。
【0012】
寿命に至ると判断された蓄電素子の数が、前記システムに含まれる全蓄電素子の数の所定の割合以上であるか否かが判断されてもよい。所定の割合未満であると判断された場合、前記寿命に至ると判断された蓄電素子交換要と判断され、所定の割合以上であると判断された場合、前記システムに含まれる全蓄電素子について交換要と判断されてもよい
【0013】
上記構成により、電気的特性が同等の蓄電素子をバランスよく使用することができる。寿命に近い蓄電素子と、新品の蓄電素子とを混在させるよりもシステム全体のパフォーマンスを長期間維持することができる。交換時期が適切に判断されることで長期間の保証を可能とする。
【0014】
前記蓄電素子は例えば鉛蓄電池である。鉛蓄電池である場合、前記測定データに含まれる内部抵抗値を用い、所定温度での鉛蓄電池の使用期間における内部抵抗値の推移に関する蓄積データに基づいて前記蓄電素子が寿命に至るか否かが判断される。
【0015】
例えば10年を超える長寿命の鉛蓄電池に対し、所定温度での鉛蓄電池の使用期間における内部抵抗値の推移に関する蓄積データを用いることで精度よく寿命を推定することができる。交換時期を適切に判断することによってシステムのパフォーマンスを維持しながら長期間の保証が可能となる。
【0016】
前記判断は、前記鉛蓄電池の前記測定データが取得される時点までの使用期間を推定し、推定した使用期間基づいて実行されてもよい。使用期間は、前記測定データに含まれる内部抵抗値を前記所定温度における内部抵抗値へ変換することによって導出されてもよい。あるいは、使用期間は、前記測定データに含まれる温度データに基づき、前記所定温度での鉛蓄電池の使用期間における内部抵抗値の推移を前記温度データにおける内部抵抗値の推移へ変換することによって、導出されてもよい。
【0017】
使用環境の温度で測定された内部抵抗値を所定温度の内部抵抗値へ補正した値が、内部抵抗値の推移におけるいずれの時期に該当するかによって使用期間が推定される。予め蓄積された所定温度における使用期間に対する内部抵抗値の推移を、対象の蓄電素子の使用環境における平均温度で使用した場合の推移へ変換してもよい。測定データに含まれる内部抵抗値が、変換後の推移におけるいずれの時期に該当するかによって使用期間が推定される。いずれの方法であっても精度よく蓄電素子が寿命に至るか否かが判断される。
【0018】
判断装置は、システムに含まれる複数の蓄電素子に関する測定データを、記憶装置に定期的に記憶しているか否かを判断する第1判断部と、測定データを記憶していると判断された場合、取得した測定データに基づき、前記複数の蓄電素子夫々について、所定温度で標準使用期間に相当する期間内に寿命に至るか否かを判断する第2判断部と、寿命に至ると判断された蓄電素子について交換要と判断する第3判断部とを備える。
【0019】
判断方法は、保守支援システムに適用されてもよい。この保守支援システムは、システムに含まれる蓄電素子に関する測定データを定期的に取得し逐次記憶する記憶装置と、前記蓄電素子の保守担当者が用いる保守端末装置と、前記保守端末装置から通信接続が可能な保守支援装置とを含む。保守支援システムでは、保守支援装置が、前記システムに含まれる複数の蓄電素子に関する測定データが、前記記憶装置に定期的に記憶されているか否かを判断する。保守支援装置は、測定データが記憶されていると判断した場合、取得した測定データに基づき、前記複数の蓄電素子夫々について、所定温度で標準使用期間に相当する期間内に寿命に至るか否かを判断し、寿命に至ると判断された蓄電素子について交換要と判断し、判断結果を前記保守端末装置へ通知する。
【0020】
上記構成により、保守担当者は、出来る限り早く交換が必要な蓄電素子と、高い確率で交換が必要になる予想される蓄電素子とまとめて交換工事を実施すべき蓄電素子をまとめて)保守端末装置にて認識することができる。
【0021】
上記判断方法は、コンピュータプログラムとして実現されてもよい。このコンピュータプログラムは、システムに含まれる複数の蓄電素子に関する測定データを、記憶装置に定期的に記憶しているか否かを判断する処理をコンピュータに実行させる。コンピュータプログラムは、測定データを記憶していると判断された場合、取得した測定データに基づき、前記複数の蓄電素子夫々について、所定温度で標準使用期間に相当する期間内に寿命に至るか否かを判断し、寿命に至ると判断された蓄電素子について交換要と判断する処理をコンピュータに実行させる。
【0022】
本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1は、保守支援システム100の概要を示す。保守支援システム100は、保守支援装置1及び保守担当者が用いる保守端末装置2を含む。保守支援システム100は、保守対象の蓄電素子50の状態を示すデータを収集し、ネットワークを介して収集されたデータに基づく遠隔からの状態閲覧を実現する遠隔監視システム300と通信接続可能である。保守支援システム100は、保守対象の蓄電素子を購入した顧客のデータを記憶する顧客データ管理システム400と通信接続可能である。本実施の形態においては、保守支援システム100、遠隔監視システム300及び顧客データ管理システム400は、保守対象の蓄電素子50の製造業者により管理され、製造業者用のネットワークMN又は専用線を介して相互に通信接続可能である。保守支援システム100は、蓄電素子50の製造管理システム(図示せず)と通信接続可能であってもよい。
【0024】
ネットワークMNは、製造業者用のローカルネットワークである。ネットワークMNは例えば、Ethernet(登録商標)であり、光回線であってもよい。ネットワークMNは、VPN(Virtual Private Network)を含んで、ロケーションの異なるシステム100,300,400間をローカルネットワークとして接続てもよい。保守支援システム100と遠隔監視システム300との間、保守支援システム100と顧客データ管理システム400との間は、ネットワークMNの一部でもよいし、専用線、又はVPNであってもよい。
【0025】
保守端末装置2及び保守支援装置1は、通信網N又はネットワークMNを介して通信接続可能である。通信網Nは、所謂インターネットである。通信網Nは、所定の移動通信規格による無線通信を実現するキャリアネットワークを含んでもよい。通信網Nは、一般光回線を含んでもよい。
【0026】
保守支援システム100による保守対象の蓄電素子50は、鉛蓄電池及びリチウムイオン電池を含む二次電池や、キャパシタのような、充電可能なものであることが好ましい。蓄電素子50の一部が、充電不可能な一次電池であってもよい。本実施の形態における蓄電素子50は夫々、鉛蓄電池である。
【0027】
本実施の形態の蓄電装置5は、複数の蓄電素子50を含む。蓄電装置5は一例では、単体で利用される。蓄電装置5はバックアップ用電源として利用される。蓄電装置5は他の一例では、蓄電素子50の顧客(ユーザ)によって管理される顧客のネットワークCNに通信接続する蓄電装置5群として利用される。同一の顧客によって管理される蓄電装置5群は、顧客のネットワークCNを介して、顧客が管理する管理装置51へ蓄電素子50の状態データを送信する。状態データは少なくとも電圧値、内部抵抗値及び温度を含む。状態データは電流値を含んでもよい。状態データは、鉛蓄電池である蓄電素子50の端子に接続されたユニットから、保守用通信機器6を介して送信される。状態データは、保守用通信機器6から保守端末装置2に送信される場合もある。複数の蓄電装置5から送信される状態データは、専用線N2又は通信網Nを介して遠隔監視システム300へ送信され、蓄電素子50を夫々識別する製造番号等の識別データと対応付けて状態履歴が記憶される。
【0028】
蓄電装置5には、ネットワークCNを介さずに、保守担当者が用いる保守端末装置2とデータをやり取りできる保守用通信機器6が設けられている。保守用通信機器6は、蓄電装置5の蓄電素子50夫々について状態データを取得するユニットと通信接続可能である。本実施の形態における保守用通信機器6は鉛蓄電池の端子に接続されたユニットと無線通信によって通信接続可能である。保守用通信機器6は、蓄電装置5から管理装置51向けに送信される状態データと同一の状態データを内蔵するメモリに記憶する。
【0029】
ネットワークCNは、複数の蓄電装置5を運用する顧客のローカルネットワークである。ネットワークCNは例えばEthernet(登録商標)であり、光回線であってもよい。ネットワークCNは、VPNを含んでもよい。ネットワークCNは、ECHONET (登録商標)/ECHONETLite (登録商標) 対応のネットワークであってもよい。専用線N2は、蓄電装置5の顧客と遠隔監視システム300との間を接続するプライベートネットワークである。専用線N2は、通信網Nであってもよい。専用線N2は、ECHONET /ECHONETLite 対応の専用ネットワークであってもよい。
【0030】
顧客データ管理システム400は、顧客IDに対応付けて、顧客の氏名又は名称、顧客の連絡先、住所等の属性データを記憶している。顧客データ管理システム400は、顧客が複数の蓄電装置5を異なるロケーションに設置して管理している場合、ロケーションを識別するロケーションIDに対応付けて所在地を記憶する。顧客データ管理システム400は、顧客IDに対応付けて、顧客が購入した蓄電素子50の識別データを記憶している。顧客が複数の蓄電装置5を異なるロケーションに設置して管理している場合、顧客データ管理システム400は、顧客ID及びロケーションIDと対応付けて設置されている蓄電素子50の識別データを記憶する。
【0031】
遠隔監視システム300は、蓄電素子50の識別データに対応付けて蓄電素子50の状態データを逐次記憶する。遠隔監視システム300は、蓄電素子50の識別データに対応付けて運用開始日を取得して記憶し、製造管理システムから取得できる製造日を記憶する。遠隔監視システム300は、状態データに基づいて蓄電素子50毎のSOC(State Of Charge)、SOH(State Of Health)、及び予測寿命等を含む診断データを、蓄電素子50毎に導出してもよい。
【0032】
製造管理システム(図示せず)は、蓄電素子50即ち鉛蓄電池夫々の製造番号等の識別データに対応付けて製造日、ロット番号、出荷日時を記憶している。
【0033】
本実施の形態の保守支援システム100は、蓄電素子50の運用期間中に継続して状態データを取得できることを条件に、蓄電装置5に含まれる蓄電素子50夫々の寿命時期を算出し、蓄電素子50の交換の要否を判断し、必要な場合に保守担当者へ通知する。保守支援システム100は、単電池毎に交換の要否を判断しつつ、対象の蓄電装置5全体での寿命時期を考慮して交換要否を判断する。これにより、交換作業の回数を最小限にしつつ、蓄電装置5のバックアップ電源としての性能を保証することが可能になる。
【0034】
このような蓄電素子50の保守支援システム100を実現するための詳細な構成について説明する。
【0035】
図2は、保守支援システム100が含む装置の内部構成を示すブロック図である。保守支援装置1は、サーバコンピュータを用い、制御部10、記憶部11、及び通信部12を備える。本実施の形態において保守支援装置1は、1台のサーバコンピュータとして説明するが、複数のサーバコンピュータで処理を分散させてもよい。
【0036】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit )又はGPU(Graphics Processing Unit)を用いたプロセッサである。制御部10は、内蔵するROM及びRAM等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。制御部10は、記憶部21に記憶されている保守支援プログラム1Pに基づく処理を実行する。保守支援プログラム1PにはWebサーバプログラムが含まれる。制御部10は、保守支援プログラム1Pに基づき、保守端末装置2へのWebページの提供を実行するWebサーバとして機能する。
【0037】
記憶部11は、例えばハードディスク又はSSD(Solid State Drive )等の不揮発性メモリである。記憶部11は、上述した保守支援プログラム1P記憶する。記憶部11に記憶される保守支援プログラム1Pは、記録媒体7に記憶してある保守支援プログラム7Pを制御部10が読み出して記憶部11に複製したものであってもよい。記憶部11は、制御部10が寿命時期の算出及び交換の要否の判断で参照するデータを記憶する。記憶部11は、保守担当者の担当者IDを含む担当者データ記憶る。担当者データは、担当者IDに対応付けて担当者名、電子メールアドレス等の連絡先情報を含む。
【0038】
通信部12は、ネットワークMNを介した通信接続及びデータの送受信を実現する通信デバイスである。具体的には通信部12はネットワークMNに対応したネットワークカードである。通信部12は、ネットワークMNに接続される図示しないルータ機器を介して通信網Nを介した通信を実現してもよい。制御部10は、通信部12によって遠隔監視システム300及び顧客データ管理システム400との間でデータを送受信する。
【0039】
保守端末装置2は、保守担当者が使用するコンピュータである。保守端末装置2は、デスクトップ型若しくはラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよい。保守端末装置2は、所謂スマートフォン又はタブレット型の通信端末であってもよい。保守端末装置2は、視覚的な指示を出力できるヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display )、グラス型のウェアラブル端末装置であってもよい。保守端末装置2は、制御部20、記憶部21、第1通信部22、第2通信部23、表示部24、及び操作部25を備える。保守端末装置2は図示するように撮像部26を備えてもよい。
【0040】
制御部20は、CPU又はGPUを用いたプロセッサである。制御部20は、記憶部21に記憶されている保守端末用プログラム2Pに基づき、修理手順を表示部24に表示させる。制御部20は、保守用通信機器6から状態データを読み出す処理、及び、保守支援装置1との間での情報処理を実行する。
【0041】
記憶部21は、例えばハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部21は、保守端末用プログラム2Pを含む各種プログラム記憶る。保守端末用プログラム2Pは、記録媒体8に記憶してある保守端末用プログラム8Pを制御部20が読み出して記憶部21に複製したものであってもよい。
【0042】
第1通信部22は、通信網N又はネットワークMNを介したデータ通信を実現するための通信デバイスである。第1通信部22は、有線通信用のネットワークカード等の通信デバイス、基地局BS(図1参照)に接続する移動通信用の無線通信デバイス、又はアクセスポイントAPへの接続に対応する無線通信デバイスを用いる。
【0043】
第2通信部23は、保守用通信機器6と通信接続してデータ通信を実現するための通信デバイスである。第2通信部23は、Wifi又はBluetooth (登録商標)等の無線通信デバイスであってもよい。第2通信部23は、USB(Universal Serial Bus )インタフェースであってもよい
【0044】
表示部24は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを用いる。表示部24は制御部20の保守端末用プログラム2Pに基づく操作画面、及び保守支援装置1で提供されるWebページのイメージを表示する。表示部24は、好ましくはタッチパネル内蔵型ディスプレイであるが、タッチパネル非内蔵型ディスプレイであってもよい。
【0045】
操作部25は、制御部20との間で入出力が可能なキーボード及びポインティングデバイス、若しくは音声入力部等のユーザインタフェースである。操作部25は、表示部24のタッチパネル、又は筐体に設けられた物理ボタンを用いてもよい。操作部25は、ユーザによる操作情報を制御部20へ通知する。
【0046】
撮像部26は、撮像素子を用いて得られる撮像画像を出力する。制御部20は、任意のタイミングで撮像部26の撮像素子にて撮像される画像を取得できる。
【0047】
図3は、保守用通信機器6の内部構成を示すブロック図である。保守用通信機器6は、制御部60、記憶部61、第1通信部62、第2通信部63、及び第3通信部64を備える。制御部60は、CPU又はマイクロプロセッサを用いる。記憶部61には予め規定されたプログラムが記憶されている。
【0048】
記憶部61は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部61は、蓄電素子50から受信した状態データ記憶る。
【0049】
第1通信部62は、蓄電素子50に接続されたユニットとの通信接続を実現する通信デバイスである。本実施の形態では第1通信部62はBluetooth(登録商標)等の無線通信によって蓄電素子のユニットと通信接続する。
【0050】
第2通信部63は、ネットワークCNを介した通信接続を実現する通信デバイスである。保守用通信機器6は、蓄電素子50から受信した状態データを第2通信部63によって管理装置51へ送信できる。蓄電素子50が通信機能を有する電池管理装置を備えている場合、第2通信部63は不要である
【0051】
第3通信部64は、保守用通信機器6と保守端末装置2との通信接続を実現する通信デバイスである。本実施の形態において第3通信部64は、USBインタフェースである。第3通信部64は、第1通信部62とは異なる無線通信デバイスであってもよい。
【0052】
保守用通信機器6の制御部60は、プログラムに基づき、第1通信部62によって定期的に蓄電素子50から状態データを取得し、取得した状態データを逐次記憶部61に記憶する。記憶の周期は例えば1日に1回程度である。制御部60は、取得した日時を状態データに対応付けて記憶部61に記憶する。制御部60は、取得した状態データを第2通信部63から逐次管理装置51へ向けて送信する。制御部60はプログラムに基づき、第3通信部64によって保守端末装置2と通信接続した場合、保守端末装置2からの指示に応じて、記憶部61から状態データを読み出し、第3通信部64からそのデータを送信する。
【0053】
期的な保守点検の実施時に保守担当者が所持する保守端末装置2は、保守用通信機器6に蓄積される状態データを取得し、取得した状態データを、保守支援装置1へネットワークMN又は通信網Nを介して送信する。送信される状態データは、保守点検時に保守端末装置2の撮像部26によって撮像された蓄電素子50の外観画像を含んでもよい。状態データは、遠隔監視システム300へ集約される。こうして、顧客のネットワークCNを介して遠隔監視システム300へ送信されない状態データについても、遠隔監視システム300で集約することができる。
【0054】
本実施の形態の保守支援システム100では、保守支援装置1が保守用通信機器6から直接的に取得した状態データ、又は遠隔監視システム300から取得した状態データを用いて、交換時期を判断する。図4は、保守支援装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。保守支援装置1の制御部10は、図4の処理手順を、同時期に納入された複数の蓄電素子50が接続された組電池毎に、例えば蓄電装置5毎に、1年に1~2回程度の頻度で実施する。制御部10は、同時期に、同一顧客へ大規模に納入された異なる場所で運用されている蓄電素子50群についてまとめて処理を行なってもよい。
【0055】
制御部10は、対象の蓄電素子50を含む組電池について、蓄電素子50の前回の処理実施後から直近までの対象期間において1日に1度測定された状態データを取得する(ステップS1)。制御部10は、上述したように保守用通信機器6から状態データを取得してもよいし、遠隔監視システム300から取得してもよい。制御部10は、図4の例では1年分又は半年分程度の状態データを取得する。制御部10は、鉛蓄電池の単電池蓄電素子50の1つの識別データを選択する(ステップS2)。
【0056】
制御部10は、選択した識別データで識別される蓄電素子50について、対象期間における状態データに基づき、保証の対象となる期間内に寿命に至るか否かの判断処理を行なう(ステップS3)。ステップS3の判断は「第2判断部」に相当する。判断処理の詳細については後述する。
【0057】
寿命に至ると判断された場合(S3:YES)、制御部10は、現時点で寿命に至っていなくとも、選択している識別データの蓄電素子50について交換対象として記憶し(ステップS4)、処理を次のステップS5へ進める。
【0058】
寿命に至らないと判断された場合(S3:NO)、制御部10は処理を次のステップS5へ進める。
【0059】
制御部10は、対象としている組電池に含まれる全ての蓄電素子50について判断処理を行なったか否かを判断する(ステップS5)。全ての蓄電素子50について処理を行なっていないと判断された場合(S5:NO)、制御部10は処理をステップS2へ戻す。
【0060】
全ての蓄電素子50について処理を行なったと判断された場合(S5:YES)、制御部10は、対象の組電池について保証対象であるか否かを判断する(ステップS6)。
【0061】
ステップS6における保証対象であるか否かの判断は、対象期間における状態データが保守用通信機器6又は遠隔監視システム300に記憶されており、これを取得できるか否かの判断を含む。ステップS6の判断は第1判断部に相当する。保証対象であるか否かの判断は、顧客データ管理システム400から、対象の組電池に対して保証金納付済みであることが確認できるか否かの判断を含む。保証対象であるか否かの判断について、他の条件が設定されていてもよい。例えば、取得された状態データに含まれる温度が、使用環境として保証が不可能な使用環境と判断できるような温度(例えば40℃)である場合は保証対象でないと判断されてもよい。
【0062】
保証対象であると判断された場合(S6:YES)、制御部10は、ステップS4で寿命に至ると判断された蓄電素子50の数の、組電池に含まれる全ての蓄電素子50の数に対する割合が所定の割合以上であるか否かを判断する(ステップS7)。ステップS7における判断は、「第3判断部」に相当する。
【0063】
所定の割合以上でないと判断された場合(S7:NO)、制御部10は、交換対象として記憶された蓄電素子50について交換要と判断し、その蓄電素子50を識別する識別データと共に記憶する(ステップS8)。制御部10は、処理を次のステップS10へ進める。
【0064】
ステップS7で所定の割合以上であると判断された場合(S7:YES)、制御部10は、対象としている組電池蓄電装置5)の蓄電素子50の全てについて交換要と判断し、全交換を記憶する(ステップS9)。
【0065】
制御部10は、顧客データ管理システム400から、交換工事が納入日から保証期間内で且つ初回であるか否かを判断し(ステップS10)、保証期間内で且つ初回である場合には交換見積額を無償と算定する(ステップS11)。
【0066】
ステップS11で交換工事が保証期間内でなく、又は、初回でないと判断された場合(S10:NO)、制御部10は有償交換として交換見積額を算定する(ステップS12)。
【0067】
制御部10は、交換対象として記憶された蓄電素子50に対する交換通知を、組電池蓄電装置5所有者、及び担当する保守担当者へ向けて、算定された交換見積額と共に通知し(ステップS13)、処理を終了する。
【0068】
ステップS6で保証対象でないと判断された場合(S6:NO)、組電池は保証対象外である。したがって制御部10は、処理をそのまま終了してもよいし、寿命に至ると判断された蓄電素子50についての交換通知を保守担当者へ通知してから終了してもよい。
【0069】
これにより、保証金が納付されて保証対象とされている組電池について、保証期間内は、寿命に至ると判断された蓄電素子50が、まとめて交換される。このような交換は、蓄電素子50夫々が寿命に至る都度に蓄電素子50を交換されるよりも、工事費用を抑制することができる。
【0070】
図5は、蓄電素子50夫々に対する寿命に至るか否かの判断の処理手順の一例を示すフローチャートである。図5は、図4に示した処理手順の内のステップS3の詳細に対応し、鉛蓄電池蓄電素子50に対する判断処理の一例を示す。蓄電素子50が鉛蓄電池以外の蓄電素子である場合、保守支援装置1は、その種別毎の判断処理を用いるとよい。
【0071】
制御部10は、取得された蓄電素子50の状態データの内、対象期間における温度データを取得し(ステップS301)、平均温度を算出する(ステップS302)制御部10は、平均温度に基づく寿命の加速係数kを算出する(ステップS303)。制御部10は、加速係数k、k=2x (2のx乗)、x=(平均温度-所定温度)/10によって算出る。所定温度は例えば25℃であり、平均温度が25℃未満の場合、即ちxが負の値のときは、加速係数kは常にk=1とする。
【0072】
制御部10は、保証年数Y(=10/k)を算出する(ステップS304)。一例として、保証年数は所定温度25℃の場合10年とする。
【0073】
制御部10は、取得された蓄電素子50の状態データの内、対象期間における直近の内部抵抗値から、所定温度(例えば25℃)における内部抵抗値R1を算出する(ステップS305)。
【0074】
制御部10は、算出した内部抵抗値R1に基づいて、所定温度で使用した場合の使用期間t1を予め蓄積されたデータにおける使用期間に対する内部抵抗値の推移の関係から導出する(ステップS306)。
【0075】
制御部10は、対象の蓄電素子50の所定温度における期待寿命t2から、ステップS306で算出した使用期間t1を減算して寿命期までの残期間t3を算出する(ステップS307)。制御部10は、算出した残期間t3をステップS302で算出した平均温度で補正する(ステップS308)。
【0076】
制御部10は、寿命t5を算出する(ステップS309)。制御部10は、補正によって求められた残期間t4(=t3/k)と、製造日から直近の状態データ測定日までの日数ステップS302で算出した平均温度で補正した日数とを加算して寿命t5を算出する。制御部10は、製造日を、蓄電素子50の生産管理システム、又は顧客データ管理システム400から得る。
【0077】
制御部10は、ステップS309で算出した寿命t5が、保証年数Y以下であるか否かを判断する(ステップS310)。保証年数Y以下であると判断された場合(S310:YES)、制御部10は、対象の蓄電素子50が保証期間内に交換が必要であると判断し(ステップS311)、処理を図4のステップS4へ戻す。
【0078】
寿命t5が保証年数Yを超えると判断された場合(S310:NO)、制御部10は、交換が不要であると判断し(ステップS312)、処理を図4のステップS4へ戻す。
【0079】
上述したように図5に示した交換要否の判断手順は、鉛蓄電池に対する判断手順として一例を示すものである。蓄電素子50が鉛蓄電池以外の蓄電素子である場合には他の判断手順によって保証期間内に交換が必要か否かの判断が行なわれる。
【0080】
一例として、期待寿命t2が13年である蓄電素子50を60個含む鉛蓄電池の蓄電装置5について、図4及び図5に示した手順を具体的に説明する。
【0081】
5において、選択された蓄電素子50についてステップS301で取得された平均温度が25℃であった場合、所定温度25℃と等しいので制御部10は、加速係数k「1」と算出する(S303)。ステップS304において制御部10は、保証年数Y、k=1の場合はY=10年と算出する制御部10は、ステップS306で使用期間t1がt1=9年であると算出した場合、ステップS307において残寿命t3を4年と算出する(t3=t2-t1=13-9)。このとき制御部10は、選択された蓄電素子50の状態データの内の内部抵抗値から補正された所定温度25℃における内部抵抗値R1に基づいて残寿命t3を算出する。製造日から測定日までの期間が5年である場合、制御部10は、ステップS309において寿命t5を9年と算出する(t5=(5/k)+(4/k)=(5/1)+(4/1))。k=1で保証年数は10年と算出され(S303)この場合、寿命t5の9年、保証年数Yの10年未満であるから、制御部10は、保証期間内での交換と判断する(S311)。制御部10は、内部抵抗値Rに基づいて使用期間t110年と算出する場合には、残寿命t33年、寿命t58年と算出る。
【0082】
5を参照した説明では、制御部10は、ステップS305において、蓄電素子50の内部抵抗値から、所定温度における内部抵抗値を算出し、予め蓄積されたデータにおける使用期間に対する内部抵抗値の推移に当てはめ、使用期間を推定した。使用期間の推定方法はこれに限られない。例えば、制御部10は逆に、予め蓄積された所定温度における使用期間に対する内部抵抗値の推移を、対象の蓄電素子50の使用環境における平均温度で使用した場合の推移へ変換する。制御部10は、対象の蓄電素子50の内部抵抗値を、その変換後の推移に当てはめ、いずれの時期に該当するかを判断して使用期間を推定してもよい。制御部10は、蓄積された内部抵抗値を、蓄電素子50の内部抵抗値を測定した温度における内部抵抗値へ変換して当てはめてもよい。制御部10は、内部抵抗値の変化が小さい間は、使用期間を、製造日から測定日までの期間を前記平均温度に基づいて補正した期間としてもよい。
【0083】
図6は、上述した一例における蓄電素子50の交換の概要を示す。図6に示すように、5年目に取得された状態データから求められる保証年数Yが10年と算出された場合、寿命t5が6年、8年、9年と算出され、残寿命は1年から4年である3つの蓄電素子50が交換要と判断されるとする。この場合、交換要と判断された蓄電素子50の数は、所定の割合10%未満であると判断されるので(S7:NO)、本実施の形態の保守支援システム100においては、保守支援装置1から交換要とされた3つの蓄電素子50について交換が通知される。これにより、3つの蓄電素子50について6年目、8年目、9年目に3回交換工事を行なう代わりに、1回の交換工事で済む。13年目に全交換することになったとしても交換工事の回数を抑え、且つ、交換は保証年数Y以内の保証対象扱いとなるため、顧客は保守費用を抑えることができる。
【0084】
蓄電素子50の製造業者にとっても、定期的に測定される状態データが取得できることを含む条件が満たされる場合に無償交換を含む保証対象とするので、異常な温度で使用されているケースをも保証するリスクを負う必要がない。使用環境に応じた保証年数以内に寿命に至る蓄電素子50の数が、組電池における所定の割合以上である場合には全交換と決定され、所定の割合未満である場合には新品電池と交換と決定される。これにより、電気的特性が同等の蓄電素子50を用いて蓄電装置5全体のパフォーマンスを、10年超の保証期間、維持することが可能になる。このように、保守支援装置1の判断処理によって、蓄電装置5のユーザ及び蓄電素子50の製造業者相互に、相応の保証金及び無償交換を負担し合えば蓄電素子50の長期保証が可能となる。
【0085】
示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0086】
100 保守支援システム
1 保守支援装置
10 制御部
11 記憶部
1P 保守支援プログラム
2 保守端末装置
20 制御部
21 記憶部
2P 保守端末用プログラム
300 遠隔監視システム
400 顧客データ管理システム
6 保守用通信機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6