(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 303
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2019186601
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 星潤
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 恒之
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-189109(JP,A)
【文献】中国実用新案第207044916(CN,U)
【文献】特開2004-331272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 29/12-29/24
B65H 29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラーに架橋され、前記ローラーとの接触面とは反対側の面である支持面で媒
体を支持して回転することで前記媒体を搬送方向に搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記支持面で支持される媒体に液体を吐出する液体吐出部と、
を備え、
前記搬送ベルトは、該搬送ベルトの周方向と交差する幅方向に沿って該搬送ベルトの端部同士が接続される接続部を有することなく
、前記接続部を有さない無端状の構成ベルトが前記幅方向に複数並べて複数の前記ローラーに架橋されることで形成されて
おり、
前記幅方向に複数並べられる複数の無端状の前記構成ベルト同士は、熱溶着により接続されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
複数のローラーに架橋され、前記ローラーとの接触面とは反対側の面である支持面で媒
体を支持して回転することで前記媒体を搬送方向に搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記支持面で支持される媒体に液体を吐出する液体吐出部と、
前記搬送ベルトを前記接触面側から支持するプラテン
と、
を備え、
前記搬送ベルトは、該搬送ベルトの周方向と交差する幅方向に沿って該搬送ベルトの端部同士が接続される接続部を有することなく、前記接続部を有さない無端状の構成ベルトが前記幅方向に複数並べて複数の前記ローラーに架橋されることで形成されており、
前記幅方向に複数並べられる複数の無端状の前記構成ベルト同士は、接続されており、
前記プラテンは、無端状の前記構成ベルト同士の接続部との接触を避ける前記周方向に沿う溝部が形成されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
複数のローラーに架橋され、前記ローラーとの接触面とは反対側の面である支持面で媒
体を支持して回転することで前記媒体を搬送方向に搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記支持面で支持される媒体に液体を吐出する液体吐出部と、
前記液体吐出部を前記幅方向に沿って往復移動させるキャリッジと、
前記液体吐出部からの前記液体の吐出タイミングを制御する制御部と、
を備え、
前記搬送ベルトは、該搬送ベルトの周方向と交差する幅方向に沿って該搬送ベルトの端
部同士が接続される接続部を有することなく、前記接続部を有さない無端状の構成ベルトが前記幅方向に複数並べて複数の前記ローラーに架橋されることで形成されており、
前記幅方向に複数並べられる複数の無端状の前記構成ベルト同士は、接続されており、
前記制御部は、前記接続部で支持される前記媒体の接続部支持領域における前記液体の吐出タイミングを、前記接続部以外で支持される前記媒体の非接続部支持領域における前記液体の吐出タイミングに対して調整可能であることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のローラーに架橋される無端状の搬送ベルトを用いて媒体を搬送しつつ該媒体に液体を吐出する液体吐出装置が使用されている。例えば、特許文献1には、ベルト回転ローラーとベルト駆動ローラーとに架橋された搬送ベルトを用いて記録媒体を搬送しつつ該記録媒体に噴射ヘッドからインクを吐出する液体噴射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される液体噴射装置のように、複数のローラーに架橋される無端状の搬送ベルトを用いて媒体を搬送しつつ該媒体に液体を吐出する従来の液体吐出装置における搬送ベルトは、幅方向に沿って搬送ベルトの端部同士が接続される接続部を有していた。接続部は、接続部以外の部分と厚み、張力に対する伸び率、硬さなどが異なるため、接続部がローラーと接触する位置にあるときと、接続部がローラーと接触する位置にないときとでは、搬送ベルトの搬送精度にずれが生じる虞があった。そこで、本発明は、搬送ベルトによる搬送精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の液体吐出装置は、複数のローラーに架橋され、前記ローラーとの接触面とは反対側の面である支持面で媒体を支持して回転することで前記媒体を搬送方向に搬送する無端状の搬送ベルトと、前記支持面で支持される媒体に液体を吐出する液体吐出部と、を備え、前記搬送ベルトは、該搬送ベルトの周方向と交差する幅方向に沿って該搬送ベルトの端部同士が接続される接続部を有することなく形成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施例1に係る印刷装置の概略側面図。
【
図2】
図1の印刷装置の搬送ベルトを表す概略斜視図。
【
図3】
図2の搬送ベルトにおける接続部を表す概略平面図。
【
図4】
図2の搬送ベルトにおける接続部を表す概略正面断面図。
【
図5】
図2の搬送ベルトにおける接続部とプラテンとを表す概略正面断面図。
【
図6】本発明の実施例2に係る印刷装置の搬送ベルトを表す概略斜視図。
【
図7】本発明の実施例3に係る印刷装置の搬送ベルトを表す概略斜視図。
【
図8】参考例に係る印刷装置の搬送ベルトを表す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の液体吐出装置は、複数のローラーに架橋され、前記ローラーとの接触面とは反対側の面である支持面で媒体を支持して回転することで前記媒体を搬送方向に搬送する無端状の搬送ベルトと、前記支持面で支持される媒体に液体を吐出する液体吐出部と、を備え、前記搬送ベルトは、該搬送ベルトの周方向と交差する幅方向に沿って該搬送ベルトの端部同士が接続される接続部を有することなく形成されていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、搬送ベルトは、該搬送ベルトの周方向と交差する幅方向に沿って該搬送ベルトの端部同士が接続される接続部を有することなく形成されている。このため、接続部がローラーと接触する位置にあるときと、接続部がローラーと接触する位置にないときとが生じることを抑制できる。したがって、搬送ベルトの配置によって搬送精度にずれが生じることを抑制でき、搬送ベルトによる搬送精度の低下を抑制することができる。
【0009】
本発明の第2の態様の液体吐出装置は、前記第1の態様において、前記搬送ベルトは、前記接続部を有さない無端状の構成ベルトが前記幅方向に複数並べて複数の前記ローラーに架橋されることで形成されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、無端状の構成ベルトが幅方向に複数並べて搬送ベルトが形成されている。幅方向に沿う接続部を有さない幅の広い無端状のベルトを形成するのは困難な場合があるが、このように幅方向に沿う接続部を有さない幅の狭い無端状のベルトを並べる構成とすることで、搬送ベルトの形成の困難性を回避することができる。
【0011】
本発明の第3の態様の液体吐出装置は、前記第2の態様において、前記幅方向に複数並べられる複数の無端状の前記構成ベルト同士は、接続されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、構成ベルト同士は周方向に沿って接続されているので、構成ベルト同士の動きのずれを抑制できる。
【0013】
本発明の第4の態様の液体吐出装置は、前記第3の態様において、前記構成ベルト同士は、熱溶着により接続されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、単一材料で接続できるため、例えば異なる材料を使用することで生じる熱膨張率の違いなどを抑制でき、構成ベルト同士の接続不良などが生じることを抑制できる。
【0015】
本発明の第5の態様の液体吐出装置は、前記第3の態様において、前記構成ベルト同士は、接着剤を用いて接続されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、構成ベルトの素材などに応じて好ましい接着剤を選択して用いることができるので、接続を容易に行うことができる。
【0017】
本発明の第6の態様の液体吐出装置は、前記第3から第5のいずれか1つの態様において、前記搬送ベルトを前記接触面側から支持するプラテンを備え、前記プラテンは、無端状の前記構成ベルト同士の接続部との接触を避ける前記周方向に沿う溝部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、プラテンには接続部との接触を避ける周方向に沿う溝部が形成されているので、接続部が非接続部に対して膨らんでいる場合であっても、溝部により該接続部の膨らみを逃がすことによって搬送ベルトに支持される媒体に凹凸が生じることを抑制できる。
【0019】
本発明の第7の態様の液体吐出装置は、前記第3から第5のいずれか1つの態様において、前記液体吐出部を前記幅方向に沿って往復移動させるキャリッジと、前記液体吐出部からの前記液体の吐出タイミングを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記接続部で支持される前記媒体の接続部支持領域における前記液体の吐出タイミングを、前記接続部以外で支持される前記媒体の非接続部支持領域における前記液体の吐出タイミングに対して調整可能であることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、液体の吐出タイミングを調整することで、接続部が非接続部に対して膨らんでいる場合であっても、該接続部の膨らみに対応した吐出タイミングに調整することで、媒体に対する液体の吐出位置にずれが生じることを抑制できる。
【0021】
[実施例1]
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。最初に、本発明の実施例1にかかる液体吐出装置1の概要について
図1を参照して説明する。
【0022】
図1で表されるように、本実施例の液体吐出装置1は、回転方向C1に回転することで媒体Mを搬送方向Aに搬送可能な搬送ベルト5を備えている。また、ロール状の媒体Mをセットして回転方向C1に回転することで媒体Mを繰り出すことが可能な繰り出し部2を備えている。搬送ベルト5は、ローラー群9を介して繰り出し部2から繰り出された媒体Mを搬送方向Aに搬送可能な構成となっている。搬送ベルト5は、搬送方向Aの上流側に位置する従動ローラー3と、搬送方向Aの下流側に位置する駆動ローラー4と、に架け渡された無端ベルトである。
【0023】
ここで、搬送ベルト5は外側表面である支持面5aに粘着剤が塗られた粘着性ベルトである。
図1で表されるように、粘着剤が塗られた支持面5aに媒体Mが貼り付けられた状態で、媒体Mは搬送ベルト5に支持されて搬送される。搬送ベルト5における媒体Mの支持領域は、従動ローラー3と駆動ローラー4とで架橋された上側の領域である。また、駆動ローラー4は不図示のモーターの駆動力により回転するローラーであり、従動ローラー3は駆動ローラー4を回転させることに伴う搬送ベルト5の回転に従動することで回転するローラーである。
【0024】
ローラー群9から搬送ベルト5に繰り出された媒体Mは、押圧ローラー6により押圧されて支持面5aに貼り付けられる。押圧ローラー6は搬送方向Aと交差する幅方向Bに延設され、搬送方向Aに沿う移動方向Dに移動可能となっている。また、押圧ローラー6の移動範囲における搬送ベルト5を介する下部には、プラテン12が設けられており、プラテン12に向けて媒体M及び搬送ベルト5を挟んで押圧ローラー6を押し付けながら移動方向Dに移動させることにより、媒体Mを確りと支持面5aに貼り付けることができる構成になっている。すなわち、押圧ローラー6が幅方向Bに亘り媒体Mを搬送ベルト5に押し当てることで、皺などの発生が抑制された状態で媒体Mが搬送ベルト5に対して貼り付けられる。
【0025】
また、液体吐出装置1は、幅方向Bに延設されるキャリッジ軸15に沿って幅方向Bに往復移動可能なキャリッジ7と、キャリッジ7に取り付けられた液体吐出部としてのヘッド8と、を備えている。ヘッド8は、搬送方向Aに搬送される媒体Mに液体であるインクを吐出する。搬送ベルト5を介してヘッド8と対向する領域には、プラテン14が設けられている。ヘッド8と対向する領域においてプラテン14により搬送ベルト5を支持することで、搬送ベルト5がヘッド8と対向する領域において振動してヘッド8から吐出されたインクの着弾位置がずれて画像品質が低下することを抑制できる。
【0026】
このように、本実施例の液体吐出装置1は、搬送方向Aと交差する幅方向Bにキャリッジ7を往復移動させながら、搬送される媒体Mにヘッド8からインクを吐出して画像を形成することが可能である。このような構成のキャリッジ7を備えていることにより、本実施例の液体吐出装置1は、所定の搬送量で媒体Mを搬送方向Aに搬送させることと、媒体Mを停止した状態でキャリッジ7を幅方向Bに移動させながらインクを吐出させることと、を繰り返し、媒体Mに所望の画像を形成する。
【0027】
なお、本実施例の液体吐出装置1は、媒体Mの所定量の搬送とキャリッジ7の往復移動とを交互に繰り返して印刷を行う所謂シリアルプリンターであるが、媒体Mの幅方向Bに沿ってライン状にノズルが形成されたラインヘッドを使用して、連続的に媒体Mを搬送しながら連続的に印刷を行う所謂ラインプリンターであってもよい。
【0028】
画像が形成された媒体Mは、本実施例の液体吐出装置1から排出されると、本実施例の液体吐出装置1よりも後段に設けられた、媒体Mに吐出されたインクの成分を揮発させる乾燥装置や画像が形成された媒体Mを巻き取る巻取装置などに送られる。
【0029】
ここで、媒体Mとしては、被捺染材を好ましく用いることができる。被捺染材とは、捺染の対象となる布地や、衣服や、その他の服飾製品等のことを言う。布地には、綿、絹、羊毛等の天然繊維やナイロン等の化学繊維あるいはこれらを混ぜた複合繊維の織物、編物、不織布等が含まれる。また、衣服や、その他の服飾製品には、縫製後のTシャツ、ハンカチ、スカーフ、タオル、手提げ袋、布製のバッグ、カーテン、シーツ、ベッドカバー等のファニチャー類等の他、縫製前の状態のパーツとして存在する裁断前後の布地等も含まれる。
【0030】
さらに、媒体Mとしては、上記被捺染材の他、普通紙、上質紙、及び光沢紙などのインクジェット印刷用専用紙等を用いることができる。また、媒体Mとしては、例えば、インクジェット印刷用に表面処理をしていない、すなわち、インク吸収層を形成していないプラスチックフィルム、並びに紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているもの及びプラスチックフィルムが接着されているものも用いることができる。当該プラスチックとしては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。
【0031】
媒体Mとして被捺染材を用いた場合、被捺染材は媒体Mに吐出されたインクが裏側の面まで滲む現象であるインクの裏抜けをし易いので、搬送ベルト5がインクで汚れる場合がある。そこで、本実施例の液体吐出装置1には、裏抜けして搬送ベルト5の支持面5aに付着したインクを洗浄するための洗浄部10を備えている。洗浄部10は、洗浄液が浸されて支持面5aと接触する洗浄ブラシを備えている。また、洗浄ブラシを支持面5aに接触させることにより支持面5aに付着した洗浄液を送風することで除去する送風部11を備えている。さらに、本実施例の液体吐出装置1は、送風部11で除去しきれなかった洗浄液を加熱して乾燥させることが可能な支持面加熱部13を備えている。
【0032】
本実施例の液体吐出装置1は、駆動ローラー4を回転方向C1に回転させることで媒体Mを搬送方向Aに搬送可能である。また、液体吐出装置1は、駆動ローラー4を回転方向C1とは逆方向である回転方向C2に回転させることで媒体Mを搬送方向Aとは逆の方向に搬送させることも可能である。
【0033】
次に、本実施例の液体吐出装置1の要部である搬送ベルト5について、
図2から
図4と、並びに、参考例としての従来の液体吐出装置で使用される搬送ベルト5を表す
図8と、を参照して以下に説明する。最初に、
図8を参照して従来の液体吐出装置で使用される搬送ベルト5について説明する。
【0034】
図8で表されるように、従来、搬送ベルト5は、端部50同士の接続部51が、幅方向Bに沿って設けられていた。すなわち、シート状の材料を環状にし、その端部50同士を接続することで無端状の搬送ベルト5を製造していた。従来の搬送ベルト5においては、このように無端状の搬送ベルト5を製造し、接続部51が幅方向Bに沿って設けられていたので、接続部51が従動ローラー3及び駆動ローラー4に接触する接触位置にある場合と、接続部51が従動ローラー3及び駆動ローラー4に接触しない非接触位置にある場合と、が発生していた。しかしながら、接続部51と接続部51以外の部分である非接続部52とでは、一定の張力がかかった際の搬送ベルト5の伸び率などが異なる。特に、熱膨張率を低下させるなどの目的で熱膨張率の小さいアラミド心線を有する搬送ベルト5を使用した場合などにおいては、接続部51と非接続部52とにおける、一定の張力がかかった際の搬送ベルト5の伸び率の違いは顕著になる。このため、接続部51が接触位置にある場合と非接触位置にある場合とで、従動ローラー3及び駆動ローラー4の単位回転量に対する搬送ベルト5の移動量に変化が生じる場合があった。
【0035】
ここで、
図4は本実施例の液体吐出装置1の搬送ベルト5の接続部51の一例であるが、接続部51の接続方向以外は従来の液体吐出装置の搬送ベルト5の接続部51と同様の構成であるので
図4を参照すると、例えば
図4で表されるように、接続部51においては、端部50同士がずれて接続される場合があった。このように、接続部51において端部50同士がずれて接続されると、接続部51が接触位置にある場合と非接触位置にある場合とで、従動ローラー3及び駆動ローラー4の単位回転量に対する搬送ベルト5の移動量の差が大きくなる場合がある。したがって、
図8で表されるような従来の搬送ベルト5を備える液体吐出装置においては、接続部51が接触位置にある場合と非接触位置にある場合とで、搬送ベルト5の移動量にばらつきが生じ、媒体Mの搬送精度が低下する場合があった。
【0036】
一方、
図2で表されるように、本実施例の液体吐出装置1においては、端部50同士の接続部51が、搬送方向Aに沿って設けられている。別の表現をすると、端部50同士の接続部51は、従動ローラー3及び駆動ローラー4に対する搬送ベルト5の配置がいずれの場合も、従動ローラー3及び駆動ローラー4に対して一定の状態で接触している。すなわち、接続部51が接触位置にある状態と非接触位置にある状態とに変化するということがないので、搬送ベルト5の移動量にばらつきが生じることが抑制され、媒体Mの搬送精度が低下することが抑制される。
【0037】
別の表現をすると、上記のように本実施例の液体吐出装置1は、複数のローラーとしての従動ローラー3及び駆動ローラー4に架橋され、従動ローラー3及び駆動ローラー4との接触面5bとは反対側の面である支持面5aで媒体Mを支持して回転方向C1に回転することで媒体Mを搬送方向Aに搬送する無端状の搬送ベルト5と、支持面5aで支持される媒体Mにインクを吐出するヘッド8と、を備えているが、本実施例の搬送ベルト5は、該搬送ベルト5の周方向と交差する幅方向Bに沿って該搬送ベルト5の端部50同士が接続される接続部51を有することなく形成されている。このため、本実施例の液体吐出装置1は、接続部51がローラーと接触する位置にあるときと、接続部51がローラーと接触する位置にないときとが生じることを抑制できる。したがって、本実施例の液体吐出装置1は、搬送ベルト5の配置によって搬送精度にずれが生じることを抑制でき、搬送ベルト5による搬送精度の低下を抑制することができる。
【0038】
また、
図2で表されるように、本実施例の搬送ベルト5は、接続部51を有さない無端状の構成ベルト5A、5B及び5Cが幅方向Bに複数並べて従動ローラー3及び駆動ローラー4に架橋されることで形成されている。幅方向Bに沿う接続部51を有さない幅の広い無端状のベルトを形成するのは困難な場合があるが、このように幅方向Bに沿う接続部51を有さない幅の狭い無端状のベルトを並べる構成とすることで、搬送ベルト5の形成の困難性を回避することができる。
【0039】
さらに、本実施例の搬送ベルト5は、幅方向Bに複数並べられる複数の無端状の構成ベルト5A、5B及び5C同士は、接続されている。本実施例の搬送ベルト5は、構成ベルト5A、5B及び5C同士は周方向に沿って接続されているので、構成ベルト5A、5B及び5C同士の動きのずれを抑制できる。
【0040】
ここで、本実施例の搬送ベルト5においては、構成ベルト5A、5B及び5C同士は、熱溶着により接続されている。熱溶着により接続することで、単一材料で接続できるため、例えば異なる材料を使用することで生じる熱膨張率の違いなどを抑制でき、構成ベルト5A、5B及び5C同士の接続不良などが生じることを抑制できる。
【0041】
ただし、このような接続構成に限定されない。接着剤を用いて構成ベルト5A、5B及び5C同士を接続してもよい。接着剤を用いて構成ベルト5A、5B及び5C同士を接続することで、構成ベルト5A、5B及び5Cの素材などに応じて好ましい接着剤を選択して用いることができるので、接続を容易に行うことができる。なお、「接着剤を用いて接続」とは、接着剤を構成ベルト5A、5B及び5Cの端部50同士に塗って貼り合わせることのみを意味するのではなく、接着剤が塗られたテープなどを用いて貼り合わせることなども含む意味である。
【0042】
本実施例の搬送ベルト5においては、接続部51は、具体的には
図3で表されるように、構成ベルト5A、5B及び5Cの端部50同士が平面視でジグザグになるように接続された状態で熱溶着により接続されている。このような構成の接続部51とすることで、構成ベルト5A、5B及び5Cの端部50同士の接触面積を大きくすることができ、接続部51の強度を高くしている。
【0043】
また、上記のように、本実施例の液体吐出装置1は、搬送ベルト5を接触面5b側から支持するプラテン14を備えているが、プラテン14には、
図5で表されるように、接続部51と対向する位置に搬送方向Aに沿って溝14aが設けられている。なお、図示することは省略するが、プラテン12にもプラテン14と同様、接続部51と対向する位置に搬送方向Aに沿って溝が設けられている。すなわち、本実施例の液体吐出装置1におけるプラテン12及び14には、無端状の構成ベルト同士5A、5B及び5Cの接続部51との接触を避ける、搬送ベルト5の周方向に沿う溝部が形成されている。このように、本実施例の液体吐出装置1のプラテン12及び14には接続部51との接触を避ける周方向に沿う溝14aなどの溝部が形成されているので、接続部51が接続部51以外の搬送ベルト5の領域である非接続部52に対して膨らんでいる場合であっても、該溝部により該接続部51の膨らみを逃がすことによって搬送ベルト5に支持される媒体Mに凹凸が生じることを抑制できる。
【0044】
また、
図1で表されるように、本実施例の液体吐出装置1は、ヘッド8を幅方向Bに沿って往復移動させるキャリッジ7と、ヘッド8からのインクの吐出タイミングを制御する制御部16と、を備えている。そして、制御部16は、接続部51で支持される
図5で表される媒体Mの接続部支持領域Maにおけるインクの吐出タイミングを、非接続部52で支持される
図5で表される媒体Mの非接続部支持領域Mbにおけるインクの吐出タイミングに対して調整可能である。本実施例の液体吐出装置1は、インクの吐出タイミングを調整することで、接続部51が非接続部52に対して膨らんでいる場合であっても、該接続部51の膨らみに対応した吐出タイミングに調整することで、媒体Mに対するインクの吐出位置にずれが生じることを抑制できる。
【0045】
[実施例2]
次に、実施例2の液体吐出装置1について、
図6を用いて説明する。なお、
図6において上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。ここで、本実施例の液体吐出装置1は、搬送ベルト5の構成以外は実施例1の液体吐出装置1と同様の形状をしている。
【0046】
上記のように、実施例1の搬送ベルト5は、幅方向Bに沿って端部50同士が接続される接続部51を有さない無端状の構成ベルト5A、5B及び5Cが幅方向Bに複数並べられ、且つ、構成ベルト5A、5B及び5C同士は、熱溶着により接続されていた。一方、
図6で表されるように、本実施例の搬送ベルト5は、幅方向Bに沿って端部50同士が接続される接続部51を有さない無端状の構成ベルト5A、5B及び5Cが幅方向Bに複数並べられることは共通するが、構成ベルト5A、5B及び5C同士は接続されていない。このような構成とすることで、幅方向Bに沿う接続部51がないだけでなく、搬送ベルト5の周方向に沿う接続部51すらない構成とすることができる。
【0047】
[実施例3]
次に、実施例3の液体吐出装置1について、
図7を用いて説明する。なお、
図7において上記実施例1及び実施例2と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。ここで、本実施例の液体吐出装置1は、搬送ベルト5の構成以外は実施例1及び実施例2の液体吐出装置1と同様の形状をしている。
【0048】
上記のように、実施例1及び実施例2の搬送ベルト5は、幅方向Bに沿って端部50同士が接続される接続部51を有さない無端状の構成ベルト5A、5B及び5Cが幅方向Bに複数並べられて構成されていた。一方、
図7で表されるように、本実施例の搬送ベルト5は、幅方向Bに沿って端部50同士が接続される接続部51を有さない1の無端状の構成ベルトで構成されている。このような構成とすることでも、幅方向Bに沿う接続部51がないだけでなく、搬送ベルト5の周方向に沿う接続部51すらない構成とすることができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1…液体吐出装置、2…繰り出し部、3…従動ローラー、4…駆動ローラー、
5…搬送ベルト、5A…構成ベルト、5B…構成ベルト、5C…構成ベルト、
5a…支持面、5b…接触面、6…押圧ローラー、7…キャリッジ、
8…ヘッド(液体吐出部)、9…ローラー群、10…洗浄部、11…送風部、
12…プラテン、13…支持面加熱部、14…プラテン、14a…溝(溝部)、
15…キャリッジ軸、16…制御部、50…端部、51…接続部、52…非接続部、
M…媒体、Ma…接続部支持領域、Mb…非接続部支持領域