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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】コイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/12 20060101AFI20231219BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20231219BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20231219BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01F41/12 G
H01F27/32 140
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F37/00 A
H01F37/00 C
H01F37/00 J
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019180181
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057476
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高津 啓介
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235550(WO,A1)
【文献】特開2017-098326(JP,A)
【文献】特開2003-272922(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118508(WO,A1)
【文献】特開2011-009618(JP,A)
【文献】特開平02-032508(JP,A)
【文献】特開2016-103591(JP,A)
【文献】特開2019-080033(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0114619(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0123757(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/32、30/10
H01F 37/00、41/04、41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜で被覆された導線の巻回体であり、かつ、巻回軸方向において相対する第1の面及び第2の面を有するコイル導体を、金属磁性体粒子及び樹脂を含有する磁性体部に埋設し、前記コイル導体の一部が表面に露出した素体を作製する、素体作製工程と、
前記素体の表面に、前記コイル導体に接続された外部電極を形成する、外部電極形成工程と、を備え、
前記素体作製工程は、
前記コイル導体の前記第1の面と粘着シートとが接するように、前記コイル導体を前記粘着シートの表面に配置する工程と、
第1の磁性シートを前記コイル導体の前記第2の面側に重ねてプレス加工を行うことにより、前記コイル導体の一部を前記第1の磁性シートに埋設するとともに、前記コイル導体の前記第1の面において、前記導線の表面と、隣り合う前記導線の端部の隙間とのうちの少なくとも一方に、前記粘着シート中の粘着剤を転写して第1の樹脂部を設ける工程と、
前記コイル導体を前記粘着シートから剥離する工程と、
第2の磁性シートを前記コイル導体の前記第1の面側に重ねてプレス加工を行うことにより、前記コイル導体を、前記第1の磁性シート及び前記第2の磁性シートを含む前記磁性体部に埋設する工程と、を含む、ことを特徴とするコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル導体が磁性体部に埋設されたコイル部品が知られている。このようなコイル部品は、例えば、パワーインダクタ、トランス等として用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、内部コイル部が埋め込まれた磁性体本体と、磁性体本体の上部及び下部のうち少なくとも一つに配置された金属遮蔽シートと、を含み、金属遮蔽シートの透磁率が、金属磁性体粉末を含む磁性体本体の透磁率の100倍以上である、コイル電子部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-114775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のコイル電子部品では、内部コイル部が絶縁膜で被覆されているが、製造過程等で磁性体本体に外圧が加わると、磁性体本体中の金属磁性体粉末が、内部コイル部を被覆する絶縁膜を変形させたり突き破ったりするおそれがある。その結果、金属磁性体粉末を介して内部コイル部内での短絡が発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、磁性体部に外圧が加わってもコイル導体内での短絡が防止されたコイル部品を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記コイル部品の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコイル部品は、金属磁性体粒子及び樹脂を含有する磁性体部と上記磁性体部に埋設されたコイル導体とを有する素体と、上記素体の表面に設けられ、上記コイル導体に接続された外部電極と、を備え、上記コイル導体は、絶縁膜で被覆された導線の巻回体であり、かつ、巻回軸方向において相対する第1の面及び第2の面を有し、上記コイル導体の上記第1の面において、上記導線の表面と、隣り合う上記導線の端部の隙間とのうちの少なくとも一方に、第1の樹脂部が設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明のコイル部品の製造方法は、絶縁膜で被覆された導線の巻回体であり、かつ、巻回軸方向において相対する第1の面及び第2の面を有するコイル導体を、金属磁性体粒子及び樹脂を含有する磁性体部に埋設し、上記コイル導体の一部が表面に露出した素体を作製する、素体作製工程と、上記素体の表面に、上記コイル導体に接続された外部電極を形成する、外部電極形成工程と、を備え、上記素体作製工程では、上記コイル導体の上記第1の面を上記磁性体部に埋設する前に、上記コイル導体の上記第1の面において、上記導線の表面と、隣り合う上記導線の端部の隙間とのうちの少なくとも一方に、第1の樹脂部を設ける、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁性体部に外圧が加わってもコイル導体内での短絡が防止されたコイル部品を提供できる。また、本発明によれば、上記コイル部品の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のコイル部品の一例を示す透過斜視模式図である。
図2図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
図3図1中の線分A1-A2に対応する部分であって、図2とは異なる構成を示す断面模式図である。
図4図1中の線分A1-A2に対応する部分であって、図2及び図3とは異なる構成を示す断面模式図である。
図5】コイル導体作製工程の一例を説明するための斜視模式図である。
図6】磁性シート作製工程の一例を説明するための斜視模式図である。
図7】磁性シート作製工程の一例を説明するための斜視模式図である。
図8】素体作製工程の一例を説明するための斜視模式図である。
図9】素体作製工程の一例を説明するための斜視模式図である。
図10】素体作製工程の一例を説明するための斜視模式図である。
図11】素体作製工程の一例を説明するための斜視模式図である。
図12】素体作製工程の一例を説明するための斜視模式図である。
図13】素体作製工程の一例を説明するための斜視模式図である。
図14】外部電極形成工程の一例において用いられる、素体用の保持具を示す平面模式図である。
図15図14中の保持具の側面模式図である。
図16】外部電極形成工程の一例を説明するための側面模式図である。
図17】外部電極形成工程の一例を説明するための側面模式図である。
図18】外部電極形成工程の一例を説明するための側面模式図である。
図19】外部電極形成工程の一例を説明するための側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のコイル部品と本発明のコイル部品の製造方法とについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0012】
[コイル部品]
図1は、本発明のコイル部品の一例を示す透過斜視模式図である。図2は、図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
【0013】
図1に示すように、コイル部品1は、素体10と、第1の外部電極51と、第2の外部電極52と、を有している。
【0014】
素体10は、磁性体部20と、コイル導体30と、を有している。
【0015】
図2に示すように、磁性体部20は、金属磁性体粒子21及び樹脂22を含有している。より具体的には、磁性体部20は、金属磁性体粒子21が樹脂22中に分散されたものである。
【0016】
金属磁性体粒子21としては、例えば、α鉄、鉄-ケイ素合金、鉄-ケイ素-クロム合金、鉄-ケイ素-アルミニウム合金、鉄-ニッケル合金、鉄-コバルト合金等の鉄系軟磁性粒子が挙げられる。
【0017】
金属磁性体粒子21の形態としては、良好な軟磁性を有する非晶質が好ましいが、結晶質であってもよい。
【0018】
磁性体部20中の金属磁性体粒子21の含有量は、好ましくは75体積%以上である。磁性体部20中の金属磁性体粒子21の含有量が75体積%よりも少ない場合、磁性体部20において、透磁率、磁束飽和密度等の磁気特性が低下することがある。また、磁性体部20中の金属磁性体粒子21の含有量は、好ましくは90体積%以下である。磁性体部20中の金属磁性体粒子21の含有量が90体積%よりも多い場合、樹脂22の含有量が少なくなるため、磁性体部20の形成時に金属磁性体粒子21の流動性が低下し、磁性体部20における金属磁性体粒子21の充填密度が高まりにくくなる。その結果、磁性体部20において、透磁率、インダクタンス等が低下することがある。
【0019】
磁性体部20中の金属磁性体粒子21の含有量は、下記のようにして定められる。まず、素体10の断面を3箇所で露出させ、断面の全体が入る範囲に視野及び倍率を定めた状態で、各断面毎に1枚ずつ、計3枚撮像する。そして、得られた画像毎に、金属磁性体粒子21の占有領域と、樹脂22の占有領域と、コイル導体30の占有領域とを、走査型電子顕微鏡(SEM)、エネルギー分散型X線分析(EDX)等の組成マッピング分析装置を用いて同定する。そして、各画像で同定された各領域について、画像解析ソフト等を用いて二値化処理で面積を算出し、各領域の合計面積に対する金属磁性体粒子21の占有領域の面積の比率の平均値を求める。同様に、各領域の合計面積に対する樹脂22の占有領域の面積の比率の平均値と、各領域の合計面積に対するコイル導体30の占有領域の面積の比率の平均値とを求める。そして、各比率の3/2乗をとって合計したものを100体積%としたときの金属磁性体粒子21の体積比率を、磁性体部20中の金属磁性体粒子21の含有量と定める。なお、上述した二値化処理は、走査型電子顕微鏡の電子撮像の信号強度比、エネルギー分散型X線分析の同定元素の信号強度比を基に実行される。二値化の閾値については、信号強度比を横軸、信号強度比の頻度を縦軸とした分布をとり、二項分布が得られた場合には二項分布のピーク間の信号強度比を、単一分布が得られた場合には単一分布のピーク値の半分の値を、閾値とすることが望ましい。
【0020】
樹脂22としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0021】
磁性体部20は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。例えば、磁性体部20が図2中の点線で示した境界Lを有する2層構造である場合、磁性体部20の各層間で、金属磁性体粒子21及び樹脂22のうちの少なくとも一方の種類が互いに異なることになる。
【0022】
図1及び図2に示すように、コイル導体30は、磁性体部20に埋設されている。
【0023】
コイル導体30は、絶縁膜32で被覆された導線31の巻回体である。より具体的には、コイル導体30は、絶縁膜32で被覆された平角帯状の導線31がα巻きされた、空芯状のコイル導体である。
【0024】
コイル導体30の巻回状態としては、α巻き以外に、渦巻き等が挙げられる。
【0025】
導線31の形状としては、平角帯状以外に、丸線状、角線状等が挙げられる。
【0026】
導線31の材料としては、鉄よりも電気化学的に貴な材料が好ましく、例えば、銅等の金属が挙げられる。
【0027】
絶縁膜32の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂等の絶縁性樹脂が挙げられる。
【0028】
本明細書では、特に断らない限り、コイル導体30の構成上の説明を行う際に、導線31が絶縁膜32で被覆された状態を単に導線31と言う。
【0029】
コイル導体30は、巻回軸方向(図1及び図2では、上下方向)において相対する第1の面30A及び第2の面30Bと、巻回軸方向に平行な側面30Cとを有している。コイル導体30の第1の面30A、第2の面30B、及び、側面30Cは、各々、コイル導体30の最表面で定められる。
【0030】
コイル導体30では、図2に示すように、第1の面30A及び第2の面30Bを構成する導線31の角部及び表面において、絶縁膜32の厚みが小さくなりやすい。そのため、従来では、磁性体部20に外圧が加わると、絶縁膜32の厚みが小さくなりやすい導線31の角部及び表面において、磁性体部20中の金属磁性体粒子21が、絶縁膜32を変形させたり突き破ったりしやすい。これに対して、コイル部品1では、コイル導体30の第1の面30Aにおいて、導線31の表面と、隣り合う導線31の端部の隙間とのうちの少なくとも一方に、第1の樹脂部41が設けられている。第1の樹脂部41がこのように設けられていることにより、コイル導体30の第1の面30Aにおいて、絶縁膜32の厚みが小さくなりやすい導線31の角部及び表面の少なくとも一方が保護される。そのため、磁性体部20に外圧が加わっても、第1の樹脂部41で保護された導線31の角部及び表面の少なくとも一方において、磁性体部20中の金属磁性体粒子21が、絶縁膜32を変形させたり突き破ったりすることが防止される。その結果、磁性体部20に外圧が加わっても、コイル導体30内での短絡、ここでは、コイル導体30の第1の面30Aでの短絡が防止される。
【0031】
本明細書中、導線31の表面には、導線31を被覆する絶縁膜32の表面が含まれるが、後述する融着剤33が絶縁膜32の表面に設けられている場合には融着剤33の表面を含み得る。
【0032】
図2に示した素体10では、コイル導体30の第1の面30Aにおいて、隣り合う導線31の端部の隙間に第1の樹脂部41が設けられている。図2に示したコイル導体30では、第1の面30Aにおいて、隣り合う導線31の端部の隙間が複数存在するが、第1の樹脂部41は、図2に示すようにすべての隙間に設けられていることが好ましく、一部の隙間に設けられていてもよい。
【0033】
図3は、図1中の線分A1-A2に対応する部分であって、図2とは異なる構成を示す断面模式図である。図3に示した素体10では、コイル導体30の第1の面30Aにおいて、導線31の表面に第1の樹脂部41が設けられている。図3に示したコイル導体30では、第1の面30Aにおいて、導線31の表面が複数存在するが、第1の樹脂部41は、図3に示すようにすべての導線31の表面に設けられていることが好ましく、一部の導線31の表面に設けられていてもよい。
【0034】
図4は、図1中の線分A1-A2に対応する部分であって、図2及び図3とは異なる構成を示す断面模式図である。図4に示した素体10では、コイル導体30の第1の面30Aにおいて、導線31の表面と、隣り合う導線31の端部の隙間とに第1の樹脂部41が設けられている。図4に示したコイル導体30では、第1の面30Aにおいて、導線31の表面と、隣り合う導線31の端部の隙間とが各々複数存在するが、第1の樹脂部41は、図4に示すように、すべての導線31の表面とすべての隙間とに設けられている、つまり、コイル導体30の第1の面30Aの全体を覆っていることが好ましい。また、コイル導体30の第1の面30Aにおいて、第1の樹脂部41は、一部の導線31の表面とすべての隙間とに設けられていてもよいし、すべての導線31の表面と一部の隙間とに設けられていてもよいし、一部の導線31の表面と一部の隙間とに設けられていてもよい。
【0035】
第1の樹脂部41中の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0036】
磁性体部20中の樹脂22と第1の樹脂部41中の樹脂とは、種類が互いに異なることが好ましい。この場合、後述するようにコイル導体30を磁性体部20に埋設する際に行われるプレス加工としての熱プレス加工時に、樹脂22が流動する温度において、第1の樹脂部41中の樹脂の貯蔵弾性率は、磁性体部20中の樹脂22の貯蔵弾性率よりも高いことが好ましい。これにより、熱プレス加工時に磁性体部20に外圧が加わっても、コイル導体30内での短絡、ここでは、コイル導体30の第1の面30Aでの短絡が充分に防止される。磁性体部20が図2中の点線で示した境界Lを有する2層構造である場合、磁性体部20の各層中の樹脂22と第1の樹脂部41中の樹脂とは、種類が互いに異なっていてもよい。
【0037】
素体10を構成する各樹脂の種類については、図2図3、及び、図4に示すような素体10の断面を露出させた後、透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析(TEM-EDX)で元素分析を行うことによって確認できる。
【0038】
磁性体部20中の樹脂22と第1の樹脂部41中の樹脂とは、種類が互いに同じであってもよい。磁性体部20が図2中の点線で示した境界Lを有する2層構造である場合、磁性体部20の一方の層中の樹脂22と第1の樹脂部41中の樹脂とは、種類が互いに同じであってもよい。
【0039】
絶縁膜32と第1の樹脂部41中の樹脂とは、種類が互いに異なることが好ましい。
【0040】
図2図3、及び、図4に示すように、コイル導体30において、導線31は融着剤33を介して巻回されていることが好ましい。融着剤33は、隣り合う導線31の絶縁膜32の間に設けられており、導線31の巻回状態を保持するための接着剤として機能する。融着剤33は、コイル導体30の第1の面30A及び第2の面30Bにおいて、絶縁膜32の表面に設けられていてもよい。
【0041】
融着剤33と第1の樹脂部41中の樹脂とは、種類が互いに異なることが好ましい。この場合、後述するようにコイル導体30を磁性体部20に埋設する際に行われるプレス加工としての熱プレス加工時に、樹脂22が流動する温度において、第1の樹脂部41中の樹脂の貯蔵弾性率は、融着剤33の貯蔵弾性率よりも高いことが好ましい。これにより、熱プレス加工時に磁性体部20に外圧が加わっても、コイル導体30内での短絡、ここでは、コイル導体30の第1の面30Aでの短絡が充分に防止される。
【0042】
融着剤33の材料としては、例えば、ポリアミド樹脂等を主剤とする熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0043】
コイル導体30の第2の面30Bにおいて、導線31の表面と、隣り合う導線31の端部の隙間とのうちの少なくとも一方に、第2の樹脂部42が設けられていることが好ましい。第2の樹脂部42がこのように設けられていることにより、コイル導体30の第2の面30Bにおいて、絶縁膜32の厚みが小さくなりやすい導線31の角部及び表面の少なくとも一方が保護される。そのため、磁性体部20に外圧が加わっても、第2の樹脂部42で保護された導線31の角部及び表面の少なくとも一方において、磁性体部20中の金属磁性体粒子21が、絶縁膜32を変形させたり突き破ったりすることが防止される。その結果、磁性体部20に外圧が加わっても、コイル導体30内での短絡、ここでは、コイル導体30の第2の面30Bでの短絡が防止される。
【0044】
図2に示した素体10では、コイル導体30の第2の面30Bにおいて、隣り合う導線31の端部の隙間に第2の樹脂部42が設けられている。図2に示したコイル導体30では、第2の面30Bにおいて、隣り合う導線31の端部の隙間が複数存在するが、第2の樹脂部42は、図2に示すようにすべての隙間に設けられていることが好ましく、一部の隙間に設けられていてもよい。
【0045】
図3に示した素体10では、コイル導体30の第2の面30Bにおいて、導線31の表面に第2の樹脂部42が設けられている。図3に示したコイル導体30では、第2の面30Bにおいて、導線31の表面が複数存在するが、第2の樹脂部42は、図3に示すようにすべての導線31の表面に設けられていることが好ましく、一部の導線31の表面に設けられていてもよい。
【0046】
図4に示した素体10では、コイル導体30の第2の面30Bにおいて、導線31の表面と、隣り合う導線31の端部の隙間とに第2の樹脂部42が設けられている。図4に示したコイル導体30では、第2の面30Bにおいて、導線31の表面と、隣り合う導線31の端部の隙間とが各々複数存在するが、第2の樹脂部42は、図4に示すように、すべての導線31の表面とすべての隙間とに設けられている、つまり、コイル導体30の第2の面30Bの全体を覆っていることが好ましい。また、コイル導体30の第2の面30Bにおいて、第2の樹脂部42は、一部の導線31の表面とすべての隙間とに設けられていてもよいし、すべての導線31の表面と一部の隙間とに設けられていてもよいし、一部の導線31の表面と一部の隙間とに設けられていてもよい。
【0047】
第2の樹脂部42中の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0048】
磁性体部20中の樹脂22と第2の樹脂部42中の樹脂とは、種類が互いに異なることが好ましい。この場合、後述するようにコイル導体30を磁性体部20に埋設する際に行われるプレス加工としての熱プレス加工時に、樹脂22が流動する温度において、第2の樹脂部42中の樹脂の貯蔵弾性率は、磁性体部20中の樹脂22の貯蔵弾性率よりも高いことが好ましい。これにより、熱プレス加工時に磁性体部20に外圧が加わっても、コイル導体30内での短絡、ここでは、コイル導体30の第2の面30Bでの短絡が充分に防止される。磁性体部20が図2中の点線で示した境界Lを有する2層構造である場合、磁性体部20の各層中の樹脂22と第2の樹脂部42中の樹脂とは、種類が互いに異なっていてもよい。
【0049】
磁性体部20中の樹脂22と第2の樹脂部42中の樹脂とは、種類が互いに同じであってもよい。磁性体部20が図2中の点線で示した境界Lを有する2層構造である場合、磁性体部20の一方の層中の樹脂22と第2の樹脂部42中の樹脂とは、種類が互いに同じであってもよい。
【0050】
絶縁膜32と第2の樹脂部42中の樹脂とは、種類が互いに異なることが好ましい。
【0051】
融着剤33と第2の樹脂部42中の樹脂とは、種類が互いに異なることが好ましい。この場合、後述するようにコイル導体30を磁性体部20に埋設する際に行われるプレス加工としての熱プレス加工時に、樹脂22が流動する温度において、第2の樹脂部42中の樹脂の貯蔵弾性率は、融着剤33の貯蔵弾性率よりも高いことが好ましい。これにより、熱プレス加工時に磁性体部20に外圧が加わっても、コイル導体30内での短絡、ここでは、コイル導体30の第2の面30Bでの短絡が充分に防止される。
【0052】
第1の樹脂部41中の樹脂と第2の樹脂部42中の樹脂とは、種類が互いに異なっていてもよいし、種類が互いに同じであってもよい。
【0053】
図2図3、及び、図4に示した素体10では、コイル導体30の第1の面30Aに第1の樹脂部41が設けられ、かつ、コイル導体30の第2の面30Bに第2の樹脂部42が設けられているが、コイル導体30の第1の面30Aに第1の樹脂部41が設けられ、かつ、コイル導体30の第2の面30Bに第2の樹脂部42が設けられていなくてもよい。
【0054】
コイル導体30の側面30Cには、第1の樹脂部41及び第2の樹脂部42のような樹脂部が設けられていないことが好ましい。第1の樹脂部41及び第2の樹脂部42のような樹脂部がコイル導体30の側面30Cに設けられていると、磁性体部20において、透磁率、磁束飽和密度等の磁気特性が低下することがある。
【0055】
コイル導体30の巻回軸方向から見たとき、コイル導体30の第1の面30Aと第2の面30Bとの間の中央に位置し、かつ、第1の面30A及び第2の面30Bの各々と相対する面内には、第1の樹脂部41及び第2の樹脂部42のような樹脂部が設けられていないことが好ましい。
【0056】
第1の外部電極51は、素体10の表面に設けられ、コイル導体30に接続されている。より具体的には、第1の外部電極51は、素体10の一方の端面とその端面に隣り合う4面の各一部とに延在して設けられている。また、第1の外部電極51は、素体10の一方の端面に露出した、コイル導体30の一方の端部30Pに接続されている。より具体的には、コイル導体30の一方の端部30Pでは導線31が露出しており、その導線31の露出部分と第1の外部電極51とが接続されている。
【0057】
第1の外部電極51の材料としては、例えば、銅、ニッケル、スズ等の金属が挙げられる。
【0058】
第1の外部電極51は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。第1の外部電極51が多層構造である場合、第1の外部電極51は、例えば、素体10の表面側から順に、銅を主成分とする第1のめっき被膜と、ニッケルを主成分とする第2のめっき被膜と、スズを主成分とする第3のめっき被膜とを有していてもよい。
【0059】
第2の外部電極52は、素体10の表面に設けられ、コイル導体30に接続されている。より具体的には、第2の外部電極52は、素体10の他方の端面とその端面に隣り合う4面の各一部とに延在して設けられている。また、第2の外部電極52は、素体10の他方の端面に露出した、コイル導体30の他方の端部30Qに接続されている。より具体的には、コイル導体30の他方の端部30Qでは導線31が露出しており、その導線31の露出部分と第2の外部電極52とが接続されている。
【0060】
第2の外部電極52の材料としては、例えば、銅、ニッケル、スズ等の金属が挙げられる。
【0061】
第2の外部電極52は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。第2の外部電極52が多層構造である場合、第2の外部電極52は、例えば、素体10の表面側から順に、銅を主成分とする第1のめっき被膜と、ニッケルを主成分とする第2のめっき被膜と、スズを主成分とする第3のめっき被膜とを有していてもよい。
【0062】
第1の外部電極51と第2の外部電極52とは、材料の種類が互いに異なっていてもよいが、材料の種類が互いに同じであることが好ましい。
【0063】
[コイル部品の製造方法]
本発明のコイル部品は、例えば、以下の方法で製造される。
【0064】
<コイル導体作製工程>
図5は、コイル導体作製工程の一例を説明するための斜視模式図である。
【0065】
図5に示すように、絶縁膜32で被覆された平角帯状の導線31をα巻きする。これにより、絶縁膜32で被覆された導線31の巻回体であり、空芯状の、いわゆるα巻きのコイル導体30を作製する。コイル導体30を作製する際には、導線31を融着剤を介して巻回してもよい。
【0066】
コイル導体30は、巻回軸方向(図5では、上下方向)において相対する第1の面30A及び第2の面30Bと、巻回軸方向に平行な側面30Cとを有している。
【0067】
コイル導体30の一方の端部30P及び他方の端部30Qは、側面30Cから逆向きに突出するように設けられている。コイル導体30の一方の端部30P及び他方の端部30Qでは、導線31が露出している。
【0068】
<磁性シート作製工程>
図6及び図7は、磁性シート作製工程の一例を説明するための斜視模式図である。
【0069】
まず、金属磁性体粒子及び樹脂を湿式で混合し、スラリーを調製する。そして、得られたスラリーを、ドクターブレード法等で成形加工した後、乾燥させる。これにより、図6に示すような、第1の金属磁性体粒子21Aが第1の樹脂22A中に分散された、第1の磁性シート23Aを作製する。同様に、図7に示すような、第2の金属磁性体粒子21Bが第2の樹脂22B中に分散された、第2の磁性シート23Bを作製する。
【0070】
第1の磁性シート23A及び第2の磁性シート23Bの厚みは、各々、例えば、100μm以上、300μm以下である。
【0071】
第1の金属磁性体粒子21Aとしては、平均粒径D50が異なる複数種類の金属磁性体粒子を組み合わせて用いてもよい。これにより、後述する磁性体部20における第1の金属磁性体粒子21Aの充填効率が向上しやすくなり、結果的に、高いインダクタンスが得られやすくなる。このような金属磁性体粒子の組み合わせとしては、例えば、平均粒径D50の小さい方が1μm以上、20μm以下であり、平均粒径D50の大きい方が10μm以上、40μm以下である金属磁性体粒子の組み合わせ等が挙げられる。
【0072】
第2の金属磁性体粒子21Bとしては、平均粒径D50が異なる複数種類の金属磁性体粒子を組み合わせて用いてもよい。これにより、後述する磁性体部20における第2の金属磁性体粒子21Bの充填効率が向上しやすくなり、結果的に、高いインダクタンスが得られやすくなる。このような金属磁性体粒子の組み合わせとしては、例えば、平均粒径D50の小さい方が1μm以上、20μm以下であり、平均粒径D50の大きい方が10μm以上、40μm以下である金属磁性体粒子の組み合わせ等が挙げられる。
【0073】
金属磁性体粒子の平均粒径D50は、レーザー回折・散乱法で金属磁性体粒子の粒子径分布を測定し、それを粒子径スケールに対する積算%で表したものにおいて、積算値が50%となる粒径として定められる。
【0074】
第1の磁性シート23A中の第1の金属磁性体粒子21Aの含有量は、好ましくは96重量%以上である。第1の磁性シート23A中の第1の金属磁性体粒子21Aの含有量が96重量%よりも少ない場合、後述する磁性体部20において、透磁率、磁束飽和密度等の磁気特性が低下することがある。また、第1の磁性シート23A中の第1の金属磁性体粒子21Aの含有量は、好ましくは98重量%以下である。第1の磁性シート23A中の第1の金属磁性体粒子21Aの含有量が98重量%よりも多い場合、第1の樹脂22Aの含有量が少なくなるため、後述する磁性体部20の形成時に第1の金属磁性体粒子21Aの流動性が低下し、後述する磁性体部20における第1の金属磁性体粒子21Aの充填密度が高まりにくくなる。その結果、後述する磁性体部20において、透磁率、インダクタンス等が低下することがある。
【0075】
同様に、第2の磁性シート23B中の第2の金属磁性体粒子21Bの含有量は、好ましくは96重量%以上である。また、第2の磁性シート23B中の第2の金属磁性体粒子21Bの含有量は、好ましくは98重量%以下である。
【0076】
第1の金属磁性体粒子21Aと第2の金属磁性体粒子21Bとは、種類が互いに異なっていてもよいし、種類が互いに同じであってもよい。
【0077】
第1の樹脂22Aと第2の樹脂22Bとは、種類が互いに異なっていてもよいし、種類が互いに同じであってもよい。
【0078】
<素体作製工程>
図8図9図10図11図12、及び、図13は、素体作製工程の一例を説明するための斜視模式図である。
【0079】
まず、図8に示すように、粘着シート70を定盤60に貼り付ける。
【0080】
定盤60の材料としては、金属、ガラス等が挙げられる。
【0081】
粘着シート70中の粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤等が挙げられる。
【0082】
次に、図9に示すように、コイル導体30の第1の面30Aと粘着シート70とが接するように、コイル導体30を粘着シート70の表面に複数配置する。
【0083】
この際、コイル導体30の第2の面30Bにおいて、導線31の表面と、隣り合う導線31の端部の隙間とのうちの少なくとも一方に樹脂を塗布してもよい。これにより、コイル導体30の第2の面30Bを、後述するように磁性体部20、より具体的には第1の磁性シート23Aに埋設する前に、図2図3、及び、図4で例示した形態の第2の樹脂部42を設けることができる。
【0084】
次に、図10に示すように、第1の磁性シート23Aをコイル導体30の第2の面30B側に重ねてプレス加工を行う。これにより、コイル導体30の一部、ここでは、コイル導体30の第2の面30Bを含む部分が第1の磁性シート23Aに埋設された加工体80を作製する。加工体80を作製する際、コイル導体30を第1の面30Aのみが第1の磁性シート23Aから露出するように埋設してもよい。
【0085】
ここで、加工体80を作製する際には、コイル導体30の第1の面30Aにおいて、導線31の表面と、隣り合う導線31の端部の隙間とのうちの少なくとも一方に粘着シート70中の粘着剤が転写される。よって、コイル導体30の第1の面30Aを、後述するように磁性体部20、より具体的には第2の磁性シート23Bに埋設する前に、図2図3、及び、図4で例示した形態の第1の樹脂部41を設けることができる。
【0086】
加工体80を作製する際には、上述したプレス加工として熱プレス加工を行ってもよい。これにより、第1の磁性シート23Aをある程度硬化させつつ加工体80を作製できる。熱プレス加工時の温度は、第1の磁性シート23A中の第1の樹脂22Aが流動する温度であることが好ましい。例えば、第1の樹脂22Aがエポキシ樹脂である場合、熱プレス加工時の温度は、好ましくは100℃以上である。
【0087】
加工体80を作製する際には、上述したプレス加工としてプレス成形を行ってもよい。つまり、加工体80を作製する際には、上述した熱プレス加工として熱プレス成形を行ってもよい。
【0088】
次に、加工体80を粘着シート70から剥離し、図11に示すように反転させる。
【0089】
次に、図12に示すように、第2の磁性シート23Bをコイル導体30の第1の面30A側に重ねてプレス加工を行う。これにより、コイル導体30の第1の磁性シート23Aに埋設されていない部分、ここでは、コイル導体30の第1の面30Aを含む部分を第2の磁性シート23Bに埋設する。その結果、コイル導体30の全体が第1の磁性シート23A及び第2の磁性シート23Bの積層体である磁性体部20に埋設された集合基体90を作製する。
【0090】
以上のように作製された集合基体90において、磁性体部20は、第1の磁性シート23Aに由来する第1の金属磁性体粒子21Aと、第2の磁性シート23Bに由来する第2の金属磁性体粒子21Bとを含有することになるが、これらの金属磁性体粒子は、図2図3、及び、図4に示した磁性体部20中の金属磁性体粒子21と特に区別されない。また、磁性体部20は、第1の磁性シート23Aに由来する第1の樹脂22Aと、第2の磁性シート23Bに由来する第2の樹脂22Bとを含有することになるが、これらの樹脂は、図2図3、及び、図4に示した磁性体部20中の樹脂22と特に区別されない。
【0091】
集合基体90を作製する際には、上述したプレス加工として熱プレス加工を行ってもよい。これにより、第2の磁性シート23Bをある程度硬化させつつ集合基体90を作製できる。熱プレス加工時の温度は、第2の磁性シート23B中の第2の樹脂22Bが流動する温度であることが好ましい。例えば、第2の樹脂22Bがエポキシ樹脂である場合、熱プレス加工時の温度は、好ましくは100℃以上である。
【0092】
集合基体90を作製する際には、上述したプレス加工としてプレス成形を行ってもよい。つまり、集合基体90を作製する際には、上述した熱プレス加工として熱プレス成形を行ってもよい。
【0093】
その後、集合基体90を、ダイサー等の切断具を用いて個片化する。これにより、図13に示すような、コイル導体30の一部が表面に露出した、ここでは、コイル導体30の一方の端部30Pが一方の端面に露出し、かつ、コイル導体30の他方の端部30Qが他方の端面に露出した素体10を作製する。
【0094】
<外部電極形成工程>
図14は、外部電極形成工程の一例において用いられる、素体用の保持具を示す平面模式図である。図15は、図14中の保持具の側面模式図である。図16図17図18、及び、図19は、外部電極形成工程の一例を説明するための側面模式図である。
【0095】
まず、図14及び図15に示すような、素体10を保持可能な複数の穴101が設けられた保持具100を準備する。
【0096】
次に、素体10を水中又は大気中でバレル研磨して面取り加工を行う。その後、素体10を洗浄する。
【0097】
次に、図16に示すように、素体10の一方の端部10Aが保持具100から突出するように、素体10を保持具100の穴101に保持させる。その後、素体10が保持された状態の保持具100を導電化溶液に浸漬することにより、図17に示すように、素体10の一方の端部10Aに第1の導電層53Aを形成する。ここで、素体10の一方の端部10Aの表面にはコイル導体30の一方の端部30Pが露出しているため、コイル導体30の一方の端部30Pは第1の導電層53Aに接続される。
【0098】
次に、素体10を保持具100から取り出し、図18に示すように、素体10の他方の端部10Bが保持具100から突出するように、素体10を保持具100の穴101に保持させる。その後、素体10が保持された状態の保持具100を導電化溶液に浸漬することにより、図19に示すように、素体10の他方の端部10Bに第2の導電層53Bを形成する。ここで、素体10の他方の端部10Bの表面にはコイル導体30の他方の端部30Qが露出しているため、コイル導体30の他方の端部30Qは第2の導電層53Bに接続される。
【0099】
導電化溶液に含有される導電性材料としては、後述する電解めっきでめっき被膜を形成可能なものであれば特に限定されず、例えば、パラジウム、スズ、銀、これらの合金等が挙げられる。
【0100】
次に、素体10を保持具100から取り出した後、素体10に電解めっきを施し、第1の導電層53A及び第2の導電層53Bの各表面に、例えば、第1のめっき被膜、第2のめっき被膜、及び、第3のめっき被膜を順に積層する。これにより、図1に示すような、コイル導体30の一方の端部30Pに接続された第1の外部電極51と、コイル導体30の他方の端部30Qに接続された第2の外部電極52と、を素体10の表面に形成する。
【0101】
以上により、本発明のコイル部品が製造される。
【0102】
上述した製造方法の変形例として、素体作製工程において、粘着シート70を用いず、凹部が設けられた金型を定盤60の代わりに用いてもよい。より具体的には、図9に対応する工程として、コイル導体30の第1の面30Aと金型とが接するように、コイル導体30を金型の凹部に複数配置してもよい。この場合、図11に対応する工程で、コイル導体30の第1の面30Aにおいて、導線31の表面と、隣り合う導線31の端部の隙間とのうちの少なくとも一方に樹脂を塗布することにより、第1の樹脂部41を設けることができる。
【符号の説明】
【0103】
1 コイル部品
10 素体
10A 素体の一方の端部
10B 素体の他方の端部
20 磁性体部
21 金属磁性体粒子
21A 第1の金属磁性体粒子
21B 第2の金属磁性体粒子
22 樹脂
22A 第1の樹脂
22B 第2の樹脂
23A 第1の磁性シート
23B 第2の磁性シート
30 コイル導体
30A コイル導体の第1の面
30B コイル導体の第2の面
30C コイル導体の側面
30P コイル導体の一方の端部
30Q コイル導体の他方の端部
31 導線
32 絶縁膜
33 融着剤
41 第1の樹脂部
42 第2の樹脂部
51 第1の外部電極
52 第2の外部電極
53A 第1の導電層
53B 第2の導電層
60 定盤
70 粘着シート
80 加工体
90 集合基体
100 保持具
101 保持具の穴
L 境界
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19