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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】発振器、電子機器、及び移動体
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20231219BHJP
   H03B 5/32 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H03H9/19 D
H03B5/32 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019190899
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021068941
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】西澤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】松尾 敦司
(72)【発明者】
【氏名】山口 啓一
(72)【発明者】
【氏名】柳 炳學
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-018279(JP,A)
【文献】特開2008-178022(JP,A)
【文献】特開2013-051673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/76
H03B 5/00-5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1振動部と第2振動部とを有する水晶基板、前記第1振動部において前記水晶基板の両主面に形成されている一対の第1励振電極、および、前記第2振動部において前記第2振動部を前記水晶基板の厚さ方向に挟むように形成されている一対の第2励振電極を備え、前記一対の第2励振電極のうちの少なくとも一方の前記第2励振電極は、前記両主面に対して傾斜している傾斜面に形成されている振動素子と、
前記第1励振電極に電気的に接続され、第1発振信号を出力する第1発振回路と、
前記第2励振電極に電気的に接続され、第2発振信号を出力する第2発振回路と、
前記第2発振信号に基づいて、前記第1発振信号の発振周波数を制御する制御信号を出力する制御信号出力回路と、を備えている、
発振器
【請求項2】
前記両主面と前記傾斜面とは、切断角度が異なる、
請求項1に記載の発振器
【請求項3】
前記第1振動部と前記第2振動部とは、周波数-温度特性が異なる、
請求項1又は請求項2に記載の発振器
【請求項4】
前記第2振動部の前記周波数-温度特性は、前記第1振動部の前記周波数-温度特性よりも周波数変化量が大きい、
請求項3に記載の発振器
【請求項5】
前記傾斜面は、前記第1振動部から離れるにしたがって前記第2振動部の厚さが薄くなるように傾斜している、
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の発振器
【請求項6】
前記傾斜面は、前記第1振動部に近づくにしたがって前記第2振動部の厚さが薄くなるように傾斜している、
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の発振器
【請求項7】
前記第1振動部は、前記両主面のうちの少なくとも一方の前記主面に凸部が形成されている、
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の発振器
【請求項8】
前記振動素子は、前記振動素子をパッケージに固定する固定部を有し、前記第1振動部及び前記第2振動部と、前記固定部との間に、貫通孔及び幅狭部の少なくとも一方を備えている、
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の発振器
【請求項9】
前記第1振動部と前記第2振動部との間に、貫通孔及び薄肉部の少なくとも一方を備える、
請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の発振器
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の発振器を備えている、
電子機器。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の発振器を備えている、
移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動素子、発振器、電子機器、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶基板の両主面に励振電極を形成した水晶振動子は、周波数-温度特性が安定しているため、周波数信号を出力する基準周波数源として、例えば温度補償水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)などの発振器に用いられている。このTCXOは、温度センサーを用いた温度補償回路を備えており、広い温度範囲に亘って安定した周波数信号が得られる。しかし、水晶振動子は、水晶基板がパッケージ内に収容されているため、水晶基板と温度センサーとの間で熱伝達時間差を生じ、温度センサーによる計測温度と水晶基板の温度とに差を生じてしまい温度補償精度が低下するという問題があった。
そのため、例えば特許文献1では、共通の圧電板に発振信号出力用の第1の振動部と温度検出用の第2の振動部とを設け、1つの圧電板に発振信号出力用と温度検出用の2つの振動子を形成し、2つの振動子間での熱伝達時間差をなくし、発振信号出力用の振動子の温度を正確に測定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-98841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の振動子は、発振信号出力用の励振電極と温度検出用の励振電極とが切断角度が同じ同一主面に形成されているので、発振信号出力用の振動子と温度検出用の振動子とが同様の周波数-温度特性となる。そのため、発振信号用の振動子は、温度変化に対して周波数変化が小さくなるような切断角度に設定されるので、温度検出用の振動子も温度変化に対して周波数変化が小さくなり、周波数変化に対する温度変化の分解能が低く、発振信号出力用の振動子の温度を精度良く検出することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
振動素子は、第1振動部と第2振動部とを有する水晶基板と、前記第1振動部において前記水晶基板の両主面に形成されている一対の第1励振電極と、前記第2振動部において前記第2振動部を前記水晶基板の厚さ方向に挟むように形成されている一対の第2励振電極と、を備え、前記一対の第2励振電極のうちの少なくとも一方の前記第2励振電極は、前記両主面に対して傾斜している傾斜面に形成されていることを特徴とする。
【0006】
上記の振動素子において、前記両主面と前記傾斜面とは、切断角度が異なることが好ましい。
【0007】
上記の振動素子において、前記第1振動部と前記第2振動部とは、周波数-温度特性が異なることが好ましい。
【0008】
上記の振動素子において、前記第2振動部の前記周波数-温度特性は、前記第1振動部の前記周波数-温度特性よりも周波数変化量が大きいことが好ましい。
【0009】
上記の振動素子において、前記傾斜面は、前記第1振動部から離れるにしたがって前記第2振動部の厚さが薄くなるように傾斜していることが好ましい。
【0010】
上記の振動素子において、前記傾斜面は、前記第1振動部に近づくにしたがって前記第2振動部の厚さが薄くなるように傾斜していることが好ましい。
【0011】
上記の振動素子において、前記第1振動部は、前記両主面のうちの少なくとも一方の前記主面に凸部が形成されていることが好ましい。
【0012】
上記の振動素子において、前記振動素子は、前記振動素子をパッケージに固定する固定部を有し、前記第1振動部及び前記第2振動部と、前記固定部との間に、貫通孔及び幅狭部の少なくとも一方を備えていることが好ましい。
【0013】
上記の振動素子において、前記第1振動部と前記第2振動部との間に、貫通孔及び薄肉部の少なくとも一方を備えることが好ましい。
【0014】
発振器は、上記の振動素子と、前記第1励振電極に電気的に接続され、第1発振信号を出力する第1発振回路と、前記第2励振電極に電気的に接続され、第2発振信号を出力する第2発振回路と、前記第2発振信号に基づいて、前記第1発振信号の発振周波数を制御する制御信号を出力する制御信号出力回路と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
電子機器は、上記の発振器を備えていることを特徴とする。
【0016】
移動体は、上記の発振器を備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る振動素子の概略構成を示す平面図。
図2図1のA-A線での断面図。
図3】水晶基板の切断角度を説明する図。
図4】水晶基板の切断角度に対する周波数-温度特性を示す図。
図5】振動素子の周波数-温度特性を示す図。
図6】振動素子の主要な製造工程を示すフローチャート。
図7】振動素子の製造工程を説明する断面図。
図8】振動素子の製造工程を説明する断面図。
図9】振動素子の製造工程を説明する断面図。
図10】振動素子の製造工程を説明する断面図。
図11】振動素子の製造工程を説明する断面図。
図12】振動素子の製造工程を説明する断面図。
図13】第2実施形態に係る振動素子の概略構成を示す平面図。
図14図13のB-B線での断面図。
図15】第3実施形態に係る振動素子の概略構成を示す平面図。
図16図15のC-C線での断面図。
図17】第4実施形態に係る振動素子の概略構成を示す平面図。
図18図17のD-D線での断面図。
図19】第5実施形態に係る振動素子の概略構成を示す平面図。
図20図19のE-E線での断面図。
図21】第6実施形態に係る発振器の概略構成を示す平面図。
図22図21のF-F線での断面図。
図23】発振器の回路構成を示すブロック図。
図24】第7実施形態に係る発振器を備える電子機器としてのスマートフォンの構成を示す斜視図。
図25】第8実施形態に係る発振器を備える移動体としての自動車の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.第1実施形態
先ず、第1実施形態に係る振動素子1について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る振動素子1の概略構成を示す平面図である。図2は、図1のA-A線での断面図である。なお、図中のX軸、Y’軸、Z’軸は、互いに直交する水晶の結晶軸であり、Y’軸、Z’軸は、Y軸、Z軸をX軸のまわりに回転させたときの軸である。また、X軸に沿う方向を「X方向」、Y’軸に沿う方向を「Y’方向」、Z’軸に沿う方向を「Z’方向」とし、矢印の方向がプラス方向である。また、Y’方向のプラス方向を「上」又は「上方」、Y’方向のマイナス方向を「下」又は「下方」として説明する。
【0019】
本実施形態に係る振動素子1は、水晶基板10と、第1振動部11に形成された第1励振電極21と、第2振動部12に形成された第2励振電極22と、固定部13に形成された端子25,26と、第1励振電極21及び第2励振電極22と端子25,26とを夫々電気的に接続するリード電極23,24と、を備えている。
振動素子1は、一対の第1励振電極21が形成された第1振動部11で第1振動素子X1を構成し、一対の第2励振電極22が形成された第2振動部12で第2振動素子X2を構成しており、第1振動素子X1と第2振動素子X2とが結合している。
【0020】
水晶基板10は、XZ’面を主面とし、Y’方向を厚さ方向とする平板であり、第1励振電極21が形成される第1振動部11と、第2励振電極22が形成される第2振動部12と、水晶基板10を図示しないパッケージなどの内部に固定する固定部13と、を有している。
第1振動部11及び第2振動部12と固定部13との間には、夫々第1貫通孔14、第2貫通孔15、及び幅狭部16a,16b,16cが設けられている。そのため、パッケージへの実装に伴う応力が固定部13から第1振動部11及び第2振動部12へ伝わるのを低減することができる。なお、幅狭部とは、幅狭部のZ’方向の長さが水晶基板10のZ’方向の長さより短い部分である。
【0021】
第1振動部11は、第1主面11aと第2主面11bとが平行であり、第1主面11aと第2主面11bとの夫々に一対の第1励振電極21が平面視で重なるように形成されている。なお、本実施形態において、第1主面11aと第2主面11bとは、両主面に相当する。
第2振動部12は、第1主面11aに対して傾斜している傾斜面12aを有し、傾斜面12aと第2主面11bとの夫々に一対の第2励振電極22が平面視で重なるように形成されている。第2振動部12の傾斜面12aは、第1振動部11から離れるにしたがって第2振動部12の厚さが薄くなるように傾斜している。
【0022】
第1振動部11の第1主面11aには、第1励振電極21と、図示しない発振回路と電気的に接続するための端子25と、第1励振電極21と端子25とを電気的に接続するリード電極23と、が形成されている。
第1振動部11の第2主面11bには、第1励振電極21と、端子25と、第1励振電極21と端子25とを電気的に接続するリード電極23と、が形成されている。
【0023】
第2振動部12の傾斜面12aには、第2励振電極22と、端子26と、第2励振電極22と端子26とを電気的に接続するリード電極24と、が形成されている。
第2振動部12の第2主面11bには、第2励振電極22と、端子26と、第2励振電極22と端子26とを電気的に接続するリード電極24と、が形成されている。
【0024】
第1振動素子X1は、一対の第1励振電極21が第1振動部11の第1主面11aと第2主面11bとに形成され、端子25に電圧を印加することで、第1振動部11を振動させることができる。
第2振動素子X2は、一対の第2励振電極22が第2振動部12を水晶基板10の厚さ方向に挟むように形成され、つまり、一対の第2励振電極22が第2振動部12の傾斜面12aと第2主面11bとに形成され、端子26に電圧を印加することで、第2振動部12を振動させることができる。
【0025】
次に、本実施形態の水晶基板10について、図3図4、及び図5を参照して詳細に説明する。
図3は、水晶基板10の切断角度θを説明する図である。図4は、水晶基板10の切断角度θに対する周波数-温度特性を示す図である。図5は、振動素子1の周波数-温度特性を示す図である。
【0026】
水晶基板10は、図3に示すように、互いに直交する結晶軸X、Y、Zを有し、X軸は電気軸、Y軸は機械軸、Z軸は光学軸と、それぞれ呼称され、XZ面をX軸のまわりに所定の角度θだけ回転させて得られる平面に沿って、切り出された平板であって、所謂、回転Yカット水晶基板である。なお、X軸のまわりの角度θは、切断角度θと呼称される。回転Yカット水晶基板の周波数-温度特性は、図4に示すように、切断角度θにより決まる。図4は、回転Yカット水晶基板の2′間隔の切断角度θに対する周波数-温度特性を示したものである。図4より、切断角度θによって、温度Tの変化に対して、周波数変化量Δf/fが小さい特性や大きい特性を選択することができる。
【0027】
回転Yカット水晶基板の切断角度θが35.25°(35°15′)の場合、ATカット水晶基板と呼称され、優れた周波数-温度特性を有する。ここで、ATカット水晶基板は、直交する結晶軸X、Y’、Z’を有し、厚み方向がY’軸であり、Y’軸に直交するX軸とZ’軸を含む面が主面であり、主面に厚み滑り振動が主振動として励振される。
【0028】
本実施形態の水晶基板10は、第1振動部11の第1主面11aが切断角度θ1であり、第2振動部12の傾斜面12aが切断角度θ2である。なお、第2主面11bは、第1主面11aと平行なので切断角度θ1である。そのため、第1振動部11は、切断角度θ1に対応した周波数-温度特性を得ることができ、第2振動部12は、傾斜面12aの切断角度θ2と第2主面11bの切断角度θ1との中間の角度(θ1+θ2)/2に対応した周波数-温度特性を得ることができる。また、第1振動部11の切断角度θ1を35.25°(35°15′)とすると、第2振動部12の周波数-温度特性は、第1振動部11の周波数-温度特性よりも周波数変化量Δf/fが大きくなる。
【0029】
図5に示すように、第1振動部11を含む第1振動素子X1を温度変化に対する周波数変化量Δf/fが小さい周波数-温度特性を有する発振信号出力用とし、傾斜面12aを有する第2振動部12を含む第2振動素子X2を温度変化に対する周波数変化量Δf/fが大きい周波数-温度特性を有する温度検出用とすることで、第1振動素子X1の温度Tを精度良く検出することができる。また、発振信号出力用の第1振動素子X1と温度検出用の第2振動素子X2とが同一の水晶基板10に形成されているため、熱伝達時間の差がなく、第1振動素子X1の温度Tをより正確に検出することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、第2振動部12の一方の面に傾斜面12aを設けているが、これに限定することはなく、傾斜面を他方の面にも設けて、第2振動部12の両面に設けても構わない。
【0031】
本実施形態の振動素子1は、第2振動部12が第1主面11aに対して傾斜している傾斜面12aを有しているため、第2励振電極22を形成することで、第1振動部11と異なる周波数-温度特性を得ることができる。そのため、第1振動部11を発振信号出力用として安定な周波数-温度特性に設定し、第2振動部12を、第1振動部11に比べ、温度変化に対する周波数変化量Δf/fが大きい周波数-温度特性を有する温度検出用とすることで、発振信号出力用とする第1振動部11の温度Tを精度良く検出することができる。
【0032】
また、第1主面11aと傾斜面12aとの切断角度θが異なるため、第1主面11aと切断角度θが異なる傾斜面12aを有する第2振動部12の周波数-温度特性を第1振動部11と異なる周波数-温度特性とすることができる。
【0033】
また、第1振動部11と第2振動部12との周波数-温度特性が異なるので、温度Tによる周波数変化量Δf/fの大きい周波数-温度特性を有する振動部を温度検出用とすることで、温度検出の精度を良くすることができる。
【0034】
また、傾斜面12aが第1振動部11から離れるにしたがって第2振動部12の厚さが薄くなるように傾斜しているので、第2振動部12の切断角度θが第1振動部11と異なり、第2振動部12を第1振動部11と異なる周波数-温度特性とすることができる。
【0035】
また、第2振動部12の周波数-温度特性が第1振動部11の周波数-温度特性よりも周波数変化量Δf/fが大きいので、第2振動部12を温度検出用にすると、周波数変化に対する温度変化の分解能が高くなり、第1振動部11の温度Tを精度良く検出することができる。
【0036】
次に、本実施形態に係る振動素子1の製造方法について、図6図12を参照して説明する。
図6は、振動素子1の主要な製造工程を示すフローチャートである。図7図12は、振動素子1の製造工程を説明する断面図である。
【0037】
振動素子1の製造方法は、図6に示すように、水晶基板準備工程と、レジスト塗布工程と、パターン形成工程と、ドライエッチング工程と、個片化工程と、電極形成工程と、を含んでいる。
【0038】
1.1 水晶基板準備工程
先ず、ステップS1において、振動素子1の量産性や製造コストを考慮し、大型基板から複数個の振動素子1をバッチ処理方式で製造できる大型水晶基板80を準備する。なお、大型水晶基板80は、水晶原石を所定の切断角度θ1、例えば、35.25°(35°15′)で切断し、ラッピングやポリッシュ加工等を施し、所望の厚さとなっている。
【0039】
1.2 レジスト塗布工程
次に、ステップS2において、図7に示すように、大型水晶基板80上にレジスト82を塗布する。
【0040】
1.3 パターン形成工程
次に、ステップS3において、図8に示すように、レジスト82上に傾斜面12aが形成される領域が開口した、所謂、クロムなどの光遮蔽膜がパターニングされていない領域を有するフォトマスク84をレジスト82上に配置し、露光装置等を用いて光を照射する。この時、大型水晶基板80の板厚を薄くする部分に照射される光量が板厚を薄くしない部分より大きくなる条件化でレジスト82を露光し、現像することで、レジスト82の板厚の厚い部分から板厚の薄い部分に向けて徐々に板厚が薄くなる膜厚分布を有するレジスト82を形成することができる。なお、この露光方法は、露光の強弱を調整して露光するグレイスケール露光といわれる。
【0041】
1.4 ドライエッチング工程
次に、ステップS4において、プラズマエッチング装置等を用いて、大型水晶基板80の上方からドライエッチングしてレジスト82を除去すると、図10に示すように、図9で形成された傾斜を有する形状が大型水晶基板80に転写され、傾斜面12aが大型水晶基板80に形成される。なお、傾斜面12aの形成は、上述の方法以外によって形成してもよい。例えば、傾斜面12aの形状に対応した窪みを有する金型に感光性樹脂を充填し、大型水晶基板80に転写して硬化させた後に、ドライエッチング法で傾斜面12aを形成してもよい。
【0042】
1.5 個片化工程
次に、ステップS5において、図11に示すように、例えば、ダイシングブレード等を用いて傾斜面12aを有する大型水晶基板80を切断し、個片化する。
【0043】
1.6 電極形成工程
次に、ステップS6において、図12に示すように、第1励振電極21、第2励振電極22、リード電極23,24、及び端子25,26を個片化した水晶基板10上に、例えば、スパッタ装置や蒸着装置等で形成する。以上によって、傾斜面12aを有する振動素子1が得られる。
なお、電極形成は、個片化工程前に、フォトリソグラフィー技法で形成しても構わない。
【0044】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る振動素子1aについて、図13及び図14を参照して説明する。
図13は、第2実施形態に係る振動素子1aの概略構成を示す平面図である。図14は、図13のB-B線での断面図である。
【0045】
本実施形態の振動素子1aは、第1実施形態の振動素子1に比べ、第2振動部17に設けられた傾斜面17aの形状が異なること以外は、第1実施形態の振動素子1と同様である。なお、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0046】
振動素子1aは、図13及び図14に示すように、水晶基板10aの第2振動部17に設けられた傾斜面17aが第1振動部11に近づくにしたがって第2振動部17の厚さが薄くなるように傾斜している。
【0047】
このような構成とすることで、第2振動部17の切断角度θが第1振動部11と異なり、第2振動部17を第1振動部11と異なる周波数-温度特性とすることができる。そのため、第1振動部11を発振信号出力用として安定な周波数-温度特性に設定し、第2振動部17を、第1振動部11に比べ、温度変化に対する周波数変化量Δf/fが大きい周波数-温度特性を有する温度検出用とすることで、発振信号出力用とする第1振動部11の温度Tを精度良く検出することができる。また、第1振動部11の第1主面11aと第2振動部17の傾斜面17aとの間に段差が形成されるので、第1振動部11の振動エネルギーを第1振動部11内に閉じ込めることができ、第1振動部11から第2振動部17への振動漏洩を低減することができる。また、第1振動部11と第2振動部17が並ぶ方向である図13中Z’方向において、第2振動部17の実質的な振動領域を第1振動部11から離すことができるので、第1振動部11及び第2振動部17のそれぞれの振動をより安定させることができる。
【0048】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係る振動素子1bについて、図15及び図16を参照して説明する。
図15は、第3実施形態に係る振動素子1bの概略構成を示す平面図である。図16は、図15のC-C線での断面図である。
【0049】
本実施形態の振動素子1bは、第1実施形態の振動素子1に比べ、第1振動部18の形状が異なること以外は第1実施形態の振動素子1と同様である。なお、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0050】
振動素子1bは、図15及び図16に示すように、水晶基板10bの第1振動部18に2つの凸部18aが形成され、凸部18a上に第1励振電極21が配置されている。一方の凸部18aは、第1振動部18の第1主面11aから断面視で上方に突出し、他方の凸部18aは、第2主面11bから断面視で下方に突出している。なお、凸部18aは、第1主面11aと第2主面11bのどちらか一方に形成されていても構わない。
【0051】
このような構成とすることで、第1振動部18の振動エネルギーを凸部18aに閉じ込めることができる。そのため、第1振動部18から固定部13への振動漏洩を低減でき、第1振動部18の振動を安定させることができる。
【0052】
4.第4実施形態
次に、第4実施形態に係る振動素子1cについて、図17及び図18を参照して説明する。
図17は、第4実施形態に係る振動素子1cの概略構成を示す平面図である。図18は、図17のD-D線での断面図である。
【0053】
本実施形態の振動素子1cは、第1実施形態の振動素子1に比べ、水晶基板10cの形状が異なること以外は、第1実施形態の振動素子1と同様である。なお、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0054】
振動素子1cは、図17及び図18に示すように、水晶基板10cの第1振動部11と第2振動部12との間にX方向を長手方向とする貫通孔19が設けられている。
【0055】
このような構成とすることで、第1振動部11及び第2振動部12のそれぞれの振動が第1振動部11及び第2振動部12に漏洩するのを低減することができる。そのため、第1振動部11及び第2振動部12のそれぞれの振動をより安定させることができる。
【0056】
5.第5実施形態
次に、第5実施形態に係る振動素子1dについて、図19及び図20を参照して説明する。
図19は、第5実施形態に係る振動素子1dの概略構成を示す平面図である。図20は、図19のE-E線での断面図である。
【0057】
本実施形態の振動素子1dは、第1実施形態の振動素子1に比べ、水晶基板10dの形状が異なること以外は、第1実施形態の振動素子1と同様である。なお、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0058】
振動素子1dは、図19及び図20に示すように、水晶基板10dの第1振動部11と第2振動部12との間にX方向を長手方向とし、断面視で下方に開口する凹部20が設けられ、薄肉部30を有している。
【0059】
このような構成とすることで、第1振動部11及び第2振動部12のそれぞれの振動が第1振動部11及び第2振動部12に漏洩するのを低減することができる。そのため、第1振動部11及び第2振動部12のそれぞれの振動をより安定させることができる。
【0060】
6.第6実施形態
次に、第6実施形態に係る振動素子1,1a,1b,1c,1dを備えている発振器100について、図21及び図22を参照して説明する。なお、以下の説明では、振動素子1を適用した構成を例示して説明する。
図21は、第6実施形態に係る発振器100の概略構造を示す平面図である。図22は、図21のF-F線での断面図である。
【0061】
発振器100は、図21に示すように、振動素子1を内蔵した振動子40と、振動素子1を駆動するための発振回路61,62と制御信号出力回路63とを有するICチップ60と、振動子40やICチップ60を収納するパッケージ本体50と、ガラス、セラミック、又は金属等からなる蓋部材57と、を備えている。
【0062】
パッケージ本体50は、図22に示すように、実装端子45、第1の基板51、第2の基板52、及びシールリング53を積層して形成されている。また、パッケージ本体50は、上方に開放するキャビティー58を有している。なお、振動子40とICチップ60とを収容するキャビティー58内は、蓋部材57をシールリング53により接合することで、減圧雰囲気あるいは窒素などの不活性気体雰囲気に気密封止されている。
【0063】
実装端子45は、第1の基板51の外部底面に複数設けられている。また、実装端子45は、第1の基板51の上方に設けられた接続電極43や接続端子44と、図示しない貫通電極や層間配線を介して、電気的に接続されている。
【0064】
パッケージ本体50のキャビティー58内には、振動子40とICチップ60が収容されている。振動子40は、半田や導電性接着剤を介して第1の基板51の上方に設けられた接続電極43に固定されている。ICチップ60は、接着剤等の接合部材55を介して第1の基板51の上方に固定されている。また、キャビティー58には、複数の接続端子44が設けられている。接続端子44は、ボンディングワイヤー56によってICチップ60の上方に設けられた接続端子46と電気的に接続されている。
【0065】
ICチップ60は、第1振動素子X1を発振し第1発振信号を出力する第1発振回路61と、第2振動素子X2を発振し第2発振信号を出力する第2発振回路62と、第2発振信号に基づいて、第1発振信号の発振周波数を制御する制御信号を出力する制御信号出力回路63と、を有している。
【0066】
次に、発振器100の回路構成について、図23を参照し説明する。
図23は、発振器100の回路構成を示すブロック図である。なお、以下の説明では、発振器100の一例について、TCXOを挙げて説明する。
【0067】
この発振器100は、外部に設定周波数f0の信号を出力するための回路であり、発振器100の外部の温度変化に依らずに、あるいは外部の温度変化の影響を抑えて、この設定周波数f0を出力できるように構成されている。この設定周波数f0は、基準温度T0、例えば25℃において、基準電圧V10を第1発振回路61に印加した時に得られる出力周波数である。
【0068】
第1振動素子X1の一対の第1励振電極21には、端子25を介して第1発振回路61が電気的に接続されており、第2振動素子X2の一対の第2励振電極22には、同様に端子26を介して、温度検出用とするための第2発振回路62が電気的に接続されている。そして、これら第1発振回路61と第2発振回路62と間には、第2発振回路62から出力される温度補償用の第2発振信号としての発振周波数fに基づいて、第1振動素子X1の温度を推定し、この温度において第1発振回路61にて第1発振信号としての設定周波数f0が得られる制御電圧Vc(Vc=V0-ΔV)を演算するための制御信号出力回路63が設けられている。入力端64から第2発振回路62に基準電圧V10が入力され、出力端65から設定周波数f0が出力される。また、第1発振回路61と第2発振回路62とには、バリキャップダイオード66で安定化された基準電圧V10と制御電圧Vcとがそれぞれに入力される。
【0069】
具体的には、制御信号出力回路63は、第2発振回路62から入力される周波数信号から発振周波数fを計測するための例えば周波数カウンターなどからなる周波数検出部67と、この周波数検出部67において計測した発振周波数fに基づいて温度Tを推定する温度推定部68と、温度推定部68において推定した温度Tに基づいて補償電圧ΔVを演算するための補償電圧演算部69と、補償電圧演算部69にて演算された補償電圧ΔVを基準電圧V0から減算した制御電圧Vcを第1発振回路61に出力するための加算部70と、を備えている。温度推定部68には、以下の(1)式に示す第2発振回路62の周波数-温度特性、例えば3次関数が記憶されており、この温度特性と第2発振回路62の発振周波数fとに基づいて、第1振動素子X1の温度が求められる。
【0070】
【数1】
【0071】
また、補償電圧演算部69は、第1発振回路61の温度特性である例えば3次関数発生器を備えており、以下の(2)~(4)式及び温度T に基づいて、補償電圧ΔVを求めるように構成されている。
【0072】
【数2】
【0073】
【数3】
【0074】
【数4】
【0075】
α1、β1、γ1及びα2、β2、γ2は、夫々第1発振回路61及び第2発振回路62に固有の定数であり、温度や基準電圧を種々変えて出力周波数を測定することにより求められる。なお、Δf=f-f0であり、また、f10は、第2発振回路62において基準温度T10にて基準電圧V10を印加した時に得られる出力周波数である。
【0076】
この発振器100において入力端64に基準電圧V10を入力すると、第2発振回路62では、第2振動素子X2の温度Tに基づいて、既述の式(1)で求められる発振周波数fにおいて基本波の厚み滑り振動で発振する。この発振周波数fは、周波数検出部67を介して温度推定部68に入力され、この温度推定部68において第1振動素子X1の温度Tが推定される。そして、補償電圧演算部69では、温度推定部68にて得られた温度Tに基づいて補償電圧ΔVが演算され、加算部70を介して制御電圧VCが第1発振回路61に印加される。第1発振回路61では、第1振動素子X1の温度T及び制御電圧VCに応じた発振周波数f、即ち設定周波数f0において厚み滑り振動で振動する。つまり、温度Tでは、第1発振回路61は、基準温度T0との差分(T-T0)だけ、当該第1発振回路61の周波数-温度特性の3次関数に沿って発振周波数fが設定周波数f0からずれようとする。しかし、設定周波数f0が得られる制御電圧VCを第1発振回路61に印加していることから、即ち前記差分に対応する分だけ基準電圧V0よりも低い、あるいは高い、制御電圧VCを印加していることから、当該差分を相殺した設定周波数f0が得られる。
【0077】
本実施形態の発振器100は、第1振動素子X1に比べ、温度Tによる周波数変化量Δf/fが大きい周波数-温度特性を有する第2振動素子X2で発振した第2発振信号としての発振周波数fに基づいて、第1発振信号としての設定周波数f0を制御する制御信号を出力するので、設定周波数f0を精度良く温度補償することができ、高精度の発振器100を得ることができる。
【0078】
7.第7実施形態
次に、第7実施形態に係る発振器100を備えている電子機器の一例として、スマートフォン1200を挙げて説明する。
図24は、第7実施形態に係る発振器100を備える電子機器としてのスマートフォン1200の構成を示す斜視図である。
【0079】
スマートフォン1200は、図24に示すように、上述した発振器100が組込まれている。スマートフォン1200の制御部1201には、表示部1208の表示画像を制御するための基準クロック等として機能する発振器100が内蔵されている。
このような電子機器は、上述した発振器100を備えていることから、上記実施形態で説明した効果が反映され、性能に優れている。
【0080】
なお、上述した発振器100を備えている電子機器としては、スマートフォン1200以外に、例えば、インクジェットプリンターなどのインクジェット式吐出装置、携帯電話、ラップトップ型やモバイル型のパーソナルコンピューター、テレビ、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、各種ナビゲーション装置、ページャー、通信機能付も含む電子手帳、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、魚群探知機、各種測定機器、計器類、フライトシミュレーターなどや電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡などの医療機器が挙げられる。いずれの場合にも、これらの電子機器は、上述した発振器100を備えていることから、上記実施形態で説明した効果が反映され、性能に優れている。
【0081】
8.第8実施形態
次に、第8実施形態に係る発振器100を備えている移動体の一例として、自動車1500を挙げて説明する。
図25は、第8実施形態に係る発振器100を備える移動体としての自動車1500の構成を示す斜視図である。
【0082】
自動車1500は、図25に示すように、上述した発振器100が組込まれている。自動車1500の車体1501には、タイヤ1503を制御する電子制御ユニット1502の基準クロック等として機能する発振器100が搭載されている。また、発振器100は、他にもキーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、自動運転用慣性航法の制御機器、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター等の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)に広く適用できる。
【0083】
また、移動体に適用される発振器100は、上記の例示の他にも、例えば、二足歩行ロボットや電車などの姿勢制御、ラジコン飛行機、ラジコンヘリコプター、及びドローンなどの遠隔操縦あるいは自律式の飛行体の姿勢制御、農業機械、もしくは建設機械などの姿勢制御において利用することができ、いずれの場合にも、上記実施形態で説明した効果が反映され、性能に優れた移動体を提供することができる。
【0084】
以下、実施形態から導き出される内容を記載する。
【0085】
振動素子は、第1振動部と第2振動部とを有する水晶基板と、前記第1振動部において前記水晶基板の両主面に形成されている一対の第1励振電極と、前記第2振動部において前記第2振動部を前記水晶基板の厚さ方向に挟むように形成されている一対の第2励振電極と、を備え、前記一対の第2励振電極のうちの少なくとも一方の前記第2励振電極は、前記両主面に対して傾斜している傾斜面に形成されていることを特徴とする。
【0086】
この構成によれば、第2振動部が主面に対して傾斜している傾斜面を有しているため、第2励振電極を形成することで、第1振動部と異なる周波数-温度特性を得ることができる。そのため、第1振動部と第2振動部のどちらか一方の振動部を発振信号出力用として安定な周波数-温度特性に設定し、他方の振動部を、発振信号出力用の振動部に比べ、温度変化に対する周波数変化量が大きい周波数-温度特性を有する温度検出用とすることで、発振信号出力用とする振動部の温度を精度良く検出することができる。
【0087】
上記の振動素子において、前記両主面と前記傾斜面とは、切断角度が異なることが好ましい。
【0088】
この構成によれば、主面と傾斜面との切断角度が異なるため、主面と切断角度が異なる傾斜面を有する第2振動部の周波数-温度特性を第1振動部と異なる周波数-温度特性とすることができる。
【0089】
上記の振動素子において、前記第1振動部と前記第2振動部とは、周波数-温度特性が異なることが好ましい。
【0090】
この構成によれば、第1振動部と第2振動部との周波数-温度特性が異なるので、温度変化に対する周波数変化量の大きい周波数-温度特性を有する振動部を温度検出用とすることで、温度検出の精度を良くすることができる。
【0091】
上記の振動素子において、前記第2振動部の前記周波数-温度特性は、前記第1振動部の前記周波数-温度特性よりも周波数変化量が大きいことが好ましい。
【0092】
この構成によれば、第2振動部の周波数-温度特性が第1振動部の周波数-温度特性よりも周波数変化量が大きいので、第2振動部を温度検出用にすると、周波数変化に対する温度変化の分解能が高くなり、第1振動部の温度を精度良く検出することができる。
【0093】
上記の振動素子において、前記傾斜面は、前記第1振動部から離れるにしたがって前記第2振動部の厚さが薄くなるように傾斜していることが好ましい。
【0094】
この構成によれば、傾斜面が第1振動部から離れるにしたがって第2振動部の厚さが薄くなるように傾斜しているので、第2振動部の切断角度が第1振動部と異なり、第2振動部を第1振動部と異なる周波数-温度特性とすることができる。
【0095】
上記の振動素子において、前記傾斜面は、前記第1振動部に近づくにしたがって前記第2振動部の厚さが薄くなるように傾斜していることが好ましい。
【0096】
この構成によれば、傾斜面が第1振動部に近づくにしたがって第2振動部の厚さが薄くなるように傾斜しているので、第2振動部の切断角度が第1振動部と異なり、第2振動部を第1振動部と異なる周波数-温度特性とすることができる。また、第1振動部と第2振動部が並ぶ方向において、第2振動部の実質的な振動領域を第1振動部から離すことができるので、第1振動部及び第2振動部のそれぞれの振動をより安定させることができる。
【0097】
上記の振動素子において、前記第1振動部は、前記両主面のうちの少なくとも一方の前記主面に凸部が形成されていることが好ましい。
【0098】
この構成によれば、第1振動部の主面に凸部を形成することで、第1振動部の振動エネルギーを凸部に閉じ込めることができる。そのため、第1振動部から固定部への振動漏洩を低減でき、第1振動部の振動を安定させることができる。
【0099】
上記の振動素子において、前記振動素子は、前記振動素子をパッケージに固定する固定部を有し、前記第1振動部及び前記第2振動部と、前記固定部との間に、貫通孔及び幅狭部の少なくとも一方を備えていることが好ましい。
【0100】
この構成によれば、第1振動部及び第2振動部と、固定部との間に、貫通孔及び幅狭部が設けられているので、第1振動部及び第2振動部から固定部への振動漏洩を低減でき、且つ、パッケージへの実装に伴う応力が固定部から第1振動部及び第2振動部へ伝わるのを低減することができる。
【0101】
上記の振動素子において、前記第1振動部と前記第2振動部との間に、貫通孔及び薄肉部の少なくとも一方を備えることが好ましい。
【0102】
この構成によれば、第1振動部と第2振動部との間に、貫通孔及び薄肉部が設けられているので、第1振動部及び第2振動部のそれぞれの振動が第1振動部及び第2振動部に漏洩するのを低減することができる。
【0103】
発振器は、上記の振動素子と、前記第1励振電極に電気的に接続され、第1発振信号を出力する第1発振回路と、前記第2励振電極に電気的に接続され、第2発振信号を出力する第2発振回路と、前記第2発振信号に基づいて、前記第1発振信号の発振周波数を制御する制御信号を出力する制御信号出力回路と、を備えていることを特徴とする。
【0104】
この構成によれば、第1振動部に比べ、温度変化に対する周波数変化量が大きい周波数-温度特性を有する第2振動部で発振した第2発振信号に基づいて、第1発振信号の発振周波数を制御する制御信号を出力するので、第1発振信号を精度良く温度補償することができ、高精度の発振器を得ることができる。
【0105】
電子機器は、上記の発振器を備えていることを特徴とする。
【0106】
この構成によれば、高精度の発振器を備えているため、高性能な電子機器を提供することができる。
【0107】
移動体は、上記の発振器を備えていることを特徴とする。
【0108】
この構成によれば、高精度の発振器を備えているため、高性能な移動体を提供することができる。
【符号の説明】
【0109】
1,1a,1b,1c,1d…振動素子、10…水晶基板、11…第1振動部、12…第2振動部、11a…第1主面、11b…第2主面、12a…傾斜面、13…固定部、14…第1貫通孔、15…第2貫通孔、16a,16b,16c…幅峡部、21…第1励振電極、22…第2励振電極、23,24…リード電極、25,26…端子、100…発振器、1200…電子機器としてのスマートフォン、1500…移動体としての自動車、X1…第1振動素子、X2…第2振動素子、θ,θ1,θ2…切断角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25