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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 301
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019186600
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021062484
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 星潤
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 恒之
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-103598(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203972(WO,A1)
【文献】特開2012-096514(JP,A)
【文献】特開2016-150435(JP,A)
【文献】特開2004-149280(JP,A)
【文献】特開2019-162746(JP,A)
【文献】特開2009-214439(JP,A)
【文献】特開2010-089289(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0147830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラーに架橋され、前記ローラーとの接触面とは反対側の面である支持面で媒体を支持して回転することで前記媒体を搬送方向に搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記支持面で支持される媒体に液体を吐出する液体吐出部と、
前記接触面に付着した液体を前記接触面側から乾燥させる乾燥部と、
洗浄液を用いて前記支持面を洗浄する洗浄部と、
前記支持面を加熱することで前記洗浄液を乾燥させる支持面加熱部と、
を備え
前記乾燥部として前記接触面に向けて送風する送風部を有し、
前記送風部は、前記支持面加熱部による前記支持面の加熱領域に対応する位置における前記接触面に向けて送風することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項に記載の液体吐出装置において、
前記搬送ベルトの駆動基板を備え、
前記送風部は、前記駆動基板から発生する熱で加熱された空気を前記接触面に向けて送風することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体吐出装置において、
前記乾燥部として前記接触面を加熱する加熱部を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項に記載の液体吐出装置において、
複数の前記ローラーの少なくとも1つが前記加熱部を兼ねることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項に記載の液体吐出装置において、
前記加熱部は、非接触式のヒーターであることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項からのいずれか1項に記載の液体吐出装置において、
前記搬送ベルトは、前記支持面に粘着剤が塗られており、
前記媒体は、少なくとも前記液体吐出部と対向する領域において前記粘着剤で前記支持面に貼り付けられた状態で搬送され、
前記加熱部は、複数の前記ローラーのうちの前記媒体の前記支持面への貼り付け開始位置から最短距離の最短ローラーまでの距離が、複数の前記ローラーのうちの前記最短ローラー以外のローラーまでの距離よりも、短くなる位置に配置されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の液体吐出装置において、
前記乾燥部による乾燥領域を仕切る仕切りが設けられていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項に記載の液体吐出装置において、
前記搬送ベルトを前記接触面側から支持するプラテンを備え、
前記仕切りは、前記プラテンに取り付けられていることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のローラーに架橋される無端状の搬送ベルトを用いて媒体を搬送しつつ該媒体に液体を吐出する液体吐出装置が使用されている。例えば、特許文献1には、ベルト回転ローラーとベルト駆動ローラーとに架橋された無端ベルトを用いて印刷媒体を搬送しつつ該印刷媒体に吐出ヘッドからインクを吐出する印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-58283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される印刷装置のように、複数のローラーに架橋される無端状の搬送ベルトを用いて媒体を搬送しつつ該媒体に液体を吐出する従来の液体吐出装置においては、吐出された液体のミストが搬送ベルトにおけるローラーと接触する側に付着するなどして、搬送ベルトにおけるローラーとの接触面が濡れる場合があった。そして、搬送ベルトにおけるローラーとの接触面が濡れると、ローラーが搬送ベルトに対して滑り、搬送精度が低下する虞があった。そこで、本発明は、搬送ベルトによる搬送精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の液体吐出装置は、複数のローラーに架橋され、前記ローラーとの接触面とは反対側の面である支持面で媒体を支持して回転することで前記媒体を搬送方向に搬送する無端状の搬送ベルトと、前記支持面で支持される媒体に液体を吐出する液体吐出部と、前記接触面に付着した液体を前記接触面側から乾燥させる乾燥部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施例に係る液体吐出装置の概略側面図。
図2図1の液体吐出装置における送風部の概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の液体吐出装置は、複数のローラーに架橋され、前記ローラーとの接触面とは反対側の面である支持面で媒体を支持して回転することで前記媒体を搬送方向に搬送する無端状の搬送ベルトと、前記支持面で支持される媒体に液体を吐出する液体吐出部と、前記接触面に付着した液体を前記接触面側から乾燥させる乾燥部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、接触面に付着した液体を接触面側から乾燥させる乾燥部を備えることで、接触面が濡れてローラーに対して搬送ベルトが滑ることなどを抑制でき、搬送ベルトによる搬送精度の低下を抑制することができる。
【0009】
本発明の第2の態様の液体吐出装置は、前記第1の態様において、前記乾燥部として前記接触面に向けて送風する送風部を備えることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、接触面に向けて送風することにより、搬送ベルトの過昇温を抑制しつつ接触面を乾燥させることができる。
【0011】
本発明の第3の態様の液体吐出装置は、前記第2の態様において、前記搬送ベルトの駆動基板を備え、前記送風部は、前記駆動基板から発生する熱で加熱された空気を前記接触面に向けて送風することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、駆動基板から発生する熱で加熱された空気を接触面に向けて送風することで、接触面を効率的に乾燥させることができる。
【0013】
本発明の第4の態様の液体吐出装置は、前記第2または第3の態様において、洗浄液を用いて前記支持面を洗浄する洗浄部と、前記支持面を加熱することで前記洗浄液を乾燥させる支持面加熱部と、を備え、前記送風部は、前記支持面加熱部による前記支持面の加熱領域に対応する位置における前記接触面に向けて送風することを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、支持面加熱部による支持面の加熱領域に対応する位置における接触面に向けて送風することで、接触面を効率的に乾燥させることができる。
【0015】
本発明の第5の態様の液体吐出装置は、前記第1から第4のいずれか1つの態様において、前記乾燥部として前記接触面を加熱する加熱部を備えることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、接触面を加熱することにより、装置内に気流を発生させることを抑制しつつ接触面を乾燥させることができる。
【0017】
本発明の第6の態様の液体吐出装置は、前記第5の態様において、複数の前記ローラーの少なくとも1つが前記加熱部を兼ねることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、ローラーの少なくとも1つが加熱部を兼ねることで、新たな別の部材を用意することなく加熱部を形成でき、装置構成を簡単にすることができる。
【0019】
本発明の第7の態様の液体吐出装置は、前記第5の態様において、前記加熱部は、非接触式のヒーターであることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、加熱部を非接触式のヒーターとすることで、加熱部が搬送ベルトに接触することに伴う搬送ベルトの振動などを抑制することができる。
【0021】
本発明の第8の態様の液体吐出装置は、前記第5から第7のいずれか1つの態様において、前記搬送ベルトは、前記支持面に粘着剤が塗られており、前記媒体は、少なくとも前記液体吐出部と対向する領域において前記粘着剤で前記支持面に貼り付けられた状態で搬送され、前記加熱部は、複数の前記ローラーのうちの前記媒体の前記支持面への貼り付け開始位置から最短距離の最短ローラーまでの距離が、複数の前記ローラーのうちの前記最短ローラー以外のローラーまでの距離よりも、短くなる位置に配置されていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、媒体の支持面への貼り付け開始位置の近傍に加熱部を配置することで、搬送ベルトの加熱に伴う粘着剤の昇温による粘着性の向上により、媒体を支持面に効果的に貼り付けることができる。
【0023】
本発明の第9の態様の液体吐出装置は、前記第1から第8のいずれか1つの態様において、前記乾燥部による乾燥領域を仕切る仕切りが設けられていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、仕切りが設けられていることで、乾燥領域における乾燥効率を高めることができる。
【0025】
本発明の第10の態様の液体吐出装置は、前記第9の態様において、前記搬送ベルトを前記接触面側から支持するプラテンを備え、前記仕切りは、前記プラテンに取り付けられていることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、仕切りはプラテンに取り付けられていることで、新たに仕切りを取り付ける部材を用意することなく、仕切りを効果的に配置することができる。
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。最初に、本発明の一実施例にかかる液体吐出装置1の概要について図1を参照して説明する。
【0028】
図1で表されるように、本実施例の液体吐出装置1は、回転方向C1に回転することで媒体Mを搬送方向Aに搬送可能な搬送ベルト5を備えている。また、ロール状の媒体Mをセットして回転方向C1に回転することで媒体Mを繰り出すことが可能な繰り出し部2を備えている。搬送ベルト5は、ローラー群9を介して繰り出し部2から繰り出された媒体Mを搬送方向Aに搬送可能な構成となっている。搬送ベルト5は、搬送方向Aの上流側に位置する従動ローラー3と、搬送方向Aの下流側に位置する駆動ローラー4と、に架け渡された無端ベルトである。
【0029】
ここで、搬送ベルト5は外側表面である支持面5aに粘着剤が塗られた粘着性ベルトである。図1で表されるように、粘着剤が塗られた支持面5aに媒体Mが貼り付けられた状態で、媒体Mは搬送ベルト5に支持されて搬送される。搬送ベルト5における媒体Mの支持領域は、従動ローラー3と駆動ローラー4とで架橋された上側の領域である。また、駆動ローラー4は不図示のモーターの駆動力により回転するローラーであり、従動ローラー3は駆動ローラー4を回転させることに伴う搬送ベルト5の回転に従動することで回転するローラーである。
【0030】
ローラー群9から搬送ベルト5に繰り出された媒体Mは、押圧ローラー6により押圧されて支持面5aに貼り付けられる。押圧ローラー6は搬送方向Aと交差する幅方向Bに延設され、搬送方向Aに沿う移動方向Dに移動可能となっている。また、押圧ローラー6の移動範囲における搬送ベルト5を介する下部には、プラテン12が設けられており、プラテン12に向けて媒体M及び搬送ベルト5を挟んで押圧ローラー6を押し付けながら移動方向Dに移動させることにより、媒体Mを確りと支持面5aに貼り付けることができる構成になっている。すなわち、押圧ローラー6が幅方向Bに亘り媒体Mを搬送ベルト5に押し当てることで、皺などの発生が抑制された状態で媒体Mが搬送ベルト5に対して貼り付けられる。
【0031】
また、液体吐出装置1は、幅方向Bに延設されるキャリッジ軸15に沿って幅方向Bに往復移動可能なキャリッジ7と、キャリッジ7に取り付けられた液体吐出部としてのヘッド8と、を備えている。ヘッド8は、搬送方向Aに搬送される媒体Mに液体であるインクを吐出する。搬送ベルト5を介してヘッド8と対向する領域には、プラテン14が設けられている。ヘッド8と対向する領域においてプラテン14により搬送ベルト5を支持することで、搬送ベルト5がヘッド8と対向する領域において振動してヘッド8から吐出されたインクの着弾位置がずれて画像品質が低下することを抑制できる。
【0032】
このように、本実施例の液体吐出装置1は、搬送方向Aと交差する幅方向Bにキャリッジ7を往復移動させながら、搬送される媒体Mにヘッド8からインクを吐出して画像を形成することが可能である。このような構成のキャリッジ7を備えていることにより、本実施例の液体吐出装置1は、所定の搬送量で媒体Mを搬送方向Aに搬送させることと、媒体Mを停止した状態でキャリッジ7を幅方向Bに移動させながらインクを吐出させることと、を繰り返し、媒体Mに所望の画像を形成する。
【0033】
なお、本実施例の液体吐出装置1は、媒体Mの所定量の搬送とキャリッジ7の往復移動とを交互に繰り返して印刷を行う所謂シリアルプリンターであるが、媒体Mの幅方向Bに沿ってライン状にノズルが形成されたラインヘッドを使用して、連続的に媒体Mを搬送しながら連続的に印刷を行う所謂ラインプリンターであってもよい。
【0034】
画像が形成された媒体Mは、本実施例の液体吐出装置1から排出されると、本実施例の液体吐出装置1よりも後段に設けられた、媒体Mに吐出されたインクの成分を揮発させる乾燥装置や画像が形成された媒体Mを巻き取る巻取装置などに送られる。
【0035】
ここで、媒体Mとしては、被捺染材を好ましく用いることができる。被捺染材とは、捺染の対象となる布地や、衣服や、その他の服飾製品等のことを言う。布地には、綿、絹、羊毛等の天然繊維やナイロン等の化学繊維あるいはこれらを混ぜた複合繊維の織物、編物、不織布等が含まれる。また、衣服や、その他の服飾製品には、縫製後のTシャツ、ハンカチ、スカーフ、タオル、手提げ袋、布製のバッグ、カーテン、シーツ、ベッドカバー等のファニチャー類等の他、縫製前の状態のパーツとして存在する裁断前後の布地等も含まれる。
【0036】
さらに、媒体Mとしては、上記被捺染材の他、普通紙、上質紙、及び光沢紙などのインクジェット印刷用専用紙等を用いることができる。また、媒体Mとしては、例えば、インクジェット印刷用に表面処理をしていない、すなわち、インク吸収層を形成していないプラスチックフィルム、並びに紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているもの及びプラスチックフィルムが接着されているものも用いることができる。当該プラスチックとしては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。
【0037】
媒体Mとして被捺染材を用いた場合、被捺染材は媒体Mに吐出されたインクが裏側の面まで滲む現象であるインクの裏抜けをし易いので、搬送ベルト5がインクで汚れる場合がある。そこで、本実施例の液体吐出装置1には、裏抜けして搬送ベルト5の支持面5aに付着したインクを洗浄するための洗浄部10を備えている。洗浄部10は、洗浄液が浸されて支持面5aと接触する洗浄ブラシを備えている。また、洗浄ブラシを支持面5aに接触させることにより支持面5aに付着した洗浄液を送風することで除去する送風部11を備えている。さらに、本実施例の液体吐出装置1は、送風部11で除去しきれなかった洗浄液を加熱して乾燥させることが可能な支持面加熱部13を備えている。
【0038】
本実施例の液体吐出装置1は、駆動ローラー4を回転方向C1に回転させることで媒体Mを搬送方向Aに搬送可能である。また、液体吐出装置1は、駆動ローラー4を回転方向C1とは逆方向である回転方向C2に回転させることで媒体Mを搬送方向Aとは逆の方向に搬送させることも可能である。
【0039】
なお、本実施例の液体吐出装置1のように、液体吐出部から液体を媒体Mに向けて吐出する構成においては、媒体Mに着弾しなかった液体や液体を吐出することに伴って発生するミストなどが浮遊し、搬送ベルト5の支持面5aとは反対側である従動ローラー3及び駆動ローラー4との接触面5bに付着することがある。このように、接触面5bに液体が付着すると、従動ローラー3及び駆動ローラー4に対して搬送ベルト5が滑り、搬送精度が低下する場合がある。そこで、本実施例の液体吐出装置1は、接触面5bに付着した液体を乾燥させる乾燥部を備えている。
【0040】
そこで、次に、本実施例の液体吐出装置1の要部である乾燥部について、図1及び図2を参照して以下に説明する。以下に説明する通り、本実施例の液体吐出装置1は、3種類の乾燥部を備えている。しかしながら、乾燥部として以下の3種類のうちの少なくとも1つ、或いは、接触面5bに付着した液体を乾燥させることが可能であれば以下の3種類とは異なる構成の乾燥部を備えていてもよい。
【0041】
最初に、乾燥部としての駆動ローラー4について説明する。本実施例の駆動ローラー4は、図1で表されるように、電熱線4aを有するヒートローラーとなっている。詳細には、本実施例の駆動ローラー4は、図2で表される制御部としての基板21により電熱線4aを制御し、駆動ローラー4と接触する接触面5bを加熱することで接触面5bに付着した液体を乾燥させることが可能な構成となっている。搬送ベルト5の構成材料などに特に限定はないが、本実施例の搬送ベルト5は加熱しても熱膨張率の小さいアラミド心線を有する無端ベルトを採用している。
【0042】
次に、乾燥部としての赤外線ヒーター19について説明する。本実施例の赤外線ヒーター19は、図1で表されるように、従動ローラー3よりも駆動ローラー4に近い位置に設けられており、基板21の制御により接触面5bに向けて照射方向Eに赤外線を照射して、接触面5bを加熱することで接触面5bに付着した液体を乾燥させることが可能な構成となっている。
【0043】
次に、乾燥部としての送風部20について説明する。本実施例の送風部20は、図1で表されるように、駆動ローラー4よりも従動ローラー3に近い位置に設けられている。また、図2で表されるように、送風部20は、ファン18A及びファン18Bの2つのファン18を備えており、幅方向Bに沿う送風方向Fに送風可能な構成となっている。なお、本実施例の送風部20は、ファン18としてファン18A及びファン18Bの2つのファンを備えているが、いずれか1つであってもよく、さらには、ファン18A及びファン18Bとは別のファンをさらに備えていてもよい。
【0044】
ここで、送風部20は、搬送ベルト5の内側領域に位置する送風領域20Aと、搬送ベルト5の内側領域に対して幅方向Bに外れた位置にある基板21の収容領域20Bと、を備えている。そして、ファン18A及びファン18Bは共に図2で表される送風方向Fに送風可能な構成となっている。送風領域20Aに送風された気流は、気流排出口22から排出されて搬送ベルト5の接触面5bに向けて排出される。
【0045】
送風部20は、このような構成であるため、基板21から発生した熱を、ファン18A及びファン18Bにより、収容領域20Bから送風領域20A、さらには送風領域20Aから搬送ベルト5の接触面5bに送風することができる。すなわち、基板21から発生した熱で昇温した空気を接触面5bに送風し、接触面5bに付着した液体を乾燥させることが可能な構成となっている。また、基板21を空冷する効果もある。ここで、送風領域20Aの温度を検出する温度センサー及び湿度を検出する湿度センサーを設け、送風領域20Aの温湿度が所定範囲内に収まるように送風部および加熱部を制御することが好ましい。なお、温度センサー及び湿度センサーは、プラテン12や平板16などに取り付けることができる。
【0046】
上記のように本実施例の液体吐出装置1は、複数のローラーとしての従動ローラー3及び駆動ローラー4に架橋され、接触面5bとは反対側の面である支持面5aで媒体Mを支持して回転方向C1に回転することで媒体Mを搬送方向Aに搬送する無端状の搬送ベルト5と、支持面5aで支持される媒体Mにインクを吐出するヘッド8と、を備えているが、さらに、接触面5bに付着したインクなどの液体を接触面5b側から乾燥させる乾燥部を備えている。
【0047】
このように、接触面5bに付着した液体を接触面5b側から乾燥させる乾燥部を備えることで、接触面5bが濡れて従動ローラー3及び駆動ローラー4に対して搬送ベルト5が滑ることなどを抑制でき、搬送ベルト5による搬送精度の低下を抑制することができる。なお、本実施例の液体吐出装置1は接触面5bに付着したインクなどの液体をほぼ完全に乾燥できるよう乾燥部の乾燥条件を設定している。このため、接触面5bが濡れて滑ることを特に効果的に抑制できる構成となっている。しかしながら、このような構成に限定されず、搬送ベルト5による搬送精度の低下を実質的に生じない程度、すなわち、搬送精度に実質的な経時変化がない程度に接触面5bに付着した液体を乾燥できればよい。なお、搬送ベルト5による搬送精度の低下をさらに抑制するために、エンコーダーなどを設けて搬送精度の管理を行ってもよい。
【0048】
ここで、上記のように本実施例の液体吐出装置1は、乾燥部として接触面5bに向けて送風する送風部20を備えている。乾燥部として搬送ベルトを加熱する加熱部を多用すると搬送ベルトの過昇温を招く虞があるが、ファン18などを用いて接触面5bに向けて送風することにより、搬送ベルト5の過昇温を抑制しつつ接触面5bを乾燥させることができる。
【0049】
また、上記のように本実施例の液体吐出装置1は、搬送ベルト5の駆動基板の役割をする基板21を備えているが、送風部20は、基板21から発生する熱で加熱された空気を接触面5bに向けて送風することができる。このため、本実施例の液体吐出装置1は、接触面5bを効率的に乾燥させることができる。
【0050】
また、上記のように本実施例の液体吐出装置1は、洗浄液を用いて支持面5aを洗浄する洗浄部10と、支持面5aを加熱することで該洗浄液を乾燥させる支持面加熱部13と、を備えているが、送風部20は、図1で表されるように、支持面加熱部13による支持面5aの加熱領域に対応する位置、すなわち、該加熱領域の反対側の位置における接触面5bに向けて送風することができる配置となっている。このように、支持面加熱部13による支持面5aの加熱領域に対応する位置における接触面5bに向けて送風することで、支持面5aを加熱することに伴い加熱された接触面5bに向けて送風でき、接触面5bを効率的に乾燥させることができる。
【0051】
また、上記のように本実施例の液体吐出装置1は、乾燥部として接触面5bを加熱する加熱部としてのヒートローラーである駆動ローラー4と赤外線ヒーター19とを備えている。装置内に過度な気流を発生させるとインクの吐出方向にずれを生じさせてしまう虞などがあるが、このような加熱部を用いて接触面5bを加熱することにより、装置内に過度に気流を発生させることを抑制しつつ接触面5bを乾燥させることが可能となる。なお、本実施例の液体吐出装置1においては、基板21による制御により、搬送ベルト5の温度が80℃以上にならないように駆動ローラー4と赤外線ヒーター19との温度制御をしている。
【0052】
ここで、本実施例の液体吐出装置1のように、搬送ベルト5を架橋する複数のローラーのうちの少なくとも1つが加熱部を兼ねることで、新たな別の部材を用意することなく加熱部を形成でき、装置構成を簡単にすることができる。なお、本実施例においては駆動ローラー4を加熱部としてのヒートローラーとしたが、従動ローラー3を加熱部としてのヒートローラーとしてもよく、駆動ローラー4及び従動ローラー3を共に加熱部としてのヒートローラーとしてもよい。
【0053】
また、加熱部としての赤外線ヒーター19は、非接触式のヒーターである。このように、加熱部を非接触式のヒーターとすることで、加熱部が搬送ベルト5に接触することに伴う搬送ベルト5の振動などを抑制することができる。
【0054】
なお、本実施例の液体吐出装置1における搬送ベルト5は支持面5aに粘着剤が塗られており、媒体Mは少なくともヘッド8と対向する領域において粘着剤で支持面5aに貼り付けられた状態で搬送される。このような構成の液体吐出装置1においては、加熱部が搬送方向Aにおける下流側の駆動ローラー4よりも搬送方向Aにおける上流側の従動ローラー3に近い位置に配置されていることが好ましい。別の表現をすると、加熱部は、搬送ベルト5が架橋される複数のローラーのうちの媒体Mの支持面5aへの貼り付け開始位置から最短距離の最短ローラーまでの距離が、複数のローラーのうちの最短ローラー以外のローラーまでの距離よりも、短くなる位置に配置されていることが好ましい。媒体Mの支持面5aへの貼り付け開始位置の近傍に加熱部を配置することで、搬送ベルト5の加熱に伴う粘着剤の昇温による粘着性の向上により、媒体Mを支持面5aに効果的に貼り付けることができるためである。
【0055】
ただし、本実施例の液体吐出装置1のように、加熱部が搬送方向Aにおける上流側の従動ローラー3よりも搬送方向Aにおける下流側の駆動ローラー4に近い位置に配置されていてもよいことは言うまでもない。なお、搬送ベルト5は3つ以上のローラーに架橋されていてもよく、そのような構成の場合、貼り付け開始位置に最も近いローラー3対して近い位置に加熱部が配置されていることが好ましい。
【0056】
ここで、図1で表されるように、本実施例の液体吐出装置1は、平板16及び17が設けられている。平板16及び17は、幅方向Bに延設されており、乾燥部による乾燥領域を仕切る仕切りの役割をしている。このように、仕切りが設けられていることで、乾燥領域における乾燥効率を高めることができる。
【0057】
なお、上記のように、本実施例の液体吐出装置1は、搬送ベルト5を接触面5b側から支持するプラテン12及びプラテン14を備えているが、平板16はプラテン12に取り付けられており、平板17はプラテン14に取り付けられている。このように、仕切りがプラテンに取り付けられていることで、新たに仕切りを取り付ける部材を用意することなく、仕切りを効果的に配置することができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1…液体吐出装置、2…繰り出し部、3…従動ローラー、
4…駆動ローラー(乾燥部、加熱部)、4a…電熱線、5…搬送ベルト、5a…支持面、
5b…接触面、6…押圧ローラー、7…キャリッジ、8…ヘッド(液体吐出部)、
9…ローラー群、10…洗浄部、11…送風部、12…プラテン、
13…支持面加熱部、14…プラテン、15…キャリッジ軸、16…平板(仕切り)、
17…平板(仕切り)、18…ファン、18A…ファン、18B…ファン、
19…赤外線ヒーター(乾燥部、加熱部)、20…送風部(乾燥部)、
21…基板(駆動基板)、22…気流排出口、M…媒体
図1
図2