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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】純水補給口開閉工具
(51)【国際特許分類】
   B67B 7/18 20060101AFI20231219BHJP
   B25B 13/48 20060101ALI20231219BHJP
   B25B 13/50 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B67B7/18
B25B13/48 A
B25B13/50 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019201741
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021075293
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】横川 二朗
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-071165(JP,A)
【文献】特開2011-005551(JP,A)
【文献】特表2015-525720(JP,A)
【文献】特開2006-159364(JP,A)
【文献】特表2008-514444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0098858(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67B 7/18
B25B 13/48
B25B 13/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ本体部の外周面から半径方向に突出するフィンを備えたネジ込み式のキャップの開閉操作に用いる純水補給口開閉工具であって、
棒形状をなし、軸心方向における少なくとも一端側に、前記キャップ本体部に被せることが可能な凹部を備えた軸部材を備え、
前記軸部材には、前記凹部を前記キャップに被せた状態で前記フィンと嵌合する位置に、前記軸心方向に沿って一端から他端側に向かって延在する、前記キャップの厚みよりも長い距離のスリットが設けられ
前記軸部材の外周面であって前記軸心方向において前記スリットと重複する位置であって、前記スリットの前記一端からの前記軸心方向の距離が、前記キャップの厚みよりも長い位置に設けられ、加えられた外力に応じて伸張し当該外力から解放された場合に元の形状に復帰する弾性を備える弾性材料によって形成された輪状部材を備えることを特徴とする純水補給口開閉工具。
【請求項2】
前記輪状部材は、ゴムによって形成されていることを特徴とする請求項に記載の純水補給口開閉工具。
【請求項3】
前記凹部の内径寸法は、前記キャップ本体部の外径寸法と同等以上であって、前記フィンの先端がなす円の直径寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の純水補給口開閉工具。
【請求項4】
前記軸部材の他端側の外周面に設けられた滑り止め部材を備えることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の純水補給口開閉工具。
【請求項5】
前記滑り止め部材は、前記軸部材を形成する材料よりも摩擦係数が大きい材料を用いて成形され、紐状、帯状または輪状をなすことを特徴とする請求項に記載の純水補給口開閉工具。
【請求項6】
前記滑り止め部材は、一面側に粘着材料が設けられ、他面側に粒子の粗い粉粒体が設けられた帯状部材またはシート状部材であることを特徴とする請求項に記載の純水補給口開閉工具。
【請求項7】
前記軸部材の他端側の外周面には、滑り止め加工が施されていることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の純水補給口開閉工具。
【請求項8】
前記軸部材は、少なくとも一端側が開放された筒形状をなすことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の純水補給口開閉工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィンを備えたネジ込み式のキャップの開閉操作に用いる純水補給口開閉工具に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所においては、変電所制御用蓄電池(以下、「蓄電池」という)に蓄電した電気を利用して、各種制御機器を動作させている。蓄電池は、たとえば、電極に鉛を用い、電解液に希硫酸を用いた二次電池である鉛蓄電池が用いられる。鉛蓄電池においては、使用にともなって電解液がガス化することに起因して電解液の液面が低下するため、液面の低下に応じて鉛蓄電池における純水補給口から純水の補給をおこなう。
【0003】
通常時、純水の補給にかかる純水補給口は、キャップによって閉塞されている。キャップには、純水補給口の周囲を密閉するゴムパッキンが設けられている。ゴムパッキンは、経時にともなって蓄電池本体と固着するため、キャップは経時にともなって開けにくくなる。このため、従来、ゴムパッキンが蓄電池本体と固着した場合は、キャップに代えて触媒栓を外して純水を補給していた。
【0004】
具体的には、従来、たとえば、容器に螺着されたキャップの略直径の間隔を空けて設置されてキャップの側周面に当接する一対のキャップ除去部に、キャップを開蓋可能に同方向に回転する一対の回転動力部をそれぞれ設け、容器の首部の略直径の間隔を空けて設置された一対のガイド部により、容器のキャップをキャップ除去部へ案内するようにしたキャップ除去装置に関する技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-115060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術は、触媒栓を開ける際に、触媒栓の中に溜まっているガスが液化した水がこぼれて蓄電池の上部を濡らしてしまう場合がある。変電所制御用蓄電池が水に濡れると、トラッキング現象の発生原因となるため、水がこぼれた場合はこぼれた水を拭き取らなくてはならない。
【0007】
蓄電池は、必要な電圧に応じて複数台を直列に接続した状態で配置している。変電所においては高電圧を得るため多数の蓄電池が必要であり、密集した状態で配置している。具体的には、たとえば、複数台の蓄電池を上下段にそれぞれ2列ずつ雛壇状に配置したり、蓄電池の配置スペースを狭くするために上下段にそれぞれ3列ずつ雛壇状に配置したりしている。
【0008】
このような環境においてこぼれた水を拭き取る作業は、隣り合う蓄電池を避けながら狭い場所に手を入れるなどしなければならず、煩わしいという問題があった。一方で、水をこぼさないためにキャップを開けようとしても、雛壇状に配置された複数の蓄電池のうち、作業から遠い高段に配置された蓄電池や作業者から見て奥側に配置された蓄電池などのキャップはゴムパッキンが蓄電池本体と固着していない状態でも開けづらく、ゴムパッキンが蓄電池本体と固着した場合は一層開けづらくなり、作業者にかかる負担が大きいという問題があった。
【0009】
また、上述した特許文献1に記載された従来の技術は、樹脂製ボトルやガラス瓶など可動物品のキャップを開けるための装置であって、蓄電池のように位置が固定された物品に設けられたキャップを開けることはできず、当該従来の技術を、蓄電池における純水補給口のキャップを開けるために用いる場合、取り扱いが困難で、実用性に劣るという問題があった。
【0010】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、作業環境にかかわらず、ネジ込み式のキャップを確実に回すことができる純水補給口開閉工具を提供することを目的とする。
【0011】
また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、ネジ込み式のキャップの開閉作業を、容易かつ確実におこなうことができる純水補給口開閉工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる純水補給口開閉工具は、キャップ本体部の外周面から半径方向に突出するフィンを備えたネジ込み式のキャップの開閉操作に用いる純水補給口開閉工具であって、棒形状をなし、軸心方向における少なくとも一端側に、前記キャップ本体部に被せることが可能な凹部を備えた軸部材を備え、前記軸部材には、前記凹部を前記キャップに被せた状態で前記フィンと嵌合する位置に、前記軸心方向に沿って一端から他端側に向かって延在するスリットが設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる純水補給口開閉工具は、上記の発明において、前記軸部材の外周面であって前記軸心方向において前記スリットと重複する位置に設けられ、加えられた外力に応じて伸張し当該外力から解放された場合に元の形状に復帰する弾性を備える弾性材料によって形成された輪状部材を備えることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる純水補給口開閉工具は、上記の発明において、前記輪状部材が、ゴムによって形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる純水補給口開閉工具は、上記の発明において、前記凹部の内径寸法が、前記キャップ本体部の外径寸法と同等以上であって、前記フィンの先端がなす円の直径寸法よりも小さいことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる純水補給口開閉工具は、上記の発明において、前記軸部材の他端側の外周面に設けられた滑り止め部材を備えることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる純水補給口開閉工具は、上記の発明において、前記滑り止め部材が、前記軸部材を形成する材料よりも摩擦係数が大きい材料を用いて成形され、紐状、帯状または輪状をなすことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる純水補給口開閉工具は、上記の発明において、前記滑り止め部材が、一面側に粘着材料が設けられ、他面側に粒子の粗い粉粒体が設けられた帯状部材またはシート状部材であることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる純水補給口開閉工具は、上記の発明において、前記軸部材の他端側の外周面には、滑り止め加工が施されていることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる純水補給口開閉工具は、上記の発明において、前記軸部材が、少なくとも一端側が開放された筒形状をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明にかかる純水補給口開閉工具によれば、作業環境にかかわらず、ネジ込み式のキャップを確実に回すことができるという効果を奏する。
【0022】
また、この発明にかかる純水補給口開閉工具によれば、ネジ込み式のキャップの開閉作業を、容易かつ確実におこなうことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】純水補給口開閉工具の構成を示す説明図(その1)である。
図2】純水補給口開閉工具の構成を示す説明図(その2)である。
図3】キャップを示す説明図(その1)である。
図4】キャップを示す説明図(その2)である。
図5】蓄電池の配置例を示す説明図である。
図6】キャップの開閉作業例を示す説明図(その1)である。
図7】キャップの開閉作業例を示す説明図(その2)である。
図8】キャップの開閉作業例を示す説明図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる純水補給口開閉工具の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
図1および図2は、純水補給口開閉工具の構成を示す説明図である。図1においては、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具を、図2における矢印A2方向から見た状態を示している。図2においては、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具を、図1における矢印A1方向から見た状態を示している。図3および図4は、キャップを示す説明図である。図3においては、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具による開閉対象とするキャップを、図4における矢印A4方向から見た状態を示している。図4においては、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具による開閉対象とするキャップを、図3における矢印A3方向から見た状態を示している。図5は、蓄電池の配置例を示す説明図である。図5においては、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具による開閉対象とするキャップを備えた蓄電池の配置例を示している。図6図8は、キャップの開閉作業例を示す説明図である。
【0026】
符号100は、純水補給口開閉工具である。符号101は、軸部材である。符号102は、スリットである。符号103は、輪状部材である。符号104は、滑り止め部材である。符号200は、凹部である。符号300は、キャップである。符号301は、キャップ本体部である。符号302は、フィンである。符号303は、フランジである。符号304は、ゴムパッキンである。符号500は、蓄電池である。符号501は、蓄電池本体である。符号502は、触媒栓である。
【0027】
(純水補給口開閉工具の構成)
まず、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具の構成について説明する。軸部材101は、直線の棒形状をなす。具体的に、軸部材101は、たとえば、直線の円筒形状をなす塩ビパイプ材によって実現することができる。凹部200は、軸部材101の軸心方向における一端側に設けられている。凹部200は、ネジ込み式のキャップ300のキャップ本体部301に被せることが可能な内径の凹形状をなす。
【0028】
キャップ300は、蓄電池500における、純水の純水補給口を開放可能に塞ぐ。蓄電池500は、鉛蓄電池である。蓄電池500は、電解液である希硫酸や、電極である鉛板を収容する蓄電池本体501を備えている。蓄電池本体501には、触媒栓502が設けられている。触媒栓502は、貴金属触媒を使用して、充電中に蓄電池500から発生する酸水素ガスを化学的に融合させて水に戻すことによって電解液の減少を少なくするために設けられているが、蓄電池500においては、使用にともなって電解液がガス化することに起因して電解液の液面が低下する。電解質溶液の液面が低下した場合は、キャップ300を取り外し、純水補給口から電解液を補給する。ゴムパッキン304は、純水補給口の周囲を密閉する。
【0029】
キャップ300は、キャップ本体部301の外周面から、キャップ本体部301の半径方向に突出するフィン302を備えている。凹部200の内径寸法は、キャップ300におけるキャップ本体部301の外径寸法と同等以上であって、当該キャップ本体部301からフィン302の先端がなす円の直径寸法(この実施の形態においては、フランジ303の直径寸法と同等)よりも小さい。凹部200の内径寸法は、キャップ本体部301の外径寸法と同等であることが好ましい。
【0030】
この実施の形態においては、直線の円筒形状をなす塩ビパイプ材によって軸部材101を実現しているため、凹部200は、一端側から他端側に貫通している。凹部200は、軸部材101の軸心方向における少なくとも一端側に設けられていればよく、たとえば、この実施の形態のように、直線の円筒形状をなす塩ビパイプ材によって軸部材101を実現する場合、軸心方向における両端側に設けられていてもよい。
【0031】
スリット102は、軸部材101の軸心方向に沿って一端から他端側に向かって延在している。スリット102は、軸心方向における一端側が開放されており、軸部材101の壁101aを壁101aの厚さ方向に貫通している。スリット102は、凹部200をキャップ300に被せた状態でフィン302と嵌合する位置に設けられている。スリット102の幅寸法は、フィン302の幅寸法よりも大きい。
【0032】
輪状部材103は、軸部材101の外周面であって、軸部材101の軸心方向においてスリット102と重複する位置に設けられている。輪状部材103は、弾性材料によって形成されている。輪状部材103は、加えられた外力に応じて伸張し、当該外力から解放された場合に元の形状に復帰する弾性を備える。具体的に、輪状部材103は、たとえば、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴムなどのゴムによって形成することができる。輪状部材103は、凹部200の内径寸法を小さくする方向に弾性力を作用させる。輪状部材103の弾性力を調整することにより、輪状部材103が設けられていない状態の凹部200の内径寸法よりも、凹部200の内径寸法が小さくなるように調整することもできる。
【0033】
滑り止め部材104は、軸部材101の外周面であって、軸心方向における他端側(スリット102とは反対側)に設けられている。滑り止め部材104は、たとえば、軸部材101を形成する材料よりも摩擦係数が大きい材料を、紐状に成形することによって実現することができる。あるいは、滑り止め部材104は、軸部材を形成する材料よりも摩擦係数が大きい材料を、帯状に成形することによって実現されるものであってもよい。
【0034】
また、滑り止め部材104は、軸部材を形成する材料よりも摩擦係数が大きい材料を、紐状や帯状であって、かつ、輪状に成形することによって実現されるものであってもよい。このように、輪状に成形する場合、滑り止め部材104は、軸部材101を形成する材料よりも摩擦係数が大きい材料であって、かつ、弾性を備える材料を用いて形成されていることが好ましい。具体的に、この場合、滑り止め部材104は、たとえば、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム、ビニルなどの材料を用いて形成することができる。
【0035】
軸部材101を形成する材料よりも摩擦係数が大きい材料を紐状、帯状または輪状に成形した滑り止め部材104により、軸部材101に対して、滑り止め部材104を巻き付けるようにして取り付けることができる。滑り止め部材104を紐状、帯状または輪状とすることにより、巻き付けの範囲や巻きどうしの間隔を容易に調整することができる。また、帯状の滑り止め部材104により、純水補給口開閉工具100の製造に際して、滑り止め部材104を容易に広範囲に設けることができる。
【0036】
滑り止め部材104は、一面側に粘着材料が設けられ、他面側に粒子の粗い粉粒体が設けられた帯状部材またはシート状部材によって実現してもよい。具体的には、たとえば、片面に粘着剤が塗布された帯状部材(片面粘着テープ)の、もう片方の面に酸化アルミニウムなどの鉱物粒子を敷き詰めた滑り止めテープ(ノンスリップテープ)によって、滑り止め部材104を実現することができる。一面側に粘着材料が設けられ他面に粒子の粗い粉粒体が設けられた帯状部材またはシート状部材によって滑り止め部材104を実現することにより、純水補給口開閉工具100の製造に際して、滑り止め部材104を容易に広範囲に設けることができる。
【0037】
なお、滑り止め部材104に代えて、軸部材101の他端側の外周面に滑り止め加工を施してもよい。滑り止め加工は、たとえば、軸部材101の他端側に、エンボス加工やデボス加工などの凹凸を形成する加工によって実現することができる。あるいは、滑り止め加工は、たとえば、軸部材101の他端側に、酸化アルミニウムなどの鉱物粒子(粒子の粗い粉粒体)を接着剤とともに吹き付ける加工によって実現してもよい。
【0038】
(純水補給口の開閉作業例)
つぎに、純水補給口開閉工具100を用いた、純水補給口の開閉作業例について説明する。作業者は、純水を補給する際にキャップ300を取り外して純水補給口を開放し、純水の補給後にキャップ300によって純水補給口を塞ぐ。純水補給口を開放する際は、作業者は、まず、対象とする純水補給口を塞いでいるキャップ300に、純水補給口開閉工具100を装着する。具体的には、スリット102とフィン302とを嵌合させるようにして、凹部200をキャップ300に被せる。
【0039】
つぎに、作業者は、純水補給口開閉工具100を把持して、軸部材101を軸心周りに回転させる。具体的に、軸部材101における滑り止め部材104が設けられている部分を把持して軸部材101を軸心周りに回転させる。これにより、キャップ300を手で把持しなくてもキャップ300を確実に回すことができる。また、スリット102とフィン302とが嵌合しているため、ゴムパッキン304が蓄電池本体501と固着している場合にも、キャップ300に対して軸部材101を空転させることなく、キャップ300を手で把持しなくてもキャップ300を確実に回すことができる。
【0040】
さらに、輪状部材103の弾性力によって凹部200の内径が広がってしまうことを規制することができるので、ゴムパッキン304が蓄電池本体501に固着している場合にも、スリット102とフィン302とを嵌合させた状態を維持したまま軸部材101を軸心周りに回転させることができ、キャップ300を確実に回すことができる。
【0041】
そして、キャップ300が空転する位置まで軸部材101を回した後、純水補給口開閉工具100を持ち上げる。凹部200の内径寸法をキャップ本体部301の外径寸法と同等とすることにより、純水補給口開閉工具100を持ち上げた際に、純水補給口開閉工具100とともにキャップ300を持ち上げることができる。このとき、輪状部材103の弾性力によって、凹部200の内径寸法がキャップ本体部301の外径寸法と同等に維持されるので、純水補給口開閉工具100を持ち上げることでキャップ300を持ち上げることができ、持ち上げたキャップ300を不用意に純水補給口開閉工具100から落下させることなく純水補給口を開放することができる。
【0042】
純水補給口を塞ぐ(閉じる)際は、作業者は、まず、純水補給口開閉工具100にキャップ300を装着する。具体的には、スリット102とフィン302とを嵌合させるようにして、キャップ300を凹部200に嵌め込む。つぎに、作業者は、純水補給口開閉工具100の滑り止め部材104が設けられている部分を把持して、対象とする純水補給口にキャップ300を被せる。そして、キャップ300が閉まりきる位置まで軸部材101を回した後、純水補給口開閉工具100を持ち上げる。キャップ300は、蓄電池本体501に螺合されているため、純水補給口開閉工具100のみを持ち上げることができる。これにより、純水補給口を塞ぐことができる。
【0043】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100は、キャップ本体部301の外周面から半径方向に突出するフィン302を備えたネジ込み式のキャップ300の開閉操作に用いられ、棒形状をなし、軸心方向における少なくとも一端側に、キャップ本体部301に被せることが可能な凹部200を備えた軸部材101と、軸部材101の一端から軸心方向に沿って他端側に向かって延在し、凹部200をキャップ300に被せた状態でフィン302と嵌合する位置に設けられたスリット102と、を備えることを特徴とする。
【0044】
この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100によれば、キャップ300に凹部200を被せてスリット102とフィン302とを嵌合させた状態で、軸部材101を軸心周りに回転させることにより、作業者はキャップ300に触れるまで手を伸ばすことなく、ネジ込み式のキャップ300を回すことができる。また、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100によれば、フィン302をスリット102に嵌め込むことにより、ゴムパッキン304が蓄電池本体501に固着している場合にも、キャップ300に対して軸部材101を空転させることなく、ネジ込み式のキャップ300を確実に回すことができる。
【0045】
これにより、開閉対象とするキャップ300を備える蓄電池500よりも手前側に配置された蓄電池500が干渉しているために、奥側に配置された蓄電池500のキャップ300を手でしっかり掴むことが難しかったり、複数の蓄電池500が隙間なく並べて配置されているために、開閉対象とするキャップ300の周囲に広い空間がなかったりする環境においても、純水補給口開閉工具100を挿入するスペースがあれば、ネジ込み式のキャップ300を確実に回すことができる。
【0046】
このように、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100によれば、作業環境にかかわらず、ネジ込み式のキャップ300を確実に回すことができる。
【0047】
また、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100によれば、軸部材101を蓄電池本体501に押し付けるようにして、軸部材101を軸心周りに回転させることにより、蓄電池500を大きく揺らすことなく、ネジ込み式のキャップ300を確実に回すことができる。これにより、緩めたキャップ300と蓄電池本体501との隙間から、蓄電池本体501内の電解液がこぼれてしまうことを回避することができる。
【0048】
また、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100は、軸部材101の外周面であって軸心方向においてスリット102と重複する位置に設けられ、加えられた外力に応じて伸張し当該外力から解放された場合に元の形状に復帰する弾性を備える弾性材料によって形成された輪状部材103を備えることを特徴とする。
【0049】
この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100によれば、スリット102によって複数に分かれている軸部材101の一端側の形状を、輪状部材103の弾性力によって維持し、径寸法が広がってしまうことを規制することができる。これにより、ゴムパッキン304が蓄電池本体501に固着している場合にも、スリット102とフィン302とを嵌合させた状態を維持したまま軸部材101を軸心周りに回転させることができ、ネジ込み式のキャップ300を確実に回すことができる。
【0050】
蓄電池本体501からキャップ300を取り外す場合は、キャップ300に凹部200を被せた状態において、輪状部材103によって、凹部200の内周面がキャップ300の外周面に押し付けられるように軸部材101の一端側を付勢することができる。これにより、電池本体501に対するキャップ300の螺合を解除している状態では、凹部200にキャップ300を嵌め込んだ軸部材101を持ち上げることで、キャップ300を持ち上げることができる。
【0051】
また、取り外したキャップ300を装着する場合は、開けて取り外す場合と逆の手順で、まず、蓄電池本体501から取り外したキャップ300を軸部材101の開放された一端側に嵌め込み、嵌め込んだキャップ300を純水補給口に嵌め込んだ状態で、軸部材101を軸心周りに回転させることで、キャップ300に触れるまで手を伸ばすことなく、ネジ式のキャップ300を取り付けて純水補給口を閉じることができる。
【0052】
このように、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100によれば、ネジ込み式のキャップ300の開閉作業を、容易かつ確実におこなうことができる。
【0053】
また、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100は、輪状部材103が、ゴムによって形成されていることを特徴とする。
【0054】
この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100によれば、市販の輪ゴムなど、輪状に成形したゴムによって、構成が簡易であって取り扱いが容易な輪状部材103を実現することができる。これにより、純水補給口開閉工具100の構成の簡易化および取り扱いの容易化を図ることができる。また、輪状部材103が劣化したり損傷したりした場合に、容易かつ安価に、あらたな輪状部材103に交換することができ、純水補給口開閉工具100の維持や管理にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。さらに、構成を簡易化することにより、純水補給口開閉工具100の製造コストを抑えることができる。
【0055】
また、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100は、凹部200の内径寸法は、キャップ本体部301の外径寸法と同等以上であって、フィン302の先端がなす円の直径寸法よりも小さいことを特徴とする。
【0056】
この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100によれば、キャップ300に凹部200を被せることにより、スリット102とフィン302とを確実に嵌合させることができる。これにより、ネジ込み式のキャップ300を確実に回すことができる。
【0057】
また、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100は、軸部材101の他端側の外周面に設けられた滑り止め部材104を備えることを特徴とする。
【0058】
この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100によれば、軸部材101の他端側の外周面に滑り止め部材104を設けることにより、ハンドルなどがついていない直線の棒形状をなす軸部材101を、確実に軸心周りに回転させることができる。これにより、ネジ込み式のキャップ300を確実に回すことができる。
【0059】
また、この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100は、滑り止め部材104は、軸部材101を形成する材料よりも摩擦係数が大きい材料を用いて成形され、紐状、帯状または輪状をなすことを特徴とする。
【0060】
この発明にかかる実施の形態の純水補給口開閉工具100によれば、滑り止め部材104が紐状、帯状または輪状をなすため、軸部材101の他端側の外周面に巻き付けることによって、滑り止め部材104を容易に軸部材101の外周面に設けることができる。これにより、純水補給口開閉工具100の製造の容易化を図り、製造コストを抑えることができる。また、滑り止め部材104が劣化したり損傷したりした場合に、容易かつ安価に、あらたな滑り止め部材104に交換することができ、純水補給口開閉工具100の維持や管理にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
【0061】
また、一面側に粘着材料が設けられ、他面側に粒子の粗い粉粒体が設けられた帯状部材またはシート状部材によって滑り止め部材104を実現する場合は、純水補給口開閉工具100の製造に際して、滑り止め部材104を容易に広範囲に設けることができるので、製造する作業者の負担軽減を図ることができる。
【0062】
また、純水補給口開閉工具100において、滑り止め部材104に代えて、軸部材101の他端側の外周面に、たとえば、エンボス加工やデボス加工を施す場合は、あらたな部材を設けることなく、直線の棒形状をなす軸部材101を、確実に軸心周りに回転させることができる。これにより、ネジ込み式のキャップ300を確実に回すことができる。また、純水補給口開閉工具100の維持や管理にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
【0063】
また、純水補給口開閉工具100において、軸部材101が、少なくとも一端側が開放された筒形状をなす場合、純水補給口開閉工具100の軽量化および構成の簡易化を図ることができる。これにより、純水補給口開閉工具100の取り扱いにかかる作業者の負担軽減を図ることができ、開閉対象とするキャップ300が作業者の立ち位置から遠い場合にも、容易かつ確実にキャップ300を開閉することができる。また、純水補給口開閉工具100の維持や管理にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、この発明にかかる純水補給口開閉工具は、フィンを備えたネジ込み式のキャップの開閉操作に用いる純水補給口開閉工具に有用であり、特に、狭い場所に位置するネジ込み式のキャップや固着のおそれがあるネジ込み式のキャップの開閉操作に用いる純水補給口開閉工具に適している。
【符号の説明】
【0065】
100 純水補給口開閉工具
101 軸部材
102 スリット
103 輪状部材
104 滑り止め部材
200 凹部
300 キャップ
301 キャップ本体部
302 フィン
303 フランジ
304 ゴムパッキン
500 蓄電池
501 蓄電池本体
502 触媒栓
図1
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図8