(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱用包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20231219BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231219BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B32B27/00 C
B32B27/34
(21)【出願番号】P 2019185472
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】松永 史絵
(72)【発明者】
【氏名】本郷 勝弘
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037291(JP,A)
【文献】特開2004-189300(JP,A)
【文献】特開2019-142573(JP,A)
【文献】特開2012-071847(JP,A)
【文献】特開2002-249176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B32B 27/00
B32B 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層、ポリアミド樹脂から成る中間層、及びヒートシール性内層を少なくとも含む積層フィルムから成り、該積層フィルムを内層同士が対面するように重ね合わせ周縁をシールして周縁シール部と内容物収納部とを形成した電子レンジ加熱用包装袋において、
前記包装袋を電子レンジ加熱する際に、少なくとも内容物とヘッドスペースとの界面が包装袋と接触する箇所において、前記中間層
の内層側の界面が非接着状態にあ
り、
蒸気抜き機構及び蒸気抜きシール部が形成されており、
前記蒸気抜きシール部及び該蒸気抜きシール部の周縁においては、前記積層フィルムを構成する全ての層の間が接着状態にあることを特徴とする電子レンジ加熱用包装袋。
【請求項2】
前記非接着状態が、前記周縁シール部内にも形成されている請求項1記載の電子レンジ加熱用包装袋。
【請求項3】
前記非接着状態が
、前記周縁シール部の内側端縁よりも内側に形成されている請求項1記載の電子レンジ加熱用包装袋。
【請求項4】
前記包装袋が、前記積層フィルムから成る表裏フィルム、及び底フィルムから成るスタンディング型の包装袋であり、前記非接着状態が、前記表裏フィルムの底フィルムの上端縁に対応する位置を含む箇所に形成されている請求項1~
3の何れかに記載の電子レンジ加熱用包装袋。
【請求項5】
前記包装袋が、前記積層フィルムから成る表裏フィルムから成る平包装袋であり、前記非接着状態が、前記裏フィルムの前記包装袋の高さ方向の長さの1/2の位置よりも上方且つ開封予定線よりも下方の位置を含む箇所に形成されている請求項1~
3の何れかに記載の電子レンジ加熱用包装袋。
【請求項6】
前記包装袋が、前記積層フィルムから成る表裏フィルムから成り、該表フィルムに折り畳み部または該表フィルムを向かい合わせた合掌部が形成された包装袋であり、前記非接着状態が、少なくとも前記表裏フィルムのボトムシール側及びトップシール側の2か所にそれぞれ形成されている請求項1~
3の何れかに記載の電子レンジ加熱用包装袋。
【請求項7】
前記包装袋が、前記積層フィルムから成る表裏フィルムから成り、前記裏フィルムに折り返し部が形成された包装袋であり、前記非接着状態が、少なくとも前記裏フィルムの折り返し部よりトップシール側に形成されている請求項1~
3の何れかに記載の電子レンジ加熱用包装袋。
【請求項8】
前記外層が、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートから成る請求項1~
7の何れかに記載の電子レンジ加熱用包装袋。
【請求項9】
前記積層フィルムが、バリア性層を有する請求項1~
8の何れかに記載の電子レンジ加熱用包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子レンジ加熱用包装袋に関するものであり、より詳細には、電子レンジ加熱による熱損傷が有効に防止された電子レンジ加熱用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋に充填・密封された食品等の内容物を包装袋から取り出すことなく、包装袋のまま加熱して内容物を温めることが可能な電子レンジ加熱用包装袋が、従来より種々提案されている。
このような電子レンジ加熱用包装袋は、積層フィルムを重ね合わせ周縁を熱融着することにより成形されるが、包装袋(パウチ)を構成する積層フィルムは、電子レンジ加熱に耐え得る耐熱性が必要であることから、耐熱性に優れたポリエステル系フィルムから成る層を有する積層フィルムを用いた電子レンジ加熱用包装袋が提案されている(特許文献1及び2等)。
しかしながら、ポリエステル系フィルムは一般に機械的強度に劣るため、落下衝撃に際して破袋を生じるおそれがあることから、機械的強度に優れたポリアミド樹脂から成る層を有する積層フィルムを用いることも提案されている(特許文献3)。
【0003】
その一方、電子レンジ加熱用包装袋においては、包装袋は未開封の状態で電子レンジ加熱が行われるため、包装袋の内圧の上昇による影響や、内容物からの熱の影響を受けて、包装袋に損傷を生じることがあり、特に吸湿性の高いポリアミド樹脂から成る層を有する積層フィルムを用いた場合には、電子レンジの出力や加熱時間、或いは内容品の種類等によっては、容器に穴が開く等の損傷を生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-249176号公報
【文献】国際公開2018/55989
【文献】特開2015-224062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸湿性を有する樹脂から成る層を有する積層フィルムを用いた包装袋の上記問題を解決するために、本発明者等は、吸湿性を有する樹脂から成る層を中間層とした場合でも、中間層と隣接する層の少なくとも一方の界面を非接着状態にすることにより、容器の損傷が防止できることを見出した(特願2018-74892)。
しかしながら、かかる非接着状態の領域が広くなると、包装袋を構成する積層フィルムの層構成や包装袋の形態等によっては、包装袋の機械的強度が低下したり、或いはシワやクラックの発生等により外観特性が低下する場合があった。
従って本発明の目的は、落下強度に優れたポリアミド樹脂から成る層を有する積層フィルムから成り、穴あき等の損傷が有効に防止されていると共に、機械的強度及び外観特性に優れた電子レンジ加熱用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、外層、ポリアミド樹脂から成る中間層、及びヒートシール性内層を少なくとも含む積層フィルムから成り、該積層フィルムを内層同士が対面するように重ね合わせ周縁をシールして内容物収納部を形成した電子レンジ加熱用包装袋において、前記包装袋を電子レンジ加熱する際に、少なくとも内容物とヘッドスペースとの界面が包装袋と接触する箇所において、前記中間層の内層側の界面が非接着状態にあり、蒸気抜き機構及び蒸気抜きシール部が形成されており、前記蒸気抜きシール部及び該蒸気抜きシール部の周縁においては、前記積層フィルムを構成する全ての層の間が接着状態にあることを特徴とする電子レンジ加熱用包装袋が提供される。
【0007】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋においては、
1.前記非接着状態が、前記周縁シール部内にも形成されていること、
2.前記非接着状態が、前記周縁シール部の内側端縁よりも内側に形成されていること、
3.前記包装袋が、前記積層フィルムから成る表裏フィルム、及び底フィルムから成るスタンディング型の包装袋であり、前記非接着状態が、前記表裏フィルムの底フィルムの上端縁に対応する位置を含む箇所に形成されていること、
4.前記包装袋が、前記積層フィルムから成る表裏フィルムから成る平包装袋であり、前記非接着状態が、前記裏フィルムの前記包装袋の高さ方向の長さの1/2の位置よりも上方且つ開封予定線よりも下方の位置を含む箇所に形成されていること、
5.前記包装袋が、前記積層フィルムから成る表裏フィルムから成り、該表フィルムに折り畳み部または該表フィルムを向かい合わせた合掌部が形成された包装袋であり、前記非接着状態が、少なくとも前記表裏フィルムのボトムシール側及びトップシール側の2か所にそれぞれ形成されていること、
6.前記包装袋が、前記積層フィルムから成る表裏フィルムから成り、前記裏フィルムに折り返し部が形成された包装袋であり、前記非接着状態が、少なくとも前記裏フィルムの折り返し部よりトップシール側に形成されていること、
7.前記外層が、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートから成ること、
8.前記積層フィルムが、バリア性層を有すること、
が好適である。
【発明の効果】
【0008】
吸湿性を有するポリアミド樹脂から成る中間層を有する積層フィルムから成る電子レンジ加熱用包装袋においては、内容品からの水分や、レトルト殺菌やボイル殺菌等による水分をポリアミド樹脂が吸湿した状態でマイクロ波加熱されることにより水分が水蒸気となって体積膨張し、中間層から外に出ようとして包装袋の損傷が発生する。
本発明においては、ポリアミド樹脂から成る中間層を有する場合でも、電子レンジ加熱を行う際に、少なくとも前記内容物収納部内における内容物とヘッドスペースとの界面が包装袋と接触する箇所において、ポリアミド樹脂から成る中間層と隣接する層との少なくとも一方の界面が非接着状態にあることにより、上述した損傷が有効に防止される。すなわち、ポリアミド樹脂から成る中間層と非接着状態にある隣接する層の間に形成される空間に、上述した水蒸気が留まることができるため、包装袋に発泡が発生したり、この発泡がはじけて穴が開く等の損傷を有効に防止することができる。
【0009】
その一方、ポリアミド樹脂から成る層は、機械的強度に優れるものであることから、隣接する層がポリアミド樹脂から成る層と接着状態にあれば積層フィルム全体の機械的強度が向上するが、隣接する層が非接着状態の場合には、隣接する層の単層の機械的強度となり、落下衝撃等を受けた場合に、単層の部分にクラック等の損傷を生ずるおそれがある。また非接着状態が積層フィルムに広域にわたって形成されていると、層間剥離やクラックの伝播等が目立ちやすく、外観特性も低下する。
本発明においては、ポリアミド樹脂から成る中間層と隣接する層との非接着状態を、内容物とヘッドスペースとの界面が包装袋と接触する箇所を含む必要最小限の領域で形成することにより、前述した包装袋の損傷を有効に防止しながら、非接着状態が広域で形成されている場合に比して、包装袋の機械的強度及び外観特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の電子レンジ加熱用包装袋の一例を示す図である。
【
図2】本発明の電子レンジ加熱用包装袋の他の一例を示す図である。
【
図3】
図2に示した包装袋の電子レンジ加熱時の状態を説明するための図である。
【
図4】本発明の電子レンジ加熱用包装袋の他の一例を示す図である。
【
図5】
図4に示した包装袋の電子レンジ加熱時の状態を説明するための図である。
【
図6】本発明の電子レンジ加熱用包装袋の他の一例を示す図である。
【
図7】
図6に示した包装袋の電子レンジ加熱時の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、外層、ポリアミド樹脂から成る中間層(以下、「ポリアミド中間層」ということがある)、及びヒートシール性内層を少なくとも含む積層フィルムから成り、該積層フィルムを内層同士が対面するように重ね合わせ周縁をシールして内容物収納部を形成した電子レンジ加熱用包装袋において、前記包装袋を電子レンジ加熱する際に、少なくとも内容物とヘッドスペースとの界面(以下、「内容物界面」ということがある)が包装袋と接触する箇所において、前記中間層と隣接する層との少なくとも一方の界面が非接着状態にあることが重要な特徴である。
包装袋を電子レンジ加熱する際に、内容物とヘッドスペースとの界面が包装袋と接触する箇所は、包装袋の形態や内容物の量によって異なり、非接着状態が、包装袋を構成する積層フィルムの全領域に形成されていれば、包装袋の形態等にかかわらず内容物界面は非接着状態にある箇所(以下、「非接着領域」ということがある)と接触し、積層フィルムの損傷を防止することが可能であるが、前述したとおり、非接着領域が広範囲に形成されていると、機械的強度や外観特性の低下のおそれがあることから、後述するように包装袋の形態に応じた必要最小限の範囲で非接着領域を形成することが好ましい。
【0012】
また積層フィルムの層構成(非接着状態を形成する層間位置)によって包装袋に生じやすい損傷個所が異なると共に、蒸気抜き機構の有無によって包装袋にかかる内圧も異なり、外層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合、または蒸気抜き機構が形成されておらず且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合においては、シール部内にも非接着領域が形成されていることが好ましい。
すなわち、外層とポリアミド中間層の間に非接着状態が存在する場合には、積層フィルムの損傷はシール強度を担保する内層側に生じやすく、具体的には、内層側に損傷や穴あきが生じた場合でも外層側は損傷が生じ難いため、外層とポリアミド中間層との間の非接着部に内容物が留まり、包装袋の外への漏洩を防ぐことができる。また蒸気抜き機構が形成されていない場合には、包装袋の一部を予め開封して電子レンジ加熱を行うため、周縁シール部には強い内圧がかからず、後述する内層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合のような破袋は生じない。これらのことから、外層とポリアミド中間層の間に非接着状態が存在する場合、または、蒸気抜き機構が形成されておらず且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合においては、包装袋の外への内容物の漏洩が生じにくい。このため、これら層構成の場合の非接着領域としては、包装袋の生産時に周縁シール部のシール位置にずれが生じた場合であっても、非接着領域の範囲内に内容物界面の全てが収まる範囲とした、周縁シール部内にも非接着状態があることが望ましい。
その一方、内層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合は、積層フィルムの損傷は外層側に生じやすく、内層は穴あきなどの損傷は生じ難い。ただし、内圧の上昇により蒸気抜きシール部の剥離を促して蒸気抜き部から内圧を放出する蒸気抜き機構が形成されている場合には、内層のみが伸び易い状態となっているため、内圧の上昇により周縁シール部の内容物収容部側の端縁も内層が伸ばされる状態となる。すなわち、蒸気抜き機構が形成されており且つ内層とポリアミド中間層との間に非接着状態がある場合においては、周縁シール部端縁からの破袋が生じるおそれがあるため、非接着領域をシール部内に形成しないと共に、シール部の内側端縁にも接触していないことが望ましい。
【0013】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋は、後述する積層フィルムのヒートシール性内層同士が向き合うように重ね合わせて、周縁をシールすることにより成形されてなるものであり、上述したように、包装体の形態及び積層フィルムの層構成によって、非接着領域を形成すべき位置が異なる。以下に、包装袋の代表的な形態に対応した非接着領域について説明する。
【0014】
(自立型の包装袋)
図1は、本発明の電子レンジ加熱用包装袋の一形態である自立型の包装袋(スタンディングパウチ)について説明するための平面図である。
この包装袋10は、積層フィルム1(1a,1b)と、この積層フィルム1a,1bをヒートシール性内層が内側になるように重ね合わせ、間に底フィルム2を設置し、積層フィルム1a、1bの両サイド(側部端縁)及び上端縁、積層フィルム1a,1bと底フィルム2、とをヒートシールすることにより形成されており、これにより、包装袋10の4辺が、ボトムシール11、サイドシール12a,12b、及びトップシール13により密封されて(周縁シール部)、収納部14が形成されている。また上部には、開封のための切込み15(15a,15b)が形成され、この切込み15aと15bを繋いだ線を、本発明においては開封予定線16と規定する。
図1に示す態様においては、包装袋10の上部右側のコーナー位置に蒸気抜き機構17が形成されている。蒸気抜き機構17は、
図1(B)から明らかなように、内圧が上昇した時に、重なり合う積層多層フィルム1a,1bが剥離可能な溶着強度で溶着されている蒸気抜きシール部20、この蒸気抜きシール部20の内側に位置し、重なり合う多層フィルム1a,1bが非接着の状態である未シール部21、この未シール部21の多層フィルム1a,1bを貫通して形成された蒸気抜き部22から成っている。蒸気抜き機構17は、
図1(B)のように、収容部14内に周縁シール部から離れた位置に設置しても良いし、
図1(E)のように、周縁シール部の何れかに連続した形態としてもよい。また、蒸気抜き部の形態は、公知の何れの形態としてもよい(表フィルム及び/又は裏フィルムへの貫通孔,スリット,弱シール部,包装袋の端部で開口された未シール部など)。
【0015】
[外層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている、または蒸気抜き機構が形成されておらず且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合]
図1に示す態様においては、積層フィルム1が、外層とポリアミド中層の間に非接着状態が形成されている場合、または蒸気抜き機構が形成されておらず且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合には、非接着領域を形成可能な領域は、
図1(A)~(E)に示す何れの形態でも実施することができる。ただし、本構成とした場合の好ましい形態は周縁シールに非接着領域を有する
図1(A),
図1(B)、より好ましい形態は
図1(B)であるため、特にこの2形態について説明する。
図1(A)に示すように、非接着領域を形成可能な最大領域は、積層フィルムの表裏フィルム両方の、ボトムシール11、サイドシール12、トップシール13の内側端縁近傍を含む積層フィルムの全領域S1(図中、網掛け部分)である。この領域に非接着状態が形成されていれば、包装袋の熱損傷及び内圧上昇による破袋が防止できる。尚、シール部内に形成される非接着領域の幅m1は、シール部の幅によっても異なるが、各シール部の最小幅の位置において2mm以上であることが好ましく、シール部内の非接着領域の幅m1を除いた残余のシール幅が2mm以上となるように形成することが望ましい。
また、包装袋の熱損傷及び内圧上昇による破袋のみならず、機械的強度及び外観特性の低下の防止するためには、電子レンジ加熱時の状態、すなわち包装袋を自立させた状態において、
図1(B)に示すように、上記最大非接着領域S1内において、内容物界面と接触する必要最小限の非接着領域S2(図中、網掛け部分)とすることが必要である。非接着領域S2は、底フィルムの上端縁を含む位置に形成されていることが好ましい。
尚、非接着領域S2の高さ方向の長さLは、内容物の粘度等によって適宜調整することが望ましいが、内容物界面を中心に上下に5mm以上であることが好ましく、特に10~20mmの範囲で形成することが好ましい。
【0016】
[蒸気抜き機構が形成されており且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている場合]
また
図1に示す態様において、積層フィルム1が、蒸気抜き機構が形成されており且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている場合には、
図1(C)~
図1(E)の形態を実施することができる。
図1(C)に示すように、非接着領域を形成可能な最大領域は、積層フィルム1の表裏フィルム両方の、ボトムシール11、サイドシール12及びこれらのシール部の内側端縁から距離m2の部分、開封予定線16とその近傍(開封予定線16から収容部14側に向かう距離)、並びに蒸気抜き機構17とその近傍(蒸気抜きシール部20の外側端縁からの距離)を除いた、積層フィルムの全領域S3(図中、網掛け部分)である。尚、シール部の内側端縁からの距離m2、開封予定線16から収容部14側に向かう距離m3、及び蒸気抜きシール部20の外側端縁からの距離は、これに限定されないが、2mm以上であることが好ましい。
包装袋の熱損傷及び内圧上昇による破袋のみならず、機械的強度及び外観特性の低下を防止するためには、
図1(D)に示すように、
図1(C)に示した非接着領域S3のうち、内容物界面と接触する必要最小限の非接着領域S4(図中、網掛け部分)とすることが必要である。尚、非接着領域S4も、上述した非接着領域S2と同様の高さ方向の長さLを有することが好ましい。
尚、
図1(E)は、
図1(C)に示した態様において、蒸気抜き機構17がサイドシール12b内に形成されている場合であり、
図1(C)と同様に非接着領域を形成できる。
【0017】
(平らな包装袋)
図2は、本発明の電子レンジ加熱用包装袋の他の一形態である平らな包装袋(平パウチ)について説明する平面図であり、
図3は、この平パウチについて電子レンジ加熱を行い内圧が上昇した状態を模式的に表して説明する概略図であり、(A)は側面図、(B)は内容物の量が少ない場合の側断面図、(C)は内容物の量が多い場合の側断面図である。
この包装袋10は、
図2に示すように、積層フィルム1(表フィルム1a,裏フィルム1b)と、この積層フィルム1a,1bをヒートシール性内層が内側になるように重ね合わせ、積層フィルム1a、1bの両サイド(側部端縁)及び上下端縁をヒートシールすることにより形成されており、これにより、包装袋10の4辺が、ボトムシール11、サイドシール12a,12b、及びトップシール13により密封されて(周縁シール部)、収納部14が形成されている。また包装袋10の上部左側のコーナー位置には、
図1に示したと同様の蒸気抜き機構17が形成されている。蒸気抜き機構17の位置及び蒸気抜き部22の形態は、
図1同様に公知の何れの位置・形態としてよい。
上部に蒸気抜き機構が形成された平パウチにおいては、一般に
図3(A)に示すように、平パウチが収納されていた箱30を、開封のための帯(図示せず)を取り除き、箱本体31と連結した状態の蓋部32を形成した後、蓋部32の頂部32aが電子レンジ内の台に接するように折り曲げて、箱本体31が斜めになるように設置される。これにより平パウチ10は箱30内に蒸気抜き機構が上方に位置するように配置されて、電子レンジ加熱に付される。従って、内容物界面35は、内容物36の量が少ない場合には、
図3(B)に示すようになり、内容物35の量が多い場合には、
図3(C)に示すようになる。
【0018】
[外層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている、または蒸気抜き機構が形成されておらず且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合]
図2に示すような平パウチにおいて、積層フィルム1が、外層とポリアミド中層の間に非接着状態が形成されている、または蒸気抜き機構が形成されておらず且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合には、非接着領域を形成可能な領域は、
図2(A)~(E)に示す何れの形態でも実施することができる。ただし、本構成とした場合の好ましい形態は周縁シールに非接着領域を有する
図2(A),
図2(B)、より好ましい形態は
図2(B)であるため、特にこの2形態について説明する。
図1に示したスタンディングパウチと同様に、
図2(A)に示すように、非接着領域を形成可能な最大領域は、積層フィルムの表裏フィルムの両方の、ボトムシール11、サイドシール12、トップシール13の内側端縁近傍(内側端縁からシール部内に距離m1の部分)を含む積層フィルムの全領域S1(図中、網掛け部分)である。
また、包装袋の熱損傷及び内圧上昇による破袋のみならず、機械的強度及び外観特性の低下を防止するためには、電子レンジ加熱時の状態、すなわち蒸気抜き機構を有する場合には、
図3に示したように蒸気抜き機構が上部になるように斜めに位置させた状態において、
図3(B)及び(C)の内容物界面35が裏フィルム1bに接触する必要最小限の非接着領域S2(
図2(B)中、網掛け部分)とすることが必要である。平パウチにおいては、裏フィルム(加熱時に下側になる積層フィルム)に接する界面に電子レンジ加熱によるマイクロ波が集中しやすい傾向にあるため、必要最小限の非接着領域S2としては、裏フィルム側のみ非接触領域を設けることが好ましい。
この非接着領域S2の包装袋の高さ方向長さL1は、
図3(B)及び(C)から明らかなように、内容物界面35は裏フィルム1bの高さ方向長さの1/2よりも上方(トップシール13側)で接触していることから、
図2(B)に示すように、裏フィルム1bの高さ方向長さの1/2より上方且つ開封予定線16よりも下側で形成されていることが望ましい。
【0019】
[蒸気抜き機構が形成されており且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている場合]
また
図2に示す平パウチにおいて、積層フィルム1が、蒸気抜き機構が形成されており且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている場合には、
図2(C)に示すように、非接着領域を形成可能な最大領域は、上記最大領域S1から、ボトムシール11及びサイドシール12のシール部の内側端縁から距離m2、及び開封予定線16から距離m3の部分、並びに蒸気抜き機構17とその近傍を除いた、積層フィルムの表裏フィルムの両方の全領域S3(図中、網掛け部分)である。尚、開封予定線からの距離m3は2mm程度であることが好ましい。
包装袋の熱損傷及び内圧上昇による破袋のみならず、機械的強度及び外観特性の低下を防止するためには、
図2(D)に示すように、蒸気抜き機構が上部になるように斜めに位置させた状態において、
図3(B)及び(C)の内容物界面が裏フィルム1bに接触する必要最小限の非接着領域S4(図中、網掛け部分)とすることが必要である。この非接着領域S4の包装袋の高さ方向長さL1は、上記S2の高さL1と同様である。
【0020】
(分岐型の包装袋)
図4は、本発明の電子レンジ加熱用包装袋の他の一形態である分岐型の包装袋(分岐型パウチ)について説明する斜視図及び平面図であり、
図5は、この分岐型パウチについて電子レンジ加熱を行い内圧が上昇した状態を模式的に表して説明する概略図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図、(C)は内容物の量が少ない場合の側断面図、(D)は内容物の量が多い場合の側断面図である。
この包装袋10は、積層フィルム1(表フィルム1a,裏フィルム1b)の表フィルム1aを折り畳んで包装袋の外方に突出する折り畳み部18を形成して、表フィルム1a、裏フィルム1bの両サイド(側部端縁)及び上下端縁をヒートシールすることにより形成されており、これにより、包装袋10の4辺が、ボトムシール11、サイドシール12a,12b、及びトップシール13により密封されて(周縁シール部)、収納部14が形成されている。また、図示する例においては折り畳み部18の頂部にも、頂部ヒートシール23が形成されているが、頂部ヒートシールを設けない折り畳み部としてもよい。また、頂部ヒートシール23は、表フィルム1aを折り畳んでヒートシールする形態でもよいし、2枚の表フィルム1aを内面層同士を向かい合わせて(表フィルム2枚を合掌した合掌部の)端部をヒートシールする形態でもよい。また折り畳み部18には蒸気抜き機構17が形成されている。
図4においては、蒸気抜き機構17が表フィルム1a,裏フィルム1bの両面に亘って収容部14側に向けて凹の切り込み形状の場合を図示しているが、蒸気抜き機構17は1つ以上形成されていればよく、その形態は公知の何れの形態としてもよい(表フィルム及び/又は裏フィルムへの孔,スリット,または、弱シール部,包装袋の端部で開口された未シール部など)。
分岐型パウチにおいては、折り畳み部18または合掌部が形成された表フィルム1a側を上にして、電子レンジの台上に設置される。電子レンジ加熱により内圧が上昇すると、
図5(A)及び(B)に示すように包装袋は膨らみ、内容物界面35は、内容物36の量が少ない場合には、
図5(C)に示すようになり、内容物35の量が多い場合には、
図5(D)に示すようになる。
【0021】
[外層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている、または蒸気抜き機構が形成されておらず且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合]
図4に示すような分岐型パウチにおいても、積層フィルム1が、外層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている、または蒸気抜き機構が形成されておらず且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合には、非接着領域を形成可能な領域は、
図4(A)~(D)に示す何れの形態でも実施することができる。ただし、本構成とした場合の好ましい形態は周縁シールに非接着領域を有する
図4(A),
図4(B)、より好ましい形態は
図4(B)であるため、特にこの2形態について説明する。
図1に示したスタンディングパウチと同様に、
図4(A)に示すように、非接着領域を形成可能な最大領域は、積層フィルムの表裏フィルムの両方の、ボトムシール11、サイドシール12、トップシール13の内側端縁近傍(内側端縁からシール部内に距離m1の部分)を含む積層フィルムの全領域S1(図中、網掛け部分)である。
また、包装袋の熱損傷及び内圧上昇による破袋のみならず、機械的強度及び外観特性の低下の防止するためには、電子レンジ加熱時の状態、すなわち折り畳み部18を備えた表フィルム1aが上方になるように位置させた状態において、
図5(C)に示すように内容物の量が少ない場合には、内容物界面の接触箇所は裏フィルム1bのボトムシール11側とトップシール13側の一定領域であり、
図5(D)に示すように内容物の量が多い場合には、内容物界面の接触箇所は表面フィルム1aのボトムシール11側の一定領域であることから、内容物の量にかかわらず、
図4(B)に示すように、表裏フィルム1a,1bのボトムシール11側の領域S2aとトップシール13側の領域S2bが必要最小限の非接着領域S2(図中、網掛け部分)となる。
非接着領域S2a及びS2bの高さ方向の長さL2及びL3は、内容物の量及び粘度等によって適宜調整することが望ましいが、L2は5mm以上であることが好ましく、特に10~30mmの範囲で形成することが好ましく、L3は5mm以上であることが好ましく、特に10~30mmの範囲で形成することが好ましい。
【0022】
[蒸気抜き機構が形成されており且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている場合]
また
図4に示す分岐型パウチにおいて、積層フィルムとして、蒸気抜き機構が形成されており且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている場合には、
図4(C)に示すように、非接着領域を形成可能な最大領域は、ボトムシール11、サイドシール12、トップシール13及びこれらのシール部の内側端縁から距離m2の部分を除いた、積層フィルムの表裏フィルムの両方の全領域S3(図中、網掛け部分)である。
包装袋の熱損傷及び内圧上昇による破袋のみならず、機械的強度及び外観特性の低下を防止するためには、
図4(D)に示すように、上述した
図4(B)に示した領域S2a及び領域S2bからシール部の内側端縁から距離m2の部分を除いた領域S4a及び領域S4bが必要最小限の非接着領域S4(図中、網掛け部分)となる。非接着領域S4a及びS4bの高さ方向の長さL4及びL5は、内容物の量及び粘度等によって適宜調整することが望ましいが、L4は5mm以上であることが好ましく、特に10~30mmの範囲で形成することが好ましく、L5は5mm以上であることが好ましく、特に10~30mmの範囲で形成することが好ましい。
【0023】
(折り返し型の包装袋)
図6は、本発明の電子レンジ加熱用包装袋の他の一形態である内圧の上昇により底部が膨出する包装袋(折り返し型パウチ)について説明する平面図であり、
図7は、この折り返し型パウチについて電子レンジ加熱を行い内圧が上昇した状態を模式的に表して説明するための概略図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図、(C)は内容物の量が少ない場合の側断面図、(D)は内容物の量が多い場合の側断面図である。
この包装袋10は、積層フィルム1(表フィルム1a,裏フィルム1b)の裏フィルム1bを、包装袋の高さ方向の1/2よりもトップシール側の位置で折り返し、この折り返し部19を平らにした状態で、表フィルム1aと両サイド(側部端縁)及び上下端縁をヒートシールすることにより形成されており、これにより、包装袋10の4辺が、ボトムシール11、サイドシール12a,12b、及びトップシール13により密封されて(周縁シール部)、収納部14が形成されている。またこの態様ではトップシール13内に蒸気抜き機構17,17,17が形成されている。
図6においては、蒸気抜き機構17が3つ形成され、表フィルム1a,裏フィルム1bの両面に貫通した孔の場合を図示しているが、蒸気抜き機構17は1つ以上形成されていればよく、その形態は公知の何れの形態をとしてもよい(表フィルム及び/又は裏フィルムへの孔,スリット,または、弱シール部,包装袋の端部で開口された未シール部など)。
折り返し型パウチにおいては、折り返し部19が形成された裏フィルム1a側を下にして電子レンジの台上に設置する。電子レンジ加熱により内圧が上昇すると、
図7(A)及び(B)から明らかなように、裏フィルム1bの折り返し部19が下方に突出して、包装袋10はトップシール13側が持ち上がり、内容物界面35は、内容物36の量が少ない場合には、
図7(C)に示すようになり、内容物35の量が多い場合には、
図7(D)に示すようになる。
【0024】
[外層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている、または蒸気抜き機構が形成されておらず且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合]
図6に示すような折り返し型パウチにおいても、積層フィルム1が、外層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている、または蒸気抜き機構が形成されておらず且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態がある場合には、非接着領域を形成可能な領域は、
図6(A)~(D)に示す何れの形態でも実施することができる。ただし、本構成とした場合のより好ましい形態は周縁シールに非接着領域を有する
図6(A),
図6(B)、より好ましい形態は
図6(B)であるため、特にこの2形態について説明する。
図1に示したスタンディングパウチと同様に、
図6(A)に示すように、非接着領域を形成可能な最大領域は、積層フィルムの表裏フィルムの両方の、ボトムシール11、サイドシール12、トップシール13の内側端縁近傍(内側端縁からシール部内に距離m1の部分)を含む積層フィルムの全領域S1(図中、網掛け部分)である。
また、電子レンジ加熱時の状態、すなわち折り返し部が下方に突出して、包装袋はトップシール13側が持ち上がった状態になる、折り返し型パウチにおいては、内容物の量にかかわらず裏フィルムの界面に電子レンジ加熱によるマイクロ波が集中しやすい傾向にあるため、包装袋の熱損傷及び内圧上昇による破袋のみならず、機械的強度及び外観特性の低下の防止するための必要最小限の非接着領域S2としては、裏フィルム1bのトップシール11側の領域が必要最小限の非接着領域S2(
図6(B)中、網掛け部分)となる。
尚、非接着領域S2の高さ方向の長さL6は、裏フィルム1bの高さ方向長さの1/2より上方且つ開封予定線16よりもm3の距離だけ下側に形成されていることが望ましい。
【0025】
[蒸気抜き機構が形成されており且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている場合]
また
図6に示す折り返し型パウチにおいて、積層フィルム1が、蒸気抜き機構が形成されており且つ内層とポリアミド中間層の間に非接着状態が形成されている場合には、
図6(C)に示すように、非接着領域を形成可能な最大領域は、ボトムシール11、サイドシール12、トップシール13及びこれらのシール部の内側端縁から距離m2の部分を除いた、積層フィルムの表裏フィルムの両方の全領域S3(図中、網掛け部分)である。
包装袋の熱損傷及び内圧上昇による破袋のみならず、機械的強度及び外観特性の低下を防止するためには、
図6(D)に示すように、上述した
図6(B)に示した領域S2からシール部の内側端縁から距離m2の部分を除いた領域S4が必要最小限の非接着領域S2(図中、網掛け部分)となる。
【0026】
(その他)
本発明に用いられる包装袋は、上記形態に限定されず、種々の形態の変更が可能であり、ガゼット付包装袋、ピロータイプの包装袋等、従来公知の形態を採用でき、包装袋の形態及び包装袋に収納される内容物量に応じて、電子レンジ加熱を行う際の内容物界面の接触位置から、非接着領域を適宜選択することができる。
またシール部の幅はこれに限定されないが、サイドシールで5mm以上、ボトムシールで5mm以上、トップシールで5mm以上形成されていることが好ましい。
【0027】
(積層フィルム)
本発明の電子レンジ加熱用包装袋を構成する積層フィルムは、外層、ポリアミド樹脂から成る中間層、及びヒートシール性内層を少なくとも有し、この3層以外に、後述するような従来公知の多層フィルムに使用されていた層を形成することもできる。
【0028】
[外層]
外層は、従来より多層フィルムの最外層として使用されていた、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂や、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することができるが、特にポリエステル樹脂、中でもポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートを好適に使用することができる。
外層の厚みは、外層を構成する樹脂の種類や延伸の有無によって一概に規定できないが、10~50μmの範囲にあることが好ましく、PBTの場合で15μm以上、PETの場合では12μm以上、特に外層とポリアミド中間層との間に非接着状態が形成されている場合には20μm以上の範囲にあることが好適である。
【0029】
[ポリアミド樹脂から成る中間層]
中間層を構成するポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6/6・6共重合体、ナイロン6・10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン13等の他、m-キシリレンジアミン及び/又はp-キシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸とから得られるキシレン基含有ポリアミドを例示することができる。
中間層の厚みは、5~30μm、特に15~25μmの範囲にあることが好ましく、5μm未満の場合は中間層に求められる強度向上等の機能を発揮することができず、30μmを超える場合は成形性,経済性に劣るため、上述の範囲とすることが好ましい。
【0030】
[ヒートシール性内層]
本発明において内層を構成するヒートシール性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂や、ポリオレフィン系樹脂を使用することができるが、特にポリオレフィン系樹脂を用いることが好適であり、これらの未延伸のフィルムであることが特に好ましい。
このようなポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレンや、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等を挙げることができる。
また、上記ポリオレフィン系樹脂は、従来から包装材料の分野で使用されている押出グレード或いは射出グレードのものであってよい。
更にヒートシール性内層及び上記外層中には、必要により、滑剤、改質剤、顔料、紫外線吸収剤等が配合されていてよい。
【0031】
[その他の層]
本発明の電子レンジ加熱用包装袋においては、外層、ポリアミド樹脂から成る中間層及びヒートシール性内層の以外に形成可能な層としては、バリア性層、易引裂き性層印刷層等の包装袋として使用される公知の層構成を例示することができる。
【0032】
<バリア性層>
バリア性層としては、外層、或いはポリアミド中間層に用いられる樹脂フィルムに、ケミカルベーパーデポジション(CVD)、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等で、シリコンオキサイド等の無機物、アルミナ等のセラミック、カーボン等を蒸着することにより形成される蒸着層、或いはポリカルボン酸系ポリマー、塩化ビニリデン、或いはエチレンビニルアルコール共重合体若しくはメタロキサン結合を有する化合物等から成るバリア性樹脂コーティング剤から成るコーティング層を好適に使用することができ、特にシリカ又はアルミナの蒸着層が好適に使用される。
外層又はポリアミド樹脂から成る中間層にバリア性層を形成する場合、外層又は中間層に用いられる樹脂フィルムは二軸延伸されていることが好ましい。
また、バリア性層は、最外層(外層よりも外側)としても良いし、中間層とヒートシール性内層の中間に設置しても良い。
蒸着層又はコーティング層が形成される樹脂フィルムの厚みは、5~25μmの範囲にあることが好ましい。上記範囲よりも樹脂フィルムの厚みが薄いと、上記範囲にある場合に比して機械的強度、耐クラック性に劣り、一方上記範囲よりも厚いと、上記範囲にある場合に比して経済性に劣るようになる。
【0033】
<易引裂き性層>
易引き裂き性層は、引き裂き性に劣る溶着層に隣接させることにより、易引き裂き性層に溶着層を追従させて、包装袋の引き裂き性を改良するものである。
易引き裂き性層を構成するフィルムとしては、これに限定されないが、ポリテトラメチレングリコール単位を含有したポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとのブレンド物から成るフィルムや、或いはポリエチレンテレフタレートとポリエステルエラストマーから成り、ポリエチレンテレフタレート中にポリエステルエラストマーが分散してなるブレンド物からなるフィルム等、を二軸延伸してなるフィルムを挙げることができる。また、ポリエステルフィルムをレーザーや刃物等で切断加工を施し、引裂き性を付与したフィルムを用いることもできる。
易引き裂き性層の厚みは、5~30μmの範囲あることが好ましい。上記範囲よりも樹脂フィルムの厚みが薄いと、上記範囲にある場合に比して機械的強度、耐クラック性に劣り、一方上記範囲よりも厚いと、上記範囲にある場合に比して引裂き性及び経済性に劣るようになる。
【0034】
<接着層>
また非接着状態とする層間以外においては、接着層を形成する。接着層を構成可能な接着剤としては、従来公知のポリエーテルポリウレタン系又はポリエステルポリウレタン系のウレタン系接着剤やエポキシ系接着剤、或いは無水マレイン酸変性ポリプロピレン等の酸変性熱可塑性樹脂接着剤等を挙げることができるが、耐レトルト性の観点からは、ウレタン系接着剤を使用することが好適である。
【0035】
[層構成]
本発明に用いる積層フィルムの層構成としては、これに限定されないが、以下の層構成を例示できる(「/」は接着状態(層間に接着層が存在する)、「//」は任意の設定範囲の層間が非接着状態にある層間を示す)。
外層//ポリアミド中間層//ヒートシール性内層、外層//ポリアミド中間層/ヒートシール性内層、外層/ポリアミド中間層//ヒートシール性内層、外層/バリア性層//ポリアミド中間層/ヒートシール性内層、外層/バリア性層/ポリアミド中間層//ヒートシール性内層、外層//ポリアミド中間層/バリア性層/ヒートシール性内層、外層//ポリアミド中間層/バリア性層/ヒートシール性内層、外層/ポリアミド中間層//バリア性層/ヒートシール性内層、外層//バリア性を有するポリアミド中間層/ヒートシール性内層、外層/バリア性を有するポリアミド中間層//ヒートシール性内層。
中間層を構成するポリアミド樹脂は、内層及び外層を構成する熱可塑性樹脂と接着性に乏しいことから、一般的にはこれらの層の間に接着層が介在している。従って中間層及び隣接する層の間に接着層を形成することなくこれを積層することにより、これらの界面を非接着状態に形成することが可能になる。また本発明の包装袋は、落下衝撃を受けたり、或いは電子レンジ加熱を行わない限り、非接着状態にある界面においても隣接する層は密着した状態にあり、層間剥離を生じることはない。
尚、用いる積層フィルムの非接着状態を形成すべき領域については、前述したとおりである。
【0036】
本発明に用いる積層フィルムは、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、押出ラミネート、熱ラミネート法等従来公知の積層方法によって積層することができる。
例えば、これに限定されないが、外層、ポリアミド中間層、ヒートシール性内層等の各フィルムをそれぞれ作製し、これをドライラミネート法によって積層することができる。
また蒸着層又はコーティング層を、外層又はポリアミド中間層に形成し、この外層又はポリアミド中間層の蒸着層又はコーティング層側に、外層を構成する熱可塑性樹脂又はポリアミド樹脂を押出ラミネートして、他方の面にヒートシール性内層を構成するポリプロピレンを接着樹脂を介して押出ラミネートすることにより、バリア性フィルムとすることもできる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(漏洩試験)
パウチに内容品(市販レトルトカレー)を充填・密封して、レトルト殺菌(120℃30分シャワー式)を行い24時間経過した後、電子レンジ(パナソニック株式会社製NE-EH-211)を用い、500Wで4分間加熱した。
パウチの穴あきによる内容品漏洩の有無を目視にて確認した。漏洩のないパウチを「○」、漏洩があったパウチを「×」と評価した。
【0039】
(落下強度試験)
パウチに水180gを充填・密封して、レトルト殺菌(120℃30分シャワー式)を行った後、5℃で24時間以上保管したパウチを、スタンディングパウチはボトムシール11側(底面側)を、その他の形態のパウチはトップシール13を下方としたときのパウチ下端部が床と水平となるようにして、100cmの高さから垂直に落下させた。
破損の有無と、破損による内容物の漏洩を目視にて確認した。破損のないパウチを「○」、外層に軽微な破損を生じたパウチを「△」、内容物の漏洩を生じたパウチを「×」と評価した。
【0040】
(外観試験)
パウチに内容品(市販レトルトカレー)を充填・密封して、レトルト殺菌(120℃30分シャワー式)を行い常温まで冷却した後、パウチの外観を目視にて確認した。
外観上の問題ないパウチを「○」、軽微なシワが発生しているが製品上問題ないパウチを「△」、製品上問題となる重度のシワが発生したパウチを「×」と評価した。
【0041】
(総合評価)
漏洩試験、落下強度試験、外観試験において、すべての試験結果が○であったパウチを「◎」、×はないが△があったパウチを「○」、×があったパウチを「×」と評価した。
【0042】
(パウチ形態)
[スタンディングパウチ]
幅140mm×高さ145mmの表裏フィルムに、底フィルムの上端縁までの高さが38mmであるスタンディングパウチにおいて、
図1(B)に示す幅(D1)134mm×高さ(L)30mmの非接着領域を、底フィルムの上端縁を基準に上方に20mm下方に10mmの場所に形成した。このパウチを「スタンディングパウチ1」とする。
上記スタンディングパウチにおいて、
図1(A)に示す非接触領域を幅(D1)134mm×高さ139mmで形成したパウチを「スタンディングパウチ2」とした。
上記スタンディングパウチにおいて、
図1(D)に示す非接触領域を幅(D2)130mm×高さ(L)30mmで形成したパウチを「スタンディングパウチ3」とした。
【0043】
[平パウチ]
積層フィルムを2つ折りにして3辺をシールして成る、幅130mm×高さ175mmの平パウチにおいて、
図2(B)に示す幅126mm(シール部内幅m1=2mm)×高さ(L1)65mmの非接着領域を、裏フィルムにのみ、開封予定線より2mm(m3)下からパウチ高さ半分までの高さの位置に形成した。このパウチを「平パウチ1」とした。
上記平パウチにおいて、
図2(A)に示す非接着領域を幅(D1)126mm×高さ173mmで形成したパウチを「平パウチ2」とした。
【0044】
[分岐型パウチ]
表フィルムに分岐長さ38mmの分岐部を形成し4辺をシールして成る、幅130mm×高さ170mmの分岐型パウチにおいて、
図4(B)に示すように、トップシール側に幅(D1)126mm×高さ(L3)16mm(周辺シール部内幅2mm)の非接着領域、ボトムシール側に幅(D1)126mm×高さ(L2)30mm(周辺シール部内幅(m1)2mm)の非接着領域を形成した。この分岐型パウチを「分岐型パウチ1」とした。
上記分岐型パウチにおいて、
図4(A)に示す非接着領域を幅(D1)126mm×高さ166mmで形成したパウチを「分岐型パウチ2」とした。
【0045】
[折り返し型パウチ]
裏フィルムに折り幅15mmの折り返しを形成し4辺をシールして成る、幅130mm×高さ170mmの折り返し型パウチにおいて、
図6(B)に示すように、裏フィルムのトップシール側に幅126mm×高さ(L6)60mm(周辺シール部内幅(m1)2mm)の非接着領域を形成した。この分岐型パウチを「折り返し型パウチ1」とした。
上記折り返し型パウチにおいて、
図6(A)に示す非接着領域を幅(D1)126mm×高さ166mmで形成したパウチを「折り返し型パウチ2」とした。
【0046】
(実施例1~19)
表1に示す積層フィルムを用いて、表1に示す形態のパウチを作成し、前述した試験を行った。評価結果を表1に併せて示す。
尚、表1中の層構成において、「12PET」は厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、「15NY」は厚み15μmのナイロンフィルム、「70CCP」は厚み70μmの未延伸ポリプロピレンフィルム、「12バリアPET」は厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにSiO2蒸着層が形成されたバリア性PETフィルム、「15バリアNY」は厚み15μmナイロンフィルムにポリカルボン酸系ポリマーコーティング層が形成されたバリア性ナイロンフィルム、をそれぞれ意味し、「/」は接着状態(層間に接着層が存在する)、「//」は上述の一部範囲が非接着状態であることを意味する。
【0047】
(比較例1~4)
表1に示す層間に非接着状態の部分を有しない積層フィルムを使用した以外は実施例1と同様にしてスタンディングパウチを作成し、前述した試験を行った。評価結果を表1に併せて示す。
【0048】
【符号の説明】
【0049】
1 積層フィルム、10 包装袋、11 ボトムシール、12 サイドシール、13 トップシール、14 収納部、15 切込み、16 開封予定線、17 蒸気抜き機構、18 折り畳み部、19 折り返し部。