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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】配線部材の配置構造及び配線部材
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20231219BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20231219BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231219BHJP
   H02G 3/30 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B7/00 301
B60R16/02 620J
H02G3/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019209713
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021082506
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 心優
(72)【発明者】
【氏名】大森 康雄
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-315641(JP,A)
【文献】特開昭59-224012(JP,A)
【文献】特開昭59-075505(JP,A)
【文献】特開平10-003822(JP,A)
【文献】実開平04-006125(JP,U)
【文献】実開平06-077116(JP,U)
【文献】実開昭59-007514(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01B 7/00
B60R 16/02
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並行する複数の線状伝送部材と前記複数の線状伝送部材を並んだ状態に保つベースとを含む配線部材と、
前記配線部材の配置対象と、
を備え、
前記複数の線状伝送部材の長手方向に沿って延びるスリットが前記ベースのうち前記複数の線状伝送部材の間の部分に形成されており、
前記ベースはシートを含み、
前記シートの主面上に前記複数の線状伝送部材が固定されており、
前記複数の線状伝送部材それぞれは、前記シートと前記長手方向に沿って間隔をあけた複数箇所で固定されており、
前記複数の線状伝送部材それぞれと前記シートとの固定箇所が、前記スリットの側方位置に、少なくとも1つ設けられており、
前記配線部材は、前記シートの直線状の部分に対して前記線状伝送部材が直線状に配置された直線状部分が、前記スリットの位置で曲がった状態で前記配置対象に配置されており、
前記直線状部分において、前記線状伝送部材の長手方向中間部であって前記シートのうち前記スリットの側方の位置に、前記シートと前記線状伝送部材との固定箇所として第1の固定箇所と第2の固定箇所とが設けられている、配線部材の配置構造。
【請求項2】
請求項に記載の配線部材の配置構造であって、
前記複数の線状伝送部材のうち第1対の線状伝送部材間に前記スリットとして第1スリットが形成され、
前記複数の線状伝送部材のうち第2対の線状伝送部材間に前記スリットとして第2スリットが形成され、
前記第1スリットと前記第2スリットとが前記長手方向に沿って異なる位置に形成されている、配線部材の配置構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材の配置構造であって、
前記配線部材のうち曲がっている部分の両隣の部分において、前記配線部材における幅方向の中心が前記幅方向に相互にずれている、配線部材の配置構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材の配置構造であって、
前記配線部材が段差を越える部分において曲がっており、
前記段差には前記複数の線状伝送部材の並列方向に沿って高さの異なる部分が存在する、配線部材の配置構造。
【請求項5】
並行する複数の線状伝送部材と、
主面上に前記複数の線状伝送部材が固定されたシートと
を備え、
前記複数の線状伝送部材の長手方向に沿って延びるスリットが前記シートのうち前記複数の線状伝送部材の間の部分に形成されており、
前記複数の線状伝送部材それぞれは、前記シートと前記長手方向に沿って間隔をあけた複数箇所で固定されており、
前記複数の線状伝送部材それぞれと前記シートとの固定箇所が、前記スリットの側方位置に、少なくとも1つ設けられており、
前記シートの直線状の部分に対して前記線状伝送部材が直線状に配置された直線状部分が設けられ、
前記直線状部分において、前記線状伝送部材の長手方向中間部であって前記シートのうち前記スリットの側方の位置に、前記シートと前記線状伝送部材との固定箇所として第1の固定箇所と第2の固定箇所とが設けられている、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材の配置構造及び配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート状に形成された機能性外装部材に電線が溶着されたワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-137208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のワイヤーハーネスのようにフラットに形成された配線部材が、車両において曲がった箇所を有するスペースに配置される場合がある。
【0005】
そこで、配線部材が車両において曲がった箇所を有するスペースに配置されることを容易にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材の配置構造は、並行する複数の線状伝送部材と前記複数の線状伝送部材を並んだ状態に保つベースとを含む配線部材と、前記配線部材の配置対象と、を備え、前記複数の線状伝送部材の長手方向に沿って延びるスリットが前記ベースのうち前記複数の線状伝送部材の間の部分に形成されている、配線部材の配置構造である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、配線部材が車両において曲がった箇所を有するスペースに配置されることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態1にかかる配線部材の配置構造を示す平面図である。
図2図2は配線部材が配置対象に配置される様子を示す説明図である。
図3図3は実施形態2にかかる配線部材の配置構造を示す斜視図である。
図4図4は配線部材が配置対象に配置される様子を示す説明図である。
図5図5は配線部材の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材の配置構造は、次の通りである。
【0011】
(1)並行する複数の線状伝送部材と前記複数の線状伝送部材を並んだ状態に保つベースとを含む配線部材と、前記配線部材の配置対象と、を備え、前記複数の線状伝送部材の長手方向に沿って延びるスリットが前記ベースのうち前記複数の線状伝送部材の間の部分に形成されている、配線部材の配置構造である。複数の線状伝送部材の長手方向に沿って延びるスリットがベースのうち複数の線状伝送部材の間の部分に形成されているため、スリットの位置で配線部材が曲がりやすくなる。配線部材が車両において曲がった箇所を有するスペースに配置されることが容易となる。
【0012】
(2)前記ベースはシートを含み、前記シートの主面上に前記複数の線状伝送部材が固定されていてもよい。これにより、一般電線を用いて配線部材を容易に形成できる。
【0013】
(3)前記複数の線状伝送部材それぞれは、前記シートと前記長手方向に沿って間隔をあけた複数箇所で固定されており、前記複数の線状伝送部材それぞれと前記シートとの固定箇所が、前記スリットの側方位置に、少なくとも1つ設けられていてもよい。これにより、スリットの位置で配線部材が曲げられたときに線状伝送部材がシートから浮くことが抑制される。
【0014】
(4)前記複数の線状伝送部材のうち第1対の線状伝送部材間に前記スリットとして第1スリットが形成され、前記複数の線状伝送部材のうち第2対の線状伝送部材間に前記スリットとして第2スリットが形成され、前記第1スリットと前記第2スリットとが前記長手方向に沿って異なる位置に形成されていてもよい。これにより、配線部材を曲げやすくしつつ、シートの強度低下を抑制できる。
【0015】
(5)前記配線部材が前記スリットの位置で曲がった状態で前記配置対象に配置されていてもよい。これにより、配線部材が曲がって配置される。
【0016】
(6)前記配線部材のうち曲がっている部分の両隣の部分において、前記配線部材における幅方向の中心が前記幅方向に相互にずれていてもよい。これにより、配線部材を偏心させて配置できる。
【0017】
(7)前記配線部材が段差を越える部分において曲がっており、前記段差には前記複数の線状伝送部材の並列方向に沿って高さの異なる部分が存在してもよい。これにより、高さの異なる部分を含む段差を越えるように配線部材を配置できる。
【0018】
(8)また、本開示の配線部材は、並行する複数の線状伝送部材と、主面上に前記複数の線状伝送部材が固定されたシートと、を備え、前記複数の線状伝送部材の長手方向に沿って延びるスリットが前記シートのうち前記複数の線状伝送部材の間の部分に形成されている、配線部材である。複数の線状伝送部材の長手方向に沿って延びるスリットがシートのうち複数の線状伝送部材の間の部分に形成されているため、スリットの位置で配線部材が曲がりやすくなる。配線部材が車両において曲がった箇所を有するスペースに配置されることが容易となる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の配置構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかる配線部材の配置構造について説明する。図1は実施形態1にかかる配線部材の配置構造10を示す平面図である。図2は配線部材20Bが配置対象40に配置される様子を示す説明図である。なお本明細書では、曲がる前の状態の配線部材20と曲がった後の配線部材20との区別が必要な場合、曲がる前の状態の配線部材20について配線部材20Bのように符号Bを追加して区別するものとする。
【0021】
配線部材の配置構造10は、配線部材20と、配置対象40とを備える。配線部材20は少なくとも一部が曲がった状態で配置対象40に配置されている。
【0022】
配線部材20は、複数の線状伝送部材22とベース24とを備える。複数の線状伝送部材22は、電気又は光等を伝送する線状の部材である。ベース24は、全体として扁平な形状に形成されている。複数の線状伝送部材22がベース24に固定されることによって、配線部材20が扁平な形態に保たれる。
【0023】
複数の線状伝送部材22は、車両における部品同士を接続する部材であることが想定される。線状伝送部材22の端部には、例えばコネクタが設けられる。このコネクタが相手側部品に設けられたコネクタと接続されることで、線状伝送部材22が相手側部品に接続される。つまり、本配線部材20は、車両等において各種部品同士を電気的に(或は光通信可能に)接続する配線部材20として用いられる。コネクタは、ベース24に固定されていてもよい。
【0024】
複数の線状伝送部材22の経路は、接続先となる部品の位置等に応じて設定される。複数の線状伝送部材22がベース24に固定されることによって、複数の線状伝送部材22がそれぞれの接続先となる部品の位置等に応じた配線経路に沿った状態に保たれる。複数の線状伝送部材22は、幹線部から枝線部が分岐する態様で、ベース24に固定されていてもよい。配線部材20に複数の線状伝送部材22が並行する部分が設けられていればよい。
【0025】
線状伝送部材22は、上記したように、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材22は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、裸導線、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0026】
電気を伝送する線状伝送部材22としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材22の一部等は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0027】
また、線状伝送部材22は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0028】
ここでは、線状伝送部材22が電線であることを想定した説明がなされる。
【0029】
ベース24は複数の線状伝送部材22を並んだ状態に保つ。ベース24にはスリット26が形成されている。スリット26は、複数の線状伝送部材22の長手方向に沿って延びる。スリット26は、ベース24のうち複数の線状伝送部材22の間の部分に形成されている。配線部材20がスリット26の位置で曲がった状態で配置対象40に配置されている。
【0030】
並行する線状伝送部材22が3本以上設けられている場合、線状伝送部材22の間の部分が複数存在する。具体的には、図1では5本の線状伝送部材が並行している。このため、線状伝送部材22の間の部分が4つ存在する。この場合、スリット26は複数の間の部分のうちすべての間の部分に形成されていてもよいし、一部の間の部分にのみ形成されていてもよい。スリット26は複数の間の部分のうち少なくとも1つの間の部分に形成されていればよい。複数の間の部分のうちスリット26が形成されない部分における線状伝送部材22の間隔は、スリット26が形成される部分における線状伝送部材22の間隔よりも大きくてもよいし、小さくてもよいし、両者が同じであってもよい。
【0031】
スリット26は配線部材20を経路に応じた形状に曲げるためのものである。このため、スリット26は、配線部材20が経路に応じた形状に曲がることができるように形成されているとよい。ここでは配線部材20の経路は、スリット26が形成されていない配線部材20が曲がったときに、曲げの部分において複数の線状伝送部材22の経路長に差が生じるような経路である。このため、スリット26は、配線部材20が曲がったときに経路長の差を小さくしたり吸収したりすることができるように形成されているとよい。
【0032】
スリット26は幅のあるものであってもよい。つまり、シート24のうちスリット26のある部分が切り欠かれた形状に形成されてもよい。またスリット26は幅のないものであってもよい。つまり、シート24のうちスリット26のある部分に切れ込みが形成された形状に形成されてもよい。
【0033】
ここではベース24は、シート24である。ベース24はシート24以外の部材を含んでもよい。シート24の主面上に複数の線状伝送部材22が固定されている。シート24は、樹脂シートであってもよい。例えば、シート24は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂によって形成されていてもよい。また、シート24は、不織布又は発泡シート等であることも考えられる。また、シート24は、1層構造を有していてもよく、複数層構造を有していてもよい。また、シート24は、金属層を有していてもよい。
【0034】
線状伝送部材22は、ベース24に固定されればよく、ベース24に対する線状伝送部材22の固定構造は特に限定されない。例えば、線状伝送部材22はシート24に対して固定されている。かかる固定態様としては、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。ここで接触部位固定とは、線状伝送部材22とシート24とが接触する部分がくっついて固定されているものである。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様であり、例えば、縫糸、カバー、粘着テープなどが、線状伝送部材22をシート24に向けて押え込んだり、線状伝送部材22とシート24とを挟み込んだりして、その状態に維持するものである。以下では、線状伝送部材22とシート24とが、接触部位固定の状態にあるものとして説明する。
【0035】
係る接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで接触部位間接固定とは、線状伝送部材22とシート24とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどを介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、線状伝送部材22とシート24とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えば線状伝送部材22とシート24とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。
【0036】
係る接触部位直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、接触部位直接固定の状態としては、熱による接触部位直接固定の状態であってもよいし、溶剤による接触部位直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による接触部位直接固定の状態であるとよい。
【0037】
このとき接触部位直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって接触部位直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材22とシート24とは、その手段による接触部位直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって接触部位直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材22とシート24とは、超音波溶着による接触部位直接固定の状態とされる。
【0038】
以下では、線状伝送部材22とシート24とが、接触部位直接固定の状態にあるものとして説明する。
【0039】
複数の線状伝送部材22それぞれは、シート24と長手方向に沿って間隔をあけた複数箇所で固定されている。図1及び図2では、複数の線状伝送部材22それぞれとシート24との固定箇所FPが二点鎖線によって示されている。ここでは複数の線状伝送部材22それぞれとシート24との固定箇所FPが、スリット26の側方位置に2つ設けられている。もっとも、複数の線状伝送部材22それぞれとシート24との固定箇所FPが、スリット26の側方位置に1つ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。複数の線状伝送部材22それぞれとシート24との固定箇所FPが、スリット26の側方位置に、少なくとも1つ設けられているとよい。
【0040】
配線部材20Bにおいて複数の線状伝送部材22は長手方向に沿った同じ位置でシート24と固定されている。配線部材20Bにおいて複数の線状伝送部材22は長手方向に沿った異なる位置でシート24と固定されていてもよい。1つの線状伝送部材22において、複数の固定箇所FPの間隔は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
配置対象40は、車両における各種部材である。例えば、配置対象40は、外装パネル、車体フレーム、内装部材などであってもよい。外装パネルは、例えばドアパネル、ルーフパネルなど車両の外観をなす部材である。車体フレームは、車両の骨格をなす部材である。車体フレームにはリインフォースメントなども含まれる。内装部材は、例えば、インストルメントパネル、ドアトリム、ルーフトリムなど車両の内観をなす部材である。配置対象40の形状は、各種部材に応じた形状に形成される。配置対象40は、例えば、棒状又は板状などに形成されてもよい。
【0042】
ここでは配置対象40は、配置面42を有している。配置面42に沿って配線部材20が配置される。配置面42は平面であってもよいし、曲面であってもよい。配置面42に障害物44、45が設けられている。かかる障害物44、45は例えば、外装パネル、車体フレーム、内装部材などに形成された凸形状部分である。また例えば、かかる障害物44、45は外装パネル、車体フレーム、内装部材などに取付けられた電気部品を含む各種部品などである。
【0043】
ここでは配線部材20は障害物44、45を避けて迂回するように配置される。つまり、配線部材20の経路は、障害物44、45を避けて迂回するように設定される。配線部材20は、障害物44、45を避けて迂回する部分において配置面42に沿って曲がっている。
【0044】
配線部材20のうち曲がっている部分の両隣の部分において、配線部材20における幅方向の中心Cが相互にずれている。例えば図1に示す例では、第1方向D1及び第2方向D2は、配置面42に沿った方向である。第1方向D1及び第2方向D2は、直交している。配線部材20は全体に第1方向D1に沿って延びている。配線部材20が曲がっていない部分において、複数の線状伝送部材22が第2方向D2に沿って並んでいる。第1方向に沿って間隔をあけて2つの障害物44、45が設けられている。第2方向D2に沿った2つの障害物44、45の間隔は、配線部材20の幅寸法よりも小さい。このため、配線部材20は、2つの障害物44、45の近くを通る際、幅方向の中心Cをずらすように曲がっている。
【0045】
配線部材20のうち障害物44の近くにおいて曲がっている部分を曲げ部CP1と称する。配線部材20は曲げ部CP1において、第2方向D2に沿った一方側部分を内周側にすると共に他方側部分を外周側にして曲がっている。スリット26が形成されている部分が曲げ部CP1に配置されている。これにより、配線部材20が曲げ部CP1に容易に対応できる。
【0046】
同様に配線部材20のうち障害物45の近くにおいて曲がっている部分を曲げ部CP2と称する。配線部材20は曲げ部CP2において、第2方向D2に沿った一方側部分を外周側にすると共に他方側部分を内周側にして曲がっている。スリット26が形成されている部分が曲げ部CP2に配置されている。これにより、配線部材20が曲げ部CP2に容易に対応できる。
【0047】
配線部材20において、曲げ部CP1におけるスリット26と、曲げ部CP2におけるスリット26とがつながっている。つまり、曲げ部CP1から曲げ部CP2までの部分に一続きのスリット26が形成されている。曲げ部CP1におけるスリット26と、曲げ部CP2におけるスリット26とがつながっていなくてもよい。つまり、曲げ部CP1と曲げ部CP2との間にスリット26が形成されていない部分があってもよい。
【0048】
配線部材20において、スリット26によって分割された部分を分割部分30と称する。分割部分30は、シート部分と、シート部分に固定された線状伝送部材22とを含む。シート部分は、シート24がスリット26によって分割された部分である。図1に示す例では、曲げ部CP1、CP2において5つの分割部分30が設けられている。各曲げ部CP1、CP2において5つの分割部分30に相当する部分の経路長に差が生じうる。この経路長の差が配線部材を曲げにくくしている要因の一つである。より詳細には、シート24にスリット26が形成されていない場合、配線部材20が曲げ可能となる範囲は、シート24の伸び及び線状伝送部材22の伸びのうち小さい方の伸びによって経路長の差が吸収される範囲までとなる。つまり、シート24にスリット26が形成されていない場合、シート24及び線状伝送部材22の少なくとも一方の伸びの限界を越えると、経路長の差を吸収不可となり、それ以上の曲げが困難となる。
【0049】
これに対して、ここではシート24にスリット26が形成されているため、複数の分割部分30それぞれが独立して動くことができる。これにより、経路長の差を小さくしたり吸収したりすることができる。これにより、配線部材20が曲げ可能となる範囲が大きくなる。より詳細には、例えば、曲げ部CP1、CP2において一部の分割部分30が近づいたり、重なったりすることによって経路長の差を小さくすることができる。また例えば、曲げ部CP1、CP2において一部の分割部分30が配置面42から離れる方向に曲がることによって経路長の差を吸収することができる。
【0050】
具体的には、曲げ部CP1において、複数の分割部分30のうち障害物44に近い側の分割部分30Aの経路長が、障害物44から遠い側の分割部分30Bの経路長よりも短くなる。この場合、分割部分30Aが分割部分30Bに向けて近づいたり、分割部分30Bが分割部分30Aに向けて近づいたりすることによって、経路長の差が小さくなる。また経路長の短い分割部分30Aが配置面42から離れる方向に曲がることによって経路長の差を吸収することができる。
【0051】
曲げ部CP2においては、逆に、複数の分割部分30のうち障害物45に近い側の分割部分30Bの経路長が、障害物45から遠い側の分割部分30Aの経路長よりも短くなる。この場合、分割部分30Bが分割部分30Aに向けて近づいたり、分割部分30Aが分割部分30Bに向けて近づいたりすることによって、経路長の差が小さくなる。また経路長の短い分割部分30Bが配置面42から離れる方向に曲がることによって経路長の差を吸収することができる。
【0052】
図1に示す例では配線部材20のうち曲がっている部分の両隣の部分において、配線部材20における幅方向の中心Cが幅方向に相互にずれている。つまり、配線部材20のうち曲げ部CP1及び曲げ部CP2の一方隣りの部分(図1において曲げ部CP1の左に位置する部分)と、配線部材20のうち曲げ部CP1及び曲げ部CP2の他方隣りの部分(図1において曲げ部CP2の右に位置する部分)とにおいて、幅方向の中心Cが第2方向D2にずれるとともに、相互に平行である。この場合、曲げ部CP1における経路長の差と、曲げ部CP2における経路長の差とが逆転する。このため、曲げ部CP1と曲げ部CP2との両方を含む範囲で見たときに、曲げ部CP1と曲げ部CP2とのうち一方のみを含む範囲で見たときと比べて、経路長の差が小さくなる。
【0053】
配線部材20のうち曲がっている部分の両隣の部分において、配線部材20における幅方向の中心Cの延長線が交差するように曲がっていてもよい。例えば、配線部材20は曲げ部CP1と曲げ部CP2とのうち一方のみを含むように曲がっていてもよい。
【0054】
なお、図1に示す例では曲げ部CP1、CP2及びその間の部分において複数の分割部分30が一列に並んでいるが、これは模式的記載であり、必ずしも一列に並んでいる必要はない。
【0055】
以上のように構成された配線部材の配置構造10によると、複数の線状伝送部材22の長手方向に沿って延びるスリット26がベース24のうち複数の線状伝送部材22の間の部分に形成されているため、スリット26の位置で配線部材20が曲がりやすくなる。配線部材20が車両において曲がった箇所を有するスペースに配置されることが容易となる。
【0056】
シート24の主面上に複数の線状伝送部材22が固定されているため、一般電線を用いて配線部材20を形成できる。また複数の線状伝送部材22の間隔を適宜設定しやすい。
【0057】
複数の線状伝送部材22それぞれとシート24との固定箇所FPが、スリット26の側方位置に少なくとも1つ設けられているため、スリット26の位置で配線部材20が曲げられたときに線状伝送部材22がシート24から浮くことが抑制される。
【0058】
また配線部材20のうち曲がっている部分の両隣の部分において、配線部材20における幅方向の中心Cが幅方向に相互にずれているため、配線部材20を偏心させて配置できる。
【0059】
また以上のように構成された配線部材20Bによると、複数の線状伝送部材22の長手方向に沿って延びるスリット26がシート24のうち複数の線状伝送部材22の間の部分に形成されているため、スリット26の位置で配線部材20Bが曲がりやすくなる。配線部材20Bが車両において曲がった箇所を有するスペースに配置されることが容易となる。
【0060】
[実施形態2]
実施形態2にかかる配線部材の配置構造について説明する。図3は実施形態2にかかる配線部材の配置構造110を示す斜視図である。図4は配線部材20Bが配置対象140に配置される様子を示す説明図である。なお、本実施形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
配線部材の配置構造110では、配置対象140の形状及び配線部材20の経路が、配線部材の配置構造10における配置対象40の形状及び配線部材20の経路と異なっている。配置対象140には、障害物46が設けられている。配線部材20は、障害物46を越えている。配線部材20の経路は、障害物46を迂回せずに越えるように設定されている。配置面42と障害物46との間に段差48が生じている。配線部材20が段差48を越える部分において曲がっている。配線部材20は段差48を越える部分において配置面42から離れる方向に曲がっている。
【0062】
段差48には複数の線状伝送部材22の並列方向に沿って高さの異なる部分が存在する。図3に示す例では障害物46は斜面を有する。配線部材20は、斜面を横切るように配置されている。配置面42と斜面との間が高さの異なる部分を有する段差48となっている。
【0063】
段差48には複数の線状伝送部材22の並列方向に沿って高さの異なる部分が存在するため、当該段差48を越える際に複数の分割部分30の経路長に差が生じうる。この場合でも、ここではシート24にスリット26が形成されているため、複数の分割部分30それぞれが独立して動くことができる。これにより、経路長の差を小さくしたり吸収したりすることができる。これにより、配線部材20Bが曲げ可能となる範囲が大きくなる。より詳細には、例えば、段差48を越える部分において一部の分割部分30が近づいたり、重なったりすることによって経路長の差を小さくすることができる。また例えば、段差48を越える部分において一部の分割部分30が配置面42から離れる方向に曲がることによって経路長の差を吸収することができる。
【0064】
具体的には、段差48を越える部分において、複数の分割部分30のうち高さの低い側の分割部分30Aの経路長が、高さの高い側の分割部分30Bの経路長よりも短くなる。この場合、分割部分30Aが分割部分30Bに向けて近づいたり、分割部分30Bが分割部分30Aに向けて近づいたりすることによって、経路長の差が小さくなる。また分割部分30Bが長手方向に沿って分割部分30Aよりも段差48から遠い位置(スリット26端部側)で配置面42から離れる方向に曲がることによって経路がショートカットされ、もって経路長の差が小さくなる。また経路長の短い分割部分30Aが配置面42と隙間をあけるように配置面42から離れる方向に曲がることによって経路長の差を吸収することができる。
【0065】
なお図3に示す例では段差48を有する障害物46が三角柱状に形成されているが、三角柱以外の形状に形成されていてもよい。
【0066】
[変形例]
図5は配線部材20の変形例を示す平面図である。これまでの例では、複数のスリット26が同じ領域に形成されていたが、このことは必須の構成ではない。複数のスリット26が形成される領域は異なっていてもよい。
【0067】
図5に示す配線部材120Bでは、第1スリット27及び第2スリット28が形成されている。第1スリット27は、複数の線状伝送部材22のうち第1対の線状伝送部材22間に形成されている。第2スリット28は、複数の線状伝送部材22のうち第2対の線状伝送部材22間に形成されている。図5に示す例では、5本の線状伝送部材22A、22B、22C、22D、22Eのうち、線状伝送部材22A、22Bの間、及び線状伝送部材22C、22Dの間に第1スリット27が形成されている。また5本の線状伝送部材22A、22B、22C、22D、22Eのうち、線状伝送部材22B、22Cの間、及び線状伝送部材22D、22Eの間に第2スリット28が形成されている。
【0068】
第1スリット27と第2スリット28とが長手方向に沿って異なる位置に形成されている。このように第1スリット27と第2スリット28とが長手方向に沿って異なる位置に形成されていることによって、配線部材120Bを曲げやすくしつつ、シート24の強度低下を抑制できる。なお3種以上のスリットが長手方向に沿って異なる位置に形成されていてもよい。
【0069】
図5に示す例では、第1スリット27の一端と第2スリット28の一端とが配線部材20の長手方向に沿って同じ位置に位置している。第1スリット27が形成される領域と第2スリット28が形成される領域とは、配線部材120Bの長手方向に沿って間隔をあけていてもよい。つまり配線部材120Bの長手方向に沿った一部分には、第1スリット27も第2スリット28も形成されない部分が存在していてもよい。第1スリット27が形成される領域と第2スリット28が形成される領域とが配線部材120Bの長手方向に沿って一部で重なっていてもよい。つまり配線部材120Bの長手方向に沿った一部分には、第1スリット27及び第2スリット28の両方が形成された部分が存在していてもよい。
【0070】
このほか、これまでの例では、複数のスリット26の長さが同じに形成されていたが、このことは必須の構成ではない。複数のスリット26の長さが異なっていてもよい。例えば経路長が短い側に設けられたスリット26が、経路長が長い側に設けられたスリット26よりも長くてもよいし、短くてもよい。具体的には、図1に示す例の場合、曲げ部CP1、CP2において内周側に位置するスリット26が、経路長が短い側に設けられたスリット26である。曲げ部CP1、CP2において外周側に位置するスリット26が、経路長が長い側に設けられたスリット26である。図3に示す例の場合、段差48を越える部分において、段差48の高さが低い側に位置するスリット26が、経路長が短い側に設けられたスリット26である。段差48を越える部分において、段差48の高さが高い側に位置するスリット26が、経路長が長い側に設けられたスリット26である。
【0071】
このほか、これまで配線部材20がシート24の主面上に複数の線状伝送部材22が固定されたものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。配線部材は、例えば、フレキシブルフラットケーブル(FFC)又はフレキシブルプリント回路基板(FPC)などであってもよい。
【0072】
またこれまで線状伝送部材22の長手方向に沿って間隔をあけた複数箇所においてシート24と線状伝送部材22とが固定されているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。シート24と線状伝送部材22とが線状伝送部材22の長手方向に沿って全体に固定されていてもよい。またこれまでスリット26の側方部分においてシート24と線状伝送部材22とが固定されているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。スリット26の側方部分においてシート24と線状伝送部材22とが固定されていなくてもよい。
【0073】
またベース24はカバーを含んでいてもよい。カバーは、シート24とは反対側から線状伝送部材22を覆う。ベース24がカバーを含む場合、カバーにもスリットが形成されていると良い。カバーにおけるスリットはシート24におけるスリット26と同じ位置に形成されていてもよいし、異なる位置に形成されていてもよい。カバーは、シート24に対して全体的に重ねられてもよいし、一部に重ねられてもよい。カバーは、樹脂シートであってもよい。例えば、カバーは、シート24と同様に、PVC、PE、PP、PET等の樹脂によって形成されていてもよい。シート24及びカバーの一方は、他方よりも柔らかくてもよい。ここでの柔らかさ、逆にいえば、硬さは、例えば、ロックウェル硬さによって評価されてもよい。例えば、カバーは、硬質PVC、ナイロン、PET、PPなどの材料によって形成され、シート24が軟質PVCによって形成されたシート状部材とPETによって形成された不織布とが積層された柔らかい部材であってもよい。
【0074】
また配線部材は線状伝送部材22とシート24とが固定された配線体が複数積層されて構成されていてもよい。この場合、複数の配線体において同じ位置にスリット26が形成されていてもよいし、異なる位置にスリット26が形成されていてもよい。
【0075】
また配線部材20、120が配置対象40、140に曲がって配置されていたが、このことは必須の構成ではない。配線部材20Bが曲がらずに直線状に配置対象に配置されていてもよい。また配線部材20は上記以外の曲げ箇所に適用されていてもよい。例えば、配線部材20は段差48を越えたあとにそのまま延びていてもよい。つまり、配線部材20はねじれるように配置されていてもよい。また曲げ部CP1のように長手方向を変える曲げと段差48とが共に存在する部分に適用されてもよい。
【0076】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0077】
10、110 配線部材の配置構造
20、20B、120、120B 配線部材
22 線状伝送部材
24 シート(ベース)
26 スリット
27 第1スリット
28 第2スリット
30 分割部分
40、140 配置対象
42 配置面
44、45、46 障害物
48 段差
WP 固定箇所
図1
図2
図3
図4
図5