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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】広告媒体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20231219BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231219BHJP
   G09F 19/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B32B27/30 101
B32B5/18
B32B27/32 C
G09F19/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019186336
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021059107
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】網 秀幸
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-274577(JP,A)
【文献】実開昭57-105742(JP,U)
【文献】特開昭59-111838(JP,A)
【文献】実開平04-134308(JP,U)
【文献】実開昭57-162830(JP,U)
【文献】実開昭57-121530(JP,U)
【文献】特開昭61-111340(JP,A)
【文献】特開昭63-233826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C08J 9/00-9/42
G09F 19/00-27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体で構成された基材と、
主としてポリ塩化ビニル系樹脂を含み、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた保護層と、を備える積層体を有する広告媒体であって、
前記ポリ塩化ビニル系樹脂は、その塩素濃度率が、59.5%以上68.0%以下であることを特徴とする広告媒体
【請求項2】
前記保護層は、JIS K 7133に準拠して、100℃、30分の条件で加熱したときの熱収縮率が、-3.5%以上3.5%以下である請求項1に記載の広告媒体
【請求項3】
前記基材は、JIS K 7133に準拠して、100℃、30分の条件で加熱したときの熱収縮率が、-3.0%以上3.0%以下である請求項1または2に記載の広告媒体
【請求項4】
前記保護層の前記熱収縮率と、前記基材の前記熱収縮率との差の絶対値は、0.0%以上3.0%以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の広告媒体
【請求項5】
前記ポリ塩化ビニル系樹脂は、塩素濃度56.0%以上57.0%以下の塩化ビニル樹脂と、62.0%以上69.0%以下の塩素化塩化ビニル樹脂とを含み、
前記塩化ビニル樹脂の数平均重合度が500以上1300以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の広告媒体
【請求項6】
前記保護層の平均厚さは、0.3mm以上1.0mm以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の広告媒体
【請求項7】
前記基材は、主としてポリエチレンを含む請求項1ないし6のいずれか1項に記載の広告媒体
【請求項8】
前記基材は、フィラーを含む請求項1ないし7のいずれか1項に記載の広告媒体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体を備え屋外および屋内で使用される看板のような広告媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、看板、POP用ディスプレイ、パネル等の屋外および屋内で使用される広告媒体として、発泡性を有する樹脂基板の両面に、保護層が被覆された積層体を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる構成の積層体では、樹脂基板を発泡体で構成することで広告媒体の軽量化が図られ、この樹脂基板の両面を保護層で被覆することで樹脂基板の保護がなされている。そして、一方の面側の保護層に、文字や、模様等の装飾が施された着色層が積層され、さらに、他方の面側の保護層側で、前記積層体を壁面に固定することで、着色層が視認されることとなり、着色層が設けられた積層体が、広告媒体として展示がなされる。
【0004】
このような広告媒体では、広告媒体すなわち積層体のさらなる軽量化を図ることを目的に、樹脂基板(発泡体)の空隙率を高くし、保護層を薄膜化することが実施されるが、例えば、広告媒体を屋外に展示した場合には、日光に晒されること等に起因して、広告媒体が加熱され、この加熱により保護層が収縮し、その結果、この保護層上に積層された着色層が変形することで、広告媒体の見た目が悪くなると言う問題が生じることがあった。
【0005】
なお、このような問題は、屋内に設置される広告媒体において、広告媒体が固定される壁部が、照明器具や、調理器具等の発熱体により加熱され、この加熱による熱が壁部を介して広告媒体に伝播することにより、広告媒体が加熱される場合等についても同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭59-111838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、軽量化を図りつつ、優れた耐熱性を発揮することができる積層体を備える広告媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~()に記載の本発明により達成される。
(1) 発泡体で構成された基材と、
主としてポリ塩化ビニル系樹脂を含み、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた保護層と、を備える積層体を有する広告媒体であって、
前記ポリ塩化ビニル系樹脂は、その塩素濃度率が、59.5%以上68.0%以下であることを特徴とする広告媒体
【0009】
(2) 前記保護層は、JIS K 7133に準拠して、100℃、30分の条件で加熱したときの熱収縮率が、-3.5%以上3.5%以下である上記(1)に記載の広告媒体
【0010】
(3) 前記基材は、JIS K 7133に準拠して、100℃、30分の条件で加熱したときの熱収縮率が、-3.0%以上3.0%以下である上記(1)または(2)に記載の広告媒体
【0011】
(4) 前記保護層の前記熱収縮率と、前記基材の前記熱収縮率との差の絶対値は、0.0%以上3.0%以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の広告媒体
【0012】
(5) 前記ポリ塩化ビニル系樹脂は、塩素濃度56.0%以上57.0%以下の塩化ビニル樹脂と、62.0%以上69.0%以下の塩素化塩化ビニル樹脂とを含み、
前記塩化ビニル樹脂の数平均重合度が500以上1300以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の広告媒体
【0013】
(6) 前記保護層の平均厚さは、0.3mm以上1.0mm以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の広告媒体
【0014】
(7) 前記基材は、主としてポリエチレンを含む上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の広告媒体
【0015】
(8) 前記基材は、フィラーを含む上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の広告媒体
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、軽量化が図られつつ、優れた耐熱性が発揮される積層体とすることができる。そのため、かかる積層体を備える広告媒体をも、軽量化が図られつつ、優れた耐熱性が発揮されるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の広告媒体の実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示す広告媒体の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の広告媒体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
積層体10は、発泡体で構成された基材1と、主としてポリ塩化ビニル系樹脂を含み、基材1の少なくとも一方の面側に設けられた保護層2Aと、を備え、ポリ塩化ビニル系樹脂は、その塩素濃度率が、59.5%以上68.0%以下であることを特徴とする。
【0021】
これにより、軽量化が図られつつ、優れた耐熱性が発揮される積層体10とすることができる。そのため、かかる積層体10を備える広告媒体100をも、軽量化が図られつつ、優れた耐熱性が発揮されたものとし得る。
【0022】
以下、積層体10を備える広告媒体100(本発明の広告媒体)を、屋外で使用される看板に適用した場合を一例として説明する。
【0023】
<広告媒体100>
広告媒体100は、本実施形態では、屋外で使用される看板であり、図1図2に示すように、積層体10と、この積層体10の表面側(一方の面側)を被覆する着色層3とを有しており、その全体形状が、平面視において、社名や商品名およびキャッチコピー等を表す文字列(図1ではABCDEの5つの文字列)をなしており、これにより、看板として用いられる。
【0024】
この広告媒体100が備える積層体10は、図2に示すように、基材1と、この基材1の双方の面側に設けられた保護層2Aとを有しており、かかる構成をなす積層体10において、基材1(樹脂基板)を発泡体で構成することで広告媒体100の軽量化が図られ、この基材1の両面を保護層2Aで被覆することで基材1の保護がなされている。そして、表面側(一方の面側)の保護層2Aに、文字や、模様等の装飾が施された着色層3が積層され、さらに、裏面側(他方の面側)の保護層2A側で、積層体10すなわち広告媒体100を壁面に固定することで、着色層3が通行人等に視認されることとなる。これにより、着色層3が設けられた積層体10すなわち広告媒体100が、看板としての展示がなされる。
【0025】
<<基材1>>
基材1は、広告媒体100および積層体10の主体すなわち芯材をなし、この主体が発泡体すなわち多孔質体で構成される。これにより、積層体10ひいては広告媒体100の軽量化が図れる。そのため、広告媒体100を設置した壁部からの落下を的確に抑制または防止することができ、広告媒体100を設置した際の安全性の向上を図ることができる。
【0026】
この基材1は、発泡体で構成されていれば、その構成材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のような樹脂材料、金属材料、および、セラミックス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものを主材料として用いることができるが、中でも、熱可塑性樹脂を主材料として構成されるものであることが好ましい。これにより、基材1の軽量化を図るとともに、化学的方法もしくは物理的方法を用いることで、基材1を比較的容易に発泡体で構成することができる。
【0027】
また、熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体のようなポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン、ABS、ポリカーボネート系樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、ポリエチレンであることがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂、中でも、ポリエチレンを用いることで、積層体10ひいては広告媒体100の軽量化および表面平滑化を確実に図ることができる。また、これらの材料は、環境性の観点からも優れるものであることから、基材1の構成材料として好ましく用いることができる。
【0028】
また、基材1は、その構成材料として、さらにフィラーすなわち充填材を含有することが好ましい。これにより、基材1の強度の向上を図ることができる。また、広告媒体100の加熱時に、基材1が収縮してしまう収縮率の低下を図ることができる。したがって、基材1が収縮することで積層体10ひいては広告媒体100が変形し、これに起因して、広告媒体100を設置した壁部から、広告媒体100が落下するのを的確に抑制または防止することができる。
【0029】
充填材としては、例えば、酸化チタン、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、充填材は、球状、偏平形状のような粒子状、顆粒状、ペレット状および鱗片状のいずれの形状をなしていてもよいが、充填材が粒子状をなして含まれる場合、その平均粒径は、0.3μm以上100μm以下であるのが好ましく、0.5μm以上20μm以下であるのがより好ましい。これにより、基材1において充填材を、より均一に分散させることができる。
【0031】
さらに、基材1における充填材の含有量は、10wt%以上50wt%以下であるのが好ましく、20wt%以上40wt%以下であるのがより好ましい。これにより、発泡体としての基材1の形状を維持しつつ、基材1の強度を確実に向上させることができる。
【0032】
また、基材1は、上述したものの他に、例えば、繊維材料、難燃剤、紫外線吸収剤、滑剤、着色剤、可塑剤、帯電防止剤、安定剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0033】
この基材1は、発泡体で構成されていれば、ビーズ状をなす複数の空孔が互いに連通することなく単独で存在している複数の単独孔(独立孔)を備えるものであってもよいし、複数の空孔が3次元的に連通した連続孔(連通孔)を備えるものであってもよいが、単独孔を備えるものであることが好ましい。これにより、基材1を発泡体で構成したとしても、その強度の低下を的確に抑制することができる。
【0034】
また、基材1に含まれる空孔を単独孔とする場合、その空孔径(空孔の直径)は、1μm以上1000μm以下程度であることが好ましく、10μm以上100μm以下程度であることがより好ましい。
【0035】
さらに、基材1の空孔率は、50vol%以上90vol%以下程度であるのが好ましく、70vol%以上80vol%以下程度であるのがより好ましい。
【0036】
基材1すなわち発泡体に含まれる空孔の空孔径および基材1の空孔率を、それぞれ、前記範囲内とすることで、基材1を発泡体で構成したとしても、その強度の低下を的確に抑制することができる。また、基材1の空孔率を、前記範囲内とすることにより、基材1内において、空孔同士が互いに連結するのを抑制して単独孔が形成されやすくなる。
【0037】
また、基材1は、その平均厚さが、好ましくは5mm以上80mm以下、より好ましくは10mm以上50mm以下に設定される。基材1の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、広告媒体100すなわち看板としての視認性を確保しつつ、広告媒体100の軽量化を図ることができる。
【0038】
かかる構成をなす基材1は、JIS K 7133に準拠して、100℃、30分の条件で加熱したときの熱収縮率が-3.0%以上3.0%以下であることが好ましく、-1.5%以上1.5%以下であることがより好ましい。熱収縮率がかかる範囲内である基材1に対して、塩素濃度率が59.5%以上68.0%以下に設定されているポリ塩化ビニル系樹脂を含む保護層2Aを積層することで、基材1と保護層2Aとの双方が収縮することに起因して、保護層2Aが変形するのを的確に抑制または防止することができる。
【0039】
<<保護層2A>>
保護層2Aは、本実施形態では、基材1の上面側および下面側の双方に積層されることで、基材1を被覆するものである。この保護層2Aを積層体10が備えることにより、基材1の耐水性、耐候性のような耐久性の向上を図ることができる。また、発泡体で構成される基材1の上面側および下面側を被覆することで、積層体10ひいては広告媒体100の表面の平滑性を確保することができる。
【0040】
この保護層2Aは、本発明では、ポリ塩化ビニル系樹脂を主材料として含有しており、ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素濃度率が、59.5%以上68.0%以下、好ましくは62.0%以上68.0%以下に設定されている。
【0041】
このように、保護層2Aを、主としてポリ塩化ビニル系樹脂を含むものとし、さらにポリ塩化ビニル系樹脂の塩素濃度率を前記範囲内に設定することで、ポリ塩化ビニル系樹脂のビカット軟化温度を、80.0℃以上120.0℃以下、好ましくは90.0℃以上120.0℃以下に設定することができる。そのため、広告媒体100が日光に晒されたり、広告媒体100が固定される壁部が、照明器具や、調理器具等の発熱体により加熱されたりすることに起因して、保護層2Aが加熱されたとしても、この加熱により保護層2Aが収縮するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、この保護層2A上に積層された着色層3が変形すること、さらには、この着色層3の変形に伴う広告媒体100の見た目の劣化を的確に抑制または防止することができる。また、ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素濃度率を前記範囲内に設定することで、カレンダー成形法や、押出成形法のような成形法を用いて保護層2Aを成形する際の成形性を向上させることができる。
【0042】
また、ポリ塩化ビニル系樹脂は、保護層2Aに含まれるポリ塩化ビニル系樹脂の全体としての塩素濃度率が59.5%以上68.0%以下に設定されていれば、保護層2Aに含まれるポリ塩化ビニル系樹脂における単独重合体の塩素濃度率すなわち塩素化度は、特に限定されないが、塩素濃度56.0%以上57.0%以下の塩化ビニル樹脂と、62.0%以上69.0%以下の塩素化塩化ビニル樹脂とを含むものであることが好ましい。これにより、塩化ビニル樹脂の塩素濃度率を比較的容易に59.5%以上68.0%以下の範囲内に調整することができる。
【0043】
さらに、塩素濃度56.0%以上57.0%以下の塩化ビニル樹脂は、数平均重合度が500以上1300以下のものであるのが好ましく、1000以上1300以下のものであるのがより好ましい。数平均重合度が前記上限値を超えると、他の構成材料との組み合わせ等によっては、可塑剤を添加しないと加工性が悪く、そのために可塑剤を多量に添加すると柔軟温度の低下をもたらすおそれがある。一方、平均重合度が前記下限値より低くなると、他の構成材料との組み合わせ等によっては、成形された保護層2Aの耐熱性が低下するおそれがある。
【0044】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、-CH-CHCl-で表される基を繰り返し単位として、複数有するポリマーであり、具体的には、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと共重合可能なビニル系単量体(重合性モノマー)との共重合体が挙げられ、また、塩素化塩化ビニル樹脂すなわち後塩素化塩化ビニル重合体も含まれ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
なお、塩化ビニルと共重合可能なビニル系単量体との共重合体としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル共重合体等が挙げられる。
【0046】
また、保護層2Aは、これらの他に、さらに、アクリル系加工助剤のような加工助剤、充填材、アクリル系補強剤のような補強剤、安定剤、安定助剤、紫外線吸収剤、難燃剤、繊維強化剤、滑剤、可塑剤等を添加するようにしてもよい。
【0047】
この保護層2Aは、その平均厚さが、好ましくは0.3mm以上1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以上0.7mm以下に設定される。保護層2Aの平均厚さをかかる範囲内に設定したとしても、本発明では、保護層2Aに含まれるポリ塩化ビニル系樹脂の塩素濃度率が59.5%以上68.0%以下となっている。そのため、発泡体で構成される基材1を保護層2Aで被覆した際の保護層2Aにおける平坦性を確実に維持することができる。
【0048】
かかる構成をなす保護層2Aは、JIS K 7133に準拠して、100℃、30分の条件で加熱したときの熱収縮率が-3.5%以上3.5%以下であることが好ましく、-3.0%以上3.0%以下であることがより好ましい。
【0049】
また、保護層2Aの熱収縮率と基材1の熱収縮率との差の絶対値は、0.0%以上3.0%以下であることが好ましく、0.0%以上2.0%以下であることがより好ましい。
【0050】
保護層2Aの熱収縮率、および、保護層2Aの熱収縮率と基材1の熱収縮率との差の絶対値を、それぞれ、前記範囲内に設定することにより、基材1と保護層2Aとの双方が収縮することに起因して、保護層2Aが変形するのを的確に抑制または防止することができる。
【0051】
なお、保護層2Aは、本実施形態では、基材1の上面側および下面側の双方に積層される場合について説明したが、この場合に限らず、広告媒体100を設置する場所等によっては、下面側に位置する保護層2Aを省略することもできる。
【0052】
<<接着層>>
また、積層体10は、保護層2Aと基材1との間に、中間層として接着層が介在しているものであってもよい。中間層として接着層を設けることで、保護層2Aと基材1との密着性を向上させることができることから、積層体10ひいては広告媒体100のさらなる耐熱性の向上を図ることができる。
【0053】
接着層を構成する接着剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ニトリルゴム等のゴム系接着剤等が挙げられるが、中でも、エポキシ系接着剤であることが好ましい。エポキシ系接着剤は、溶剤の含有率が特に低く、沸点が高い接着剤であることから、接着層の耐熱性を向上させることができる。また、接着層における気泡の発生を的確に抑制または防止することができる。そのため、この気泡が発生することに起因して、積層体10の表面の平滑性が低下するのを的確に抑制または防止することができる。
【0054】
また、接着層は、その構成材料として、さらにフィラーすなわち充填材を含有することが好ましい。これにより、広告媒体100の加熱時に、接着層において積層体10が収縮するのを的確に抑制または防止することができる。
この充填材としては、前述した基材1で挙げたのと同様のものを用いることができる。
【0055】
<<着色層3>>
着色層3は、本実施形態では、基材1の上面側に設けられた保護層2Aを被覆するように接合されたものであり、着色剤を含むことで、着色層3の平面視において、文字や、模様等の装飾が施されることで、広告媒体100に意匠性を付与するためのものである。
【0056】
この着色層3としては、例えば、主材料としての樹脂材料と、着色剤とを含有するものが挙げられる。
樹脂材料としては、例えば、基材1で挙げたのと同様のものを用いることができる。
【0057】
また、着色剤としては、例えば、各種顔料、各種染料の他、蛍光材料、りん光材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
この着色層3は、その平均厚さが、好ましくは0.03mm以上0.5mm以下、より好ましくは0.1mm以上0.3mm以下に設定される。着色層3の平均厚さをかかる範囲内に設定することで、着色層3が透けて保護層2Aが視認されるのを防止しつつ、着色層3により広告媒体100に装飾を確実に施すことができる。
【0059】
以上、本発明の広告媒体について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0060】
例えば、本発明の広告媒体が備える各層には、同様の機能を発揮し得る、任意の成分が添加されていてもよい。
【0061】
また、本発明の広告媒体が備える各層の構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
【実施例
【0062】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
1.ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素濃度率の検討
1-1.広告媒体100の製造
[実施例1A]
[1A]まず、以下に示すポリ塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂)、アクリル系加工助剤、安定剤および滑剤をそれぞれ用意し、これらを攪拌・混合することにより保護層形成用材料を調製した。
【0063】
(塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC))
・塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂(カネカ社製、「H516A」:塩素濃度 65%、重合度600):38.9重量部
【0064】
(塩化ビニル樹脂(PVC))
・塩化ビニル樹脂(信越化学工業社製、「TK-800」:塩素濃度 56%、重合度800):61.1重量部
【0065】
(アクリル系加工助剤)
・アクリル系ポリマー(カネカ社製、「PA-40」):3.0重量部
【0066】
(アクリル系補強剤)
・アクリル系ポリマー(カネカ社製、「FM」):10.0重量部
【0067】
(安定剤)
・スズ系安定剤(日東化成社製、「BM-N」、ジブチルスズ・マレイン酸塩):3.0重量部
【0068】
(滑剤)
・カルシウムステアレート(日油社製、「GF-200」):3.0重量部
【0069】
[2A]次に、調製された保護層形成用材料を、押出成形法を用いて成形した後、切断することで、縦5cm×横5cm×平均厚さ0.5mmのシート状をなす保護層2Aを得た。
【0070】
なお、この保護層2Aの熱収縮率を、JIS K 7133 100に準拠して、100℃のオーブンに30分間加熱し、室温まで冷却後、ノギスを用いて熱収縮率を測定したところ、-3.5%であった。さらに、保護層2Aのビカット軟化温度を、JIS K 7206準拠の測定装置を用いて測定したところ、84℃であった。
【0071】
[3A]次に、基材1として、ポリエチレン発泡体(三福工業社製、「FC」、厚さ30.0mm)を用意した。この基材1は、低密度ポリエチレン35wt%、エチレン酢酸ビニル共重合体25wt%、炭酸カルシウム40wt%の重量比で混合したものを、アゾジカルボン酸アミド(発生ガス量270mg/g)で発泡させた発泡体である。
【0072】
なお、この基材1の熱収縮率を、JIS K 7133 に準拠して、100℃のオーブンに30分間加熱し、室温まで冷却後、ノギスを用いて加熱収縮率を測定したところ、-3.0%であった。
【0073】
[4A]次に、基材1および保護層2Aを用い、基材1の上面および下面の双方に、2液混合型エポキシ系接着剤(ヘンケル社製、「ER-13A、ER-13B」)を介して、保護層2Aを接合することで、基材1の両面に接着層を介して保護層2Aが積層された、実施例1Aの積層体10を得た。
なお、この積層体10における接着層の平均厚さは0.1mmであった。
【0074】
[5A]次に、得られた積層体10の上面に、塩化ビニル樹脂を主材料として構成され、着色剤としてカーボンブラックを含有する、平均厚さ0.08mmの着色層3を接合することにより、実施例1Aの広告媒体100を得た。
【0075】
[実施例2A~6A、比較例1A]
前記工程[1A]において、保護層形成用材料を調製する際に用いたポリ塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂)、アクリル系加工助剤、安定剤および滑剤の種類ならびに含有量を、それぞれ、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1Aと同様にして、実施例2A~6A、比較例1Aの広告媒体100を得た。
【0076】
なお、塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC)として、以下のものも用意した。
(塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC))
・塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂(カネカ社製、「HA-25L」:塩素濃度 68%、重合度700)
【0077】
1-2.評価
各実施例および各比較例の広告媒体100について、それぞれ、以下に示すような方法を用いて、その耐熱性を評価した。
【0078】
すなわち、各実施例および各比較例の広告媒体100について、それぞれ、赤外線照射ランプを用いて、所定の温度で30分間加熱し、この加熱に伴う保護層2の変形により目視で着色層3に変形・膨れが認められるまで、所定の温度を上昇させて、この着色層3における変形・膨れが認められた際の保護層2Aにおける温度を決定した。
【0079】
そして、各実施例および各比較例の広告媒体100について、それぞれ、決定された保護層2Aの温度から、以下の基準にしたがって評価した。
【0080】
◎:保護層2Aの温度が110℃×30分で変形、膨れが認められなかった。
〇:保護層2Aの温度が100℃×30分で変形、膨れが認められず、
110℃×30分で変形、膨れが認められた。
△:保護層2Aの温度が90℃×30分で変形、膨れが認められず、
100℃×30分で変形、膨れが認められた。
×:保護層2Aの温度が90℃×30分で変形、膨れが認められた。
【0081】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の広告媒体100における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示したように、各実施例の広告媒体100では、保護層2Aに含まれるポリ塩化ビニル系樹脂の塩素濃度率が59.5%以上68.0%以下であることを満足しており、その結果、広告媒体100の加熱による着色層3の変形が抑制されており、広告媒体100を優れた耐熱性を発揮し得るものとすることができた。
【0084】
これに対して、各比較例における広告媒体100では、保護層2Aに含まれるポリ塩化ビニル系樹脂の塩素濃度率が59.5%以上68.0%以下であることを満足しておらず、その結果、広告媒体100の加熱による着色層3の変形を抑制することができず、広告媒体100に優れた耐熱性を付与することができなかった。
【0085】
2.塩化ビニル樹脂(PVC)の重合度の検討
2-1.広告媒体100の製造
[実施例1B]
[1B]まず、以下に示すポリ塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂)、アクリル系加工助剤、安定剤および滑剤をそれぞれ用意し、これらを攪拌・混合することにより保護層形成用材料を調製した。
【0086】
(塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC))
・塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂(カネカ社製、「H-516A」:塩素濃度 65%、重合度600):38.9重量部
【0087】
(塩化ビニル樹脂(PVC))
・塩化ビニル樹脂(信越化学工業社製、「TK-500」:塩素濃度 56%、重合度500):61.1重量部
【0088】
(アクリル系加工助剤)
・アクリル系ポリマー(カネカ社製、「PA-40」):3.0重量部
【0089】
(アクリル系補強剤)
・アクリル系ポリマー(カネカ社製、「FM」):10.0重量部
【0090】
(安定剤)
・スズ系安定剤(日東化成社製、「BM-N」、ジブチルスズ・マレイン酸塩):3.0重量部
【0091】
(滑剤)
・カルシウムステアレート(日油社製、「GF-200」):3.0重量部
【0092】
[2B]次に、調製された保護層形成用材料を、押出成形法を用いて成形した後、切断することで、縦5cm×横5cm×平均厚さ0.5mmのシート状をなす保護層2Aを得た。
【0093】
なお、この保護層2Aの熱収縮率を、JIS K 7133 100に準拠して、100℃のオーブンに30分間加熱し、室温まで冷却後、ノギスを用いて熱収縮率を測定したところ、-3.5%であった。さらに、保護層2Aのビカット軟化温度を、JIS K 7206準拠の測定装置を用いて測定したところ、82℃であった。
【0094】
[3B]次に、基材1として、ポリエチレン発泡体(三福工業社製、「FC」、厚さ30.0mm、熱収縮率-3.0%)を用意した。
【0095】
[4B]次に、基材1および保護層2Aを用い、基材1の上面および下面の双方に、2液混合型エポキシ系接着剤(ヘンケル社製、「ER-13A、ER-13B」)を介して、保護層2Aを接合することで、基材1の両面に接着層を介して保護層2Aが積層された、実施例1Bの積層体10を得た。
なお、この積層体10における接着層の平均厚さは0.1mmであった。
【0096】
[5B]次に、得られた積層体10の上面に、塩化ビニル樹脂を主材料として構成され、着色剤としてカーボンブラックを含有する、平均厚さ0.08mmの着色層3を接合することにより、実施例1Bの広告媒体100を得た。
【0097】
[実施例2B~4B]
前記工程[1B]において、保護層形成用材料を調製する際に用いた塩化ビニル樹脂(PVC)の種類を、それぞれ、表2に示すように変更したこと以外は、前記実施例1Bと同様にして、実施例2B~4Bの広告媒体100を得た。
【0098】
なお、塩化ビニル樹脂(PVC)として、以下のものも用意した。
(塩化ビニル樹脂(PVC))
・塩化ビニル樹脂(信越化学工業社製、「TK-800」:塩素濃度 56%、重合度800)
・塩化ビニル樹脂(信越化学工業社製、「TK-1000」:塩素濃度 56%、重合度1000)
・塩化ビニル樹脂(信越化学工業社製、「TK-1300」:塩素濃度 56%、重合度1300)
【0099】
2-2.評価
各実施例の広告媒体100について、それぞれ、以下に示すような方法を用いて、その耐熱性を評価した。
【0100】
すなわち、各実施例の広告媒体100について、それぞれ、赤外線照射ランプを用いて、所定の温度で30分間加熱し、この加熱に伴う保護層2の変形により目視で着色層3に変形・膨れが認められるまで、所定の温度を上昇させて、この着色層3における変形・膨れが認められた際の保護層2Aにおける温度を決定した。
【0101】
そして、各実施例および各比較例の広告媒体100について、それぞれ、決定された保護層2Aの温度から、以下の基準にしたがって評価した。
【0102】
◎:保護層2Aの温度が110℃×30分で変形、膨れが認められなかった。
〇:保護層2Aの温度が100℃×30分で変形、膨れが認められず、
110℃×30分で変形、膨れが認められた。
△:保護層2Aの温度が90℃×30分で変形、膨れが認められず、
100℃×30分で変形、膨れが認められた。
×:保護層2Aの温度が90℃×30分で変形、膨れが認められた。
【0103】
以上のようにして得られた各実施例の広告媒体100における評価結果を、それぞれ、下記の表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
表2に示したように、各実施例の広告媒体100では、塩化ビニル樹脂(PVC)の数平均重合度がより適切な範囲内に設定されること、すなわち1000以上1300以下であることを満足することで、広告媒体100の加熱による着色層3の変形がより的確に抑制されており、広告媒体100をより優れた耐熱性を発揮し得るものとすることができた。
【符号の説明】
【0106】
1 基材
2A 保護層
3 着色層
10 積層体
100 広告媒体
図1
図2