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特許7404718音響処理装置、音響処理装置の動作方法、音響処理システムおよび音響処理システムの動作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】音響処理装置、音響処理装置の動作方法、音響処理システムおよび音響処理システムの動作方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
H04R3/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019160421
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021040240
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】萩原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】北山 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-261391(JP,A)
【文献】特開2008-166920(JP,A)
【文献】特開2000-322057(JP,A)
【文献】特開2008-227568(JP,A)
【文献】特開2003-255945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1入力ポートと、
第2入力ポートと、
前記第1入力ポートに入力される音響信号を処理する第1処理部であって、当該音響信号の音響特性を調整する第1調整部を含む複数の第1処理部と、
前記第2入力ポートに入力される音響信号を処理する第2処理部と、
第1特定出力ポートを含む複数の出力ポートとを具備し、
第1動作モードにおいては、
前記第1調整部が有効状態に設定され、前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号との各々が、前記複数の出力ポートのうち選択された1以上の出力ポートから出力され、
第2動作モードにおいては、
前記第1調整部が無効状態に設定され、前記複数の第1処理部の各々による処理後の音響信号が、前記第1特定出力ポートから出力される
音響処理装置。
【請求項2】
前記複数の出力ポートは、音楽制作に使用される情報処理装置に音響信号を出力する第2特定出力ポートを含み、
前記第1動作モードにおいては、
前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号とが、前記第2特定出力ポートから出力される
請求項1の音響処理装置。
【請求項3】
前記第2処理部は、前記第2入力ポートに入力される音響信号の音響特性を調整する第2調整部を含み、
前記第2調整部は、前記第1動作モードにおいて有効状態に設定され、前記第2動作モードにおいて無効状態に設定される
請求項1または請求項2の音響処理装置。
【請求項4】
前記第1特定出力ポートは、前記第2入力ポートと同種の出力ポートである
請求項1から請求項の何れかの音響処理装置。
【請求項5】
第1音響処理装置と第2音響処理装置とを具備する音響処理システムであって、
前記第1音響処理装置および前記第2音響処理装置の各々は、
複数の第1入力ポートと、
第2入力ポートと、
前記第1入力ポートに入力される音響信号を処理する第1処理部であって、当該音響信号の音響特性を調整する第1調整部を含む複数の第1処理部と、
前記第2入力ポートに入力される音響信号を処理する第2処理部と、
第1特定出力ポートを含む複数の出力ポートとを具備し、
第1動作モードにおいては、
前記第1調整部が有効状態に設定され、前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号との各々が、前記複数の出力ポートのうち選択された1以上の出力ポートから出力され、
第2動作モードにおいては、
前記第1調整部が無効状態に設定され、前記複数の第1処理部の各々による処理後の音響信号が、前記第1特定出力ポートから出力され、
前記第1音響処理装置の前記第1特定出力ポートと前記第2音響処理装置の前記第2入力ポートとが接続され、
前記第1音響処理装置は、前記第2動作モードに設定され、
前記第2音響処理装置は、前記第1動作モードに設定される
音響処理システム。
【請求項6】
複数の第1入力ポートと、
第2入力ポートと、
前記第1入力ポートに入力される音響信号を処理する第1処理部であって、当該音響信号の音響特性を調整する第1調整部を含む複数の第1処理部と、
前記第2入力ポートに入力される音響信号を処理する第2処理部と、
第1特定出力ポートを含む複数の出力ポートと
を具備する音響処理装置の動作方法であって、
第1動作モードにおいては、
前記第1調整部を有効状態に設定し、前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号との各々を、前記複数の出力ポートのうち選択された1以上の出力ポートから出力し、
第2動作モードにおいては、
前記第1調整部を無効状態に設定し、前記複数の第1処理部の各々による処理後の音響信号を、前記第1特定出力ポートから出力する
音響処理装置の動作方法。
【請求項7】
前記複数の出力ポートは、音楽制作に使用される情報処理装置に音響信号を出力する第2特定出力ポートを含み、
前記第1動作モードにおいては、
前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号とを、前記第2特定出力ポートから出力する
請求項の音響処理装置の動作方法。
【請求項8】
前記第2処理部は、前記第2入力ポートに入力される音響信号の音響特性を調整する第2調整部を含み、
前記第1動作モードにおいては、前記第2調整部を有効状態に設定し、
前記第2動作モードにおいては、前記第2調整部を無効状態に設定する
請求項または請求項の音響処理装置の動作方法。
【請求項9】
前記第1特定出力ポートは、前記第2入力ポートと同種の出力ポートである
請求項から請求項の何れかの音響処理装置の動作方法。
【請求項10】
第1音響処理装置と第2音響処理装置とを具備し、
前記第1音響処理装置および前記第2音響処理装置の各々が、
複数の第1入力ポートと、
第2入力ポートと、
前記第1入力ポートに入力される音響信号を処理する第1処理部であって、当該音響信号の音響特性を調整する第1調整部を含む複数の第1処理部と、
前記第2入力ポートに入力される音響信号を処理する第2処理部と、
第1特定出力ポートを含む複数の出力ポートとを具備し、
前記第1音響処理装置の前記第1特定出力ポートと前記第2音響処理装置の前記第2入力ポートとが接続された音響処理システムの動作方法であって、
前記第1音響処理装置を第2動作モードに設定し、
前記第2音響処理装置を第1動作モードに設定し、
第1動作モードにおいては、
前記第1調整部を有効状態に設定し、前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号との各々を、前記複数の出力ポートのうち選択された1以上の出力ポートから出力し、
第2動作モードにおいては、
前記第1調整部を無効状態に設定し、前記複数の第1処理部の各々による処理後の音響信号を、前記第1特定出力ポートから出力する
音響処理システムの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響処理装置、音響処理装置の動作方法、音響処理システムおよび音響処理システムの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
収音機器または放音機器等の音響機器と音楽制作用の情報処理装置(DAW:Digital Audio Workstation)とを中継する音響処理装置(いわゆるオーディオインターフェイス)が従来から提案されている。例えば特許文献1には、複数の録音装置が縦続に接続された録音システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-33614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、複数の録音装置を接続する場面では、複数の録音装置の各々が実行する音響処理の相互的な関係を考慮しながら、各録音装置の動作を利用者が個別に設定する必要があり、設定作業が煩雑であるという課題がある。以上の事情を考慮して、本開示は、複数の音響処理装置を簡便に接続することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る音響処理装置は、第1入力ポートと、第2入力ポートと、前記第1入力ポートに入力される音響信号を処理する第1処理部であって、当該音響信号の音響特性を調整する第1調整部を含む第1処理部と、前記第2入力ポートに入力される音響信号を処理する第2処理部と、第1特定出力ポートを含む複数の出力ポートとを具備し、第1動作モードにおいては、前記第1調整部が有効状態に設定され、前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号との各々が、前記複数の出力ポートのうち選択された1以上の出力ポートから出力され、第2動作モードにおいては、前記第1調整部が無効状態に設定され、前記第1処理部による処理後の音響信号が、前記第1特定出力ポートから出力される。
【0006】
本開示のひとつの態様に係る音響処理システムは、第1音響処理装置と第2音響処理装置とを具備する音響処理システムであって、前記第1音響処理装置および前記第2音響処理装置の各々は、第1入力ポートと、第2入力ポートと、前記第1入力ポートに入力される音響信号を処理する第1処理部であって、当該音響信号の音響特性を調整する第1調整部を含む第1処理部と、前記第2入力ポートに入力される音響信号を処理する第2処理部と、第1特定出力ポートを含む複数の出力ポートとを具備し、第1動作モードにおいては、前記第1調整部が有効状態に設定され、前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号との各々が、前記複数の出力ポートのうち選択された1以上の出力ポートから出力され、第2動作モードにおいては、前記第1調整部が無効状態に設定され、前記第1処理部による処理後の音響信号が、前記第1特定出力ポートから出力され、前記第1音響処理装置の前記第1特定出力ポートと前記第2音響処理装置の前記第2入力ポートとが接続され、前記第1音響処理装置は、前記第2動作モードに設定され、前記第2音響処理装置は、前記第1動作モードに設定される。
【0007】
本開示のひとつの態様に係る音響処理装置の動作方法は、第1入力ポートと、第2入力ポートと、前記第1入力ポートに入力される音響信号を処理する第1処理部であって、当該音響信号の音響特性を調整する第1調整部を含む第1処理部と、前記第2入力ポートに入力される音響信号を処理する第2処理部と、第1特定出力ポートを含む複数の出力ポートとを具備する音響処理装置の動作方法であって、第1動作モードにおいては、前記第1調整部を有効状態に設定し、前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号との各々を、前記複数の出力ポートのうち選択された1以上の出力ポートから出力し、第2動作モードにおいては、前記第1調整部を無効状態に設定し、前記第1処理部による処理後の音響信号を、前記第1特定出力ポートから出力する。
【0008】
第1音響処理装置と第2音響処理装置とを具備し、前記第1音響処理装置および前記第2音響処理装置の各々が、第1入力ポートと、第2入力ポートと、前記第1入力ポートに入力される音響信号を処理する第1処理部であって、当該音響信号の音響特性を調整する第1調整部を含む第1処理部と、前記第2入力ポートに入力される音響信号を処理する第2処理部と、第1特定出力ポートを含む複数の出力ポートとを具備し、前記第1音響処理装置の前記第1特定出力ポートと前記第2音響処理装置の前記第2入力ポートとが接続された音響処理システムの動作方法であって、前記第1音響処理装置を第2動作モードに設定し、前記第2音響処理装置を第1動作モードに設定し、第1動作モードにおいては、前記第1調整部を有効状態に設定し、前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号との各々を、前記複数の出力ポートのうち選択された1以上の出力ポートから出力し、第2動作モードにおいては、前記第1調整部を無効状態に設定し、前記第1処理部による処理後の音響信号を、前記第1特定出力ポートから出力する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】音響処理装置の構成を例示するブロック図である。
図2】音響処理装置の機能的な構成を例示するブロック図である。
図3】第1処理部の具体的な構成を例示するブロック図である。
図4】第2処理部の具体的な構成を例示するブロック図である。
図5】音響処理システムの概略的な構成を例示するブロック図である。
図6】音響処理システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
図7】動作モード設定処理の具体的な手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A:実施形態
図1は、好適な形態に係る音響処理装置100の構成を例示するブロック図である。音響処理装置100は、音楽の収録および編集に利用される信号処理装置である。音響処理装置100は、制御装置11と記憶装置12と操作装置13と信号処理回路14と接続ポート群15とを具備する。
【0011】
接続ポート群15は、音響処理装置100とは別体の外部機器が接続される複数の接続ポート(複数の入力ポートXおよび複数の出力ポートY)で構成される。具体的には、音響機器D(Dx,Dy)および情報処理装置200が接続ポート群15に接続される。音響機器Dは、音響処理装置100に音響信号(Audio Signal)を供給する入力機器Dx、または、音響処理装置100から音響信号を受信する出力機器Dyである。入力機器Dxは、例えば周囲の音響の波形を表す音響信号を生成する収音機器、または、利用者による演奏に応じた音響信号を生成する電気ギター等の電気楽器である。出力機器Dyは、音響信号に応じた音響を放音する放音機器、または、音響信号を増幅または調整する信号処理装置(例えばアンプまたはミキサ)である。
【0012】
制御装置11は、音響処理装置100の各要素を制御する単数または複数のプロセッサで構成される。例えば、制御装置11は、CPU(Central Processing Unit)、SPU(Sound Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより構成される。
【0013】
記憶装置12は、制御装置11が実行するプログラムと制御装置11が使用する各種のデータとを記憶する単数または複数のメモリである。記憶装置12は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成される。複数種の記録媒体の組合せにより記憶装置12を構成してもよい。なお、音響処理装置100に着脱可能な可搬型の記録媒体、または、音響処理装置100が通信可能な外部記録媒体(例えばオンラインストレージ)を、記憶装置12として利用してもよい。
【0014】
操作装置13は、利用者からの指示を受付ける入力機器である。操作装置13は、例えば利用者が操作可能な複数の操作子で構成される。信号処理回路14は、音響信号を処理する電子回路である。具体的には、信号処理回路14は、アナログまたはデジタルの音響信号を処理する多数の回路素子で構成される。
【0015】
情報処理装置200は、音楽の収録および編集等の音楽制作のために利用者が使用するコンピュータシステムであり、DAW(Digital Audio Workstation)として機能する。例えばパーソナルコンピュータまたはタブレット端末等の各種の情報端末が、情報処理装置200として利用される。音響処理装置100は、音響機器Dと情報処理装置200との間を中継するオーディオインターフェイスとして利用される。
【0016】
情報処理装置200は、制御装置21と記憶装置22と表示装置23と操作装置24とを具備する。制御装置21は、情報処理装置200の各要素を制御する単数または複数のプロセッサで構成される。例えば、制御装置21は、CPU、SPU、DSP、FPGA、またはASIC等の1種類以上のプロセッサにより構成される。記憶装置22は、制御装置21が実行するプログラムと制御装置21が使用する各種のデータとを記憶する単数または複数のメモリである。記憶装置22は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成される。複数種の記録媒体の組合せにより記憶装置22を構成してもよい。
【0017】
表示装置23は、制御装置21による制御のもとで各種の画像を表示する。例えば音楽制作のための操作画面が表示装置23に表示される。操作装置24は、利用者による操作を受付ける。例えば、操作装置24は、音楽の収録または編集の指示を利用者から受付ける。
【0018】
図2は、音響処理装置100の機能的な構成を例示するブロック図である。接続ポート群15は、複数の入力ポートX(Xa_1~Xa_N,Xb)と複数の出力ポートY(Ya_1~Ya_M,Yb,Yc)とで構成される。複数の入力ポートXの各々は、音響処理装置100に音響信号を入力するための接続端子である。他方、複数の出力ポートYの各々は、音響処理装置100から音響信号を出力するための接続端子である。
【0019】
複数の入力ポートXは、N個(Nは2以上の自然数)の入力ポートXa_1~Xa_Nと1個の入力ポートXbとを含む。N個の入力ポートXa_1~Xa_Nの各々は、アナログの音響信号が入力される接続端子である。例えば収音機器または電気楽器等の入力機器Dxが各入力ポートXa_n(n=1~N)に接続される。各入力ポートXa_nは、例えばRCA端子またはフォーン端子である。入力ポートXbは、デジタルの音響信号が入力される接続端子である。入力ポートXbは、例えば光通信に利用される光デジタル端子である。入力ポートXa_nは「第1入力ポート」の一例であり、入力ポートXbは「第2入力ポート」の一例である。
【0020】
複数の出力ポートYは、M個(Mは2以上の自然数)の出力ポートYa_1~Ya_Mと1個の出力ポートYbと1個の出力ポートYcとを含む。M個の出力ポートYa_1~Ya_Mの各々は、アナログの音響信号が出力される接続端子である。例えば放音機器等の出力機器Dyが各出力ポートYa_m(m=1~M)に接続される。各出力ポートYa_mは、例えばライン端子またはフォーン端子である。出力ポートYbは、デジタルの音響信号が出力される接続端子である。出力ポートYbは、例えば光通信に利用される光デジタル端子である。すなわち、出力ポートYbは、入力ポートXbと同種の接続端子である。出力ポートYbは「第1特定出力ポート」の一例である。
【0021】
出力ポートYcは、情報処理装置200と通信するための接続端子である。出力ポートYcは、例えばデジタルの音響信号を情報処理装置200との間で授受するためのUSB(Universal Serial Bus)端子である。すなわち、情報処理装置200は、接続ケーブル40を介して音響処理装置100の出力ポートYcに接続される。接続ケーブル40は、例えばUSBケーブルである。なお、出力ポートYcは、実際には、情報処理装置200に音響信号を出力する出力端子として機能するほか、情報処理装置200からの音響信号を受付ける入力端子としても機能する入出力ポートである。ただし、以下の説明では、情報処理装置200に対する音響信号の出力に注目する観点から、出力ポートYcを複数の出力ポートYの1個として便宜的に説明する。出力ポートYcは「第2特定出力ポート」の一例である。
【0022】
音響処理装置100は、N個の第1処理部31_1~31_Nと第2処理部32とミキシング処理部33と選択処理部34とM個のD/A変換器35_1~35_Mと出力処理部36と中継処理部37とを具備する。
【0023】
N個の第1処理部31_1~31_Nは、N個の入力ポートXa_1~Xa_Nにそれぞれ対応する。入力ポートXa_nは第1処理部31_nに接続される。各入力ポートXa_nに対応する第1処理部31_nは、当該入力ポートXa_nに入力される音響信号を処理する。各第1処理部31_nは、変換部311と調整部312とを具備する。変換部311は信号処理回路14により実現される。調整部312は、制御装置11がプログラムを実行することで実現される。なお、調整部312を信号処理回路14により実現してもよい。
【0024】
図3は、第1処理部31_nの具体的な構成を例示するブロック図である。変換部311は、調整部312による処理に好適な信号に音響信号を変換する。具体的には、変換部311は、音響信号を減衰させる減衰部511と、音響信号を増幅する増幅部512と、音響信号をアナログからデジタルに変換するA/D変換器513とを具備する。なお、変換部311を構成する各要素の機能および順番は任意に変更される。
【0025】
調整部312は、変換部311による処理後の音響信号の音響特性を調整する。具体的には、調整部312は、音響信号の位相を反転させる位相反転部514と、音響信号の高域を強調する高域通過フィルタ515と、音響信号の周波数特性を調整する効果付与部516とを具備する。効果付与部516は、例えば音響信号の帯域毎に信号レベルを調整するイコライザ、音響信号が表す音色を歪ませるディストーション、音響信号において信号レベルが高い区間の抑制するコンプレッサ等の各種のエフェクタで構成される。なお、調整部312を構成する各要素の機能および順番は任意に変更される。調整部312は「第1調整部」の一例である。
【0026】
図2の第2処理部32は、入力ポートXbに接続される。第2処理部32は、当該入力ポートXbに入力される音響信号を処理する。具体的には、第2処理部32は、変換部321と調整部322とを具備する。変換部321は信号処理回路14により実現される。調整部322は、制御装置11がプログラムを実行することで実現される。なお、調整部322を信号処理回路14により実現してもよい。
【0027】
図4は、第2処理部32の具体的な構成を例示すブロック図である。変換部321は、調整部322による処理に好適な信号に音響信号を調整する。具体的には、変換部321は、入力ポートXbに入力される光デジタル信号から複数のチャネルに対応するデジタルの音響信号を復調する受信回路(DIR:Digital Audio Interface Receiver)である。
【0028】
調整部322は、変換部321による処理後の音響信号の音響特性を調整する。具体的には、調整部322は、調整部312と同様に、位相反転部524と高域通過フィルタ525と効果付与部526とを具備する。なお、調整部322を構成する各要素の機能および順番は任意に変更される。調整部322は「第2調整部」の一例である。
【0029】
図2のミキシング処理部33は、各第1処理部31_nによる処理後の音響信号と第2処理部32による処理後の音響信号とを含む複数のチャネルの音響信号を合成するミキサである。各音響信号の混合比は操作装置13に対する利用者からの指示に応じて設定される。ミキシング処理部33は、制御装置11がプログラムを実行することで実現される。ただし、ミキシング処理部33を信号処理回路14により実現してもよい。
【0030】
中継処理部37は、情報処理装置200と音響処理装置100との間の信号の授受を中継する。具体的には、中継処理部37は、選択処理部34から供給される複数のチャネルの音響信号をUSBの伝送信号に変換したうえで出力ポートYcに供給し、情報処理装置200から出力ポートYcに供給される伝送信号から複数のチャネルの音響信号を生成する。中継処理部37は、制御装置11がプログラムを実行することで実現される。ただし、中継処理装置を信号処理回路14により実現してもよい。
【0031】
選択処理部34には、各第1処理部31_nによる処理後の音響信号と、第2処理部32による処理後の音響信号と、ミキシング処理部33による合成後の音響信号と、中継処理部37による処理後の音響信号とを含む複数のチャネルの音響信号が供給される。選択処理部34は、当該選択処理部34に供給される複数のチャネルの各々の音響信号をパッチする。すなわち、選択処理部34は、当該選択処理部34に供給される複数のチャネルの音響信号の各々の出力先を選択するセレクタである。各音響信号の出力先は、M個のD/A変換器35_1~35_Mと出力処理部36と中継処理部37とのなかから、操作装置13に対する利用者からの指示に応じて選択される。選択処理部34は、制御装置11がプログラムを実行することで実現される。ただし、選択処理部34を信号処理回路14により実現してもよい。
【0032】
M個のD/A変換器35_1~35_Mは、M個の出力ポートYa_1~Ya_Mにそれぞれ対応する。D/A変換器35_mは出力ポートYa_mに接続される。各D/A変換器35_mは、選択処理部34から供給される音響信号をデジタルからアナログに変換する。D/A変換器35_mによる変換後のアナログの音響信号が出力ポートYa_mから出力機器Dyに出力される。また、出力処理部36は、出力ポートYbに接続される。出力処理部36は、選択処理部34から供給される複数のチャネルの音響信号から光デジタル信号を生成する送信回路(DIT:Digital Audio Interface Transmitter)である。
【0033】
音響処理装置100は、第1動作モードと第2動作モードとを含む複数の動作モードの何れかにより動作する。具体的には、制御装置11は、操作装置13に対する利用者からの指示に応じて動作モードを設定する。第1動作モードと第2動作モードとでは、以下に例示される通り、第1処理部31_nの調整部312と第2処理部32の調整部322とに関する状態(有効状態/無効状態)が相違する。
【0034】
第1動作モードは、音響処理装置100を単数で使用する場合の動作モードである。第1動作モードにおいては、第1処理部31_nの調整部312と第2処理部32の調整部322とが有効状態に設定される。有効状態は、音響信号の音響特性が調整部312により有効に調整される状態である。
【0035】
他方、第2動作モードは、複数の音響処理装置100を相互に接続した状態で使用する場合に好適な動作モードである。第2動作モードにおいては、第1処理部31_nの調整部312と第2処理部32の調整部322とが無効状態に設定される。無効状態は、調整部312または調整部322による音響信号の調整が無効である状態を意味する。例えば、音響信号に対して平坦な音響特性を付与する状態、すなわち、音響信号を調整する処理は実行されるけれども当該音響信号の音響特性は処理の前後で実質的に変化しない状態が、無効状態の一例である。また、調整部312または調整部322による調整が省略される状態も無効状態に相当する。例えば、第1処理部31_nにおいて変換部311による処理後の音響信号が、調整部312による調整を経ずに選択処理部34に直接的に供給される状態は、調整部312の無効状態に相当する。また、例えば第2処理部32において変換部321による処理後の音響信号が、調整部322による調整を経ずに選択処理部34に直接的に供給される状態は、調整部322の無効状態に相当する。以上の例示から理解される通り、無効状態は、調整部312または調整部322が実質的に機能しない状態である。
【0036】
図5に例示される通り、利用者は、2個の音響処理装置100(音響処理装置100Aおよび音響処理装置100B)を相互に接続することで音響処理システム300を構成することが可能である。音響処理装置100Aの出力ポートYbと音響処理装置100Bの入力ポートXbとが接続ケーブル41により接続され、音響処理装置100Bの出力ポートYbと音響処理装置100Aの入力ポートXbとが接続ケーブル42により接続される。接続ケーブル41および接続ケーブル42の各々は、例えば光通信用の光ケーブルである。音響処理装置100Aは「第1音響処理装置」の一例であり、音響処理装置100Bは「第2音響処理装置」の一例である。
【0037】
音響処理装置100AにおけるN個の入力ポートXa_1~Xa_Nの各々には、例えば収音機器等の入力機器Dxが接続される。すなわち、音響処理装置100AにはNチャネルの音響信号が並列に入力される。同様に、音響処理装置100BにおけるN個の入力ポートXa_1~Xa_Nの各々には入力機器Dxが接続される。すなわち、音響処理装置100BにはNチャネルの音響信号が並列に入力される。音響処理システム300は、音響処理装置100AのNチャネルと音響処理装置100BのNチャネルとを合計した2Nチャネルの音響信号を収録するためのシステムとして機能する。すなわち、音響処理装置100の単体では入力チャネルの総数がN個であるのに対し、音響処理装置100Aと音響処理装置100Bとを接続した音響処理システム300においては、入力チャネルの総数が2N個に拡張される。
【0038】
音響処理装置100AにおけるM個の出力ポートYa_1~Ya_Mの各々には、例えば放音機器等の出力機器Dyが接続される。同様に、音響処理装置100BにおけるM個の出力ポートYa_1~Ya_Mの各々には出力機器Dyが接続される。音響処理システム300は、音響処理装置100AのMチャネルと音響処理装置100BのMチャネルとを合計した2Mチャネルの音響信号を放音するためのシステムとして機能する。すなわち、音響処理装置100の単体では出力チャネルの総数がM個であるのに対し、音響処理装置100Aと音響処理装置100Bとを接続した音響処理システム300においては、出力チャネルの総数が2M個に拡張される。
【0039】
図6は、音響処理装置100Aおよび音響処理装置100Bの動作の説明図である。音響処理装置100Aの動作モードは第2動作モードに設定され、音響処理装置100Bの動作モードは第1動作モードに設定される。調整部312および調整部322の無効状態が図6においては破線で表現されている。
【0040】
第2動作モードに設定された音響処理装置100Aにおいては、第1処理部31_nの調整部312と第2処理部32の調整部322とが無効状態に設定される。また、第2動作モードにおいて、選択処理部34は、N個の第1処理部31_1~31_Nの各々による処理後の音響信号を、出力処理部36を介して出力ポートYbに出力する。以上の説明から理解される通り、音響処理装置100Aに入力されたNチャネルの音響信号は、調整部312による調整を経ることなく、出力処理部36により光デジタル信号に変換されたうえで出力ポートYbから出力される。出力ポートYbから出力された光デジタル信号は、接続ケーブル41を介して音響処理装置100Bの入力ポートXbに入力される。
【0041】
音響処理装置100Bの第2処理部32における変換部321は、音響処理装置100Aから入力ポートXbに入力された光デジタル信号からNチャネルの音響信号を生成する。第2処理部32の調整部322は、入力ポートXbに入力されたNチャネルの音響信号の各々の音響特性を調整する。他方、音響処理装置100BにおけるN個の入力ポートXa_1~Xa_Nの各々には、例えば収音機器等の入力機器Dxが接続される。すなわち、音響処理装置100Aと同様に、音響処理装置100BにはNチャネルの音響信号が並列に入力される。以上の説明から理解される通り、音響処理装置100Aに入力されたNチャネルの音響信号と音響処理装置100Bに入力されたNチャネルの音響信号とを含む2Nチャネルの音響信号が、音響処理装置100Bの選択処理部34に供給される。
【0042】
音響処理装置100Bの選択処理部34は、2Nチャネルの音響信号の各々を、当該音響処理装置100Bの複数の出力ポートY(Ya_1~Ya_M,Yb,Yc)のうち1以上の出力ポートYから出力する。具体的には、2Nチャネルのうち1以上のチャネルの音響信号を、複数の出力ポートYのうち操作装置13に対する操作で利用者が選択した1以上の出力ポートYに出力する。
【0043】
具体的には、音響処理装置100Bの選択処理部34は、2Nチャネルの音響信号を、中継処理部37を介して出力ポートYcに出力可能である。2Nチャネルの音響信号は、中継処理部37により伝送信号に変換されたうえで出力ポートYcから出力される。出力ポートYcから出力された伝送信号は、接続ケーブル40を介して情報処理装置200に入力される。情報処理装置200の制御装置21は、音響処理装置100Bから供給される2Nチャネルの音響信号を記憶装置22に格納する。また、制御装置21は、音楽制作のための操作画面を表示装置23に表示させ、操作装置24に対する利用者からの指示に応じて各音響信号を調整する。具体的には、制御装置21は、複数のチャネルの音響信号に対する多重録音または混合処理(ミキシング)等のDAW機能を実現する。
【0044】
音響処理装置100Bの選択処理部34は、2Nチャネルの音響信号のうち、操作装置13に対する操作で選択された2以上のチャネルの音響信号を、各D/A変換器35_mを介して出力ポートYa_mに出力可能である。各音響信号は、出力ポートYa_mから放音機器等の出力機器Dyに供給される。したがって、利用者は、各出力ポートYa_mに接続された放音機器により音響信号の再生音を聴取できる。
【0045】
音響処理装置100Bの選択処理部34は、2Nチャネルの音響信号のうち、操作装置13に対する操作で選択された2以上のチャネルの音響信号を、出力処理部36による処理後の光デジタル信号として出力ポートYbに出力可能である。出力ポートYbに出力された光デジタル信号は、接続ケーブル42を介して音響処理装置100Aの入力ポートXbに入力される。前述の通り、第2動作モードにおいては第2処理部32の調整部322が無効状態に設定される。したがって、音響処理装置100Aの入力ポートXbに入力された光デジタル信号は、第2処理部32の変換部321により音響信号に変換されたうえで選択処理部34に供給される。調整部322による音響信号の調整は実行されない。
【0046】
音響処理装置100Aの選択処理部34は、第2処理部32から供給される音響信号を、D/A変換器35_mを介して出力ポートYa_mに出力する。音響信号は、出力ポートYa_mから放音機器等の出力機器Dyに供給される。したがって、利用者は、各出力ポートYa_mに接続された放音機器により音響信号の再生音を聴取できる。
【0047】
図7は、制御装置11が動作モードを設定する処理(以下「動作モード設定処理」という)の具体的な手順を例示するフローチャートである。動作モード設定処理は、例えば所定の周期で反復される。
【0048】
動作モード設定処理を開始すると、制御装置11は、第1動作モードから第2動作モードへの変更が利用者から指示されたか否かを判定する(S1)。第2動作モードへの変更が指示された場合(S1:YES)、制御装置11は、第1処理部31_nの調整部312と第2処理部32の調整部322とを無効状態に設定する(S2)。また、制御装置11は、選択処理部34による音響信号の出力先を設定する(S3)。具体的には、制御装置11は、入力ポートXa_nに入力される音響信号の出力先を出力ポートYbに設定し、入力ポートXbに入力される音響信号の出力先を出力ポートYa_mに設定する。
【0049】
他方、第2動作モードへの変更が指示されない場合(S1:NO)、制御装置11は、第2動作モードから第1動作モードへの変更が利用者から指示されたか否かを判定する(S4)。第1動作モードへの変更が指示された場合(S4:YES)、制御装置11は、第1処理部31_nの調整部312と第2処理部32の調整部322とを有効状態に設定する(S5)。また、制御装置11は、選択処理部34による音響信号の出力先を利用者からの指示に応じて設定する(S6)。動作モードの変更が指示されない場合(S4:NO)、動作モード設定処理は終了する。
【0050】
以上の説明の通り、音響処理装置100の動作モードが第1動作モードのほかに第2動作モードにも設定される。第2動作モードにおいては、調整部312および調整部322が無効状態に設定され、かつ、第1処理部31_nによる処理後の音響信号が出力ポートYbから出力される。したがって、音響処理装置100Aを第2動作モードに設定し、かつ、音響処理装置100Bを第1動作モードに設定することで、音響処理装置100毎に利用者が煩雑な設定を実行しなくても、音響処理装置100Aの入力ポートXa_nに入力された音響信号と音響処理装置100Bの入力ポートXa_nに入力された音響信号とを、音響処理装置100Bに取込むことが可能である。
【0051】
また、音響処理装置100Aは第2動作モードに設定されるから、調整部312による調整が実行されていない音響信号が音響処理装置100Aの出力ポートYbから音響処理装置100Bの入力ポートXbに入力される。音響処理装置100Bは第1動作モードに設定されるから、入力ポートXbに入力された音響信号は調整部322により調整される。すなわち、音響処理装置100Aの調整部312による調整と音響処理装置100Bの調整部322による調整との重複を自動的に回避できる。
【0052】
本実施形態においては、第1動作モードに設定された音響処理装置100Bの出力ポートYcから、第1処理部31_nによる処理後の音響信号と第2処理部32による処理後の音響信号とが音楽制作用の情報処理装置200に出力される。したがって、音響処理装置100Aの入力ポートXa_nに入力された音響信号と音響処理装置100Bの入力ポートXa_nに入力された音響信号とを、情報処理装置200に取込むことが可能である。
【0053】
本実施形態においては、第1動作モードにおいて第2処理部32の調整部322が有効状態に設定されるから、音響処理装置100Aの調整部312による調整と音響処理装置100Bの調整部322による調整との重複を自動的に回避できる。
【0054】
B:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0055】
(1)前述の形態では、複数の入力ポートXa_nを具備する構成を例示したが、入力ポートXa_nの総数は1個(N=1)でもよい。ただし、複数の入力ポートXa_nを具備する前述の形態によれば、入力チャネルの総数が実質的に増加するという効果が格別に顕著である。また、前述の形態では、複数の出力ポートYa_mを具備する構成を例示したが、出力ポートYa_mの総数は1個(M=1)でもよい。ただし、複数の出力ポートYa_mを具備する前述の形態によれば、出力チャネルの総数が実質的に増加するという効果が格別に顕著である。
【0056】
(2)前述の形態では、入力ポートXbおよび出力ポートYbが光デジタル端子である構成を例示したが、入力ポートXbおよび出力ポートYbの形式は以上の例示に限定されない。例えば同軸デジタル端子を入力ポートXbおよび出力ポートYbとして利用してもよい。また、例えばRCA端子等のアナログ端子を入力ポートXbおよび出力ポートYbとして利用してもよい。
【0057】
(3)第1処理部31_nの構成は図3の例示に限定されない。例えば、変換部311における減衰部511または増幅部512を省略してもよし、図3に例示された要素以外の要素を変換部311に追加してもよい。調整部312を構成する要素の一部を省略してもよいし、図3に例示された要素以外の要素を調整部312に追加してもよい。また、第2処理部32の構成は図4の例示に限定されない。例えば、調整部322を構成する要素の一部を省略してもよいし、図4に例示された要素以外の要素を調整部322に追加してもよい。
【0058】
(4)前述の形態では、操作装置13に対する利用者からの指示に応じて動作モードを変更したが、動作モードを変更するための構成は以上の例示に限定されない。例えば、音響処理装置100Aの出力ポートYbが音響処理装置100Bの入力ポートYaに接続された場合に、音響処理装置100Aの動作モードを自動的に第2動作モードに変更してもよい。他方、音響処理装置100Aの出力ポートYbが音響処理装置100Bの入力ポートYaに接続されていない状態では、音響処理装置100Aの動作モードは第1動作モードに設定される。
【0059】
C:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0060】
本開示のひとつの態様(第1態様)に係る情報処理装置は、第1入力ポートと、第2入力ポートと、前記第1入力ポートに入力される音響信号を処理する第1処理部であって、当該音響信号の音響特性を調整する第1調整部を含む第1処理部と、前記第2入力ポートに入力される音響信号を処理する第2処理部と、第1特定出力ポートを含む複数の出力ポートとを具備し、第1動作モードにおいては、前記第1調整部が有効状態に設定され、前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号との各々が、前記複数の出力ポートのうち選択された1以上の出力ポートから出力され、第2動作モードにおいては、前記第1調整部が無効状態に設定され、前記第1処理部による処理後の音響信号が、前記第1特定出力ポートから出力される。
【0061】
以上の態様では、音響処理装置の動作モードが、第1動作モードと第2動作モードとに設定される。第2動作モードにおいては、第1調整部が無効状態に設定され、かつ、第1処理部による処理後の音響信号が第1特定出力ポートから出力される。したがって、第1音響処理装置を第2動作モードに設定し、かつ、第2音響処理装置を第1動作モードに設定することで、音響処理装置毎に利用者が煩雑な設定を実行しなくても、第1音響処理装置の第1入力ポートに入力された音響信号と第2音響処理装置の第1入力ポートに入力された音響信号とを、第2音響処理装置に取込むことが可能である。また、第1音響処理装置は第2動作モードに設定されるから、第1調整部による調整が実行されていない音響信号が第1音響処理装置の第1特定出力ポートから第2音響処理装置の第2入力ポートに入力される。第2音響処理装置は第1動作モードに設定されるから、第2入力ポートに入力される音響信号は第1調整部により調整される。すなわち、第1音響処理装置の第1調整部による調整と第2音響処理装置の第1調整部による調整との重複を回避できる。
【0062】
なお、「有効状態」とは、第1調整部による音響信号の調整が有効である状態を意味する。他方、「無効状態」とは、第1調整部による音響信号の調整が無効である状態を意味する。「無効状態」は、例えば、第1調整部が平坦な音響特性を音響信号に付与する状態、または、第1調整部による調整が省略される状態を包含する。
【0063】
第1態様の具体例(第2態様)において、前記複数の出力ポートは、音楽制作に使用される情報処理装置に音響信号を出力する第2特定出力ポートを含み、前記第1動作モードにおいては、前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号とが、前記第2特定出力ポートから出力される。以上の態様においては、第1動作モードに設定された第2音響処理装置の第2特定出力ポートから、前記第1処理部による処理後の音響信号と前記第2処理部による処理後の音響信号とが音楽制作用の情報処理装置に出力される。したがって、第1音響処理装置の第1入力ポートに入力された音響信号と第2音響処理装置の第1入力ポートに入力された音響信号とを、情報処理装置に取込むことが可能である。
【0064】
第1態様または第2態様の具体例(第3態様)において、前記第2処理部は、前記第2入力ポートに入力される音響信号の音響特性を調整する第2調整部を含み、前記第2調整部は、前記第1動作モードにおいて有効状態に設定され、前記第2動作モードにおいて無効状態に設定される。以上の態様では、第2調整部が、第1動作モードでは有効状態に設定され、第2動作モードでは無効状態に設定される。したがって、第1音響処理装置の第1調整部による調整と第2音響処理装置の第2調整部による調整との重複が自動的に回避される。
【0065】
第1態様から第3態様の何れかの具体例(第4態様)に係る音響処理装置は、前記第1入力ポートを含む複数の第1入力ポートと、前記第1処理部を含む複数の第1処理部とを具備し、前記第2動作モードにおいては、前記複数の第1処理部の各々による処理後の音響信号が前記第1特定出力ポートから出力される。以上の態様では、第2動作モードにおいて、複数の第1入力ポートの各々に入力される音響信号が第1特定出力ポートから出力される。したがって、第1音響処理装置と第2音響処理装置を利用した構成によれば、入力チャネルの総数を実質的に増加させることできるという効果は格別に顕著である。
【0066】
第1態様から第4態様の何れかの具体例(第5態様)において、前記第1特定出力ポートは、前記第2入力ポートと同種の出力ポートである。なお、第1特定出力ポートと第2入力ポートとについて「同種」とは、第1特定出力ポートと第2入力ポートとの間で伝送形式が共通することを意味する。例えば、第1特定出力ポートおよび第2入力ポートの双方が光伝送用のポートである。
【0067】
本開示のひとつの態様(第6態様)に係る音響処理システムは、第1音響処理装置と第2音響処理装置とを具備する音響処理システムであって、前記第1音響処理装置および前記第2音響処理装置の各々は、第1入力ポートと、第2入力ポートと、前記第1入力ポートに入力される音響信号を処理する第1処理部であって、当該音響信号の音響特性を調整する第1調整部を含む第1処理部と、前記第2入力ポートに入力される音響信号を処理する第2処理部と、第1特定出力ポートを含む複数の出力ポートとを具備し、第1動作モードにおいては、前記第1調整部が有効状態に設定され、前記第1処理部による処理後の音響信号と、前記第2処理部による処理後の音響信号との各々が、前記複数の出力ポートのうち選択された1以上の出力ポートから出力され、第2動作モードにおいては、前記第1調整部が無効状態に設定され、前記第1処理部による処理後の音響信号が、前記第1特定出力ポートから出力され、前記第1音響処理装置の前記第1特定出力ポートと前記第2音響処理装置の前記第2入力ポートとが接続され、前記第1音響処理装置は、前記第2動作モードに設定され、前記第2音響処理装置は、前記第1動作モードに設定される。
【符号の説明】
【0068】
100,100A,100B…音響処理装置、11…制御装置、12…記憶装置、13…操作装置、14…信号処理回路、15…接続ポート群、200…情報処理装置、21…制御装置、22…記憶装置、23…表示装置、24…操作装置、31_n(31_1~31_N)…第1処理部、311…変換部、312…調整部、32…第2処理部、321…変換部、322…調整部、33…ミキシング処理部、34…選択処理部、35_m(35_1~35_M)…D/A変換器、36…出力処理部、37…中継処理部、40,41,42…接続ケーブル、Xa_n(Xa_1~Xa_N)…入力ポート、Xb…入力ポート、Ya_m(Ya_1~Ya_M)…出力ポート、Yb…出力ポート(第1特定出力ポート)、Yc…出力ポート(第2特定出力ポート)、300…音響処理システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7